JP6963273B2 - 化粧シート及び化粧シートの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、上記のような点に着目し、耐傷性と後加工性とに優れた化粧シート及び化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、本実施形態の化粧シート1は、表面保護層2と透明樹脂層3との間に、エンボス模様3aが形成されている場合を例示している。なお、エンボス模様3aは、表面保護層2の上面に形成されていてもよい。ここで、「表面保護層2の上面」とは、本実施形態の化粧シート1における最外面を意味し、表面保護層2の透明樹脂層3側の面とは反対側の面を意味する。
基材層6は、紙、樹脂シート、箔等から構成される。紙としては、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙、有機もしくは無機系の不織布、合成紙を用いることができる。樹脂シートの樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムを用いることができる。箔としては、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔を用いることができる。
絵柄模様層5は、化粧シート1に絵柄模様を付与するための層である。絵柄模様層5の形成方法としては、生産性や絵柄の品位を考慮すると、グラビア印刷法が好ましい。絵柄模様としては、床材や壁材等の使用箇所を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば、大理石等の石材の床をイメージしたものであれば、大理石の石目等を絵柄模様として用いることができる。また、天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様等の人工的絵柄模様も用いることができる。
また、バインダーは、例えば、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、硬化方法についても1液タイプ、主剤と硬化剤とからなる2液タイプ、もしくは、紫外線や電子線等によって硬化するタイプ等特に限定するものではない。なかでも最も一般的な方法は、2液タイプのもので、ウレタン系の主剤と、イソシアネートからなる硬化剤を用いる方法である。この他にも、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すようにしてもよい。
接着剤層4は、基材層6及び絵柄模様層5と透明樹脂層3との接着を強固にするための層である。これにより、化粧シート1に対し、曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。接着剤層4は、透明であることが好ましい。接着剤層4の形成方法としては、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネートを用いることができる。接着剤層4を構成する接着剤(材料)としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系の材料を用いることができる。特に、その凝集力を考慮すると、2液硬化タイプのものであって、イソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが好ましい。なお、接着剤層4は、基材層6及び絵柄模様層5と透明樹脂層3との接着強度が十分に得られる場合には、省略してもよい。
透明樹脂層3は、化粧シート1に意匠的に厚みや深みを出させるほか、化粧シート1の耐候性、耐磨耗性能を向上させるための層である。例えば、環境適合性や加工性、価格等を考慮して、透明なオレフィン系樹脂(ポリオレフィン系樹脂)を用いることができる。透明なオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたもの、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレンまたはαオレフィンとその他のモノマーとを共重合させたものを用いることができる。
また、透明樹脂層3は、オレフィン系樹脂に対して、ナノ化処理された造核剤、つまり、ナノサイズの造核剤を添加してもよい。これにより、造核剤の添加によって生じる光の散乱を抑制でき、透明樹脂層3の透明性を損なうことなく、耐傷性と後加工性とをより向上することができる。特に、ナノサイズの造核剤が、ベシクルで内包された造核剤(以下、「造核剤ベシクル」とも呼ぶ)の形で添加されていることが好ましい。これにより、ナノサイズの造核剤の分散性を向上でき、造核剤の凝集を抑制して均一に分散でき、透明性をより向上できる。造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等で調製できる。なかでも、造核剤の分散性の更なる向上を考慮すると、特に超臨界逆相蒸発法がより好ましい。
具体的には、超臨界二酸化炭素とリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入して攪拌することで、超臨界二酸化炭素と水相とのエマルジョンが生成する。その後、減圧すると二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤ナノ粒子の表面を単層膜で覆ったナノベシクルが生成する。この超臨界逆相蒸発法によれば、単層膜のベシクルを生成できるので、極めて小さいサイズのベシクルを得ることができる。
なお、超臨界逆相蒸発法のより詳しい内容については、本発明者等が過去に提案している、特表2002−032564号公報、特開2003−119120号公報、特開2005−298407号公報及び特開2008−063274号公報に開示されている。
なお、上記造核剤は、透明樹脂層3を形成する結晶性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲内で含有されていることが好ましい。造核剤の含有量が上記範囲内であれば、透明樹脂層3の透明性、耐傷性、後加工性がさらに高まる。
また、透明樹脂層3のTD方向、つまり、MD方向とは同一平面の垂直方向におけるラマン分光法で測定される透明樹脂層3の結晶部と非晶部のスペクトル強度比(以下、「第2強度比」とも呼ぶ)は0.9以上1.9以下の範囲内とする。そして、第1強度比と第2強度比との合計値を1.9以上3.6以下の範囲内とする。これにより、透明樹脂層3の結晶部と非結晶部とのそれぞれを適正な分量とし、透明樹脂層3の結晶部が多くなりすぎずまた少なくなりすぎず、適度な硬さを有するため、耐傷性及び後加工性の両方を向上できる。なお、合計値が1.9未満である場合には、非晶部が多すぎる、つまり十分に硬くないために、耐傷性が悪くなってしまう。また、合計値が3.6より大きい場合には、結晶部が多すぎる、つまり硬くなり過ぎてしまうために、後加工性が悪くなってしまう。
また、ポリプロピレン樹脂の結晶化は、製膜時の温度履歴に大きく依存するため、製膜時の温度履歴を制御することで、スペクトル強度比を上記範囲内に収めることができる。
スペクトル強度比を上記範囲内とするための温度履歴について、Tダイによる押出製膜法に基づく具体例を挙げる。Tダイより230℃で溶融したポリプロピレン樹脂を吐出する場合、Tダイ直下の冷却ロールの温度と溶融樹脂との接触による樹脂温度の冷却プロファイル勾配によって結晶化の度合いを制御することができる。冷却プロファイルは、冷却ロールと溶融樹脂の温度差が大きいほど急勾配となり、結晶化度は小さくなる。この場合、スペクトル強度比を上記範囲内とするための冷却ロール温度設定として、45℃〜80℃が好適となる。
表面保護層2は、化粧シート1の表面の保護や艶の調整のための層である。表面保護層2の材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系の材料を用いることができる。材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系のいずれであってもよい。また、硬化方法としては、例えば、一液タイプ、二液タイプ、紫外線硬化法等を用いることができる。
隠蔽層7は、隠蔽性を保たせるための層である。例えば、絵柄模様層5と同様に印刷によって形成される。インキに含ませる顔料としては、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また、隠蔽性を上げるために、例えば、金、銀、銅、アルミ等の金属を添加してもよい。一般的には、フレーク状のアルミを添加することが多い。なお、隠蔽層7は、基材層6が不透明で隠蔽性を有している場合には、省略することができる。
プライマー層8は、基材Bとの密着性を向上させるための層である。例えば、基材Bが木質系基材である場合には、プライマー層8を構成する樹脂として、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いることで、プライマー層8を形成することができる。樹脂を混合してなる接着組成物を用いる場合、アクリル系樹脂とウレタン系樹脂との共重合体とイソシアネートとからなる樹脂(ウレタン−アクリレート系樹脂)を用いるのが好ましい。
(1)このように、本実施形態の化粧シート1は、オレフィン系樹脂を含む透明樹脂層3を有する。そして、透明樹脂層3のMD方向におけるラマン分光法で測定される透明樹脂層3の結晶部と非結晶部とのスペクトル強度比である第1強度比が0.9以上2.0以下の範囲内である。また、透明樹脂層3のTD方向におけるラマン分光法で測定される透明樹脂層3の結晶部と非結晶部とのスペクトル強度比である第2強度比が0.9以上1.9以下の範囲内である。さらに、第1強度比と第2強度比との合計値が1.9以上3.6以下の範囲内である。これにより、耐傷性と後加工性とに優れた化粧シート1を提供できる。
(3)また、本実施形態の化粧シート1では、結晶性ポリプロピレン樹脂を、アイソタクチックペンタッド分率が95%以上である結晶性ポリプロピレン樹脂としたため、結晶性ポリプロピレン樹脂の立体規則性を向上でき、耐傷性や後加工性をより向上させることができる。
(5)また、本実施形態の化粧シート1では、透明樹脂層3を、オレフィン系樹脂にナノサイズの造核剤を添加して形成しているため、造核剤の添加によって生じる光の散乱を抑制でき、透明樹脂層3の透明性を損なうことなく、耐傷性と後加工性とをさらに向上させることができる。
(7)また、本実施形態の化粧シート1では、超臨界逆相蒸発法によって、ナノサイズの造核剤をベシクルに内包させているため、造核剤の分散性がより適切に向上する。
(9)また、本実施形態の化粧シート1の製造方法では、透明樹脂層3を、オレフィン系樹脂にナノサイズの造核剤を添加して形成するため、造核剤の添加によって生じる光の散乱を抑制でき、透明樹脂層3の透明性を損なうことなく、耐傷性と後加工性とをより向上させることができる。
(11)また、本実施形態の化粧シート1の製造方法では、超臨界逆相蒸発法によって、ナノサイズの造核剤をベシクル化するため、造核剤の分散性をより適切に向上させることができる。
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。
なお、以下の化粧シート1の層構成は、上記した実施形態の層構成と同様とする。
(実施例1)
実施例1では、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の結晶性ポリプロピレン樹脂(結晶性ホモポリプロピレン樹脂)100質量%からなる樹脂に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPMとを添加し、溶融押出機によって溶融・押出を行なうことで、透明樹脂層3を製膜した。透明樹脂層3(透明樹脂シート)の厚さは、80μmとした。
また、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシートを基材層6として用いた。基材層6の一方の面には、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、その2液型インキのバインダー樹脂分の全質量に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加して設けられたインキを用いて絵柄印刷を施して絵柄模様層5を形成した。絵柄模様層5の印刷方法としては、グラビア印刷方式を用いた。基材層6の他方の面には、隠蔽層7及びプライマー層8を形成した。
測定機器:HORIBA社製 LabRAM ARAMIS
測定条件:レーザー波長532nm、測定時間10秒、積算回数5回、顕微鏡倍率100倍
サンプル設置方法:レーザーの出射方向に対し、透明樹脂層3のMD方向やTD方向が一致するようにサンプルを設置
実施例2では、第1強度比を1.9、第2強度比を1.3、これらの強度比の和を3.2とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例3)
実施例3では、第1強度比を1.9、第2強度比を1.0、これらの強度比の和を2.9とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
実施例4では、第1強度比を1.4、第2強度比を1.8、これらの強度比の和を3.2とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例5)
実施例5では、第1強度比を1.4、第2強度比を1.4、これらの強度比の和を2.8とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
実施例6では、第1強度比を1.4、第2強度比を1.0、これらの強度比の和を2.4とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例7)
実施例7では、第1強度比を1.0、第2強度比を1.4、これらの強度比の和を2.4とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
実施例8では、第1強度比を1.0、第2強度比を1.0、これらの強度比の和を2.0とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例9)
実施例9では、第1強度比を1.9、第2強度比を1.3、これらの強度比の和を3.2とした。また、未処理の造核剤、つまり、ナノ化処理とベシクル化とのいずれも行われていない造核剤を含有している。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
実施例10では、透明樹脂層3は、透明樹脂層3の全質量に対して、結晶性ポリプロピレン樹脂を50質量%、ランダムポリプロピレン樹脂を50質量%含有するようにした。それ以外は実施例8と同様の構成とした。
(実施例11)
実施例11では、透明樹脂層3は、透明樹脂層3の全質量に対して、結晶性ポリプロピレン樹脂を90質量%、ランダムポリプロピレン樹脂を10質量%含有するようにした。また、結晶性ポリプロピレン樹脂に、ナノサイズの造核剤を含有するようにした。それ以外は実施例2と同様の構成とした。
実施例12では、ナノサイズの造核剤を、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して、ベシクルに内包させた。それ以外は実施例11と同様の構成とした。
ここで、超臨界逆相蒸発法によるベシクル化では、まず、メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−11、ADEKA社製)82質量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100質量部注入した。容器内の温度及び圧力を超臨界状態に保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによってリン脂質からなる単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤を内包した、ベシクル化した造核剤(造核剤リポソーム)を得た。
実施例13では、第1強度比を1.8、第2強度比を1.1、これらの強度比の和を2.9とした。また、透明樹脂層3は、透明樹脂層3の全質量に対して、結晶性ポリプロピレン樹脂を40質量%(<50質量%)、ランダムポリプロピレン樹脂を60質量%含有するようにした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例14)
実施例14では、第1強度比を1.3、第2強度比を1.2、これらの強度比の和を2.5とした。また、透明樹脂層3は、アイソタクチックペンタッド分率が92%(<95%)になるようにした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
比較例1では、第1強度比を2.1、第2強度比を2.0、これらの強度比の和を4.1(>3.6)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例2)
比較例2では、第1強度比を2.1、第2強度比を1.7、これらの強度比の和を3.8(>3.6)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
比較例3では、第1強度比を1.9、第2強度比を1.9、これらの強度比の和を3.8(>3.6)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例4)
比較例4では、第1強度比を0.9、第2強度比を0.9、これらの強度比の和を1.8(<1.9)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例5)
比較例5では、第1強度比を0.9、第2強度比を0.8、これらの強度比の和を1.7(<1.9)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
比較例6では、第1強度比を0.8、第2強度比を0.7、これらの強度比の和を1.5(<1.9)とした。また、透明樹脂層3は、透明樹脂層3の全質量に対して、結晶性ポリプロピレン樹脂を40質量%(<50質量%)、ランダムポリプロピレン樹脂を60質量%含有するようにした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
比較例7では、第1強度比を1.2、第2強度比を2.3、これらの強度比の和を3.5とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例8)
比較例8では、第1強度比を2.4、第2強度比を1.1、これらの強度比の和を3.5とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
実施例1〜14及び比較例1〜8で得られた化粧シート1を、ウレタン系の接着剤を用いて木質系の基材Bに貼り合わせた後、耐傷性と後加工性との評価を行った。
各評価試験の試験方法を簡単に説明する。
耐傷性は、JIS−K5600に準拠し、鉛筆硬度試験を用いて評価した。そして、透明樹脂層3の表面に凹みが付かない最高硬度がHB以上の場合を「◎」、2B以上の場合を「○」、3B以上の場合を「△」、3B未満の場合を「×」とした。なお、本耐傷性試験における合格基準は、3B以上である。
後加工性は、V溝曲げ加工適性試験を用いて評価した。具体的には、まず、基材Bを構成する中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法で作製した各化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材Bの他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基材Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基材Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂等が生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、後加工性の優劣の評価を行った。そして、白化・亀裂等が認められなかった場合を「◎」、白化・亀裂等が認められたが容認できる場合を「○」、化粧シートとして容認できない白化・亀裂等が認められた場合を「×」とした。
これは、実施例1〜14の化粧シート1については、第1強度比を0.9以上2.0以下の範囲内、第2強度比を0.9以上1.9以下の範囲内、第1強度比と第2強度比との合計値を1.9以上3.6以下の範囲内とすることで、透明樹脂層3の結晶部と非結晶部とを適正量とし、透明樹脂層3が適切な硬度となっているため、耐傷性及び後加工性が良好になったと考えられる。
なお、実施例13の化粧シート1については、透明樹脂層3のランダムポリプロピレン樹脂の比率が高く、十分に硬くなっていないため、ランダムポリプロピレン樹脂の比率が高い場合に比べて耐傷性が劣るものとなったと考えられる。
また、実施例14の化粧シート1については、透明樹脂層3のアイソタクチックペンタッド分率が低く、十分に硬くなっていないため、アイソタクチックペンタッド分率が高い場合に比べて耐傷性が劣るものになったと考えられる。
また、比較例7、8の化粧シート1については、MD方向又はTD方向に大きく配向しているため、耐傷性は良好となるが、硬くなり過ぎたため、後加工性に劣るものになったと考えられる。
以上の評価結果から、実施例1〜14に示す本発明の化粧シート1は、耐傷性と後加工性とに優れた化粧シート1であることが明らかとなった。
2 表面保護層
3 透明樹脂層
4 接着剤層
5 絵柄模様層
6 基材層
7 隠蔽層
8 プライマー層
B 基材
Claims (15)
- オレフィン系樹脂を含む透明樹脂層を有する化粧シートであって、
前記透明樹脂層のMD方向におけるラマン分光法で測定される前記透明樹脂層の結晶部と非結晶部とのスペクトル強度比である第1強度比が0.9以上2.0以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層のTD方向におけるラマン分光法で測定される前記透明樹脂層の結晶部と非結晶部とのスペクトル強度比である第2強度比が0.9以上1.9以下の範囲内であり、
前記第1強度比と前記第2強度比との合計値が1.9以上3.6以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層は、前記オレフィン系樹脂100質量部のうち、結晶性ポリプロピレン樹脂の含有率が40質量%以上90質量%以下の範囲内であり、ランダムポリプロピレン樹脂の含有率が10質量%以上60質量%以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。 - 前記透明樹脂層は、前記オレフィン系樹脂100質量部のうち、結晶性ポリプロピレン樹脂の含有率が40質量%以上50質量%以下の範囲内であり、ランダムポリプロピレン樹脂の含有率が50質量%以上60質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
- 前記結晶性ポリプロピレン樹脂は、アイソタクチックペンタッド分率が95%以上である結晶性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
- 前記透明樹脂層は、ナノサイズの造核剤を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。
- 前記透明樹脂層を、前記オレフィン系樹脂にナノサイズの造核剤を添加して形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。
- 前記ナノサイズの造核剤は、ベシクルに内包されていることを特徴とする請求項4または5に記載の化粧シート。
- 超臨界逆相蒸発法によって、前記ナノサイズの造核剤をベシクルに内包させたことを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
- 前記透明樹脂層は、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して、前記ナノサイズの造核剤を0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の化粧シート。
- 前記透明樹脂層上に形成された表面保護層をさらに備え、
前記透明樹脂層及び前記表面保護層は、造核剤を含まないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。 - 前記第1強度比の値は、前記第2強度比の値よりも大きいことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧シート。
- 前記第1強度比の値は、前記第2強度比の値よりも小さいことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧シート。
- 前記第1強度比の値は、前記第2強度比の値と同じであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の化粧シート。
- 請求項1から12のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法であって、
前記透明樹脂層を、前記オレフィン系樹脂にナノサイズの造核剤を添加して形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。 - 前記オレフィン系樹脂に前記ナノサイズの造核剤をベシクルに内包させた状態で添加することを特徴とする請求項13に記載の化粧シートの製造方法。
- 超臨界逆相蒸発法によって、前記ナノサイズの造核剤をベシクル化することを特徴とする請求項13または14に記載の化粧シートの製造方法。
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