JP2020075420A - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、印刷加工時の伸びを抑制し、曲げ白化や割れの発生を低減することが可能であり、且つ耐傷性に優れた化粧シート及びその化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本実施形態の化粧シート1は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合して形成された着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を有する。また、基材層2はナノサイズの造核剤を含有している。また、基材層2は、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下である。また、基材層2の厚さは、50μm以上150μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、建築物の外装及び内装用の建装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シート及びその製造方法に関する。
近年、特許文献1に示す通り、環境保護上の問題が懸念されているポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シート(例えば、ポリプロピレンシート)が数多く提案されている。これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生は抑制される。しかし、一般的にポリプロピレンシートは、弾性率が低いために耐傷性に劣ることや、印刷などのシート作成時などにおいてシートに張力を掛けたときに伸び易いなどの課題があった。
ところで化粧シートを、木質基板、金属基板、不燃基板などの基板表面に貼り付けることで化粧板となり、化粧シートは化粧板に対し目的に応じた意匠性を付与する。従って、化粧シートは、必要に応じて基板の表面が完全に見えなくなるように覆い隠す必要がある。この場合、少なくとも顔料によって着色され、隠蔽性が付与された化粧シートを用いる必要がある。そして、最も単純な化粧シートの構成としては、着色されたシート単体(単層)からなる基材層だけの構成と言うこととなる。このような基材層だけからなる化粧シートの場合、通常は、付与できる意匠が柄の無い単色に限定されてしまうが、例えば顔料としてアルミフレークやパール顔料等の光輝材を添加することで光輝感を付与することはできるため、必要十分な意匠表現は可能である。また、更なる高意匠を付与したい場合は、基材層の表面に印刷などの加飾を施すことも有効である。
一方、前述のように、着色ポリプロピレンフィルムは弾性率が低いため、単層の化粧シートとして用いる場合、耐傷性や、印刷などの加工時に張力を掛けても伸びないようにする必要がある。張力付与時の伸びについては、従来の着色ポリプロピレンフィルムにあっては層厚を50μm程度以上に厚くすることで改善が可能である。また、耐傷性については、従来の着色ポリプロピレンフィルムにあっては、特許文献2や特許文献3のように、ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層や、ポリオールとイソシアネートからなるウレタン系熱硬化樹脂を用いたトップコート層を設けることで改善が可能である。
また、特許文献2や特許文献3のように、着色ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン樹脂を最適に選択することで、耐傷性や印刷加工時の伸びについて改善を図ることが可能である。しかし、結晶性を高めることによって弾性率が向上する一方、破断応力が弾性率相応に上昇しないため、フィルム自体が破け易くなってしまい、印刷加工時に破断などの不具合が発生し易くなってしまう。更に、化粧シートとしての後加工、特にVカットなどの曲げ加工時においては、曲げ箇所の割れや白化といった不具合が生じ易くなる。
特許第3271022号公報 特許第3861472号公報 特許第3772634号公報
従来にあっては、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シートに対し、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が求められている。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、耐傷性を向上させ、印刷加工時の伸びを抑制し、曲げ白化や割れの発生を低減することが可能な、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シート、あるいはそれらの化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を、例えば、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包させてベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、更に、製造プロセスを種々検討及び実験を重ね、結晶化度を最適な範囲とすることで、上記課題を改善した化粧シート及びその製造方法を提供できることを見出した。
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る化粧シートは、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層を有し、上記基材層はナノサイズの造核剤を含有し、上記基材層の厚さは50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下であることを要旨とする。なお、本発明の一態様に係る化粧シートにおいて、造核剤は、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。
ここで、造核剤ベシクルとは、単層膜の外膜を具備するカプセル状のベシクルに造核剤が内包された構成となっており、例えば超臨界逆相蒸発法によって調製することができる。また、造核剤とは結晶性ポリプロピレン樹脂中において結晶化の起点となる物質である。
本発明の一態様によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を、例えば、ベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、フーリエ型赤外分光測定において得られるピーク強度比の値及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)、耐傷性及び曲げ加工性を備えることが可能な化粧シートを提供できる。
本発明に係る実施形態の化粧シートを示す断面図である。 本発明に基づく実施形態に係る他の化粧シートを示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
「構成」
図1に示す実施形態の化粧シート1は、基材層2(原反層)だけの単層構造の場合の例である。本実施形態の基材層2は、着色ポリプロピレンフィルムから構成される。着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2は、ポリプロピレン樹脂に着色のために無機顔料が混合していると共に、ナノサイズの造核剤を含有する。なお、本実施形態では、造核剤は、例えば、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有してもよい。
その基材層2の厚さが50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xが、0.7以上0.9以下となっている。基材層2を構成するポリプロピレン樹脂は、その50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤の添加量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
また、造核剤ベシクルを用いる場合には、造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
必要に応じて、基材層2の一方の面に絵柄層3を形成(積層)して、意匠性を向上させてもよい。また、化粧シート1は、基材層2の一方の面側に、透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層が積層していてもよい、図2に例示した化粧シート1は、化粧シート1の一方の面に、絵柄層3、透明樹脂層4及びトップコート層5がこの順に積層した例である。透明樹脂層4又はトップコート層5の一方が省略されていてもよい。また、絵柄層3を省略してもよい。
ここで、透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層には、意匠性の要求によっては、エンボスによる凹凸模様(エンボス模様4a)を付与してもよい。エンボス模様4aには、インキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。また、絵柄層3と透明樹脂層4の密着性に問題があれば接着性樹脂層4bを適宜設けても構わない。接着性樹脂層4bを設ける場合、透明樹脂層4と接着性樹脂層4bとの共押出法で形成する。接着性樹脂層4bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したものとする。接着性樹脂層4bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。更に、耐傷性などの要求から、透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層を複数層積層することも可能であり、その他、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
図1及び図2中、符号Bは、基板を表している。基板Bは、化粧シート1が貼り合わせられる基板である。基板Bとしては、特に限定は無いが、例えば、木質ボード類、無機系ボード類、金属板、複数の材料からなる複合板などが例示できる。化粧シート1と基板Bとの間に、適宜、プライマー層6や隠蔽層(不図示)などを設けてもよい。
本実施形態の化粧シート1の引張弾性率、特に基材層2単体の引張弾性率の範囲が、850MPa以上1600MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が850MPa未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制することができないおそれがある。引張弾性率が1600MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤(例えば、造核剤ベシクル)を用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
次に、化粧シート1を構成する各層について説明する。
<基材層2>
基材層2は、着色ポリプロピレンフィルムからなる。着色ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主原料とし、そのポリプロピレン樹脂に無機顔料が混合されて着色されている。更に、基材層2に、結晶性を上げるためにナノサイズの造核剤が添加されている。本実施形態では、ナノサイズの造核剤が、造核剤ベシクルの状態で添加されていてもよい。
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂は、後述する高結晶性ホモポリプロピレンを用いることが好ましいが、高結晶性ホモポリプロピレンに限定されない。曲げ加工などの加工性をより重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレンに対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2のフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を、0.7以上0.9以下に調整する。ピーク強度比xが0.7未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制できず、実用上必要な耐傷性を確保することも困難となる可能性が高い。一方、ピーク強度比xが0.9を超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤ベシクルを用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
ここで、フーリエ型赤外分光測定に関して説明する。まず、赤外分光測定とは、2.5μm〜25μmの波長の光である赤外光が、物質の分子の振動や回転運動に基づいて、当該物質に吸収される量に変化が生じるという原理を利用して、当該物質に吸収された赤外光を測定することにより、物質の化学構造や状態に関する情報を得る測定方法である。具体的な測定方法は、物質に対して光源から赤外光を照射し、分割された透過光と反射光とを合成することで干渉波を発生させて、当該干渉波の信号強度から各波数成分の光の強度を算出することにより赤外スペクトルを測定する。特に、本実施形態においては、当該干渉波の算出をフーリエ変換法を用いて行い、赤外スペクトルを測定する方式であるフーリエ型赤外分光測定により測定を行った。上記方法によって得られた波数を横軸、測定された吸光度(または透過率)を縦軸にプロットしたグラフを赤外吸光スペクトル(または赤外透過スペクトル)といい、物質ごとに固有のパターンが認められる。この時、縦軸の吸光度は、物質の濃度や厚み、結晶性物質の場合には結晶質部または非晶質部の量に比例して所定の波数におけるピーク強度の値が変化するため、当該ピークの高さや面積から定量分析を行うことも可能である。
本実施形態においては、赤外吸光スペクトルの上述のような特性を利用して、前述の測定によって得られた吸光スペクトルにおける着色ポリプロピレンフィルムの結晶質部の吸光度に該当する波数997cm−1のピーク強度と、フィルムの非晶質部の吸光度に該当する波数973cm−1のピーク強度との比、すなわちポリプロピレンの結晶化度を表すピーク強度比xを下記の式を用いて算出し、当該ピーク強度比xと着色ポリプロピレンフィルムの剛性との関係を明らかとし、所定の範囲内のピーク強度比xの着色ポリプロピレンフィルムを基材層に採用した剛性に優れる化粧シートを提供するものである。なお、波数997cm−1のピーク強度と波数973cm−1のピーク強度とは、それぞれ波数938cm−1のピーク強度を用いてバックグラウンド補正を行っている。
Figure 2020075420
また、着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2の厚さは、50μm以上150μm以下であることが重要である。
基材層2の厚さが50μm未満の場合、ピーク強度比xを最適な範囲にしてもフィルム強度が不足してしまうため、印刷加工時の不具合や耐傷性の悪化を抑制することが困難である。一方、基材層2の厚さが150μmを超える場合、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂として、結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。特に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を全ポリプロピレン樹脂の質量に対して50質量%以上100質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂の結晶化温度は、一般的に100〜130℃の範囲内とされており、造核剤を添加すると110〜140℃の範囲内とされる。本実施形態の化粧シート1における着色ポリプロピレンフィルムにおいては、この範囲内にある結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を、公知の冷却プロセスによる制御で行うことによって、ピーク強度比xの値を0.7以上0.9以下に調整している。また、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%未満のポリプロピレン樹脂を用いた場合、結晶性が不足するため、冷却プロセスをコントロールしてもピーク強度比xが好適な範囲よりも低くなってしまうことがある。また、高結晶性ホモポリプロピレン樹脂が50質量%未満の場合も同様に、結晶性が不足するため、冷却プロセスをコントロールしてもピーク強度比xが好適な範囲よりも低くなってしまうことがある。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量13の炭素C(核種)を用いた13C−NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。そして、結晶性ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C−NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。ペンタッド分率は、主に表面の耐擦傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはペンタッド分率が高いほど結晶化度が高いことを表す。
(無機顔料)
無機顔料は、隠蔽性を付与するための酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることができる。着色用の無機顔料としては、例えば、鉄−亜鉛、クロム−アンチモン、鉄−アルミなどの複合酸化物、酸化鉄などが挙げられるが、これらは所望の色によって自由に配合を調整されるものである。また、無機顔料として、例えば、アルミフレークやパール顔料といった光輝材も添加することができる。また、例えば、カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
更に、分散性の向上や、押出適性を改善するために脂肪酸金属塩などの添加剤を加えても構わない。
(造核剤ベシクル)
また、基材層2はナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、例えば、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されてもよい。基材層2は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、基材層2の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。なお、本実施形態において、基材層2を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まるので、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の着色ポリプロピレンフィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した着色ポリプロピレンフィルムを実現することができる。
ここで、造核剤を単純添加した場合は、ポリプロピレン樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなると共に添加した造核剤量に対して結晶核の数が、造核剤ベシクルとして添加した場合よりも少なくなってしまうことがある。このため、ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が大きくなってしまい、造核剤ベシクルとして添加した場合と比較して、曲げ加工時の割れや白化が抑制しにくくなる傾向がある。よって、造核剤を単純添加した場合には、造核剤ベシクルとして添加した場合と比較して、結晶化度を高めることによる弾性率向上と加工性が両立しにくくなる傾向がある。
本実施形態の化粧シート1を構成する、着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下、好ましくは、0.05質量部以上0.3質量部以下の造核剤(造核剤ベシクル)が添加されていることが好ましい。造核剤(造核剤ベシクル)の添加量が0.01質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、0.5質量部を超える添加量の場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート1においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、基材層2の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
上述のように、本実施形態の化粧シート1の特徴(発明特定事項)の一つは、「基材層2が、ベシクルに内包された造核剤を含有する」ことにある。そして、造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち基材層2中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シート1の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シート1の状態においても、造核剤は基材層2に高分散されている。しかしながら、基材層2を構成する樹脂組成物に造核剤をベシクルの状態で添加して基材層2を作製した後の、化粧シート1の作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シート1の処理工程によってばらつくためである。そして、この造核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して、基材層2に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート1の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
ここで、上記構成の造核剤ベシクルが、透明樹脂層4やトップコート層5にも含有させていてもよい。
(絵柄層3)
着色ポリプロピレンフィルム(基材層2)の表面には、化粧シート1に柄模様を付加するための絵柄層3を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
更に、基材層2と絵柄層3との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層(不図示)を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層は、基材層2の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層3は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層3と下地ベタインキ層とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
下地ベタインキ層及び絵柄層3の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液型ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
また、下地ベタインキ層及び絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層及び絵柄層3は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、基材層2の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
(透明樹脂層4)
透明樹脂層4の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂からなることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4、4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、基材層2と同様に高結晶性のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
ここで、本明細書で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
透明樹脂層4を設ける場合、透明樹脂層4の層厚は50μm以上100μm以下が好ましい。50μm未満の場合、透明樹脂層4表面の耐傷性の向上効果が低く、透明樹脂層4を設ける意義が少なくなってしまうことがある。100μmを超える場合、化粧シート1の剛性が高すぎて、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
もっとも、透明樹脂層4の上にトップコート層5を設ける場合には、透明樹脂層4の層厚は50μm未満としてもよい。
なお、透明樹脂層4を構成する樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
(トップコート層5)
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層4の表面にトップコート層5を設けることができる。
トップコート層5の主成分の樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
トップコート層5の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
トップコート層5には艶調整のために艶調整剤を添加することができる。艶調整剤は市販されている公知の物を用いればよい。例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。又は、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
また、トップコート層5に各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。
トップコート層5の層厚は3μm以上15μm以下が好ましい。3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層5を設ける意義が少なくなってしまうことがある。15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生するおそれがある。
<製造方法>
化粧シート1の製造例について説明する。
ベシクルに造核剤を内包させて当該造核剤をベシクル化してなる造核剤ベシクルを作製し、作製した造核剤ベシクルを、無機顔料と共にポリプロピレン樹脂に添加して基材層用の樹脂材料を作製する。
造核剤ベシクルは、例えば、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに上記造核剤を内包させてベシクル化することで作製する。
使用するポリプロピレン樹脂は、その50質量%以上100質量%以下に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
上記の基材層用の樹脂材料を加熱溶融し、押し出し成形などによって、厚さが50μm以上150μm以下のシート状に成形して基材層2とする。
このとき、結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を公知の調整方法で調整することで、基材層2のフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を、0.7以上0.9以下に制御する。
更に、必要に応じて、基材層2の上面に絵柄層3を印刷によって形成し、その上に透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層を印刷によって形成する。
なお、上記製造方法では、造核剤ベシクルを用いて基材層2を製造する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記造核剤ベシクルを、ベシクルで内包されていない、ナノサイズの造核剤に代えて、基材層2を製造してもよい。
<作用その他>
(1)本実施形態の化粧シート1は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を有し、基材層2はナノサイズの造核剤を含有し、基材層2の厚さは50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下である。また、基材層2の引張弾性率が850MPa以上1600MPa以下である。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を添加し、更にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値、及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な化粧シート1を提供することが出来る。
(2)本実施形態の化粧シート1は、基材層2を構成するポリプロピレン樹脂の50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなることが好ましい。
この構成によれば、より確実にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を0.7以上0.9以下に調整可能となる。
(3)本実施形態の化粧シート1は、基材層2への造核剤の添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し0.05質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
この構成によれば、基材層2を構成する着色ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、確実に必要な引張弾性率の850MPa以上1600MPa以下を確保できるようになる。
(4)本実施形態の化粧シート1は、造核剤が、単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤が内包されている造核剤ベシクルであることが好ましい。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、更にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値、及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な化粧シート1を提供することが出来る。
(5)本実施形態の化粧シート1は、造核剤ベシクルを、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内になるように添加して形成することが好ましい。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、更にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値、及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な化粧シート1を提供することが出来る。
(6)本実施形態の化粧シート1は、基材層2への造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。
この構成によれば、基材層2を構成する着色ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、確実に必要な引張弾性率の850MPa以上1600MPa以下を確保できるようになる。
(7)本実施形態の化粧シート1は、造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
この構成によれば、基材層2の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
(8)本実施形態の化粧シート1は、基材層2の一方の面に絵柄層3を積層されていることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート1の意匠性を向上させることが出来る。
(9)本実施形態の化粧シート1は、基材層2の一方の面側に、透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層が積層していることが好ましい。
[実施例]
以下に、本実施形態の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
(造核剤ベシクルの製造方法)
まず、本実施例において用いた造核剤リポソームの製造方法を説明する。
造核剤リポソームは、前述の超臨界逆相蒸発法を用いて、メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−21;ADEKA社製)70質量部、ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100質量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながら更に15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことでリン脂質からなる単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤を内包する造核剤ベシクルを得た。
(実施例1)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂78質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.01質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
(実施例2)
上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(実施例3)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂39質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂39部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.01質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
(実施例4)
上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(実施例5)
実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例6)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例7)
実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例8)
実施例4と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例9)
実施例1と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2の表面に絵柄印刷を施して絵柄層3を形成した。絵柄層3は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、基材層2の裏面にプライマー層6を形成した。プライマー層6は絵柄層3と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。
続いて、結晶性ポリプロピレン樹脂(ペンタッド分率 97.8%、分子量分布 2.3、MFR 18g/10min)100質量部に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部を混合した混合物と、ポリエチレン系の易接着性樹脂とを溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ60μmの透明樹脂層4と厚さ10μmの接着性樹脂層4bとを製膜した。次に、絵柄層3を形成した基材の表面にドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学株式会社製;塗布量2g/m)を塗布した。続いて、製膜した接着性樹脂層4bを介して、接着剤を塗布した基材の絵柄層3面と透明樹脂層4とを押出ラミネート法により貼り合せた。さらに、貼り合わせて形成したシートの透明樹脂層4側の面に、エンボス形成用の金型ロールを用いてプレスをしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(DICグラフィックス社製「W184」)を塗布量3g/mで塗布して、トップコート層5を形成した。こうして、図2に示す化粧シート1を得た。
(実施例10)
実施例2と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例11)
実施例3と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例12)
実施例4と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例13)
実施例5と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例14)
実施例6と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例15)
実施例7と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例16)
実施例8と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例17)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例7と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例18)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例8と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例19)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例20)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例6と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例1)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例2)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例3)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していな造核剤を用いた以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例4)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例4と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例5)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例6)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例6と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例7)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例7と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例8)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例8と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例9)
比較例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ155μmの基材層2を製膜した。その後、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(比較例10)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ155μmの基材層2を製膜した。その後、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(比較例11)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ45μmの基材層2を製膜した。
(比較例12)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂31.2質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂46.8部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
(比較例13)
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂39質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂39部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム−アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として1.0質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
(評価)
以上の実施例1〜20、比較例1〜13について、フーリエ型赤外分光測定、引張弾性率の測定、印刷加工時における不具合(印刷加工適性)、耐傷性、曲げ加工適性及びラッピング加工平滑性(ラッピング加工時の表面均一性)の評価を行った。
<フーリエ型赤外分光測定>
フーリエ型赤外分光測定は、パーキンエルマー製フーリエ型赤外分光測定装置(Spectrum Spotlight 400)を用い、4000cm−1から700cm−1の吸光スペクトルを得た。得られた吸光スペクトルから波数997cm−1、973cm−1、938cm−1のピーク強度比を抜き出し、下記式によりピーク強度比xを算出した。
Figure 2020075420
<引張弾性率>
引張弾性率の測定は、(株)島津製作所製オートグラフ(AGS−500NX)を用い、引張速度を50mm/minとして引張試験を実施し、引張弾性率を算出した。
<印刷加工時の不具合(印刷加工適性)>
絵柄層3をグラビア印刷機を用いてグラビア印刷により形成し、その際、基材層2が張力により伸びて、各色の積層時に見当がずれる不具合を印刷不具合として評価した。
全く見当調整不要な場合を「◎」、自動見当調整により簡便に調整可能な場合は「○」、見当調整に注意を要する場合は「△」、見当調整が不可能で印刷継続が不可能な場合を「×」とした。また、印刷中のフィルムが高い頻度で破断し、量産性に問題がある場合も「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば印刷加工としては問題ない。
<耐傷性>
耐傷性については、鉛筆硬度試験を実施して評価した。鉛筆硬度試験においては、3Bの鉛筆を用い、化粧シート10に対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に750kgの荷重を付加した状態でスライドさせて化粧シート10の表面状態を観察した(旧JIS規格 JISK5400に準拠)。試験は5回実施し、鉛筆の傷、跡について評価を行った。
全く傷や跡の見られない場合を「◎」、僅かに鉛筆の跡が見える場合を「○」、鉛筆の跡が見える場合を「△」、鉛筆の傷や着色ポリプロピレンフィルムの破れが見える場合を「×」とした。
なお、「○」以上の評価であれば、実用上の問題はない。また、「△」以上の評価であれば、例えば家具や人の触れない高い位置の垂直面などの用途に限定されるものの、問題は発生しない。「○」以上の評価であることが好ましい。
<曲げ加工適性>
曲げ加工適性試験においては、基材層2として中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法により得られた実施例1〜20及び比較例1〜13の各化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材層2の他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基材層2と化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基材層2を当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、曲げ加工性の状態について評価を行った。
白化や亀裂などが全く見られない場合を「◎」、一部に僅かに白化が見える場合を「○」、一部に白化が見える場合を「△」、全面に白化が見えるか一部に亀裂が見える場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
<ラッピング加工時の表面均一性>
ラッピング加工時の表面均一性試験においては、基材層2として中質繊維板(MDF)2枚の間に板材もしくはパーティクルボードを3枚〜5枚貼り合わせた角材を用い、上記の方法により得られた実施例1〜20及び比較例1〜13の各化粧シート1をホットメルト接着剤を用いて、ラッピング加工により貼り付け、化粧板を得た。続いて、板材の端部に化粧シート1が貼り合わされた面を観察し、板材の凹凸や板材の貼り合せ部の段差などを起因とする表面凹凸があるか、目視にて観察を行った。さらに、得られた化粧板を温度80℃、湿度85%の環境下に1000時間放置し、同箇所の表面凹凸や、化粧シート1の剥がれについて確認した。
初期および1000時間後も凹凸や段差が全く見えずに平滑な場合を「◎」、僅かに表面が荒れて見える場合を「○」、一部において凹凸や段差が見える場合を「△」、全面に凹凸や段差が見えたり、1000時間後に化粧シート10の剥がれが見られた場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば実用上問題ないが、「○」以上の評価であることが好ましい。
これらの評価結果を表1に示す。
Figure 2020075420
表1から分かるように、実施例1〜8、17〜20の化粧シート1では、印刷加工時の不具合及び強度について実用に耐えうる状況を確保しつつ、曲げ加工についても両立ができていることがわかる。更に、実施例9〜16の化粧シート1は、実施例1〜9に絵柄層3、透明樹脂層4及びトップコート層5を積層し、高意匠と高耐傷性を両立しながら、曲げ加工について両立できていることが分かる。
一方、比較例1〜9の化粧シート1では、ベシクル化されていないマイクロサイズの造核剤を用いたため、結晶化度の向上による強度向上が十分ではなく、特に膜厚が薄い場合と高結晶性ホモポリプロピレン樹脂の配合割合が低い場合に印刷加工時の不具合が発生している。また、印刷加工時の不具合がなかった場合でも、化粧シート1に求められる強度が不足していたり、曲げ加工時に不具合が生じているものがある。これらはベシクル化した造核剤と比較し、結晶化度を向上させる能力が低いことと、球晶サイズが比較して大きくなってしまったことが原因と考えられる。
また、比較例10〜13の化粧シート1では、基材層2の膜厚及びピーク強度xの少なくとも一方が本出願の数値範囲を超えたものであるが、その評価結果についていずれかが問題ある結果となっていることが分かる。
ここで比較例11では、自動見当調整は可能であったものの、印刷中のフィルムが高い頻度で破断してしまい、製品を作ることができなかった。これは、ピーク強度x及び引張弾性率は十分だったものの、厚さが薄すぎたため、印刷中の張力変動にフィルムが耐えられず、破断する頻度が高まってしまったものと考えられる。
以上から、実施例1〜20の化粧シート1は、印刷加工時の不具合(印刷加工適性)、耐傷性、曲げ加工適性の全てを両立した化粧シート1であることが明らかとなった。さらに、実施例1〜20の化粧シート1は、ラッピング加工平滑性も備えていることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
1…化粧シート、2…基材層、3…絵柄層、4…透明樹脂層、4a…エンボス模様、4b…接着性樹脂層、5…トップコート層、6…プライマー層、B…基板

Claims (14)

  1. 無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層を有し、上記基材層はナノサイズの造核剤を含有し、上記基材層の厚さが50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから下記の数式1を用いて算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下であることを特徴とする化粧シート。
    ここで、下記式において、I997は波数997cm−1のピーク強度値、I938は波数938cm−1のピーク強度値、I973は波数973cm−1のピーク強度値を示す。
    Figure 2020075420
  2. 引張弾性率が850MPa以上1600MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
  3. 上記ポリプロピレン樹脂の50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
  4. 上記ナノサイズの造核剤の添加量が、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
  5. 上記造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤が内包されている造核剤ベシクルであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載した化粧シート。
  6. 上記造核剤ベシクルを、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、上記造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内で添加することを特徴とする請求項5に記載した化粧シート。
  7. 上記造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した化粧シート。
  8. 超臨界逆相蒸発法によって、上記造核剤を上記ベシクルに内包させたことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載した化粧シート。
  9. 上記造核剤ベシクルの添加量が、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載した化粧シート。
  10. 上記基材層の一方の面に絵柄層が積層されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載した化粧シート。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法であって、
    無機顔料を混合したポリプロピレン樹脂にナノサイズの造核剤を添加した樹脂材料から、引張弾性率が850MPa以上1600MPa以下であり、厚さが50μm以上150μm以下の上記基材層を作製することを特徴とする化粧シートの製造方法。
  12. 上記基材層を製造する際に、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を、0.7以上0.9以下に制御することを特徴とする請求項11に記載した化粧シートの製造方法。
  13. 上記基材層を製造する際に、当該基材層の引張弾性率を850MPa以上1600MPa以下に制御することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載した化粧シートの製造方法。
  14. 超臨界逆相蒸発法によって、上記造核剤をベシクルに内包させたことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
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