JP7298137B2 - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、耐傷性を向上させ、印刷加工時の伸びを抑制し、曲げ白化や割れの発生を低減することが可能な、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シート、あるいはそれらの化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る化粧シートは、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層を有し、上記基材層はナノサイズの造核剤を含有し、上記基材層の厚さは50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下であることを要旨とする。なお、本発明の一態様に係る化粧シートにおいて、造核剤は、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。
ここで、造核剤ベシクルとは、単層膜の外膜を具備するカプセル状のベシクルに造核剤が内包された構成となっており、例えば超臨界逆相蒸発法によって調製することができる。また、造核剤とは結晶性ポリプロピレン樹脂中において結晶化の起点となる物質である。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
図1に示す実施形態の化粧シート1は、基材層2(原反層)だけの単層構造の場合の例である。本実施形態の基材層2は、着色ポリプロピレンフィルムから構成される。着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2は、ポリプロピレン樹脂に着色のために無機顔料が混合していると共に、ナノサイズの造核剤を含有する。なお、本実施形態では、造核剤は、例えば、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有してもよい。
また、造核剤ベシクルを用いる場合には、造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましい。造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
本実施形態の化粧シート1の引張弾性率、特に基材層2単体の引張弾性率の範囲が、850MPa以上1600MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が850MPa未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制することができないおそれがある。引張弾性率が1600MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤(例えば、造核剤ベシクル)を用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
<基材層2>
基材層2は、着色ポリプロピレンフィルムからなる。着色ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主原料とし、そのポリプロピレン樹脂に無機顔料が混合されて着色されている。更に、基材層2に、結晶性を上げるためにナノサイズの造核剤が添加されている。本実施形態では、ナノサイズの造核剤が、造核剤ベシクルの状態で添加されていてもよい。
ポリプロピレン樹脂は、後述する高結晶性ホモポリプロピレンを用いることが好ましいが、高結晶性ホモポリプロピレンに限定されない。曲げ加工などの加工性をより重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレンに対し、例えば、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することができる。
基材層2の厚さが50μm未満の場合、ピーク強度比xを最適な範囲にしてもフィルム強度が不足してしまうため、印刷加工時の不具合や耐傷性の悪化を抑制することが困難である。一方、基材層2の厚さが150μmを超える場合、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
本実施形態においては、ポリプロピレン樹脂として、結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。特に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上のプロピレン単重合体である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を全ポリプロピレン樹脂の質量に対して50質量%以上100質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
無機顔料は、隠蔽性を付与するための酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることができる。着色用の無機顔料としては、例えば、鉄-亜鉛、クロム-アンチモン、鉄-アルミなどの複合酸化物、酸化鉄などが挙げられるが、これらは所望の色によって自由に配合を調整されるものである。また、無機顔料として、例えば、アルミフレークやパール顔料といった光輝材も添加することができる。また、例えば、カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
更に、分散性の向上や、押出適性を改善するために脂肪酸金属塩などの添加剤を加えても構わない。
また、基材層2はナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、例えば、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されてもよい。基材層2は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、基材層2の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。なお、本実施形態において、基材層2を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ここで、上記構成の造核剤ベシクルが、透明樹脂層4やトップコート層5にも含有させていてもよい。
着色ポリプロピレンフィルム(基材層2)の表面には、化粧シート1に柄模様を付加するための絵柄層3を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
更に、基材層2と絵柄層3との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層(不図示)を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層は、基材層2の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層3は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層3と下地ベタインキ層とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
ここで、下地ベタインキ層及び絵柄層3は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、基材層2の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
透明樹脂層4の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂からなることが好適であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、基材層2と同様に高結晶性のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
ここで、本明細書で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
もっとも、透明樹脂層4の上にトップコート層5を設ける場合には、透明樹脂層4の層厚は50μm未満としてもよい。
なお、透明樹脂層4を構成する樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層4の表面にトップコート層5を設けることができる。
トップコート層5の主成分の樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
トップコート層5の層厚は3μm以上15μm以下が好ましい。3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層5を設ける意義が少なくなってしまうことがある。15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生するおそれがある。
化粧シート1の製造例について説明する。
ベシクルに造核剤を内包させて当該造核剤をベシクル化してなる造核剤ベシクルを作製し、作製した造核剤ベシクルを、無機顔料と共にポリプロピレン樹脂に添加して基材層用の樹脂材料を作製する。
造核剤ベシクルは、例えば、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに上記造核剤を内包させてベシクル化することで作製する。
使用するポリプロピレン樹脂は、その50質量%以上100質量%以下に、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
このとき、結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を公知の調整方法で調整することで、基材層2のフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を、0.7以上0.9以下に制御する。
更に、必要に応じて、基材層2の上面に絵柄層3を印刷によって形成し、その上に透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層を印刷によって形成する。
なお、上記製造方法では、造核剤ベシクルを用いて基材層2を製造する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記造核剤ベシクルを、ベシクルで内包されていない、ナノサイズの造核剤に代えて、基材層2を製造してもよい。
(1)本実施形態の化粧シート1は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を有し、基材層2はナノサイズの造核剤を含有し、基材層2の厚さは50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下である。また、基材層2の引張弾性率が850MPa以上1600MPa以下である。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を添加し、更にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値、及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な化粧シート1を提供することが出来る。
この構成によれば、より確実にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を0.7以上0.9以下に調整可能となる。
この構成によれば、基材層2を構成する着色ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、確実に必要な引張弾性率の850MPa以上1600MPa以下を確保できるようになる。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、更にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値、及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な化粧シート1を提供することが出来る。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとして添加し、更にフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値、及び膜厚を最適化することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な化粧シート1を提供することが出来る。
この構成によれば、基材層2を構成する着色ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、確実に必要な引張弾性率の850MPa以上1600MPa以下を確保できるようになる。
この構成によれば、基材層2の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
(8)本実施形態の化粧シート1は、基材層2の一方の面に絵柄層3を積層されていることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート1の意匠性を向上させることが出来る。
(9)本実施形態の化粧シート1は、基材層2の一方の面側に、透明樹脂層4及びトップコート層5の少なくとも一方の層が積層していることが好ましい。
以下に、本実施形態の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
(造核剤ベシクルの製造方法)
まず、本実施例において用いた造核剤リポソームの製造方法を説明する。
造核剤リポソームは、前述の超臨界逆相蒸発法を用いて、メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21;ADEKA社製)70質量部、ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100質量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながら更に15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことでリン脂質からなる単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤を内包する造核剤ベシクルを得た。
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂78質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム-アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.01質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
(実施例2)
上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂39質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂39部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム-アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.01質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(実施例5)
実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例6)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例7)
実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例8)
実施例4と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
実施例1と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2の表面に絵柄印刷を施して絵柄層3を形成した。絵柄層3は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、基材層2の裏面にプライマー層6を形成した。プライマー層6は絵柄層3と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。
続いて、結晶性ポリプロピレン樹脂(ペンタッド分率 97.8%、分子量分布 2.3、MFR 18g/10min)100質量部に対して、ヒンダードアミン系光安定化剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部を混合した混合物と、ポリエチレン系の易接着性樹脂とを溶融押出機を用いて共押出しして、厚さ60μmの透明樹脂層4と厚さ10μmの接着性樹脂層4bとを製膜した。次に、絵柄層3を形成した基材の表面にドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学株式会社製;塗布量2g/m2)を塗布した。続いて、製膜した接着性樹脂層4bを介して、接着剤を塗布した基材の絵柄層3面と透明樹脂層4とを押出ラミネート法により貼り合せた。さらに、貼り合わせて形成したシートの透明樹脂層4側の面に、エンボス形成用の金型ロールを用いてプレスをしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(DICグラフィックス社製「W184」)を塗布量3g/m2で塗布して、トップコート層5を形成した。こうして、図2に示す化粧シート1を得た。
実施例2と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例11)
実施例3と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例12)
実施例4と同様に作成した、厚さ55μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
実施例5と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例14)
実施例6と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例15)
実施例7と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例16)
実施例8と同様に作成した、厚さ145μmの基材層2に対し、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例7と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例18)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例8と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例19)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(実施例20)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例6と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例2)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例3)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していな造核剤を用いた以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
(比較例4)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例4と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの基材層2を製膜した。
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例6)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例6と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例7)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例7と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
(比較例8)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例8と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ145μmの基材層2を製膜した。
比較例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ155μmの基材層2を製膜した。その後、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(比較例10)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ155μmの基材層2を製膜した。その後、実施例9と同様に透明樹脂層4及びトップコート層5を形成し、化粧シート1を得た。
(比較例11)
実施例2と同様に、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ45μmの基材層2を製膜した。
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂31.2質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂46.8部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム-アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として0.5質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
着色ポリプロピレンフィルムの原料として、ペンタッド分率が97.8%、メルトフローレート(MFR)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂39質量部に対し、エチレン成分を4%配合したメルトフローレート(MFR)が12g/10min(230℃)のランダムポリプロピレン樹脂39部、無機顔料として酸化チタン顔料6質量部、クロム-アンチモン複合酸化物顔料16質量部、上述の造核剤ベシクルを造核剤として1.0質量部となるように添加して、溶融押出機を用いて押出成形して厚さ55μmの着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層2を製膜した。
以上の実施例1~20、比較例1~13について、フーリエ型赤外分光測定、引張弾性率の測定、印刷加工時における不具合(印刷加工適性)、耐傷性、曲げ加工適性及びラッピング加工平滑性(ラッピング加工時の表面均一性)の評価を行った。
<フーリエ型赤外分光測定>
フーリエ型赤外分光測定は、パーキンエルマー製フーリエ型赤外分光測定装置(Spectrum Spotlight 400)を用い、4000cm-1から700cm-1の吸光スペクトルを得た。得られた吸光スペクトルから波数997cm-1、973cm-1、938cm-1のピーク強度比を抜き出し、下記式によりピーク強度比xを算出した。
引張弾性率の測定は、(株)島津製作所製オートグラフ(AGS-500NX)を用い、引張速度を50mm/minとして引張試験を実施し、引張弾性率を算出した。
<印刷加工時の不具合(印刷加工適性)>
絵柄層3をグラビア印刷機を用いてグラビア印刷により形成し、その際、基材層2が張力により伸びて、各色の積層時に見当がずれる不具合を印刷不具合として評価した。
全く見当調整不要な場合を「◎」、自動見当調整により簡便に調整可能な場合は「○」、見当調整に注意を要する場合は「△」、見当調整が不可能で印刷継続が不可能な場合を「×」とした。また、印刷中のフィルムが高い頻度で破断し、量産性に問題がある場合も「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば印刷加工としては問題ない。
耐傷性については、鉛筆硬度試験を実施して評価した。鉛筆硬度試験においては、3Bの鉛筆を用い、化粧シート10に対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に750kgの荷重を付加した状態でスライドさせて化粧シート10の表面状態を観察した(旧JIS規格 JISK5400に準拠)。試験は5回実施し、鉛筆の傷、跡について評価を行った。
全く傷や跡の見られない場合を「◎」、僅かに鉛筆の跡が見える場合を「○」、鉛筆の跡が見える場合を「△」、鉛筆の傷や着色ポリプロピレンフィルムの破れが見える場合を「×」とした。
なお、「○」以上の評価であれば、実用上の問題はない。また、「△」以上の評価であれば、例えば家具や人の触れない高い位置の垂直面などの用途に限定されるものの、問題は発生しない。「○」以上の評価であることが好ましい。
曲げ加工適性試験においては、基材層2として中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法により得られた実施例1~20及び比較例1~13の各化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材層2の他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基材層2と化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基材層2を当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、曲げ加工性の状態について評価を行った。
白化や亀裂などが全く見られない場合を「◎」、一部に僅かに白化が見える場合を「○」、一部に白化が見える場合を「△」、全面に白化が見えるか一部に亀裂が見える場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
ラッピング加工時の表面均一性試験においては、基材層2として中質繊維板(MDF)2枚の間に板材もしくはパーティクルボードを3枚~5枚貼り合わせた角材を用い、上記の方法により得られた実施例1~20及び比較例1~13の各化粧シート1をホットメルト接着剤を用いて、ラッピング加工により貼り付け、化粧板を得た。続いて、板材の端部に化粧シート1が貼り合わされた面を観察し、板材の凹凸や板材の貼り合せ部の段差などを起因とする表面凹凸があるか、目視にて観察を行った。さらに、得られた化粧板を温度80℃、湿度85%の環境下に1000時間放置し、同箇所の表面凹凸や、化粧シート1の剥がれについて確認した。
初期および1000時間後も凹凸や段差が全く見えずに平滑な場合を「◎」、僅かに表面が荒れて見える場合を「○」、一部において凹凸や段差が見える場合を「△」、全面に凹凸や段差が見えたり、1000時間後に化粧シート10の剥がれが見られた場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば実用上問題ないが、「○」以上の評価であることが好ましい。
これらの評価結果を表1に示す。
ここで比較例11では、自動見当調整は可能であったものの、印刷中のフィルムが高い頻度で破断してしまい、製品を作ることができなかった。これは、ピーク強度x及び引張弾性率は十分だったものの、厚さが薄すぎたため、印刷中の張力変動にフィルムが耐えられず、破断する頻度が高まってしまったものと考えられる。
なお、本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
Claims (15)
- 無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色ポリプロピレンフィルムからなる基材層を有し、上記基材層はナノサイズの造核剤を含有し、上記基材層の厚さが50μm以上150μm以下であり、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから下記の数式1を用いて算出されるピーク強度比xの値が、0.7以上0.9以下であり、
上記基材層は、添加剤として脂肪酸金属塩をさらに含み、
上記無機顔料は、酸化チタンと、2種類の金属元素を含有する複合酸化物とを含み、
上記複合酸化物は、鉄-亜鉛、クロム-アンチモン、または鉄-アルミで構成された酸化物を含み、
上記酸化チタンの含有量は、上記複合酸化物の含有量よりも少ないことを特徴とする化粧シート。
ここで、下記式において、I997は波数997cm-1のピーク強度値、I938は波数938cm-1のピーク強度値、I973は波数973cm-1のピーク強度値を示す。
- 引張弾性率が850MPa以上1600MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
- 上記ポリプロピレン樹脂の50質量%以上100質量%以下が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
- 上記ナノサイズの造核剤の添加量が、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤が内包されている造核剤ベシクルであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記造核剤ベシクルを、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、上記造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内で添加することを特徴とする請求項5に記載した化粧シート。
- 上記造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した化粧シート。
- 上記造核剤ベシクルの添加量が、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下であることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記基材層の一方の面に絵柄層が積層されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記無機顔料は、上記酸化チタンと、上記クロム-アンチモン複合酸化物とを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載した化粧シート。
- 上記引張弾性率は、上記基材層の引張弾性率であることを特徴とする請求項2に記載した化粧シート。
- 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法であって、
無機顔料を混合したポリプロピレン樹脂にナノサイズの造核剤を添加した樹脂材料から、引張弾性率が850MPa以上1600MPa以下であり、厚さが50μm以上150μm以下の上記基材層を作製することを特徴とする化粧シートの製造方法。 - 上記基材層を製造する際に、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比xの値を、0.7以上0.9以下に制御することを特徴とする請求項12に記載した化粧シートの製造方法。
- 上記基材層を製造する際に、当該基材層の引張弾性率を850MPa以上1600MPa以下に制御することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載した化粧シートの製造方法。
- 超臨界逆相蒸発法によって、上記造核剤をベシクルに内包させたことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載した化粧シートの製造方法。
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