JP7326862B2 - 着色シート、化粧シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、着色シート、化粧シート及びその製造方法に関するものである。特に、建築物の外装及び内装用の建装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに好適な技術である。
近年、特許文献1に示す通り、環境保護上の問題が懸念されているポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シート(例えば、ポリプロピレンシート)が数多く提案されている。これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生が抑制される。しかし、一般的にポリプロピレンシートは、弾性率が低いために耐傷性に劣ることや、印刷などのシート作製時などにおいてシートに張力を掛けたときに伸び易いなどの課題があった。
ところで化粧シートを、木質基板、金属基板、不燃基板などの基板表面に貼り付けることで化粧板となり、化粧シートは化粧板に対し目的に応じた意匠性を付与する。従って、化粧シートは、必要に応じて基板の表面が完全に見えなくなるように基材を覆い隠す必要がある。この場合、少なくとも顔料によって着色され、隠蔽性が付与された化粧シートを用いる必要がある。そして、最も単純な化粧シートの構成としては、着色されたシート単体(単層)からなる基材層だけの構成と言うこととなる。このような基材層だけからなる化粧シートの場合、通常は、付与できる意匠が柄の無い単色に限定されてしまうが、例えば顔料としてアルミフレークやパール顔料等の光輝材を添加することで光輝感を付与することはできるため、必要十分な意匠表現は可能である。また、更なる高意匠を付与したい場合は、基材層の表面に印刷などの加飾を施すことも有効である。
一方、前述のように、着色ポリプロピレンフィルムは弾性率が低いため、単層の化粧シートとして用いる場合、耐傷性や、印刷などの加工時に張力を掛けても伸びないようにする必要がある。張力付与時の伸びについては、従来の着色ポリプロピレンフィルムにあっては層厚を50μm程度以上に厚くすることで改善が可能である。また、耐傷性については、従来の着色ポリプロピレンフィルムにあっては、特許文献2や特許文献3のように、ポリプロピレン樹脂からなる透明樹脂層や、ポリオールとイソシアネートからなるウレタン系熱硬化樹脂を用いたトップコート層を設けることで改善が可能である。
また、特許文献2や特許文献3のように、着色ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレン樹脂を最適に選択することで、耐傷性や印刷加工時の伸びについて改善を図ることが可能である。しかし、結晶性を高めることによって弾性率が向上する一方、破断応力が弾性率相応に上昇しないため、フィルム自体が破け易くなってしまい、印刷加工時に破断などの不具合が発生し易くなってしまう傾向がある。更に、化粧シートとしての後加工、特にVカットなどの曲げ加工時においては、曲げ箇所の割れや白化といった不具合が生じ易くなる傾向がある。
特許第3271022号公報 特許第3861472号公報 特許第3772634号公報
従来にあっては、着色ポリプロピレンフィルムを単体で用いた化粧シートや、着色ポリプロピレンフィルムを基材層とした化粧シートに対し、印刷加工適性(伸びにくさ等)及び耐傷性と曲げ加工性の両立が求められている。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、耐傷性を向上させ、印刷加工時の伸びを抑制し、曲げ白化や割れの発生を低減することが可能な着色シート、その着色シートを備えた化粧シート、及びその化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を、例えば、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包させてベシクル化して造核剤ベシクルとしてスキン層に添加し、更に、製造プロセスを種々検討及び実験を重ね、結晶化度を最適な範囲とすることで、上記課題を改善した着色シート、化粧シート及びその製造方法を提供できることを見出した。
課題を達成するべく、本発明の一態様に係る着色シートは、無機顔料とポリプロピレン樹脂とを含む着色層と、ポリプロピレン樹脂を含むスキン層とを有し、上記スキン層をナノサイズの造核剤を添加して形成したことを要旨とする。
なお、本発明の一態様において、スキン層とは、顔料を含まない透明な層であることを意味し、造核剤や耐候剤のような添加剤を含有していてもよい。また、本発明の一態様に係る着色シートにおいて、造核剤は、外膜で含有されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。
ここで、造核剤ベシクルとは、単層膜の外膜を具備するカプセル状のベシクルに造核剤が内包された構成となっており、例えば超臨界逆相蒸発法によって調製することができる。また、造核剤とは結晶性ポリプロピレン樹脂中において結晶化の起点となる物質である。
本発明の一態様によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤を、例えば、ベシクル化して造核剤ベシクルとしてスキン層に添加することで、印刷加工適性(伸びにくさ等)、耐傷性及び曲げ加工性を備えることが可能な着色シート、その着色シートを含む化粧シート、及びその化粧シートの製造方法を提供できる。
本発明に係る実施形態の化粧シートの構成を示す断面図である。 本発明に基づく実施形態に係る他の化粧シートの構成を示す断面図である。 本発明に基づく実施例に係る化粧シートの構成を示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
「構成」
図1に示す実施形態の化粧シート1は、着色シート2だけの単層構造の場合の例である。本実施形態の着色シート2は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色層3、即ち無機顔料とポリプロピレン樹脂とを含む着色層3と、ポリプロピレン樹脂を含むスキン層4とから構成される。スキン層4には結晶化度を向上させるため、ナノサイズの造核剤を添加している。結晶化度を向上させることにより、耐傷性が良化する。なお、本実施形態では、造核剤は、例えば、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有されていてもよい。
スキン層4の厚さが3μm以上20μm以下の範囲内であること、又は、スキン層4と着色層3との厚さの比(スキン層4の厚さ/着色層3の厚さ)が1:6から1:50の範囲内であることが望ましい。スキン層4が上記数値よりも薄く、着色層3に対する比率が小さくなると、結晶化度を向上させた効果が得られにくくなるので好ましくない。また、スキン層4の着色層3に対する比率が小さくなると、着色層3に添加された顔料がブリードアウトするおそれがあるので好ましくない。一方、スキン層4が上記数値よりも厚く、着色層3に対する比率が大きくなると、着色層3の比率が低下するため、隠蔽性が低下するので好ましくない。
また、スキン層4と着色層3との厚さの比(スキン層4の厚さ/着色層3の厚さ)が1:10から1:30の範囲内であることがより望ましい。スキン層4と着色層3との厚さの比が上記数値範囲内であれば、結晶化度を向上させつつ、隠蔽性の低下を防止することができる。
また、着色層3及びスキン層4に関して、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度x、xが、x<xという関係式で表されてもよい。そのような場合には、着色シート2の表面側(外側)に位置するスキン層4の方が着色シート2の内側に位置する着色層3に比べて結晶化度が高くなり、耐傷性が向上する傾向がある。一方、着色層3はスキン層4に比べて結晶化度が低く柔軟であるため、Vカットなどの曲げ加工時において曲げ箇所の割れや白化といった不具合が生じにくい傾向がある。
ナノサイズの造核剤の添加量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましい。
また、造核剤ベシクルを用いる場合には、造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましい。
また、造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
また、必要に応じて、図2に示すように、着色シート2の一方の面に絵柄層5を形成(積層)して、意匠性を向上させてもよい。また、化粧シート1は、着色フィルム2の一方の面側に、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層が積層していてもよい。図2に例示した化粧シート1は、着色シート2の一方の面に、絵柄層5、透明樹脂層6及びトップコート層7がこの順に積層した例である。なお、透明樹脂層6又はトップコート層7の一方が省略されていてもよい。また、絵柄層5を省略してもよい。
ここで、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層には、意匠性の要求によっては、エンボスによる凹凸模様(エンボス模様6a)を付与してもよい。エンボス模様6aには、インキを埋め込み、更に意匠性を向上させることも可能である。また、絵柄層5と透明樹脂層6の密着性に問題があれば、絵柄層5と透明樹脂層6の密着性を向上させるための接着性樹脂層6bを適宜設けても構わない。接着性樹脂層6bを設ける場合、透明樹脂層6と接着性樹脂層6bとの共押出法で形成してもよい。接着性樹脂層6bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもの、即ち酸変性樹脂であってもよい。接着性樹脂層6bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。更に、耐傷性などの要求から、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも一方の層を複数層積層することも可能である。なお、本実施形態の化粧シート1については、その他、公知の他の層を配置する構成としてもよい。
図1、図2及び後述する図3中、符号Bは、基板を表している。基板Bは、化粧シート1が貼り合わせられる基板である。基板Bとしては、特に限定は無いが、木質ボード類、無機系ボード類、金属板、複数の材料からなる複合板などが例示できる。化粧シート1と基板Bとの間に、適宜、プライマー層8や隠蔽層(不図示)などを設けてもよい。
本実施形態の化粧シート1の引張弾性率、特に着色フィルム2単体の引張弾性率の範囲が、1000MPa以上2200MPa以下の範囲内であることが好ましい。引張弾性率が1000MPa未満の場合、耐傷性が悪くなる傾向がある。また、引張弾性率が2200MPaを超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤(例えば、造核剤ベシクル)を用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
次に、化粧シート1を構成する各層について説明する。
<着色シート(着色フィルム)2>
着色シート2は、例えば、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色層3と、ポリプロピレン樹脂からなるスキン層4を有し、そのスキン層4には、結晶性を上げるためにナノサイズの造核剤が添加されている。本実施形態では、ナノサイズの造核剤が、造核剤ベシクルの状態で添加される。スキン層4の厚さは3μm以上20μm以下の範囲内が好ましく、スキン層4と着色層3の厚さの比(スキン層4の厚さ/着色層3の厚さ)が1:6から1:50の範囲内であることが望ましい。
また、表面の耐傷性向上が目的であれば、着色層3の上面のみスキン層4を形成すればよいが、共押出法で形成する場合、着色層3が最外層にあると、着色層3に含まれる顔料成分がブリードし、押出機のTダイや搬送中のロールが汚染することがある。そのため、最外層は顔料を含まないスキン層4であることが望ましい。また、着色層3の両面にスキン層4を設けることがより望ましい。つまり、スキン層4、着色層3、スキン層4をこの順に備え、各層の厚さの比を、1:6:1~1:50:1の範囲内とすることがより好ましい。スキン層4が上記数値よりも薄く、着色層3に対する比率が小さくなると、結晶化度を向上させた効果が得られにくくなるので好ましくない。また、スキン層4の着色層3に対する比率が小さくなると、着色層3に添加された顔料がブリードアウトするおそれがあるので好ましくない。一方、スキン層4が上記数値よりも厚く、着色層3に対する比率が大きくなると、着色層3の比率が低下するため、隠蔽性が低下するので好ましくない。
また、スキン層4と着色層3とスキン層4との厚さの比(スキン層4の厚さ/着色層3の厚さ/スキン層4の厚さ)が1:10:1から1:30:1の範囲内であることがより望ましい。スキン層4と着色層3とスキン層4との厚さの比が上記数値範囲内であれば、結晶化度を向上させつつ、隠蔽性の低下を防止することができる。
なお、最外層のスキン層4と、基板B側のスキン層4とで、互いにその厚さが異なっていてもよい。つまり、最外層のスキン層4の厚さは、基板B側のスキン層4の厚さよりも厚くてもよいし、薄くてもよい。最外層のスキン層4の厚さが基板B側のスキン層4の厚さよりも厚い場合には、表面の耐傷性が向上する。また、最外層のスキン層4の厚さが基板B側のスキン層4の厚さよりも薄い場合には、表面のクッション性(緩衝性能)が向上する。
本実施形態では、着色層3及びスキン層4のフーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出されるピーク強度比x、xを0.7以上0.9以下の範囲内に調整してもよい。ピーク強度比x及びxが0.7未満の場合、印刷加工時の不具合を抑制できず、実用上必要な耐傷性を確保することも困難となる可能性が高い。一方、ピーク強度比xが0.9を超える場合、結晶性が高すぎるため、造核剤ベシクルを用いた場合でも、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。また、スキン層4にナノ造核剤を添加することで、共押出法で着色層3と同じ製造条件で着色フィルム2を作製しても、ピーク強度比x及びxは、x<xの式で表すことができる。上記関係式を満たす場合には、両端のスキン層4がより硬く、コアの着色層3がより柔らかいため、曲げ加工において白化や割れといった不具合がより生じにくい着色フィルム2となる。
ここで、フーリエ型赤外分光測定に関して説明する。まず、赤外分光測定とは、2.5~25μmの波長の光である赤外光が、物質の分子の振動や回転運動に基づいて、当該物質に吸収される量に変化が生じるという原理を利用して、当該物質に吸収された赤外光を測定することにより、物質の化学構造や状態に関する情報を得る測定方法である。具体的な測定方法は、物質に対して光源から赤外光を照射し、分割された透過光と反射光とを合成することで干渉波を発生させて、当該干渉波の信号強度から各波数成分の光の強度を算出することにより赤外スペクトルを測定する。特に、本実施形態においては、当該干渉波の算出をフーリエ変換法を用いて行い、赤外スペクトルを測定する方式であるフーリエ型赤外分光測定により測定を行った。上記方法によって得られた波数を横軸、測定された吸光度(又は透過率)を縦軸にプロットしたグラフを赤外吸光スペクトル(又は赤外透過スペクトル)といい、物質ごとに固有のパターンが認められる。この時、縦軸の吸光度は、物質の濃度や厚さ、結晶性物質の場合には結晶質部又は非晶質部の量に比例して所定の波数におけるピーク強度の値が変化するため、当該ピークの高さや面積から定量分析を行うことも可能である。
本実施形態においては、赤外吸光スペクトルの上述のような特性を利用して、前述の測定によって得られた吸光スペクトルにおける着色ポリプロピレンフィルムの結晶質部の吸光度に該当する波数997cm-1のピーク強度と、そのフィルムの非晶質部の吸光度に該当する波数973cm-1のピーク強度との比、すなわちポリプロピレンの結晶化度を表すピーク強度比xを下記式を用いて算出し、着色層3とスキン層4の当該ピーク強度比x、xと着色ポリプロピレンフィルムの剛性との関係を明らかとし、所定の範囲内のピーク強度比xの着色ポリプロピレンフィルムを基材層に採用した剛性に優れる化粧シート1を提供するものである。なお、波数997cm-1のピーク強度と波数973cm-1のピーク強度とは、それぞれ波数938cm-1のピーク強度を用いてバックグラウンド補正を行っている。
Figure 0007326862000001
また、着色フィルム2の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であることが重要である。着色フィルム2が50μm未満の場合、下地の凹凸をカバーする性能(不陸性)が悪く、好ましくない。更に弾性率を向上させてもフィルム強度が不足してしまうため、印刷加工時の不具合や耐傷性の悪化を抑制することが困難である。一方、着色フィルム2の厚さが150μmを超える場合、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
(ポリプロピレン樹脂)
着色層3に使用するポリプロピレン樹脂は、後述する無機顔料を分散し易くするため、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することが望ましい。弾性率を向上させ耐傷性を重視する用途においては、高結晶性ホモポリプロピレンを用いることもできるが、複数のポリプロピレン樹脂を併用し、弾性率を調整することもできる。また、製造方法で弾性率をコントロールすることもできる。
スキン層4に使用するポリプロピレン樹脂は、結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。ポリプロピレン樹脂は、単独で用いてもよいが、併用することもできる。
ポリプロピレン樹脂の結晶化温度は、一般的に100~130℃の範囲内とされており、造核剤を添加すると110~140℃の範囲内とされる。本実施形態の化粧シート1における着色フィルム2の製造工程においては、この範囲内にある結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を、公知の冷却プロセスによる制御で行うことによって、着色層3とスキン層4のピーク強度x、xの値を0.7以上0.9以下の範囲内に調整している。また、スキン層4には造核剤の添加や好適なポリプロピレン樹脂を選択することで、着色層3とスキン層4のピーク強度x、xの値をx<xとなるように調整している。
(無機顔料)
無機顔料は、隠蔽性を付与するための酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることができる。着色フィルム2は基材Bの模様を隠蔽する役割を担う。化粧シート1の意匠性の観点から要求される隠蔽性を得るために、光透過率が40%以下であることが好ましい。隠蔽性が低いと絵柄層5と基材Bの模様が混在し、好ましくない。無機顔料を含有することにより、隠蔽性が良好な化粧シート1を得ることができる。無機顔料の混合量は、樹脂材料を100質量部として、5質量部以上50質量部以下の範囲内とすることが好ましい。混合量が少ない(5質量部未満)と隠蔽性が悪く、また、混合量が50質量部以上の場合は着色フィルム2の脆化が起こり好ましくない。含有する無機顔料としては、特に限定されないが、例えば天然無機顔料、合成無機顔料が挙げられる。天然無機顔料としては、例えば、土系顔料、焼成土、鉱物性顔料などが挙げられる。合成無機顔料としては、例えば、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料などが挙げられる。また、天然無機顔料、合成無機顔料の中から、1種類もしくは2種類以上を混合した混合顔料を用いてもよい。カーボンブラックのような有機顔料を併用しても構わない。
更に、分散性の向上や、押出適正を改善するために脂肪酸金属塩などの添加剤を加えても構わない。
(造核剤ベシクル)
また、着色フィルム2のスキン層4はナノサイズの造核剤を含んでいる。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されてもよい。着色フィルム2のスキン層4は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、着色フィルム2の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。なお、本実施形態において、着色フィルム2のスキン層4を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の着色フィルム2とすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した着色フィルム2を実現することができる。
ここで、造核剤を単純添加した場合は、ポリプロピレン樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなると共に添加した造核剤量に対して結晶核の数が、造核剤ベシクルとして添加した場合よりも大幅に少なくなってしまう。このため、ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が大きくなってしまい、曲げ加工時の割れや白化が抑制できないことがある。よって、結晶化度を高めることによる弾性率向上と加工性が両立できないことがある。
本実施形態の化粧シート1を構成する、着色フィルム2のスキン層4は、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して造核剤添加量に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲、好ましくは、0.05質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤ベシクルが添加されている。造核剤ベシクルの添加量が0.01質量部未満の場合、結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。また、造核剤ベシクルの添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため球晶成長が逆に阻害され、結果的に結晶化度が十分に向上せず、必要な弾性率(硬度)に達しないおそれがある。
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製することができる。その中でも特に超臨界逆相蒸発法が好ましい。
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。またその外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしてもよい。本実施形態の化粧シート1においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、スキン層4の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
上述のように、本実施形態の化粧シート1の特徴(発明特定事項)の一つは、「着色フィルム2のスキン層4が、ベシクルに内包された造核剤を含有する」ことにある。そして、造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち着色フィルム2のスキン層4中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シート1の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっていて、作製した化粧シート1の状態においても、造核剤は着色フィルム2のスキン層4に高分散されている。しかしながら、着色フィルム2のスキン層4を構成する樹脂組成物に造核剤をベシクルの状態で添加して着色フィルム2のスキン層4を作製した後の、化粧シート1の作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性がある。これは、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シート1の処理工程によってばらつくためである。そして、この造核剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して、着色フィルム2のスキン層4に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート1の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
ここで、上記構成の造核剤ベシクルが、透明樹脂層6やトップコート層7にも含有させていてもよい。
(絵柄層5)
着色フィルム2の表面には、化粧シート1に柄模様を付加するための絵柄層5を設けることができる。柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等を用いることができる。
着色フィルム2として、オレフィン系の原反層のような表面が不活性な基材を用いる場合は、着色フィルム2の表裏に、例えばコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
更に、着色フィルム2と絵柄層5との間には、目的とする意匠の程度に応じて下地ベタインキ層(不図示)を設けるようにしてもよい。下地ベタインキ層は、着色フィルム2の全面を被覆するようにして設けられる。また、下地ベタインキ層は、隠蔽性等、必要に応じて2層以上の多層としてもよい。更に、絵柄層5は、求められる意匠を表現するために必要な分版の数だけ積層して形成してもよい。このように、絵柄層5と下地ベタインキ層とは、求められる意匠、つまり、表現したい意匠に応じて様々な組み合わせとなるが、特に限定されるものではない。
下地ベタインキ層及び絵柄層5の構成材料は、特に限定されるものではない。例えば、マトリックスと、染料、顔料等の着色剤とを溶剤中に溶解、分散してなる印刷インキやコーティング剤を用いることができる。マトリックスとしては、例えば、油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はこれらの混合物、共重合体等を用いることができる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、又はこれらの混合物を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、もしくはこれらの混合物等を用いることができる。
また、下地ベタインキ層及び絵柄層5には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
ここで、下地ベタインキ層及び絵柄層5は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法によって形成することができる。また、下地ベタインキ層は、着色フィルム2の全面を被覆しているため、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等の各種コーティング方法によっても形成することができる。これらの印刷方法、コーティング方法は、形成する層によって別々に選択してもよいが、同じ方法を選択して一括加工することが効率的である。
絵柄層5の厚さは、3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。絵柄層5の厚さがこの数値範囲内である場合、印刷を明瞭にすることができるとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
(透明樹脂層6)
透明樹脂層6の主成分として用いる樹脂材料は、オレフィン系樹脂からなることが好適であり、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
ここで、本明細書で主成分とは、特に特定が無い場合には、対象とする材料の90質量%以上を指す。
透明樹脂層6を設ける場合、透明樹脂層6の層厚は50μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。透明樹脂層6の層厚が50μm未満の場合、透明樹脂層6表面の耐傷性の向上効果が低く、透明樹脂層6を設ける意義が少なくなってしまう。また、透明樹脂層6の層厚が100μmを超える場合、化粧シート1の剛性が高すぎて、曲げ加工において白化や割れといった不具合が生じてしまうおそれがある。
もっとも、透明樹脂層6の上にトップコート層7を設ける場合には、透明樹脂層6の層厚は50μm未満としてもよい。
なお、透明樹脂層6を構成する樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種機能性添加剤を含有させてもよい。これらの各種機能性添加剤は、周知のものから適宜選択して用いることができる。
また、絵柄層5と透明樹脂層6とを密着させるために用いる接着剤は、任意の材料選定が可能であり、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。通常はその凝集力から、イソシアネートとポリオールとの反応を利用した2液硬化タイプのウレタン系材料が望ましい。なお、絵柄層5と透明樹脂層6との積層方法にも特に規制はないが、熱圧を応用した方法(熱ラミネート)、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が一般的である。また、エンボス模様6aを施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに後から熱圧によりエンボスを入れる方法や、冷却ロールに凹凸模様を設け押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。
また、押出しと同時にエンボスを施した絵柄層5と透明樹脂層6とを熱ラミネートあるいはドライラミネートで貼り合わせる方法等を用いることができる。
また、押出ラミネート法で更なるラミネート強度を求める場合、透明樹脂層6と接着剤との間に接着性樹脂層6bを設けてもよい。接着性樹脂層6bを設ける場合、透明樹脂層6と接着性樹脂層6bとの共押出法でラミネートを行う。接着性樹脂層6bは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したもの、即ち酸変性樹脂であってもよい。接着性樹脂層6bの厚さは、接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。
(トップコート層7)
更なる耐傷性の向上や艶の調整が必要な場合は、透明樹脂層6の表面にトップコート層7を設けることができる。
トップコート層7の主成分の樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても1液タイプ、2液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
トップコート層7の主成分として用いる樹脂材料としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などの硬化剤より適宜選定して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び密着性の向上を図ることができる。
トップコート層7には艶調整のために艶調整剤を添加することができる。艶調整剤は市販されている公知の物を用いればよい。例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料からなる微粒子を用いてもよい。又は、アクリル等の有機材料からなる微粒子を用いることもできる。ただし、高い透明性が要求される場合には、透明性の高いシリカ、ガラス、アクリル等の微粒子を用いることが望ましい。特に、シリカやガラス等の微粒子のなかでも、中実の真球状粒子ではなく、微細な1次粒子が2次凝集してなる嵩密度の低い艶調整剤は添加量に対する艶消し効果が高い。それゆえ、このような艶調整剤を用いることで、艶調整剤の添加量を少なくすることができる。
また、トップコート層7に各種機能を付与するために、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤を添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系を用いることができる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系を用いることができる。
トップコート層7の層厚は3μm以上15μm以下の範囲内が好ましい。トップコート層7の層厚が3μm未満の場合、耐傷性の向上効果が低く、トップコート層7を設ける意義が少なくなってしまうことがある。また、トップコート層7の層厚が15μmを超える場合、曲げ加工時においてクラックや割れが生じてしまい、意匠上の問題や耐候性が悪化する問題が発生することがある。
(プライマー層)
プライマー層8の材料としては、基本的に絵柄層5と同じ材料を用いることができる。プライマー層8は、化粧シート1の裏面に施され、ウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避け、接着剤との密着を高めるために、プライマー層8には、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。プライマー層8の塗布厚さは、基材Bとの密着を確保することが目的であるので、0.1μm以上3.0μm以下の範囲内が好ましい。なお、プライマー層8は、着色フィルム2がオレフィン系材料のように表面が不活性なものである場合には必要であるが、表面が活性なものである場合には特に必要なものではない。
<製造方法>
化粧シート1の製造例について説明する。
ベシクルに造核剤を内包させて当該造核剤をベシクル化してなる造核剤ベシクルを作製し、作製した造核剤ベシクルを、ポリプロピレン樹脂に添加して着色フィルム2のスキン層4用の樹脂材料を作製する。
造核剤ベシクルは、例えば、超臨界逆相蒸発法によって単層膜を具備するベシクルに上記造核剤を内包させてベシクル化することで作製する。
着色層3に使用するポリプロピレン樹脂は、後述する無機顔料を分散し易くするため、所定の範囲内でエチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂や公知の非晶性ポリプロピレン樹脂を混合することが望ましい。スキン層4に使用するポリプロピレン樹脂は、結晶性の高いホモポリプロピレン樹脂を用いることが好適である。ポリプロプレン樹脂は、単独で用いてもよいが、併用することもできる。
上記の着色フィルム2用の樹脂材料を加熱溶融し、押し出し成形などによって、厚さが50μm以上150μm以下の範囲内となるようにシート状に成形して着色フィルム2とする。このとき、結晶化温度から硬化完了温度までの冷却時間を、公知の冷却プロセスによる制御で行うことで、着色層3とスキン層4の強度x、xの各値を0.7以上0.9以下の範囲内に制御する。
更に、必要に応じて、着色フィルム2の上面に絵柄層5を印刷によって形成し、その上に透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも1方の層を印刷によって形成する。
<作用その他>
(1)本実施形態の着色シート2は、無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合してなる着色層と、ポリプロピレン樹脂からなるスキン層を有し、スキン層4はナノサイズの造核剤を含有し、その造核剤は、外膜で包含されてベシクル化した造核剤ベシクルの状態で含有され、スキン層4の厚さは3μm以上20μm以下の範囲内である。
この構成によれば、ポリプロピレンの結晶化度を向上させる造核剤をベシクル化して造核剤ベシクルとしてスキン層4に添加し、スキン層4の膜厚を最適化することで、耐傷性の優れた着色シート2を提供することが出来る。
(2)本実施形態の着色シート2は、スキン層4、着色3層、スキン層4を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1~1:50:1で、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから算出される着色層3とスキン層4のピーク強度比をそれぞれx、xとした時、x<xとしてもよい。また、着色フィルム2の引張弾性率を1000MPa以上2200MPa以下の範囲内としてもよい。
この構成によれば、隠蔽性に優れ、且つ、耐傷性と曲げ加工性の両立が可能な着色シート2を提供することが出来る。
(3)本実施形態の着色シート2は、着色シート2のスキン層4への造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることが好ましい。
この構成によれば、スキン層4を構成するポリプロピレンの結晶化度が十分に向上し、確実に必要な引張弾性率、即ち1000MPa以上2200MPa以下の範囲内の引張弾性率を確保できるようになる。
(4)本実施形態の着色シート2は、造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることが好ましい。
この構成によれば、スキン層4の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
(5)本実施形態の化粧シート1は、着色シート2の一方の面に絵柄層5を積層されていることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート1の隠蔽性と意匠性を向上させることが出来る。
(6)本実施形態の化粧シート1は、着色シート2の一方の面側に、透明樹脂層6及びトップコート層7の少なくとも1方の層が積層していることが好ましい。
この構成によれば、化粧シート1の耐傷性を向上させることが出来る。
[実施例]
以下に、本実施形態の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
(造核剤ベシクルの製造方法)
まず、本実施例において用いた造核剤リポソームの製造方法を説明する。
造核剤リポソームは、前述の超臨界逆相蒸発法を用いて、メタノール100質量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21;ADEKA社製)70質量部、ベシクルの外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5質量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とした。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100質量部を注入した。温度と圧力を超臨界状態に保ちながら更に15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことでリン脂質からなる単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤を内包する造核剤ベシクルを得た。
(実施例1)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂60質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料40質量部となるように添加して混合した。スキン層4の原料として、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部、上述の造核剤ベシクルを0.01質量部となるように添加して混合した。着色層3の混合物、スキン層4の混合物を、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:150μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2100MPaであった。
(実施例2)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2195MPaであった。
(実施例3)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、20μm:120μm:20μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2050MPaであった。
(実施例4)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2145MPaであった。
(実施例5)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、30μm:100μm:30μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2000MPaであった。
(実施例6)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例5と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2095MPaであった。
(実施例7)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、30μm:120μm:30μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2075MPaであった。
(実施例8)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例7と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2170MPaであった。
(実施例9)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:150μm:3μmの厚さで、フィルムの引張弾性率が1050MPaになるように溶融押出機を用いて共押出し、着色フィルム2を製膜した。
(実施例10)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した以外は実施例9と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、1150MPaであった。
(実施例11)
実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、1.5μm:150μm:1.5μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2100MPaであった。
(実施例12)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂60質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料40質量部、上述の造核剤ベシクルを0.01質量部となるように添加した以外は、実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2300MPaであった。
(実施例13)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した。また、実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、7μm:140μm:7μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2200MPaであった。
(実施例14)
上述のスキン層4に添加する造核剤ベシクルを、造核剤として0.5質量部となるように添加した。また、実施例1と同様の着色層3の混合物、スキン層4の混合物を用いて、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、5μm:150μm:5μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2205MPaであった。
(実施例15)
実施例1と同様に作製した、厚さ156μmの着色フィルム2の表面に絵柄印刷を施して絵柄層5を形成した。絵柄層5は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量部添加したインキを用いて形成した。また、着色フィルム2の裏面にプライマー層8を形成した。プライマー層8は絵柄層5と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。更に、2液硬化型ウレタントップコート(DICグラフィックス社製「W184」)を塗布量3g/mで塗布して、トップコート層7を形成した。こうして、図3に示す化粧シート1を得た。
(実施例16)
実施例2と同様に作製した、厚さ156μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例17)
実施例3と同様に作製した、厚さ160μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例18)
実施例4と同様に作製した、厚さ160μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例19)
実施例5と同様に作製した、厚さ160μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例20)
実施例6と同様に作製した、厚さ160μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例21)
実施例7と同様に作製した、厚さ180μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例22)
実施例8と同様に作製した、厚さ180μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例23)
実施例9と同様に作製した、厚さ156μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例24)
実施例10と同様に作製した、厚さ156μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例25)
実施例11と同様に作製した、厚さ153μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例26)
実施例12と同様に作製した、厚さ156μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例27)
実施例13と同様に作製した、厚さ154μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例28)
実施例14と同様に作製した、厚さ160μmの着色フィルム2に対し、実施例15と同様にトップコート層7を形成し、化粧シート1を得た。
(実施例29)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2050MPaであった。
(実施例30)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例2と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2145MPaであった。
(実施例31)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2000MPaであった。
(実施例32)
上述の造核剤ベシクルではなく、外膜を備えない造核剤を用いた以外は実施例4と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2095MPaであった。
(比較例1)
上述の造核剤ベシクルを添加しない以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、800MPaであった。
(比較例2)
着色層3の原料として、ポリプロピレン樹脂60質量部に対し、無機顔料として酸化チタン顔料40質量部、上述の造核剤ベシクルを0.01質量部となるように添加して混合した。スキン層4の原料として、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系光安定剤(BASF社製「キマソーブ944」)0.5質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製「チヌビン328」)0.5質量部となるように添加して混合した。着色層3の混合物、スキン層4の混合物を、スキン層4、着色層3、スキン層4の順に、3μm:150μm:3μmの厚さになるように溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、2100MPaであった。
(比較例3)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例1と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、1450MPaであった。
(比較例4)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例2と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、1540MPaであった。
(比較例5)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例3と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、1400MPaであった。
(比較例6)
上述の造核剤ベシクルではなく、処理していない造核剤を用いた以外は実施例4と同様に、溶融押出機を用いて共押出しして、着色フィルム2を製膜した。フィルムの引張弾性率を測定すると、1490MPaであった。
[評価]
以上の実施例1~32、比較例1~6について、フーリエ型赤外分光測定、引張弾性率の測定、顔料起因の不具合(押出適性)、耐傷性、曲げ加工適性及びラッピング加工平滑性(ラッピング加工時の表面均一性)の評価を行った。
<フーリエ型赤外分光測定>
フーリエ型赤外分光測定は、パーキンエルマー製フーリエ型赤外分光測定装置(Spectrum Spotlight 400)を用い、4000cm-1から700cm-1の吸光スペクトルを得た。得られた吸光スペクトルから波数997cm-1、973cm-1、938cm-1のピーク強度比を抜き出し、下記式によりピーク強度比xを算出した。
Figure 0007326862000002
本実施例においては、着色フィルム2は着色層3とスキン層4からなる2種3層構成をしている。赤外分光測定は、着色フィルム2の断面を測定する。この時、着色層のピーク強度比xをx、スキン層のピーク強度比xをxで表す。
<引張弾性率>
引張弾性率の測定は、(株)島津製作所製オートグラフ(AGS-500NX)を用い、引張速度を50mm/minとして引張試験を実施し、引張弾性率を算出した。
<顔料起因の不具合>
着色フィルム2を溶融押出機を用いて共押出しする時に、T台に顔料が析出して製膜不良になる不具合を評価した。全く顔料が析出せずに問題ない場合を「〇」、顔料がT台に付着するが、製膜には問題がない場合を「△」、顔料が多量にT台に析出して製膜不良を起こす場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば着色フィルムの品質上問題はない。
<隠蔽性>
隠蔽性の評価は、x-rite社の分光測色計(530JP/LP)を用い、BYK-GARDNER社製の隠蔽試験紙(byko-chart高明度2A)の白下地と黒下地で測定した色差で判断した。色差が小さい程、隠蔽性が良好で、実用上0.5以下であれば着色フィルムの品質上問題はない。
<耐傷性>
耐傷性については、鉛筆硬度試験を実施して評価した。まず、基板Bとして中質繊維板(MDF)の一方の面に対して、上記の方法により得られた実施例1~32及び比較例1~6の各シートをウレタン系の接着剤を用いて貼り付けた。鉛筆硬度試験においては、3Bの鉛筆を用い、各シート表面に対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に750kgの荷重を付加した状態でスライドさせての表面状態を観察した(旧JIS規格 JISK5400に準拠)。試験は5回実施し、鉛筆の傷、跡について評価を行った。
全く傷や跡の見られない場合を「◎」、僅かに鉛筆の跡が見える場合を「○」、鉛筆の跡が見える場合を「△」、鉛筆の傷やシートの破れが見える場合を「×」とした。
なお、「○」以上の評価であれば、実用上の問題はない。また、「△」以上の評価であれば、例えば家具や人の触れない高い位置の垂直面などの用途に限定されるものの、問題は発生しない。「○」以上の評価であることが好ましい。
<曲げ加工適性>
曲げ加工適性試験においては、鉛筆硬度試験同様に基板Bに各シートを貼り付け、基板Bの他方の面に対して、反対側の化粧シート1にキズが付かないようにV型の溝を基板Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界まで入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基板Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、曲げ加工性の状態について評価を行った。
白化や亀裂などが全く見られない場合を「◎」、一部に僅かに白化が見える場合を「○」、一部に白化が見える場合を「△」、全面に白化が見えるか一部に亀裂が見える場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば、実用上問題ない。
<ラッピング加工時の表面均一性>
ラッピング加工時の表面均一性試験においては、基板Bとして中質繊維板(MDF)2枚の間に板材もしくはパーティクルボードを3枚~5枚貼り合わせた角材を用い、上記の方法により得られた実施例1~32及び比較例1~6の各化粧シート1をホットメルト接着剤を用いて、ラッピング加工により貼り付け、化粧板を得た。続いて、板材の端部に化粧シート1が貼り合わされた面を観察し、板材の凹凸や板材の貼り合せ部の段差などを起因とする表面凹凸があるか、目視にて観察を行った。更に、得られた化粧板を温度80℃、湿度85%の環境下に1000時間放置し、同箇所の表面凹凸や、化粧シート1の剥がれについて確認した。
初期および1000時間後も凹凸や段差が全く見えずに平滑な場合を「◎」、僅かに表面が荒れて見える場合を「○」、一部において凹凸や段差が見える場合を「△」、全面に凹凸や段差が見えた場合や、1000時間後に化粧シート1の剥がれが見られた場合を「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば実用上問題ないが、「○」以上の評価であることが好ましい。
<印刷加工適性>
絵柄層5をグラビア印刷機を用いてグラビア印刷により形成し、その際、着色フィルム2が張力により伸びて、各色の積層時に見当がずれる不具合を印刷不具合として評価した。全く見当調整不要な場合を「◎」、自動見当調整により簡便に調整可能な場合は「○」、見当調整に注意を要する場合は「△」、見当調整が不可能で印刷継続が不可能な場合を「×」とした。また、印刷中のフィルムが高い頻度で破断し、量産性に問題がある場合も「×」とした。なお、「△」以上の評価であれば印刷加工としては問題ない。
これらの評価結果を表1に示す。
Figure 0007326862000003
表1から分かるように、実施例1~14、実施例29~32の化粧シートでは、顔料起因の不具合が起こらず隠蔽性が良好で、強度について実用に耐えうる状況を確保しつつ、曲げ加工についても両立ができていることが分かる。更に、実施例15~28の化粧シートは、実施例1~14に絵柄層5、トップコート層7を積層し、高意匠と高耐傷性を両立しながら曲げ加工について両立できていることが分かる。
実施例5~6の化粧シートは、スキン層4:着色層3:スキン層4を1:3.3:1で作製したので、隠蔽性が0.48~0.49と大きな値を示したが、実用上問題のないレベルであった。
実施例7~8の化粧シートは、着色フィルム2の厚さが180μmと厚膜で作製したので、フィルムが剛直で、ラッピング加工時の平滑性が悪化したが、実用上問題のないレベルであった。
実施例9~10の化粧シートは、製造条件により弾性率を1050~1150MPaに制御したので、耐傷性やラッピング加工時の平滑性が悪化したが、実用上問題のないレベルであった。
実施例11の化粧シートは、スキン層4を1.5μmと薄膜で作製したが、製膜時にT台に顔料が付着していた。但し、製膜には問題がなく、品質上問題とはならないレベルであった。
実施例12の化粧シートは、着色層3、スキン層4両方に造核剤を添加したので、フィルムが剛直で、曲げ加工とラッピング加工の平滑性が悪化したが、品質上問題とはならないレベルであった。
一方、比較例1の化粧シートでは、スキン層4にナノサイズの造核剤を用いていないため、結晶化度の向上による強度向上が十分ではなく、耐傷性が顕著に悪化した。
また、比較例2の化粧シートでは、着色層3にナノサイズの造核剤を用いているが、スキン層4には用いていない。着色フィルム2としての結晶化度は十分規定の範囲を満たしているが、スキン層4の結晶化が進まないため表層が柔軟で耐傷性が顕著に悪化した。
また、比較例3~6の化粧シートでは、ベシクル化されていないマイクロサイズの造核剤を用いたため、結晶化度の向上による強度向上が十分ではなく、耐傷性が顕著に悪化した。造核剤の添加量を増やせば耐傷性は良化するが、曲げ加工が悪化するため、所望の特性を示す化粧シートは得られない。
以上から、実施例1~32の化粧シートは、顔料起因の不具合、隠蔽性、耐傷性、曲げ加工適性の全てを両立した化粧シートであることが明らかとなった。更に、実施例1~32の化粧シートは、ラッピング加工平滑性も備えていることが明らかとなった。
なお、本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
1…化粧シート、2…着色フィルム(着色シート)、3…着色層、4…スキン層、5…絵柄層、6…透明樹脂層、6a…エンボス模様、6b…接着性樹脂層、7…トップコート層、8…プライマー層、B…基材

Claims (25)

  1. 無機顔料とポリプロピレン樹脂とを含む着色層と、ポリプロピレン樹脂を含むスキン層とを有し、
    上記スキン層をナノサイズの造核剤を添加して形成し
    上記スキン層の厚さが1.5μm以上7μm以下の範囲内であることを特徴とする着色シート。
  2. 上記スキン層と上記着色層とが互いに接していることを特徴とする請求項1に記載の着色シート。
  3. 上記スキン層、上記着色層、上記スキン層を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1~1:50:1の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着色シート。
  4. ポリプロピレン樹脂を含むスキン層と、無機顔料とポリプロピレン樹脂とを含む着色層と、ポリプロピレン樹脂を含むスキン層とをこの順に有し、
    上記スキン層の両方をナノサイズの造核剤を添加して形成し
    上記スキン層の厚さが1.5μm以上30μm以下の範囲内であることを特徴とする着色シート。
  5. 上記スキン層、上記着色層、上記スキン層を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1~1:50:1の範囲内であり、
    上記スキン層と上記着色層とが互いに接していることを特徴とする請求項に記載の着色シート。
  6. 上記無機顔料は、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、または炭素顔料であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の着色シート。
  7. 上記無機顔料は、酸化チタン、またはカーボンブラックであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の着色シート。
  8. 上記無機顔料の混合量は、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の着色シート。
  9. 上記着色層は、脂肪酸金属塩を含むことを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の着色シート。
  10. 上記着色層及び上記スキン層に関して、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから下記式を用いて算出されるピーク強度比をそれぞれxc、xsとした時、xc<xsであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の着色シート。
    ここで、下記式において、I997は波数997cm-1のピーク強度値、I938は波数938cm-1のピーク強度値、I973は波数973cm-1のピーク強度値を示す。
    Figure 0007326862000004
  11. 着色シート全体の引張弾性率が1000MPa以上2200MPa以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の着色シート。
  12. 上記ナノサイズの造核剤の添加量が、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の着色シート。
  13. 上記ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤が内包されている造核剤ベシクルであることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の着色シート。
  14. 上記造核剤ベシクルを、上記ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、上記造核剤ベシクル中の造核剤に換算して0.01質量部以上0.5質量部以下の範囲内で添加することを特徴とする請求項13に記載の着色シート。
  15. 上記造核剤ベシクルが、リン脂質からなる外膜を備える造核剤リポソームであることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の着色シート。
  16. 超臨界逆相蒸発法によって、上記造核剤を上記ベシクルに内包させたことを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の着色シート。
  17. 上記着色層をナノサイズの造核剤を添加して形成したことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の着色シート。
  18. 上記着色層に添加された上記ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに造核剤が内包されている造核剤ベシクルであることを特徴とする請求項17に記載の着色シート。
  19. 上記着色層に含まれる上記ポリプロピレン樹脂は、エチレンコンテンツを有するランダムポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の着色シート。
  20. 一方の上記スキン層と、他方の上記スキン層とで、互いにその厚さが異なっていることを特徴とする請求項4に記載の着色シート。
  21. 少なくとも、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載した着色シートと、トップコート層とを含むことを特徴とする化粧シート。
  22. 上記化粧シート全体の引張弾性率が1000MPa以上2200MPa以下の範囲内であることを特徴とする請求項21に記載の化粧シート。
  23. 請求項21又は請求項22に記載の化粧シートの製造方法であって、
    無機顔料をポリプロピレン樹脂に混合した着色層と、ポリプロピレン樹脂を含むスキン層とを製造し、上記スキン層の厚さが3μm以上20μm以下の範囲内であり、上記スキン層、上記着色層、上記スキン層の厚さの比が、1:6:1~1:50:1である着色シートを製造することを特徴とする化粧シートの製造方法。
  24. 上記着色シートを製造する際に、当該着色シートの引張弾性率を1000MPa以上2200MPa以下の範囲内に制御することを特徴とする請求項23に記載の化粧シートの製造方法。
  25. 超臨界逆相蒸発法によって、上記造核剤をベシクルに内包させたことを特徴とする請求項23又は請求項24に記載の化粧シートの製造方法。
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