JP3572199B2 - 有機性固形物メタン回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、性状や濃度の異なる複数種の有機性廃棄物(し尿、浄化槽汚泥、下水汚泥、畜産排水汚泥、及び生ごみや魚のあら等)を混合してメタン醗酵槽にてメタン醗酵を行ない、メタン等の有用物を回収する有機性固形物メタン回収方法に係り、特にし尿、浄化槽汚泥、下水汚泥、畜産排水汚泥(以下し尿及び汚泥と言う)等を、し渣除去した後有機性廃水生物処理を行ない、該生物処理により発生する余剰汚泥を生ごみや魚のあら等の厨芥と混合した後、メタン醗酵を行ない、メタン等の有用物を回収する有機性固形物メタン回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、前記したし尿及び汚泥を、し渣除去した後有機性廃水生物処理を行ない、該生物処理により発生する余剰汚泥を生ごみや魚のあら等の厨芥と混合した後、メタン醗酵を行ない、メタン等の有用物を回収する有機性固形物メタン回収方法は例えば特開平9−201599号に開示されており、公知である。
【0003】
かかるメタン回収プロセスを図4に基づいて説明するに、先ずし尿や浄化槽汚泥は、スクリーン等を利用してし渣除去(S1)を行なった後、曝気槽と沈殿槽等からなる活性汚泥装置により生物処理(S2)を行ない、その上澄み液は凝集分離/活性炭処理等の高度処理(不図示)を行なった後、放流される。
一方、前記生物処理で沈殿除去された余剰汚泥は、濃縮槽で濃縮(S3)された後、生ごみや魚のあら等の厨芥を破砕(S4)した破砕厨芥とともに、混合槽に投入される。
混合槽(S5)では前記濃縮された余剰汚泥と厨芥を十分混合した後メタン醗酵槽でメタン醗酵(S6)される。
【0004】
そして前記メタン醗酵(S6)によりガス化したメタンガス等の消化ガスは、発電(S7)等に供され、処理場内電力として利用されると共に、メタン醗酵(S6)後の消化汚泥は脱水(S8)されて、その脱水後の脱水ケーキはコンポスト化(S9)されて堆肥等に利用され、一方脱水瀘液は活性汚泥装置等の生物処理槽に返送される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、生物処理(S2)後の余剰汚泥と厨芥では有機物分解の容易性が大きく異なり、より具体的には余剰汚泥中には分解が困難であるセルローズ等が含まれる割合が多いため、メタン醗酵槽の前段で余剰汚泥と生ごみを単に混合処理しただけでは、メタンガス回収量については厨芥起因のガス発生率は高いが余剰汚泥起因のガス発生量が低いという課題を有していた。
【0006】
一方メタン醗酵槽にて厨芥等の分解しやすいものを主に処理する場合、メタン発酵槽内の汚泥濃度が低下し、これによりメタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブルが生じやすい。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑み、セルローズ等の難分解性有機物を多量に含む余剰汚泥についても厨芥と同様に高効率でメタンガスを回収することの出来る有機性固形物メタン回収方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、メタン醗酵槽の高効率化と共に、メタン発酵槽の未消化汚泥の一部を槽内に返送し、槽内の固形物濃度低下を防止することでメタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブルの発生を有効に阻止し得る有機性固形物メタン回収方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、有機性廃水生物処理より発生する余剰汚泥を厨芥と混合した後、メタン醗酵を行ない、メタン等の有用物を回収する有機性固形物メタン回収方法において、
前記余剰汚泥を厨芥と混合する前段側で、熱、超音波、溶菌酵素若しくはこれらを組合せた可溶化手段により可溶化を促進した後、前記厨芥と混合することを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、余剰汚泥のセルローズ等の難分解性有機物に熱を加えるか、超音波を加えるか、若しくは溶菌酵素と反応させて低分子化と可溶化を図ることにより、該可溶化した余剰汚泥を厨芥と混合した後のメタン醗酵において、高効率でメタンガスを回収することが出来る。
即ち、メタン醗酵は、前記余剰汚泥と厨芥に含まれる炭水化物や蛋白質などの有機物を生酸菌によって低級脂肪酸等に分解した後、更にメタン細菌によってメタンガスと炭酸ガスにまで分解されるものであるが、生酸菌によって余剰汚泥中の難分解性有機物の分解性が向上しているために、厨芥と同様に高効率でメタンガスを回収することが出来る。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の有機性固形物メタン回収方法において、
前記メタン醗酵槽から排出された消化汚泥を脱水し、該脱水汚泥の一部をメタン醗酵設備へ返送することを特徴とする。
【0012】
かかる発明は、メタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブル時対策として脱水汚泥の一部を返送して固形物の供給を行なうものである。これによりメタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブルを防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
図1は請求項1記載の発明の第1実施形態に係るメタン回収プロセスを示し、図1において、先ずし尿や浄化槽汚泥は、スクリーン等を利用してし渣除去(S1)を行なった後、曝気槽と沈殿槽等からなる活性汚泥装置により生物処理(S2)を行ない、その上澄み液は凝集分離/活性炭処理等の高度処理(不図示)を行なった後、放流される。し渣除去(S1)工程により除去されたし渣は焼却炉(S10)に送られる。
【0015】
一方、前記生物処理で沈殿除去された余剰汚泥は濃縮槽で濃縮(S3)された後、熱若しくは超音波(S11)により、余剰汚泥に含まれるセルローズ等を有機酸に分解する等低分子化と可溶化を図る。
この場合、熱は50〜60℃以上加熱すればよく、又超音波の発振強度はセルローズ等の分子構造をほぐし得る程度の強度で足りる。
【0016】
そして低分子化と可溶化を図った余剰汚泥は生ごみや魚のあら等の厨芥を破砕(S4)した破砕厨芥とともに、混合槽(S5)に投入される。
混合槽(S5)では前記濃縮された余剰汚泥と厨芥を十分混合した後メタン醗酵槽でメタン醗酵(S6)される。
【0017】
メタン醗酵槽では、前記余剰汚泥が厨芥と同程度に分子構造が低級化しているのでメタン発酵での分解性が向上し、高効率でメタンガスを回収することが出来る。
【0018】
そして前記メタン醗酵(S6)によりガス化したメタンガス等の消化ガスは、発電(S7)等に供され、処理場内電力として利用されると共に、メタン醗酵(S6)後の消化汚泥は脱水(S8)されて、その脱水後の脱水ケーキはコンポスト化(S9)されて堆肥等に利用され、一方脱水瀘液は活性汚泥装置等の生物処理槽に返送される。
【0019】
かかる実施形態によれば、セルローズ等の難分解性有機物を多量に含む余剰汚泥についても厨芥と同様に高効率でメタンガスを回収することが出来る。
【0020】
図2は請求項1記載の発明の第2実施形態に係るメタン回収プロセスを示し、図1との差異を中心に説明するに、前記生物処理で沈殿除去された余剰汚泥は濃縮槽で濃縮(S3)された後、溶菌酵素(S12)により、余剰汚泥に含まれるセルローズ等を酸醗酵させて有機酸に分解して低分子化と可溶化を図る。
そして低分子化と可溶化を図った余剰汚泥は生ごみや魚のあら等の厨芥を破砕(S4)した破砕厨芥とともに、混合槽(S5)に投入される。
以下の工程は前記実施形態と同様である。
【0021】
図3は請求項2記載の発明の第1実施形態に係るメタン回収プロセスを示し、前記余剰汚泥を厨芥と混合する前段側で、熱、超音波、溶菌酵素若しくはこれらを組み合せた可溶化手段を設けてもよく、また設けない場合も本発明が適用される。
【0022】
即ち、本実施形態は、有機性廃水生物処理より発生する余剰汚泥を、必要に応じて可溶化手段により低分子化と可溶化(S11、S12)を行なった後、混合槽(S5)にて破砕された厨芥と混合し、更にメタン醗酵槽にてメタン醗酵(S6)を行ない、該メタン醗酵槽から排出された消化汚泥を脱水するまでは、前記従来技術若しくは図1若しくは図2に示す実施形態と同様であるが、メタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブル時対策として脱水汚泥の一部を返送(S13)して固形物の供給を行なうものである。
【0023】
かかる実施形態によれば、メタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブルを防止できるとともに、メタン醗酵槽から排出された消化汚泥は前記返送の繰り返しにより、例え、余剰汚泥のセルローズ等の難分解性有機物であっても十分消化され、メタン醗酵槽の未消化汚泥については系外に排出することなく、十分に消化した汚泥についてコンポスト化(S9)を図ることが出来る。
【0024】
【発明の効果】
以上記載のごとく請求項1記載の発明によれば、セルローズ等の難分解性有機物を多く含む余剰汚泥についても厨芥と同様に高効率でメタンガスを回収することが出来る。
又、請求項2記載の発明によれば、メタン醗酵槽の高効率化と共に、メタン醗酵槽での有機酸生成による酸敗状態等のトラブルの発生を有効に阻止し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1記載の発明の第1実施形態に係るメタン回収プロセスを示すフロー図である。
【図2】請求項1記載の発明の第2実施形態に係るメタン回収プロセスを示すフロー図である。
【図3】請求項2記載の発明の第1実施形態に係るメタン回収プロセスを示すフロー図である。
【図4】従来技術に係るメタン回収プロセスを示すフロー図である。
【符号の説明】
(S2) 有機性廃水生物処理工程
(S5) 余剰汚泥と厨芥との混合槽
(S6) メタン醗酵工程
(S11) 熱、超音波付与工程
(S12) 溶菌酵素工程
(S13) 脱水汚泥の一部をメタン醗酵設備へ返送する工程
Claims (2)
- 有機性廃水生物処理より発生する余剰汚泥を厨芥と混合した後、メタン醗酵を行ない、メタン等の有用物を回収する有機性固形物メタン回収方法において、
前記余剰汚泥を厨芥と混合する前段側で、熱、超音波、溶菌酵素若しくはこれらを組合せた可溶化手段により可溶化を促進した後、前記厨芥と混合することを特徴とする有機性固形物メタン回収方法。 - 前記メタン醗酵槽から排出された消化汚泥を脱水し、該脱水汚泥の一部をメタン醗酵設備へ返送することを特徴とする請求項1記載の有機性固形物メタン回収方法。
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