JP3569367B2 - 甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、畝に栽培された甘薯を収穫するに際してその蔓を引き抜く甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
土中において生育した甘薯を収穫するには、前もって地上にある蔓を取り払わなければ能率的な収穫は行えない。これを行うのが甘薯蔓引抜機であり、地上に這う甘薯の蔓を所定の幅(引抜幅)で引き抜いて排出しながら走行する構造をしている。ところで、甘薯の蔓は地上に層をなして強い根張力で繁茂しており、且つ、互いに強固に絡み合って網状になっていることから、引抜幅の外端(境界)にある蔓を正確に分蔓又は切断するとともに、強力な引抜力で引き抜かなければならない。
【0003】
多くの甘薯引抜機は、左右一対の挟扼ベルトを中央側側辺が互いに押圧するように前低後高に斜設したもので引抜・排出装置を構成し、挟扼ベルトを張り掛ける前後どちらかのローラを駆動して挟扼ベルトを回動させ、その挟扼力で蔓を引き抜くようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、挟扼ベルトはその性質上長さの長いものになるため、このような駆動機構では十分な挟扼力が出ないおそれがある。このため、押圧プーリを数多く設けて押圧力を高めたり、挟扼ベルトに突起を形成したりして対処している。しかし、前者にあっては、あまり強く押しすぎると抵抗が増えて回動できなくなり、後者にあっても、突起同士が擦れて傷付けてしまうといった欠点がある。
本発明は、このような課題を解決するものであり、このような方法によらないで挟扼ベルトの挟扼力を高めたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題の下、本発明は、地上に繁茂する甘薯の蔓を所定幅の引抜幅に設定して引抜幅の外端にある蔓を分蔓、切断し、引抜幅内にある蔓を引抜・排出装置で引き抜いて排出しながら走行する甘薯蔓引抜機において、引抜・排出装置を、左右一対の挟扼ベルトを中央側側辺が互いに押圧するように前低後高に斜設したもので構成するとともに、挟扼ベルトを張り掛ける前部ローラと後部ローラとの間に挟扼ベルトの中央側側辺に接当する駆動ローラを設け、駆動ローラと前部ローラを共に強制駆動させたことを特徴とする甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構を提供したものである。
【0006】
又、本発明は、挟扼ベルトの駆動ローラから後方部分を左右に回動可能にした構成、前部ローラと駆動ローラとによる挟扼ベルトの周速を同じにした構成、前部ローラと駆動ローラとによる挟扼ベルトの周速を駆動ローラとによるものの方を早くした構成を併せて提供する。
【0007】
本発明が以上の手段をとることにより、挟扼ベルトは駆動ローラと前部ローラの二つの強制駆動されるローラで駆動されることになり、駆動力及びそれに基づく張力が増し、その中央側側辺同士の押圧による挟扼力も高まる。この場合において、挟扼ベルトの途中を折曲させたり、中央にある駆動ローラに基づく挟扼ベルトの周速を前部にある前部ローラに基づくそれよりも早くすると、更にこの効果が助長される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一例を示す甘薯蔓引抜機の側面図、図2は一部正面図、図3は斜め上方正面図、図4は駆動系統説明側面図であるが、甘薯蔓引抜機は、車輪10で支えられる機台12を有するものであり、機台12にはエンジン14や走行ミッション16が載架されるとともに、操縦ハンドル18が後延して取り付けられるものである。エンジン14の動力は走行ミッション16を経て車輪12に伝えられ、これを駆動して走行するとともに、このとき、操縦者は操縦ハンドル18を操作して操縦する。
【0009】
機台12には、この他にエンジン14から自在継手付き駆動ロッド20を介して動力が伝えられる作業部ミッション22も載架されており、これから機枠フレーム24が斜め下方に延設されている。機枠フレーム24には、前部から分蔓装置26、切断装置28、掻込装置30、引抜・排出装置32が順に設けられている。
【0010】
一般に、甘薯は畝を形成して栽培されるが、生育した甘薯の蔓は地上全面に層をなして繁茂している。甘薯蔓引抜機は、この蔓を引抜幅を設定して引き抜き、排出しながら走行するものである。尚、蔓が引き抜かれた後の甘薯は、別の収穫機又は手作業で収穫される。
【0011】
分蔓装置26は、蔓の一部を引抜幅とそうでない幅に分蔓するものであり、切断装置28は、引抜幅の境界にある未分蔓の蔓を切断するものである。引き抜かれる蔓は、この両装置26、28によって引抜幅が正確に設定される。この分蔓装置26は、機枠フレーム24の下端に左右一個ずつの切断装置駆動ケース34をほぼ引抜幅の間隔で取り付け、各々の上部に取り付けられた分蔓杆36と下部に取り付けられた分蔓板38とで構成される。
【0012】
このうち、分蔓杆36は、切断装置駆動ケース34から前上方に向けて角状に突出する形態をしており、分蔓板38は、前下方に向けて突出する形態をしている。ここで、分蔓杆36は、その上端が蔓の中から頭を出す程度の長さに設定される。
【0013】
切断装置駆動ケース34のそれぞれの外方には、固定刃40と移動刃42とからなるバリカン刃44が縦に設置されており、バリカン刃44の丈は分蔓杆36と分蔓板38との間に設定される。尚、バリカン刃44の先端ラインは、機枠フレーム24とほぼ直角に設定されていて上方が前方に傾けてある。蔓に対する切断性を向上させるためである。
【0014】
掻込装置30は、引抜幅内にある蔓を掻き込むものであり、蔓を掻き込む方向に回動する突起付きベルト46を左右一対前方開きに設けたものである。具体的には、前方と後方にそれぞれ遊動ローラ48と駆動ローラ50を取り付け、各ローラ48、50に突起付きベルト46を張り掛けたものである。
【0015】
引抜・排出装置32は、掻込装置30で掻き込まれた蔓を上方に引き抜き、後上方へ搬送して排出するものであり、蔓を後上方へ移送する方向に回動する左右一対の挟扼ベルト52をその中央側側辺同士を相互に押圧し合うように設けたものである。その具体的構成は、作業部ミッション22から上方へ突出させた駆動軸54に駆動ローラ56を取り付け、駆動軸54から前方と後方にそれぞれ前部取付けフレーム58と後部取付けフレーム60を延出する。
【0016】
そして、前部取付けフレーム58と後部取付けフレーム60のそれぞれの端部に前部従動軸62と後部従動軸64とを軸装し、各々に前部ローラ66と後部ローラ68を取り付け、各ローラ56、66、68に挟扼ベルト52を張り掛けたものである。尚、挟扼ベルト52の所々には押圧プーリ70を設けて挟扼力を高めるようにしている。
【0017】
ところで、この場合、後部取付けフレーム60を駆動軸54の回りに回動できるようにしておけば、後部ローラ68を左右に振らせて挟扼ベルト52の後半を左右に折曲させることができる。これにより、蔓を機台12の側方に排出できるから、作業を邪魔しないし、後の蔓の集荷も容易になる。尚、前部従動軸62は更に上方に延ばし、これに前記した掻込装置30の駆動ローラ50を取り付けておく。
【0018】
次に、以上の各装置の駆動系統を説明すると、駆動軸54と前部従動軸62の上部(駆動ローラ56や前部ローラ66よりも上方)に各々スプロケット72、74を取り付け、これにチェーン76を張り掛けておく。これにより、駆動軸54を駆動すると、引抜・排出装置32の駆動ローラ56と前部ローラ66は共に強制駆動され、挟扼ベルト52は駆動される。同時に、掻込装置30の駆動ローラ50も強制駆動され、突起付きベルト46も駆動される。
【0019】
この他、前部従動軸62の駆動力はその下端に取り付けられたベベルギア機構78で切断装置駆動ケース34の後部に導かれるようになっており、この中でスプロケット・チェーン機構80によって前方のカム軸82に伝えられるようになっている。カム軸82には中心から偏心させた位置にピン84を突設する偏心カム86が取り付けられており、偏心カム86のピン84は切断装置28の移動刃42に形成される長孔板88に突入している。従って、前部従動軸62の駆動力は偏心カム86を回転させ、移動刃42を往復動させて固定刃40とで蔓を切断する。
【0020】
以上により、地上に繁茂した蔓は、先ず、分蔓装置26と切断装置28とでその引抜幅が設定される。この場合、分蔓装置26を構成する分蔓杆36と分蔓板38は、蔓の上層部分と下層部分の分蔓(一部は切断もする)を確実に果たす。更に、このときの分蔓杆36の上端は蔓の中から頭を出すものであるため、これが走行の際の絶好の指標杆ともなる。
【0021】
一方、分蔓装置26では分蔓されない中層部分の蔓は切断装置28で切断されるから、結局、引抜幅の境界にある蔓はすべて分蔓又は切断されて引抜幅が正確に決まる。この場合、切断装置28は軽負荷で作動するとともに、分蔓杆36と分蔓板38の前記した態様は未分蔓の蔓をこの切断装置28に誘導する役目も果たす。
【0022】
以上のようにして設定された引抜幅内にある蔓は掻込装置30で中央に掻き寄せられ、引抜・排出装置32で引き抜かれて機台12の側方に排出される。このとき、引抜・排出装置32の挟扼ベルト52を上下二つの強制駆動される前部ローラ66と駆動ローラ56とで駆動することにより、駆動力が増して挟扼ベルト52同士の押圧による挟扼力も高まり、引抜力、移送力が増す。
【0023】
ところで、前部ローラ66と駆動ローラ56とによる挟扼ベルト52の周速は、一般には同速に設定されるが、回動方向下手にある駆動ローラ56によるそれを前部ローラ66によるそれよりも早くすると、挟扼ベルト52の張力が増して挟扼力も一層高まることが予想される。又、挟扼ベルト52の後方を左右へ回動させたときも、張力が高まり、挟扼力が増す。
【0024】
尚、引き抜かれる蔓は引抜・排出装置32の下方に設けられる甘薯を通さない不通過ゲート90をくぐって引き抜かれるようになっており、仮に、蔓に甘薯が付いてきても、ここですごき落とされるようになっている。
【0025】
以上の他、機台12の前部には高さ調整が可能なゲージホイル92が設けられている。このゲージホイル92は、機台12の前部を支えるとともに、分蔓装置26や切断装置28の高さを調整するためのものである。ところで、本例のゲージホイル92は、その高さ調整機構94が傾斜回転可能ロッド96で操縦ハンドル18の傍に設けられる高さ調整ハンドル98に連係されており、このハンドル98の回動操作で上下が調整できるようになっている。尚、本例のゲージホイル92は機台12の一側に一個設けられているが、これは一例であり、両側に設けてもよい。
【0026】
更に、挟扼ベルト52の外方側側辺には、これに接当する遊転プーリ100が駆動ローラ56のやや下方辺りに設けられている。この遊転プーリ100は挟扼ベルト52を張る作用をするとともに、挟扼ベルト52の後半を左右に回動するときの折曲点になるものである。
【0027】
この他、挟扼ベルト52や突起付きベルト46の上部には安全のためのカバー102、104が設けられており、このうち、挟扼ベルト52のカバー104は駆動軸54を境にして二つ104a、104bに別れており、挟扼ベルト52の途中からの回動を可能にしている。又、バリカン刃44の外側にはこの部分を覆う安全カバー106がスライド式に設けられている。
【0028】
【発明の効果】
以上、本発明は、地上にある甘薯の蔓を引抜き、移送、排出する引抜・排出装置を構成する左右一対のその中央側側辺同士を相互に押圧し合うように設けた挟扼ベルトを前部ローラと中央にある駆動ローラの二つで強制駆動するようにしたものであるから、駆動力が増して挟扼ベルト同士の押圧による挟扼力も高まり、引抜力、移送力が増す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す甘薯蔓引抜機の駆動系統説明側面図である。
【図2】本発明の一例を示す甘薯蔓引抜機の側面図である。
【図3】本発明の一例を示す甘薯蔓引抜機の一部正面図である。
【図4】本発明の一例を示す甘薯蔓引抜機の上方正面図である。
【符号の説明】
32 引抜・排出装置
52 挟扼ベルト
56 駆動ローラ
66 前部ローラ
68 後部ローラ

Claims (4)

  1. 地上に繁茂する甘薯の蔓を所定幅の引抜幅に設定して引抜幅の外端にある蔓を分蔓、切断し、引抜幅内にある蔓を引抜・排出装置で引き抜いて排出しながら走行する甘薯蔓引抜機において、引抜・排出装置を、左右一対の挟扼ベルトを中央側側辺が互いに押圧するように前低後高に斜設したもので構成するとともに、挟扼ベルトを張り掛ける前部ローラと後部ローラとの間に挟扼ベルトの中央側側辺に接当する駆動ローラを設け、駆動ローラと前部ローラを共に強制駆動させたことを特徴とする甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構。
  2. 挟扼ベルトの駆動ローラから後方部分を左右に回動可能にした請求項1記載の甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構。
  3. 前部ローラと駆動ローラとによる挟扼ベルトの周速を同じにした請求項1又は2記載の甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構。
  4. 前部ローラと駆動ローラとによる挟扼ベルトの周速を駆動ローラとによるものの方を早くした請求項1又は2記載の甘薯蔓引抜機における引抜・排出装置の駆動機構。
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