JP3569185B2 - 不揮発性半導体記憶装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はメモリセルを一括して消去することができる不揮発性半導体記憶装置に関し、特に、NOR型のフラッシュメモリのようにメモリセルの過剰消去が問題となる不揮発性半導体記憶装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メモリセルに対する書き込みおよび消去を電気的に行うことの可能な不揮発性半導体記憶装置として最近はフラッシュメモリが主流となってきている。フラッシュメモリはメモリセルアレイの全部又はその一部のメモリセルから成るブロック(「セクタ」などとも呼ぶ)を単位としてメモリセルを一括して消去できるという特徴がある。
【0003】
フラッシュメモリでは、メモリセルのフローティングゲートへ電子の注入又は電子の引き抜きを行うことでメモリセルに対する書き込み又は消去を行っている。その際、フローティングゲートに電子が存在する程度に応じてメモリセルの閾値電圧が変化するため、この性質を利用して、電子がフローティングゲートに注入されて閾値電圧の高くなった状態(書き込み状態)を例えば論理“0”に対応させ、電子がフローティングゲートから引き抜かれて閾値電圧の低くなった状態(消去状態)を例えば論理“1”に対応させている。
【0004】
ところが、メモリセルを構成しているトランジスタの酸化膜の膜厚や微少欠陥といった製造ばらつきに起因して消去速度がメモリセル毎に異なっており、同じように消去を行ったとしても各メモリセルの閾値電圧は一定とならず、メモリセル全体として見ると閾値電圧が或る分布を持っている。つまり、一括消去を行った場合、消去速度の遅いメモリセルを目標とする閾値電圧まで消去したときには、消去速度の速いメモリセルが目標とする閾値電圧に対して消去され過ぎた状態となる。このように過剰に消去されたメモリセルは「深いデプリーションのメモリセル」又は「デプリート不良のメモリセル」などと呼ばれている。過剰に消去されたメモリセルは様々な問題を引き起こすため、こうしたメモリセルが最終的に存在しないようにしておく必要がある。
【0005】
深いデプリーションのメモリセルへの対策を行ったフラッシュメモリとしては、例えば特開平8−106793号公報に開示されているものが挙げられる。この公報では消去対象ブロック内のメモリセルの消去を次のようにして行っている。まず、閾値電圧の低い“1”のメモリセルを検出して“0”に相当する閾値電圧となるまで書き込みを行うことで、消去対象ブロック内の全てのメモリセルを“0”の状態にする。次に、消去対象ブロック内の全メモリセルを一括消去してこれらメモリセルを“1”の状態にする。このとき、全てのメモリセルの閾値電圧の上限が予め決められた「消去ベリファイ電圧」となるように消去を行う。
【0006】
こうして一括消去が行われると、上述したメモリセル間に存在する消去速度の違いによって閾値電圧が負となった深いデプリーションのメモリセルが生じる。そこで、メモリセルのコントロールゲートに印加するワード線の電圧を“0V”に設定して深いデプリーションのメモリセルを探し出し、デプリーションを解消するための書き戻しを行う。このとき、ディジット線(ビット線,データ線などとも呼ぶ)に接続されているメモリセルの何れが深いデプリーションにあるかまでは分からないとの理由から、メモリセル単位ではなくディジット線単位で書き戻しを行うようにしている。
【0007】
そのために、当該ディジット線に接続されたメモリセル全てに対して浅い書き込みを行い、その後、当該ディジット線にデプリーションが無くなったかどうかのベリファイを行って、当該ディジット線に深いデプリーションのメモリセルが無くなるまで浅い書き戻しを繰り返し行ってゆく。この後に、ワード線の電圧を“1.2V”に設定してワード線に“0V”を印加したときと同様にして書き戻し・ベリファイを行って、潜在的に深いデプリーションのメモリセルをメモリセル単位で書き戻すようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記公報に開示されているフラッシュメモリには以下に詳述するような問題がある。図8はこの問題を説明するためのグラフであって、消去対象ブロック内の全てのメモリセルについて閾値電圧の分布を示している。同図では、横軸が閾値電圧毎のメモリセル数Nを表しており、縦軸がメモリセルの閾値電圧Vtmを表している。同図の左端に示したグラフが実際の閾値電圧の分布を示しており、このうちの符号D1で示される分布がデプリーションの深いメモリセルに相当しており、符号D2で示される分布がデプリーションのない正常に消去されたメモリセルに相当している。
【0009】
また、同図の中央に示したグラフは見かけ上の閾値電圧の分布であって、正常に消去されたメモリセルの分布D3が同図の左端のグラフに示した分布D2に比べて下がって見えている。こうした現象は分布D1で示されたデプリーションの深いメモリセルの存在によって引き起こされる。そこでこの現象について以下に説明する。ここで、図9はフラッシュメモリの一部分のみを取り出して描いたものであって、ディジット線100はメモリセルアレイを構成する多数のディジット線のうちの1本である。また、センスアンプ101はディジット線100に流れる電流Idの電流量と予め設定されたリファレンス電流の電流量を比較して、ディジット線100に接続されたメモリセルの記憶データをセンスする。
【0010】
また、不揮発性のメモリセル102〜104はディジット線100に接続された多数のメモリセルの一部である。さらに、ワード線105〜107はこれらメモリセル102〜104をそれぞれ選択するための信号線であり、電流Ic1〜Ic3はそれぞれメモリセル102〜104のドレイン・ソース間に流れる電流である。ここで、メモリセル102,103は書き込み状態にあるメモリセルであり、メモリセル104は深いデプリーションのメモリセルである。いま、メモリセル102の閾値電圧を判定するためには、ワード線105に所定の電圧を印加するとともにワード線106,107および図示しないその他のワード線は何れも“0V”としておく。
【0011】
ここで、上述したのとは反対にメモリセル104がデプリーションの深いメモリセルでないとすると、ワード線105に印加された上記所定の電圧がメモリセル102の閾値電圧に達していなければメモリセル102はオフのままとなって、電流Ic1の電流量はほぼ“0”となる。このとき、ワード線105以外には電圧を印加していないため、電流Ic2,Ic3の電流量もほぼ“0”であることから電流Idの電流量は結局“0”になる。一方、ワード線105に印加された上記所定の電圧がメモリセル102の閾値電圧以上であるとメモリセル102がオンとなる。このため、メモリセル102の特性で決まる電流Ic1が流れ、電流Ic2,Ic3の電流量が“0”であることから電流Id=電流Ic1となる。したがって、センスアンプ101が電流Idの電流量をセンスすることで、メモリセル102の閾値電圧が上記所定の電圧以上であるか否か判別できる。
【0012】
ところが、メモリセル104が上述したようにデプリーションの深いメモリセルであると、例えばメモリセル102の読み出しを行ったときに、当該メモリセルに記憶されているデータが“0”であっても“1”のデータであるかのように誤読み出しされることが起こりうる。すなわち、深いデプリーションのメモリセル104は閾値電圧が“0V”を下回っているため、ワード線107に印加される電圧が“0V”であっても相当程度の電流Ic3が流れてしまう。このため、メモリセル102を選択したときの電流Idの電流量は電流Ic1,Ic3の和の電流量になる。
【0013】
つまり、過剰に消去されているメモリセルと同一のディジット線に接続されているメモリセル102,103等の読み出しを行うと電流Idの電流量が見かけ上大きくなる。ここで、メモリセルのコントロールゲートに印加される電圧が同じであれば、メモリセルの閾値電圧が低いほど当該メモリセルに流れる電流の電流量は増大する。したがって、電流Idの電流量が見かけ上大きくなるということはメモリセル102の閾値電圧が低く見えることと等価である。そして、こうしたことが他のメモリセルについても同様に生じるため、消去対象ブロックの全メモリセルの閾値電圧分布は上述したように実際の分布に比べて全体的に下がって見えることになる。
【0014】
ところで、上乗せされる電流Ic3の電流量が大きいと電流Idの電流量が上述したリファレンス電流の電流量を上回ってしまう。このため、メモリセル102が実際には閾値電圧の高い“0”のデータであるにも拘わらず、閾値電圧の低い“1”のデータであるかのように見えてしまうという問題を生じる。こうした誤読み出しをなくすためには、デプリーションの深いメモリセルを書き戻してやることで、過剰に消去された状態を解消して正常に消去された状態にしてやる必要がある。ところが、従来のフラッシュメモリでは書き戻しの過程において以下のような新たな問題が生じてしまう。
【0015】
すなわち、デプリーションの深いメモリセルによって閾値電圧分布が下がって見えると、図8に示した「書き戻し判定レベル」以上の閾値電圧を持つメモリセルを対象に書き戻しを行ったときに、分布D3のメモリセルのうち書き戻し判定レベル未満の閾値電圧を持ったメモリセルは正常に消去が行われていて本来書き戻す必要がないにも拘わらず書き戻されてしまう。メモリセルに対する書き戻しは消去のときのように一括して行うことはできずメモリセル単位で行うしかないため、本来必要のないメモリセルの書き戻し分だけ消去処理全体の処理時間が増大してしまうことになる。
【0016】
また、図8の中央のグラフに示した分布に対して書き戻しを行うと、メモリセルの閾値電圧分布は同図の右端のグラフに示した分布D4,D5となる。消去動作では、消去対象ブロックの全メモリセルについてそれらの閾値電圧を図示した「消去判定レベル」以下に収める必要があるが、分布D5に関しては閾値電圧が上がり過ぎてしまってこの「消去判定レベル」を越えている。この分布D5のメモリセルを「消去判定レベル」以下にするには再度の消去を行う必要があるため、消去処理全体の処理時間がさらに長くなってしまう。しかも、再度の消去によって深いデプリーションのメモリセルが生じると再び書き戻しを行ってやる必要があるため、場合によっては再度の消去と再度の書き戻しが無限に繰り返される事態に陥ってしまう恐れもある。
【0017】
さらに、デプリーションの深いメモリセルが存在していると分布D4,D5で示したように閾値電圧の分布が全体的に広がってしまうため、書き戻しの過程でメモリセルの閾値電圧が「書き戻し判定レベル」以上となったかを調べるベリファイの際に読み出しマージンが十分取れなくなってしまうという問題もある。したがって、読み出しマージンに余裕を持たせるためには、デプリーションの深いメモリセルを予め除去しておいて閾値電圧分布の幅を狭めておくことが有効であると考えられる。
【0018】
このほか、近年においては微細化によるトランジスタの耐圧低下対策や低消費電力化,高速化を図るために、不揮発性半導体記憶装置を含めた様々な半導体装置が低電源電圧動作のものに移行しつつある。低電源電圧動作を実現するにはメモリセルの閾値電圧を下げる必要があり、それに伴ってメモリセルの閾値電圧分布も狭めてゆかねばならない。しかしながら、メモリセルの元々の閾値電圧分布は製造プロセスによって決まってくるため、それを一朝一夕に改善することは困難であると言える。したがって、製造工程に改良を加えることなく、消去動作等の回路動作に工夫を凝らすことで閾値電圧の分布を実質的に狭めることができれば極めて都合が良い。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、デプリーションの深いメモリセルが存在しても余計な書き戻しを行わずに済み、書き戻し回数が増えて消去処理全体の処理時間の増大などを引き起こさない不揮発性半導体記憶装置を提供することにある。また、本発明の目的は、メモリセルの閾値電圧分布をできる限り狭めることで、読み出しマージンを十分確保するとともに低電源電圧動作にも適した不揮発性半導体記憶装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、電気的に書き込みおよび一括消去が可能な不揮発性のメモリセルを有し、過剰に消去されたメモリセルによってメモリセルの閾値電圧分布が影響を受ける不揮発性半導体記憶装置において、消去対象のメモリセルを一括消去する第1の消去手段と、該一括消去によって過剰に消去されたメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻し手段と、該書き戻しの後に所望の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去する第2の消去手段と、該消去の後に所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻し手段とを具備することを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、電気的に書き込みおよび一括消去可能な不揮発性のメモリセルを有し、過剰に消去されたメモリセルによってメモリセルの閾値電圧分布が影響を受ける不揮発性半導体記憶装置において、消去対象のメモリセルを所望の消去判定レベルよりも高い第1の消去判定レベルまで一括消去する第1の消去手段と、該一括消去によって過剰に消去されたメモリセルを所望の書き戻し判定レベルよりも低い第1の書き戻し判定レベルまでメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻し手段と、該書き戻しの後に前記所望の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去する第2の消去手段と、該消去の後に前記所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻し手段とを具備することを特徴としている。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第1の消去判定レベルは、過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧が前記第1の書き戻し手段による書き戻しで上昇する電圧分だけ、前記所望の消去判定レベルよりも高く設定されていることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、電気的に書き込みおよび一括消去可能な不揮発性のメモリセルを有し、過剰に消去されたメモリセルによってメモリセルの閾値電圧分布が影響を受ける不揮発性半導体記憶装置において、消去対象のメモリセルを所望の消去判定レベルまで一括消去する消去手段と、該一括消去によって過剰に消去されたメモリセルを所望の書き戻し判定レベルよりも低い第1の書き戻し判定レベルまでメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻し手段と、該書き戻しの後に前記所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻し手段とを具備することを特徴としている。
また、請求項5記載の発明は、請求項2〜4の何れかの項記載の発明において、前記第1の書き戻し判定レベルは、過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧が前記第1の書き戻し手段による書き戻しで上昇する電圧分だけ、前記所望の書き戻し判定レベルよりも低く設定されていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかの項記載の発明において、前記第1の書き戻し手段が書き戻しの際に前記メモリセルへ印加する書き込み制御電圧は、前記第2の書き戻し手段が書き戻しの際に前記メモリセルへ印加する書き込み制御電圧よりも高いことを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れかの項記載の発明において、前記第1の書き戻し手段又は前記第2の書き戻し手段は、書き戻しに伴って行われるベリファイの際に、該ベリファイの対象となっているメモリセルに印加する読み出し制御電圧を通常の読み出しのときに印加する読み出し制御電圧よりも高く設定していることを特徴としている
【0023】
また、請求項記載の発明は、請求項1〜の何れかの項記載の発明において、前記第1の書き戻し手段又は前記第2の書き戻し手段は、書き戻しの対象となっているメモリセルを過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧分布の中間付近に書き戻すことを特徴としている
また、請求項9記載の発明は、消去対象のメモリセルを第1の消去判定レベルよりも高い第2の消去判定レベルまで一括消去する第1の消去ステップと、前記一括消去によって過剰に消去されたメモリセルを第1の書き戻し判定レベルよりも低い第2の書き戻し判定レベルまでメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻しステップと、前記第1の書き戻しステップの後に前記第1の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去する第2の消去ステップと、前記第2の消去ステップの後に前記第1の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻しステップとを有することを特徴としている。
【0024】
【発明の実施の形態】
〔基本思想〕
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、まず始めに図2のグラフを参照して本発明による消去処理の基本となる技術思想について説明する。なお、以下では不揮発性半導体記憶装置の一例としてフラッシュメモリを取り上げて説明する。また、図2では図8に準じて同一の分布については同じ符号を付与してある。
【0025】
本発明では消去対象ブロックに対する消去処理を2つの段階(すなわち、後述する「第1ステップ」および「第2ステップ」)を踏んで行うものとし、各ステップにおいてそれぞれ消去及び書き戻しを行っている。その際、書き戻し判定レベルおよび消去判定レベルをステップ毎に別々に設定している。ここで言う「書き戻し判定レベル」とは、これを下回る閾値電圧を持った深いデプリーションのメモリセルに書き戻しを行って当該書き戻し判定レベル以上の閾値電圧にするためのレベルを意味している。一方、「消去判定レベル」とは、これを上回る閾値電圧を持つメモリセルを消去して当該消去判定レベル以下の閾値電圧にするためのレベルを意味している。
【0026】
なお、従来技術で挙げた上記公報では、本発明の書き戻し判定レベルに相当する「デプリートベリファイ電圧」をそのままワード線に印加して書き戻しを行うべきか否か判定している。これに対し、後述する本発明の実施形態では書き戻し判定レベルをそのままワード線に印加しているわけではない。すなわち、本実施形態における書き戻し判定レベルは、書き戻し対象になるメモリセルと書き戻し対象にならないメモリセルとの間の閾値電圧の境界を示すものである。
【0027】
さて、図2の左端に示したグラフは図8に示した分布D1〜D3を重ね合わせたものを参考までに示したものである。また、図2の中央に示すグラフは第1ステップの動作を示しており、図2の右端に示したグラフは第2ステップの動作を示している。そして、ここでは消去対象ブロックの閾値電圧の分布を「書き戻し判定レベル2」〜「消去判定レベル2」の範囲内に収めることを目標として消去を行うようにしている。
【0028】
まず第1ステップでは、「消去判定レベル2」よりも高めに設定された「消去判定レベル1」を用いて、消去対象ブロックの消去と当該消去が完了したかどうかの判定(以下これらを「消去・ベリファイ」という)を実施する。第1ステップではこの消去・ベリファイに引き続いて、消去対象ブロックに対する書き戻しと当該書き戻しが完了したかどうかの判定(以下これらを「書き戻し・ベリファイ」という)を実施する。その際、デプリーションの深いメモリセルの影響によって閾値電圧が見かけ上低くなることを考慮して、「書き戻し判定レベル2」よりも低めに設定された「書き戻し判定レベル1」を用いて書き戻し・ベリファイを行う。
【0029】
こうした第1ステップの処理を行うことで、過剰に消去されたメモリセルだけを正常に消去されたメモリセルの閾値電圧分布の範囲内に書き戻すことができる。その結果、図2の中央のグラフに示されている分布D1および分布D6からなる幅の広い分布から分布D1がなくなって幅の狭い分布となる。ここで、深いデプリーションのメモリセルが書き戻し・ベリファイによって存在しなくなるため、閾値電圧分布が下がったように見えていた現象が解消されて実際の分布が見えてくる。このため、上記のように幅が狭くなった分布は図2の中央のグラフに分布D7として示したごとく、書き戻し前に比べて全体的に閾値電圧の分布が上がったものとなる。なお、第1ステップの書き戻しで深いデプリーションのメモリセルを書き戻す場合には、正常に消去された分布D6の中間付近(ないしはピーク近傍)を目標に書き戻しを行うことで、メモリセルの閾値電圧分布を図2のD7に示したような形状にすることができる。
【0030】
次に、第2ステップでは目標としている判定レベルを使用して消去および書き戻しを行う。すなわち、まず「消去判定レベル2」を用いて第1ステップと同様に消去・ベリファイを行うことで、閾値電圧の分布を図2の右端のグラフに示した分布D8とする。次に、この消去・ベリファイによって生じた若干消去され過ぎたメモリセル(以下「浅いデプリーションのメモリセル」という)を無くすために、「書き戻し判定レベル2」を用いて第1ステップと同様に書き戻し・ベリファイを行う。
【0031】
つまり第2ステップでは、目標とする閾値電圧分布の上限よりも閾値電圧が高いメモリセルについては、その閾値電圧を上限以下に収めるためにさらなる消去を行うほか、目標とする閾値電圧の分布の下限よりも閾値電圧が低いメモリセルについてはこれを目標とする閾値電圧分布の中へ書き戻すようにしている。そうすることで、消去対象ブロックの閾値電圧分布を所望の範囲内に収めることができる。
【0032】
なお、上記公報では1回目の書き戻し・ベリファイにあたって、同一のデジット線に接続されている全てのメモリセルに書き戻しを行ってからベリファイを行うようにしている。このため、書き戻しを行うべきメモリセルと書き戻しを行う必要のないメモリセルが同一デジット線に混在して接続されていると、書き戻す必要のないメモリセルまで書き戻してしまって閾値電圧の分布が全体的に上がってしまう。これに対して本発明では、第1ステップ及び第2ステップの何れにおいてもメモリセル単位で書き戻し・ベリファイを行っているため、本当に書き戻しが必要なメモリセルについてだけ書き戻しを行うことが可能となる。
【0033】
ここで、第1ステップで用いる「書き戻し判定レベル1」を第2ステップで用いる「書き戻し判定レベル2」よりも低いレベルに設定している。これは、上述したように深いデプリーションのメモリセルの影響で閾値電圧分布が下がるためであって、そうしないと書き戻す必要のないメモリセルまで書き戻してしまう可能性があることによる。また、第1ステップで用いる「消去判定レベル1」を第2ステップで用いる「消去判定レベル2」よりも高く設定している。これは、第1ステップにおける書き戻しによって、深いデプリーションのメモリセルによって下がって見えていた閾値電圧分布が実際の分布に戻って「消去判定レベル1」より上のところまで上昇するので、「消去判定レベル2」〜「消去判定レベル1」の間の閾値電圧を持つメモリセルについては第2ステップの消去・ベリファイでまとめて書き戻すようにしたためである。
【0034】
なお、「消去判定レベル1」と「消去判定レベル2」の差電圧,および,「書き戻し判定レベル1」と「書き戻し判定レベル2」の差電圧をともにΔVとおくと、このΔVの値は図4に示すように見かけ上の分布(図中の「誤Vtm」)における閾値電圧の上限値と実際の分布(図中の「実Vtm」)における閾値電圧の上限値との差電圧に設定される。もっとも、実際の閾値電圧の分布を測定することは困難であることが予想される。このため、深いデプリーションのメモリセルがメモリセルアレイ内にどの程度の割合で存在するかをシミュレーションによって算出するとともに、深いデプリーションのメモリセルによって閾値電圧の分布がどの程度シフトするかを計算で求めることによってΔVの値を決定するようにしている。
【0035】
このほか、本発明では書き戻し・ベリファイを行う際にワード線へ印加する電圧を通常の読み出しのときに用いるワード線電圧よりも高くしている。そこでこの理由について図3を参照しつつ以下に説明する。同図では、横軸がメモリセルのコントロールゲート・ソース間に印加されるゲート・ソース間電圧VGS,縦軸がドレイン電流Idである。また、符号C1は書き込み状態にある書き込みセルのVGS−Id特性,符号C2はリファレンスセル6(図1参照)のVGS−Id特性,符号C3は正常な消去状態にある消去セルのVGS−Id特性,符号C4は深いデプリーションを持ったメモリセルのVGS−Id特性である。なお、図からも明らかなごとくこれらは何れも指数関数状の特性となっている。また、特性C2は通常の読み出しの際のリファレンスセルの特性を示したものであって、書き込みセルと消去セルを識別できるように特性C1および特性C3の間になるように閾値電圧が調整されている。
【0036】
デプリーションの深いメモリセルだけを対象として書き戻しを行うためには、深いデプリーションのメモリセルと正常に消去されているメモリセルを識別できれば良い。それには、リファレンスセル6に流れる電流の電流量Irefを特性C3と特性C4の間で設定すれば良い。いま例えばメモリセルのゲート・ソース間電圧VGSを通常の読み出しのときと同様の例えば“5V”に設定したとする。そうすると、正常に消去されたメモリセル,デプリーションの深いメモリセルにそれぞれ流れる電流の電流量は上記ゲート・ソース間電圧VGSに対応する特性C3,C4から得られ、それぞれI3a,I4aとなる。したがって、これらの間の例えば電流量Iraがリファレンスセル6に流れるように、リファレンスセル6のコントロールゲートに印加されるゲート・ソース間電圧VGSをVREFaに設定する。あるいは、リファレンスセル6の閾値電圧を調整して、ゲート・ソース間電圧VGSに“5V”を印加したときに電流量Iref=Iraとなるようにすれば良い。
【0037】
ここで、上述したようにデプリーションの深いメモリセルではコントロールゲートに電圧が印加されていない(ゲート・ソース間電圧VGS=0)場合であっても、図3に示した電流量Idepに相当する電流が流れている。したがって、正常に消去されたメモリセルと同一のディジット線に対して深いデプリーションのメモリセルが例えば1個だけ接続されていたとすると、正常に消去されたメモリセルを選択したときに当該ディジット線に流れる電流(図9のIdに相当)の電流量は“I3a+Idep”となる。
【0038】
このため、電流量“I3a+Idep”が電流量Iraよりも大きくなってしまうと、深いデプリーションのメモリセルの影響によって正常に消去されたメモリセルとデプリーションの深いメモリセルを電流量から識別することができなくなってしまう。つまり、メモリセルのゲート・ソース間電圧VGSが“5V”程度と低いときには、電流量I3aに対する電流量Idepの割合が大きいためにその影響を無視することができない。こうした影響の程度は同一のディジット線に深いデプリートのメモリセルが1個だけでなく多数接続されているとさらに顕著なものとなる。
【0039】
これに対して、ゲート・ソース間電圧VGSを“5V”よりも高くして例えば電圧VVER に設定したとする。この場合、正常に消去されたメモリセル,深いデプリーションのメモリセルにそれぞれ流れる電流の電流量は特性C3,C4からそれぞれI3b,I4bとなるので、上記ディジット線に流れる電流Idの電流量は“I3b+Idep”となる。また、リファレンスセル6にはこれら電流量I3b,I4bの間の電流量として例えば電流量Irbが流れるようにするので、リファレンスセル6のゲート・ソース間電圧VGSをVREFbに設定するか、リファレンスセル6の閾値電圧を調整して電圧VVER で電流量Irbが流れるように設定する。
【0040】
ここで、上述したようにメモリセルのVGS−Id特性は指数関数的(二乗関数)であることから“I4a−I3a”の値に比べて“I4b−I3b”の値は極めて大きくなる。もっとも、図示の都合から図3では“I4b−I3b”が“I4a−I3a”の数倍程度になっているが実際にはこの比率はもっと大きい。以上のように、第1ステップにおける書き戻し・ベリファイでは、メモリセルのゲート・ソース間電圧VGSをVVER 程度あるいはそれよりも高くすることで、消去セルまたは過剰消去セルに流れる電流量に比べて深いデプリーションのメモリセルに流れる電流量Idepを十分小さくすることができ、事実上その影響を無視することができる。このため、電流量“I3b+Idep”が電流量Irbよりを上回ってしまう恐れはなくなって、正常に消去されたメモリセルと過剰に消去されたメモリセルをより正確に識別できるようになる。
【0041】
なお、第2ステップにおける書き戻し・ベリファイでは、深いデプリーションのメモリセルが第1ステップの書き戻し・ベリファイで除去されている。このため、通常の読み出しのときと同様にメモリセルのゲート・ソース間電圧VGSへ“5V”程度を印加しても、第1ステップにおける書き戻し・ベリファイのような問題が生じることはない。したがって、ワード線に印加する電圧とリファレンスセル6のコントロールゲートに印加する電圧もゲート・ソース間電圧VGSに応じて下げても良い。もっとも、ゲート・ソース間電圧VGSをVVER のままにしても良い。ここで、第2ステップでは、深いデプリーションのメモリセルよりも高閾値電圧である浅いデプリーションのメモリセルを対象として書き戻し・ベリファイを行うため、その特性は特性C4に比べて特性C3寄りのものとなる。このため、リファレンスセル6のゲート・ソース間電圧VGSをVREFbよりも低くして電流量Irefを下げるか、あるいは、リファレンスセル6の閾値電圧を調整すれば良い。
【0042】
以上のように、デプリーションの深いメモリセルをまず書き戻してから浅いデプリーションのメモリセルを書き戻してやることで、浅いデプリーションのメモリセルを書き戻す時点では閾値電圧の分布が見かけ上低くなるといったことはない。このため、余計な書き戻しが発生することがなくなって消去処理全体の処理時間を従来に比べて短縮することができる。また、従来に比べて閾値電圧の分布の幅を狭くすることができるため、十分な読み出しマージンを確保できるとともに、製造工程などに手を加えることなく低電源電圧動作に適したフラッシュメモリを実現することが可能となる。また、「消去判定レベル1」まで消去できた段階で過剰に消去されたメモリセルを書き戻すようにしたので、書き戻すべきメモリセル数を従来より大幅に少なくすることができ、その結果、消去に要する時間を大幅に短縮できる。
【0043】
〔第1実施形態〕
(1)構成の説明
次に、上述した技術思想を実現するための具体的なフラッシュメモリの構成について説明する。図1は本実施形態によるフラッシュメモリの構成を示すブロック図であって、メモリセルがディジット線に対して並列に接続されたいわゆるNOR型のフラッシュメモリについて例示したものである。同図において、メモリセルアレイ1はマトリクス状に配列された9個のメモリセル2−11〜2−13,2−21〜2−23,2−31〜2−33で構成されている。個々のメモリセルはワード線WL1〜WL3およびディジット線DL1〜DL3が交差する位置に配置されている。
【0044】
なお、図示の都合からここではメモリセルアレイ1を3行(ロウ)×3列(カラム)の構成としたが、当然ながら実際には多数のロウ(ワード線)および多数のカラム(ディジット線)で構成されている。また、各メモリセルは何れも一般的なフラッシュメモリで採用されているメモリセルと同様の構成であって、ソース端子,ドレイン端子のほかに積層ゲート構造のコントロールゲート及びフローティングゲートを備えている。このうち、各メモリセルのウエルは消去単位である所定のブロック毎に共通であって、この共通ウエルには図示しないウエルバイアス回路から電源が供給される。このほか、各メモリセルアレイのコントロールゲートは対応するワード線に接続され、ドレイン端子は対応するディジット線に接続される。また、各メモリセルのソース端子は図示しないスイッチを介して接地電位に接続されており、メモリセルの消去を行う際にはこのスイッチがオフにされてソース端子がオープン状態となる。
【0045】
アドレスバッファ2は、フラッシュメモリ外部から与えられるアドレスADR,又は,シーケンスコントローラ10(後述)から与えられるアドレスをバッファリングして出力する。これらアドレスはロウアドレスおよびカラムアドレスから成っており、上述したワード線WL1〜WL3はそれぞれロウアドレス“0”〜“2”に対応し、ディジット線DL1〜DL3はそれぞれカラムアドレス“0”〜“2”に対応している。
【0046】
ロウデコーダ・ドライバ3はアドレスバッファ2から供給されるアドレス中のロウアドレス部分をデコードし、当該ロウアドレスで指定されたワード線WL1〜WL3のうちの何れかのワード線を活性化させる。その際、ロウデコーダ・ドライバ3は選択されたワード線に対して高電圧発生回路11又は高電圧発生回路12(ともに後述する)の何れかから供給される電圧を印加する。
【0047】
カラムデコーダ・スイッチ4はアドレスバッファ2から供給されるアドレス中のカラムアドレス部分をデコードし、そのデコード結果に応じてディジット線DL1〜DL3の中から選択した何れかのディジット線をセンスアンプ5に接続する。センスアンプ5はカラムデコーダ・スイッチ4で選択されたディジット線に流れる電流の電流量と、リファレンスセル6に流れる基準となる電流量Irefを比較して、アドレスADRで選択されたメモリセルの保持データをセンス結果として出力する。
【0048】
上述したように、通常の読み出しではメモリセルのゲート・ソース間に“5V”程度の電圧が印加されるようにワード線WL1〜WL3の電圧を設定する。メモリセルが書き込みセル(“0”)であれば閾値電圧は高くなっており、“5V”程度の電位を印加してもメモリセルに電流は殆ど流れない。一方、メモリセルが消去セル(“1”)であれば閾値電圧は低くなっており、“5V”程度の電位を印加することでメモリセルに電流が流れるようになる。そこで、例えば通常のメモリセルからの読み出しであれば、リファレンスセル6の特性を図3の特性C2として、VGS=5Vを印加したときに特性C2から得られる電流量をリファレンスセル6に流れる電流量Irefとする。こうすることで、ディジット線に流れる電流の電流量が電流量Iref以上であればメモリセルの記憶データは“0”,電流量Iref未満であればメモリセルの記憶データは“1”である。
【0049】
なお、センスアンプ5の出力は一般的なフラッシュメモリと同じくデータ出力バッファ(図示省略)でバッファリングされてから外部へ出力されるが、本発明の説明には差し当たって必要ないので敢えて図示していない。また、図1では図示を簡潔にするためにセンスアンプを1台だけ示してあるが、実際には、外部との間で同時に入出力されるデータの幅(例えば8ビット)に相当する台数のセンスアンプが設けられている。
【0050】
次に、リファレンスセル6は上記各メモリセルと同様の構造であって、後述する高電圧発生回路13から自身のコントロールゲートへ供給される電圧に従って、ドレイン電流の電流量Irefが制御される。なお、センスアンプ5に対して電流量Irefを供給するための回路構成はリファレンスセル6を用いたものに限定されず、定電流回路などを用いて構成するようにしても良い。次に、データ入力バッファ7はフラッシュメモリ外部から供給されるデータDATAをバッファリングして出力する。供給されるデータDATAとしては、メモリセルに書き込むべきデータそのものやフラッシュメモリに対するコマンドを指定するためのデータなどがある。
【0051】
次に、コントロールバッファ8はフラッシュメモリのアクセスを制御するために外部から入力される各種の制御信号をバッファリングして出力する。なお、入力される制御信号は一般的なフラッシュメモリと同様であって、図示したチップイネーブル信号/CE,出力イネーブル信号/OE,書き込みイネーブル信号/WEなどがあるが、この他にもリセット信号などが入力される。次に、コマンドデコーダ9はコントロールバッファ8から供給される制御信号の示すタイミングで、アドレスバッファ2およびデータ入力バッファ7から供給されるアドレスおよびデータを取り込んでデコードを行い、これらによって指定されたコマンドの種類およびそのパラメータをシーケンスコントローラ10へ通知する。なお、パラメータとしては、ブロック単位で消去するときのブロックアドレスおよびブロック長などがある。
【0052】
次に、シーケンスコントローラ10は、コマンドデコーダ9から出力されるコマンドの種類およびパラメータならびにセンスアンプ5から供給されるセンス結果に基づいて高電圧発生回路11〜13を制御して、消去・ベリファイおよび書き込み・ベリファイに関わる動作を司る中枢部である。なお、このシーケンスコントローラ10の機能の詳細については動作説明に譲るものとし、ここでは詳しく説明しない。
【0053】
次に、高電圧発生回路11は第1ステップにおける書き戻し・ベリファイでワード線に印加すべき電圧をロウデコーダ・ドライバ3に供給する。同様にして、高電圧発生回路12は第2ステップにおける書き戻し・ベリファイでワード線に印加すべき電圧をロウデコーダ・ドライバ3に供給する。一方、高電圧発生回路13は第1ステップおよび第2ステップの書き戻し・ベリファイにおいてリファレンスセル6のコントロールゲートへ印加すべき電圧を発生させる。なお、高電圧発生回路11〜13の具体的構成例としては、電源電位と接地電位との間に複数の抵抗素子を直列に配置して抵抗分割を行い、隣接する抵抗素子の接続ノードのどこから電圧を取り出すかによって所望の電圧を発生させれば良い。
【0054】
(2)動作の説明
▲1▼ 消去コマンドの入力
次に、図5に示すタイミングチャートを参照しつつ、上述した構成を持ったフラッシュメモリにおける消去動作について説明する。まず、チップイネーブル信号/CE,出力イネーブル信号/OE,書き込みイネーブル信号/WEの各レベル,アドレスADRの値およびデータDATAの値の組み合わせによって、フラッシュメモリ外部から消去コマンドの指定を行う。その際、特定のブロックだけを消去させる場合にはアドレスADRを利用して消去対象のブロックを指定するようにする。
【0055】
すると、コマンドデコーダ9はアドレスバッファ2,データ入力バッファ7およびコントロールバッファ8から上記各信号,アドレスADRおよびデータDATAを取り込んで消去コマンドが指定されたことを認識し、パラメータとともにコマンドの種類をシーケンスコントローラ10へ通知する。シーケンスコントローラ10は消去コマンドの通知を受けて内部で消去動作のシーケンスを開始させる。また、ブロック単位の消去を行う場合、シーケンスコントローラ10は送られてきたパラメータに基づいて、消去対象ブロックの消去開始アドレス,消去終了アドレスをロウ側及びカラム側についてそれぞれ生成して内部のレジスタに保持しておく。なお、本実施形態では消去対象ブロックとしてディジット線DL2,DL3に接続されたメモリセルが指定されたことを想定する。
【0056】
▲2▼ 予備書き込み
次に、シーケンスコントローラ10は、予備書き込み(プリライト)を行って消去対象ブロック内の全てのメモリセルを予め書き込み状態にしておく(ステップS1)。すなわち、消去コマンドが指定された時点において、メモリセルアレイ1には書き込み状態のメモリセルと消去状態のメモリセルが混在しているので、消去状態のメモリセルに書き込みを行うことでこれら消去状態のメモリセルを全て書き込み状態にする。なお、予備書き込みそのものは本発明の主旨とは直接関連しないことと、その詳細動作は後述する書き戻し動作(図6を参照)とほぼ同様であるため、書き戻し動作の説明を行ってから最後に補足説明する。
【0057】
▲3▼ 第1の消去・ベリファイ
次に、シーケンスコントローラ10は図5に示す「第1ステップ」に処理を進めて、まず第1の消去・ベリファイ動作を実施する。シーケンスコントローラ10が高電圧発生回路11,ウエルバイアス回路,カラムデコーダ・スイッチ4及び図示しないスイッチに指示を行うことで、高電圧発生回路11はワード線に印加すべき消去用のゲート電圧(例えば“−10V”)を発生させてロウデコーダ・ドライバ3に供給する。ロウデコーダ・ドライバ3は高電圧発生回路11から供給される消去用のゲート電圧を消去対象ブロックに対応する各ワード線(この場合はワード線WL1〜WL3の全て)に印加する。
【0058】
また、ウエルバイアス回路は消去対象ブロックに対応する共通ウエルに対して消去用のウエル電圧(例えば“7V”)を供給する。さらに、カラムデコーダ・スイッチ4は内部のスイッチをオフにすることで、メモリセルアレイ1内の各メモリセルのドレイン端子をオープン状態にする。またこのときには各メモリセルのソース端子も図示しないスイッチがオフになってオープン状態とされる。これらによって、既存のフラッシュメモリと同様に消去対象ブロック内のメモリセル2−12,2−13,2−22,2−23,2−33,2−33が全て消去される(ステップS2)。ここで、一般的なフラッシュメモリと同じく、ステップS2の消去動作は予め決められた単位時間毎の消去を間欠的に繰り返しすことで徐々に消去を行っているため、単位時間の消去に引き続いてベリファイを行うことで、消去対象ブロック内の全メモリセルが消去状態に達したかどうかを確認する。
【0059】
具体的には、消去対象ブロック内の全メモリセルの閾値電圧が「消去判定レベル1」以下となったかどうかを上記ベリファイによって確認する(ステップS3)。そのためにシーケンスコントローラ10は、消去対象ブロックの範囲内でアドレスバッファ2に供給するアドレスのロウアドレス部分及びカラムアドレス部分を更新しながらメモリセルを順次選択し、選択されたメモリセルに対して以下のような動作を行う。
【0060】
シーケンスコントローラ10が高電圧発生回路11,13に指示を行うことで、高電圧発生回路11は「消去判定レベル1」に等しいワード線電圧を発生させてロウデコーダ・ドライバ3に供給する。また、高電圧発生回路13はリファレンスセル6のコントロールゲートに電圧を供給して電流量Irefの電流がリファレンスセル6に流れるようにする。このときの電流量Irefは、深いデプリーションのメモリセルに流れるトータルの電流量よりも少し大きな値にしておく。そうすると、アドレスバッファ2から供給されるロウアドレスに対応するワード線に接続されたメモリセルの閾値電圧が「消去判定レベル1」以下であれば、当該メモリセルがオンとなって上記ワード線電圧に応じた電流量の電流がディジット線に流れるようになる。
【0061】
これに対し、メモリセルの閾値電圧が「消去判定レベル1」を越えていれば当該メモリセルがオフになるため、選択されたメモリセルが接続されているディジット線に電流は流れない。もっとも、同一ディジット線に接続されたメモリセルの中に深いデプリーションのメモリセルがあればこれらメモリセルに流れる分の電流がディジット線に流れる。一方、カラムデコーダ・スイッチ4は、アドレスバッファ2から供給されるカラムアドレスに対応したディジット線をセンスアンプ5に接続する。センスアンプ5はこのディジット線に流れる電流量と電流量Irefを比較してその比較結果をシーケンスコントローラ10に通知する。
【0062】
シーケンスコントローラ10はディジット線の電流量が電流量Iref以上であれば選択されたメモリセルの閾値電圧が「消去判定レベル1」に達したと見なして、新たなメモリセルについて同様のベリファイを行う。これに対してディジット線に流れる電流量が電流量Iref未満であれば、まだ十分に消去されていないメモリセルがある(ステップS3が“Fail”)ため、シーケンスコントローラ10はいま述べたステップS2,S3の処理を繰り返す。この繰り返しによって消去対象ブロック内の全メモリセルが「消去判定レベル1」に達する(ステップS3が“Pass”)と、これらメモリセルの見かけ上の閾値電圧分布は図2の中央のグラフに示した分布D1,D6となる。
【0063】
▲4▼ 第1の書き戻し・ベリファイ
そこで、シーケンスコントローラ10は第1の消去・ベリファイに引き続いて第1の書き戻し・ベリファイを行う(図5のステップS4,S5)。まずシーケンスコントローラ10は「書き戻し判定レベル1」を用いてベリファイ(ステップS4)を実施する。その結果、書き戻しが完了していない(同ステップが“Fail”)のであればシーケンスコントローラ10は書き戻し(ステップS5)を行うようにして、書き戻しが完了する(ステップS4が“Pass”)までこれらステップS4,S5を繰り返す。以下、これらの処理について図6を参照してさらに詳しく説明する。
【0064】
ここで、図6に示したXStart,XEndはそれぞれロウ側の消去開始アドレス,消去終了アドレス、YStart,YEndはそれぞれカラム側の消去開始アドレス,消去終了アドレスである。上述したようにここではディジット線DL2,DL3について消去を行うので、シーケンスコントローラ10はXStart,XEnd,YStart,YEndをそれぞれ“1”,“3”,“2”,“3”とする。また、図6に示したXadd,Yaddは各時点で書き戻し・ベリファイの対象となっているメモリセルのロウアドレス,カラムアドレスを表し、Tcycは個々の書き戻し処理で書き戻しを実施した回数を表す。さらに、Retry Max は書き戻し実施回数の最大許容値であって、これらXadd,Yadd,Tcyc,Retry Max は何れもシーケンスコントローラ10内のレジスタに保持される。
【0065】
まず、シーケンスコントローラ10はYaddをYStart(=“2”)に初期化(ステップS21)するとともにXaddをXStart(=“1”)に初期化(ステップS22)し、XaddおよびYaddからなるアドレスをアドレスバッファ2に供給して、書き戻し・ベリファイの対象となるメモリセルを指定する。次に、シーケンスコントローラ10はTcycを“1”に初期化(ステップS23)してからベリファイを行う(ステップS24)。このベリファイのためにシーケンスコントローラ10が高電圧発生回路11へ指示すると、高電圧発生回路11は通常の読み出しの時よりも高いワード線電圧を発生させ、ロウデコーダ・ドライバ3がこのワード線電圧をXStartの値“1”に対応するワード線WL1に印加する。
【0066】
これにより、ワード線WL1に接続された各メモリセルのゲート・ソース間電圧VGSが例えば図3に示した電圧VVER となる。これと同時にシーケンスコントローラ10が高電圧発生回路13へ指示を行うことで、高電圧発生回路13は電流量Irefが「書き戻し判定レベル1」に相当する電流量(例えば図3に示した電流量Irb)となるような電圧(例えば図3に示した電圧VREFb)を発生させる。この後は消去・ベリファイのところで説明したのと同様のベリファイ動作がなされて、XaddおよびYaddで指定されたメモリセル2−12 に関するセンス結果がセンスアンプ5からシーケンスコントローラ10へ通知される。
【0067】
シーケンスコントローラ10は通知されたセンス結果に従って、メモリセル2−12 の閾値電圧が「書き戻し判定レベル1」未満(ステップS24が“Fail”)であれば深いデプリーションの状態にあるので、メモリセル2−12 に書き戻しを行って当該メモリセルの閾値電圧を高くする(ステップS25)。書き戻しそのものは既存のフラッシュメモリで行われている書き込みと同じであって、例えば、書き込み対象のメモリセルのコントロールゲート,ドレイン端子,ソース端子に対してそれぞれ“12V”,“7V”,“0V”を印加して、予め決めてられている単位時間だけ書き込みを行うようにする。
【0068】
1回分の書き戻しが終わったならば、シーケンスコントローラ10は書き戻しの回数を調べるが、この時点ではTcycが“1”であってまだRetry max に達していない(ステップS26が“No”)。そこで、シーケンスコントローラ10は次のベリファイのためにTcycを“1”だけインクリメント(ステップS27)したのち、再びベリファイ・書き戻しを繰り返す。こうしてステップS24〜S27を繰り返してゆき、メモリセル2−12 の閾値電圧が「書き戻し判定レベル1」以上になる(ステップS24が“Pass”)と、シーケンスコントローラ10は次のメモリセルを対象として書き戻し・ベリファイを行う。
【0069】
すなわち、シーケンスコントローラ10は、Xadd(=“1”)がXEnd(=“3”)に一致するかどうかを判定し、それによってYstart(=“2”)で示されるディジット線について書き戻し・ベリファイを行っていないメモリセルがまだ残っているか否かを調べる。この場合は両者が一致していない(ステップS29が“No”)ため、シーケンスコントローラ10はXaddを“1”だけインクリメント(ステップS30)させて、次のメモリセル2−22 を対象として書き戻し・ベリファイを実施する(ステップS23〜S30)。
【0070】
なお、ステップS24〜S27の繰り返しでTcycがRetry Max に達した場合は、書き戻しをそれ以上繰り返しても「書き込み判定レベル1」以上とならないので、シーケンスコントローラ10は処理を異常終了させる(ステップS28)。こうしてステップS23〜S30を繰り返してゆくと、ディジット線DL2に接続された全てのメモリセルについて書き戻し・ベリファイが終了する(ステップS29が“Yes” )。そこで、シーケンスコントローラ10は新たなディジット線DL3を対象として書き戻し・ベリファイを行うようにする。
【0071】
そのためにシーケンスコントローラ10は、Yadd(=“2”)がYEnd(=“3”)に一致するかどうかを判定し、それによって書き戻し・ベリファイを行っていないディジット線がまだ存在するかどうかを調べる。この場合は両者が一致していない(ステップS31が“No”)ため、シーケンスコントローラ10はYaddを“1”だけインクリメント(ステップS32)させてから、ディジット線DL3に接続された消去対象のメモリセルについて書き戻し・ベリファイを実施する(ステップS22〜S31)。こうしてステップS22〜S31を繰り返してゆくと、消去対象の全てのディジット線に関しても書き戻し・ベリファイが終了する(ステップS31が“Yes” )ため、シーケンスコントローラ10は処理を第2ステップ(図5参照)に進める。
【0072】
▲5▼ 第2の消去・ベリファイ
第2ステップにおける消去・ベリファイ(ステップS6,S7)では、第1のステップで使用した「消去判定レベル1」の代わりに「消去判定レベル2」を用いる点を除いて、第1ステップにおける消去・ベリファイと同じである。そして第2の消去・ベリファイが終了する(ステップS7が“Pass”)と、消去対象ブロックの閾値電圧分布は図2の右端のグラフに示した分布D8となって、閾値電圧の上限が目標としていた「消去判定レベル2」以下となる。
【0073】
▲6▼ 第2の書き戻し・ベリファイ
いま述べた第2の消去・ベリファイを実施すると、図2の分布D8に示したように閾値電圧が「書き戻し判定レベル2」を下回るメモリセルが生じる可能性がある。そこでシーケンスコントローラ10は、第1ステップで使用した「書き戻し判定レベル1」の代わりに「書き戻し判定レベル2」を用いて、第1ステップと同様に書き戻し・ベリファイを実施する(ステップS8,S9)。
【0074】
ここで、「書き戻し判定レベル2」は「書き戻し判定レベル1」よりもΔVだけ高く設定されている。したがって、ワード線に第1の書き戻し・ベリファイのときと同じ電圧VVER を印加するのであれば、リファレンスセル6に流すべき電流量は図2に示した電流量Irbよりも小さくなり、これに伴ってリファレンスセル6のコントロールゲートに印加すべき電圧も電圧VREFbより低くなる。こうして第2の書き戻し・ベリファイが終了(ステップS8が“Pass”)すると、メモリセルの閾値電圧分布が目標としていた「書き戻し判定レベル2」〜「消去判定レベル2」の間に収まり、これをもって消去対象ブロック内の全てのメモリセルについての消去動作が完結する。
【0075】
なお、上述した予備書き込みの動作は書き戻しのときの動作と次の点が相違している。すなわち、図6のステップS24では「書き戻し判定レベル1」又は「書き戻し判定レベル2」を用いていた。これに対して予備書き込みの場合は、“0”と“1”を識別するためにリファレンスセル6の特性を例えば図3の特性C2として、選択されたワード線とリファレンスセル6に同一の電圧(例えば“5V”)を印加する。そうしてシーケンスコントローラ10は、メモリセルに記憶されているデータが消去セル,書き込みセルの何れであるかを判定し、もし消去セルであればステップS25で単位時間の書き込みを行って、ステップS24〜S27の繰り返しで書き込みセルの閾値電圧まで書き込みを行う。
【0076】
〔第2実施形態〕
本実施形態は、同一のディジット線に接続されたメモリセルに深いデプリーションのメモリセルが一つも存在しないときの処理を第1実施形態よりも高速化させたものである。本実施形態によるフラッシュメモリの構成そのものは第1実施形態(図1)と同じであるとともに、その全体動作も第1実施形態(図5)と同じであって、シーケンスコントローラ10の制御が第1実施形態と異なっている。図7は本実施形態による書き戻しの手順を示したフローチャートであって、図6とは以下の点のみが相違している。
【0077】
消去対象となっているディジット線にデプリーションの深いメモリセルが一つでも存在するかどうかは1回のベリファイで判定することができる。そこで本実施形態では、当該ディジット線に接続された個々のメモリセルについて書き戻し・ベリファイを行う(ステップS22〜S30)前に、深いデプリーションのメモリセルが存在するかどうかを予めチェックしている(ステップS21a)。このチェックのためのベリファイを行うにあたっては、リファレンスセル6に流す電流量Irefをほぼ“0”に設定するとともに、ワード線WL1〜WL3の何れにも電圧を印加しないようにしておく。そして、消去対象となっているディジット線に電流が流れていれば深いデプリーションのメモリセルが最低一つは存在するものと判断し、さもなくば一つも存在しないと判断する。
【0078】
そして、深いデプリーションのメモリセルが一つも存在しないのであれば、シーケンスコントローラ10は処理をステップS31に進めて新たなディジット線を対象として書き戻し・ベリファイを行う。一方、深いデプリーションのメモリセルが存在する場合には、第1実施形態と同様に処理をステップS22に進めてメモリセル単位で書き戻し・ベリファイを実施してゆく。以上のように、本実施形態ではデプリーションの深いメモリセルが無いディジット線について、第1実施形態のように当該ディジット線に接続された消去対象の全てのメモリセルについて個別にベリファイを行う必要がなく、その分だけ全体の消去処理に要する処理時間を短縮させることが可能となる。
【0079】
〔変形例〕
(1)上述した各実施形態では、書き戻し判定レベルおよび消去判定レベルを何れも2種類設けてステップ毎に別々のレベルを設定していた。しかし以下のような場合には、消去判定レベルを1種類だけにして第1ステップ及び第2ステップの消去・ベリファイで「消去判定レベル2」を共用するようにしても良い。上述したように、第1の書き戻し・ベリファイによって見かけ上の分布が実際の分布に戻るが、このときに、実際の分布において「消去判定レベル2」を越えるメモリセルが存在しないことが確実な場合もありうる。そうした場合には、第1の消去・ベリファイの際に目標とする消去レベルである「消去判定レベル2」まで消去してしまうようにしても問題ない。こうすることによって、第2のステップでは消去・ベリファイを行う必要がなくなって書き戻し・ベリファイだけを行えば良くなる。このため、消去処理全体の処理時間を短縮できるとともに、シーケンスコントローラ10の制御を簡単化することができる。
【0080】
(2)上述したように、メモリセルに対する書き戻しは単位時間の書き込みを繰り返し行うことで実現しているため、書き戻すべきレベル(すなわち、閾値電圧を引き上げる量)が大きいほど書き込み回数も大きくなり、それに伴って書き戻しに要する消費電流も大きくなる。一方、ワード線の電圧を高くするほど単位時間当たりの書き込み量が大きくなるため、それだけ書き込み回数が減って消費電流を低減させることが可能となる。
【0081】
上述した各実施形態では、第1の書き戻し・ベリファイおよび第2の書き戻し・ベリファイの何れにおいても、メモリセルへ書き込むときのワード線電圧は同一であることを想定していた。しかし、図2に示したように書き戻すべきレベルは第2の書き戻し・ベリファイに比べて第1の書き戻し・ベリファイの方が大きいため、それだけ電流を余計に消費してしまう。そこで、第1の書き戻し・ベリファイのときのワード線電圧を第2の書き戻し・ベリファイのときのワード線電圧よりも高くして、第1の書き戻しのときの消費電流を低減させるようにしても良い。
【0082】
(3)上述した各実施形態では、NOR型のフラッシュメモリを想定して説明していた。しかしながら、本発明は深いデプリーションのメモリセルが問題となるような不揮発性半導体記憶装置であれば如何なる種類のものであっても適用対象となりうる。すなわち、同一のディジット線に複数のメモリセルが接続され、デプリーションの深いメモリセルに流れる電流量によって閾値電圧の分布が影響を受けて、閾値電圧の判定(メモリセルのベリファイ)に支障を来たすものであれば良い。したがって、上述したような一般的なNOR型のフラッシュメモリ以外にも、バーチャルグランド型のフラッシュメモリやディジット線が分割されたNOR型のフラッシュメモリなどに適用することが可能である。
【0083】
ちなみに、バーチャルグランド型のフラッシュメモリは、複数のメモリセルのコントロールゲートを同一のワード線へ接続するとともに、隣接するメモリセルのソース端子とドレイン端子を連結することによってビット線を形成したものである。また、ディジット線分割型のフラッシュメモリは、ディジット線を階層構造にするとともに書き込みにトンネル効果を利用したものであって、NOR型とNAND型の長所を併せ持っている。ちなみに、各メモリセルに選択トランジスタの機能が付いているスプリットゲート内蔵型のメモリセルを採用したフラッシュメモリや、メモリセルがディジット線に対して直列に接続されたNAND型のフラッシュメモリはデプリーションが問題とならないため対象外である。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は2記載の発明では、消去対象のメモリセルを一括消去することで過剰に消去されたメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻し、この書き戻しの後に所望の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去してから、所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻している。これによれば、過剰に消去されたメモリセルの影響で見かけ上閾値電圧分布が下がって見えても、書き戻す必要のないメモリセルを書き戻さずに済む。したがって、書き戻すべきメモリセルだけを正しく書き戻すことができ、余計な書き戻しが発生することがなくなって消去処理全体の処理時間を従来に比べて短縮することができる。また、従来に比べて閾値電圧の分布の幅を狭くすることができるため、十分な読み出しマージンを確保できるとともに、製造工程などに手を加えることなく低電源電圧動作に適した不揮発性半導体記憶装置を実現できる。
【0085】
また、請求項2記載の発明では、最初に一括消去する際に所望の消去判定レベルよりも高い第1の消去判定レベルまで消去している。そのためには、例えば請求項3記載の発明のように、過剰に消去されたメモリセルの書き戻しによって過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧が上昇する電圧分だけ、最初の消去の際の判定レベルを所望の消去判定レベルよりも高く設定すれば良い。こうすることで、所望の消去判定レベル〜第1の消去判定レベルの間の閾値電圧を持ったメモリセルを2回目の書き戻しのときにまとめて書き戻すことができる。
また、請求項4記載の発明では、消去対象のメモリセルを所望の消去判定レベルまで一括消去することによって過剰に消去されたメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻したのち、所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻している。これにより、請求項1又は2記載の発明と同様の効果が得られるほか、消去を一回だけ行えば良いため、消去のための制御が簡単になるとともに消去処理全体の処理時間をさらに短縮することができる。
【0086】
また、請求項2又は4記載の発明では、最初の書き戻しのときには所望の書き戻し判定レベルよりも低い書き戻し判定レベルまで書き戻している。そのためには、例えば請求項5記載の発明のように、過剰に消去されたメモリセルの書き戻しによって過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧が上昇する電圧分だけ、最初の消去の際の書き戻しレベルを所望の書き戻し判定レベルよりも低く設定すれば良い。こうすることで、過剰に消去されたメモリセルによって見かけ上閾値電圧の分布が下がる影響を受けずに済み、書き戻すべきメモリセルだけを正しく書き戻すことが可能となる。
また、請求項6記載の発明では、最初の書き戻しのときにメモリセルへ印加する書き込み制御電圧を2回目の書き戻しのときよりも高く設定している。これにより、深いデプリーションのメモリセルを最初の書き戻しで書き戻す際の書き込み回数を少なくすることができ、その分だけ書き戻しに要する消去電流を低減させることができる。
【0087】
また、請求項7記載の発明では、書き戻しに伴って行うベリファイの際に、メモリセルに印加する読み出し制御電圧を通常の読み出しのときよりも高く設定している。これにより、ベリファイの対象となっているメモリセルに流れる電流量が増大させることが可能となる。その結果、過剰に消去されたメモリセルに流れるリーク電流の影響をほとんど無視できるようになって、書き戻しを必要としているデプリーション状態のメモリセルをより正確に特定することが可能となる
また、請求項記載の発明では、書き戻し対象となっているメモリセルを過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧分布の中間付近に書き戻すようにしている。これにより、メモリセルの閾値電圧分布をピークを持った形状に維持することができる。また、第2の消去動作時に再びメモリセルがデプリーションとなる確率を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態によるフラッシュメモリの構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態によるフラッシュメモリの消去動作を説明したグラフであって、消去対象のメモリセルの閾値電圧分布が遷移してゆく様子を示した説明図である。
【図3】メモリセルのコントロールゲート・ソース間電圧とドレイン電流との関係をリファレンスセル及びメモリセルの各状態(書き込み状態,消去状態,過剰消去状態)についてそれぞれ示した特性図である。
【図4】深いデプリーションのメモリセルによって、消去対象ブロック内の全てのメモリセルの閾値電圧分布が見かけ上低くなったときの様子を示した説明図である。
【図5】同実施形態によるフラッシュメモリの消去動作の手順を示したフローチャートである。
【図6】同実施形態によるフラッシュメモリの消去動作の過程で行われる書き戻し動作の手順を示したフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態によるフラッシュメモリの消去動作の過程で行われる書き戻し動作の手順を示したフローチャートである。
【図8】従来技術によるフラッシュメモリの消去動作を説明したグラフであって、消去対象のメモリセルの閾値電圧分布が遷移してゆく様子を示した説明図である。
【図9】ディジット線に流れる電流の電流量が深いデプリーションのメモリセルの影響で増大する様子を示した説明図である。
【符号の説明】
1 メモリセルアレイ
2−11〜2−13,2−21〜2−23,2−31〜2−33 メモリセル
3 ロウデコーダ・ドライバ
4 カラムデコーダ・スイッチ
5 センスアンプ
6 リファレンスセル
7 データ入力バッファ
8 コントロールバッファ
9 コマンドデコーダ
10 シーケンスコントローラ
11〜13 高電圧発生回路

Claims (9)

  1. 電気的に書き込みおよび一括消去が可能な不揮発性のメモリセルを有し、過剰に消去されたメモリセルによってメモリセルの閾値電圧分布が影響を受ける不揮発性半導体記憶装置において、
    消去対象のメモリセルを一括消去する第1の消去手段と、
    該一括消去によって過剰に消去されたメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻し手段と、
    該書き戻しの後に所望の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去する第2の消去手段と、
    該消去の後に所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻し手段と
    を具備することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
  2. 電気的に書き込みおよび一括消去可能な不揮発性のメモリセルを有し、過剰に消去されたメモリセルによってメモリセルの閾値電圧分布が影響を受ける不揮発性半導体記憶装置において、
    消去対象のメモリセルを所望の消去判定レベルよりも高い第1の消去判定レベルまで一括消去する第1の消去手段と、
    該一括消去によって過剰に消去されたメモリセルを所望の書き戻し判定レベルよりも低い第1の書き戻し判定レベルまでメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻し手段と、
    該書き戻しの後に前記所望の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去する第2の消去手段と、
    該消去の後に前記所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻し手段と
    を具備することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
  3. 前記第1の消去判定レベルは、過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧が前記第1の書き戻し手段による書き戻しで上昇する電圧分だけ、前記所望の消去判定レベルよりも高く設定されていることを特徴とする請求項2記載の不揮発性半導体記憶装置。
  4. 電気的に書き込みおよび一括消去可能な不揮発性のメモリセルを有し、過剰に消去されたメモリセルによってメモリセルの閾値電圧分布が影響を受ける不揮発性半導体記憶装置において、
    消去対象のメモリセルを所望の消去判定レベルまで一括消去する消去手段と、
    該一括消去によって過剰に消去されたメモリセルを所望の書き戻し判定レベルよりも低い第1の書き戻し判定レベルまでメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻し手段と、
    該書き戻しの後に前記所望の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻し手段と
    を具備することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
  5. 前記第1の書き戻し判定レベルは、過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧が前記第1の書き戻し手段による書き戻しで上昇する電圧分だけ、前記所望の書き戻し判定レベルよりも低く設定されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかの項記載の不揮発性半導体記憶装置。
  6. 前記第1の書き戻し手段が書き戻しの際に前記メモリセルへ印加する書き込み制御電圧は、前記第2の書き戻し手段が書き戻しの際に前記メモリセルへ印加する書き込み制御電圧よりも高いことを特徴とする請求項1〜5の何れかの項記載の不揮発性半導体記憶装置。
  7. 前記第1の書き戻し手段又は前記第2の書き戻し手段は、書き戻しに伴って行われるベリファイの際に、該ベリファイの対象となっているメモリセルに印加する読み出し制御電圧を通常の読み出しのときに印加する読み出し制御電圧よりも高く設定していることを特徴とする請求項1〜6の何れかの項記載の不揮発性半導体記憶装置。
  8. 前記第1の書き戻し手段又は前記第2の書き戻し手段は、書き戻しの対象となっているメモリセルを過剰に消去されていないメモリセルの閾値電圧分布の中間付近に書き戻すことを特徴とする請求項1〜の何れかの項記載の不揮発性半導体記憶装置。
  9. 消去対象のメモリセルを第1の消去判定レベルよりも高い第2の消去判定レベルまで一括消去する第1の消去ステップと、
    前記一括消去によって過剰に消去されたメモリセルを第1の書き戻し判定レベルよりも低い第2の書き戻し判定レベルまでメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第1の書き戻しステップと、
    前記第1の書き戻しステップの後に前記第1の消去判定レベルまで消去されていないメモリセルを消去する第2の消去ステップと、
    前記第2の消去ステップの後に前記第1の書き戻し判定レベルまで書き戻されていないメモリセルをメモリセル単位でベリファイしながら書き戻す第2の書き戻しステップと
    を有することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の消去方法。
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