JP3568160B2 - 電動式射出成形装置のボールねじの潤滑構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電動式射出成形装置に好適なボールねじの潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
金型のキャビティへ溶融樹脂を射出する機構は、油圧式射出成形装置と電動式射出成形装置の2種が実用に供されており、後者の電動式射出成形装置では一般に駆動系にボールねじを使用する。
例えば、特開2001−49274公報「電動射出成形機の駆動装置におけるボールねじ用グリース」の請求項1に明示されている通りに、従来、射出機のボールねじの潤滑はグリース潤滑が採用されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のグリースを用いて射出成形装置を運転したところ、負荷条件によっては6ヵ月程度でボールねじの作動不良が認められた。分解し点検したところ、グリースに微細な金属粉が混ざっていることが判明した。この金属粉が研磨材の作用を果たして、ボールやねじ溝を摩耗させたとみなすことができる。この金属粉は主にボール同士の接触によって発生したと推定できる。
【0004】
年に数度の割合でボールねじを交換することは補修費用が嵩むと共に生産性の低下を招き、好ましくない。
そこで、本発明の目的は、ボールねじの潤滑を見直し、ボールねじの寿命を大幅に延ばすことのできる技術を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、駆動系にボールねじを用いた電動式射出成形装置において、ボールねじの潤滑を、オイル潤滑にしたことを特徴とする。
【0006】
オイルで潤滑すれば、金属粉が発生したとしても、この金属粉はオイルの底に溜って循環せず、ボールやねじ溝に悪影響を及ぼすことはない。
【0009】
加えて、請求項1は、ボールねじを構成するナットの両端に、シール材を設けることで、ナットからのオイルの洩れを抑えるようにし、ボールねじを構成するナットにオイルの供給路を開けると共にこの供給路にオイル供給管を接続し、ナットにオイルの排出路を開けると共にこの排出路の下方にオイルパンを配置し、オイルパンから回収したオイルをポンプによりオイル供給管へ戻すことで、ボールねじの潤滑をなすことを特徴とする。
【0010】
油循環式潤滑に相当し、ナット内のボール及びねじ溝へオイルを強制的に供給する。金属粉はオイルの循環系に溜まるため、ボールやねじ溝に悪影響を及ぼすことはない。
【0011】
請求項2は、ボールねじを構成するねじ軸に、オイルの飛散を防止するカバーを被せたことを特徴とする。
【0012】
非回転体であるナットに回転体であるねじ軸が往復移動する。ナットの両端にシール材を設けても、ナット内のオイルの一部はシール材を通過してねじ軸に伝わる。この状態でねじ軸を高速で回すと、遠心作用でオイルが飛び散る。そこで、ねじ軸にオイルの飛散を防止するカバーを被せてその対策とした。
【0013】
請求項3は、ボールねじを構成するボールとボールとの間にセパレータリングを介在させたことを特徴とする。
【0014】
金属粉の主たる発生要因はボール同士の衝突によるボール表面の剥離にある。ボールとボールとの間にセパレータリングを介在させれば、金属粉の発生を十分に抑制することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、射出成形装置は、型締機と射出機と駆動機構とからなり、これらの機構に広くボールねじを採用するが、以下の実施の形態では射出機を例に発明を説明する。
【0016】
図1は本発明に係る電動式射出機の側面図であり、電動式射出機10は、加熱筒11と、この加熱筒11の基部に設けたフランジ部12と、このフランジ部12に対向して配置した基盤13と、これらのフランジ部12と基盤13とに渡したガイドバー14・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)と、これらのガイドバー14・・・に移動可能に取付けたスライド板15と、このスライド板15にベアリング16を介して取付けた保持板17と、この保持板17に一体的に取付けたプーリ18並びにスクリュー20と、前記プーリ18を介してスクリュー20を回すためにスライド板15に取付けたスクリュー回転モータ21と、スライド板15の図右に取付けたナット22と、このナット22に捩じ込んだねじ軸23と、このねじ軸23を前記基盤13に回転可能に支えるベアリング24と、ねじ軸23を回すために基盤13に取付けたスクリュー移動モータ25と、からなる。
【0017】
図は可塑化・計量工程末期、すなわち射出工程直前を示す。待機が済み、射出を実施するには、スクリュー移動モータ25を始動し、プーリ26、ベルト27及びプーリ28を介してねじ軸23を高速で回す。すると、ナット22とともに、スライド板15、保持板17、プーリ18、スクリュー回転モータ21及びスクリュー20が高速で移動する。
【0018】
図2は図1の作用説明図であり、射出工程完了状態を示す。すなわち、スクリュー20が高速で加熱筒11内を前進したことにより、加熱筒11内の溶融樹脂をノズル29から射出することができたことを示す。
【0019】
図3は本発明に係るオイル潤滑構造(第1実施例)の断面図であり、ボールねじ30は、ねじ軸23とボール31・・・とナット22との3要素からなる。そして、オイル潤滑構造は、両端に鍔32,32を残した状態でナット22の外周を削り、鍔32,32にO−リングなどのシール材33,33を取付け、円筒状のオイルケース35を被せたごく単純な構造物である。
【0020】
図4は図3の4−4線断面図であり、ナット22にラジアル孔36,37を開けると共に、オイルケース35の底にドレーン管38を取付け、このドレーン管38の途中から導圧管39を分岐し、この導圧管39にレベル計41を取付け、このレベル計41に上部センサ42及び下部センサ43を取付けてフロート44の高さを監視させ、センサ41,42の信号を受けた制御部45で、オイル供給弁46を制御させる。
【0021】
図3において、ナット22の両端に特殊なシール材47,47を設け、このシール材47,47でオイルの洩れを抑えるようにしているが、ねじ軸23のねじ溝48が螺旋であるためシール材47,47には不可避的な隙間が発生する。そのため、オイルは洩れる。
【0022】
そこで、図4においてオイルが洩れるに連れてフロート44が下がる。このフロート44が下部センサ43に達したら、その検知信号に基づいて制御部45にてオイル供給弁46を開けさせる。すると、オイル供給源49から供給管51を通じてオイル52がオイルケース35へ補充できる。この補充に連れてフロート44は上がる。このフロート44が上部センサ42に達したら、その検知信号に基づいて制御部45にてオイル供給弁46を閉じる。
【0023】
オイルケース35には所定のオイル52が溜まっており、このオイル52がラジアル孔37を通じて、ナット22内に至り、ボール31・・・などを潤滑する。なお、他方のラジアル孔36はエア抜き孔の作用をなす。
【0024】
仮に、ボール31,31同士が衝突してボール31表面が剥離する又はボール31がねじ溝48(図3参照)との摩擦で剥離するなどして金属粉53が発生しても、この金属粉53(図4)はオイルケース35の底に溜まるため、金属粉53がボール31・・・に接触する虞れはない。金属粉53は時々ドレーン弁54を開けて、排出すればよい。
【0025】
以上の図3,4で述べた第1実施例はナット22にオイルケース35を被せることで達成できるため、構造が単純であり、諸費用を下げることができる。
ただし、負荷がより大きく、使用頻度がより大きい場合には次の発明が有効となる。
【0026】
図5は図2の別実施例に係る電動式射出機の断面図であり、図2と同一構成については符号を流用して構成及び作用の説明を省略する。すなわち、この電動式射出機10は、ナット22の下方にオイルパン55を配置し、ねじ軸23の露出部分にカバー56を被せ、ナット22にオイル供給管57を接続したことを特徴とする。
なお、本発明は1本のスクリュー21当り2本のねじ軸23を備えた2軸ボール型電動式射出機に適用することもできる。
【0027】
図6は図5の6−6線断面図であり、ナット22の上部にオイルの入口58、下部にオイルの出口59があり、この様なナット22を含むねじ軸23を逆U字断面のカバー56で覆い、このカバー56の内面を伝わって落ちるオイルを含め、オイルの出口59から落下するオイルをオイルパン55で受けるようにしたことを示す。オイルパン55にはドレーンプラブ61及びオイル回収管62を備える。オイルパン55の底に溜まった金属粉53はドレーンプラグ61を開けることにより、排出可能である。
また、タンク67内にマグネットを設置すれば、より確実に金属粉を除去することができる。
【0028】
図7は本発明に係るオイル潤滑構造(第2実施例)の断面図兼作用図であり、このオイル潤滑構造は、ナット22上部にオイルの供給路63を開けると共にこの供給路63にオイル供給管57を接続し、ナット22下部にオイルの排出路64を開けると共にこの排出路64の下方にオイルパン55を配置し、オイルパン55から回収したオイルをポンプ65によりオイル供給管57へ戻すことで、ボールねじ30の潤滑をなすことを特徴とする。66・・・は盲栓であり、通孔に圧入して、通孔の一部を塞ぐことで、オイルの吹出しを防止する。オイルの供給路63の形状を工夫することにより盲栓66・・・を省くことはできる。オイルの排出路64も同様である。
【0029】
オイルパン55に溜まったオイル52は、オイル回収管62を通じてタンク67に溜め、このタンク67に溜めたオイルをフィルター68を介してポンプ65で汲み上げ、オイル供給管57を通じてオイルの供給路63に圧送する。すると、オイルはボール31・・・及びねじ溝48に至る。潤滑後に、オイルはオイルの排出路64を通じてオイルの出口59から流れ出て、オイルパン55へ落下する。
【0030】
また射出工程では、ねじ軸23を高速で回すため、露出部分のねじ軸23に付着しているオイルがラジアル方向へ飛散する。しかし、カバー56があるため、実害はない。加えて、オイルと共にタンク67に至った金属粉53はタンク67の底に沈むため、容易に回収できる。
【0031】
以上に述べた第1・第2実施例によれば、ボールねじの潤滑をオイルで実施するため、仮に金属粉が発生しても、この金属粉がオイルケース、オイルパン若しくはタンクの底に溜まる。その結果、金属粉がボールやねじ溝に至ってボールやねじ溝を摩耗するという不具合の発生を抑えることができる。しかし、金属粉の発生は少ないに越したことはない。
【0032】
図8(a),(b)は本発明に係るセパレータリングの説明図である。
(a)は比較例図であり、ねじ軸23とナット22との間にボール31,31が介在する。ねじ軸23が高速で回るとボール31,31同士が衝突したり擦れあうことから、ボール31の表面が剥離したり摩耗する虞れがある。
(b)は実施例であり、ボール31の外径より僅かに小さな外径のリング(セパレータリング)69をボール31,31間に介在させることで、ボール同士31,31が接触しないようにする。これにより、金属粉の発生を大いに抑えることができる。
【0033】
セパレータリング69の採用により金属粉の発生量を抑え、且つ潤滑材をオイルにすれば、僅かに発生した金属粉を確実にオイルの底に溜めることができ、セパレータリング69とオイル潤滑との相乗効果により、ボールねじの寿命を5年以上、使用条件によっては10年に延ばすことができる。
【0034】
尚、図1にオイルパンやオイル飛散防止カバーを付設することは望ましい。
また、本発明は実施の形態で説明した成形機に好適であるが、その他の型締機や駆動機構のボールねじにも適用できる。すなわち、本発明は電気式射出成形装置に広く採用できる。そして電気式射出成形装置は縦型であっても差支えない。
【0035】
さらには、図3,4に示したオイルケース35は、上部を開口した半円断面若しくはU断面のオイルパン状のケースであってもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、電動式射出成形装置のボールねじの潤滑を、オイル潤滑にしたことを特徴とする。オイルで潤滑すれば、金属粉が発生したとしても、この金属粉はオイルの底に溜って循環せず、ボールやねじ溝に悪影響を及ぼすことはなく、ボールねじの寿命を大幅に延ばすことができる。
【0038】
加えて、請求項1は、ボールねじを構成するナットの両端に、シール材を設けることで、ナットからのオイルの洩れを抑えるようにし、ボールねじを構成するナットにオイルの供給路を開けると共にこの供給路にオイル供給管を接続し、ナットにオイルの排出路を開けると共にこの排出路の下方にオイルパンを配置し、オイルパンから回収したオイルをポンプによりオイル供給管へ戻すことで、ボールねじの潤滑をなすことを特徴とし、ナット内のボール及びねじ溝へオイルを強制的に供給する。金属粉はオイルの循環系に溜まるため、ボールやねじ溝に悪影響を及ぼすことはない。
そして、オイルが温度上昇するときには、循環系から大気へ熱を放出させることでオイルの温度上昇を抑えることができ、この結果、高速運転に伴なうボールねじの温度上昇を抑えることができる。
【0039】
請求項2は、ボールねじを構成するねじ軸にカバーを被せたことを特徴とし、高速回転するねじ軸からオイルが飛散することを防止し、射出機回りのクリーンさを保つことができる。
【0040】
請求項3は、ボールねじを構成するボールとボールとの間にセパレータリングを介在させたことを特徴とする。金属粉の主たる発生要因はボール同士の衝突によるボール表面の剥離にある。ボールとボールとの間にセパレータリングを介在させれば、ボール同士の衝突を回避することができ、金属粉の発生を十分に抑制することができる。この結果、ボールねじの寿命を一層延ばすことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動式射出機の側面図
【図2】図1の作用説明図
【図3】本発明に係るオイル潤滑構造(第1実施例)の断面図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】図2の別実施例に係る電動式射出機の断面図
【図6】図5の6−6線断面図
【図7】本発明に係るオイル潤滑構造(第2実施例)の断面図兼作用図
【図8】本発明に係るセパレータリングの説明図
【符号の説明】
10…電動式射出機、22…ナット、23…ねじ軸、30…ボールねじ、31…ボール、35…オイルケース、52…オイル、56…カバー、57…オイル供給管、63…オイルの供給路、64…オイルの排出路、65…ポンプ、69…セパレータリング。
Claims (3)
- 駆動系にボールねじ(30)を用いるとともに、このボールねじ(30)の潤滑を、オイル潤滑にした電動式射出成形装置において、
前記ボールねじ(30)を構成するナット(22)の両端に、シール材(47,47)を設けることで、ナット(22)からのオイルの洩れを抑えるようにし、
前記ボールねじ(30)を構成するナット(22)にオイルの供給路(63)を開けると共にこの供給路(63)にオイル供給管(57)を接続し、前記ナット(22)にオイルの排出路(64)を開けると共にこの排出路(64)の下方にオイルパン(55)を配置し、オイルパン(55)から回収したオイルをポンプ(65)により前記オイル供給管(57)へ戻すことで、ボールねじ(30)の潤滑をなすことを特徴とする電動式射出成形装置のボールねじの潤滑構造。 - 前記ボールねじ(30)を構成するねじ軸(23)に、オイルの飛散を防止するカバー(56)を被せたことを特徴とする請求項1記載の電動式射出成形装置のボールねじの潤滑構造。
- 前記ボールねじ(30)を構成するボール(31)とボール(31)との間にセパレータリング(69)を介在させたことを特徴とする請求項1記載の電動式射出成形装置のボールねじの潤滑構造。
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