JP3567586B2 - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用感光体に関するものである。さらに詳しくは有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する非常に高感度でかつ高性能の電子写真用感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真用感光体の感光層にはセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の光導電性物質が広く用いられていた。しかしながら、セレン、硫化カドミウムは毒物として回収が必要であり、セレンは熱により結晶化するために耐熱性に劣り、硫化カドミウム、酸化亜鉛は耐湿性に劣り、また酸化亜鉛は耐刷性が無いなどの欠点を有しており、新規な感光体の開発の努力が続けられている。最近は、有機系の光導電性物質を電子写真用感光体の感光層に用いる研究が進み、そのいくつかが実用化された。有機系の光導電性物質は無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる、材料が無害である等の利点を有する。
【0003】
最近は、電荷キャリアーの発生と移動の機能を別々の化合物に分担させる、いわゆる機能分離型の感光体が高感度化に有効であることから、開発の主流となっており、このタイプによる有機系感光体の実用化も行われている。
電荷キャリアー移動媒体としては、ポリビニルカルバゾールなどの高分子光導電性化合物を用いる場合と低分子光導電性化合物をバインダーポリマー中に分散溶解する場合とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に、有機系の低分子光導電性化合物は、バインダーとしての皮膜性、可とう性、接着性などの優れたポリマーを選択することができるので容易に機械的特性の優れた感光体を得ることができる(例えば特開昭63−269160号公報、特公平3−39306号公報、特公平4−53308号公報、特開平3−149560号公報、特開平5−262679号公報等参照)。しかしながら、高感度な感光体を作るのに適した化合物を見いだすことが困難であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの目的を満足し得る有機系の低分子光導電性化合物について鋭意研究したところ特定のスチルベン系化合物が好適である事を見いだし本発明に至った。即ち、本発明の要旨は、導電性基体上に感光層を有する電子写真用感光体において、前記感光層中に、下記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を含有することを特徴とする電子写真用感光体に存する。
【0006】
【化5】
【0007】
(一般式[I]中、Ar1 、Ar2 、Ar7 、およびAr8 は、それぞれ、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい複素環基、または、置換基を有してもよい縮合多環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;Ar3 およびAr6 は、それぞれ、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい二価の複素環基、置換基を有してもよい二価の縮合多環基、または、置換基を有してもよいビフェニレン基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;
【0008】
Ar4 およびAr5 は、それぞれ、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい二価の複素環基、置換基を有してもよい二価の縮合多環基、または、置換基を有してもよいビフェニレン基を表わし、(ただし、R2 が置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアラルキル基の場合、Ar4 は、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい二価の複素環基、置換基を有してもよい二価の縮合多環基、または、置換基を有してもよいビフェニレン基を表わし、R3 が置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアラルキル基の場合、Ar5 は、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい二価の複素環基、置換基を有してもよい二価の縮合多環基、または、置換基を有してもよいビフェニレン基を表わす。)
【0009】
R1及びR4は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい複素環基、または、置換基を有してもよい縮合多環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;R2およびR3は、それぞれ、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい複素環基、または、置換基を有してもよい縮合多環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;Xは、
一般式[ II ]
−O−A 1 −O− …[ II ]
(一般式[ II ]中、A 1 は置換基を有していてもよい二価の炭化水素残基を表わす。)
で表わされる二価の有機残基を表わし;Ar1とAr2、Ar2とAr3、Ar1とAr3、Ar6とAr7、Ar7とAr8、Ar6とAr8、R2とAr4およびR3とAr5は、直接または結合基を介して連結していてもよい。)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真用感光体は、感光層中に前記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を含有する。
前記一般式[I]において、Ar1 、Ar2 、Ar7 およびAr8 は、それぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、アントラセニル基等のアリール基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の複素環基;フルオレニル基等の縮合多環基を表わし、特にアリール基および縮合多環基が好ましく、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、縮合多環基は、置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
【0011】
Ar3 およびAr6 は、それぞれ、フェニレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、アントラセニレン基等のアリーレン基;チエニレン基、フリレン基、ピリジレン基等の二価の複素環基;フルオレニレン基等の二価の縮合多環基;ビフェニレン基を表わし、特にアリーレン基、二価の縮合多環基およびビフェニレン基が好ましく、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。これらのアリーレン基、二価の複素環基、二価の縮合多環基、ビフェニレン基は、置換基を有してもよく、置換基としては、水素基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
【0012】
Ar4 およびAr5 は、それぞれ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、アントラセニレン基、等のアリーレン基;チエニレン基、フリレン基、ピリジレン基等の二価の複素環基;フルオレニレン基等の二価の縮合多環基;ビフェニレン基を表わし、特にアリーレン基、二価の縮合多環基およびビフェニレン基が好ましく、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。これらのアルキレン基、アリーレン基、二価の複素環基、二価の縮合多環基、ビフェニレン基は、置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
【0013】
ただし、R2 が置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアラルキル基の場合、Ar4 は、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい二価の複素環基、置換基を有してもよい二価の縮合多環基、または、置換基を有してもよいビフェニレン基を表わし、R3 が置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアラルキル基の場合、Ar5 は、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい二価の複素環基、置換基を有してもよい二価の縮合多環基、または、置換基を有してもよいビフェニレン基を表わす。
【0014】
R1 およびR4 は、それぞれ、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、アントラセニル基等のアリール基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の複素環基;フルオレニル基等の縮合多環基を表わし、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。これらのうち、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、縮合多環基は、置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
【0015】
R2 およびR3 は、それぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、アントラセニル基等のアリール基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の複素環基;フルオレニル基等の縮合多環基を表わし、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、縮合多環基は、置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
【0016】
Xは、一般式[ II ]で表わされる二価の有機残基を表わす。
【0017】
【化6】
【0020】
一般式[II]中、A1は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;
フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;キシリレン基等のアルキレン基とアリーレン基が結合した基;シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;ビニレン基等の二価の炭化水素残基を表わす。これらのアルキレン基、アリーレン基、アルキレン基とアリーレン基が結合した基、ビニレン基等の二価の炭化水素残基は、置換基を有してもよく、置換基としては、水酸基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
【0021】
一般式[I]中、Ar1 とAr2 およびAr7 とAr8 は直接または結合基を介して連結してもよく、例えば以下の一般式[V]、[VI]、[VII ]、[VIII]または[IX]で表わされる構造をとることができる。
【0022】
【化9】
【0023】
また一般式[I]中、Ar1 とAr3 、Ar2 とAr3 、Ar6 とAr7 およびAr6 とAr8 は直接または結合基を介して連結してもよく、例えば以下の一般式[X]、[XI]、[XII ]、[XIII]または[XIV ]で表わされる構造をとることができる。
【0024】
【0025】
また一般式[I]中、R2 とAr4 、およびR3 とAr5 は直線または結合基を介して連結してもよく、例えば以下の一般式[XV][XVI ][XVII][XVIII ][XIX ][XX][XXI ][XXII]および[XXIII ]で表わされる構造をとることができる。
【0026】
【0027】
上記一般式[V]〜[XXIII ]においてXおよびYは置換基を1個以上有してもよいベンゼン環を表わし、その置換基としては、水酸基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アリル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェノキシ基、トリロキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基、フリル基等の複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基等のアリールビニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等のジアリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基等のジアラルキルアミノ基;ジチエニルアミノ基、ジフリルアミノ基等のジ複素環アミノ基;ジアリルアミノ基;上記のアミノ基を組み合わせたジ置換アミノ基;ニトロ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基等があげられる。
以下に一般式[I]で表わされるスチリル系化合物について代表例を挙げるが、これらの代表例は例示のために示されるのであって、本発明に用いるスチルベン系化合物はこれらの代表例に限定されるものではない。
【0028】
【化12】
【0032】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0043】
【0046】
前記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物は、公知の方法を用いて製造できる。例えばビスホスホン酸ジエステルとカルボニル化合物とのWittig−Hornor−Emmons反応を行ない、目的の化合物を得る方法である。
この方法を詳しく説明すると、
【0047】
【化30】
【0048】
上記一般式[XXIV](一般式[XXIV]中、Ar1 、Ar2 、Ar3 およびR1 は一般式[I]におけると同一の定義を有する。)で表わされるカルボニル化合物と、一般式[XXVI](一般式[XXVI]中、Ar4 、Ar5 、R2 およびR3 は一般式[I]におけると同一の定義を有する。またR7 およびR8 はそれぞれアルキル基を表わす。)で表わされるビスホスホン酸ジエステルをテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、ポタシウムアルコキシド、水素化ナトリウム、ソジウムアルコキシド等の塩基存在下反応させることにより一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物が得られる。(Wittig−Hornor−Emmons反応)
【0049】
この時、場合によって2種類のカルボニル化合物を混合することにより非対称の一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物が得られる。
またこの時、二つの二重結合部においてそれぞれシス体、トランス体およびシス体とトランス体の混合物のいずれかが得られる。(一般式[I]は、二つの二重結合部においてそれぞれ、シス体、トランス体およびシス体とトランス体の混合物のいずれかを表わす。)
【0050】
これらの反応において、場合によっては、各工程終了後、あるいは、全工程終了後、再結晶精製、カラム精製等の公知な精製手段により、高純度体を得ることも可能である。
本発明の電子写真用感光体は、上記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を1種または2種以上含有する感光層を有する。
一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物は有機光導電体として極めて優れた性能を示す。特に電荷輸送剤として用いられた場合には高感度で耐久性に優れた感光体を与える。
【0051】
電子写真用感光体の感光層の形態としては種々のものが知られているが、本発明の電子写真用感光体の感光層としてはそのいずれであってもよい。例えばバインダー中にスチルベン系化合物と必要に応じ増感剤となる色素や電子吸引性化合物を添加した感光層、光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリアーを発生する電荷発生剤粒子とスチルベン系化合物をバインダー中に添加した感光層、スチルベン系化合物とバインダーからなる電荷輸送層と光を吸収する極めて高い効率で電荷キャリアーを発生する電荷発生剤粒子からなるあるいはこれとバインダーからなる電荷発生層とを積層した感光層等が挙げられる。
【0052】
これらの感光層中には、一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物と共に、有機光導電体として優れた性能を有する公知の他のスチルベン系化合物、アリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル系化合物等を混合してもよい。本発明においては上記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を電荷発生層と電荷輸送層の2層からなる感光層の電荷輸送層中に用いる場合に、特に感度が高く残留電位が小さく、かつ、繰り返し使用した場合に、表面電位の変動や感度の低下、残留電位の蓄積等が少なく耐久性に優れた感光体を得ることができる。
【0053】
本発明の電子写真用感光体は常法に従って上記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物をバインダーと共に適当な溶剤中に溶解し、必要に応じ光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリアーを発生する電荷発生剤粒子、増感染料、電子吸引性化合物、あるいは、可塑剤、顔料その他の添加剤を添加して得られる塗布液を導電性支持体上に塗布、乾燥し、通常、数ミクロン〜数十ミクロン、好ましくは10ミクロン〜40ミクロンの膜厚の感光層を形成させることにより製造することができる。電荷発生層と電荷輸送層の二層からなる感光層の場合は、電荷発生層の上に上記塗布層を塗布するか、上記塗布液を塗布して得られる電荷輸送層の上に電荷発生層を形成させることにより、製造することができる。
【0054】
塗布液調整用の溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、蟻酸メチル、メチルセロソルブアセテート等のエステル類;ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素などのスチリル系化合物を溶解させる溶剤が挙げられる。勿論これらの中からバインダーを溶解するものを選択する必要がある。また、バインダーとしては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、けい素樹脂、エポキシ樹脂等スチレン系化合物と相溶性のある各種ポリマーが挙げられる。バインダーの使用量は通常スチレン系化合物に対し、0.5〜30重量倍、好ましくは0.7〜10重量倍の範囲である。
【0055】
上記感光層に添加される電荷発生剤粒子、染料色素、電子吸引性化合物としてはいずれも周知のものが使用できる。光を吸収すると極めて高い効率で電荷キャリアーを発生する電荷発生剤粒子としてはセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機電荷発生剤粒子;金属含有フタロシアニン、ペリレン系顔料、チオインジゴ、キナクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキス系アゾ顔料、シアニン系顔料等の有機電荷発生剤粒子が挙げられる。特に、金属含有フタロシアニンと組み合わせるとレーザー光に対する感度が向上し、かつ残留電位の小さい優れた感光体が得られる。
【0056】
染料としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリン等のキノン染料及びシアニン染料やビリリウム塩、チアビリリウム塩、ベンゾビリリウム塩等が挙げられる。
また、スチルベン系化合物と電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては、例えばクロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類;9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジヒドロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類;無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物;3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等の電子吸引性化合物が挙げられる。
【0057】
更に、本発明の電子写真用感光体の感光層は成膜性、可撓性、機械的強度を向上させるために周知の可塑剤を含有していてもよい。そのために上記塗布液中に添加する可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、エポキシ化合物、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、メチルナフタレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。スチルベン系化合物を電荷輸送層中の電荷輸送剤として用いられる場合の塗布液は、前記組成のものでよいが、電荷発生剤粒子、染料色素、電子吸引性化合物等は除くか、少量の添加でよい。この場合の電荷発生層としては上記電荷発生剤粒子と必要に応じバインダーポリマーや有機光導電性物質、染料色素、電子吸引性化合物等の溶媒に溶解ないし分散させて得られる塗布液を塗布乾燥した薄層、あるいは前記電荷発生剤を蒸着等の手段により成膜した層が挙げられる。
【0058】
また、本発明の電子写真用感光体の感光層は、電気特性あるいは繰り返し使用における耐久性を向上させるために周知の添加剤を含有していてもよい。そのために上記塗布液中に添加する添加剤としては、フェノール系化合物、有機リン系化合物、有機イオウ系化合物等が挙げられる。
このようにして形成される感光体にはまた、必要に応じ、接着層、中間層、透明絶縁層等を有していてもよいことはいうまでもない。
【0059】
感光層が形成される導電性基体としては周知の電子写真用感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には例えば、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属ドラム、シートあるいはこれらの金属箔のラミネート物、蒸着物が挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシートやドラムが挙げられる。
【0060】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の製造例、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
(製造例1)
下記トリフェニルアミンアルデヒド化合物8.0gと
【0061】
【化31】
【0062】
下記に示すビスホスホン酸ジエステル化合物8.7gを、
【0063】
【化32】
【0064】
テトラヒドロフラン160mlに溶解させ20℃以下でポタシウム−t−ブトキシド3.3gを加え、その後室温で30分攪拌した後、反応液に水200mlを加え、常法により抽出、濃縮、精製処理を行なうことにより淡黄色結晶8.0g(融点105〜107℃)を得た。
この化合物は、質量分析測定及び赤外吸収スペクトル測定(図1)により、下記構造式であるスチルベン系化合物(例示化合物No.1)であることが判明した。
【0065】
【化33】
【0066】
(製造例2)
製造例1と同様にして、4,4′−ジメチルトリフェニルアミンアルデヒド化合物
【0067】
【化34】
【0068】
7.7gと製造例1で用いたビスホスホン酸ジエステル化合物7.6gをテトラヒドロフラン150mlに溶解させ、20℃以下でポタシウム−t−ブトキシド2.9gを加え、その後室温で2時間攪拌した後、反応液に水200mlを加え、常法により抽出、濃縮、精製処理を行なうことにより淡黄色結晶6.0g(融点117〜118℃)を得た。
【0069】
この化合物は、質量分析測定及び赤外吸収スペクトル測定(図2)により、下記構造式であるスチルベン系化合物(例示化合物No.2)であることが判明した。
【0070】
【化35】
【0071】
(実施例1)
下記構造式で表わされるナフタル酸系ビスアゾ顔料1.0部を
【0072】
【化36】
【0073】
ジメトキシエタン14部に加え、サンドグライダーで分散処理をした後、ジメトキシエタン14部と4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2(三菱化学(株)社製)14部を加え希釈し、さらに、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名「デンカブチラール」#6000−C)0.5部と、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)社製、商品名「UCAR」(商標登録)PKHH)0.5部をジメトキシエタンが6部、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2が6部の混合溶媒に溶解した液と混合し、分散液を得た。この分散液を75μmの膜厚のポリエステルフィルムに蒸着されたアルミ蒸着層の上に乾燥後の重量が0.4g/m2 になる様にワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。
この上に製造例1で製造したスチリル系化合物70部と下記に示すポリカーボネート樹脂
【0074】
【化37】
【0075】
100部をテトラヒドロフラン900部に溶解した塗布液を塗布、乾燥し、膜厚28μmの電荷輸送層を形成させた。
このようにして得た2層からなる感光層を有する電子写真用感光体に対して感度すなわち半減露光量を測定したところ0.44lux・secであった。
半減露光量はまず、感光体を暗所で22μAコロナ電流により負帯電させ、次いで1ルックスの白色光で露光し、表面電位が−450Vから−225Vまで減衰するのに要する露光量を測定することにより求めた。さらに露光時間を9.9秒とした時の表面電位を残留電位として測定したところ、−4Vであった。
【0076】
(実施例2)
実施例1で用いたナフタル酸系ビスアゾ顔料の代わりに、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.3°、10.6°、13.2°、15.1°、15.7°、16.1°、20.8°、23.3°、27.1°に強い回折ピークを示すチタニウムオキシフタロシアニン顔料を用いる以外は実施例1と同様にして作成した感光体を780nmの光(光量500nW)で露光し、半減露光量を測定したところ、0.56μJ/cm2 であった。残留電位は−24Vであった。
【0077】
(実施例3)
実施例1で使用したスチルベン系化合物の代わりに、製造例2で合成したスチルベン系化合物を用いる以外は実施例1と同様にして作成した感光体の半減露光量を測定したところ、0.45lux・secであった。また残留電位は、−1Vであった。
【0078】
(実施例4)
実施例2で使用したスチルベン系化合物の代わりに、製造例2で合成したスチルベン系化合物を用いる以外は実施例2と同様にして作成した感光体の半減露光量を測定したところ、0.50μJ/cm2 であった。残留電位は、−4Vであった。
【0079】
【発明の効果】
本発明の電子写真用感光体は感度が非常に高く、かつ、かぶりの原因となる残留電位が小さく、とくに光疲労が少ないために繰り返し使用や強露光による残留電位の蓄積や、表面電位および感度の変動が小さく耐久性に優れており、PPC用に適しているだけでなく、性能の安定性、信頼性が特に要求されるレーザープリンタ、液晶シャッタープリンタ、LEDプリンタ等のプリンタ用感光体にも適した感光体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で製造したスチルベン系化合物の赤外吸収スペクトル図
【図2】製造例2で製造したスチルベン系化合物の赤外吸収スペクトル図
Claims (6)
- 導電性基体上に感光層を有する電子写真用感光体において、前記感光層中に、下記一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を含有することを特徴とする電子写真用感光体。
R1およびR4は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい複素環基、または、置換基を有してもよい縮合多環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;R2およびR3は、それぞれ、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい複素環基、または、置換基を有してもよい縮合多環基を表わし、これらは互いに同一でも異なっていてもよく;Xは、
一般式[ II ]
−O−A 1 −O− …[ II ]
(一般式[ II ]中、A 1 は置換基を有していてもよい二価の炭化水素残基を表わす。)
で表わされる二価の有機残基を表わし;Ar1とAr2、Ar2とAr3、Ar1とAr3、Ar6とAr7、Ar7とAr8、Ar6とAr8、R2とAr4およびR3とAr5は、直接または結合基を介して連結していてもよい。) - 一般式[I]において、Ar 1 及びAr 7 が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基であり、Ar 2 及びAr 8 が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい縮合多環基を表わすことを特徴とする請求項1記載の電子写真用感光体。
- 一般式[I]において、Ar 1 、Ar 2 及びAr 3 、並びにAr 6 、Ar 7 及びAr 8 がいずれも置換基を有していてもよいフェニル基であり、かつAr 1 とAr 2 及びAr 7 とAr 8 、又はAr 1 とAr 3 及びAr 6 とAr 7 とが、それぞれ直接又は結合基を介して結合していることを特徴とする請求項1記載の電子写真用感光体。
- 感光層が、電荷発生剤および電荷輸送剤を含有し、電荷輸送剤として前記請求項1記載の一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を用いることを特徴とする、請求項1、2または3記載の電子写真用感光体。
- 感光層が、少なくとも、電荷輸送剤を含む電荷輸送層と、電荷発生剤とバインダー樹脂を含む電荷発生層とを有し、電荷輸送層中の電荷輸送剤として請求項1記載の一般式[I]で表わされるスチルベン系化合物を用いることを特徴とする、請求項1、2、3または4記載の電子写真用感光体。
- 電荷輸送層が、電荷輸送剤とバインダー樹脂とを含むことを特徴とする、請求項5記載の電子写真用感光体。
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