JP3564865B2 - 自動車のエンジンマウント取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、とりわけ、F・F型車(フロントエンジン・フロントドライブ型車)のようにエンジンユニットをエンジンルームに横向きに搭載した自動車のエンジンマウント取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンユニットをエンジンルームに横向きに搭載したF・F型車では、エンジンユニットの防振支持方式としてエンジンマウントの配置によって3点マウント方式、十字マウント方式が採用されているが、何れの場合もエンジンユニットの左右両側部は車体前後方向骨格となる車体側部材であるフロントサイドメンバにエンジンマウントを介してしっかりと防振支持される。
【0003】
エンジンユニットの一方の側部ではエンジン本体とフロントサイドメンバとの間に余裕空間があるため、側部エンジンマウントをエンジン本体とフロントサイドメンバとの間で前、後エンジンマウントと同様に比較的低い位置に配設することができるが、エンジンユニットの他方の側部ではトランスミッションケースがフロントサイドメンバに接近していてこれら両者間に側部エンジンマウントを配設できないため、該トランスミッションケースの上面部とフロントサイドメンバとを側部エンジンマウントを介して結合して防振支持するようにしている。
【0004】
車体の組立てラインではエンジンユニットの搭載工程で、ハンガーにより吊持して移送されてくる車体に対してエンジンユニットをリフターで上昇させ、車体とエンジンユニットとを上下方向に相互に落し込んでエンジンユニットの位置合わせを行い、エンジンマウントによって該エンジンユニットを車体側部材に防振支持させるのであるが、トランスミッションケースの上面部に締結するエンジンマウントは締結位置の地上高が高く作業者の手が届かないため、このエンジンユニット搭載工程ではフロントサイドメンバにサブアッセンブリしたエンジンマウントのエンジン側ブラケットと、トランスミッションケースの上面部に固設したエンジンマウント定置ブラケットとを下方から仮り固定し、後段の車体をハンガーから降して組付け作業を行うプラットホーム工程で、上方よりこのエンジンマウントのエンジン側ブラケットとトランスミッションケースのエンジンマウント定置ブラケットとをしっかりとボルト締結するようにしている。(1994年7月 トラタ自動車(株)発行 E−SV40,41,42,43系、KD−CV40系修理書 4−16頁参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
エンジンマウントのインシュレータラバーの防振および制振作用を適正に発揮させるためには、該エンジンマウントの車体側ブラケットをフロントサイドメンバに高剛性下で締結することと併せて、エンジンマウントのエンジン側ブラケットをトランスミッションケースの上面部に高剛性下で締結することが肝要であるが、前述のようにトランスミッションケースの上面部にエンジンマウント定置ブラケットを固設して、該エンジンマウント定置ブラケットにエンジンマウントのエンジン側ブラケットを締結固定した構造では、このエンジンマウント定置ブラケットが動荷重に対して弾性変形してバネ系として作用し、エンジンマウントの機能を十分に活かし切れずに音振性能が悪化する要因となってしまう。
【0006】
そこで、本発明はトランスミッションケースの上面部にエンジンマウントのエンジン側ブラケットを仮り固定できて、エンジンマウントの組付けを適正に行えることは勿論、該エンジンマウントの機能を十分に発揮させることができて音振性能を一段と向上することができる自動車のエンジンマウント取付構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1にあっては、エンジンルームに横向きに搭載されるエンジンユニットのトランスミッションケースの上面部分を、エンジンマウントを介して車体側部材に防振支持するようにした構造において、前記トランスミッションケースの上面部分にエンジンマウントを締結する複数個の座部を形成する一方、エンジンマウントをその車体側ブラケットを介して車体側部材に固定して、この車体側ブラケットにインシュレータラバーを介して組付けたエンジン側ブラケットに、前記トランスミッションケースの座部にボルト締結する取付部を形成すると共に、該エンジン側ブラケットにトランスミッションケースの一側方に張り出すアーム部を延設し、他方、トランスミッションケースには前記アーム部を受けるステイ部材を固設し、車体とエンジンユニットとを上下方向に相互に落し込んで前記アーム部とステイ部材とを係合して仮り固定し、これらアーム部とステイ部材とを仮り固定した状態でエンジン側ブラケットの取付部を直接トランスミッションケースの座部にボルト締結するようにしてあり、かつ、前記のエンジン側ブラケットのアーム部はトランスミッションケースの前方に張り出して延設してある一方、ステイ部材はトランスミッションケースの前面部に固設してあると共に、該ステイ部材の下端部をトランスミッションケース下部のオイルパンの下面に廻り込んで曲折成形してあって、このステイ部材の前面にトランスミッションオイルを循環させるオイルチューブを上下方向に蛇行して配管したことを特徴としている。
【0008】
請求項2にあっては、請求項1に記載のエンジン側ブラケットのアーム部を斜め上方に曲折成形してある一方、ステイ部材はその上端部に前記アーム部と同一角度で傾斜したアーム受け部を曲折成形してあると共に、該アーム受け部の両側縁に上側に向けて傾斜ガイド縁を曲折成形したことを特徴としている。
【0009】
請求項3にあっては、請求項1,2に記載のトランスミッションケースの上面部に形成した複数個の座部の少くとも1つに、エンジン側ブラケットの取付部のボルト挿入孔に係合するスタッドボルトを設けたことを特徴としている。
【0012】
【発明の効果】
請求項1によれば、車体側部材に締結固定したエンジンマウントのエンジン側ブラケットを、その取付部を介してトランスミッションケースの上面部の座部に直接ボルト締結してあるため、エンジンマウントとトランスミッションケースとの間にバネ系として働く他の部材が介在することがなく、従って、エンジンマウントの防振機能を設定通りに発揮させることができて音振性能を一段と向上することができる。
【0013】
しかも、このエンジンマウントのエンジン側ブラケットには、トランスミッションケースの一側方に張り出すアーム部を延設してあって、このアーム部をトランスミッションケースに固設したステイ部材に係合して仮り固定できるようにしてあるため、車体組立てラインのエンジンユニット搭載工程で、トランスミッションケース上面部の座部とエンジンマウントのエンジン側ブラケットの取付部との締結位置の地上高が高く作業者の手が届かない状況下にあっても、従来と同様に該エンジンマウントとトランスミッションケースとを仮り固定できてエンジンユニットのガタツキを生起することなく後段の組付け工程へ移送することができ、エンジンユニットの組付けに些かも支障を来すことはない。
また、ステイ部材をトランスミッションケースの前面部に固設し、その下端部をトランスミッションケース下部のオイルパンの下面に廻り込んで曲折形成してあるため、該ステイ部材が地上高の低いオイルパンが路面干渉するのを防止するプロテクタとして機能し、従って、別部材からなる専用のオイルパンプロテクタが不要となってコスト的に有利に得ることができる。
更に、トランスミッションオイルを循環するオイルチューブを走行動風を受け易いステイ部材の前面に上下方向に蛇行配設して放熱面積を拡大してあるため、トランスミッションオイルの冷却効果を得ることができ、従って、従来、エアコンコンデンサの前面に付設していた専用のオイルクーラーが不要となると共に、該オイルクーラーへの配管のためオイルチューブをフロントファーストクロスメンバの下側に廻り込んで配管するのに伴って、該オイルチューブの下側廻り込み部分に設けていた路面干渉防止用のチューブプロテクタが不要となってコスト的に有利に得ることができる。
【0014】
請求項2によれば、請求項1の効果に加えて、エンジンユニット搭載工程で車体とエンジンユニットとを上下方向に相互に落し込んだ際に、エンジンマウントのエンジン側ブラケットに延設したアーム部の側縁が、ステイ部材のアーム受け部両側縁の傾斜ガイド縁に摺接して適正に該アーム受け部に誘導されると共に、アーム部とアーム受け部の各傾斜によって適正位置に摺接ガイドされて、これらアーム部とアーム受け部とを確実に係合させることができ、エンジンマウントとトランスミッションケースとの仮り固定作業を容易に行うことができる。
【0015】
請求項3によれば、請求項1,2の効果に加えて、エンジンユニット搭載工程で車体とエンジンユニットとを上下方向に相互に落し込んだ際に、トランスミッションケース上面部の座部に設けたスタッドボルトが、エンジンマウントのエンジン側ブラケットの取付部に形成したボルト挿入孔に進入して係合し、該スタッドボルトがロケートピンとして機能するから、エンジンマウントとトランスミッションケース相互の位置決めを行えて、エンジンマウントとトランスミッションケースとの仮り固定作業をより一層容易に行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0019】
図1,2において、1はエンジンルームに横向きに搭載されるエンジンユニットEの左側のトランスミッションケースで、その上面部には後述するエンジンマウント4を締結するための3つの座部2を形成してある。
【0020】
この実施形態では最前部の座部2の座面にスタッドボルト3を立設固定し、他の座部2の座面にはねじ孔2aを形成してある。
【0021】
4はトランスミッションケース1を車体側部材である前後方向骨格部材のフロントサイドメンバ16に防振支持するエンジンマウントを示し、該エンジンマウント4はフロントサイドメンバ16上面に溶接固定又はボルト・ナット固定した車体側ブラケット5と、インシュレータラバー7を圧入嵌合して、該インシュレータラバー7の中心部分に挿通したシャフト8を介して車体側ブラケット5に連結したエンジン側ブラケット6とを備えている。
【0022】
エンジン側ブラケット6には、トランスミッションケース1の上面部に設けた座部2に対応してボルト挿入孔9aを有する複数個の取付部9を設けてある。
【0023】
また、このエンジン側ブラケット6には、トランスミッションケース1の前方に張り出すアーム部10を延設してある。
【0024】
アーム部10は斜め上方に曲折成形してあって、その中央部分にネジ孔10aを形成してある。
【0025】
11はトランスミッションケース1の前面部にボルト14により締結固定したステイ部材で、その上端部には前記アーム部10と同一と角度で曲折成形されて該アーム部10を受けるアーム受け部12を形成してある。
【0026】
アーム受け部12はその中央部分にボルト挿入孔12aを形成してあると共に、その両側縁には上側に向けて傾斜ガイド縁13を曲折成形してある。
【0027】
また、このステイ部材11の下端部はトランスミッションケース1の下部のオイルパン1Aの下面に廻り込んで曲折成形して、オイルパン1Aを路面干渉から保護するプロテクタとして機能するようにしている。
【0028】
更に、この実施形態ではオイルパン1A内に貯留されるトランスミッションオイルを循環するオイルチューブ15を、このステイ部材11の前面に上下方向に蛇行してクランプ部材15aを介して配管固定してある。
【0029】
以上の実施形態の構造によれば、車体の組立てラインではエンジンユニットEの搭載工程で、ハンガーにより吊持して移送されてくる車体に対してエンジンユニットEをハンガーと同期的に移送されるリフター(ハンガー、車体、リフターは何れも図示省略)で上昇させ、車体とエンジンユニットEとを上下方向に相互に落し込んでエンジンユニットEを一方の側部のエンジンマウント4を他のエンジンマウントと共にフロントサイドメンバ16および図外のセンターメンバに防振支持するのであるが、この車体とエンジンユニットEとの上下方向の相互の落し込み時には、エンジンユニットEのトランスミッションケース1側の側部にあっては、フロントサイドメンバ16に固定したエンジンマウント4のアーム部10と、トランスミッションケース1に固設したステイ部材11のアーム受け部12とが係合して相互の位置決めが行われる。
【0030】
特に、この実施形態ではアーム部10およびアーム受け部12を斜め上方に傾斜して曲折成形してあると共に、該アーム受け部12の両側縁には傾斜ガイド縁13を曲折成形してあるため、アーム部10がこれら傾斜ガイド縁13に摺接して左右方向の振れが修正されることと、スタッドボルト3がエンジン側ブラケット6の最前部の取付部9のボルト挿入孔9aに進入係合して前後、左右方向の位置決めが行われることによってアーム部10が適正にアーム受け部12上に誘導され、かつ、これらアーム部10とアーム受け部12の各傾斜によって相互に適正位置に摺接ガイドされて、これらアーム部10とアーム受け部12とを確実に係合させ、ねじ孔10aとボルト挿入孔12aとを整合させることができる。
【0031】
従って、トランスミッションケース1の上面部の座部2とエンジンマウント4のエンジン側ブラケット6の取付部9との締結位置の地上高が高く作業者の手が届かない状況下にあっても、下方よりボルト17をアーム受け部12のボルト挿入孔12aに挿入してアーム部10のねじ孔10aに螺合し、これらアーム部10とアーム受け部12とを締結することによってトランスミッションケース1とエンジンマウント4とを容易に仮り固定できるから、エンジンユニットEのガタツキを生起することなく後段の組付け工程へ移送することができる。
【0032】
エンジンユニットEを搭載した車体をハンガーから降して組付け作業を行うプラットホーム工程では、前述のエンジンマウント4のエンジン側ブラケット6の最前部の取付部9に突出したスタッドボルト3に上方よりナット18を螺合して締結すると共に、他の取付部9のボルト挿入孔9aに上方よりボルト19を挿入し、トランスミッションケース1の上面部の座部2のねじ孔2aに螺合して締結し、エンジン側ブラケット6を直接トランスミッションケース1の座部2に結合する。
【0033】
このように、エンジンマウント4のエンジン側ブラケット6を、その取付部9を介してトランスミッションケース1の座部2に直接ボルト3,19およびナット18によって締結してあるため、エンジンマウント4とトランスミッションケース1との間にバネ系として働く他の部材が介在することがなく、エンジンマウント4の防振機能を設定通りに発揮させることができ、音振性能を一段と向上することができる。
【0034】
また、ステイ部材11はトランスミッションケース1の前面部に固設して、その下端部をオイルパン1Aの下面に廻り込んで曲折成形してあるため、このステイ部材11の下端部が地上高の低いオイルパン1Aが路面干渉するのを防止するプロテクタとして機能し、従って、別部材からなる専用のオイルパンプロテクタが不要となってコスト的に有利に得ることができる。
【0035】
更に、このステイ部材11の前面にオイルチューブ15を上下方向に蛇行配管して放熱面積を拡大してあるため、車両走行時にはフロントバンパー20の下側に廻り込んで矢印Aで示すようにエンジンルーム内に導入される走行動風を、このオイルチューブ15に吹き当てることができてトランスミッションオイルの冷却効果を得ることができ、従って、従来、エアコンコンデンサ21の前面に付設していた専用のオイルクーラーを不要とすることができる。
【0036】
また、このオイルクーラーを不要とすることに伴って、従来では該オイルクーラーへのオイルチューブ15の配管のため、該オイルチューブ15をファーストクロスメンバ22の下側に廻り込んで配管し、この下側廻り込み部分に路面干渉防止用のチューブプロテクタが必要とされていたが、このチューブプロテクタも不要とすることができるからコストダウンに大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】同実施形態の組付け状態を示す側面図。
【符号の説明】
1 トランスミッションケース
1A オイルパン
2 座部
3 スタッドボルト
4 エンジンマウント
5 車体側ブラケット
6 エンジン側ブラケット
7 インシュレータラバー
8 取付部
10 アーム部
11 ステイ部材
12 アーム受け部
13 傾斜ガイド縁
15 オイルチューブ
16 車体側部材
E エンジンユニット
Claims (3)
- エンジンルームに横向きに搭載されるエンジンユニットのトランスミッションケースの上面部分を、エンジンマウントを介して車体側部材に防振支持するようにした構造において、前記トランスミッションケースの上面部分にエンジンマウントを締結する複数個の座部を形成する一方、エンジンマウントをその車体側ブラケットを介して車体側部材に固定して、この車体側ブラケットにインシュレータラバーを介して組付けたエンジン側ブラケットに、前記トランスミッションケースの座部にボルト締結する取付部を形成すると共に、該エンジン側ブラケットにトランスミッションケースの一側方に張り出すアーム部を延設し、他方、トランスミッションケースには前記アーム部を受けるステイ部材を固設し、車体とエンジンユニットとを上下方向に相互に落し込んで前記アーム部とステイ部材とを係合して仮り固定し、これらアーム部とステイ部材とを仮り固定した状態でエンジン側ブラケットの取付部を直接トランスミッションケースの座部にボルト締結するようにしてあり、かつ、前記エンジン側ブラケットのアーム部はトランスミッションケースの前方に張り出して延設してある一方、ステイ部材はトランスミッションケースの前面部に固設してあると共に、該ステイ部材の下端部をトランスミッションケース下部のオイルパンの下面に廻り込んで曲折成形してあって、このステイ部材の前面にトランスミッションオイルを循環させるオイルチューブを上下方向に蛇行して配管したことを特徴とする自動車のエンジンマウント取付構造。
- エンジン側ブラケットのアーム部を斜め上方に曲折成形してある一方、ステイ部材はその上端部に前記アーム部と同一角度で傾斜したアーム受け部を曲折成形してあると共に、該アーム受け部の両側縁に上側に向けて傾斜ガイド縁を曲折成形したことを特徴とする請求項1記載の自動車のエンジンマウント取付構造。
- トランスミッションケースの上面部に形成した複数個の座部の少くとも1つに、エンジン側ブラケットの取付部のボルト挿入孔に係合するスタッドボルトを設けたことを特徴とする請求項1,2記載の自動車のエンジンマウント取付構造。
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