JP3562800B2 - 輪転機の紙引き装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、輪転機の印刷部と当該印刷部で印刷されたウェブを折り畳む折部との間に配設され、前記印刷部の複数の印刷ユニットで印刷された複数のウェブを、印刷部から折部に引き込むための輪転機の紙引き装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
新聞の印刷に使用されている輪転機は、ロール状の巻き取り紙からウェブを供給する複数の給紙部と、この給紙部から供給されたウェブの片面又は両面に印刷を行う印刷部と、この印刷部で印刷されたウェブの走行経路を決定するレールフレーム部と、このレールフレーム部の下流に設けられ、前記ウェブを断裁して折り畳み、重ね合わせて新聞を形成する折り部とを有している。
【0003】
前記した折り部には、重ね合わされた複数枚のウェブを折り畳む三角形状のフォーマーが設けられている。そして、このフォーマーの手前には、印刷部で印刷され、重ね合わされた複数枚のウェブを前記フォーマーに送り込むための紙引き装置が配置されている。この紙引き装置は、一般に、モータ等の駆動体の駆動によって回転駆動するドラッグローラと、このドラッグローラに前記ウェブを押しつけるためのワリスとを有している。
【0004】
図6は、従来の紙引き装置の要部の構造を説明する概略側面図である。
同図において、紙引き装置は、回転駆動するドラグローラ102と、重ね合わされたウェブ104の上からドラグローラ102に押し付けられるワリスローラ101と、このワリスローラ101を所定の押力でドラグローラ102に押し付ける押力調整手段103とを有している。
【0005】
ワリスローラ101は、重ね合わされた複数枚のウェブ104の紙引きを確実に行うために、新聞2頁幅のウェブ104の幅に対して複数設けられるのが一般的である。そして、ウェブ104の両側の余白部分及び中央の余白部分(頁と頁の間の余白部分)の四カ所でウェブ104を押さえて、しわ等を生じさせることなく確実に紙引きを行うことができるようにしている。このワリスローラ101は、後述する支持部材106に回転自在に配設してあり、ドラグローラ102の回転に従動して回転する。
【0006】
また、ワリスローラ101は、エアシリンダ107を主構成要素とする押力調整手段103によって、重ね合わされた複数枚のウェブ104をドラグローラ102に押し付けている。そして、ドラグローラ102と接触するウェブ104が、ドラグローラ102の表面に対して滑らないようにしているとともに、重ね合わされたウェブ104どうしが滑らないようにしている。
【0007】
前記した押力調整手段103は、輪転機のフレーム等に取り付けられる固定部材105と、この固定部材105に一端が回動自在に取り付けられ、ワリスローラ101を回転自在に取り付ける支持部材106と、シリンダ基部が固定部材105に取り付けられ、伸縮自在なピストンロッド107aの先端が支持部材106の他端に取り付けられたエアシリンダ107とから概略構成される。
【0008】
そして、エアシリンダ107のピストンロッド107aを縮退させることでワリスローラ101をドラグローラ102から遠ざけ、ピストンロッド107aを伸長させることで、ワリスローラ101とドラグローラ102との間にウェブ104を挟み込むことができるようになっている。また、エアシリンダ107は、エアの供給圧力を調整することにより、ウェブ104に対するワリスローラ101の押し付け力を強弱調整することが可能である。
【0009】
しかしながら、上記構成の紙引き装置においては、複数枚重ね合わされたウェブ104を確実に折り部のフォーマーに送るために、ワリスローラ101はかなり強い押し付け力でウェブ104をドラグローラ102に押し付けている。そのため、ワリスローラ101に直接当接するウェブ104に圧着痕等の汚れが生じることがある。
また、ウェブ104とドラッグローラ102との間で滑りが生じることがあり、この滑りによって、ワリスローラ101により押力を受けている部分に汚れが生じることがある。
【0010】
そのため、ワリスローラの代わりにベルトを用いることによって、このような問題点を解決しようとする試みがなされている。
例えば、実開平6−8663号公報に開示されている巻紙輪転印刷機の紙引き装置では、図7に示すように、回転駆動されるドラグローラ102と、回転駆動さる駆動ローラ110と、複数の従動ローラ112,112と、これら駆動ローラ110及び従動ローラ112,112に巻き掛けられたベルト113と、ベルト113のテンションを調整するテンションコロ111とを有している。
【0011】
そして、駆動ローラ110によってドラグローラ102の周速と同じ速度で走行しているベルト113の一部をドラグローラ102に巻き付けることで、重ね合わされた複数枚のウェブ104が、ベルト113によってドラグローラ102に押し付けられるようにしている。
【0012】
また、例えば、特開2000−16690号公報に開示されている紙引き装置では、図8に示すように、回転駆動される駆動ローラ213と、ドラグローラ202と、ドラグローラ202に押し付けられる二つの押えローラ211,212と、駆動ローラ213及び押えローラ211,212に巻き掛けられた押えベルト214とを有している。
押えローラ211,212は、位置調整部材220とともに、互いに近接する方向又は離間する方向に位置調整自在で、これによって、連続紙(ウェブ)203に付与することのできる押し付け力を調整することができるようになっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実開平6−8663号公報に開示された巻紙輪転印刷機の紙引き装置は、所定のテンションが加えられたベルトのみでウェブを押し付ける構成であるため、ウェブの枚数が多くなると、十分な押し付け力を得ることができず、ドラグローラ102とウェブ104との間で滑りが生じやすくなるといった問題があった。
【0014】
さらに、特開2000−16690号公報に記載の紙引き装置は、二つの押えローラ211,212で大きな押し付け力を得ることができるものの、これら二つの押えローラ211,212による押し付け力が同じになるように位置合わせするのはきわめて難しく、作業性が悪いうえ、実際上、圧着による紙さけやしわの発生などを効果的に防止することができないという問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題を解決するために提案されたものであり、重ね合わされたウェブの枚数や走行速度が変化しても、紙面の汚れ、圧着による紙さけ、しわの発生などといった不具合を、極めて効果的に防止することができる輪転機の紙引き装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の輪転機の紙引き装置は、輪転機の印刷部と折り部との間に設けられ、前記印刷部で印刷され、重ね合わされた複数枚のウェブを前記折り部まで紙引きする輪転機の紙引き装置であって、回転駆動されるドラグローラと、前記複数枚のウェブを介して前記ドラグローラと当接し、前記複数枚のウェブを前記ドラグローラに押し付ける第一のベルト車と、この第一のベルト車よりも前記ウェブの走行方向上流側に、前記ドラグローラと離間して配設された第二のベルト車と、前記第一のベルト車と前記第二のベルト車とに巻き掛けられるとともに、前記第一のベルト車側の一部が前記ドラグローラに巻き付けられたベルトとを有し、前記ベルトの前記ドラグローラに巻き付けられた部分から、前記第一のベルト車にかけて押力を徐々に増大させながら前記複数枚のウェブを前記ドラグローラに押し付ける構成としてある。
【0017】
この構成によれば、第一のベルト車と第二のベルト車に巻き掛けられたベルトの一部がドラグローラに巻き付けられ、この部分でもウェブをドラグローラに押し付けて紙引きを行う。したがって、紙引き装置でウェブに作用する単位面積当たりの押し付け力を小さくすることができ、紙面の汚れ等の不具合を防止することができる。
また、必要な押力の一部をベルトが負担するので、第一のベルト車によるウェブの押し付け力を小さくすることができ、これによっても紙面の汚れ等の不具合を防止することができる。
【0018】
さらに、第二のベルト車を第一のベルト車の走行方向上流側に設けているので、ベルトは、第一のベルト車よりも走行方向上流側でドラグローラに巻き付くことになる。したがって、ウェブは、まずベルトによってドラグローラに押し付けられ、次いで、第一のベルト車によってドラグローラに押し付けられることになる。そのため、ワリスローラ単独の場合に比して、押力を徐々に増大させることができ、瞬間的に大きな押力が作用する従来の紙引き装置に比べて圧着による紙さけやしわの発生などといった不具合をより効果的に防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の紙引き装置は、前記第一のベルト車及び前記ベルトが前記ウェブを前記ドラグローラへ押し付ける押力を調整する押力調整手段を設けた構成としてある。
この構成によれば、ウェブの枚数や走行速度等に応じて、第一のベルト車及びベルトによるウェブの押し付け力を強弱調整することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記押力調整手段が、前記第一のベルト車と第二のベルト車を回転自在に支持する支持部材を前記ドラグローラに向けて押す駆動体である構成としてある。
この構成によれば、前記駆動体を駆動して支持部材を所定の押力で押すことで、第一のベルト車による押力とベルトによる押力を同時に調整することが可能になる。
【0021】
前記駆動体は、請求項4に記載するように、流体圧シリンダであるのが好ましく、この流体圧シリンダに供給する作動流体の圧力によって、前記押力を調整するようにするのがよい。
流体圧シリンダに供給する作動流体としては、エア等の気体のほか油等の液体であってもよい。
【0022】
請求項5に記載の発明は、前記ウェブの走行方向の、前記第一のベルト車より下流側に第三のベルト車を配設し、前記ベルトを前記第一のベルト車、第二のベルト車及び前記第三のベルト車に巻き掛けた構成としてある。
この構成によれば、ウェブの走行方向下流側にもドラグローラにベルトを巻き付けることができ、接触面積の増大によって単位面積当たりの押力をさらに小さくすることができる。
さらに、押力の解除が徐々に行われるので、圧着による紙さけやしわの発生などといった不具合をより効果的に防止することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、前記第一のベルト車、第二のベルト車又は前記第三のベルト車を回転駆動させるための回転手段を有する構成としてある。
このように構成することで、第一のベルト車、第二のベルト車又は第三のベルト車をドラグローラの回転に同調させて回転駆動させることで、ウェブとドラグローラとの間の滑り及びウェブとベルトとの間の滑りの発生を防止することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、前記第二のベルト車及び前記第三のベルト車の少なくとも一方を位置変更可能に設け、前記第二のベルト車又は前記第三のベルト車の位置を変更することで、前記ベルトの前記ドラグローラに対する巻き付け長さを変更できるようにした構成としてある。
この構成によれば、ドラグローラに対するベルトの接触長さ(巻き付き長さ)を調整することができるようになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の輪転機の紙引き装置の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の紙引き装置の第一の実施形態にかかり、その構成を説明するための概略側面図、図2は、図1の要部の拡大図、図3は図2のI−I方向矢視図である。
【0026】
図1において、紙引き装置1は、回転駆動されるドラグローラ2と、重ね合わされた複数枚のウェブ10をドラグローラ2に押し付ける第一のベルト車3と、この第一のベルト車3よりもウェブ10の走行方向下流側に配設された第二のベルト車4と、第一のベルト車3と第二のベルト車4に巻き掛けられ、ウェブ10をドラグローラ2に押し付けるベルト5と、第一のベルト車3および第二のベルト車4を支点Xを中心に回転自在に支持する略三角形状の支持フレーム6と、第一のベルト車3およびベルト5がウェブ10をドラグローラ2に押し付ける力を調整するための押力調整手段7とを有している。
【0027】
第一のベルト車3は、略三角形状の支持フレーム6の一方側(ウェブ10の走行方向下流側)の頂部に、回転自在に取り付けられている。この第一のベルト車3は、従来の紙引き装置におけるワリスと同様に、新聞2頁幅のウェブ10の幅に対して複数設けられている。この実施形態では、ウェブ10の両側の余白部分及び中央の余白部分(頁と頁の間の余白部分)でウェブ10を押さえることができるように、四個設けられている。
【0028】
なお、第一のベルト車3又は第二のベルト車4は、ドラグローラ2の回転に従動して回転するように構成してもよいし、モータ等の回転手段によって回転駆動させるように構成してもよい。第一のベルト車3又は第二のベルト車4をドラグローラ2の回転に同調させて回転駆動させることで、ウェブ10とドラグローラ2との間の滑り及びウェブ10とベルト5との間の滑りの発生をより効果的に防止することができるという利点がある。
【0029】
上記構成の第一のベルト車3は、後述する押力調整手段7によって、ドラグローラ2に、図1のC点で押し付けられる。第一のベルト車3に巻き掛けられたベルト5は、このC点と、ドラグローラ2の表面に沿ったウェブ10の走行方向上流側のD点との間で、ドラグローラ2に巻き付けられる。
また、ウェブ10は、前記D点よりもさらに走行方向上流側のA点又はA点の近傍でドラグローラ2に接触し、前記C点よりも走行方向下流側のB点で、ドラグローラ2から離れるように、紙引き装置1に導かれる。
【0030】
第二のベルト車4は、略三角形状の支持フレーム6の他方側(ウェブ10の走行方向上流側)の頂部に、回転自在に設けられている。この実施形態で第二のベルト車4は、第一のベルト車3とほぼ同じ形状・大きさとしてある。
また、第二のベルト車4の回転軸41は、支持フレーム6の他方側に形成された長孔42に挿入され、ボルトやナット(図示せず)などの固定手段によって支持フレーム6に固定されている。長孔42は、第二のベルト車4とともにベルト5をドラグローラ2の表面に接近させる方向と遠ざける方向に移動させることができるように、支持フレーム6に形成されている。
【0031】
このようにすると、回転軸41の固定を解除し、第二のベルト車4を長穴42に沿って移動させることで、点CD間の円弧長さで表されるドラグローラ2に対するベルト5の接触長さ(巻き付き長さ)を調整することができる。
これを、図2を参照しながら説明する。図2では、第二のベルト車4を移動させる前のベルト5の位置を実線で、移動後のベルト5の位置を仮想線(二点鎖線)で示している。
第二のベルト車4を移動させる前の状態では、前記したように、ベルト5は図2中実線で示す位置にあり、ベルト5のドラグローラ2に対する接触長さLは円弧CDの長さに等しい。
【0032】
第二のベルト車4を下方、つまり、ドラグローラ2側に移動させると、ベルト5も全体的にドラグローラ2に接近し、ベルト5がドラグローラ2に接触する点がウェブ10の走行方向上流側に移動する。この点をD′で表す。図示するように、第二のベルト車4を下方に移動させることで、接触長さL′(円弧CD′の長さに等しい)が移動前の接触長さLよりも長くなる。
このように、長孔42と前記固定手段は、複数枚のウェブ10に対するベルト5の接触長さを調整する接触長さ調整手段として作用し、ウェブ10の紙質,重ね合わせの枚数および走行速度などに応じて、ベルト5の接触長さを調整することができる。
【0033】
ベルト5は、第一のベルト車3と第二のベルト車4に巻き掛けられている。図3に示すように、第一のベルト車3は、巻き掛けられたベルト5を介して、ウェブ10をドラグローラ2に押し付ける。
また、図示はしないが、ベルト5の走行経路上にテンション調整用のローラを配置して、このローラをベルト5に押し当てることで、ベルト5のテンション調整を行うことができるようにしてもよい。
【0034】
ベルト5の材質は特に限定されるものではない。金属,樹脂,ゴム及びこれらの複合材料などを用いることができる。好ましくは、第一のベルト車3及び第二のベルト車4とベルト5との間に容易に滑りが生じないものであるのがよい。また、ベルト5として歯付ベルトを用い、第一のベルト車3及び第二のベルト車4として歯付プーリ等を用いることで、第一のベルト車3及び第二のベルト車4とベルト5との間の滑りやずれを完全に無くすことができる。
さらに、紙引き時に、一時的に増大した負荷により、ウェブ10どうしで滑りが生じるよりも早く、ウェブ10とベルト5との間で滑りが生じるように、例えば、ウェブ10同士の摩擦係数よりもベルト5の表面とウェブ10との間の摩擦係数を小さくするのが良い。このようにすることで、紙引きの際に何らかの原因で急激に負荷が作用しても、ベルト5とウェブ10との間で滑りが生じるので、重ね合わされたウェブ10がずれてしまうという不具合を防止することができる。
なお、ベルト5は、本発明の紙引き装置に専用のものであってもよいが、市販のものを用いることができる。そのため、従来の特注品のワリスローラに比して、ベルトが摩耗等した場合にも、短期間かつ廉価なコストでベルトを購入することができ、かつ、保守作業も容易で経済的にも有利であるという利点がある。
【0035】
押力調整手段7は、輪転機のフレーム等に取りつけられる固定部材71と、この固定部材71に回動自在に取り付けられた支持フレーム6を回動させる流体圧シリンダとしてのエアシリンダ73とから概略構成される。エアシリンダ73のシリンダ基部は固定部材71に取り付けられ、伸縮自在なピストンロッド73aの先端が支持フレーム6の三番目の頂部に連結される。
この態様により、エアシリンダ73が駆動してピストンロッド73aが伸長すると、第一のベルト車3がドラグローラ2に押し付けられるとともに、ベルト5の一部がドラグローラ2に所定長さ巻き付けられる。また、シリンダ内に供給する作動流体であるエアの圧力を調整することで、第一のベルト車3およびベルト5をドラグローラ2に押し付ける力を調整することができる。
また、ピストンロッド73aが縮退すると、第一のベルト車3及びベルト5がドラグローラ2から離れるので、ウェブ10のセットや紙引き装置1の点検などを容易に行うことができる。
【0036】
上記構成の紙引き装置1によれば、ウェブ10の紙引きが、第一のベルト車3だけでなく、ドラグローラ2に一部が巻き付けられるように張設されたベルト5によっても行われるため、ワリスローラ単独の場合よりもウェブ10との接触面積を大きくすることができ、ウェブに作用する単位面積当たりの押力の低減によって、紙面の汚れやしわの発生等の不具合を有効に防止することができる。
また、第二のベルト車4の位置を調整することで、簡単にベルト5のドラグローラ2に対する巻き付け長さを調整することができる。
さらに、第一のベルト車3とベルト5の協働によって紙引きを行うので、ベルト単独の場合よりもウェブ10との間で滑りが生じにくく、複数枚のウェブ10を効率良く押えて、確実な紙引きを行うことができる。
【0037】
また、紙引き装置1に導入されたウェブ10は、図1又は図2に示すD点でまずベルト5によってドラグローラ2の表面に押し付けられ、次いで、C点で第一のベルト車3よってドラグローラ2の表面に押し付けられるので、重ね合わされたウェブ10には、D点からC点に向かうにしたがって徐々に大きな押力が加えられることになる。
すなわち、従来のようにワリスローラが単独で紙引きを行うような場合には、前記ワリスローラによって急激に大きな押力がウェブ10に作用することになるが、本発明では、ウェブ10に作用する押力がD点からC点までの間で徐々に増大するので、急激な負荷が作用することによる圧着による紙さけやしわの発生などといった不具合をより効果的に防止することができる。
【0038】
[第二の実施形態]
本発明の紙引き装置の第二の実施形態を図4及び図5に示す。
なお、図4及び図5において、第一の実施形態の紙引き装置と同一の部分、同一の部材には同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
図4は、第二の実施形態の紙引き装置を説明するための概略図である。
【0039】
この実施形態の紙引き装置1′は、図4に示すように、複数枚のウェブ10をドラグローラ2に押し付ける第一のベルト車3aと、第一のベルト車3aよりもウェブ10の走行方向上流側に配設された第二のベルト車4aと、第一のベルト車3aの走行方向下流側に配設された第三のベルト車4bと、第一のベルト車3a、第二のベルト車4a及び第三のベルト車4bに巻き掛けられ、ウェブ10をドラグローラ2に押し付けるベルト5とを有する構成としてある。
【0040】
この実施形態の紙引き装置1′では、第一の実施形態の紙引き装置1よりもベルト5のウェブ10に対する接触長さ(巻き付け長さ)L″をさらに長くすることができ、ウェブ10に作用する単位面積当たりの押力をさらに小さくすることができるという利点がある。
また、第一の実施形態の紙引き装置1と同様に、ウェブ10がベルト5に接触するD点から第一のベルト車3aによって大きな押力を受けるC点までの間で押力を徐々に増大させることができるだけでなく、C点からベルト5がウェブ10から離れるE点の間で押力の解除が徐々に行われるので、圧着による紙さけやしわの発生などといった不具合をより効果的に防止することができる。
【0041】
図5は、この第二の実施形態における紙引き装置1′の具体的構成を示す概略図である。
第一のベルト車3a、第二のベルト車4a及び第三のベルト車4bは、支持フレーム6′に回転自在に取り付けられている。支持フレーム6′は、エアシリンダ73のピストンロッド73aが連結される頂部を頂点とする、ほぼ直角二等辺三角形状に形成され、底辺の両端に位置する二つの頂部のうちの走行方向上流側の頂部に第二のベルト車4aが、下流側の頂部に第三のベルト車4bが取り付けられている。また、底辺のほぼ中央には、第一のベルト車3aが取り付けられている。
【0042】
第二のベルト車4aは、第一の実施形態と同様に長孔42に沿って移動させることができ、第一のベルト3aよりも走行方向上流側におけるベルト5のドラグローラ2への巻き付け長さを変えることができるようなっている。
特に図示はしないが、第三のベルト車4bについても、第二のベルト車4aと同様に長孔に沿って移動可能とすることで、第一のベルト3aよりも走行方向下流側におけるベルト5のドラグローラ2への巻き付け長さを変えることができるようなる。
【0043】
また、この第二の実施形態においても、第一のベルト車3a、第二のベルト車4a又は第二のベルト車4bのいずれかをドラグローラ2の回転に同調させて回転駆動させるようにしてもよい。このようにすることで、ウェブ10とドラグローラ2との間の滑り及びウェブ10とベルト5との間の滑りの発生をより効果的に防止することができる。
【0044】
本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、支持部材は略三角形のフレーム状であるとして説明したが、各ベルト車を回転自在に支持することができるのであれば、支持部材の形状及び形態は種々のものを採用することが可能である。
また、押力調整手段の駆動体はエアシリンダであるとして説明したが、エア以外の作動流体、例えば作動油によって駆動される流体圧シリンダであってもよい。さらに、押力を調整することができるのであれば、駆動体は流体圧シリンダに限らず、モータとねじ機構,スプリング,その他とを組み合わせた他の駆動体であってもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の輪転機の紙引き装置は、ベルトとこのベルトを巻き掛けるベルト車とでウェブをドラグローラに押し付けて紙引きを行うので、重ね合わされたウェブの枚数や走行速度が変化しても、紙面の汚れ、圧着による紙さけ、しわの発生などといった不具合を、極めて効果的に防止することができる。
また、ウェブの走行方向上流側から第一のベルト車までベルトがドラグローラに巻き付けられるように構成してあるので、紙引き装置によってウェブに作用する押力を徐々に増大させることができ、これによっても圧着による紙さけ、しわの発生などといった不具合をさらに効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紙引き装置の第一の実施形態にかかり、その構成を説明するための概略側面図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】図2のI−I方向矢視図である。
【図4】第二の実施形態の紙引き装置を説明するための概略図である。
【図5】第二の実施形態における紙引き装置の具体的構成を示す概略図である。
【図6】従来の紙引き装置の要部の構造を説明する概略側面図である。
【図7】本発明の従来例にかかり、実開平6−8663号公報に開示されている輪転印刷機の紙引き装置の概略図である。
【図8】本発明の従来例にかかり、特開2000−16690号公報に開示されている紙引き装置の概略図である。
【符号の説明】
1,1′ 紙引き装置
2 ドラグローラ
3,3a 第一のベルト車
4,4a 第二のベルト車
4b 第三のベルト車
5 ベルト
6,6′ 支持フレーム(支持部材)
7 押力調整手段
10 ウェブ
41 回転軸
42 長穴
71 固定部材
73 エアシリンダ(流体圧シリンダ)
A ウェブがドラグローラに接触する点
B ウェブがドラグローラから離れる点
C 第一のベルト車によってウェブがドラグローラに押し付けられる点
D ベルトがドラグローラに接触する点
D′ 第二のベルト車の位置調整によって変化したベルトがドラグローラに接触する点
E ベルトがドラグローラから離れる点(第二の実施形態)
Claims (7)
- 輪転機の印刷部と折り部との間に設けられ、前記印刷部で印刷され、重ね合わされた複数枚のウェブを前記折り部まで紙引きする輪転機の紙引き装置であって、
回転駆動されるドラグローラと、
前記複数枚のウェブを介して前記ドラグローラと当接し、前記複数枚のウェブを前記ドラグローラに押し付ける第一のベルト車と、
この第一のベルト車よりも前記ウェブの走行方向上流側に、前記ドラグローラと離間して配設された第二のベルト車と、
前記第一のベルト車と前記第二のベルト車とに巻き掛けられるとともに、前記第一のベルト車側の一部が前記ドラグローラに巻き付けられたベルトとを有し、
前記ベルトの前記ドラグローラに巻き付けられた部分から、前記第一のベルト車にかけて押力を徐々に増大させながら前記複数枚のウェブを前記ドラグローラに押し付けることを特徴とする輪転機の紙引き装置。 - 前記第一のベルト車及び前記ベルトが前記ウェブを前記ドラグローラへ押し付ける押力を調整する押力調整手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の輪転機の紙引き装置。
- 前記押力調整手段が、前記第一のベルト車と第二のベルト車を回転自在に支持する支持部材を、前記ドラグローラに向けて押す駆動体を有することを特徴とする請求項2に記載の輪転機の紙引き装置。
- 前記駆動体が流体圧シリンダであり、この流体圧シリンダに供給する作動流体の圧力によって、前記押力を調整することを特徴とする請求項3に記載の輪転機の紙引き装置。
- 前記ウェブの走行方向の、前記第一のベルト車より下流側に第三のベルト車を配設し、前記ベルトを前記第一のベルト車、第二のベルト車及び前記第三のベルト車に巻き掛けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紙引き装置。
- 前記第一のベルト車、第二のベルト車又は前記第三のベルト車を回転駆動させるための回転手段を有することを特徴とする請求項5に記載の輪転機の紙引き装置。
- 前記第二のベルト車及び前記第三のベルト車の少なくとも一方を位置変更可能に設け、前記第二のベルト車又は前記第三のベルト車の位置を変更することで、前記ベルトの前記ドラグローラに対する巻き付け長さを変更できるようにしたことを特徴とする請求項5又は6に記載の輪転機の紙引き装置。
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