JP4544722B2 - 印刷機の紙パス変更装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット輪転機等の印刷機におけるウェブの走行経路(紙パス)を変更するようにした、印刷機の紙パス変更装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は商業用オフセット輪転機に設備された印刷装置部における従来の課題を説明するための図、図9は商業用オフセット輪転機の全体の概略構成を説明する模式図である。
一般的な商業用オフセット輪転機は、図9に示す如く主な構成ユニットとしてウェブ供給装置14、ウェブ1の走行方向に沿って並設された複数組の印刷装置2a〜2n(以下、特に区別しない場合には単に印刷装置2という)、乾燥装置30、冷却装置17、ウェブパス装置18及び折機19等をそなえて構成されている。上記各ユニット(装置)は、それぞれクラッチ31を介して、1本の駆動シャフト32に連結されており、1台の駆動モータMを介し、全てが所定のタイミングで互いに連動して作動するように構成されている。なお、図中の15はロールスタンド、16はインフィード装置、27は駆動ローラ、28は押さえローラである。
【0003】
また、商業用オフセット輪転機には、上記以外の駆動形式として、各ユニットに各々独立したモータを設け、各ユニットが単独で駆動できるよう構成したものもある(図示省略)。
前記構成のもと、ウェブ供給装置14に設けた巻き取り紙33から供給されたウェブ1は、上記並設された印刷装置2a〜2n群を順次通過する途上において所定の多色印刷が施され、さらに乾燥装置30,冷却装置17へ送り込まれて乾燥,冷却等の処理が施される。
【0004】
続いて、ウェブ1は折機19へ移送され、所定位置で折り畳みや裁断等が行われ、目的とする形状の折帳に加工された後、排紙装置34を介して外部へ搬出されることになる。
また、前記ウェブ供給装置14から印刷装置2a〜2n群へ送り込まれるウェブ1には所定の張力(テンション)が付加されており、また、最終印刷装置2nで印刷を終えたウェブ1にも印刷装置2nから下流の乾燥装置30及び冷却装置17へ送り込まれる間において、所定の張力が付加されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、従来の技術の課題について図8を参照しながら説明する。
従来のオフセット輪転機では、所定時間輪転機を停止させた後再度印刷を開始させるに当たり、版胴35へ巻着させた刷版36やブランケット胴(印刷胴)6等にインキを転移供給させる場合や、印刷装置2を暖機運転させる場合、或いは所定の印刷を終えた後、同じウェブ1を使用し絵柄のみを変更する場合の刷版36の差し替え交換や清掃作業を行なう場合は、ウェブ1を通紙したまま版胴35及びブランケット胴6を空転させることが多い。
【0006】
これまで上記の種々の作業を行なう場合、図8に示す如く、ウェブ1は、ブランケット胴6外周面に接触しているため、図中※印部で示すように、残留するインキの粘性によって、ウェブ1がブランケット胴6へ付着して取られ(引き付けられ)、ブランケット胴6の外周面に巻き付くといった課題があった。
このため、(1)ウェブ1が破断して、通紙をやり直す必要が発生するのみならず、ウェブ1がブランケット胴6に多量に巻き付いて、ブランケット胴6と版胴35との隙間が設定値以上になり、ブランケット胴6や版胴35の軸が破損するなど、種々のトラブルの原因となる。
【0007】
(2)上記課題に対処する手段としては、ウェブ1を予め切断しておき、印刷装置2部における設定が完了した後再度通紙することも考えられる。しかし、この方法では初期準備に時間がかかり、不良紙(損紙)が増加することになる。
(3)また、紙切れが発生しなくても前記ウェブ1の弛んだ状態から印刷を再開した場合、ウェブ1の走行状態が安定するまでに長い時間がかかり、この場合も大量の損紙が発生する事になる。
【0008】
(4)インキ供給を事前に行なうべく、図示しないインキローラ群を単独で運転するための単独駆動装置を設けた機種もあるが、このような装置は製造原価の大幅な上昇を招くことになる。
(5)暖機のための空転を行なわないようにした場合には、生産量が少なくなる場合がある等の問題があった。
【0009】
また、上記の問題に対処する手段として、印刷装置群の前後、つまり、第1印刷装置2aの上流側と最終印刷装置2nの下流側とにウェブ固定装置を設け、通紙したウェブ1を所定の張力を付加した状態で固定する装置も提案されている。
しかしながら、このような装置は、ウェブ1がブランケット胴6に接触した状態で固定されるものであるため、印刷開始に際して供給されたインキがウェブ面に転移したり、洗浄に供した洗浄液が図示しないブランケット締めつけ装置部の溝から飛び出してウェブ1上の一部に集中して吹きつけられ、ウェブ強度が弱くなって破断するというおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、オフセット輪転機等における印刷装置部に設備され、印刷開始に際してブランケット胴へのインキ転移供給や暖機運転や印刷装置の設定変更,保守点検及び整備等にともなうブランケット胴の空転に対して、ウェブの走行経路を該ブランケット胴と接触しない位置に変更し、通紙したウェブの断紙を防止できるようにした、印刷機の紙パス変更装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の印刷機の紙パス変更装置は、通常印刷時のウェブパスラインの垂直線に対し、中心を結ぶ線が所定の角度だけ傾くよう設定された2つの胴を有する印刷装置を備えたオフセット輪転機等の印刷機において、ウェブ走行方向に沿って並設された複数の印刷装置のうちの第1印刷装置の上流側,隣接する2つの印刷装置の中間及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ配設され、該ウェブの走行経路を通常印刷する経路と、該各印刷装置の胴抜き時に2つの胴の隙間を通り且つ該2つの胴に接触しない経路とに変更する経路変更手段と、該ウェブ走行経路の変更を所定のタイミングで変更するべく該経路変更手段を作動させる制御手段とをそなえ、該経路変更手段は、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され、該ウェブ横幅方向に掛け渡され、該2つの胴に接触しない経路に変更する際に該ウェブに接触するウェブ支持体と、該各ウェブ支持体を昇降移動させるアクチュエータとをそなえ、該上流側のウェブ支持体及び該下流側のウェブ支持体の一方を上昇させ、他方を下降させて、該通常印刷する経路と該2つの胴に接触しない経路とに変更するように構成されていることを特徴としている。
【0012】
該経路変更手段、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され該ウェブ横幅方向に掛け渡されたウェブ支持体と、印刷機フレーム側に固設されたストッパとをそなえ、該経路変更手段の作動時に、該ウェブ支持体と該ストッパとで該ウェブが挟持されるように構成されることが好ましい
また、本発明の印刷機の紙パス変更装置は、オフセット輪転機等の印刷機において、ウェブ走行方向に沿って並設された複数の印刷装置のうちの第1の印刷装置の上流側,隣接する2つの印刷装置の中間及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ配設され、該ウェブの走行経路を通常印刷する経路と、該各印刷装置の胴抜き時に2つの胴の隙間を通り且つ該2つの胴に接触しない経路とに変更する経路変更手段と、該ウェブ走行経路の変更を所定のタイミングで変更するべく該経路変更手段を作動させる制御手段とをそなえ、該経路変更手段が、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され該ウェブ横幅方向に掛け渡されたウェブ支持体と、印刷機フレーム側に固設されたストッパとをそなえ、該経路変更手段の作動時に、該ウェブ支持体と該ストッパとで該ウェブが挟持されるように構成されていることを特徴としている。
【0013】
第1印刷装置の上流側及び該最終印刷装置の下流側にそれぞれ単独のモータで駆動されるウェブ移送手段をそなえことが好ましい
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施形態について説明する。
(A)第1実施形態の説明
まず、本発明の第1実施形態にかかる紙パス変更装置について説明すると、図1はその全体構成の概略を示す模式図であって、本装置を商業用オフセット輪転機に適用した場合の模式図、図2及び図3はともにその要部構成を示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、両面印刷を施す商業用オフセット輪転機には、ウェブ(印刷用紙)1の走行方向に沿って印刷装置2a〜2n群が並設されており、このうち最上流側の第1印刷装置2aよりも上流側と、隣接する2つの印刷装置2の中間部と、最終印刷装置2nの下流側とに、それぞれウェブ1の走行経路を変更するための経路変更手段38が設けられている。
【0016】
この経路変更手段38は、ウェブ1の走行経路を挟んで上下にそれぞれ配設された紙ガイド(ウェブ支持体)3をそなえ、該紙ガイド3を昇降させることにより通紙したウェブ1の走行経路を変更するよう構成されている。各紙ガイド3は、ローラ又はバー(棒状物)等により構成され、装置横幅方向(ウェブ1の横幅方向)全域に亘って掛け渡されている。なお、紙ガイド3はウェブ1との摩擦係数を向上させるべく外周面にゴム4をライニング(貼着)させた構造としてもよいし、ダイヤ目5を形成した構造としても良い〔図3(a)参照〕。
【0017】
ところで、2つのブランケット胴6a,6bを互いに離隔させる(以下、胴抜きという)と、図2に示すように、ブランケット胴6aとブランケット胴6bとの間に所定の隙間Sが形成される。
本発明は、上記隙間Sに着目したものであり、図2に実線で示すように、胴抜き時には、経路変更手段38が作動して、ウェブ1がウェブパスラインの上下に対設された印刷装置2のブランケット胴6a,6bの中心を結んだ線の中点を通り、且つ該線に対し直角方向にウェブ1が走行するように紙ガイド3の位置が変更されるようになっている。また、通常印刷時等には、一点鎖線で示すように、経路変更手段38が非作動状態になり、ウェブ1が水平に走行するのに支障のない位置となるように設定されている。
【0018】
また、このような経路変更手段38の作動状態,非作動状態は図示しない検知装置で検知されるようになっており、この検知装置からの情報は後述する制御装置24に入力されるようになっている。
なお、このような形式の印刷機は、一般に、図示するように、上側ブランケット胴6a及び下側ブランケット胴6bの中心を結ぶ線が、ウェブパスラインの垂直線に対し所定の角度θだけ傾くように設定されている。これは、印刷時にウェブ1が上下ブランケット胴6a,6bに所定の角度巻き付いている方が安定して印刷できるためである。
【0019】
このため、図2に示すように、胴抜きした状態(隙間Sが存在する状態)でウェブ1にテンションを与えて水平に走行させると、ブランケット胴6a,6bに接触するか、もしくは接触に近い状態となる。
これに対して、本装置では、図2に実線で示すように、ブランケット胴6a,6bの胴抜き時に、経路変更手段38が作動してウェブ1がブランケット胴6a,6bと接触しないようにウェブ1の走行経路が変更されるようになっているのである。
【0020】
ウェブ1の走行経路を変更する走行経路変更手段38としては、種々の機構(形式)を適用することができる。以下、その一例について説明する。
図3(b)に示すように、印刷機の両幅端に位置するフレーム7aに取り付けられたブラケット8に軸受け9を介して支点軸10aが軸支され、該支点軸10aにアーム11aが固設されている。なお、図3(b)では、印刷機のフレーム7aの一方の側のみを示し、このフレーム7aに対向する他方の側については図示を省略しているが、他方の側についても同様に構成されている。
【0021】
そして、対向する2つのアーム11aのそれぞれ対応する端部には2本の紙ガイド(ウェブ支持部材)3が平行に掛け渡された状態で固定されている。また、支点軸10aの軸端にはそれぞれ軸回動手段(アクチュエータ)としてモータ12が具備されており、対向する2つのモータ12が互いに連動して駆動されるようになっている。
【0022】
なお、上述以外にもラック或いはリンクとエアシリンダや油圧シリンダとを適宜組み合わせる等、支点軸10aを回動させる手法としては種々の機構を採用することができる。
また、回動手段の応用例として、上記支点軸10aの位置をウェブ走行経路の上側または下側に配置することにより、上記支点軸10aを印刷機の幅方向に連続する一本の軸で供用することもできる(図示省略)。
【0023】
また、上記モータ12は制御手段としての制御装置(又はコントローラ)24によりその作動が制御されるようになっている。このコントローラ24には図示しない紙パス変更操作開始釦や紙パス変更操作終了釦等、種々のセンサやスイッチが接続されており、ブランケット胴6a,6bの胴抜き時等の所定のタイミングで、経路変更手段38を作動させてウェブ1の走行経路を変更するようになっている。
【0024】
本発明の第1実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置は、上述のように構成されているので、同一のウェブ1を使用しながら新たに別印刷を開始する場合には、ウェブ1を通したままの状態での印刷前準備(例えば、刷版36の交換作業、印刷胴6a,6bへのインキ供給作業、印刷装置2の暖機運転及び印刷装置2の設定変更や清掃作業等)に際して、胴抜き時にまず図示しない紙パス変更操作開始釦を操作する。
【0025】
これにより、経路変更手段38のモータ12が作動してアーム11aが駆動され、紙ガイド3が、図2中一点鎖線で示す非作動状態から実線で示す作動状態となる。つまり、この場合には、経路変更手段38が、図3(a)の左側に示すような紙ガイド3がウェブ1から離れた状態(非作動状態)から、図3(a)の右側に示すような紙ガイド3がウェブ1に接する状態(作動状態)となり、ウェブ1の走行経路が変更されるのである。
【0026】
そして、上述により、ウェブ1に所定の張力が作用したまま、ウェブ1がウェブパスライン上下に位置するブランケット胴6a、6bから離れた非接触状態となる。この状態で、印刷装置2のみクラッチ(図9の符号31参照)を接続し印刷前準備の各種運転を行なう。
なお、印刷開始に当たって行なう作業、つまり、印刷前準備としての初期インキ供給、印刷装置2a〜2nの暖機、設定変更(刷版の差し替え交換等)等の作業時には、印刷装置2a〜2n以外のユニット、つまり、インフィード装置,冷却装置,ウェブパス装置及び折機(それぞれ図9の符号16,17,18,19参照)等々のクラッチを切るか又は別の手段により駆動を停止させ、ウェブ1に所定の張力を付加した状態で印刷前準備が行われる。
【0027】
そして、印刷前準備運転が終了した後、やはり図示しない紙パス変更操作終了釦を操作する。これにより、各装置のクラッチが接続され、インフィード装置の押えローラ28を逃がした状態のままで、印刷機を低速回転させながらモータ12が起動して、紙ガイド3が非作動状態となる。そして、この状態で印刷機を止めて準備運転が完了する。
【0028】
したがって、このときには、ウェブ供給装置(図9の符号14参照)のブレーキ力がウェブ1に作用し、このブレーキ力に応じたテンションがウェブ1にかかった状態で準備運転が終了する。
本発明の第1実施形態の印刷機の紙パス変更装置は、上記の如く構成され、かつ機能するものであり、ウェブ1の搬送を停止させた状態で、且つウェブ1をブランケット胴6a,6bに対し非接触の状態で、該ブランケット胴6a,6b等の一連の印刷胴を支障なく空転させる事が可能となり、ウェブ1がブランケット胴6a,6bに付着してブランケット胴6の外周面に巻き付くような事態を回避することができる。
【0029】
したがって、印刷終了毎にウェブ1を切断し、印刷開始時紙通しをする必要がなくなる。このため、損紙の量を減少させる事ができ、準備作業時間の短縮出来るといった効果が得られる。
また、準備運転等の後印刷を再開するに当たり、ウェブ1が切れることなく、準備運転終了後もウェブ1にたるみがない状態になっているので、ウェブ1の走行の立ち上がりが早く短時間で印刷稼動(生産)状態に入れるため、損紙の低減が図れる等、種々の効果を得ることができる。
(B)第2実施形態の説明
次に、本発明の第2実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置について説明すると、図4(a),(b)はその要部構成を示す模式図であって、(a)はその側面図、(b)は(a)におけるG矢視図である。
【0030】
本第2実施形態は、前記第1実施形態に対し経路変更手段38の構成が異なっており、経路変更手段38以外は上記第1実施形態と同様に構成されている。なお、上記第1実施形態と同様に構成された部位については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図4(a)に示すように、本第2実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置では、ウェブパスラインの上下両側においてウェブ1の走行方向と直行する方向に移動する紙ガイド23が設けられている。そして、紙ガイド23を駆動させるための昇降手段としてエアシリンダ(アクチュエータ)20aが設けられている。
【0031】
ここで、図4(b)を用いて昇降手段についてさらに説明する。なお、図4(b)では、印刷機の幅方向の一方の側しか図示されていないが、他方の側も同様に構成されており、幅方向で対象に構成されている。
さて、上記エアシリンダ20aは、装置の幅方向の両端において、フレーム7aにブラケット8を介して固設されている。各エアシリンダ20aのヘッド部には、ブラケット8に固設されたレール21aに沿って上下方向に案内される移動ブロック22aが設けられており、紙ガイド23の両端部は、上記幅方向両側の移動ブロック22aにそれぞれ支持されている。
【0032】
また、両側のエアシリンダ20aは制御装置24からの制御信号により連動して昇降するように構成されている。
なお、紙ガイド23としては、第1実施形態と同様に、移動ブロック22aに回転可能に軸支させたローラでも良く、また、移動ブロック22aに固設されたバー(棒状物)でも良い。また、紙ガイド23の表面は、前記第1実施形態と同様に、摩擦係数を高める目的で、ゴム4を貼着させてもよいし、或いは、ダイヤ目5等を加工形成させた構造としてもよい。
【0033】
また、第1実施形態、第2実施形態の応用例として各実施形態の構成要素の一部を適宜組み合わせた構造としても良い(図示省略)。
本発明の第2実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置は、上述の如く構成されたもので、本第2実施形態においても、経路変更手段38の機能は第1実施形態と同様であり、また、経路変更手段38の作動タイミング及びブランケット胴6a,6b等を空転させる場合の操作制御方法、例えばクラッチを介して印刷装置2部以外の駆動を停止させる等についても第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
さらに、本第2実施形態の印刷機の紙パス変更装置では、狭い設置スペースに対しても比較的容易に本装置を組み込む事ができるため、設計の自由度が拡大できる等の効果がある。
(C)第3実施形態の説明
次に、本発明の第3実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置について説明すると、図5はその要部構成を示す模式図であって、(a)はその上面図、(b)はその側面図、図6はその機能,作用及び効果を説明するための図である。
【0035】
本第3実施形態は、図5(a),(b)に示す如く、前記した第1実施形態或いは第2実施形態の経路変更手段38に対し、第1印刷装置2aの上流側及び最終印刷装置2nの下流側において、ウェブ1を走行方向前後に移動させるウェブ搬送装置(ウェブ移送手段)25を付加して構成されたものである。また、ウェブ搬送装置25は制御装置24により適宜のタイミングでその作動が制御されるようになっている。
【0036】
なお、これ以外は、上述の第1実施形態又は第2実施形態と同様に構成されており、対応する部材については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図5(a),(b)に例示した2組のウェブ搬送装置25,25は、それぞれモータ26が連結された駆動ローラ27と、自由に回転することのできる押さえローラ28とをそなえて構成されている。
【0037】
駆動ローラ27は、装置幅方向両側のフレーム7a、7bに固設されたブラケット8、8に軸支され、また、押さえローラ28は、該ブラケット8,8に支持されたアクチュエータにより上下方向に移動可能に構成されている。したがって、駆動ローラ27と押さえローラ28とが通紙したウェブ1を介して接離できるようになっている。
【0038】
押さえローラ28を駆動ローラ27へ接離させるアクチュエータとしては、ここでは、図5(b)に示すように、エア(又は、油圧)シリンダ20が適用されている。押さえローラ28は、エアシリンダ20に連結された軸受け29に軸支されており、これによりエアシリンダ20を作動させることで押さえローラ28を直接移動させるようになっている。
【0039】
また、上記以外にも、押さえローラ28を軸受け29に軸支させるとともに、軸受け29を図示しないアーム先端に固設し、モータやシリンダを介してアームを揺動移動させたり、或いは、マグネットを利用してアームを移動させる等々種々多様な手法を適用することができる(図示省略)。
本発明の第3実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置は前項の如く構成されたもので、同一のウェブ1を使用しながら新たに別印刷を開始する場合には、以下のように作動する。まず、ブランケット胴6a、6bが胴抜きされた状態(胴間に隙間Sが存在する状態)で、経路変更手段38を作動させて紙ガイド3を移動させ、前記第1実施形態及び第2実施形態と同様に通紙したウェブ1の走行経路を変更し、ウェブ1を上下に位置するブランケット胴(印刷胴)6a、6bから離隔させる。
【0040】
この時、ウェブ1の経路長が長くなるので、最終印刷装置2nの下流側のウェブ搬送装置25のアクチュエータ20を作動させて駆動ローラ27と押さえローラ28とを当接させウェブ1を保持するとともに、駆動ローラ27にブレーキをかけておく。また、第1印刷装置2aの上流側のウェブ搬送装置25の駆動ローラ27と押さえローラ28とを当接させて駆動ローラ27を駆動し、経路長が長くなる量だけウェブ1を送り出す。これにより、ウェブ1が破断することなく適度の張力が作用するように制御する。
【0041】
その後、印刷装置2のクラッチ(図9の符号31参照)を接続し、準備作業を行なう。準備作業終了後、各装置のクラッチを接続し、紙ガイド3を非作動状態に戻しながら、印刷装置2の下流側駆動系を駆動し、紙ガイド3が作動位置から非作動位置に変わった時にウェブ1の経路長さが短縮される分に相当する量以上ウェブ1の送り出しを行なう。なお、この送り出しは、最終印刷装置2nの下流側のウェブ搬送装置25におけるモータ26を駆動することで行なわれる。
【0042】
これにより、ウェブ1には、ウェブ供給装置(図9の符号14参照)のブレーキ力に応じたウェブテンションが作用する。
また、紙ガイド3を作動状態にし、印刷機の印刷準備運転を行なう時、ウェブ1上へ洗浄液又はインキが飛散する場合がある。このような場合には、図6に示すように、第1印刷装置2aの上流部と最終印刷装置2nの下流部に設けられたウェブ搬送装置25のモータ26を駆動して、低速度でウェブ進行方向へウェブ1を移動させたり(矢印b参照)、特定の量だけウェブ1の進行方向と逆方法に往復させる(矢印a参照)等の運転をすることにより、集中的にウェブ1が汚れたり、断紙等が発生したりするのを防止することができる。
【0043】
以上詳述したように、本発明の第3実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置によれば、印刷の再開に当たり、前準備としてのインキ供給、暖機等におけるブランケット胴6a,6b等の空転に際し、通紙されたウェブ1の位置を移動させることにより、前記第1,第2実施形態の作用、効果に加え、ブランケット胴6a,6bの洗浄に供した洗浄液等がブランケット締め付け装置部の溝から飛び出しても、ウェブ走行方向の特定部分に洗浄液等が集中してかかるといった不具合がなくなる。このため、ウェブ1上へ局部的に弱い部分ができるようなことがなくなり、ウェブ1が破断するおそれがなくなる等の効果が得られる。
(D)第4実施形態の説明
次に、本発明の第4実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置について説明すると、図7はその要部構成を示す模式的な側面図である。
【0044】
本第4実施形態は、第1実施形態の経路変更手段38がウェブ1の経路を変更するのみであるのに加え、ウェブ1の経路を変更した時、即ち、経路変更手段38が作動状態の時、ウェブ1にブレーキをかけるように構成したものである。
なお、これ以外は、上述の第1実施形態と同様に構成されており、対応する部材については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0045】
さて、図7に示すように、本第4実施形態では、経路変更手段38を作動状態にした時に、紙ガイド(ウェブ支持体)3が図示しない印刷機フレーム側に固設されたストッパ13に当接して、ウェブ1が紙ガイド3とストッパ13との間で挟持されるようになっている。
なお、ここでは、各印刷装置2の上流側及び下流側でそれぞれウェブ1を保持するように構成した例を示しているが、オフセット輪転機に設備された印刷装置2a〜2n群の前後、つまり第1印刷装置2aの上流側及び最終印刷装置2nの下流側のみ、ストッパ13と紙ガイド3とでウェブ1を挟持してウェブ位置を固定し、他の部分はストッパ13をアーム(第1実施形態の図3の符号11a参照)の位置決めのみに使用することもできる(図示省略)。
【0046】
したがって、本発明の第4実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置によれば、第1実施形態と同様の作用・効果が得られるほか、経路変更手段38が作動状態の時、ウェブ1のテンションを安定した状態に保つことができるという効果がある。
なお、本発明の印刷機の紙パス変更装置は、上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、各実施形態を適宜組み合わせる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得るものである。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の印刷機の紙パス変更装置によれば、通常印刷時のウェブパスラインの垂直線に対し、中心を結ぶ線が所定の角度だけ傾くよう設定された2つの胴を有する印刷装置を備えたオフセット輪転機等の印刷機において、ウェブ走行方向に沿って並設された複数の印刷装置のうちの第1の印刷装置の上流側,隣接する2つの印刷装置の中間及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ配設され、該ウェブの走行経路を通常印刷する経路と、該各印刷装置の胴抜き時に2つの胴の隙間を通り且つ該2つの胴に接触しない経路とに変更する経路変更手段と、該ウェブ走行経路の変更を所定のタイミングで変更するべく該経路変更手段を作動させる制御手段とをそなえ、該経路変更手段は、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され、該ウェブ横幅方向に掛け渡され、該2つの胴に接触しない経路に変更する際に該ウェブに接触するウェブ支持体と、該各ウェブ支持体を昇降移動させるアクチュエータとをそなえ、該上流側のウェブ支持体及び該下流側のウェブ支持体の一方を上昇させ、他方を下降させて、該通常印刷する経路と該2つの胴に接触しない経路とに変更するという構成により、同じウェブを用いて印刷を再開する際にウェブが印刷胴に付着して巻き付くといった事態を確実に回避することができる利点がある。
【0048】
また、これにより、印刷終了毎にウェブを切断し、印刷開始時紙通しをする必要がなくなり、損紙の量を減少させる事ができる利点があるほか、準備作業時間の短縮できるという利点がある。また、準備運転等の後印刷を再開するに当たり、ウェブが切れることもなく、準備運転終了後もウェブにたるみがない状態になっているので、ウェブの走行の立ち上がりが早く短時間で印刷稼動状態(生産状態)に入れるため、損紙の低減が図れるという利点がある。
【0049】
上記の構成に加えて、該経路変更手段が、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され該ウェブ横幅方向に掛け渡されたウェブ支持体と、印刷機フレーム側に固設されたストッパとをそなえ、該経路変更手段の作動時に、該ウェブ支持体と該ストッパとで該ウェブが挟持されるという構成により、ウェブのテンションを安定した状態に保つことができるという利点がある。
【0050】
また、本発明のもう1つの印刷機の紙パス変更装置によれば、オフセット輪転機等の印刷機において、ウェブ走行方向に沿って並設された複数の印刷装置のうちの第1の印刷装置の上流側,隣接する2つの印刷装置の中間及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ配設され、該ウェブの走行経路を通常印刷する経路と、該各印刷装置の胴抜き時に2つの胴の隙間を通り且つ該2つの胴に接触しない経路とに変更する経路変更手段と、該ウェブ走行経路の変更を所定のタイミングで変更するべく該経路変更手段を作動させる制御手段とをそなえ、該経路変更手段が、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され該ウェブ横幅方向に掛け渡されたウェブ支持体と、印刷機フレーム側に固設されたストッパとをそなえ、該経路変更手段の作動時に、該ウェブ支持体と該ストッパとで該ウェブが挟持されるという構成により、ウェブのテンションを安定した状態に保つことができるという利点がある。
【0051】
上記のいずれかの構成に加えて、第1印刷装置の上流側及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ単独のモータで駆動されるウェブ移送手段をそなえるという構成により、印刷胴の洗浄に供した洗浄液等がウェブにかかっても、走行方向の特定部分に洗浄液等が集中してかかることがなくなる。このため、ウェブ上へ局部的に弱い部分ができるようなことがなくなり、ウェブの破断を防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の概略全体構成を示す模式図であって、商業用オフセット輪転機に適用した場合の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の要部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の要部構成を示す模式図であって、(a)はその側面図、(b)は(a)におけるF矢視図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の要部構成を示す模式図であって、(a)はその側面図、(b)は(a)におけるG矢視図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の要部構成を示す模式図であって、(a)はその上面図、(b)はその側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の機能,作用及び効果を説明するための図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる印刷機の紙パス変更装置の要部構成を示す模式的な側面図である。
【図8】一般的な商業用オフセット輪転機にかかる従来の課題を説明するための図である。
【図9】一般的な商業用オフセット輪転機の全体の概略構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 ウェブ
2,2a〜2n 印刷装置
3 紙ガイド(ウェブ支持体)
4 ゴム
5 ダイヤ目
6,6a,6b ブランケット胴
7a,7b 印刷機フレーム(側壁)
8 ブラケット
9 軸受け
10a 支点軸
11a アーム
12 モータ(アクチュエータ)
13 ストッパ
14 ウェブ供給装置
15 ロールスタンド
16 インフィード装置
17 冷却装置
18 ウェブパス装置
19 折機
20,20a エアシリンダ(アクチュエータ)
21a レール
22a 移動ブロック
23 紙ガイド(ウェブ支持体)
24 制御装置(制御手段)
25 ウェブ搬送装置(ウェブ移送手段)
26 モータ
27 駆動ローラ
28 押さえローラ
29 軸受け
30 乾燥装置
31 クラッチ
32 駆動シャフト
33 巻取り紙
34 排紙装置
35 版胴
36 刷版
38 経路変更手段
M モータ
S ブランケット胴間隙間

Claims (4)

  1. 通常印刷時のウェブパスラインの垂直線に対し、中心を結ぶ線が所定の角度だけ傾くよう設定された2つの胴を有する印刷装置を備えたオフセット輪転機等の印刷機において、
    ウェブ走行方向に沿って並設された複数の印刷装置のうちの第1の印刷装置の上流側,隣接する2つの印刷装置の中間及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ配設され、該ウェブの走行経路を通常印刷する経路と、該各印刷装置の胴抜き時に該2つの胴の隙間を通り且つ該2つの胴に接触しない経路とに変更する経路変更手段と、
    該ウェブ走行経路の変更を所定のタイミングで変更するべく該経路変更手段を作動させる制御手段とをそなえ、
    該経路変更手段は、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され、該ウェブ横幅方向に掛け渡され、該2つの胴に接触しない経路に変更する際に該ウェブに接触するウェブ支持体と、該各ウェブ支持体を昇降移動させるアクチュエータとをそなえ、該上流側のウェブ支持体及び該下流側のウェブ支持体の一方を上昇させ、他方を下降させて、該通常印刷する経路と該2つの胴に接触しない経路とに変更するように構成されている
    ことを特徴とする、印刷機の紙パス変更装置。
  2. 該経路変更手段が、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され該ウェブ横幅方向に掛け渡されたウェブ支持体と、印刷機フレーム側に固設されたストッパとをそなえ、
    該経路変更手段の作動時に、該ウェブ支持体と該ストッパとで該ウェブが挟持されるように構成されている
    ことを特徴とする、請求項1記載の印刷機の紙パス変更装置。
  3. オフセット輪転機等の印刷機において、ウェブ走行方向に沿って並設された複数の印刷装置のうちの第1の印刷装置の上流側,隣接する2つの印刷装置の中間及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ配設され、該ウェブの走行経路を通常印刷する経路と、該各印刷装置の胴抜き時に2つの胴の隙間を通り且つ該2つの胴に接触しない経路とに変更する経路変更手段
    該ウェブ走行経路の変更を所定のタイミングで変更するべく該経路変更手段を作動させる制御手段をそなえ
    該経路変更手段は、該各印刷装置の上流側と下流側とにそれぞれ配設され該ウェブ横幅方向に掛け渡されたウェブ支持体と、印刷機フレーム側に固設されたストッパとをそなえ、該経路変更手段の作動時に、該ウェブ支持体と該ストッパとで該ウェブが挟持されるように構成されている
    ことを特徴とする、印刷機の紙パス変更装置。
  4. 第1印刷装置の上流側及び最終印刷装置の下流側にそれぞれ単独のモータで駆動されるウェブ移送手段をそなえた
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷機の紙パス変更装置。
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