JP3557023B2 - 基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法 - Google Patents
基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3557023B2 JP3557023B2 JP33892995A JP33892995A JP3557023B2 JP 3557023 B2 JP3557023 B2 JP 3557023B2 JP 33892995 A JP33892995 A JP 33892995A JP 33892995 A JP33892995 A JP 33892995A JP 3557023 B2 JP3557023 B2 JP 3557023B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- article
- polymer
- group
- undercoat layer
- meth
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
- BYSOKMZMLYCWCZ-UHFFFAOYSA-N CC(C)(C(c1ccc(C)cc1)=O)O Chemical compound CC(C)(C(c1ccc(C)cc1)=O)O BYSOKMZMLYCWCZ-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Landscapes
- Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
- Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Surface Treatment Of Glass (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性表面を有する物品および該物品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチック基材、無機材料基材等に様々な機能を付与する試みがなされてきた。
例えば、プラスチック基材表面を親水化するには、火焔処理、コロナ処理、低温プラズマ処理等を行って基材表面に極性基を導入する方法が知られているが、選択的に極性基の導入することは困難であった。また、親水性能に経時変化がおこるという問題もあった。
【0003】
一方、基材表面に親水性モノマーをグラフト重合させる方法(筏義人、機能材料、2,No.7,1,1982/筏義人、工業材料、31,No.7,62,1983)によれば、導入される官能基の制御が可能であり、経時変化はほとんどないとされている。しかし、上記方法は放射線又はプラズマによって基材表面にペルオキシド等を生成させ、これを開始点として熱重合によるモノマーのグラフト重合を行わせるものであり、熱重合によって充分な親水性能を得るためには長時間を必要とするため、製造上は不利である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑み、製造上有利な短時間の処理によって、物品表面に耐久性に優れた各種機能を与える処理方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の基材密着性の良好な表面層を有する物品を製造する方法は、基材上に積層された、光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる下塗り層の表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射し、該下塗り層に機能性モノマーをグラフト重合させることを特徴とする。
【0006】
本発明で処理を施される基材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の有機高分子のみならず、ガラス、金属等の無機物質;不飽和ポリエステル樹脂にガラスファイバーを分散させたものなど各種複合材料等の処理も可能である。上記基材には、密着性向上の目的で前処理が施されていてもよい。上記前処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線、電子線、放射線等の電離活性線による処理、粗面化処理、化学薬品処理、プライマー処理等が挙げられる。
【0007】
本発明においては、光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる下塗り層を介して機能性モノマーをグラフト重合させる。機能を発現する表面層(本発明の「表面層」とは、下塗り層および該下塗り層にグラフト重合している機能性モノマーをあわせた層を指す。)と基材の密着性が悪いと、機能の耐久性が劣る結果を与えるので、下塗り層組成は、基材と密着性に優れた性質を有することが好ましい。
上記基材密着性の評価は、本発明の製造方法により得られる基材密着性の良好な表面層を有する物品の表面に、JIS−K5400の基盤目試験によって処理品の表面に傷を入れて1mm角の基盤目を100個作り、JIS−Z1522に規定されたセロハン粘着テープを処理品の表面に付着させた後、直ちにこのテープの一端を処理品の表面に直角に保ち、瞬間的に剥離することによって行う。本発明の基材密着性の良好な表面層を有する物品は、上記方法による剥離の際に、表面層が剥離しない結果を与える。
【0008】
<下塗り層>
本発明の下塗り層の光重合開始部としては、開裂してラジカルを発生するものを用いる。上記開裂型の光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる層に機能性モノマーを接触させて紫外線を照射することによって、短時間の処理で機能性モノマーのグラフト重合が行われる。このため、基材に対して短時間の処理で各種機能を与えることが可能となり、製造上有利である。
【0009】
上記開裂型の光重合開始部として、次の一般式(I)
【化5】
で表される構造を有する化合物を使用することが出来る。上記構造(I)を有する化合物については、EPC出願0281941号公開公報に製法等が開示されている。当該高分子の他に、基材との密着性を向上させる目的で各種材料を加えた組成とすることが出来る。光重合開始部と機能性モノマーの重合の阻害又は上記密着性の低下が問題とならない範囲内であれば、処理品の用途に応じて、各種添加物を加えることも出来る。
【0010】
また、下塗り層を基材上に設けるには、当該光重合開始部が化学的に結合した高分子を予め調製しておいて用いてもよいが、光重合開始剤を含有する組成物を基材上に塗布した後に反応させることによって高分子にし、本発明の下塗り層とすることも出来る。
【0011】
本発明の下塗り層を構成する材料としては、有機高分子、金属酸化物、有機−無機複合材料等が挙げられる。
有機高分子としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。金属酸化物としては、所謂ゾル−ゲル法による、Si、Ti、Zr、B、Al等の金属アルコキシドの加水分解、脱水縮合による高分子量化の生成物、有機−無機複合材料としては、上記ゾル−ゲル法による金属アルコキシドの高分子量化の際にシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等のカップリング剤および任意の有機化合物を加えて得たものを用いることが出来る。
【0012】
本発明の下塗り層を、架橋反応を行う構成とすることによって、処理品の耐久性を向上させることが出来る。上記架橋の方法としては、光重合開始部が化学的に結合した高分子に架橋剤を加えた下塗り層組成物を用いる方法、光重合開始部を有する化合物を反応させて本発明の高分子とする工程において架橋を行わせる方法、光重合開始部と架橋性部をともに有する高分子を用いる方法、該光重合開始部と架橋性部をともに構造中に有する高分子に架橋剤を加えた下塗り層組成物を用いる方法等が挙げられる。
また、上記架橋は、架橋性官能基又は架橋剤の性質によって、紫外線照射時にグラフト重合と同時に、又は、紫外線照射によるグラフト重合の前に加熱処理等によって予め架橋させる方法が選択される。
【0013】
−光重合開始部(V)を有する化合物−
以下で、光重合開始部として一般式(V)
【化6】
で表される構造を有する化合物を例に挙げて、本発明の下塗り層について述べる。
【0014】
【化7】
上記一般式(VI)で表される光重合開始剤である4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社から商品名「イルガキュアー2959」で市販されている。)と2−(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート又は(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリル酸の誘導体の反応によって、次の一般式(VII)で表される光重合開始剤(以下、分子(VII)という。)を得ることが出来る。
【化8】
【0015】
上記一般式(VII)で表される重合性不飽和基を有する光重合開始剤の重合、又は該光重合開始剤と任意の重合性モノマーの共重合によって、以下の一般式(VIII)で表される、重合単位中に光重合開始部(V)を有する高分子が得られ、これを本発明の下塗り層に用いることが出来る。
【化9】
【0016】
上記分子(VII)と共重合される他の重合性モノマーとしては、特に限定されるものではなく、使用する基材、後の工程で塗布するモノマーの性質に応じて選択される。
【0017】
例えば、本発明の機能性モノマーとして親水性モノマーを用いて処理品に親水性を付与させる場合は、下塗り層が水溶性であると親水性モノマーと下塗り層組成物が互いに溶解して、塗布した親水性モノマーのうち表面に保持されるものの割合が減少してしまうため、下塗り層組成が水に不溶であることが好ましい。但し、下塗り層組成中に熱架橋性のものを含有させ、親水性モノマーの塗布前に熱硬化を行う場合等は、この限りでない。
上記水に不溶とは、下塗り層組成物が実質的に水不溶となる範囲内であれば、下塗り層組成物中に親水性成分を含んでもよい。
【0018】
上記親水性モノマーを用いる場合の分子(VII)と共重合される重合性モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルケトン類等が挙げられる。
【0019】
上記分子(VII)と共重合される重合性モノマーは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明の下塗り層組成物において、上記光重合開始剤と共重合される重合性モノマーとして疎水性のものを選び、基材に紫外線を照射する際にマスキング等の手段によって基材の部分毎に親水性モノマーを重合させる方法により、基材の重合させた部分に親水性能、重合させていない部分に撥水性能を与えることが出来る。
【0021】
上記のような、基材の一部分に撥水性能を望む場合は、重合に用いる疎水性モノマーとして、特に高い疎水性を示すフルオロアルキル(メタ)アクリレート(一般式(IX))、ジメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリレート(一般式(X))等を選択するとよい。
【化10】
【化11】
【0022】
本発明の表面処理方法においては、上記のような手段を用いて紫外線を照射しない部分をつくることによって、基材の部分毎に選択的に機能を付与することが可能である。
【0023】
上記分子(VII)と共重合される重合性モノマーを共重合させるときには、分子(VII)が1モル%以上含まれていることが好ましく、さらに好ましくは5モル%以上である。含有量が小さすぎると機能性モノマーの表面グラフト重合が起こり難くなる。含有量が小さくても、照射量即ち照射時間を大きくすることによって上記グラフト重合を起こすことは可能であるが、短時間の処理によって各種機能を与えるという課題に反する。
【0024】
上記共重合を行って得られる光重合開始部(V)を有する高分子の分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量で5,000〜500,000であることが好ましい。
【0025】
−下塗り層の架橋:架橋性官能基による方法−
上記光重合開始部(V)を有する高分子であって、側鎖に架橋性の官能基を有するもの(例えば、化学式(XI)として表される。)を本発明の下塗り層に用いて、当該官能基の架橋によって機能性表面の耐久性を向上させることが出来る。
【化12】
【0026】
上記官能基は、架橋反応を誘起するものであればよく、具体的には、エポキシ基、カルボキシル基、アクリロイル基、イソシアネート基、水酸基、アミノ基、メチロール基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有する高分子を得るには、上記分子(VII)と共重合される重合性モノマーとして上記官能基を有するものを選択して、共重合体を合成すればよい。
【0027】
上記光重合開始部(V)と官能基をともに有する高分子に任意の架橋剤を加えて、上記官能基と架橋剤の作用によって架橋させてもよい。
【0028】
上記架橋剤は、架橋性基の種類によって選択される。架橋性基としてエポキシ基を有する高分子には、フタル酸、トリメット酸、これらの酸無水物等の2個以上のカルボキシル基を有する架橋剤が用いられる。イソシアネート基に対しては、ジオール、ジアミン等の水酸基、アミノ基を2個以上有する架橋剤、逆に、水酸基、アミノ基に対しては、ジイソシアネート等のイソシアネート基を2個以上有する架橋剤を用いればよい。また、エポキシ基に対しては、熱酸発生剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド類、ジエチレントリアミン等の触媒性架橋剤を用いることもできる。
【0029】
上記架橋性官能基として、重合性不飽和基を有するものを用いてもよい。
上記光重合開始部(V)と重合性不飽和基をともに有する高分子を得るには、上記分子(VII)と共重合される重合性モノマーとして、重合性不飽和基を2個以上有する多官能モノマーを用いればよい。
上記重合性不飽和基を2個以上有する多官能モノマーとしては、多官能メタアクリレート等が挙げられる。
【0030】
また、上記分子(VII)と共重合される重合性モノマーを選択して、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、水酸基、アミノ基、メチロール基、アルコキシシリル基等の反応性基を側鎖に有する共重合体を合成し、当該反応性基を利用して重合性不飽和基を導入することも出来る。例えば、エポキシ基を側鎖に有する重合体にカルボキシル基と重合性不飽和基を有する化合物を付加させる方法、アミノ基若しくは水酸基を側鎖に有する重合体にイソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物を付加させる方法等によって、重合性不飽和基を導入することが出来る。
【0031】
上記光重合開始部(V)と架橋性官能基をともに有する高分子を本発明の下塗り層に用いるときには、光重合開始部(V)、側鎖の官能基ともに、1モル%以上含まれていることが好ましい。
【0032】
上記架橋は、通常加熱によって行われるが、エポキシ基と光酸発生剤(例として、チバ・ガイギー社から商品名「イルガキュアー261」で市販されているものが挙げられる。)、アクリロイル基、重合性不飽和基を利用する場合等には、紫外線照射による架橋反応が可能であり、別途工程を経ずに機能性モノマーの重合と同時に架橋を達成することも出来る。
【0033】
上記架橋を目的とした加熱は、紫外線の照射の前、後、照射と同時のいずれの場合も可能である。架橋の効果が最も優れているのは、紫外線照射によるグラフト重合の前に加熱を行う場合である。
【0034】
−下塗り層の架橋:(メタ)アクリレートを添加する方法−
また、架橋を行わせる方法として、本発明の光重合開始部が化学的に結合した高分子に、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートを加えた混合物を下塗り層として用いることによっても、良好な結果が得られる。
【0035】
上記分子内に2以上の不飽和性基を有する(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。さらに、2官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等を用いることが出来る。
【0036】
上記(メタ)アクリレートの添加量は、例えば、光重合開始部(V)を有する高分子100重量部に対して、(メタ)アクリレート20〜300重量部であることが好ましい。(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると架橋の効果が不充分で耐久性を向上する目的が達成されず、多すぎると表面荒れが発生する原因となるためである。
【0037】
−加水分解性シリル基(III)を有する化合物−
【化13】
また、光重合開始部と一般式(III)で表される加水分解性シリル基を有する化合物を用い、該化合物又は該化合物の加水分解物からなる層を基材上に設けた後に架橋を行わて高分子とし、本発明の光重合開始部が化学的に結合した高分子の層とすることが出来る。ガラス等の無機系材料からなる基材に対して上記加水分解性シリル基(III)を有する化合物を用いると、基材密着性が非常に良好となり、望ましい結果を与える。
【0038】
【化14】
上記光重合開始部と加水分解性シリル基(III)を有する化合物の例として、一般式(XII)で表される分子(以下、分子(XII)という。)について説明する。分子(XII)は、上記光重合開始剤(VI)と、一般式(XIII)で表されるイソシアネート基を含有するシランカップリング剤の付加反応により得ることが出来る。
【0039】
【化15】
上記シランカップリング剤(XIII)としては、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBM−9007」)、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBE−9007」)、3−ジメトキシメチルシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBM−9207」)、3−ジエトキシメチルシリルプロピルイソシアネート(信越化学社製「KBE−9207」)等が市販されているので、これを用いることが出来る。
【0040】
上記分子(XII)を合成する方法としては、従来公知のウレタン生成反応が利用可能である。例えば、上記イソシアネート基含有シランカップリング剤(XIII)と上記光重合開始剤(VI)に、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズのようなウレタン合成用の触媒を少量添加して反応させることが出来る。
【0041】
下塗り層を構成する高分子を得る際に、上記分子(XII)とともに一般式(IV)で表されるようなシラン化合物を用い、該シラン化合物の加水分解、加熱によって架橋する性質を利用して機能性表面の耐久性、無機系基材との密着性を向上させることが出来る。
【化16】
シラン化合物(IV)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
上記シラン化合物(IV)の添加量は、分子(XII)100重量部に対し、10〜400重量部であることが好ましい。少なすぎると架橋の効果が不充分で耐久性向上の目的が達成されず、多すぎて分子(XII)の割合が減少する程では紫外線照射の際に重合がうまく進行しないためである。
【0043】
上記分子(XII)及び上記シラン化合物(IV)は、必要に応じて加水分解されたものを用いてもよい。上記加水分解とは、加水分解性シリル基の一部又は全部が水酸基によって置換されること及びそれらが縮合されることをいう。加水分解の方法としては、水又は水とアルコールとの混合溶剤で希釈し、これに酸又はアルカリの触媒を添加して反応させる、いわゆるゾル−ゲル法を用いるのが一般的である。
上記触媒の酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ほう酸、スルホン酸等が挙げられる。塩酸を用いると、後に触媒を除去する作業が容易である。
【0044】
下塗り層を高硬度にするために、上記加水分解の際にスズ化合物触媒を用いることが出来る。上記スズ化合物としては、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレエート、ジオクチルチンメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート等が挙げられる。
【0045】
上記酸触媒に代えてスズ化合物触媒を用いることも出来るが、酸とスズ化合物をともに用いることによって、より好ましい結果が得られる。
上記酸触媒は、通常は加水分解をしようとするシリル基の当量分を用いる。50当量分を超えて加えると、溶液中で反応が進行してしまって、後の作業が困難になるため、好ましくない。
また、スズ化合物は、分子(XII)100重量部に対し、0.02〜5重量部であることが好ましい。0.02重量部以下であると効果が認めにくく、5重量部を超えると逆に下塗り層硬度が低下する結果を与える。
【0046】
上記スズ化合物は、上記加水分解の際に新たに加えてもよいが、分子(XII)の合成に用いる触媒と共通にしておき、分子(XII)を合成後に精製せずに用いるのが簡便である。
【0047】
上記分子(XII)を含有する組成物を反応させて本発明の光重合開始剤が化学的に結合した高分子からなる下塗り層を得る際に、Ti、Zr、Al、Mg等のアルコキシドや微粒子状シリカ等の充填剤を添加して、下塗り層硬度を向上させることも出来る。
【0048】
上記分子(XII)を含有する組成物には、必要に応じて、重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を添加してもよい。
上記重合性不飽和基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシエチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0049】
先に説明した、本発明の光重合開始部が化学的に結合した高分子に対する(メタ)アクリレートの添加は、下塗り層を形成する前の状態である、分子(XII)又は分子(XII)の加水分解物に対して行っても、同様に、機能性表面の耐久性を向上させる。
分子(XII)又は分子(XII)とアルコキシシラン化合物に(メタ)アクリレートを加えた混合物の層の組成としては、分子(XII)100重量部に対して(メタ)アクリレートが10〜200重量部であることが好ましい。
【0050】
本発明の下塗り層を形成する組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、界面活性剤等が添加されてもよい。
【0051】
<下塗り層形成>
上記光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる下塗り層組成物を、スプレーコート、バーコート、ディッピング、ロールコート、スピンコート等の方法によって基材表面に塗布して、下塗り層を設ける。前記のゾル−ゲル法による加水分解性シリル基(III)を有する化合物の例では、分子(XII)を含有する溶液を基材に塗布等した後に、加水分解および/又は架橋反応を行わせることによって、本発明の下塗り層を構成することになる。
【0052】
上記塗布時に作業が容易なように、下塗り層組成物を有機溶剤に溶解させて溶液として用いてもよい。
上記有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0053】
上記分子(XII)等の加水分解性シリル基(III)を有する化合物を含有する系の場合は、基材上に当該化合物を含有する層を設けた後に加熱硬化を行うことによって、下塗り層組成物の架橋を行わせてから機能性モノマーを重合させることが好ましい。上記加熱硬化の条件は、分子(XII)等の光重合開始部の安定性を考慮して決定されるが、50〜200℃の温度下で数分〜3時間程度の加熱が好ましい。
【0054】
上記加熱の際には、分子(XII)および/又はアルコキシシラン化合物を加水分解して用いた方が架橋反応が速やかに進行するので有利である。
【0055】
また、上述のような、下塗り層が架橋性官能基、架橋剤等を有する構成であって、当該架橋性官能基、架橋剤等の性質によって架橋を行わせるために加熱を行ったほうがよい場合にも、同様に加熱硬化を行う。
【0056】
本発明の下塗り層の厚みは、薄すぎると均一な層を設けることが困難であり、厚すぎると経済性が悪くなるため、乾燥状態で0.1〜20μmであることが好ましい。
【0057】
本発明においては、基材上に設けられた下塗り層表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射して、該機能性モノマーをグラフト重合させる。
【0058】
<機能性モノマー>
本発明における機能性モノマーとしては、親水性、撥水性のものが用いられる。
本発明は機能性モノマーによって、光重合開始部を構造中に有する分子を含有する層を介して、基材に直接付与できなかった性能、即ち親水性もしくは撥水性を与えることが出来る。また、無機透明材料からなる基材に分子(XII)の下塗り層を用いる場合等のように、基材の透明性を損なうことなく、各種機能を与えることも出来る。
【0059】
上記機能性モノマーの例として、親水性モノマーを用いる場合について説明する。コロナ処理等によって、基材に親水性基を付与した場合は、当該親水性基が自発的にいわゆるもぐり込みを行って表面に存在しなくなることが知られているが、本発明においては、上記もぐり込みを起こさずに親水性モノマーを表面に存在せしめることが出来る。本発明の方法は、基材に親水性を与える手段として特に有利である。
【0060】
本発明に用いる親水性モノマーは、分子内に少なくとも1の重合性不飽和基と少なくとも1の親水基を有するものである。上記親水基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、一級、二級、三級アミノ基又はアミド基、四級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ポリエチレングリコール鎖、モルホリノ基、硫酸塩基等が挙げられる。酸性基および塩基性基を有するものはグラフト重合の前又は後に中和反応を行わせて用いてもよい。
【0061】
上記親水性モノマーの具体例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、スチレンスルホン酸等が挙げられる。
上記親水性モノマーは、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0062】
基材に与える親水性能の優劣および耐久性という観点から、上記親水性モノマーの中で、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を有するモノマーを用いた場合が、最も好ましい結果を与える。
上記スルホン酸基を有するモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸等が挙げられ、これらの塩を用いてもよい。
【0063】
また、撥水性モノマーとしては、一般式(IX)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート、一般式(X)で表されるジメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリレート等が好適である。
【0064】
他に、例えば、トリフルオロエチルアクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート等の低屈折率モノマーを用いて、基材に反射防止機能を与えることが出来る。また、基材の一部分のみの屈折率を変えるために利用してもよい。
【0065】
機能性モノマーを下塗り層を設けた基材表面に接触させる方法としては、ディピング、スプレー法、ポッティング、カーテンコート等によって塗工する方法、機能性モノマーを気化させて接触させる方法等が挙げられる。
【0066】
塗布作業が容易になるように、機能性モノマーを溶媒で希釈して用いてもよい。溶媒の種類は、用いる機能性モノマーの性質に応じて選択される。
上記親水性モノマーを用いた場合の溶媒としては、水又は水と極性溶媒を混合したものが好ましい。上記極性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を用いることが出来る。
【0067】
上記機能性モノマーに、下塗り層の光重合開始部が化学的に結合した高分子とは別に、光重合開始剤を加えて、グラフト重合を促進することが出来る。機能性モノマーに加える光重合開始剤は、本発明の下塗り層と同じものを用いても、他に公知の光重合開始剤を用いてもよい。上記光重合開始剤として、紫外線で活性化するソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイドなどのサルファイド類;チオキサントン、エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;ヒドラゾン、アゾイソブチロニトリル、ベンゼンジアゾニウムなどのジアゾ化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン、ベンジルジメチルケタール、メチルフェニルグリオキシレートなどの芳香族カルボニル化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2, 2−ジエトキシアセトフェノン、2, 2−ジメトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピルなどのジアルキルアミノ安息香酸エステル類;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物;9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジンなどのアクリジン誘導体;9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジンなどのフェナジン誘導体;4,4’ ,4” −トリメトキシ−2,3−ジフェニルキノキサリンなどのキノキサリン誘導体;2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィンオキシド、アシルホスフォナ−トなどのアシル化リン化合物等が挙げられる。
【0068】
また、可視光線で活性化する2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’ −カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン等を用いることもできる。
【0069】
上記機能性モノマーに光重合開始剤を加える場合の添加量は、機能性モノマー100重量部に対して0. 1〜10重量部であることが好ましい。
【0070】
<グラフト重合>
上記機能性モノマーを下塗り層の表面に接触させた状態で、紫外線を照射してグラフト重合を行わせる。上記紫外線の照射には、光源として超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハロライドランプ、キセノンランプ、低圧殺菌ランプ等が用いられる。
【0071】
紫外線の照射量は、機能性モノマーの種類、下塗り層中の光重合開始部の存在量によっても異なるが、100mJ/cm2 〜20J/cm2 が適当である。
【0072】
酸素阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気下あるいは透明プラスチックフィルム、ガラス板等によってラミネートした状態で紫外線照射を行う事が好ましい。
【0073】
機能性モノマーの種類によっては、任意の後処理を行って重合後の官能基の安定化を行うことが好ましい。例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するモノマーを用いた場合には、アルカリ処理を行って、当該カルボン酸基等をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩としておくことが好ましい。 上記アルカリ処理には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム等の水溶液又はアルコール溶液等を用いることが出来る。上記アルカリ溶液の濃度は表面層が侵されないように、0. 1〜5重量%であることが好ましい。
【0074】
本発明の表面処理を行った後は、水洗等によって基材上の余剰付着物を除去することが好ましい。
【0075】
【実施例】
実施例1
<重合性不飽和基を有する光重合開始剤(化合物(XIV))の合成>
【化17】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、テトラヒドロフラン(THF)30gを入れ、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社製、イルガキュアー2959)10.0g(4.46×10−2mol)を溶解させた。2−メタクリロキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)6.92g(4.46×10−2mol)を添加して均一な溶液とし、触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ90mgを滴下しながら室温にて攪拌を行った。反応溶液の温度は数分で上昇した。3時間室温で攪拌を続けた後、反応系を50℃に保って3時間放置して、化学式(XIV)で示される生成物の反応を完結させた。
【0076】
減圧によってTHFを除去して固形状の生成物を得た。生成物のIRスペクトルをKBr錠剤法によって測定した。原料の2−メタクリロキシエチルイソシアネートに由来する2280cm−1付近のイソシアネート基に由来する吸収は消失し、生成物のウレタン結合中のNH基に由来する吸収が3400cm−1付近(NH伸縮)および1550cm−1付近(NH変角)に観察された。
以上のことから生成物が化学式(XIV)で示される構造を持つことを確認した。
【0077】
<光重合開始部を有する高分子(XV)の重合>
【化18】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、メチルエチルケトン(MEK)80gを入れ、化合物(XIV)5.01g(1.32×10−2mol)を溶解させ、メタクリル酸メチル(MMA)11.87g(1.19×10−1mol)を添加して均一な溶液とした。反応系を60℃に加熱し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)85mgをMEK2gに溶解させた溶液を添加して3時間重合を行わせた。AIBNのMEK溶液を添加して3時間重合を行わせる操作を3回行い、9時間重合させて重合体(XV)を得た。
反応溶液を多量のヘキサン中に投じて重合体(XV)を析出させて濾別した。メタノールで洗浄して、未反応の化学式(XIV)で示される生成物を除去した。得られた重合体(XV)は14.15g(収率87.6%)であった。
得られた重合体(XV)をGPCによって測定した。重量平均分子量Mw=84,000、分子量分布Mw/Mn=3.0であった。 1H−NMRによって重合体(XV)における化合物(XIV)の導入率を調べたところ、16モル%であった。
【0078】
<親水性モノマーAの調整>
イオン交換水3.5gに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(日東化学社製、TBAS−Q)1.0gを溶解させ、炭酸ナトリウム0.26gを加えて攪拌し、発生する二酸化炭素を十分に除去して親水性モノマーAの水溶液を調整した。
【0079】
<下塗り層形成>
上記操作によって得られた重合体(XV)1.0gをMEK4.0gに溶解させ、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で2分間乾燥させて、光重合開始部を有する高分子の層(乾燥後の厚さ4.4μm)を設けた。
【0080】
<グラフト重合>
上記親水性モノマーA水溶液0.1mlを、下塗り層上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を5秒間(1J/cm2 )照射した。
スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、表面処理を施した基材を得た。
【0081】
実施例2
実施例1における親水性モノマーAに代えて、下記の親水性モノマーBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理を施した基材を得た。
<親水性モノマーBの調整>
イオン交換水3.5gにアクリル酸(キシダ化学社製)1.0gを溶解させ、炭酸ナトリウム0.74gを加えて攪拌し、発生する二酸化炭素を十分に除去して親水性モノマーBの水溶液を調整した。
【0082】
実施例3
実施例1における親水性モノマーAに代えて、下記の親水性モノマーCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理を施した基材を得た。
<親水性モノマーCの調整>
イオン交換水4.0gにN,N−ジメチルアクリルアミド(興人社製、DMAA)1.0gを溶解させて親水性モノマーCの水溶液を調整した。
【0083】
実施例4
基材として、実施例1におけるアクリル板に代えて、ポリカーボネート板(旭硝子社製、レキサン、3mm厚)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0084】
実施例5
基材として、実施例1におけるアクリル板に代えて、ポリ塩化ビニル板(三協化成社製、サンプレート、3mm厚)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0085】
実施例6〜9
<本発明の高分子に(メタ)アクリレートを添加した下塗り層の形成>
表1(表1−1と表1−2をあわせて、表1という。以下同じ。)に示した配合に従って、上記重合体(XV)と、分子内に2以上の不飽和性基を有する(メタ)アクリレートであるペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製、PET30)又はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、DPCA−120)のいずれかをMEKに溶解させた。これを、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で2分間乾燥させて、分子内に光重合開始剤を有する疎水性有機高分子と分子内に2以上の不飽和性基を有する(メタ)アクリレートからなる層(乾燥後の厚さ1.5〜2.0μm)を設けた。
<グラフト重合>
実施例1と同様にして、表面処理を施した基材を得た。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
実施例10
<光重合開始部と架橋性官能基を有する高分子(XVI)の重合>
【化19】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、MEK66.3gを入れ、化合物(XIV)3.8g(0.01mol)を溶解させ、グリシジルメタクリレート(和光純薬社製)12.8g(0.09mol)を添加して均一な溶液とした。反応系を60℃に加熱し、AIBN0.17gを添加して5時間重合を行わせた。反応溶液を多量のヘキサン中に投じて重合体(XVI)を析出させて濾別した。
【0089】
<下塗り層形成>
上記操作によって得られた重合体(XVI)1.0gと熱酸発生剤(アデカオプトンCP−66、旭電化社製)0.01gをMEK4.0gに溶解させ、メイヤーバーを用いてアクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライトEX、3mm厚)上に塗布した。80℃で10分間乾燥させて、光重合開始部と架橋性官能基(エポキシ基)を有する高分子(XVI)の層を設けた。
<グラフト重合>
実施例1と同様にして、表面処理を施した基材を得た。
【0090】
実施例11
<光重合開始部と重合性不飽和基を有する高分子(XVII)の反応>
【化20】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内に、テトラヒドロフラン(THF)14.8gを入れ、化合物(XVI)0.5gを溶解させ、アクリル酸(和光純薬社製)1.14gを添加して均一な溶液とした。触媒としてトリエチルアミン16mg、重合禁止剤としてヒドロキノン5.7mg(モノマー比0.5重量%)を添加して反応系を80℃に加熱し、10時間反応を行わせた。反応溶液を多量のヘキサン中に投じて重合体(XVII)を析出させて濾別した。
【0091】
<下塗り層形成>
実施例1で用いた重合体(XV)に代えて、上記操作によって得られた重合体(XVII)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光重合開始部と重合性不飽和基を有する高分子(XVII)の層を設けた。
<グラフト重合>
実施例1と同様にして、表面処理を施した基材を得た。
【0092】
実施例12
<アルコキシシリル基を有する光重合開始剤(化合物(XVIII))の合成>
【化21】
冷却管および窒素導入管を備えたガラス容器内を窒素置換を行い、THF30gを入れ、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバ・ガイギー社製、イルガキュアー2959)5.0gを溶解させた。これに、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫100mg、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(信越化学工業社製、KBE9007)5.5gを添加して均一な溶液とした。3時間室温で攪拌を行った後、反応系を50℃に保って3時間放置して、化学式(XVIII)で示される生成物の反応を完結させた。
減圧によってTHFを除去して生成物を得た。生成物のIRスペクトルをKBr錠剤法によって測定したところ、原料の3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネートに由来する2280cm−1付近のイソシアネート基に由来する吸収は消失していた。また、生成物の 1H−NMRを測定したところ、δ=5.1ppm付近に、化合物(XVIII)に由来すると考えられる幅広いピークが観察された。以上のことから生成物が化学式(XVIII)で示される構造を持つことを確認した。
【0093】
<ゾル−ゲル法による下塗り層形成>
上記操作によって得られた化合物(XVIII)2.1gにエタノール10.4g、テトラエトキシシラン(コルコート社製)2.2g、0.4重量%HCl溶液1.1gを添加して室温で1時間攪拌した溶液を、メイヤーバーを用いてガラス板(旭硝子社製、5mm厚)上に塗布した。80℃で30分間加熱硬化させて、乾燥後の厚さ0.5μmの層を設けた。
【0094】
<親水性モノマーDの調整>
イオン交換水12.5gに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸5.0g、炭酸ナトリウム1.3gを加えて溶解させた後に、エタノール5.0gを添加して、親水性モノマーDの水溶液を調整した。
【0095】
<グラフト重合>
上記親水性モノマーD水溶液0.1mlを、下塗り層上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を15秒間(3J/cm2 )照射した。
スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、表面処理を施した基材を得た。
【0096】
実施例13〜16
実施例12における親水性モノマーDに代えて、下記の親水性モノマーE〜Hをそれぞれ用いたこと以外は、実施例12と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0097】
<親水性モノマーEの調整>
イオン交換水5.0gにアクリル酸2.0g、炭酸ナトリウム1.5gを加えて溶解させた後に、エタノール5.0gを添加して、親水性モノマーEの水溶液を調整した。
【0098】
<親水性モノマーFの調整>
エタノール10.0gに2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(共栄化学社製、DQ−100)2.0gを添加して、親水性モノマーFの溶液を調整した。
【0099】
<親水性モノマーGの調整>
イオン交換水12.5gにp−スチレンスルホン酸ナトリウム(和光純薬社製)5.0gを加えて溶解させた後に、エタノール5.0gを添加して、親水性モノマーGの水溶液を調整した。
【0100】
<親水性モノマーHの調整>
イオン交換水12.5gにビニルスルホン酸ナトリウム(日精化学社製)5.0gを加えて溶解させた後に、エタノール5.0gを添加して、親水性モノマーHの水溶液を調整した。
【0101】
実施例17、18
実施例12における親水性モノマーDに代えて、下記の疎水性モノマーI、Jをそれぞれ用いたこと以外は、実施例12と同様にして表面処理を施した基材を得た。表面の余剰付着分は、MEKを用いて洗い流した。
【0102】
<疎水性モノマーIの調整>
MEK5.0gにパーフルオロオクチルエチルアクリレート(共栄社化学社製、FA−108)5.0gを加えて溶解させ、疎水性モノマーIの溶液を調整した。
【0103】
<疎水性モノマーJの調整>
MEK5.0gにジメチルシロキシ基を有する二官能メタクリレート(信越化学社製、X−22−164C)5.0gを加えて溶解させ、疎水性モノマーJの溶液を調整した。
【0104】
実施例19、20
ゾル−ゲル法による下塗り層形成において、下塗り層組成物にジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を、実施例19においては20mg、実施例20においては100mg添加したものを用いたこと以外は、実施例12と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0105】
実施例21、22
ゾル−ゲル法による下塗り層形成において、下塗り層組成物にペンタエリスリトールトリアクリレートを、実施例21においては1.0g、実施例22においては2.0g添加したものを用いたこと以外は、実施例12と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0106】
実施例23
基材として、実施例12におけるガラス板に代えて、ポリカーボネート板(旭硝子社製、レキサン、3mm厚)を表面プラズマ処理して用い、加熱硬化の条件を80℃で1時間としたこと以外は、実施例12と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0107】
比較例1
実施例1で用いた親水性モノマーA水溶液0.1mlを、アクリル板上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を1J/cm2 照射した。
スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、表面処理を施した基材を得た。
【0108】
比較例2〜4
以下の操作を行って、光重合開始剤を含む溶液を得て、これを下塗り層形成に用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0109】
<光重合開始剤を含む溶液1の調製>
ポリメタクリル酸メチル(住友化学社製、スミペックスB LO−6、重量平均分子量Mw=62,000、分子量分布Mw/Mn=1.60)0.62gをメチルエチルケトン(MEK)4.0gに溶解させたものに、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン0.38gを添加して均一な溶液として、比較例2における下塗り層組成とした。当該組成は、実施例1とほぼ同量の光重合開始部を含むことになる。
【0110】
<光重合開始剤を含む溶液2の調製>
ペンタエリスリトールトリアクリレート1.0gをメチルエチルケトン(MEK)4.0gに溶解させたものに、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン0.1gを添加して均一な溶液として、比較例3における下塗り層組成とした。
【0111】
<光重合開始剤(化合物(XIV))を含む溶液3の調製>
ポリメタクリル酸メチル1.0gをメチルエチルケトン(MEK)4.0gに溶解させたものに、実施例1の化合物(XIV)0.1gを添加して均一な溶液として、比較例4における下塗り層組成とした。
【0112】
比較例5
実施例12で用いた親水性モノマーD水溶液0.1mlを、ガラス板上にポッティング塗布した。これに1mm厚のスライドグラスをラミネートした状態で、光源として高圧水銀灯を用いて紫外線を3J/cm2 照射した。
スライドグラスを取り外し、流水を用いて表面の余剰付着物を洗い流した後に乾燥させ、表面処理を施した基材を得た。
【0113】
比較例6〜8
実施例12の下塗り層形成において、比較例6においては化合物(XVIII)を除いた組成、比較例7においてはテトラエトキシシランを除いた組成、比較例8においてはHCl溶液に代えて同量の水を加えた組成によって層を設けたこと以外は、実施例12と同様にして表面処理を施した基材を得た。
【0114】
実施例および比較例によって表面処理を施した基材について、以下の評価を行った。結果を表2(表2−1と表2−2をあわせて、表2という。以下同じ。)に示す。
【0115】
<対水接触角評価>
表面処理を施した基材について、室温23℃、湿度50%の室内で、接触角計(協和界面科学(株)社製、CA−X150)を用いて液滴法によって3点測定を行った。平均値を表2に示す。
なお、表面に親水性モノマーがグラフト重合される前の下塗り層(実施例1)に紫外線を1J/cm2 照射した基材について、同様に接触角を測定したところ、61.2度であった。
【0116】
<耐熱水性評価▲1▼>
表面処理を施した基材を、50℃の温水中に24時間浸漬した後に流水を用いて洗浄を行った。上記温水処理を施した基材表面について、外観および対水接触角評価を行った。
【0117】
<耐熱水性評価▲2▼>
表面処理を施した基材を、70℃の温水中に24時間浸漬した後に流水を用いて洗浄を行った。上記温水処理を施した基材表面について、外観および対水接触角評価を行った。
【0118】
<耐熱水性評価▲3▼>
表面処理を施した基材を、80℃の温水中に24時間浸漬した後に流水を用いて洗浄を行った。上記温水処理を施した基材表面について、外観および防曇性評価を行った。
【0119】
<耐払拭性評価▲1▼>
表面処理を施した基材の表面を、1cmφ単位円あたり500gの荷重をかけた状態で、湿潤した布によって100払拭した。上記払拭処理を施した基材表面について、外観および対水接触角評価を行った。
【0120】
<耐払拭性評価▲2▼>
表面処理を施した基材の表面に対して、湿潤した布の替わりにキムワイプ(十條キンバリー社製)を用いたこと以外は耐払拭性評価▲1▼と同様に、評価を行った。
【0121】
<耐払拭性評価▲3▼>
表面処理を施した基材の表面を、1cmφ単位円あたり100gの荷重をかけた状態で、湿潤したキムワイプによって100払拭した。上記払拭処理を施した基材表面について、外観および防曇性評価を行った。
【0122】
<基材密着性評価>
表面処理を施した基材の表面に、JIS−K5400に従ってカッターで傷を入れて1mm角の基盤目を100個作り、セロハン粘着テープ(積水化学社製、#252、25mm幅、SP粘着力:750gf/25mm幅)を付着させた。このテープの一端を基材の表面に直角に保ち、瞬間的に剥離して残った基盤目の数を示す。100個の基盤目全てが剥離した状態が0、全て剥離しない状態が100である。
【0123】
<付着物除去性評価>
表面処理を施した基材の表面に、黒色マジックインキNo.500で描画して室温で5分間乾燥させた。流水下でキムワイプを用いて払拭し、インキの除去性を評価した結果を表2に示す。評価は次のように行った。
○:容易に除去 △:強くこすれば除去可能 ×:除去不可能
【0124】
<防曇性評価:JIS−S4030>
表面処理を施した基材において、処理を施していない面に冷却水をあてて25℃に保ちつつ、処理面に42℃の水蒸気を3分間あてた場合の曇り止め性(高温部曇り止め性)評価を行った。また、基材を5℃に冷却した後に、20℃、湿度65%の恒温室に取り出した場合の曇り止め性(高温部曇り止め性)評価を行った。評価は、JIS−S4030に添付された判定チャートに従って、以下の4段階評価を行った。
◎:1級 ○:2級 △:3級 ×:4級
【0126】
<外観評価>
上記熱水処理又は払拭処理を施した基材の外観を評価した。透明平滑なものを○とした。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【発明の効果】
本発明の密着性の良好な表面層を有する物品の製造方法によれば、光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる下塗り層を介し、該下塗り層に機能性モノマーをグラフト重合させることによって、製造上有利な短時間の処理で、基材に親水性、もしくは撥水性の性能を与えることが出来る。また、付与した機能の耐久性に優れている。さらに、紫外線の照射を利用しているため、基材の部分毎に、選択的に処理を施すことが極めて容易である。
特に親水性能を与える場合においては、本発明の表面層を有する物品の製造方法は、現在知られている技術に比べて有利である。上記親水性表面層を有する物品は、付着物除去性評価で示したように、水洗で簡単に汚れを除去することが出来る。この性質を利用して、物品に防汚機能を与えることが出来、特に風雨にさらされる、屋外での使用を目的とした物品に有効である。また、透明材料からなる基材に親水性モノマーを付与した物品は、透明性に優れ、温度の変化による曇りを生じない性質を有する。
Claims (6)
- 基材上に積層された、光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる下塗り層の表面に、親水性もしくは撥水性の機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射し、該下塗り層に機能性モノマーをグラフト重合させる方法であって、
光重合開始部が化学的に結合した高分子100重量部に、分子内に二以上の不飽和性基を有する(メタ)アクリレート20〜300重量部を加えてなる下塗り層を設けることを特徴とする、基材密着性の良好な表面層を有する物品を製造する方法。 - 光重合開始部が化学的に結合した高分子が、側鎖に架橋性官能基を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の基材密着性の良好な表面層を有する物品を製造する方法。
- 光重合開始部が化学的に結合した高分子を得る反応の際に、酸とスズ化合物を存在させることを特徴とする請求項3に記載の基材密着性の良好な表面層を有する物品を製造する方法。
- 機能性モノマーが、分子内に少なくとも一以上の重合性不飽和基と少なくとも一以上のスルホン酸基又はスルホン酸塩基を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の基材密着性の良好な表面層を有する物品を製造する方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の方法により得られる基材密着性の良好な表面層を有する物品が、該物品の表面にJIS−K5400の基盤目試験によって処理品の表面に1mm角の基盤目を100個作り、JIS−Z1522の規定されたセロハン粘着テープを付着させた後、このテープを瞬間的に剥離した際に、表面層が剥離しないものであることを特徴とする、基材密着性の良好な表面層を有する物品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33892995A JP3557023B2 (ja) | 1995-01-11 | 1995-12-26 | 基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP242095 | 1995-01-11 | ||
JP3228695 | 1995-02-21 | ||
JP7-32286 | 1995-07-07 | ||
JP17188595 | 1995-07-07 | ||
JP7-2420 | 1995-07-07 | ||
JP7-171885 | 1995-07-07 | ||
JP33892995A JP3557023B2 (ja) | 1995-01-11 | 1995-12-26 | 基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0977891A JPH0977891A (ja) | 1997-03-25 |
JP3557023B2 true JP3557023B2 (ja) | 2004-08-25 |
Family
ID=27453626
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33892995A Expired - Fee Related JP3557023B2 (ja) | 1995-01-11 | 1995-12-26 | 基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3557023B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011229734A (ja) * | 2010-04-28 | 2011-11-17 | Sekisui Home Techno Kk | 浴槽及び浴槽の製造方法 |
Families Citing this family (20)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2348378A1 (en) * | 1998-10-28 | 2000-05-04 | Ciba Specialty Chemicals Holding Inc. | Method for producing adhesive surface coatings |
JP4689152B2 (ja) * | 2002-09-30 | 2011-05-25 | 富士フイルム株式会社 | パターン形成材料及びパターン形成方法、並びに、平版印刷版原版 |
EP1576037A1 (de) * | 2002-12-20 | 2005-09-21 | Ciba SC Holding AG | Verfahren zur ausbildung von reaktiven beschichtungen |
JP4502855B2 (ja) * | 2004-03-23 | 2010-07-14 | 富士フイルム株式会社 | パターン形成方法 |
EP1767989A4 (en) * | 2004-05-31 | 2010-05-05 | Fujifilm Corp | METHOD FOR FORMING A PATTERN PATTERN, PATTERN PATIENT MATERIAL, LITHOGRAPHIC PROCESS, METHOD FOR PRODUCING A CONDUCTIVE STRUCTURE, CONDUCTIVE STRUCTURE, PROCESS FOR PREPARING A COLOR FILTER, COLOR FILTER AND PROCESS FOR PRODUCING A MICROLINE |
JP2006247581A (ja) * | 2005-03-11 | 2006-09-21 | Fuji Photo Film Co Ltd | パターン形成方法及びそれを用いて得られたパターン材料並びにカラーフィルタ |
JP4986848B2 (ja) * | 2005-05-02 | 2012-07-25 | 富士フイルム株式会社 | グラフトパターン形成方法、それにより得られたグラフトパターン材料及びそれを用いたリソグラフィ方法 |
JP2006335818A (ja) * | 2005-05-31 | 2006-12-14 | Fujifilm Holdings Corp | 撥油及び撥水性材料の形成方法、それにより得られた撥油及び撥水性材料 |
JP5016869B2 (ja) * | 2005-08-12 | 2012-09-05 | 富士フイルム株式会社 | 光学フィルム、反射防止フィルム、その製造方法、これを用いた偏光板およびディスプレイ装置 |
JP5101026B2 (ja) * | 2005-11-04 | 2012-12-19 | 富士フイルム株式会社 | 導電膜形成方法、導電性パターン形成方法、及び多層配線板の製造方法 |
JP2007185937A (ja) * | 2005-12-12 | 2007-07-26 | Fujifilm Corp | 有機−無機ハイブリッド材料、ガスバリヤーフィルム及びその製造方法 |
US20100323174A1 (en) | 2006-10-23 | 2010-12-23 | Fujifilm Corporation | Methods for preparing metal film-carrying substrates, metal film-carrying substrates, methods for preparing metal pattern materials, and metal pattern materials |
CN101528458B (zh) | 2006-10-23 | 2013-10-30 | 富士胶片株式会社 | 表面金属膜材料及其制造方法、金属模型材料及其制造方法、聚合物层形成用组合物、含有腈基的聚合物及其合成方法、使用含有腈基的聚合物的组合物及层压体 |
JP5079396B2 (ja) | 2007-03-30 | 2012-11-21 | 富士フイルム株式会社 | 導電性物質吸着性樹脂フイルム、導電性物質吸着性樹脂フイルムの製造方法、それを用いた金属層付き樹脂フイルム、及び、金属層付き樹脂フイルムの製造方法 |
JP2009001730A (ja) * | 2007-06-25 | 2009-01-08 | Showa Highpolymer Co Ltd | 高分子化合物およびその製造方法 |
JP5394003B2 (ja) * | 2007-08-30 | 2014-01-22 | 株式会社ダイセル | 共重合体 |
JP4937943B2 (ja) * | 2007-09-13 | 2012-05-23 | 富士フイルム株式会社 | 遮光材料、遮光材料の作製方法、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、フォトマスク、及び電磁波シールドフィルム |
WO2009116612A1 (ja) * | 2008-03-21 | 2009-09-24 | 三井化学株式会社 | 親水膜 |
JP6085076B2 (ja) * | 2009-03-16 | 2017-02-22 | リンテック株式会社 | 粘着シートおよび半導体ウエハの加工方法、半導体チップの製造方法 |
JP6375531B1 (ja) * | 2017-08-29 | 2018-08-22 | ナトコ株式会社 | 防曇剤組成物 |
-
1995
- 1995-12-26 JP JP33892995A patent/JP3557023B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011229734A (ja) * | 2010-04-28 | 2011-11-17 | Sekisui Home Techno Kk | 浴槽及び浴槽の製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0977891A (ja) | 1997-03-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3557023B2 (ja) | 基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法 | |
JP3742647B2 (ja) | 基材の表面処理方法 | |
JP4517590B2 (ja) | 耐汚染性付与剤及びそれを用いた耐汚染性物品 | |
EP2599799B1 (en) | Single-layer film and hydrophilic material comprising same | |
EP0327906B1 (en) | Hard coating agents | |
JP2013173871A (ja) | 組成物、帯電防止性コート剤及び帯電防止性積層体 | |
JP3707868B2 (ja) | 基材の表面処理方法 | |
JP2014037453A (ja) | 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびそれを用いた積層体 | |
US20070082192A1 (en) | Active energy ray curable coating composition and molded product | |
JPH0827290A (ja) | 防曇性被覆物品の製造方法 | |
JP4389429B2 (ja) | 硬化性組成物およびハードコート処理物品 | |
JP4623607B2 (ja) | 塗膜用樹脂組成物及び塗膜付き樹脂成形品 | |
JP3164431B2 (ja) | 耐摩耗性紫外線硬化性被覆組成物 | |
JPH1160992A (ja) | 紫外線硬化性被覆用組成物 | |
JP3978770B2 (ja) | 反射防止ハードコート層、反射防止ハードコートフィルム及びこれを設けた画像表示装置 | |
JPH10101827A (ja) | 基材の表面処理方法 | |
JPH0827291A (ja) | 防曇性被覆物品の製造方法 | |
JP3340249B2 (ja) | 防曇性被覆物品の製造方法 | |
JP4151086B2 (ja) | 高分子被膜を有するガラス製品 | |
JPH11129404A (ja) | 防曇膜 | |
JPH0810697A (ja) | 防曇性被覆物品の製造方法 | |
JPH09176349A (ja) | 基材の表面処理方法 | |
JPH1095937A (ja) | コーティング剤及び硬化塗膜を有する樹脂成形品 | |
JP3478910B2 (ja) | 塗料用下塗り層組成物 | |
JPH1119578A (ja) | 水流抵抗が低減された表面を有する物品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040205 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040210 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040331 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040421 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040514 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090521 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |