JP3556135B2 - 車載用回転コネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリング装置に装着されてエアバッグシステム等の電気的接続手段として利用される車載用回転コネクタに係り、特に、ケーブル収納空間内に複数枚の可撓性ケーブルが収納され、かつ各可撓性ケーブルの巻回方向がケーブル収納空間内で反転された車載用回転コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
車載用回転コネクタは、自動車のステアリング装置に組み込まれて、ステアリングホイールに装着されたエアバッグ回路やホーン回路それにその他のスイッチ回路の電気的接続手段として用いられるものであって、同心状に配置されかつ相対的に回動自在に連結された一対の固定側(外周側)ハウジング及び可動側(内周側)ハウジングと、これら一対のハウジングの間に形成される環状のケーブル収納空間内に巻き締め及び巻き戻し可能に収納された可撓性ケーブルとから基本的に構成されている。なお、可撓性ケーブルは、2枚の絶縁性ベースフィルム間に電気的に独立な複数の導体を担持したものであって、帯状に形成されている。
【0003】
近年、ステアリングホイールに装着される電気回路はますます増加する傾向にあり、これに伴って車載用回転コネクタにも、可撓性ケーブルに担持される導体数の増加、即ち多回路化と、外形寸法の小型化とが求められている。
【0004】
従来より、この種の回転コネクタとしては、例えば特開平8−55667号公報に記載されているように、ケーブル収納空間内に複数枚の可撓性ケーブルを収納すると共に、可撓性ケーブルの巻回方向を途中で反転させるものが提案されている。ケーブル収納空間内に複数枚の可撓性ケーブルを収納すると、1枚の可撓性ケーブルのみを収納する場合に比べて可撓性ケーブルに担持可能な導体数を増加できることから多回路化の要求に対処でき、また可撓性ケーブルの巻回方向を途中で反転させると、反転させない場合に比べて必要とされる可撓性ケーブルの長さを1/2程度に短縮できることから、可撓性ケーブルの巻回数の減少、ひいては回転コネクタの外形寸法の減少を図ることができる。
【0005】
図6は、前記公知例に記載された回転コネクタの構成図であって、101は固定側ハウジング、102は可動側ハウジング、103はこれら一対のハウジング101,102の間に形成された環状のケーブル収納空間、104は当該ケーブル収納空間103内に回転自在に収納された移動体、105,106は当該移動体104に回転自在に取り付けられた第1及び第2のローラ、107,108は前記移動体104に形成された可撓性ケーブルを通過させるための第1及び第2の開口、109,110は第1及び第2の可撓性ケーブル、111,112は可撓性ケーブルの両端部に接続された接続コネクタを示している。なお、本明細書においては、本願発明との対比を容易にするため、図6に記載の各部材について、前記公知例に記載の名称とは異なる名称を付している。
【0006】
可撓性ケーブル109,110は、第1の可撓性ケーブル109を内周側に、第2の可撓性ケーブル110を外周側にして2重に巻回され、ケーブル収納空間103内に収納される。また、各可撓性ケーブル109,110の両端部に接続された接続コネクタ111,112は、固定側ハウジング101及び可動側ハウジング102にそれぞれ固着され、エアバッグ回路等の外部回路に接続される。第1の可撓性ケーブル109は、その巻回途中において第1の開口107を通過して第1のローラ105にU字状に巻回され、巻回方向が180度反転される。一方、第2の可撓性ケーブル110は、その巻回途中において第2の開口108を通過して第2のローラ106にU字状に巻回され、巻回方向が180度反転される。
【0007】
この回転コネクタは、可動側ハウジング102を固定側ハウジング101に対して相対的に反時計方向に回転すると、可撓性ケーブル109,110が可動側ハウジング102に巻き締められて、可撓性ケーブル109,110の反転部109a,110aが第1及び第2のローラ105,106の周面に密着し、各可撓性ケーブル109,110の張力によって第1及び第2のローラ105,106がそれぞれ時計方向及び反時計方向に回転すると共に、移動体104自体が反時計方向に回転する。反対に、可動側ハウジング102を固定側ハウジング101に対して相対的に時計方向に回転すると、可撓性ケーブル109,110が可動側ハウジング102から巻き戻されて、可撓性ケーブル109,110の反転部109a,110aが第1及び第2の開口107,108の側面部に密着し、各可撓性ケーブル109,110の押圧力によって移動体104自体が時計方向に回転する。これによって、可動側ハウジング102の回転時における可撓性ケーブル109,110の導通を保持できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車載用回転コネクタは、前記したように、自動車のステアリング装置に組み込まれて、ステアリングホイールに装着されたエアバッグ回路やホーン回路等の電気的接続手段として用いられるが、これらの各回路のうちエアバッグ回路は保安上特に高い信頼性が要求されるので、自動車の車体に所定値以上の加速度(衝撃力)が作用したとき、ステータ側に備えられた制御回路からの信号をステアリングホイール側に備えられたエアバッグ・インフレータに確実に伝達するため、エアバッグ回路に接続される導体には、特に導体抵抗が小さいことが要求される。
【0009】
然るに、特開平8−55667号公報に記載の回転コネクタには、エアバッグ回路に接続される導体の抵抗を低減して制御回路からの信号をエアバッグ・インフレータに確実に伝達するためするの工夫がされておらず、この点においてエアバッグシステムの信頼性をより高める余地がある。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の不備を解消するためになされたものであって、その課題とするところは、エアバッグ回路に接続される導体の電気抵抗が小さく、エアバッグ・インフレータを確実に駆動可能な信頼性に優れた車載用回転コネクタを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するため、同心に配置されかつ回動自在に連結された一対のハウジングと、当該一対のハウジングの間に形成される環状のケーブル収納空間内に巻き締め及び巻き戻し可能に収納され、両端が前記一対のハウジングのそれぞれに固定された複数枚の可撓性ケーブルとを備え、前記複数枚の可撓性ケーブルのうち、最も全長が短い可撓性ケーブルのみに、エアバッグ回路に接続される導体を担持するという構成にした。
【0012】
なお、前記複数枚の可撓性ケーブルのうち、いずれの可撓性ケーブルの全長を最も短くするかは、設計上任意に決定することができる。また、各可撓性ケーブルの両端部を一対のハウジングのどの位置に固定するかも、設計上任意に決定することができる。
【0013】
全長が最も短い可撓性ケーブルにエアバッグ回路用の導体を担持すると、エアバッグ回路用の導体の電気抵抗値を最も小さくすることができるので、自動車の車体に所定値以上の加速度(衝撃力)が作用したときに、ステータ側に備えられた制御回路からステアリングホイール側に備えられたエアバッグ・インフレータに大電流を供給することができる。よって、エアバッグ・インフレータを確実に作動することができ、車載用回転コネクタの信頼性を高めることができる。
【0014】
前記構成の車載用回転コネクタにおいては、ステアリング装置に対する回転コネクタの誤組立が発生したときに、組立後の検査によって、最も短い可撓性ケーブル、即ち、エアバッグ回路に接続するための導体が担持された可撓性ケーブルを最も切断しやすくし、不正なエアバッグ回路を搭載した自動車が市場に供給されるのを未然に防止するため、前記複数枚の可撓性ケーブルの一端部を第1の接続コネクタに接続し、これら複数枚の可撓性ケーブルの他端部を第2の接続コネクタに接続し、前記第1の接続コネクタを内周側ハウジングに設けられたケーブル導出部に取り付け、前記第2の接続コネクタを外周側ハウジングに設けられたケーブル導出部に取り付けて外部へ電気的に導出すると共に、これら複数枚の可撓性ケーブルの巻回方向を前記ケーブル収納空間内でそれぞれ1回ずつ反転させ、最も全長が短い可撓性ケーブルの一端側を他の可撓性ケーブルを介して前記内周側ハウジングの外周面に巻回すると共に、当該最も全長が短い可撓性ケーブルの他端側を他の可撓性ケーブルを介して前記外周側ハウジングの内周面に巻回するという構成をとることが特に好ましい。
【0015】
また、同様の理由から、前記構成の車載用回転コネクタにおいて、前記複数枚の可撓性ケーブルの両端をそれぞれ前記一対のハウジングに1つずつ形成されたケーブル導出部に挿通して外部へ電気的に導出すると共に、これら複数枚の可撓性ケーブルの巻回方向を前記ケーブル収納空間内でそれぞれ1回ずつ反転させ、最も全長が短い可撓性ケーブルの一端側を他の可撓性ケーブルを介して内周側ハウジングの外周面に巻回すると共に、当該最も全長が短い可撓性ケーブルの他端側を他の可撓性ケーブルを介して外周側ハウジングの内周面に巻回し、最も全長が短い可撓性ケーブルに、エアバッグ回路に接続される導体を担持するという構成にすることが特に好ましい。
【0016】
かかる構成によると、誤組立によってステアリング装置に対する回転コネクタの取付位置が時計方向にずれたときにも、また、反時計方向にずれたときにも、組立後の検査によって、最も短い可撓性ケーブルがケーブル導出部のエッジと係合し、確実に切断されるため、検査時に行われる各導体の導通試験によって誤組立の事実を迅速かつ確実に知ることができ、不正なエアバッグ回路を搭載した自動車が市場に供給されるのを未然に防止することができる。
【0017】
なお、ケーブル収納空間内における反転部の設定位置は、必要に応じて任意に設定することができるが、各可撓性ケーブルの干渉を防止するためには、各反転部の設定位置が離隔しているほど好ましく、かかる観点から、ケーブル収納空間内に収納される可撓性ケーブルの数をnとしたとき、各反転部を、ケーブル収納空間の周方向に関して、約(360/n)度おきに分散して配置することが特に好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車載用回転コネクタの一実施形態例を、図1乃至図4に基づいて説明する。図1は本実施形態例に係る車載用回転コネクタの内部構造を示す平面図、図2は該回転コネクタの断面図、図3は該回転コネクタ内に巻回状態で収納されている2枚の可撓性ケーブルの部分説明図、図4は本実施形態例に係る車載用回転コネクタの効果を示す平面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本例の車載用回転コネクタは、固定側ハウジング1と、この固定側ハウジング1に対して同心状かつ回動自在に連結された可動側ハウジング2と、これら両ハウジング1,2の間に形成される環状のケーブル収納空間3内に収納された第1及び第2の可撓性ケーブル4,5と、前記ケーブル収納空間3内に回転自在に収納された移動体6とから主に構成されている。
【0020】
固定側ハウジング1は、互いに一体化された上ケース7と下ケース8とで構成され、上ケース7には円筒状の外筒部9が形成されている。一方、可動側ハウジング2には円筒状の内筒部10が形成されている。これら固定側ハウジング1と可動側ハウジング2とは、同心状に組み合わされて相互に回転可能に連結されており、これによって外筒部9と内筒部10との間に前記環状のケーブル収納空間3が形成されている。
【0021】
移動体6は、リング状の回転板11と、当該回転板11上に回転自在に軸支された複数個のローラ12と、これら複数個のローラ12のうち、可撓性ケーブル4,5がU字状に巻回される特定ローラ12A,12Bと回転板11の円周方向に関して対向に配置される固定筒13,14とで構成されている。一方の特定ローラ12Aと固定筒13との間には第1の開口15が形成され、他方の特定ローラ12Bと固定筒14との間には第2の開口16が形成されており、これら第1及び第2の開口15,16は、回転板11の中心を介して約180度の対向位置に設定されている。
【0022】
第1及び第2の可撓性ケーブル4,5は、図3に示すように、絶縁材料からなる2枚のベースフィルム21,22の間に銅等からなる複数本の導体23をラミネートしたものであって、第1の可撓性ケーブル4は第2の可撓性ケーブル5よりも全長が短く調製されている。これら第1及び第2の可撓性ケーブル4,5の両端部には、第1の接続コネクタ24及び第2の接続コネクタ25が接続されており、第1の接続コネクタ24は固定側ハウジング1に設けられたケーブル導出部17に、第2の接続コネクタ25は可動側ハウジング2に設けられたケーブル導出部18に取り付けられる。これによって、第1及び第2の可撓性ケーブル4,5に担持された各導体23の一端は、第1の接続コネクタ24を介して固定側ハウジング1より外部に導出され、当該各可撓性ケーブル4,5に担持された各導体23の他端は、第2の接続コネクタ25を介して可動側ハウジング2より外部に導出される。
【0023】
全長が第2の可撓性ケーブル5よりも短い第1の可撓性ケーブル4は、図1に示すように、一端側、即ち、第1の接続コネクタ24への接続側が、第2の可撓性ケーブル5を介して外筒部9の内周面に巻回され、他端側、即ち、第2の接続コネクタ25への接続側が、第2の可撓性ケーブル5を介して内筒部10の外周面に巻回される。また、当該第1の可撓性ケーブル4は、その長さ方向の一部が第1の開口15を通過して第1の特定ローラ12AにU字状に巻回され、これによって反転部4aが形成される。
【0024】
一方、全長が第1の可撓性ケーブル4よりも長い第2の可撓性ケーブル5は、図1に示すように、第1の接続コネクタ24への接続側が、外筒部9の内周面に直接巻回され、第2の接続コネクタ25への接続側が、内筒部10の外周面に直接巻回される。また、当該第2の可撓性ケーブル5は、その長さ方向の一部が第2の開口16を通過して第2の特定ローラ12BにU字状に巻回され、これによって反転部5aが形成される。
【0025】
本例の車載用回転コネクタにおいては、図3(a),(b)に示すように、全長が短い第1の可撓性ケーブル4には、幅広に形成された2本のエアバッグ回路用導体23aとこれよりも幅狭に形成された4本のホーン回路用及びスイッチ回路用の導体23bとが担持され、全長が長い第2の可撓性ケーブル5には、幅狭に形成された6本のホーン回路用及びスイッチ回路用の導体23bが担持されている。
【0026】
前記構成の回転コネクタは、固定側ハウジング1をステアリング装置のステータ部材に固定すると共に、可動側ハウジング2をステアリング装置のロータ部材であるステアリングホイールに固定し、各ハウジング1,2に取り付けられた接続コネクタ24,25にエアバッグ回路やホーン回路等に備えられた図示しない外部接続コネクタを接続することによって車載される。ステアリング装置への回転コネクタの装着に際しては、固定側ハウジング1に対する可動側ハウジング2の中立位置とステアリング装置の中立位置とが厳密に合致され、ステアリングホイールの可動範囲内において第1及び第2の可撓性ケーブル4,5に所定値以上の張力が作用しないように調整される。
【0027】
以下、前記構成に係る車載用回転コネクタの動作について説明する。
【0028】
中立位置からステアリングホイールを時計方向に回転すると、その回転力が可動側ハウジング2に伝達されて可動側ハウジング2が時計方向に回転し、可動側ハウジング2の内筒部10に第1及び第2の可撓性ケーブル4,5が巻き締められる。このとき、第1の可撓性ケーブル4の反転部4aが第1の特定ローラ12Aに当接すると共に、第2の可撓性ケーブル5の反転部5aが第2の特定ローラ12Bに当接するので、移動体6は各可撓性ケーブル4,5からの均等な押圧力を受けて、可動側ハウジング2の約1/2の回転量で時計方向にスムーズに回転する。また、内筒部10に巻き締められる分の可撓性ケーブル4,5は、外筒体9から繰り出されるので、第1及び第2の可撓性ケーブル4,5にはほとんど張力が作用せず、各回路の導通が保持される。
【0029】
一方、中立位置からステアリングホイールを反時計方向に回転した場合には、その回転力が可動側ハウジング2に伝達されて可動側ハウジング2が反時計方向に回転し、可動側ハウジング2の内筒部10から第1及び第2の可撓性ケーブル4,5が巻き戻される。このとき、第1の可撓性ケーブル4の反転部4aが第1の固定筒13に当接すると共に、第2の可撓性ケーブル5の反転部5aが第2の固定筒14に当接するので、移動体6は各可撓性ケーブル4,5からの均等な押圧力を受けて、可動側ハウジング2の約1/2の回転量で反時計方向にスムーズに回転する。また、内筒部10から巻き戻される分の可撓性ケーブル4,5は、外筒体9の内周面に順次巻回されるので、やはり第1及び第2の可撓性ケーブル4,5にはほとんど張力が作用せず、各回路の導通が保持される。
【0030】
前記実施形態例に係る車載用回転コネクタは、全長が短い第1の可撓性ケーブル4にエアバッグ回路用の導体23aを担持したので、全長が長い第2の可撓性ケーブル5にエアバッグ回路用の導体23aを担持する場合に比べてエアバッグ回路用の導体23aの電気抵抗値を小さくすることができ、自動車の車体に所定値以上の加速度(衝撃力)が作用したときに、ステータ側に備えられた制御回路からステアリングホイール側に備えられたエアバッグ・インフレータに大電流を供給することができるので、エアバッグ・インフレータを確実に作動することができ、信頼性に優れる。
【0031】
また、前記実施形態例に係る車載用回転コネクタは、第1の可撓性ケーブルの一端側を、第2の可撓性ケーブルを介して外筒部9の内周面に巻回すると共に、当該第1の可撓性ケーブルの他端側を、第2の可撓性ケーブル5を介して内筒部10の外周面に巻回したので、ステアリング装置に対する回転コネクタの誤組立を生じた場合に、エアバック用の導体23aが担持された第1の可撓性ケーブル4が優先的に切断されやすく、誤組立によるエアバック回路の断線や接続不良を迅速かつ確実に知ることができるので、不正なエアバッグ回路を搭載した自動車が市場に供給されるのを未然に防止することができる。
【0032】
即ち、ステアリング装置に対して回転コネクタを誤組立し、固定側ハウジング1に対する可動側ハウジング2の中立位置とステアリング装置の中立位置との間にずれが生じた場合において、そのずれ量が回転コネクタの許容値を超えた場合には、ステアリングホイールの可動範囲内のいずれかの部位において、可撓性ケーブル4,5が巻き締め不能状態又は巻き戻し不能状態に陥る。図4(a)は巻き締め不能状態に陥った回転コネクタを模式的に示す要部平面図、図4(b)は巻き戻し不能状態に陥った回転コネクタを模式的に示す要部平面図である。
【0033】
図4(a)に示すように、ステアリングホイールの可動範囲内において、可撓性ケーブル4,5が完全に外筒部9側に巻き切られた場合においても、また、図4(b)に示すように、可撓性ケーブル4,5が完全に内筒部10側に巻ききられた場合においても、第1の可撓性ケーブル4が外筒部9に設けられたケーブル導出部17のエッジ又は内筒部10に設けられたケーブル導出部18のエッジによって鋭角状に折り曲げられ、当該第1の可撓性ケーブル4に第2の可撓性ケーブル5よりも大きな張力が作用するので、第1の可撓性ケーブル4が優先的に切断される。
【0034】
エアバック回路には、通常、断線監視装置が備えられており、しかも自動車の組立工程においては、ステアリング装置に回転コネクタを組み込んだ後に、ステアリングホイールを可動範囲の一端から他端まで回転して断線又は接続不良の有無が検査されるので、前記実施形態例に係る回転コネクタのように、切断されやすい第1の可撓性ケーブル4にエアバッグ回路用の導体23aを担持しておけば、誤組立によるエアバック回路の断線や接続不良を迅速かつ確実に知ることができ、不正なエアバッグ回路を搭載した自動車が市場に供給されるのを未然に防止することができる。
【0035】
その他、前記実施形態例に係る車載用回転コネクタは、ケーブル収納空間3内に収納される可撓性ケーブルの数量を2枚に制限したので、各反転部4a,5aの位置を十分に離隔させることができて各可撓性ケーブル4,5の干渉を防止でき、固定側ハウジング1に対する可動側ハウジング2の回転を円滑にすることができる。
【0036】
また、前記実施形態例に係る車載用回転コネクタは、第1及び第2の可撓性ケーブル4,5の一端を1つの接続コネクタ24に接続し、他端を他の1つの接続コネクタ25に接続したので、固定側ハウジング1又は可動側ハウジング2からの可撓性ケーブル4,5の導出、並びにこれら各可撓性ケーブル4,5と外部回路との接続が容易で、組立性及び作業性に優れる。
【0037】
さらに、前記実施形態例に係る車載用回転コネクタは、ケーブル収納空間3内における複数の反転部4a,5aの設定位置を、ケーブル収納空間3内に収納される可撓性ケーブルの数をnとしたとき、ケーブル収納空間3の周方向に関して、約(360/n)度おきに分散して配置するようにしたので、各可撓性ケーブル4,5の干渉が防止され、固定側ハウジング1に対する可動側ハウジング2の回転を円滑にすることができる。
【0038】
以下に、本発明に係る車載用回転コネクタの他の実施例を列挙する。
【0039】
(1)前記実施形態例においては、可撓性ケーブル4,5の両端部にそれぞれ1つの接続コネクタ24,25を接続したが、接続コネクタの数量については何ら制限があるものではなく、必要に応じて一端部につき複数個の接続コネクタを接続することもできる。この場合、図5(a)に示すように、各可撓性ケーブル4,5毎に異なる接続コネクタ24a,24b,25a,25bを接続することもできるし、図5(b)に示すように、各可撓性ケーブル4,5の両端部を分岐し、分岐された第1の可撓性ケーブル4の一方と第2の可撓性ケーブル5の一方とを接続コネクタ24a,25aに接続し、分岐された第1の可撓性ケーブル4の他方と第2の可撓性ケーブル5の他方とを接続コネクタ24b,25bに接続するといった接続方法をとることもできる。また、この場合、図5(a),(b)に示すように、可撓性ケーブル4,5の各端部に接続された接続コネクタ24a,25a又は24b,25bを互いに離隔した位置に配置することもできるし、背起因した位置に配置することもできる。
【0040】
(2)前記各実施形態例においては、可撓性ケーブル4,5の両端部にそれぞれ接続コネクタ24,25を接続したが、各可撓性ケーブル4,5の一端又は両端について、接続コネクタを介することなく直接ケーブル導出部17,18に挿通して外部に導出することもできる。
【0041】
(3)前記実施形態例においては、ケーブル収納空間3内に移動体6を収納したが、反転部4a,5aの移動がスムーズに行える場合には、これを省略することもできる。
【0042】
(4)前記実施形態例においては、1本の可撓性ケーブルの担持される導体23の数を6本としたが、導体23の数量についても何ら制限があるものではなく、6本以下又は6本以上の任意の数とすることができる。
【0043】
(5)前記実施形態例においては、エアバッグ回路用の導体23aを他の回路用の導体23bよりも幅広に形成したが、エアバッグ回路の導通に何ら支障がない場合には、これらの各導体23a,23bの線幅を同一に形成することもできる。
【0044】
(6)前記実施形態例においては、ケーブル収納空間3内に収納される可撓性ケーブルの数量を2枚にしたが、可撓性ケーブルの数量については何ら制限があるものではなく、3枚以上任意の数の可撓性ケーブルを収納することもできる。
【0045】
【発明の効果】
本願請求項1,2,3に記載の発明は、全長が最も短い可撓性ケーブルのみにエアバッグ回路用の導体を担持したので、全長が長い他の可撓性ケーブルにエアバッグ回路用の導体を担持する場合に比べてエアバッグ回路用の導体の電気抵抗値を最も小さくすることができる。よって、自動車の車体に所定値以上の加速度(衝撃力)が作用したときに、ステータ側に備えられた制御回路からステアリングホイール側に備えられたエアバッグ・インフレータに大電流を供給することができてエアバッグ・インフレータを確実に作動することができ、信頼性に優れる。
【0046】
また、本願請求項1,2,3に記載の発明は、複数枚の可撓性ケーブルの巻回方向をケーブル収納空間内でそれぞれ1回ずつ反転させ、最も全長が短い可撓性ケーブルの一端側を他の可撓性ケーブルを介して前記内周側ハウジングの外周面に巻回すると共に、当該最も全長が短い可撓性ケーブルの他端側を他の可撓性ケーブルを介して前記外周側ハウジングの内周面に巻回するので、ステアリング装置に対する回転コネクタの誤組立を生じた場合に、エアバッグ回路用の導体が担持された可撓性ケーブル、即ち最も全長が短い可撓性ケーブルが優先的に切断されやすく、誤組立によるエアバッグ回路の断線や接続不良を迅速かつ確実に知ることができることから、不正なエアバッグ回路を搭載した自動車が市場に供給されるのを未然に防止することができる。
【0047】
本願請求項3に記載の発明は、ケーブル収納空間内における複数の反転部の設定位置を、ケーブル収納空間内に収納される可撓性ケーブルの数をnとしたとき、ケーブル収納空間の周方向に関して、約(360/n)度おきに分散して配置するようにしたので、各可撓性ケーブルの干渉が防止され、固定側ハウジングに対する可動側ハウジングの回転を円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例に係る車載用回転コネクタの内部構造を示す平面図である。
【図2】実施形態例に係る回転コネクタの断面図である。
【図3】実施形態例に係る車載用回転コネクタに収納される2枚の可撓性ケーブルの部分説明図である。
【図4】回転コネクタの誤組立が発生した場合における固定側ハウジング及び可動側ハウジングに対する可撓性ケーブルの巻回状態を示す要部平面図である。
【図5】他の実施形態例に係る車載用回転コネクタの内部構造を示す平面図である。
【図6】従来例に係る車載用回転コネクタの内部構造を示す平面図である。
【符号の説明】
1 固定側ハウジング
2 可動側ハウジング
3 ケーブル収納空間
4,5 可撓性ケーブル
6 移動体
11 回転板
12 ローラ
12A,12B 特定ローラ
13,14 固定筒
15 第1の開口
16 第2の開口
17,18 ケーブル導出部
21,22 ベースフィルム
23 導体
23a エアバッグ回路用導体
23b ホーン回路用及びスイッチ回路用の導体
24,25 接続コネクタ
Claims (3)
- 同心に配置されかつ回動自在に連結された一対のハウジングと、当該一対のハウジングの間に形成される環状のケーブル収納空間内に巻き締め及び巻き戻し可能に収納され、両端が前記一対のハウジングのそれぞれに固定された複数枚の可撓性ケーブルとを備えた車載用回転コネクタであって、
前記複数枚の可撓性ケーブルのうちの最も全長が短い可撓性ケーブルのみにエアバッグ回路に接続される導体を担持すると共に、前記複数枚の可撓性ケーブルの両端部をそれぞれ1つの接続コネクタに接続し、前記複数枚の可撓性ケーブルの両端部を前記接続コネクタを介して内周側ハウジングに設けられたケーブル導出部及び外周側ハウジングに設けられたケーブル導出部より外部へ電気的に導出し、
かつ、これら複数枚の可撓性ケーブルの巻回方向を前記ケーブル収納空間内でそれぞれ1回ずつ反転させ、最も全長が短い可撓性ケーブルの一端側を他の可撓性ケーブルを介して前記内周側ハウジングの外周面に巻回すると共に、当該最も全長が短い可撓性ケーブルの他端側を他の可撓性ケーブルを介して前記外周側ハウジングの内周面に巻回したことを特徴とする車載用回転コネクタ。 - 同心に配置されかつ回動自在に連結された一対のハウジングと、当該一対のハウジングの間に形成される環状のケーブル収納空間内に巻き締め及び巻き戻し可能に収納され、両端が前記一対のハウジングのそれぞれに固定された複数枚の可撓性ケーブルとを備えた車載用回転コネクタであって、
前記複数枚の可撓性ケーブルのうちの最も全長が短い可撓性ケーブルのみにエアバッグ回路に接続される導体を担持すると共に、前記複数枚の可撓性ケーブルの両端部を内周側ハウジングに設けられた複数のケーブル導出部及び外周側ハウジングに設けられた複数のケーブル導出部より外部へ電気的に導出し、
かつ、これら複数枚の可撓性ケーブルの巻回方向を前記ケーブル収納空間内でそれぞれ1回ずつ反転させ、最も全長が短い可撓性ケーブルの一端側を他の可撓性ケーブルを介して前記内周側ハウジングの外周面に巻回すると共に、当該最も全長が短い可撓性ケーブルの他端側を他の可撓性ケーブルを介して前記外周側ハウジングの内周面に巻回したことを特徴とする車載用回転コネクタ。 - 前記ケーブル収納空間内に収納される可撓性ケーブルの数をnとしたとき、これら複数の可撓性ケーブルの反転部を、前記ケーブル収納空間の周方向に関して、約(360/n)度おきに分散して配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載用回転コネクタ。
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