JP3552852B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに関し、詳しくは、超高性能領域のタイヤに要求される高速耐久性(発熱性の低下)と操縦安定性との両立を実現し、良好な性能を発揮し得る空気入りタイヤ、特には乗用車用ラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイヤのトレッドゴムをキャップ・ベース構造とし、ベースゴム組成物にシリカを配合してタイヤ性能を改善する試みは幾つか提案されている。
例えば、キャップ・ベース構造のトレッドのベースゴムにシリカを用いた例が、特開平7−96715号公報等に開示されている。かかる公報に開示されたタイヤは、トレッド溝底の耐カット性の向上と、タイヤ転がり抵抗の低減との両立を企図するものである。
【0003】
また、特開平3−7602号公報にも、キャップ・ベース構造のトレッドを有する空気入りタイヤにおいて、シリカをベースゴムに配合し、高速耐久性の向上と転がり抵抗の低減を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のキャップ・ベース構造のトレッドにシリカを配合する技術は、これを超高性能タイヤに適用した場合に、発熱の低減による高速耐久性の向上と、操縦安定性の向上とを同時に高度に実現するものではなく、結局、超高性能タイヤ等に用いるには不十分なものであった。
【0005】
また、前記特開平3−7602号公報に開示されている技術においても、「キャップゴムに用いるスチレン量を20wt%以下とする。」と記載されているように、その主要目的が低燃費性の追求にあり、超高性能タイヤ用としては不十分なものであった。
【0006】
このように従来技術では、例えキャップ・ベース構造のトレッドを有する空気入りタイヤのベースゴムにシリカを配合しても、超高性能領域のタイヤに要求される優れた高速耐久性と、サーキットのような極めて厳しい条件下での操縦安定性とを同時に高度に実現し得る空気入りタイヤを得ることは困難であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、超高性能領域のタイヤに要求される高速耐久性(発熱性の低下)と操縦安定性の両立を実現し、良好な性能を発揮し得る空気入りタイヤを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、キャップ・ベース構造のベースゴムに、所定量以上のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を使用し、かつシリカと特定のカーボンブラックとシランカップリング剤とを所定量含め、加硫ゴム物性を特定し、さらにキャップゴムのポリマー分のスチレン含量を所定量以上とすることにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、トレッドゴムがトレッド表面部のキャップゴムとベルトコーティングゴムに接する部分のベースゴムの2層構造よりなる空気入りタイヤにおいて、
前記ベースゴムが、少なくとも70重量部のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカとカーボンブラックとを合わせて40〜100重量部を含み、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの割合がが20〜80重量%で、かつシランカップリング剤をシリカ量の5〜20重量%含んでいるゴム組成物よりなり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が50〜150m2/g、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が100〜200cc/100gであり、DBPとN2SAの関係が次式、DBP>−N2SA+230を満たし、さらに加硫後のベースゴム組成物の動的貯蔵弾性率(E’)が120×106dyn/cm2 以上、硬度(Hd)が65以上であり、
前記キャップゴムが、ポリマー分のスチレン含量が28重量%以上であるゴム組成物からなことを特徴とするものである。
前記シリカのN2SAは、好ましくは220〜300m2/gである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りタイヤにおいては、トレッドのベースゴム組成物のポリマー組成100重量部中SBRが少なくとも70重量部である。SBRを70重量部未満とすると、超高性能乗用車用ラジアルタイヤに求められる操縦安定性を満足するようにした場合に、発熱により高速耐久性が低下してしまうからである。
【0011】
前記ベースゴムにおいて、シリカとカーボンブラックの総量がゴム成分100重量部に対して40〜100重量部の範囲内である。かかる量が40重量部未満では操縦安定性を改良することができず、一方100重量部を超えると高速耐久性の低下を招くことになる。このとき、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの比率が20〜80重量%の範囲内である。この比率が20重量%未満では発熱抑制による耐久性向上の効果が小さく、一方80重量%を超えると高温時の破壊特性の低下が著しくなる。
【0012】
また、前記ベースゴムにはシランカップリング剤をシリカ量の5〜20重量%含める。シランカップリング剤の配合量が5重量%より少ないとシリカの補強性が著しく劣り、破壊特性が低下する。一方、20重量%より多いと、発熱時の伸びが得られず、耐久性が低下し、弾性率の著しい上昇を招くことになる。すなわち、シランカップリング剤は、シリカの補強性確保と剛性保持の観点から前記範囲内にてベースゴムに含める必要がある。
【0013】
なお、シランカップリング剤はとしては、一般式、Y3−Si−CnH2nA(式中、Yは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシル基または塩素原子であって3個のYは同一でも異なっていてもよく、nは1〜6の整数を示し、Aは−SmCnH2nSi−Y3基、−X基および−SnZ基からなる群から選ばれた基であり、ここでXはニトロソ基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、塩素原子またはイミド基、Zは次式、
であり、mおよびnは夫々1〜6の整数を示し、Yは前述の通りである。)で表わされるものを用いる。
【0014】
また、本発明において使用するカーボンブラックは、N2SA値が50〜150m2/g、DBP値が100〜200cc/100gで、かつ次式、DBP>−N2 SA+230の関係を満たすものである。N2SAが50m2/g未満だと剛性の保持が困難となり、一方150m2/gを超えると発熱性が悪化し、すなわち発熱が大きくなり、耐久性の向上が望めなくなる。同様にDBPが100cc/100g未満であると剛性保持が困難となり、一方200cc/100gを超えると作業性の悪化、弾性率の著しい上昇が起こる。さらに、次式、DBP>−N2 SA+230の関係を満たす場合に、最も耐久性と操縦安定性のバランスをとることができる。
ここで、N2SAはASTM D3037−84B法に、またDBPはJISK6221−1982Aに準拠して夫々求めた。
【0015】
さらに、使用するシリカはN2SA値が、好ましくは220〜300m2/g、さらに好ましくは230〜260m2/gである。この値が220m2/g以上だと特に剛性感が良くなり操縦安定性が著しく向上する。しかし、300m2/gを超えると、作業性が著しく悪化し、シリカの分散性が低下し、耐久性の低下を招くことになる。剛性感の向上と耐久性の向上とのバランスの観点から、最も好ましい範囲が上述の230〜260m2/gである。
【0016】
また、本発明においては、ベースゴム組成物の加硫後の動的貯蔵弾性率E’が120×106dyn/cm2 以上で、かつ硬度(Hd)が65以上のときに操縦安定性の向上が期待でき、これらに満たないときはその向上は望めない。
【0017】
次に、上述したベースゴムと組み合わせるキャップゴムは、ポリマー分のスチレン含量が28重量%以上であるゴム組成物からなる。これは、高性能用としての優れたグリップ性能を得るには、スチレン含量が28重量%以上であることが必要であり、さらに本発明に係るベースゴムと組み合わせた場合、操縦安定性の著しい向上が見られる。これに対し、28重量%未満だと、本発明に係るベースゴムと組み合わせても、操縦安定性の向上は望めない。また好ましくは、総充てん剤量が、60〜120重量部である。但し、これにはカーボンブラック、シリカ、クレイ等を含む。
【0018】
尚、本発明に係るベースゴム組成物およびキャップゴム組成物には、上記成分以外に通常用いられる加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤などが適宜配合される。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
表1に示す配合処方(重量部)に従いベースゴム用のゴム組成物A〜Hおよびキャップゴム用のゴム組成物Iを夫々調製した。尚、表中のSBR(A)〜(C)のミクロ構造は以下の通りである。
【0020】
【0021】
また表中のカーボンブラック(A)および(B)のコロイダル特性は以下の通りである。
【0022】
さらに表中のシリカのコロイダル特性は以下の通りである。
【0023】
【表1】
*1 デグッサ社製,Si69
*2 N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*3 ジフェニルグアニジン
*4 ジベンゾチアジルスルフィド
*5 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾルスルフェンアミド
*6 ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
【0024】
次に、表1に示す各ベースゴム組成物について、動的貯蔵弾性率および硬度(Hd)を以下のようにして求めた。また、かかるベースゴム組成物およびキャップゴム組成物からなるトレッドゴムを備えたタイヤサイズ225/50R16のタイヤを試作し、リム8J−16を使用して高速耐久性の試験を行った。
【0025】
(イ)動的貯蔵弾性率(E’)
東洋精機製スペクトロメーターを用い、幅5mm、厚さ2mm、長さ20mmの試験片を初期荷重150g、振動数50H、動歪1%にて30℃で測定した。
(ロ)操縦安定性
テストコースにて、実車走行を行い、駆動性、制動性、ハンドル応答性、操蛇時のコントロール性を総合評価し、操縦安定性の評価とした。比較例1を100とした指数で示した。数値が大なる程結果が良好である。
(ハ)高速耐久性
JIS D4230に基づき故障までドラムにて高速耐久試験を行った。比較例1を100とした指数で示した。数値が大なる程結果が良好である。
(ニ)硬度(Hd)
JIS K6301(スプリング式A型)に準じて求めた。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明の空気入りタイヤにおいては、キャップ・ベース構造としたトレッドのベース用ゴム組成物に、所定量以上のSBRを使用し、かつシリカと特定のカーボンブラックとシランカップリング剤とを所定量含め、加硫ゴム物性(E’,Hd)を特定し、さらにキャップゴムのポリマー分のスチレン含量を所定量以上としたことにより、超高性能領域のタイヤに要求される高速耐久性と操縦安定性の両立を実現することができた。
また、使用するシリカのN2 SA値を220〜300m2/gとすると、さらに一段と高速耐久性と操縦安定性の両立を図ることができる。
Claims (2)
- トレッドゴムがトレッド表面部のキャップゴムとベルトコーティングゴムに接する部分のベースゴムの2層構造よりなる空気入りタイヤにおいて、
前記ベースゴムが、少なくとも70重量部のスチレン−ブタジエンゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカとカーボンブラックとを合わせて40〜100重量部を含み、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの割合がが20〜80重量%で、かつシランカップリング剤をシリカ量の5〜20重量%含んでいるゴム組成物よりなり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が50〜150m2/g、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が100〜200cc/100gであり、DBPとN2SAの関係が次式、DBP>−N2SA+230を満たし、
さらに加硫後のベースゴム組成物の動的貯蔵弾性率(E’)が120×106dyn/cm2 以上、硬度(Hd)が65以上であり、
前記キャップゴムが、ポリマー分のスチレン含量が28重量%以上であるゴム組成物からなことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記シリカのN2SAが220〜300m2/gである請求項1記載の空気入りタイヤ。
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