JP3551018B2 - 紫外線吸収樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイオノマー樹脂を用いた、透明でかつ紫外線吸収能に優れる紫外線吸収樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチック成形品は、食品・飲料・トイレタリー用品・化粧品などの容器に代表される包装材料を初めとして、機械材料、電気・電子材料、光学材料、建装材料など、広い分野で使用されている。
【0003】
プラスチック成形品は、主としてC,H,Oの結合から樹脂からなり、紫外線で照射されると、紫外線は波長領域100〜400nmの電磁波を有しているので、この領域の光のエネルギーは、樹脂のC,H,Oの結合エネルギー(70〜110kcal/mol)と同等のエネルギーを有するため、プラスチック成形品の結合を崩壊し、樹脂の劣化、変色、機械強度の低下を伴う恐れがある。
一方、プラスチック成形品だけでなく、包装材料に充填する内容物、特にトイレタリーや化粧品などは、紫外線を照射することにより内容物の変色、変質、薬剤の分解を伴う恐れがある。
【0004】
アイオノマーと呼ばれる樹脂は、透明で接着性を有するため、フィルムなどの成形品にして良く使われるが、アイオノマー樹脂においても、上記問題点を抱えている。
【0005】
このような問題点を解決するため、アイオノマー樹脂などプラスチック成形品には紫外線吸収剤を配合することが行われる。
一般に紫外線吸収材料としてよく使用されるのが有機系紫外線吸収材料であり、その代表的なものとして、フェニルサリチレート、2−ヒドロキシ−4メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−5メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。有機系紫外線吸収材料はプラスチック成形品に練り込むことで、透明かつ紫外線吸収能を付与することが可能である。
しかしながら、有機系紫外線吸収材料は、その紫外線吸収機構が原因で成形品を着色してしまうという問題点がある。プラスチック成形品においては、この着色の問題は外観不良を伴うもであり、できるだけ避けたいところである。
【0006】
そこで、これらの有機紫外線吸収材料に変わって無機系の紫外線吸収材料を使用するケースが増えてきた。
これらの代表的なものとしては酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムなどの無機化合物が挙げられる。
【0007】
しかしながら、無機化合物の表面張力はプラスチックのものより小さく、本来は無機化合物とプラスチックの相互作用は低いため、プラスチックを可塑化・混練時に無機化合物微粒子を添加すると、以下の問題が生じてくる。
【0008】
一般に、無機化合物の粒径は数nmオーダーであり(これを1次粒子と呼ぶことにする)、そのサイズは可視光の波長以下である。この無機化合物を1次粒子の状態でプラスチック中に分散させれば、そのプラスチック成形品の透明性を低下させる問題は生じない。
しかしながら、このような無機化合物は、通常1次粒子が凝集した2次粒子の状態でプラスチックに添加され、溶融混練されている。
また、プラスチックを可塑化・混練時に無機化合物粒子を添加すると、混練中に粒子間の相互作用でプラスチック中での無機化合物粒子の分散性が低下し、1次粒子もしくは2次粒子の凝集が起き、分散粒子径が数μmから数十μmオーダーの2次粒子が生成する。
プラスチック中に分散している無機化合物の粒径がμmオーダーになると、可視光が無機化合物により散乱し、その結果、プラスチック成形品の透明性を著しく低下させる問題が生じる。
また、2次凝集した粒子が分散されていることは、無機化合物添加の効果が出る添加量よりも多くの無機化合物を添加していることを意味し、結果としてコストがかかってしまう。
【0009】
無機化合物の中でも、金属酸化物、中でも酸化亜鉛はその優れた紫外線吸収能力を有することから、紫外線吸収剤として様々なプラスチックに練り込まれて使われているが、酸化亜鉛も同様に、アイオノマー樹脂との溶融混練を行うことで2次凝集が起こり、その結果、成形品の透明性を低下させる。
【0010】
紫外線吸収剤として金属酸化物、特に酸化亜鉛を用いて、この金属酸化物がnmオーダーで分散した、透明で紫外線吸収能力を有するアイオノマー樹脂組成物を要望されているという課題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記の実状を考慮したものであり、
アイオノマー樹脂に、紫外線吸収剤である金属酸化物を配合し、透明でかつ紫外線吸収能に優れた紫外線吸収樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いて上記課題を達成するために、特許請求の範囲の各請求項を、以下のようなものとしたものである。
【0013】
請求項1においては、アイオノマー樹脂に粒子状の金属酸化物を配合してなることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物において、粒子状の金属酸化物を縮小させて、かつ該縮小して残った金属酸化物の含有量がアイオノマー樹脂100重量部に対し0.2〜2重量部であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物としたものである。
【0014】
また請求項2においては、請求項1に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、縮小した金属酸化物の分散粒子径が400nm以下であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物としたものである。
【0015】
また請求項3においては、請求項1又は2の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、アイオノマー樹脂はエチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなり、該エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体中のα、β不飽和カルボン酸がアクリル酸または/およびメタクリル酸であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物としたものである。
【0016】
また請求項4においては、請求項1乃至3の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、アイオノマー樹脂はエチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなり、該エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体中のα、β不飽和カルボン酸含有量が1wt%〜20wt%であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物としたものである。
【0017】
また請求項5においては、請求項1乃至4の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、金属酸化物が酸化亜鉛であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物としたものである。
【0018】
また請求項6においては、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなるアイオノマー樹脂と粒子状の金属酸化物とを混練し、アイオノマー樹脂の溶融状態下で、該アイオノマー樹脂の不飽和カルボン酸と前記粒子状の金属酸化物の表面とを反応させることにより、金属イオンが発生して前記エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸の一部または全てをイオン架橋させ、同時に粒子状の金属酸化物を縮小させて、縮小した金属酸化物の含有量が、アイオノマー樹脂100重量部に対し0 .2〜2重量部にしたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としたものである。
【0020】
また請求項7においては、請求項6に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、縮小した金属酸化物の分散粒子径を400nm以下にしたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としたものである。
【0021】
また請求項8においては、請求項6又は7の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなるアイオノマー樹脂中のα、β不飽和カルボン酸としてアクリル酸または/およびメタクリル酸を使用したことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としたものである。
【0022】
また請求項9においては、請求項6乃至8の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなるアイオノマー樹脂中のα、β不飽和カルボン酸の含有量が1wt%〜20wt%にしたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としたものである。
【0023】
また請求項10においては、請求項6又は7の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成
物の製造方法において、金属酸化物として酸化亜鉛を使用したことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としたものである。
【0024】
また請求項11においては、請求項6又は7又は10の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体と粒子状の金属酸化物とを混練するにあたり、混練させる粒子状の金属酸化物の粒子径が平均で10nmから40nmの粒子を用いたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としたものである。
【0025】
アイオノマー樹脂は、一般に、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のように、酸成分を共重合させている樹脂に、酸化亜鉛のような両性化合物を添加し溶融混練を行うと、酸成分と酸化亜鉛とが反応し、亜鉛イオンを生成する。この時、これらの亜鉛イオンはアクリル酸もしくはメタクリル酸のカルボキシル基でイオン結合を形成し、結果的にはエチレン−アクリル酸共重合体、あるいはエチレン−メタクリル酸共重合体の高分子間をイオン架橋した構造を有する。
本発明では、金属イオンでカルボキシル基とイオン結合を形成してないエチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体エチレン−アクリル酸共重合体をも、アイオノマー樹脂と見做すことにする。
【0026】
上述したように、酸化亜鉛をポリオレフィン樹脂のような酸成分を含まない樹脂と溶融混練を行った場合、プラスチック中に無機化合物が粒径数十μmオーダーので分散し、紫外線吸収能を有するが透明性に劣る樹脂組成物が得られる。
【0027】
一方、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体中に、これらの樹脂中に含まれるカルボキシル基の一部あるいは全部をイオン架橋するだけの酸化亜鉛を添加し、溶融混練を行うことで完全に酸化亜鉛をイオン化させることが可能であり、透明性が高いアイオノマー樹脂を得ることができる。このことは、混練中に酸化亜鉛が亜鉛イオンへの反応が起きることで、可視光を散乱させ透明性を阻害する要因となる2次粒子が徐々にその粒径を小さくしてnμmオーダーになり、もとの粒径が小さいものは消失するものも出てくる。
【0028】
酸化亜鉛の亜鉛イオンへの反応(酸化亜鉛粒子径の縮小、消失)の過程は以下のように考えられる。酸共重合物と酸化亜鉛を混練した直後は、酸共重合物中に分散する酸化亜鉛のnmオーダー(1次粒子)〜数十μmオーダー(2次粒子)の粒径分布が存在する。混練が進むと、これらの酸化亜鉛粒子の表面から亜鉛イオン化起こり、粒径が小さいものほど早く粒子が消失する。また、粒径が大きいものも、混練時間が長くなるにつれてその粒径が小さくなり、やがては消失するようになる。このような過程を経ることによりに、酸共重合物と酸化亜鉛を溶融混練することにより得られたアイオノマーは、高い透明性を有する。ただし、これらのアイオノマーは、酸化亜鉛が完全にイオン化しているため、高い透明性を有するが紫外線領域の光を吸収することができなくなる。
【0029】
本発明の透明紫外線吸収樹脂組成物は、このアイオノマーの製法において、酸化亜鉛が亜鉛イオンになることで、その分散粒子径が縮小・消失していく機構を利用したものである。
そして、縮小されてnmオーダーの粒径の金属酸化物(酸化亜鉛)を残すようにしたものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態につき説明する。
アイオノマー樹脂の骨格となるエチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体は、ランダム共重合、ブロック共重合、あるいはグラフト重合などの手法を利用して酸成分を共重合させた樹脂が好ましく、主にエチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−メタクリル酸共重合物などのモノカルボン酸類を共重合させたものが特に好ましいが、ポリプロピレンー無水マレイン酸グラフト共重合物、ポリエチレン−無水マレイン酸グラフト共重合物、ポリエチレン−アクリル酸エステルー無水マレイン酸三元共重合物などのジカルボン酸類を共重合させたもの、トリカルボン酸以上の酸成分を共重合させたもの、カルボキシル基以外の酸(フェノール系水酸基やスルホン酸基など)を共重合させたものでも構わない。
【0031】
無機系紫外線吸収材料である金属酸化物としては、その金属酸化物自体に紫外線吸収能を有するだけでなく、酸共重合物と溶融混練を行うことで金属イオン化するものが好ましい。実際のところ、その紫外線吸収領域の広さや、酸共重合物との混練によりイオン化する酸化亜鉛が好ましく、以下金属酸化物として酸化亜鉛を使用することで説明する。
【0032】
上述したエチレン−α、β不飽和カルボン酸と酸化亜鉛とを溶融混練を行う場合、酸化亜鉛が完全にイオン化してしまうと紫外線領域の光を吸収しなくなるため、エチレン−α、β不飽和カルボン酸に添加する酸化亜鉛の量と反応時間をコントロールする必要がある。
そこで、この酸化亜鉛の添加量は、エチレン−α、β不飽和カルボン酸と酸化亜鉛を溶融混練することによってアイオノマー樹脂が得られる際に、エチレン−α、β不飽和カルボン酸中のカルボキシル基の一部あるいはすべてが亜鉛イオンによりイオン架橋され、さらに、イオン化していない酸化亜鉛がアイオノマー樹脂中に分散され、その酸化亜鉛の含有量が、アイオノマー樹脂100重量部に対し0.2〜2重量部になるように決定するのが好ましい。
酸化亜鉛含有量が0.2重量部を下回ると、紫外線吸収能に劣る可能性があり、また、2重量部を越えるとイオン化していない酸化亜鉛の分散粒子径がまだ大きく、透明性を阻害する可能性があるからである。さらに好ましくは、アイオノマー樹脂100重量部に対し酸化亜鉛が0.5〜1重量部である。
【0033】
亜鉛イオン(金属イオン)との反応生成物であるアイオノマー中に、亜鉛イオン化せずに残って分散している酸化亜鉛の最大分散粒子径は、可視光の最低波長である400nm以下が好ましい。酸化亜鉛の分散粒子径が400nm以上では、可視光を散乱させ、プラスチック成形品の透明性を著しく低下させる。
【0034】
アイオノマー樹脂に含まれる酸成分の量は1wt%〜20wt%が好ましい。1wt%以下であると、アイオノマー樹脂中に上記範囲で紫外線吸収材料である金属酸化物を添加した際に、短時間で酸成分が完全に中和してしまい、金属酸化物の分散径を小さくさせることが困難である。
また、20wt%よりも多いと、上記範囲で金属酸化物を添加した際に、かなりの量の金属酸化物を添加する必要があり、コスト的に問題が生じること、さらに、金属酸化物の分散粒子径を小さくさせるための混練時間に長時間要し、樹脂の劣化や加工性の低下を伴う可能性がある。
【0035】
エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基を亜鉛イオンでイオン架橋する際、エチレン−α、β不飽和カルボン酸中に含まれるカルボキシル基の20%から100%が亜鉛イオンにより架橋されているほうが良い。
20%を下回ると、即ち酸化亜鉛を亜鉛イオンにしてイオン化反応に使われる量が少ないことを意味し、イオン化していない酸化亜鉛の2次粒子が大きいままであり、得られた組成物の透明性を阻害する可能性がある。
また、この問題を避けるため、酸化亜鉛の添加量を抑えると紫外線吸収効果が得られなくなる可能性がある。
【0036】
エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体に添加する酸化亜鉛は、その1次粒子の平均粒径が小さければ小さいほど、アイオノマー樹脂中に分散しているイオン化していない酸化亜鉛の分散粒子径を小さくすることが可能である。
1次粒子の平均粒子は10nmから40nmが好ましい。また、これらの酸化亜鉛は界面活性剤などで表面処理されていれば、混練時における酸化亜鉛の分散性を向上させることが可能であるため、特に好ましいが、これらの表面処理の種類は、特に制限されるものではなく、分散性を向上させることが可能な処理法であればなんでも構わない。また、表面処理をしていない酸化亜鉛でも、もちろん使用は可能である。
【0037】
このような条件で、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体と紫外線吸収材料である金属酸化物を溶融混練することで、透明性を有しながらも、紫外線吸収能に優れる紫外線吸収樹脂組成物を得ることが可能である。
【0038】
紫外線吸収樹脂組成物の製造方法としては、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体と所定量の紫外線吸収材料とを溶融混練することによって行われる。これらの組成物を溶融混練行う際には、単軸押出機、2軸押出機、あるいはブラベンダータイプの混練機など、様々な混練機を使用することが可能である。
また、紫外線吸収材料である酸化亜鉛の一部を亜鉛イオンにしてカルボニル基と反応させることでアイオノマー樹脂を生成させ、残りの酸化亜鉛を分散粒子径400nm以下、含有量0.2〜2重量部で分散させる必要があるため、混練温度および混練時間は、これらの条件を満たす条件であれば特に制限はないが、反応温度としては280℃以上、反応時間で10分以上が好ましい。
【0039】
【実施例】
以下に実施例、比較例およびこれらの結果の考察を示して本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限られるものではない。
〈実施例1〉
エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体としてエチレン−メタクリル酸共重合体(以下,EMAAと記す)中に紫外線吸収材料である金属酸化物として酸化亜鉛を添加して、2軸押出機(設定温度280℃)で溶融混練を行うことにより透明な樹脂組成物を作成できた。この時、メタクリル酸(以下,MAAと記す)成分の含有量は11wt%であり、酸化亜鉛の添加量(配合量)は、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し3.0重量部である。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、紫外線吸収能を光線透過度測定器で光線透過度を測定することにより判定し、酸化亜鉛の分散粒子径(最大粒径)を走査型電子顕微鏡で測定し、透明性は目視で評価した。
また、アイオノマー樹脂中に含まれる酸化亜鉛の含有量は、EPMAにより測定した。その結果から、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体中に含まれるカルボキシル基全体に対するイオン架橋に要したカルボキシル基の量の割合を中和度(イオン架橋%)を計算した。
この結果を表1の実施例1の項に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
〈実施例2〉
酸化亜鉛の添加量(配合量)を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し3.5重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の実施例2の項に示す。
【0042】
〈実施例3〉
酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し4.5重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の実施例3の項に示す。
【0043】
〈実施例4〉
MAA含有量を9wt%にし、酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し2.8重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の実施例4の項に示す。
【0044】
〈実施例5〉
MAA含有量を4wt%にし、酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し1.4重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の実施例5の項に示す。
【0045】
〈実施例6〉
エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体をエチレン−アクリル酸共重合体(以下、EAAと記す)に、アクリル酸(以下、AAと記す)含有量を10wt%に、酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し4.0重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の実施例6の項に示す。
【0046】
〈実施例7〉
樹脂中に含まれるAA含有量を5wt%に、紫外線吸収材料の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し1.4重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の実施例7の項に示す。
【0047】
〈比較例1〉
エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体をEMAA(MAA含有量25wt%)に、酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し12.0重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の比較例1の項に示す。
【0048】
〈比較例2〉
MAA含有量を0.5wt%にし、酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し1.1重量部(アイオノマー樹脂A100重量部に対し1.0重量部)にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の比較例2の項に示す。
【0049】
〈比較例3〉
MAA含有量を11wt%にし、酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し6.0重量部にした以外は実施例1と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の比較例3の項に示す。
【0050】
〈比較例4〉
酸化亜鉛の添加量を、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体100重量部に対し1.3重量部にした以外は比較例3と同じである。
得られた樹脂組成物を200℃で熱プレスすることにより、厚さ0.5mmのプレートを作成した。
このサンプルを使用して、実施例1と同様にして測定し、この結果を表1の比較例4の項に示す。
【0051】
〈考察〉
これらの結果より以下のことが言える。
実施例1〜7の結果より、アイオノマー樹脂に、前記金属イオンからなる無機系紫外線吸収剤である金属酸化物(酸化亜鉛)を配合すること、さらに残った金属酸化物の含有量を0.2から2重量部、また残った金属酸化物の分散粒子径を400nm以下に調整することで、透明かつ紫外線吸収能に優れる紫外線吸収樹脂組成物が得られることが分かる。
また、比較例1の結果から、樹脂に含まれる酸成分の含有量が20wt%を超えると、酸化亜鉛の添加量が極端に多くなり、同一の混練条件では、酸化亜鉛の分散粒子径を小さくさせるのが困難であるため、紫外線吸収能は有するが透明性におとることが分かる。
比較例2の結果から、今度は逆に酸成分の含有量が少なすぎるため、混練後すぐにカルボキシル基がイオン架橋され、酸化亜鉛の粒径が大きい状態で反応が終了することで、その結果、透明性に劣ることが分かる。
比較例3では、添加する酸化亜鉛の量が多すぎるため、過剰の酸化亜鉛が粒子が大きい状態で残存してしまい、透明性を低下させることが分かる。
比較例4では、添加する酸化亜鉛の量が少なすぎるため、透明性は良好であるが、酸化亜鉛が全てイオン化してしまい、紫外線吸収能がなくなることが分かる。
【0052】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
透明でかつ紫外線吸収能に優れるアイオノマー樹脂からなる紫外線吸収樹脂組成物およびその製造方法とすることができた。
従って本発明は、食品・飲料・トイレタリー用品・化粧品などの包装材料の成形品を主とし、機械材料、電気・電子材料、光学材料、建装材料など成形品として、広い分野において、優れた実用上の効果を発揮する。
Claims (11)
- アイオノマー樹脂に粒子状の金属酸化物を配合してなることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物において、粒子状の金属酸化物を縮小させて、かつ該縮小して残った金属酸化物の含有量がアイオノマー樹脂100 重量部に対し0.2〜2重量部であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物。
- 請求項1に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、縮小した金属酸化物の分散粒子径が400nm以下であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物。
- 請求項1又は2の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、アイオノマー樹脂はエチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなり、該エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体中のα、β不飽和カルボン酸がアクリル酸または/およびメタクリル酸であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、アイオノマー樹脂はエチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなり、該エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体中のα、β不飽和カルボン酸含有量が1wt%〜20wt%であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物。
- 請求項1乃至4の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物において、金属酸化物が酸化亜鉛であることを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物。
- エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなるアイオノマー樹脂と粒子状の金属酸化物とを混練し、アイオノマー樹脂の溶融状態下で、該アイオノマー樹脂の不飽和カルボン酸と前記粒子状の金属酸化物の表面とを反応させることにより、金属イオンが発生して前記エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸の一部または全てをイオン架橋させ、同時に粒子状の金属酸化物を縮小させてアイオノマー樹脂中に残し、縮小した金属酸化物の含有量が、アイオノマー樹脂100重量部に対し0 .2〜2重量部にしたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法。
- 請求項6に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、縮小した金属酸化物の分散粒子径を400nm以下にしたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法。
- 請求項6又は7の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなるアイオノマー樹脂中のα、β不飽和カルボン酸としてアクリル酸または/およびメタクリル酸を使用したことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法。
- 請求項6乃至8の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体からなるアイオノマー樹脂中のα、β不飽和カルボン酸の含有量が1wt%〜20wt%にしたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法。
- 請求項6又は7の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、金属酸化物として酸化亜鉛を使用したことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法。
- 請求項6又は7又は10の何れか1項に記載の紫外線吸収樹脂組成物の製造方法において、エチレン−α、β不飽和カルボン酸共重合体と粒子状の金属酸化物とを混練するにあたり、混練させる粒子状の金属酸化物の粒子径が平均で10nmから40nmの粒子を用いたことを特徴とする紫外線吸収樹脂組成物の製造方法。
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