JP3548560B2 - 熱電モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体等の発熱体の冷却等に好適に用いることのできる熱電モジュールに関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、ペルチェ効果を利用した熱電素子は、電流を流すことにより一端が発熱するとともに他端が吸熱するため、冷却用の熱電素子として用いられている。特に、熱電モジュールとしてレーザーダイオードの温度制御、小型で構造が簡単でありフロンレスの冷却装置、冷蔵庫、恒温槽、光検出素子、半導体製造装置等の電子冷却素子、レーザーダイオードの温度調節等への幅広い利用が期待されている。
【0003】
この室温付近で使用される冷却用熱電モジュールに使用される熱電素子用材料は、冷却特性が優れるという観点からA2B3型結晶(AはBi及び/又はSb、BはTe及び/又はSe)からなる熱電素子が一般的に用いられている。
【0004】
さらに、熱電モジュールにはP型及びN型の熱電素子を対にしたものを複数直列に電気的接続を行い冷却モジュールとして使用される。P型の熱電素子にはBi2Te3とSb2Te3(テルル化アンチモン)との固溶体が、N型の熱電素子にはBi2Te3とBi2Se3(セレン化ビスマス)との固溶体が特に優れた性能を示すことから、このA2B3型結晶(AはBi及び/又はSb、BはTe及び/又はSe)が熱電素子として広く用いられている。
【0005】
このA2B3型結晶からなる熱電素子は古くよりブリッジマン法、引き上げ法、ゾーンメルト法など公知の単結晶製造技術によって結晶粒子径の大きいインゴットあるいは単結晶からなる溶製材料として作製され、これをスライスし、電極に接合するためのメッキを施した後、0.5〜3mmのチップ形状にダイシングしたものが用いられてきた。
【0006】
しかし、熱電モジュールに溶製材料を熱電素子として用いた場合は、モジュール性能は優れるものの、加工歩留まりが低く、強度が低いために信頼性が低いという問題があった。
【0007】
一方、一度溶融して冷却して得られたインゴットを粉砕、分級した後にホットプレス等で焼結させた焼結材料は、加工歩留まりが高く、信頼性は優れるもののモジュール性能が溶製材料に比べて低いという問題があった。
【0008】
そこで、大型の溶製材料からなるN型熱電素子1個と、小型の焼結材料からなるP型熱電素子を複数個並べ、N型熱電素子とP型熱電素子を並列に接続することで、N型溶製材料の加工歩留まりの低下を抑え、且つモジュール性能の低下を抑制した熱電モジュールが特開平11−26818号公報に提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−26818号公報に記載の熱電モジュールは、溶製材料と焼結材料とを組合せて歩留りと特性の改善を同時に図るものであるが、回路が並列であるため、電流値が大きくなり、発熱量が増えて冷却効率が落ちる、或いは大電流用電源等の設備が必要となるという問題があった。
【0010】
このように、溶製材料と焼結材料とを組み合わせた場合、溶製材料を用いた場合と同等の特性を有し、焼結材料を用いた場合の加工歩留まり及び信頼性、生産性を有する熱電モジュールはこれまでに得られていなかった。
【0011】
従って、本発明は、熱電特性と加工歩留まり及び信頼性、生産性とを両立した熱電モジュールを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、結晶成長方向と垂直な断面積が100mm2以下の溶製材料をN型熱電素子として用いることにより、加工歩留りを高めることができ、その結果、N型熱電素子及びP型熱電素子の素子形状が実質的に等しく、N型熱電素子とP型熱電素子とが対になって配列された熱電モジュールを低コストで実現でき、しかも熱電素子の粒径を制御することによって、溶製材料のみで作製したモジュールと同等の性能が発揮できるという新規な知見に基づく。
【0013】
特に、異方性が高い溶製材料からなるN型熱電素子と等方性が高い焼結材料からなるP型熱電素子を組み合わせて熱電モジュールを作製する際に、両者の熱変形量が異なるため、高さバラツキを小さくすることによって発生する応力を特定の熱電素子に集中させることを防止し、熱電素子の破壊を防いで熱電モジュールの信頼性を大幅に高めることができるという新規な知見に基づく。
【0014】
すなわち、本発明の熱電モジュールは、支持基板と、該支持基板上に複数配列された熱電素子と、該複数の熱電素子間を電気的に接続する配線導体と、前記支持基板上に設けられ、該配線導体と電気的に連結された外部接続端子とを具備し、前記熱電素子が、結晶成長方向と垂直な断面積が100mm2以下の溶製材料から所定の長さに切断して得られた平均結晶粒径が200μm以上のN型熱電素子と、平均結晶粒径が100μm以下の焼結体からなるP型熱電素子とで構成され、かつN型熱電素子及びP型熱電素子の素子形状が実質的に等しく、N型熱電素子とP型熱電素子とが対になって配列されていることを特徴とする。
【0015】
特に、前記熱電素子が、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含むことが好ましい。この組成系を用いることで熱電性能のより高いN型熱電素子材料及びP型熱電素子材料を得ることができる。
【0016】
また、前記溶製材料の断面形状及び寸法が、前記N型熱電素子の断面形状及び寸法と略同一であることが望ましい。つまり、溶製材料の断面の形状及びその寸法を前記支持基板に搭載するN型熱電素子の断面の形状及びその寸法と同一又はほぼ同一にすることにより、溶製材料を一定の長さに切断することで複数のN型熱電素子を容易に作製できるとともに、加工数を減らすことができるため、加工による欠陥生成を大幅に低減でき、加工歩留まりをさらに高めるとともに、熱電素子の製造コストを低減することができる。
【0017】
前記P型熱電素子を構成する焼結体の平均結晶粒径が5μm以下であることが望ましい。このような粒径のP型熱電素子を用いることにより、P型熱電素子を構成する焼結体の強度、剛性をより高めることが可能となり、その結果、高い熱電性能を有する熱電モジュールの信頼性をより高めることができる。
【0018】
前記熱電素子において、前記支持基板に搭載される複数の熱電素子のうち、最大高さの熱電素子と最小高さの熱電素子との高さの差20μm以下であることが好ましい。これによって、熱特性の異なる溶製材料と焼結材料とを組み合わせた場合でも、高さばらつきを小さくすることによって、発生する応力が特定の熱電素子に集中して破壊に至るのを防止し、信頼性を大幅に高めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、支持基板と、該支持基板上に複数配列された熱電素子と、該複数の熱電素子間を電気的に接続する配線導体と、前記支持基板上に設けられ、該配線導体と電気的に連結された外部接続端子とを具備した熱電モジュールに関するものである。
【0020】
例えば、図1に示したように、熱電モジュールは、支持基板2、6の表面に、それぞれ配線導体3a、3bが形成され、N型熱電素子5aとP型熱電素子5bからなる複数の熱電素子5が挟持されるように、半田で接合されている。
【0021】
これらのN型熱電素子5a及びP型熱電素子5bは、電気的に直列になるように配線導体3a、3bで接続され、さらに外部接続端子4に接続しており、半田8によって外部接続端子4に固定された外部配線7を通じて、外部から熱電素子5に電力が供給される。
【0022】
また、配線導体3には銅電極が用いられ、熱電素子5との半田接合を強固なものとするため、熱電素子5と半田の濡れ性を改善し、半田成分の拡散を防止するため、熱電素子5の接続面にはNiメッキ等によって電極が形成されていることがある。
【0023】
本発明によれば、N型熱電素子5aは、結晶成長方向と垂直な断面積が100mm2以下の溶製材料であることが重要である。溶製材料、特に一方向性凝固材料が熱電特性に優れており、焼結材料と組み合わせて冷却性能の高い熱電モジュールを作製することができる。
【0024】
一方向性凝固材料の作製方法としては、ブリッジマン法、引き上げ(CZ)法、ゾーンメルト(FZ)法等が代表的な製造方法として例示できる。
【0025】
本発明によれば、一方向凝固材材料として作製された結晶であれば特に製法は限定されず、この一方向凝固単結晶の結晶成長垂直な断面積が100mm2以下であることが重要である。100mm2を超える大きさの結晶では熱電モジュール用の結晶を切断する際に欠けが大きくなり、加工歩留まりが大幅に低下する。
【0026】
その原因として、大きな断面積を持つ結晶では内部の歪み、応力が大きくなるため加工時に欠けが発生しやすいと考えられ、特に75mm2以下、更には50mm2以下、より好適には10mm2以下が望ましく、さらには熱電素子5の断面形状と同一の断面形状に作製された結晶体であることが好ましい。
【0027】
本発明によれば、一方向凝固法により作製されたN型熱電素子5aを構成する結晶体の平均結晶粒径は200μm以上であることが重要である。200μmに満たないと、熱電特性が低下する。この平均結晶粒径は、特に500μm以上が好ましく、さらには単結晶が良い。ここで単結晶とは劈開面が層状に重なった結晶も含む。
【0028】
本発明の一方向凝固結晶を得る方法として、例えば、溶融させた融液中に得たい結晶のサイズに空隙があるカーボン製の容器を挿入し、融液を充分に含浸させた後、容器をゆっくりと移動させ、結晶を得る方法などがあり、この方法であれば結晶のサイズを任意に変更でき、同時に大量の柱状結晶が製造できるため好ましい。
【0029】
また、P型熱電素子5bは焼結法で作製されている焼結体を用いることが重要である。ここでの焼結体とは、熱電半導体合金を粉砕し、必要に応じて分級、熱処理を行い、ホットプレス(HP)法、放電プラズマ(SPS)法などにより高密度に緻密化させ得られた焼結体を指すが、本発明によれば平均結晶粒径5μm以下の焼結体を作製する方法としては、SPS法で作製することが好ましい。
【0030】
本発明によれば、このP型熱電素子5bを構成する焼結体の平均結晶粒径は100μm以下であることが重要である。平均結晶粒径が100μm超えると剛性が低くなり、信頼性が低下する。平均結晶粒径は小さいほど信頼性を高める上で重要であり、好ましくは50μm以下、特には5μm以下が信頼性を高める上で好ましい。特に、平均結晶粒径を5μm以下にすることによって、強度及び剛性を大幅に高めること及び熱伝導率を低下することが同時に可能であるため、冷却性能と信頼性とをさらに顕著に向上することが可能となる。
【0031】
ここでの信頼性試験は熱電モジュールを繰り返し使用する際の信頼性試験を指し、例えば、−45℃から85℃の温度サイクルを繰り返し印加したときの抵抗変化の上昇などから判断する。信頼性が向上できる要因として粒径の小さいP型熱電素子5b自体の剛性が高いために温度サイクル等で発生する熱的な応力に対する歪みを低減できるためと考えられる。
【0032】
また、本発明によれば、熱電素子5が、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含むことを特徴とする。このような組成の合金を用いることで高い熱電特性が発揮される。
【0033】
本発明によれば、N型熱電素子5aを構成する溶製材料は、N型熱電素子の断面形状と同一の断面形状に作製された柱状の結晶体であることが好ましい。
【0034】
このような形状であれば、柱状の結晶体を所望の長さにスライスするだけで熱電素子が得られるため、側面方向の切断が不要になり、切断する面積を低減できるため、クラックや欠け等の欠陥の発生を低減でき、加工歩留まりを焼結材料と同等以上に改善することが可能となる。さらには加工時の原料歩留まりを高めることができさらなるコスト低減が可能となる。
【0035】
また、N型熱電素子5aは異方性が高いのに対してP型熱電素子5bは等方性が高いため、熱的特性が異なり、熱変形量に差が生じるため、N型熱電素子5a及びP型熱電素子5bの熱変形量差を考慮してそれぞれの高さに設定し、且つそれぞれの高さばらつきを抑制するのが良いものの、それぞれの高さを変え、且つそのばらつきを抑制するのは工程管理上困難な面があるため、代わりに複数の熱電素子5全体の高さばらつきを制御することで同様の効果を得ることができる。
【0036】
即ち、熱電モジュールに搭載される熱電素子5のうち、最大の高さを有する熱電素子と最小の高さを有する熱電素子との高さの差を20μm以下、特に10μm以下、更には5μm以下と小さくすることで、温度サイクル時の熱ひずみの応力集中が抑えられ、熱電素子5の破壊を容易に防ぎ、さらに信頼性を高めることができる。なお、ここで最大と最小の高さを有する熱電素子の種類がN型及びP型と異なっても良いし、同じでも良い。
【0037】
次に、本発明の熱電モジュールの作製方法に関して説明する。まず、一方向凝固法で作製され、結晶成長方向と垂直な面の断面積が100mm2以下、粒径が200μm以上のN型熱電半導体インゴットと焼結法で作製された粒径が100μm以下の焼結体P型熱電半導体インゴットを準備する。
【0038】
N型インゴットは長さ50mm以上が、P型は断面積が100mm2以上あるものが生産性を高める上で好ましい。これらインゴットをまず熱電モジュールの電流の流れる向き、すなわち熱電モジュールの厚み方向と同一な方向の熱電素子の厚みに切断する。
【0039】
切断の方向はN型の場合、結晶成長方向と垂直な面で、P型の場合、焼結時の加圧方向と平行な向きに切断する。この向きで切断すると熱電モジュールの電流が流れる方向、即ち切断時の厚さ方向がより比抵抗の小さいc面結晶配向方向になるため、この方向の熱電特性が優れるためである。
【0040】
また、N型溶製材料に熱電素子の幅と同じ形状の柱状結晶を用いるときは、めっきレジスト液を柱状素子に塗布して乾燥した後、厚み形状に切断する。切断後、厚みばらつきを少なくするために必要に応じて平面研削加工を施すことが望ましい。この厚みばらつきは熱電モジュールの素子と電極間の半田接合部の密着状態に影響を及ぼし、前述したように信頼性にも影響を及ぼすため、厚みばらつきは最大と最小の差で20μm以下が望ましい。
【0041】
次にこの切断されたウェハーまたはチップにNiめっきを施す。Niめっきは熱電モジュールの電極部と半田接合させる目的と素子と主に電極材料に使用されるCuとの反応防止層として必要である。
【0042】
このNiめっきは公知の技術を用いることで良いが、素子の下地を酸あるいはアルカリ等の薬液で化学エッチングしたのち、密着性の高いNi−B系メッキやNi−P系めっきを施し、さらにはAu層をめっきあるいは蒸着で形成することがめっき強度と半田濡れ性を両立させる上で好ましい。
【0043】
また、柱状の結晶から切断したチップは、めっき後、めっきレジスト材をアルカリ等で除去する。めっきを施したウェハーは、ダイシング装置により所望の形状に切断する。加工条件は、例えば溶製材料はメタルボンドのブレードを使用し、ブレード送り速度は100mm/min前後とする条件で本発明品のN型溶製材料およびP型焼結材料は安定して高い加工歩留まりが得られる。
【0044】
例えば、加工可能な形状は装置の精度にもよるが、縦0.50mm、横0.50mmの形状に加工するのに対しても充分高い加工歩留まりが得られる。
【0045】
素子幅のばらつきは小さい方が好ましく、組立時の生産性を高める上では、形状ばらつきは±5μm以下の形状にダイシングすることが望ましい。ダイシングにより得られた素子を用いて熱電モジュールを組み立てる。
【0046】
熱電モジュールは、上下にCu電極がメタライズされている基板で素子を挟み込んだ形状で、N型とP型は縦横交互に配置され、電気的には直列に接続される。組立方法として様々あるが、代表的な方法を以下に示す。
【0047】
まず、Cu電極メタライズセラミックス基板を用意する。セラミックスは絶縁性があれば何でも良いがコスト、強度、熱伝導率の面からアルミナが好適に使用でき、特に純度96%以上のアルミナにMo−Mn法によりメタライズ面を形成し、この面にCu電極を厚膜メッキした基板がメタライズ強度、熱伝導率の面で好ましい。Cu電極は素子配列に従った分割パターン形状としなければならないが、これはレジスト処理、露光、及びエッチング等の工程を実施して得ることができる。
【0048】
この基板上に半田をスクリーン印刷等によりCu電極上に塗布する。印刷する半田量としては厚み0.1mm程度あれば充分である。使用する半田の種類は用途に応じて変わるが、代表的にはSn−Pb、鉛フリー半田としてはSn−Sb、Sn−Ag―Cu、より高温タイプとしてAu−Sn半田が好適に使用される。
【0049】
スクリーン印刷には、これらの半田を30μm程の微粒子にし、さらに10%程のフラックスと、半田接合面を清浄にし接合時の活性度を高めるための塩素0.03%程を添加して、ペースト状にして用いるのが良い。半田は印刷後に一旦乾燥機等によって乾燥させると、半田のメニスカスを滑らかなフィレット形状に保つことが可能となる。
【0050】
その後、N型、P型熱電素子をそれぞれ電極上に交互に格子状にロボットアーム等を使って配置するが、ステンレス製の格子状のジグを用いることで容易に配置できる。ステンレス材は耐熱性に優れたSUS316Lが望ましく、その表面は酸化処理しておく方が半田との濡れ防止のために役立つ。
【0051】
この格子状のジグの寸法精度は、素子寸法に対して100.5%以内、例えば、縦及び横がそれぞれ0.50mmの正方形の断面を有する熱電素子の場合、格子状ジグの隙間が縦及び横がそれぞれ0.525mm以下の寸法で作製することで素子の電極上での位置ばらつきを低減できる。
【0052】
素子配置後、基板ごとリフロー炉やホットプレートに入れ加熱し半田接合する。特に、Sn−Sb、Au−Sn半田により接合させる場合は、大気を遮断可能なチャンバー中で窒素ガスを接合部分に10L/min程度フローさせながら接合させることが、半田の濡れ性を高める上で好ましい。
【0053】
接合温度、時間は半田の種類、熱電モジュールの種類によって変化するが、温度はできるだけ低温で、また時間も短時間で行う方が半田の流れを抑制する上で重要である。片面を接合した後、もう片方の基板を張り合わせ再度加熱し、接合する。
【0054】
その後、電流を流すための外部配線を接合する。外部配線の材質は流す電流によって変化するが電流値0.1〜5Aの範囲であればφ0.3mmCu線Snめっきしたものが半田の濡れ性が良く、外部配線密着強度を高める上で好ましい。
【0055】
この外部配線の接合は、この接合中の上下基板いずれかの工程で行えばよいが、上下基板接合後、全体を再加熱して外部配線を接合することは、半田の変成を招くため好ましくない。外部配線は上下基板接合後、局所加熱して接合しても良く、この場合は赤外線や光ビーム(例えば、松下電器産業(株)製のソフトビーム装置)等を使用することでより生産性を高めることができる。
【0056】
【実施例】
N型熱電素子を作製するため、組成Bi2Te2.85Se0.15を主成分とし、SbI3を0.06質量%含む組成となる合金を作製した。その後、これを粉砕し、表1に示す大きさが異なる石英管に封入し、ブリッジマン法(B)、ゾーンメルト法(Z)及びカーボンルツボ中でカーボン製の型内で融液を引き上げながら冷却固化(結晶化)させ、インゴットを作製する引き上げ法(C)を用いて結晶体を作製した。なお、試料No.12〜14は、ブリッジマン法で上記合金インゴットを作製した後、これを粉砕して、450℃、1時間、48MPaでホットプレスにより焼結し、比較例とした。
【0057】
P型熱電素子を作製するため、Bi0.4Sb1.6Te3合金粉末を表1に示す平均粒径になるようにホットプレス法(HP)、放電プラズマ焼結法(SPS)を用いて焼成し、ウエハ状の焼結体を得た。なお、試料No.21及び22は、焼結法ではなく、引き上げ法(C)により単結晶を合成してP型熱電素子として用いた。
【0058】
上記の引き上げ法により得られた柱状のインゴットである溶製材料は、アクリル系樹脂のめっきレジスト液を塗布、乾燥させレジスト材を形成したのち、ダイシングソーで厚さ0.79〜0.81mmになるように切断した。また、これ以外の一方向凝固材料は結晶成長面と垂直な面を、焼結材料は加圧方向と平行な面を、スライサーで切断し、その後、平面研削を施した。試料は全て厚み0.79〜0.81mmとなるようにしてN型熱電変換素子を作製した。
【0059】
研削した切断面を、酸及びアルカリにて化学エッチングを施し、走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影を行い、写真上においてインターセプト法により200個の粒子の平均粒径を求めた。
【0060】
これらの熱電素子は顕微鏡にて欠けが断面積の10%以上あるものを不良素子として加工歩留まりを計算した。また、熱電素子素子の高さを測定し、全てのN型熱電素子及びP型熱電素子のうちで、最大及び最小の高さを有する熱電素子を選び出し、その差を求め、高さの差として表1に示した。
【0061】
このようにして得られた熱電素子の配線導体に搭載される面に、Niメッキ及びAuメッキを施した後、表1に示す素子数を有し、N型熱電素子及びP型熱電素子を、電気的に交互且つ直列になるように、即ち、P、N、P、Nという順になるように、Sn−Sb半田を基板電極側に印刷し、接合してモジュールを作製した。
【0062】
外部配線は同じ半田を用いて素子接合と同時に接合した。得られたモジュールは放熱側基板を27℃に冷却しながら、電流を印加して冷却側基板の温度が最低になるときの放熱側基板と冷却側基板との温度差を最大温度差(ΔT)とした。
【0063】
また、最大温度差が得られた条件にて冷却側基板に基板サイズと同じ窒化アルミ製のヒーターを載せ、ヒーターに通電しながら冷却側基板を加熱し冷却側基板と放熱側基板の温度差が無い場合のヒーター出力を最大吸熱量(Qc)とした。
【0064】
さらに、内部抵抗(R)を交流4端子法で測定したのち、−45℃から85℃の温度サイクル(各30分)を500サイクル行ったあとに再度ΔT、Rを測定し、その変化率(ΔΔT、ΔR)を求め、信頼性を評価した。結果を表1に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
本発明の試料No.1〜3、8〜11、15〜19及び23〜25は、加工の歩留りが80%以上、ΔTが70℃以上、Qcが4.5W以上、ΔΔTが2%以下、ΔRが0.8%以下であった。
【0067】
一方、N型熱電素子の断面積が100mm2を越える本発明の範囲外の試料No.4〜6は、歩留りが45%以下と低かった。
【0068】
また、N型熱電素子の平均粒径が200μmに満たない本発明の範囲外の試料No.7は、製造歩留りは90%以上と高いものの、ΔTが67℃、Qcが4Wとモジュール性能が低かった。
【0069】
さらに、N型熱電素子が焼結体である本発明の範囲外の試料試料No.12〜14は、全ての熱電素子が焼結体からなるために製造の歩留りが91%以上と高いものの、ΔTが66℃以下、Qcが3.8W以下とモジュール性能が十分ではなかった。
【0070】
さらにまた、P型熱電素子の粒径が100μmを越える本発明の範囲外の試料No.20は、信頼性が低かった。
【0071】
また、P型熱電素子が単結晶で本発明の範囲外の試料No.21及び22は、N型熱電素子もP型熱電素子も単結晶で構成されているため、モジュール性能はΔTが72℃以上、Qcが5W以上と高いものの、P型熱電素子の製造歩留りが32%以下と低く、かつΔΔTが9%、ΔRが5.1%以上と信頼性も低かった。
【0072】
【発明の効果】
本発明の熱電モジュールは、N型熱電素子、P型熱電素子のそれぞれの作製方法、形状、粒径を制御することにより、熱電性能を溶製材で作製したモジュール並みに高めるとともに、歩留まり、信頼性及び生産性を焼結体で作製したモジュール並に高めることができ、低コストで性能の高い熱電モジュールを提供することができる。
【0073】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電モジュールを示す斜視図である。
【符号の説明】
2、6、12、16、22・・・支持基板
3a、3b、13a、23a・・・配線導体
4・・・外部接続端子
5・・・熱電素子
5a、15a、25a・・・N型熱電素子
5b、15b、25b・・・P型熱電素子
7・・・外部配線
8・・・半田
Claims (5)
- 支持基板と、該支持基板上に複数配列された熱電素子と、該複数の熱電素子間を電気的に接続する配線導体と、前記支持基板上に設けられ、該配線導体と電気的に連結された外部接続端子とを具備し、前記熱電素子が、結晶成長方向と垂直な断面積が100mm2以下の溶製材料から所定の長さに切断して得られた平均結晶粒径が200μm以上のN型熱電素子と、平均結晶粒径が100μm以下の焼結体からなるP型熱電素子とで構成され、かつN型熱電素子及びP型熱電素子の素子形状が実質的に等しく、N型熱電素子とP型熱電素子とが対になって配列されていることを特徴とする熱電モジュール。
- 前記熱電素子が、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含むことを特徴とする請求項1記載の熱電モジュール。
- 前記溶製材料の断面形状及び寸法が、前記N型熱電素子の断面形状及び寸法と略同一であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電モジュール。
- 前記P型熱電素子を構成する焼結体の平均結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱電モジュール。
- 前記支持基板に搭載される複数の熱電素子のうち、最大高さの熱電素子と最小高さの熱電素子との高さの差が20μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱電モジュール。
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