JP3544733B2 - 硬化型組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は硬化型組成物に関し、特に硬化後に80℃以上の高温下に暴露された場合においても、引張応力の上昇が少なく、弾性を保持し耐久性の良好な硬化物が得られ、シーリング材として用いるのに適した硬化型組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
1分子中に2個以上のチオール基を含むポリマーは、酸化剤と混合すれば容易に硬化し、またチオール基はエポキシ基、イソシアネート基等とも容易に反応して高分子量化することから、シーリング材、塗料、接着剤に広く用いられている。特に、ポリサルファイドポリマーは、分子中にポリサルファイド結合−Sx −(x=1〜5) を含むため、防水性及び接着性に優れている。
【0003】
このようなポリサルファイドポリマーの内、特開平4−363325号に記載されているポリサルファイドポリマーとチオール基含有ポリエーテルポリマーから得られるポリサルファイドポリエーテルポリマーは、ポリサルファイドポリマーには相溶しなかった汎用の安価な可塑剤との相溶性が良好であり、かつ粘度が低いため、その添加量を減少させることができた。これらを硬化物とした後に塗料を塗布した場合、可塑剤による塗膜軟化が生じにくく、シーリング材として用いるのに好適である。
【0004】
さらに特開平4−366121号では、このポリサルファイドポリエーテルポリマーをイソシアネート化合物で硬化させることにより得られ、発泡が少なく良好な耐候性を有し、シーリング材に好適な白色系の硬化型組成物が提案されている。
【0005】
しかしながら、このようなポリサルファイドポリエーテルポリマー等のチオール基含有ポリマーは、硬化させた後に80℃以上の高温下に暴露すると、引張応力が上昇し、弾性及び伸びが低下することにより、耐久性に乏しくなるという問題点がある。
【0006】
したがって本発明の目的は、硬化後に80℃以上の高温下に暴露しても引張応力が上昇せず、弾性及び伸度を保持して耐久性の良好な硬化型組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決する手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、分子中に2個以上のチオール基を有するポリマーに、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物とともに、(i) 1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコール及び(ii) トリアルキルホスファイトからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を添加することにより得られる硬化型組成物は、硬化後80℃以上の高温下に暴露しても引張応力の上昇が少ないことを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の硬化型組成物は、(a) 分子中に2個以上のチオール基を有するポリマーと、(b) 分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、(c) (i) 1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコール及び(ii) トリアルキルホスファイトからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
[1] 分子中に2個以上のチオール基を有するポリマー
本発明に用いる分子中に2個以上のチオール基を有するポリマー(以下、単にチオール基含有ポリマーという)のポリマー骨格部分は、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリエステル、アクリル共重合体、ウレタン共重合体、ポリアセタール、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリオレフィン、ポリクロロプレン、ポリサルファイド及びこれらの共重合体の構造を有するものが好ましい。特にポリサルファイド構造を有するポリサルファイドポリマー及びポリサルファイドポリエーテルポリマーが好ましい。またチオール基の位置は、特に限定されないが、分子骨格の末端に有するのが好ましい。
【0010】
(1) ポリサルファイドポリマー
ポリサルファイドポリマーは、主鎖中に、
(イ) − (C2 H 4OCH2 OC2 H4 −Sx ) −
(但し、xは1〜5の整数である。) で表される構造単位とを含有し、
かつ末端に、
(ロ)−C2 H4 OCH2 OC2 H4 −SH で表される構造単位を有するものである。
【0011】
このようなポリサルファイドポリマーは室温で流動性を有し、数平均分子量(Mn)は、通常100〜200,000であり、好ましくは400〜50,000である。このようなポリサルファイドポリマーの好ましい例は、米国特許2,466,963号に記載されている。
【0012】
(2) ポリサルファイドポリエーテルポリマー
ポリサルファイドポリエーテルポリマーは、主鎖中に
(ハ) − (R1 O) n −(但し、R1 は炭素数2〜4のアルキレン基、nは6〜200の整数を示す。)で表されるポリエーテル部分と、
(ニ)− (C2 H4 OCH2 OC2 H4 −Sx ) −、及び
− (CH2 CH (OH) CH2 −Sx ) −
(但し、xは1〜5の整数である。) で表される構造単位とを含有し、
かつ末端に、
(ホ) −C2 H4 OCH2 OC2 H4 −SH及び/又は
−CH2 CH (OH) CH2 −SH
で表されるチオール基を有するものである。
【0013】
このポリサルファイドポリエーテルポリマー中において、(ハ) のポリエーテル部分と、(ニ)の構造単位とは任意の配列で結合していてよい。またその割合は、− (R1 O) n −成分が2〜95重量%であり、 (C2 H4 OCH2 OC2 H4 −Sx ) 成分が3〜70重量%であり、 (CH2 CH (OH) CH2 −Sx ) 成分が1〜50重量%であるのが好ましい。なお、ポリサルファイド結合Sx の含有量は、1〜60重量%であるのが好ましい。
【0014】
またポリサルファイドポリエーテルポリマーの数平均分子量(Mn)は、通常600〜200,000であり、好ましくは800〜50,000である。このようなポリサルファイドポリエーテルポリマーは、例えば特開平4−363325号に記載されているような方法により製造することができる。
【0015】
[2] 分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物
本発明に用いる分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物(以下、単にイソシアネート基含有化合物という)としては、有機ポリイソシアネート化合物及び/又は活性水素含有化合物に有機ポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタンプレポリマーが好ましい。
【0016】
有機ポリイソシアネート化合物としては、具体的にはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙けられる。
【0017】
また活性水素含有化合物としては、水酸基末端ポリエステル、多価ポリアルキレンエーテル、水酸基末端ポリウレタン、アクリル共重合体に水酸基を導入したアクリルポリオール、水酸基末端ポリブタジエン、多価ポリチオエーテル、ポリアセタール、脂肪族ポリオール、SH基を2個以上有するアルキレンチオールを包含するアルカン、アルケン及び脂肪族チオール、末端にSH基を有するポリサルファイドポリマー、芳香族、脂肪族及び複素環ジアミン等を包含するジアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
またウレタンプレポリマーの分子量は800〜20,000であり、好ましくは800〜15,000である。分子量が800未満ではイソシアネート基の反応性が高いため、組成物の貯蔵安定性が悪く、また硬化時に発砲が起こりやすい。一方、分子量が20,000を越えると貯蔵安定性が悪くなる。このようなウレタンプレポリマーは、前述の活性水素含有化合物と有機ポリイソシアネート化合物を、イソシアネート化合物過剰の条件で反応させることにより得られる。
【0019】
本発明においては、イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基と、チオール基含有化合物中のチオール基とのモル比(イソシアネート基/チオール基)が0.5〜4.0、好ましくは0.7〜3.0となるように配合する。モル比が0.5未満では組成物が十分に高分子量化せず、一方4.0を越えると硬化物が硬く脆いものとなるため、好ましくない。
【0022】
[3] 1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコール及び亜リン酸エステル化合物
1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコールとしては、シンナミルアルコール、オイゲノール、オレイルアルコール、10−ウンデセン−1−オール、リノレイルアルコール、キウリアルコール、ゲラニオール、シトロネロール等が挙げられる。オレイルアルコールとしては、新日本理化(株)製、商品名"アンジェコール"が使用できる。
【0023】
(2) トリアルキルホスファイト
亜リン酸エステル化合物として、活性の低いトリアルキルホスファイトが好ましい。亜リン酸エステル化合物の活性が高いと、チオール基含有化合物がポリサルファイド構造を有する場合には、混練してシーリング材等の主剤を作成するときに、ポリマーが一部分解し、チオール基含有率が僅かに増加することがある。トリアルキルホスファイトとしては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリペンチルホスファイト、ジイソデシルトリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリステアリルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、トリストリデシルホスファイト、トリペンチルホスファイト、ジイソデシルトリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリステアリルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のより活性の低い炭素数が5以上のアルキル基を有するトリアルキルホスファイトが好ましい。トリストリデシルホスファイトとしては、城北化学工業(株)製、商品名"JP−333E"が使用できる。
【0024】
上述の(i) 1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコール及び(ii) トリアルキルホスファイトからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の含有量は、チオール基含有化合物100重量部に対して、0.2〜20重量部とし、好ましくは0.5〜5重量部とする。
【0025】
[4] その他の添加物
本発明の硬化型組成物には、さらに経済性、組成物を施工する際の作業性及び硬化後の物性を改良する目的で、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、シリ力等の充填剤やフタル酸エステル、ブチルベンジルフタレート(BBP)、塩素化パラフィン、水添ターフェニル等の可塑剤を添加することができる。
【0026】
さらに本発明の硬化型組成物には、施工後の硬化を迅速かつ確実に行わせるために、チオール基とイソシアネート基との反応触媒を適量添加することができる。この反応触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等の三級アミン系触媒が用いられる。これらの触媒の添加量は、チオール基含有化合物及びイソシアネート基含有化合物との合計100重量部に対して0.001〜1.0重量部が好ましい。
【0027】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
合成例1
ポリサルファイドポリエーテルポリマーの合成
プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加して得られる二官能性ポリプロピレングリコール(OH価56.4)1000gと、エピクロロヒドリン107gと、塩化第二錫五水塩1.25gとを2リットルの反応容器に仕込み、80〜90℃で3時間攪拌した。さらにポリサルファイドポリマー(東レチオコール(株)製“チオコールLP55”、メルカプタン含有量1.8重量%、粘度450ポイズ(25℃))1110gを加えて混合した後、水硫化ソーダ(純度72.3%)89.9gを加え、80℃で2時間攪拌した。その後、塩を除去し、メルカプタン含量2.0重量%、粘度80ポイズ(25℃)の淡黄色透明な液状ポリマーを得た。
【0028】
実施例1〜6
合成例1で得られたポリサルファイドポリエーテルポリマーに、表1に示す種類及び量の可塑剤、充填剤、硬化触媒及び安定剤を配合して主剤を得た。この主剤385重量部にポリプロピレングリコールにキシレンジイソシアネートを付加して得られたウレタンプレポリマー(イソシアネート含有量4.0重量%)65重量部部と表3に示す種類及び量の(c) 不飽和化合物及び/又は亜リン酸エステル化合物を混合して、硬化型組成物を得た。得られた硬化型組成物について、被着体としてアルミニウム板を用いてJIS A5758による引張接着性試験を行った。養成条件は20℃7日+50℃7日とし、さらに90℃で加熱養成した後の引張接着性及び耐久性をJIS A5758の耐久性区分9030に準じた方法で試験した。この結果を表4に示す。
【0029】
実施例7
合成例1で用いたポリサルファイドポリマー(東レチオコール(株)製“チオコールLP55”、メルカプタン含有量1.8重量%、粘度450ポイズ(25℃))に、表2に示す種類及び量の可塑剤、充填剤、硬化触媒及び安定剤を配合して主剤を得た。この主剤を用いて実施例1と同様に硬化型組成物を製造し、試験を行った。この結果を表4に示す。
【0030】
比較例1
不飽和化合物及び/又は亜リン酸エステル化合物を添加しないことを除いて、実施例1と同様に硬化型組成物を製造し、試験を行った。この結果を表4に示す。
【0031】
表1 主剤の配合
【0032】
【0033】
【0034】
【表4】
【0035】
表4から明らかなように、本発明の硬化型組成物は、高温下に暴露しても引張応力が上昇せず、また弾性及び伸度を保持し、耐久性が良好である。
【発明の効果】
本発明の硬化型組成物は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリマーと、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、所定量の(i) 1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコール及び(ii) トリアルキルホスファイトからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するので、80℃以上の高温に暴露しても、弾性の減少が小さく、耐久性が良好な硬化物が得られる。このような特徴を有する本発明の硬化型組成物は、シーリング材等に使用するのに好適である。
Claims (5)
- (a) 分子中に2個以上のチオール基を有するポリマーと、
(b) 分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、
(c) (i) 1級OH基を1個のみ含有する不飽和アルコール及び(ii) トリアルキルホスファイトからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする硬化型組成物。 - 請求項1に記載の硬化型組成物において、前記(a) チオール基含有ポリマーが、主鎖中に、
(イ) −(C2H4OCH2OC2H4 −Sx )−
(但し、xは1〜5の整数である。) で表される構造単位を含有し、かつ末端に、
(ロ) −C2H4OCH2 OC2H4−SH
で表される構造単位を有するポリサルファイドポリマーであることを特徴とする硬化型組成物。 - 請求項1に記載の硬化型組成物において、前記(a) チオール基含有ポリマーが、主鎖中に、
(ハ) −(R1O)n−
(但し、R1 は炭素数2〜4のアルキレン基、nは6〜200の整数を示す。)で表されるポリエーテル部分と、
(ニ) −(C2H4OCH2OC2H4−Sx)−、及び−(CH2CH(OH)CH2−Sx)−
(但し、xは1〜5の整数である。)で表される構造単位とを含有し、かつ末端に、
(ホ) −C2H4OCH2OC2H4 −SH及び/又は−CH2CH(OH)CH2−SH
で表される構造単位を有するポリサルファイドポリエーテルポリマーであることを特徴とする硬化型組成物。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化型組成物において、前記(a) チオール基含有ポリマー100重量部に対して、(c) 化合物を0.2〜20重量部含有することを特徴とする硬化型組成物。
- 請求項1に記載の硬化型組成物において、前記(b) イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基と、前記(a) チオール基含有ポリマー中のチオール基とのモル比(イソシアネート基/チオール基)が0.5〜4.0であることを特徴とする硬化型組成物。
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