JP3544590B2 - カラー受像管用磁気シールド用素材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー受像管用磁気シールド用素材に関し、より詳しくは優れた内部磁気シールド特性を有するとともに、優れたハンドリング強度を有するカラー受像管用磁気シールド用素材に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
カラーテレビなどのカラー受像管は基本的に電子銃と電子ビームを映像に換える蛍光面から構成されており、さらに受像管内部は、電子ビームが地磁気により偏向されることを防止するために、磁気シールド材で被覆されている。磁気シールド材は、素材である鋼薄板に黒化処理やニッケルめっきを施したものが用いられ、折り曲げ加工により所定の形状に成形された後、600℃前後の温度でブラウン管に封着される。この磁気シールド材の素材として用いられる鋼板においては、透磁率が高いこと、保磁力が低いことによる磁気シールド性に優れ、シールド効率が高いことなどの磁気的特性に加えて、折り曲げ加工などの成形加工性が良好であること、加工前、あるいは加工された磁気シールド材を搬送する際、あるいは、被加工材を積み重ねる際に変形を生じない程度のハンドリング強度を有していることなどの機械的特性が必要とされている。
【0003】
透磁率を高め保磁力を低くするためには、磁壁の移動を阻害する鋼中の炭素、窒素、および炭化物、窒化物などの析出物を極少にするとともに、結晶粒界を少なくし結晶粒径を大にする必要がある。しかし、鋼中の炭素、窒素を減少させ結晶粒径を大にすると、鋼板の強度が低下し、折り曲げ加工などの成形加工性は向上するが、鋼板や折り曲げ加工を施された被加工材を搬送する際に、軽度の衝撃により凹凸を生じたり、あるいは、被加工材を積み重ねた際に重みにより被加工材が変形したりしやすくなる。一方、このような鋼板のハンドリング強度を向上させるためには、結晶粒を微細化したり、鋼中にある程度の炭素、窒素を添加して炭化物や窒化物を析出させる方法があるが、これらの方法では磁気特性の低下を伴わざるを得ない。このように、磁気シールド材として用いられる鋼板においては、上記の相反する優れた磁気特性と優れたハンドリング強度を同時に満足させる必要がある。
【0004】
従来、磁気シールド特性を有する材料としては、優れたハンドリング強度を有し、かつ軟磁性の珪素鋼板があるが、カラー受像管に必要とされる黒化処理が困難であるために使用された例がない。現在、極低炭素アルミキルド鋼板に黒化処理を施したり、ニッケルめっきを施したニッケルめっき鋼板が磁気シールド材として採用されているが、磁気シールド特性には優れているが、十分なハンドリング強度を有するものは得られていない。
本発明は、優れた内部磁気シールド特性を有するとともに、優れたハンドリング強度を有するカラー受像管用の磁気シールド用素材を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のカラー受像管用磁気シールド用素材は、重量%でC:0.006%以下、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなるアルミキルド低炭素熱延鋼帯に、冷間圧延率70%以上で冷間圧延を施し、500〜700℃の範囲で焼鈍した後ニッケルめっきを施して得られる、引張強度40kg/mm 以上であることを特徴とする。
本発明のカラー受像管用磁気シールド用素材の製造方法は、重量%でC:0.006%以下、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなるアルミキルド低炭素熱延鋼帯を、冷間圧延率70%以上で冷間圧延し、500〜700℃の範囲で焼鈍した後ニッケルめっきを施し、引張強度40kg/mm 以上とすることを特徴とする。
本発明のカラー受像管は、重量%でC:0.006%以下、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなるアルミキルド低炭素熱延鋼帯に、冷間圧延率70%以上で冷間圧延を施し、500〜700℃の範囲で焼鈍した後ニッケルめっきを施して得られる、引張強度40kg/mm 以上の磁気シールド用素材を組み込んだことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においては、極低炭素鋼にSiを添加することにより、引張強度を40kg/mm以上に保持しながら、保磁力を1.2エールステッド以下に止めることにより、優れた磁気特性と優れたハンドリング強度を同時に満足するカラー受像管用の磁気シールド用素材が得られることが判明した。
【0007】
以下、本発明を実施例により、詳細に説明する。
本発明のカラー受像管用の磁気シールド用素材に用いる極低炭素鋼としては、真空脱ガス法を用いて脱炭および脱窒処理し、鋼中の炭化物および窒化物を減少させ、熱延および連続焼鈍の工程で結晶粒の成長を促進させたものが好ましい。さらに、鋼中に微細分散している炭化物および窒化物は磁壁の移動を妨げ磁気特性を劣化させるので、鋼中に含まれる元素を予め限定し、これらを極力減少させる必要がある。はじめに、本発明の磁気シールド用素材に用いる鋼中に添加される元素、およびその添加量の限定理由について説明する。
【0008】
Cに関しては、冷延鋼板中のC量が多いと炭化物が増加し、磁壁の移動を阻害され、また結晶粒の成長が妨げられ保磁力を低くすることが困難となるために、上限を0.006%とする。下限は真空脱ガス処理で実用的に可能なかぎり低いほうが好ましい。
Nに関しては、本発明の磁気シールド用素材としてアルミキルド鋼を用いた場合に、Nは鋼中の固溶Alと反応して微細なAlNを形成し磁気特性を劣化させるので、0.002%以下とする。
Mnに関しては、Mnは鋼中のSと結合して鋼中に含まれるSをMnSとして固定し熱間脆性を防止するために添加する必要があるが、添加量が少ないほど磁気特性を向上させる上で好ましく、0.5%以下の添加量とする。
【0009】
Siに関しては、添加量が増加するほど保磁力が低下し、磁気シールド特性は良好となるが、伸びが減少し引張強度が増加し加工性が乏しくなる。冷延後の熱処理条件にもよるが、0.5%以上の添加で本発明に必要な磁気シールド特性とハンドリング強度が得られるが、2.5%を越えると作業性および加工性が劣化するので上限を2.5%とする。
【0010】
次に、磁気シールド用素材としての薄鋼板の製造工程について説明する。
まず、真空溶解、あるいは真空脱ガス法を用いて溶製された、上記の化学成分を含有する極低炭素熱延鋼帯を酸洗し、熱間圧延工程で生じた酸化皮膜を除去する。次に、熱延鋼帯に70%以上の冷間圧延を施し、0.15〜0.25mmの板厚とする。冷間圧延率が70%未満の場合は、冷間圧延後に焼鈍を施した際に引張強度が40kg/mm未満となり、本発明に必要とされるハンドリング強度が得られない。焼鈍は必要とされる強度に応じて500〜700℃の温度で3分〜5時間実施することが好ましい。500℃未満では、十分に軟化せず、作業性に乏しくなる。一方、Siの添加量を少なくする場合は焼鈍温度が高くなると必要な引張強度が得られない。また、Si添加量が多い場合でも700℃を越える温度で焼鈍すると、3分未満の加熱でも本発明に必要な40kg/mm以上の引張強度が得られない。より好ましくは、Si添加量に応じて550〜650℃の温度で5分〜2時間の焼鈍を実施する。焼鈍方法は加熱温度と加熱時間により箱形焼鈍、連続焼鈍のいずれの方法を用いても差し支えない。
【0011】
上記の焼鈍を施した後、鋼板をアルカリ溶液中で電解脱脂し、希硫酸中で酸洗し、表面の清浄化と活性化を行った後、ワット浴など、塩化ニッケル浴、スルファミン酸浴などの通常のニッケルめっきに用いられるニッケルめっき浴を用いてニッケルめっきを施す。耐食性を満足させるためにはめっき付着量は多い方が好ましいが、経済的観点からは少ない方が好ましい。したがって、ニッケルめっき付着量の下限は0.1μmとし、上限を5.0μmとする。
【0012】
【実施例】
実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例)
表1に示す化学組成を有する7種類の鋼A、B、C、D、E、F、Gを真空脱ガスして溶製したスラブを熱間圧延し、1.8mmの熱延板とした。これらの熱延板を硫酸酸洗した後冷間圧延し、板厚0.15mmの冷延板とし、それぞれ表2〜3に示す15種類の条件で連続焼鈍を実施し、めっき原板とした。これらのめっき原板を電解アルカリ電解脱脂し、硫酸酸洗した後、通常組成のワット浴を用いて約1.3μmのニッケルめっきを施した。このようにして得られた焼鈍材の保磁力を、焼鈍材に1次捲線及び2次捲線を施し、10エールステッドの磁界をかけて測定した。またニッケルめっき鋼板の引張強度をテンシロンにて測定した。
評価した結果を表2〜3に示すが、本発明の磁気シールド用素材は保磁力が低く、引張強度が高く、カラー受像管用の磁気シールド用素材に適していることがわかる。これに対し、比較例A−1およびA−2は十分な磁気シールド特性、引張強度が得られず、比較例G−1およびG−2は引張強度が必要以上に高く、加工性に乏しい。
なお、本発明の磁気シールド用素材は、その優れた磁気特性とハンドリング強度から、カラー受像管用のインナーシールド材としてのみでなく、インナーシールド材とシャドウマスク材の間に介在して、両者をパネルに固着させるためのフレーム材としても適用可能である。
表2〜3に示す材料符号(〇−〇)は、表1に示す鋼種(材料符号の左に示す)を条件(材料符号の右に示す)を変えて実施したものである。
【0013】
【表1】
Figure 0003544590
【0014】
【表2】
Figure 0003544590
【0015】
【表3】
Figure 0003544590
【0016】
【発明の効果】
本発明の磁気シールド用素材は、重量%でC:0.006%、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなる低炭素熱延鋼帯に冷間圧延を施し、500〜700℃の温度で焼鈍し後、ニッケルめっきを施して得られるカラー受像管用の磁気シールド用素材であり、保磁力が低く磁気シールド特性に優れ、ハンドリング強度が高く、カラー受像管用の磁気シールド用素材に適している。

Claims (3)

  1. 重量%でC:0.006%以下、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなるアルミキルド低炭素熱延鋼帯に、冷間圧延率70%以上で冷間圧延を施し、500〜700℃の範囲で焼鈍した後ニッケルめっきを施して得られる、引張強度40kg/mm 以上のカラー受像管用磁気シールド用素材。
  2. 重量%でC:0.006%以下、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなるアルミキルド低炭素熱延鋼帯を、冷間圧延率70%以上で冷間圧延し、500〜700℃の範囲で焼鈍した後ニッケルめっきを施し、引張強度40kg/mm 以上とすることを特徴とするカラー受像管用磁気シールド用素材の製造方法。
  3. 重量%でC:0.006%以下、N:0.002%以下、Mn:0.5%以下、Si:0.5〜2.5%、残部Feおよび不可避的不純物からなるアルミキルド低炭素熱延鋼帯に、冷間圧延率70%以上で冷間圧延を施し、500〜700℃の範囲で焼鈍した後ニッケルめっきを施して得られる、引張強度40kg/mm 以上の磁気シールド用素材を組み込んだカラー受像管。
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