JP2650506B2 - 直流磁気シールド用電磁厚鋼板とその製造法 - Google Patents

直流磁気シールド用電磁厚鋼板とその製造法

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JP2650506B2
JP2650506B2 JP3094405A JP9440591A JP2650506B2 JP 2650506 B2 JP2650506 B2 JP 2650506B2 JP 3094405 A JP3094405 A JP 3094405A JP 9440591 A JP9440591 A JP 9440591A JP 2650506 B2 JP2650506 B2 JP 2650506B2
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龍二 緒方
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば漏洩磁気を遮断
するのに好適な、磁気シールド特性に優れた直流磁気シ
ールド用電磁厚鋼板およびその製造法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年の著しい科学技術の進展に伴い、強
力な磁場を利用した各種科学測定機器が実用化されてき
ている。例えば、医療機器の分野においては強力な磁場
による核磁気共鳴現象を利用した磁気共鳴断層撮影装置
(以下「 MRI」という) が実用化され、積極的に導入さ
れている。
【0003】この MRIの使用に際しては、発生する多量
の漏洩磁気をシールドする必要がある。このような磁気
シールドを行うには、 MRI本体を囲むか、または MRIを
設置した部屋自体を囲むかするが、このどちらの場合に
おいても磁気遮断特性に優れた、すなわち高透磁率を有
する磁気シールド用電磁厚鋼板は最適であり、またサイ
クロトロン等の大型科学実験装置などのカバー・構造用
部材として磁気シールド性を必要とする部分にも使用さ
れる材料である。
【0004】そこで、近年の科学技術の成果をさらに進
展させるためには、かかる磁気シールド用電磁厚鋼板と
して、本来相反する優れた機械的特性と透磁率、磁束密
度等に代表される磁気特性とを共に満足する材料の出現
が各分野から強く望まれている。
【0005】このような磁気遮断特性を有する鋼板とし
ては電磁軟質鋼板があり、一般的に変圧器に使用される
薄板が周知である。これは、従来から磁気特性の優れた
鋼材として、JIS C 2503またはJIS C 2504に規定される
電磁軟鉄棒、電磁軟鉄板である。JIS C 2503に規定され
るものは 1.0〜16mm程度の直径を有する棒材であり、ま
たJIS C 2504に規定されるものは 0.6〜4.5mm 程度の板
厚の薄板であり、いずれもリレー用または電磁石用とし
て小型部品への適用を対象としたものである。
【0006】また、磁気用としては分類されていないJI
S G 4051に規定される機械構造用炭素鋼材であるS10Cを
用い、 250mm幅に熱間加工し、磁性材料として使用して
いる例がある。
【0007】さらに、特開昭60−96749 号公報、特公昭
63−45442 号公報または同63−45443 号公報に開示され
ているように、sol.Alの量を 0.005〜1.00重量%と多く
含有し、Siをある程度低減したAl脱酸型極低炭素鋼であ
る直流磁化用厚板が近年提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの公知
方法では、例えばMRIの使用の際に生じる漏洩磁気を遮
断することができるような、優れた磁気特性を有する磁
気シールド用電磁厚鋼板を提供することはできない。
【0009】JIS C 2503またはJIS C 2504に示されてい
る電磁軟鉄棒または電磁軟鉄板は、前述したように、小
型の部品を適用の対象にしており、構造用部材としての
機械的特性が全く考慮されていない。したがって、例え
ば MRIにこの電磁軟鉄板を適用する場合には、装置の強
度を確保するために、この電磁軟鉄板を数10枚程度積層
する必要があり、製造コストや製品の品質の観点から
は、現実には実施できない。
【0010】JIS G 4501に示される機械構造用炭素鋼材
を用いた例では、磁気特性についての考慮が何らなされ
ていないため、最大透磁率μmax が1800以下と極めて低
い値しか得られていない。したがって、やはり所望の磁
気シールド用電磁厚鋼板を提供することはできない。
【0011】特開昭60−96749 号公報に開示された電磁
鋼板は、μmax の値が 12850から4260までとばらついた
値となっており、その値も磁気シールド用電磁厚鋼板と
して充分な値ではない。
【0012】さらに、特公昭63−45442 号公報または同
63−45443 号公報に開示された方法は、確かにμmax
2000〜5000程度に高めることが可能な方法であるが、例
えばこの方法により得られる電磁鋼板を前述の MRIに適
用する場合を考えると十分な値であるとはいえず、一層
の向上が望まれる。
【0013】以上のように、これらの公知の手段では、
たとえば MRIの磁気シールドに用いる鋼板として好適
な、優れた磁気特性を有する磁気シールド用電磁厚鋼板
を得ることはできなかったのである。
【0014】ここに、本発明の目的は、例えば漏洩磁気
を遮断するのに好適な、優れた磁気特性を有する磁気シ
ールド用電磁厚鋼板およびその製造法を提供することに
あり、例えば最大透磁率μmax ≧20000 、磁場0.5Oe の
際の磁束密度B0.5≧1.0Tを有する磁気シールド用電磁厚
鋼板およびその製造法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため種々検討を重ねた結果、特開昭60−9674
9 号公報に開示されているように磁気シールド用電磁厚
鋼板の素材としてAl脱酸型極低炭素鋼を用いるのではな
く、Si脱酸型極低炭素鋼を用いることにより、極めて優
れた磁気特性を有する磁気シールド用電磁厚鋼板を得る
ことができることを知見した。
【0016】すなわち、本発明者らは磁気特性の良好な
磁気シールド用電磁厚鋼板の製造に際しては、減磁率を
大きくする成分元素の含有量を極力低減すること、およ
び板厚方向における磁気特性の均質性を高めることが重
要であることを知見した。
【0017】具体的には、第1の減磁率を大きくする成
分元素としては、C、S、Cu、Cr、sol.Al等があるが、
本発明者らは、これらの元素の含有量、とりわけsol.Al
の含有量を極力低減することが有効であることを知見し
た。また、透磁率を大きくする成分元素としてはSiが挙
げられ、このSiを適量添加することにより、磁気特性が
著しく向上することも併せて知見した。
【0018】なお、Siを添加することにより、 Ac3変態
点が上昇するため、後述する最適な熱処理温度の上昇を
招き、実際の操業において実施される熱処理条件では逆
に磁気特性を低下させてしまうことがある。そこで、磁
気特性を低下させることなくAc3変態点の上昇を防ぐ元
素としてさらにNiを添加することにより、 Ac3変態点の
上昇を防ぎつつ、磁気特性に優れた電磁厚鋼板を得るこ
とができることを知見した。
【0019】また、第2の磁気特性の均質性を確保する
ためには、非金属介在物の生成原因となる元素や偏析し
易い元素の含有量を低減し、結晶粒の大きさを板厚方向
に可及的に均一にすることが必要であることを知見し
た。
【0020】さらに、圧延・鍛造等加工成形時の歪みを
取り除くために、加工成形後に熱処理を施す必要がある
が、その際 Ac3変態点以下に加熱することが望ましいこ
と、冷却時に発生する熱応力により磁気特性が著しく低
下することがあるために冷却方法を限定する必要がある
こと、さらにこの場合に粒径が細かいほうが熱応力に対
する磁気特性の低下の程度が小さいことを知見した。
【0021】本発明者らは、このような知見に基づいて
さらに検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0022】ここに、本発明の要旨とするところは、重
量%で、C:0.05 %以下、 Si:1.0%超4.0 %以下、
Mn: 0.50%以下、sol.Al:0.005%以下、Ni: 0.50〜3.
0 %、残部Feならびに不可避的不純物からなる鋼組成を
有することを特徴とする磁気シールド特性に優れた直流
磁気シールド用電磁厚鋼板である。
【0023】前記の本発明にかかる直流磁気シールド用
電磁厚鋼板は、上記の鋼組成を有する鋼片に熱間加工を
行った後、 Ac3変態点〜 Ac3変態点−50℃以上の温度域
に加熱後、炉冷を施すこと、つまり熱応力による内部歪
みを生じないように、2.1 ℃/分以下の冷却速度で徐冷
することにより製造することができ、得られる直流磁気
シールド用電磁厚鋼板は、フェライト結晶粒度番号が2
〜4程度であって、μmax :21100 〜26800 、B0.5:1.
02〜1.23T の磁気的特性を有する。
【0024】また、本発明にかかる直流磁気シールド用
電磁厚鋼板は、前記鋼組成を有する鋼片を Ac3変態点以
上の温度域に加熱した後、熱間加工を開始し、フェライ
ト域における圧下率比が2以上となるようにして前記熱
間加工を終了し、引き続き Ac3変態点〜 Ac3変態点−10
0 ℃の温度域に加熱後、炉冷を施すこと、つまり熱応力
による内部歪みを生じないように、1.8 ℃/分以下の冷
却速度で徐冷することによっても製造することができ、
得られる直流磁気シールド用電磁厚鋼板は、フェライト
結晶粒度番号が−1.2 〜0.6 であって、μmax :22400
〜36200 、B0.5:1.12〜1.34T の磁気的特性を有する。
【0025】本発明において「厚鋼板」とは、慣用的に
「厚鋼板」と呼ばれているものを包含するものである
が、本発明においてはさらに構造材として使用される種
類のそれを意味するのであって、具体的には、板厚が6
〜100mm程度の鋼板が例示される。
【0026】本発明における圧下率比とは、いわゆる圧
下率を意味し、圧延の前後における圧延材の高さをそれ
ぞれh1、h2とした場合に、 (h1−h2)/h1×100(%) で表
される。
【0027】
【作用】以下、本発明を作用効果とともに詳述する。な
お、本明細書において、特にことわりがない限り「%」
は「重量%」を意味するものとする。
【0028】まず、本発明にかかる直流磁気シールド用
電磁厚鋼板の組成を上述のように限定した理由について
説明する。
【0029】Cは、その含有により減磁率を最も増加さ
せる元素であり、極力低減することが望ましい。しか
し、Cの低減には多くの工程を要することから製造コス
トの上昇につながる。そこで、C含有量は0.05%以下と
限定する。
【0030】Siは、本発明の作用効果を奏するために極
めて重要な元素であって、結晶粒の整粒化および磁気特
性の向上を促進するとともに脱酸剤としても作用する。
かかる作用効果を得るためには、1.0 %超添加する必要
がある。しかし、あまり多量に添加すると鋼が脆くな
り、構造用厚板材として適当でなくなるため、上限を4.
0 %と限定する。そこで、Si含有量は、1.0 %超4.0 %
以下と限定する。
【0031】Mnは、構造用厚板材として使用される場合
には必要最低限の強度の確保を図るために必要な元素で
あるが、Cと同様に減磁率の観点からは低減することが
望ましい。そこで、Mn含有量は、0.50%以下と限定す
る。
【0032】Alは、本発明の作用効果を奏するために重
要な元素であって、減磁率を大きくする元素であるた
め、また鋼中のNと結合して窒化アルミニウムを形成し
て鋼の混粒化を促進するため、その含有量は少ないほう
が望ましい。具体的には、Alを0.005 %超含有すると、
μmax およびB0.5がともに低下し、所望の磁気特性が得
られなくなる。そこで、Al含有量は0.005 %以下と限定
する。
【0033】Niは、本発明における所期の作用効果を奏
するために極めて重要な元素であって、Si添加による磁
歪の増大化を押さえ、かつ磁気特性の低下を招くことな
く変態温度を低下させることができる。その添加量は、
Si添加量と関連させて決定する必要がある。そしてSiを
多量に添加した場合にあってもかかる効果を発揮させる
ためには0.50%以上含有する必要がある。一方、Niを過
剰に添加した場合、著しいコスト上昇を招くため、3.0
%を上限とする。そこで、Ni含有量は、0.50%以上3.0
%以下と限定する。
【0034】P、Sは、ともに不純物として鋼中に含有
され、非金属介在物を鋼中に形成し易いため、その含有
量は低いことが望ましい。しかし、これらの元素の低減
にはコスト上昇を伴うことから、Pは0.10%以下、Sは
0.01%以下と限定することが望ましい。
【0035】なお、本発明にかかる直流磁気シールド用
電磁厚鋼板は、所望の磁気特性を確保するという観点か
ら、上述した組成に加えてさらにCr、Mo、CuおよびNか
らなる群から選ばれた少なくとも1種、さらには酸素を
下記に示す如く含有してもよい。
【0036】Cr、Mo、CuまたはNは、減磁率を大きくす
る元素であり、特にNは前述したようにAlと結合して鋼
の混粒化を促進するため、また偏析度合を少なくするた
め、極力少ないことが望ましい。しかし、Cr、Moおよび
Cuは溶製段階において、耐火物からも混入するため極端
に低減することは困難である。したがって、Crは0.20%
以下、Moは0.02%以下、Cuは0.10%以下またはNは0.01
%以下をそれぞれ含有してもよい。
【0037】酸素は鋼中にあっては、非金属介在物を形
成しかつ偏析することにより、磁壁の移動を妨げ、その
含有量が増加するにつれて、鋼板の保磁力を増加させ、
磁気特性の低下を招く恐れがある。したがって、その含
有量は少ないほど望ましく、酸素の含有量は0.003 %以
下と限定することが望ましい。
【0038】また、本発明にかかる直流磁気シールド用
電磁厚鋼板においては、そのフェライト結晶粒度番号は
何ら限定を要するものではなく、例えば2超であっても
よく2以下であってもよい。
【0039】フェライト結晶粒をフェライト結晶粒度番
号で2以下と粗大化することにより、鋼中の磁区を大き
くして極低磁場域の磁気特性を向上させることが可能に
なるとともに保持力も低下するからであり、一方フェラ
イト結晶粒度番号を2超と細粒化しても、熱処理の冷却
時に生じる熱応力による歪みを多数の結晶粒および結晶
粒界で受け止めることができ、磁気特性の劣化を防止す
ることができるからである。なお、余り細粒にすると保
持力が大きく成り過ぎ好ましくないため、6以下とする
ことが望ましい。
【0040】かかる組成を有する本発明にかかる直流磁
気シールド用電磁厚鋼板は、極めて優れた磁気特性を有
する。磁気特性は電磁鋼板が具備すべき最も重要な性質
であって、磁気特性の具体的な指標としては、前述のよ
うにμmax が挙げられるが、前述したような近年の科学
技術の急速な進展に伴って高い透磁率が要求されてきて
おり、その必要最低値としてはμmax ≧20000 を具備す
ることが望ましいが、本発明にかかる直流磁気シールド
用電磁厚鋼板はμmax ≧20000 と極めて高い透磁率を有
する。
【0041】また、B0.5もμmax と同様に、B0.5≧1.0T
であることが望ましいが、本発明にかかる直流磁気シー
ルド用電磁厚鋼板はB0.5≧1.0Tと極めて高い磁束密度を
有する。
【0042】次に、本発明にかかる直流磁気シールド用
電磁厚鋼板の製造法について述べる。
【0043】鋼の溶製は、転炉溶製法あるいは電気炉溶
製法のいずれの溶製法でもよく、さらに必要に応じて取
鍋精練あるいは真空脱ガス等の精練工程を経て、減磁率
を大きくさせる元素 (C、Al、Cr、Mo、Cu、N等) を極
力低減するとともに、非金属介在物の生成および偏析を
極力少なくさせるために、P、Sを減少させ、さらに酸
素をSiを用いて除去する。さらに、磁気特性を向上させ
るべく脱酸材として必要以上にSiを添加し、さらに Ac3
変態点を下げるべくNiを添加、固溶させる。
【0044】このようにして得た、前述の組成を有する
鋼片を、本発明においては、まず Ac3点以上、望ましく
は Ac3点以上1200℃以下の温度域に加熱する。 Ac3点以
上に加熱することにより、オーステナイト単相としてお
き熱間加工を開始する。
【0045】加熱温度の上限は特に設ける必要がない
が、実際の製造に際しては、1200℃超の温度に加熱して
しまうと、例えば厚板工場の加熱炉の炉壁の耐火レンガ
が損傷するといった設備的な不具合の発生が懸念される
ことから、1200℃以下と限定することが望ましい。
【0046】熱間加工においては、加工前の特別な作業
等は一切不要である。また、熱間加工の形態は、圧延機
による圧延または鍛造機による鍛圧のいずれでもよい。
【0047】また、後続の熱処理工程で結晶粒の成長を
促すために、熱間加工時にフェライト結晶粒に加工歪み
を付加することが望ましい。本発明者らの知見によれ
ば、フェライト域における圧下率比を2以上とすること
により、鋼片の中心部まで加工フェライト相を形成させ
ることができる。そこで、本発明においては、熱間加工
の際、フェライト域における圧下率比を2以上とするこ
とが望ましい。
【0048】このようにして熱間加工を終えた鋼片を次
いで冷却することが望ましい。脱水素処理を行うためで
ある。脱水素処理を充分に行うという観点からは、鋼片
の冷却温度は300 ℃以下とすることが望ましい。300 ℃
以下に冷却することにより、脱水素のための時間を充分
に確保することが可能となるからである。
【0049】そして、この鋼片に、結晶粒調整および歪
み取りのために、熱処理を施す。この際、磁気特性を向
上させて所望の値とするために、熱処理として焼鈍を行
うことが有効である。焼鈍温度は、再結晶集合組織を形
成させて、フェライト結晶粒を充分に成長させるため
に、 Ac3点−50℃以上 Ac3点以下、熱間加工時にフェラ
イト域における圧下率比が2以上の加工歪みを付与した
場合にはAc3 点−100 ℃以上 Ac3点以下とすることが望
ましい。上限値を Ac3点とするのは、 Ac3点超に加熱し
た場合に形成される集合組織は再結晶集合組織から変態
集合組織となってしまい、磁気特性が劣化することがあ
るからであり、一方、焼鈍温度が本発明で規定する範囲
より低い温度であると、歪みを除去するのに十分なエネ
ルギーを付与することができなくなってしまうことがあ
るからである。
【0050】なお、焼鈍時間は、鋼板の板厚方向の中心
部まで均一に加熱する必要があることから、最終成品の
板厚をt(mm)とした場合、t/25 (時間) 以上とすること
が好ましい。
【0051】なお、焼鈍の後の冷却は、徐冷することが
必要である。なぜなら、磁気特性の向上のために多量の
合金元素を添加するため熱伝導率が低下し、冷却時に外
表面と内部との間に温度差を生じ、熱応力により歪みを
生じ易くなるためである。一般的には、2.1 ℃/分以下
の冷却速度であれば十分であり、熱間加工の際における
フェライト域の圧下率比が2以上の場合には1.8℃/分
以下の冷却速度とすればよく、いずれの場合においても
具体的には炉冷することが好ましい。
【0052】次に、本発明をその実施例によってさらに
具体的に説明するが、これはあくまでも本発明の例示で
あって、これにより本発明が限定されるものでない。
【0053】
【実施例1】表1に示す鋼組成を有する供試鋼を溶製
し、これらの鋼種からなる鋼片に熱間圧延を行って板厚
が12mmの熱延鋼板を製造した。そして、表2に示す各加
熱温度に1時間加熱してから炉冷することにより行っ
た。
【0054】得られた各供試鋼について、磁気特性の評
価試験を行った。結果を表2にまとめて示すとともに、
図1にSi添加量 (重量%) とB0.5との関係をグラフで示
す。なお、図1における番号は鋼種を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】図1は、Si添加量の磁気特性に及ぼす影響
を示すグラフであり、Ni非添加の場合を比較例として示
す。Siを 1.0%超添加した時のNi添加効果が顕著である
ことがわかる。
【0058】
【実施例2】表3に示す鋼組成を有する鋼種Aないし鋼
種Vを溶製して厚さが150mmのスラブを得、該スラブを1
150℃に加熱してから熱間圧延を開始し、フェライト域
における圧下率が3.0 となるようにして780 ℃で熱間圧
延を終了して、板厚が12mmの熱延鋼板を製造した。この
熱延鋼板を引き続き 900℃で1時間加熱した後、1.25℃
/分の冷却速度で炉冷を行って、試料No.1ないし試料N
o.22 の直流磁気シールド用電磁厚鋼板を得た。
【0059】このようにして得られた各試料について、
フェライト結晶粒度番号を比較法により測定するととも
に、磁気特性(B0.5 、μmax ) の評価試験を行った。結
果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】表3から明らかなように、本発明の範囲を
満足する試料 (試料No.1ないし試料No.9) は、全て、B
0.5≧1.0Tであるとともにμmax ≧20000 であり、極め
て磁気特性が優れている。
【0062】これに対して、試料No.10 ないし試料No.2
2 は、鋼組成の一部が本発明の範囲外の試料である。
【0063】試料No.10 および試料No.20 は、ともにSi
含有量が本発明の範囲を下回っているため、磁気特性が
向上していない。
【0064】試料No.11 ないし試料No.14 は、いずれも
Si含有量およびNi含有量が本発明の範囲を下回っている
ため、磁気特性の低下が著しい。
【0065】試料No.15 ないし試料No.17 は、いずれも
Ni含有量が本発明の範囲を下回っているため、磁気特性
が向上していない。
【0066】試料No.18 および試料No.19 は、ともにSi
含有量が本発明の範囲を上回っているとともにNi含有量
が本発明の範囲を下回っているため、磁気特性の低下が
著しく、かつ脆い材料となってしまい、本発明が適用対
象の一つとする構造用厚板材として不適当であった。
【0067】試料No.21 は、Si含有量が本発明の範囲を
上回っているため、やはり構造用厚板材としては不適当
であった。
【0068】さらに、試料No.22 は、sol.Al含有量が本
発明の範囲を上回っているために、磁気特性の劣化が著
しい。
【0069】
【実施例3】表3中の鋼種A、鋼種Bについて、以下に
示す手順の操作1および操作2を行った。
【0070】(操作1)鋼種Aおよび鋼種Bをそれぞれ溶
製して、厚さが 150mmのスラブを得、該スラブを1150℃
に加熱してから熱間圧延を開始し、フェライト域におけ
る圧下率が 3.0となるようにして780 ℃で前記熱間圧延
を終了して、板厚が12mmの熱延鋼板を製造し、該熱延鋼
板を引き続き 900℃で1時間加熱した後、0.83、1.25、
および1.67℃/分の3水準の冷却速度で冷却を行って、
試料No.1ないし試料No.6の直流磁気シールド用電磁厚鋼
板を得た。
【0071】(操作2)鋼種Aを溶製して、厚さが 150mm
のスラブを得、該スラブを1150℃に加熱してから熱間圧
延を開始し、フェライト域における圧下率が 3.0となる
ようにして780 ℃で熱間圧延を終了して、板厚が12mmの
熱延鋼板を製造し、該熱延鋼板を引き続き、850 または
900 ℃の2水準の熱処理温度 (熱処理時間は1時間) に
加熱した後、1.25℃/分の冷却速度で炉冷を行って、試
料No.7ないし試料No.8の直流磁気シールド用電磁厚鋼板
を得た。
【0072】これらの試料No.1ないし試料No.8につい
て、フェライト結晶粒度番号を比較法により測定すると
ともに、磁気特性(B0.5、μmax ) の評価試験を行っ
た。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】表4から明らかなように、得られた試料は
全て本発明の範囲を満足するため、極めて磁気特性が優
れている。
【0075】
【実施例4】表3における鋼種Aを溶製して、厚さが 1
50mmのスラブを得、該スラブを1150℃に加熱してから熱
間圧延を開始し、フェライト域における圧下率比が 0、
0.5、1、2、3および4の6水準となるようにして、9
00 ℃または780 ℃で熱間圧延を終了して、板厚が12mm
の熱延鋼板を製造し、該熱延鋼板を引き続き900 ℃で1
時間加熱した後、1.25℃/分の冷却速度で炉冷を行っ
て、試料No.1ないし試料No.6の直流磁気シールド用電磁
厚鋼板を得た。
【0076】これらの試料No.1ないし試料No.6の直流磁
気シールド用電磁厚鋼板について、フェライト結晶粒度
番号を比較法により測定するとともに、磁気特性
(B0.5 、μmax ) の評価試験を行った。結果を表5に示
す。
【0077】
【表5】
【0078】表5から明らかなように、試料No.1ないし
試料No.6は全て本発明の範囲を満足するが、全て、B0.5
≧1.0Tであるとともにμmax ≧20000 であり、フェライ
ト結晶粒度に関係なく極めて磁気特性が優れている。
【0079】
【発明の効果】以上詳述してきたように、本発明によれ
ば、Siを添加することにより、 Ac3変態点が上昇し、最
適熱処理条件もあわせて上昇してしまうところを、Niを
添加することによりAc3 変態点を低下させ、最適熱処理
条件も同様に低下させることができ、実操業において実
施しやすい温度域において、熱処理を施せばよいことに
なり、製造が容易になるのであって、その優れた磁気シ
ールド特性とあいまって本発明の実用上の意義は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるSi添加量の磁気特性に及ぼす影
響を示すグラフである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.05 %以下、 Si:1.0
    %超4.0 %以下、 Mn: 0.50%以下、sol.Al:0.005%以
    下、Ni: 0.50〜3.0 %、残部Feならびに不可避的不純物
    からなる鋼組成を有することを特徴とする磁気シールド
    特性に優れた直流磁気シールド用電磁厚鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の鋼組成を有する鋼片に熱
    間加工を行った後、Ac3変態点〜 Ac3変態点−50℃の温
    度域に加熱後、徐冷を施すことを特徴とする磁気シール
    ド特性に優れた直流磁気シールド用電磁厚鋼板の製造
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の鋼組成を有する鋼片を A
    c3変態点以上の温度域に加熱した後、熱間加工を開始
    し、フェライト域における圧下率比が2以上となるよう
    にして前記熱間加工を終了し、引き続き Ac3変態点〜 A
    c3変態点−100℃の温度域に加熱後、徐冷を施すことを
    特徴とする磁気シールド特性に優れた直流磁気シールド
    用電磁厚鋼板の製造法。
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