JP3544043B2 - ポリイミド粉粒体の製造方法及びポリイミド粉粒体 - Google Patents

ポリイミド粉粒体の製造方法及びポリイミド粉粒体 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリイミド粉粒体の製造方法及びポリイミド粉粒体に関する。詳しくは、成形体としての用途の広がる熱可塑性ポリイミド重合体の粉粒体を製造する方法と該製造方法により得られる機械的強度に優れ、かつ優れた耐熱性、加工性、低吸水率を併せ持つポリイミド粉粒体に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
近年、芳香族ポリイミド重合体は、その優れた機械強度、耐放射線性、耐薬品性、低温特性、耐熱性等により電気・電子材料に広く用いられている。しかし、一般に芳香族ポリイミド重合体は不溶・不融のためにポリアミド酸重合体の状態で加工し、それを熱的、化学的に環化させてポリイミド重合体を得るという方法が必要であり、加工性が悪く、さらにそれ以上の加工は困難である。そのため、従来はフィルム状で使用することが多く、また、その高い吸水性のため成形体としては用途が限られていた。例えばアピカルAH(登録商標;ポリイミドフィルム、鐘淵化学工業(株)社製)はポリイミドフィルムとして汎用されているが、フィルムとして使用されるだけであり、また、20℃の純水に24時間浸した時の吸水率が2.5%という高い吸水率を示すために、吸水による影響を受ける用途には使用することはできなかった。
【0003】
そこで、最近はこれらの問題を解決すべく、低吸水性の熱可塑性ポリイミド重合体が開発されてきており、このポリイミド重合体を粉末状にして成型機に充填し加熱圧縮することにより成形体が得られるよう検討されている。
【0004】
これら粉末状の熱可塑性ポリイミド重合体の製造方法としては、一般に次の2通りの方法が用いられている。
【0005】
第1の方法としては、上記熱可塑性ポリイミド重合体の前駆体であるポリアミド酸重合体の固形分濃度が2%以下となるように調整した溶液に化学量論以上の脱水剤を加え、該溶液の温度を上げて攪拌しながら放置するとイミド化が進行して粉体が析出してくるので、この粉体を乾燥させるという熱的イミド化の方法がある。
【0006】
しかしながら、この熱的イミド化の方法によると、加熱によりポリアミド酸重合体の解重合とイミド化の反応速度との両方が加速されるため、得られるポリイミド粉体の分子量が低下し、機械的強度が不充分となる可能性が高い。従って、かかる方法では分子量低下を防ぐために加熱温度を非常に高くすることによりイミド化の速度を優勢にする必要があった。しかし、加熱温度を高くした場合、溶媒の揮発を防ぐ装置が必要であり、また、使用する溶媒等は可燃性であることから危険性も高いという問題があった。更に、このように加熱温度を高くしても完全に解重合を防ぎ、分子量の低下を防ぐことはできないという問題もあった。
【0007】
また、第2の方法として、固形分濃度が2%以下となるように調整したポリアミド酸重合体溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミンを加え、室温で数時間攪拌してイミド化させた後、該反応液をメタノール、水等の貧溶媒中に滴下してポリイミドを糸状もしくは塊状に現出させ、その後、乾燥、粉砕するという化学的イミド化の方法がある。
【0008】
しかしながら、この化学的イミド化の方法によると、加熱によるポリアミド酸重合体の解重合を防ぐことはできるが、固形分濃度が例えば1%程度と低いため、大量生産に不向きであるという問題があった。また、かかる方法では反応液を貧溶媒中に滴下することにより溶媒と貧溶媒とを交換してポリイミドを糸状もしくは塊状に現出させるのであるが、その際に貧溶媒との交換が充分に行われるためには、大量の貧溶媒と長時間の浸漬が必要であった。そのため、得られたポリイミドが貧溶媒自身や不純物、水分等により解重合することがあり、分子量の低下が認められるという問題があった。そして、分子量とガラス転移点、溶融粘度には相関があり、得られたポリイミド粉粒体の分子量が低下するとガラス転移点や溶融粘度が低下することから、同じポリアミド酸重合体溶液から得た粉粒体であってもガラス転移点や溶融粘度、また機械的強度などが異なってしまうことがあった。また、その他にも残存するアミド酸基と反応する等悪影響を及ぼすことが多々あり、品質の低下も認められることがあった。
【0009】
そこで、本発明者らは、これらの製造方法を改善して上記従来の問題点を解決し、分子量の低下や品質の低下を防ぐことができ、かつ簡便に実施できるポリイミド粉粒体の製造方法と、該製造方法により得られる、分子量が高く機械的強度に優れた成形体を得ることができ、かつ低吸水性であり、更に、溶融押出法により簡単に成型することができるポリイミド粉粒体を提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法の要旨とするところは、ポリイミド重合体の前駆体であるポリアミド酸重合体溶液中に、触媒と脱水剤を添加して1〜10時間静置することによりポリイミド重合体のゲル状体を得て、該ゲル状体をその貧溶媒と共に粉砕することにある。
【0011】
そして、かかるポリイミド粉粒体の製造方法において、前記ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度が、2〜40%、好ましくは5〜20%であることにある。
【0012】
次に、本発明に係るポリイミド粉粒体の要旨とするところは、一般式(1)化5
【0013】
【化5】
Figure 0003544043
【0014】
(式中、R1,R2は2価の有機基、R3は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表され、前記製造方法により得られ、分子量が10万以上であることにある。

【0015】
そして、前記一般式(1)中のR1 が化6
【0016】
【化6】
Figure 0003544043
【0017】
で表される2価の有機基であることにある。
【0018】
また、前記一般式(1)中のR2 が化7
【0019】
【化7】
Figure 0003544043
【0020】
で表される2価の有機基の群から選択される少なくとも1種であることにある。
【0021】
更に、前記一般式(1)中のR3 が化8
【0022】
【化8】
Figure 0003544043
【0023】
で表される4価の有機基の群から選択される少なくとも1種であることにある。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法は、ポリイミド重合体の前駆体であるポリアミド酸重合体溶液中に、触媒と脱水剤を添加して数時間静置することによりポリイミド重合体のゲル状体を得て、該ゲル状体をその貧溶媒と共に粉砕することを特徴とし、このゲル状体は、ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度を2〜40%、好ましくは5〜20%として化学的にイミド化させることにより得られる。ここで、ゲル状体とは、溶液が流動性を失ってゲル状、寒天状、ゼリー状となった状態を総括したものをいい、上述のように固形分濃度を2〜40%、好ましくは5〜20%としたポリアミド酸重合体溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミンを添加して充分攪拌した後、数時間静置することによりイミド化が進み、ゲル状体となったポリイミド重合体が得られるのである。そして、このゲル状体を貧溶媒と共に粉砕することにより、粉砕中にゲル状体から溶媒の約80%が貧溶媒中に溶け込み、その結果、ポリイミド粉粒体が現出するのである。
【0025】
かかる方法は、イミド化の際にポリアミド酸重合体溶液に熱を加えることがないためポリアミド酸重合体の解重合が促進されず、イミド化の速度を優勢にするために加熱温度を高温にしなくても分子量の低下はおこらない。従って、加熱による溶媒の揮発を防ぐ装置を必要とせず、また、溶媒もしくは貧溶媒による火災や爆発の危険が少なく安全である。また、ゲル状体となったものを貧溶媒中で粉砕するため、使用する貧溶媒が少量でよく、ポリイミド重合体が貧溶媒に接触している時間も粉砕処理中のみの非常に短時間である。従って、貧溶媒、更にその中に含まれる不純物や水分の影響が少なく、従来の方法に比べて分子量の低下や品質の低下が生じるのを防ぐことができる。また、取扱いが容易で粉砕機のメンテナンスが容易である。すなわち、本発明の製造方法によると、分子量が高く機械的強度に優れたポリイミド粉粒体を安全にかつ簡便に製造することができる。
【0026】
ところで、本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法は、あらゆる構造のポリイミド粉粒体の製造に適用することができるが、特に、かかる方法により得られた一般式(1)化9
【0027】
【化9】
Figure 0003544043
【0028】
(式中、R1 ,R2 は2価の有機基、R3 は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表されるポリイミド粉粒体は、分子量が高く機械的強度に優れ、かつ優れた耐熱性、加工性、低吸水率を併せ持っており、汎用性のある熱可塑性樹脂を実現できる。
【0029】
以下に、本発明に係る一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体の製造方法について具体的に説明する。
【0030】
このポリイミド粉粒体の前駆体であるポリアミド酸重合体は、従来通り有機溶媒中で酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させることにより得ればよい。具体的には、まず、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気中において、一般式(2)化10
【0031】
【化10】
Figure 0003544043
【0032】
で表されるエステル酸二無水物のみ、若しくはこのエステル酸二無水物と一般式(3)化11
【0033】
【化11】
Figure 0003544043
【0034】
で表される1種又は2種の有機テトラカルボン酸二無水物との混合物(以下、エステル酸二無水物等という。)を有機溶媒中に溶解若しくは拡散させる。そして、この溶液に一般式(4)
2 N−Ar2 −H2 N (4)
で表される芳香族ジアミン化合物を、固体、若しくは有機溶媒による溶液、若しくはスラリーの形で添加して反応させることにより、本発明に係る一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体の前駆体であるポリアミド酸重合体の溶液が得られる。
【0035】
この反応において、必ずしも上述のようにエステル酸二無水物等の有機溶媒溶液に芳香族ジアミン化合物を添加する必要はなく、添加順序は特に限定されない。例えば、上記芳香族ジアミン化合物の有機溶媒溶液中に、上記エステル酸二無水物等を、固体、若しくは有機溶媒による溶液、若しくはスラリーの形で添加してもよい。また、上記エステル酸二無水物等は混合物として同時に添加する必要もなく、それぞれ別々に添加してもよい。すなわち、上記芳香族ジアミン化合物の有機溶媒溶液中に、上記エステル酸二無水物を、次いで上記有機テトラカルボン酸二無水物を、固体、若しくは有機溶媒による溶液、若しくはスラリーの形で順に添加してもよい。また、この添加順序も限定されない。
【0036】
この時の反応温度は−10〜50℃、更に好ましくは−5〜20℃である。反応時間は30分〜3時間である。
【0037】
更に詳しくは、前記一般式(2)で表されるエステル酸二無水物としては、あらゆる構造のものが使用可能であるが、諸特性のバランスから、R1 が化12
【0038】
【化12】
Figure 0003544043
【0039】
から選択される2価の有機基であるものを主成分とすることが好適である。
【0040】
また、前記一般式(3)で表される有機テトラカルボン酸二無水物としては、あらゆる構造のものが使用可能であるが、諸特性のバランスから、R3 が化13
【0041】
【化13】
Figure 0003544043
【0042】
から選択される4価の有機基であるものを主成分とすることが好適である。
【0043】
また、前記一般式(4)で表される芳香族ジアミン化合物としては、あらゆる構造のものが使用可能であるが、諸特性のバランスから、R2 が化14
【0044】
【化14】
Figure 0003544043
【0045】
から選択される2価の有機基であるものを主成分とすることが好適である。
【0046】
また、ポリアミド酸重合体溶液の生成反応に使用される有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒等の極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は2種あるいは3種以上の混合溶媒として用いることができる。更に、これらの極性溶媒に、ポリアミド酸重合体の貧溶媒であるアセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼンメチルセロソルブ等を混合してもよく、該貧溶媒との混合溶媒として用いることもできる。
【0047】
次に、このようにして作製したポリアミド酸重合体溶液から本発明に係る一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体を得るのであるが、まず、上記ポリアミド酸重合体溶液に適量のDMF等の有機溶媒を加え、ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度を2〜40%、好ましくは5〜20%に調整する。そして、該溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミン化合物を加え、充分攪拌した後、数時間静置すると、イミド化が進行してゲル状体が得られる。この静置時の反応温度は−10〜50℃、更に好ましくは−5〜20℃である。また、反応時間(静置時間)は1〜10時間である。
【0048】
ここで、ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度を上述のように調整するのは、固形分濃度が2%以下ではイミド化された後も液状を保ってしまい、ゲル状体とならないからである。また、固形分濃度が40%以上ではポリアミド酸重合体溶液の粘度が非常に高くなり、脱水剤や第3級アミンを加えた際に充分な攪拌が困難となるからである。
【0049】
なお、かかる反応において、触媒として使用される第3級アミンとしては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、イソキノリンなどが好ましい。また、脱水剤としては、例えば、無水酢酸が好ましく用いられる。
【0050】
その後、このようにして作製したゲル状体を貧溶媒と共に粉砕してポリイミド粉粒体を得るのである。具体的には、上記得られたゲル状体と該ゲル状体の10〜100%の量の貧溶媒をミキサーに入れて攪拌・粉砕すると、粉砕中にゲル状体から溶媒の約80%が貧溶媒中に溶け込み、また、溶媒中に残留している脱水剤や第3級アミンのほとんども溶媒とともに貧溶媒中に排出され、その結果、ポリイミド粉粒体が現出する。
【0051】
この時に用いられる貧溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼンメチルセロソルブ等が好ましい。なお、貧溶媒の量は上述した量より多くしてもよいが、多くすることによる効果は見られない。
【0052】
そして、この現出した粉粒体をろ過して乾燥させ、更に必要に応じて加熱処理することにより、所望の一般式(1)化15
【0053】
【化15】
Figure 0003544043
【0054】
(式中、R1 ,R2 は2価の有機基、R3 は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表されるポリイミド粉粒体を得ることができるのである。
【0055】
なお、かかる式中、ブロック単位における繰り返し数l,mは1〜15が望ましい。何故ならば、繰り返し数l,mが15を越えると共重合比が偏り、共重合することの効果が小さくなるからである。また、重合体1分子中にl,mの値が異なる単位が存在しても良いが、l,mの値が一定であることが好ましい。
【0056】
また、本発明のポリイミド粉粒体の分子量は特に規制されるものではないが、かかるポリイミド粉粒体により加工される成形品の強度を維持するためには、数平均分子量が5万以上、更には8万以上、特には10万以上、更には12万以上が好ましい。
【0057】
このようにして得られた本発明のポリイミド粉粒体は、その製造過程において分子量の低下がみられず、本発明の製造方法によると分子量が高く機械的強度に優れた粉粒体が得られる。更に、上記構造のポリイミド粉粒体は、その組成により200℃から350℃の間でガラス転移点を持ち、ガラス転移点に達した後、ある温度で柔らかくなり始めるとその後一気に粘度が低下し、250℃から350℃で押出しに最適な2〜10×105 poise の粘度を示す、加工性に優れたものである。また、20℃の純水に24時間浸した時の吸水率が0.3〜0.5%という低吸水率を示す。すなわち、本発明に係る一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体は、機械的強度に優れるとともに耐熱性、加工性に優れ、かつ低吸水性を併せ持っていると言える。
【0058】
以上、本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法とポリイミド粉粒体の実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0059】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0060】
〔実施例 1〕
50mlメスフラスコ(1) に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPという。)15.6g及びジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)25.4gをそれぞれ採り、スターラーを用いて攪拌し、充分溶かした。さらに、他の50mlメスフラスコ(2) にBAPP1.0g、DMF10.0gを採り、同様にして充分溶かした。他方、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに2,2-ビス( 4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3',4,4'- テトラカルボキシリックアシッドジアンヒドライド(以下、ESDAという。)11.9gと 3,3',4,4'- ベンゾフェニルテトラカルボキシリックアシッドジアンヒドライド(以下、BTDAという。)6.4g、及びDMF25.0gを入れ、氷水で冷やしつつ、かつフラスコ中の雰囲気を窒素置換しながら攪拌し充分溶かした。
【0061】
そして、まず事前に得られた50mlメスフラスコ(1) 中のBAPP溶液を攪拌しながら前記500ml三口フラスコ中に速やかに投入した。約30分間攪拌しながら放置した後、50mlメスフラスコ(2)中のBAPP溶液を三口フラスコ中の溶液の粘度に注目しながら三口フラスコ中に徐々に投入した。粘度が1500poise に達したところで、更にDMF85.2gを加え、均一になるまで攪拌を続けた。更に、50mlメスフラスコ(2) 中のBAPP溶液を三口フラスコ中の溶液の粘度に注目しながら三口フラスコ中に徐々に投入した。最大粘度に達した後、BAPP溶液の投入を終了し、1時間攪拌しながら放置し、ポリアミド酸重合体溶液を180g得た。この溶液の固形分濃度は19.3%である。
【0062】
一方、200mlメスフラスコ中にβ−ピコリン8.5g、無水酢酸13.6g、DMF85.0gを採り、よく攪拌して混合溶液を用意した。上記得られたポリアミド酸重合体溶液180gを攪拌しながら、その中にこの混合溶液を徐々に投入して触媒及び脱水剤を加えるとともに溶液の固形分濃度が12.5%になるように調整し、均一になるまで攪拌した。その後、15℃で6時間静置してイミド化させ、ゲル状体を280g得た。
【0063】
この280gのゲル状体と100gのメタノールをミキサーに入れ、2分間粉砕した。この溶液を吸引ろ過し、溶媒を含んだ粉粒体を得た。分離した溶媒は約220gであった。得られた粉粒体を50℃で2時間真空乾燥し、その後、150℃、250℃でそれぞれ20分間加熱処理した。自然冷却した後、軽くほぐし、本発明のポリイミド粉粒体を28.5g得た。
【0064】
得られたポリイミド粉粒体について、分子量(g)、ガラス転移点(℃)、吸水率(%)を測定したところ、数平均分子量は10万以上であり、ガラス転移点は223℃、吸水率は0.47%であった。なお、分子量はGPCにより測定し、ガラス転移点はTMAにより測定した。また、吸水率はASTM D−570規格に基づき、20℃の純水に24時間浸した時の吸水率を測定した。これらの結果を表1に示した。また、このポリイミド粉粒体のそれぞれの温度における溶融粘度を測定し、その結果を溶融粘度(poise)と温度(℃)の関係を示したグラフにして図1(○)に示した。
【0065】
【表1】
Figure 0003544043
【0066】
〔比較例 1〕
実施例1と同様にして得られた固形分濃度が19.3%のポリアミド酸重合体溶液50gを2リットルの三口フラスコに採り、これに915gのDMFを加えて固形分濃度を1%に調整した。この三口フラスコに冷却管を取付け、200℃に加熱して攪拌していると、攪拌中に粉体が析出してきた。攪拌しながら2時間反応を続け、自然冷却した後、吸引ろ過し、溶媒を含んだ粉粒体を得た。分離した溶媒は約900gであった。得られた粉粒体を50℃で2時間真空乾燥し、ポリイミド粉粒体を7.2g得た。
【0067】
得られたポリイミド粉粒体について、実施例1と同様にして分子量(g)、ガラス転移点(℃)、吸水率(%)及び溶融粘度(poise)を測定した。その結果、数平均分子量は5000以下であり、ガラス転移点は146℃であった。また、吸水率は0.47%であった。これらの結果を表1及び図1(□)に示した。
【0068】
〔比較例 2〕
実施例1と同様にして得られた固形分濃度が19.3%のポリアミド酸重合体溶液100gを2リットルの三口フラスコに採り、これにβ−ピコリン5.5g、無水酢酸8.8g、DMF1000.0gを加え、室温で3時間よく攪拌してイミド化を行った。この時の溶液の固形分濃度は1.7%である。一方、攪拌機の付いた5リットルセパラブルフラスコにメタノールを2リットル入れ、攪拌しながら、該メタノール中に前記イミド化を行った反応溶液を少しずつ投入すると、メタノール中に糸状、粒状に固形分が現出した。すべての反応溶液を投入した後、1時間攪拌を続け、固形分中にメタノールが浸透するようにした。その後、吸引ろ過し、溶媒を含んだ固形分を得た。分離した溶媒は約1000gであった。この固形分をミキサーで粉砕した後、50℃で2時間真空乾燥し、その後、150℃、250℃でそれぞれ20分間加熱処理した。自然冷却した後、軽くほぐし、ポリイミド粉粒体を13.5g得た。
【0069】
得られたポリイミド粉粒体について、実施例1と同様にして分子量(g)、ガラス転移点(℃)、吸水率(%)及び溶融粘度(poise)を測定した。その結果、数平均分子量は1万〜6万であり、ガラス転移点は187℃であった。また、吸水率は0.47%であった。これらの結果を表1及び図1(△)に示した。
【0070】
これらの結果より明らかなように、本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法によると、従来の方法に比べて溶媒量が非常に少なくてすみ、また、その操作も非常に簡便で、更に、高分子量のポリイミド粉粒体が得られていることがわかる。なお、分子量とガラス転移点、溶融粘度には相関があり、得られたポリイミド粉粒体の分子量が低下するとガラス転移点や溶融粘度が低下することが分かっており、本発明の方法により得られたポリイミド粉粒体の分子量が高いことは、従来の方法(比較例1及び2)により得られたポリイミド粉粒体よりもガラス転移点が高いことからも明らかである。
【0071】
また、一般式(1)で表される本発明のポリイミド粉粒体は吸水率が低く、また、溶融粘度は従来の方法により得られたポリイミド粉粒体よりも高くなっているが、280〜340℃の範囲で105 〜106 poise の粘度を示しており、現在一般的に使用されている成型機で加工し得る押出温度を有している加工性に優れたものであることがわかる。
【0072】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法によると、粉粒体の製造過程において分子量が低下することなく、高分子量で機械的強度に優れたポリイミド粉粒体を簡便に得ることができる。特に、一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体は、現在一般的に使用されている成型機で加工し得る押出温度を有し、かつ、従来の汎用性熱可塑性樹脂よりも高い耐熱性を有し、更に、吸水率も0.3〜0.5%と、従来の芳香族ポリイミド重合体に比べて低い値を示している。すなわち、本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法及びポリイミド粉粒体は、機械的強度に優れるとともに、優れた耐熱性と加工性とが両立され、かつ、吸水率が低く汎用性のある熱可塑性樹脂を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融押出粘度(poise)と温度(℃)との関係を示したグラフである。

Claims (6)

  1. ポリイミド重合体の前駆体であるポリアミド酸重合体溶液中に、触媒と脱水剤を添加して1〜10時間静置することによりポリイミド重合体のゲル状体を得て、該ゲル状体をその貧溶媒と共に粉砕することを特徴とするポリイミド粉粒体の製造方法。
  2. 前記ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度が、2〜40%、好ましくは5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載するポリイミド粉粒体の製造方法。
  3. 一般式(1)化1
    Figure 0003544043
    (式中、R1,R2は2価の有機基、R3は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表され、前記請求項1又は請求項2に記載する製造方法により得られる、分子量が10万以上であることを特徴とするポリイミド粉粒体。
  4. 前記一般式(1)中のR1が化2
    Figure 0003544043
    で表される2価の有機基であることを特徴とする請求項3に記載するポリイミド粉粒体。
  5. 前記一般式(1)中のR2が化3
    Figure 0003544043
    で表される2価の有機基の群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載するポリイミド粉粒体。
  6. 前記一般式(1)中のR3が化4
    Figure 0003544043
    で表される4価の有機基の群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載するポリイミド粉粒体。
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