JPH0977869A - ポリイミド粉粒体の製造方法及びポリイミド粉粒体 - Google Patents

ポリイミド粉粒体の製造方法及びポリイミド粉粒体

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JPH0977869A
JPH0977869A JP7235189A JP23518995A JPH0977869A JP H0977869 A JPH0977869 A JP H0977869A JP 7235189 A JP7235189 A JP 7235189A JP 23518995 A JP23518995 A JP 23518995A JP H0977869 A JPH0977869 A JP H0977869A
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圭史 岡本
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浩行 古谷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分子量の低下や品質の低下を防ぐことがで
き、かつ簡便に実施できるポリイミド粉粒体の製造方法
と、該製造方法により得られる、分子量が高く機械的強
度に優れた成形体を得ることができ、かつ低吸水性であ
り、更に、溶融押出法により簡単に成型することができ
るポリイミド粉粒体を提供することを目的とする。 【解決手段】 ポリイミド重合体の前駆体であるポリア
ミド酸重合体溶液の固形分濃度を2〜40%、好ましく
は5〜20%に調整し、該溶液中に触媒と脱水剤を添加
して充分攪拌した後、数時間静置することによりポリイ
ミド重合体のゲル状体を得て、その後、このゲル状体を
その貧溶媒と共に粉砕することにより、一般式(1)化
1 【化1】 (式中、Ar1 ,Ar2 は2価の有機基、Ar3 は4価の有機
基を示す。また、l,nは1以上の正の整数、mは0又
は1以上の正の整数を表す。)で表されるポリイミド粉
粒体を、分子量が低下することなく、しかも簡便に得
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリイミド粉粒体の
製造方法及びポリイミド粉粒体に関する。詳しくは、成
形体としての用途の広がる熱可塑性ポリイミド重合体の
粉粒体を製造する方法と該製造方法により得られる機械
的強度に優れ、かつ優れた耐熱性、加工性、低吸水率を
併せ持つポリイミド粉粒体に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】近年、芳
香族ポリイミド重合体は、その優れた機械強度、耐放射
線性、耐薬品性、低温特性、耐熱性等により電気・電子
材料に広く用いられている。しかし、一般に芳香族ポリ
イミド重合体は不溶・不融のためにポリアミド酸重合体
の状態で加工し、それを熱的、化学的に環化させてポリ
イミド重合体を得るという方法が必要であり、加工性が
悪く、さらにそれ以上の加工は困難である。そのため、
従来はフィルム状で使用することが多く、また、その高
い吸水性のため成形体としては用途が限られていた。例
えばアピカルAH(登録商標;ポリイミドフィルム、鐘
淵化学工業(株)社製)はポリイミドフィルムとして汎
用されているが、フィルムとして使用されるだけであ
り、また、20℃の純水に24時間浸した時の吸水率が
2.5%という高い吸水率を示すために、吸水による影
響を受ける用途には使用することはできなかった。
【0003】そこで、最近はこれらの問題を解決すべ
く、低吸水性の熱可塑性ポリイミド重合体が開発されて
きており、このポリイミド重合体を粉末状にして成型機
に充填し加熱圧縮することにより成形体が得られるよう
検討されている。
【0004】これら粉末状の熱可塑性ポリイミド重合体
の製造方法としては、一般に次の2通りの方法が用いら
れている。
【0005】第1の方法としては、上記熱可塑性ポリイ
ミド重合体の前駆体であるポリアミド酸重合体の固形分
濃度が2%以下となるように調整した溶液に化学量論以
上の脱水剤を加え、該溶液の温度を上げて攪拌しながら
放置するとイミド化が進行して粉体が析出してくるの
で、この粉体を乾燥させるという熱的イミド化の方法が
ある。
【0006】しかしながら、この熱的イミド化の方法に
よると、加熱によりポリアミド酸重合体の解重合とイミ
ド化の反応速度との両方が加速されるため、得られるポ
リイミド粉体の分子量が低下し、機械的強度が不充分と
なる可能性が高い。従って、かかる方法では分子量低下
を防ぐために加熱温度を非常に高くすることによりイミ
ド化の速度を優勢にする必要があった。しかし、加熱温
度を高くした場合、溶媒の揮発を防ぐ装置が必要であ
り、また、使用する溶媒等は可燃性であることから危険
性も高いという問題があった。更に、このように加熱温
度を高くしても完全に解重合を防ぎ、分子量の低下を防
ぐことはできないという問題もあった。
【0007】また、第2の方法として、固形分濃度が2
%以下となるように調整したポリアミド酸重合体溶液に
化学量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミンを加え、
室温で数時間攪拌してイミド化させた後、該反応液をメ
タノール、水等の貧溶媒中に滴下してポリイミドを糸状
もしくは塊状に現出させ、その後、乾燥、粉砕するとい
う化学的イミド化の方法がある。
【0008】しかしながら、この化学的イミド化の方法
によると、加熱によるポリアミド酸重合体の解重合を防
ぐことはできるが、固形分濃度が例えば1%程度と低い
ため、大量生産に不向きであるという問題があった。ま
た、かかる方法では反応液を貧溶媒中に滴下することに
より溶媒と貧溶媒とを交換してポリイミドを糸状もしく
は塊状に現出させるのであるが、その際に貧溶媒との交
換が充分に行われるためには、大量の貧溶媒と長時間の
浸漬が必要であった。そのため、得られたポリイミドが
貧溶媒自身や不純物、水分等により解重合することがあ
り、分子量の低下が認められるという問題があった。そ
して、分子量とガラス転移点、溶融粘度には相関があ
り、得られたポリイミド粉粒体の分子量が低下するとガ
ラス転移点や溶融粘度が低下することから、同じポリア
ミド酸重合体溶液から得た粉粒体であってもガラス転移
点や溶融粘度、また機械的強度などが異なってしまうこ
とがあった。また、その他にも残存するアミド酸基と反
応する等悪影響を及ぼすことが多々あり、品質の低下も
認められることがあった。
【0009】そこで、本発明者らは、これらの製造方法
を改善して上記従来の問題点を解決し、分子量の低下や
品質の低下を防ぐことができ、かつ簡便に実施できるポ
リイミド粉粒体の製造方法と、該製造方法により得られ
る、分子量が高く機械的強度に優れた成形体を得ること
ができ、かつ低吸水性であり、更に、溶融押出法により
簡単に成型することができるポリイミド粉粒体を提供す
ることを目的に鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った
のである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るポリイミド
粉粒体の製造方法の要旨とするところは、ポリイミド重
合体の前駆体であるポリアミド酸重合体溶液中に、触媒
と脱水剤を添加して数時間静置することによりポリイミ
ド重合体のゲル状体を得て、該ゲル状体をその貧溶媒と
共に粉砕することにある。
【0011】そして、かかるポリイミド粉粒体の製造方
法において、前記ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度
が、2〜40%、好ましくは5〜20%であることにあ
る。
【0012】次に、本発明に係るポリイミド粉粒体の要
旨とするところは、一般式(1)化5
【0013】
【化5】
【0014】(式中、R1 ,R2 は2価の有機基、R3
は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整
数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表され、
前記製造方法により得られることにある。
【0015】そして、前記一般式(1)中のR1 が化6
【0016】
【化6】
【0017】で表される2価の有機基であることにあ
る。
【0018】また、前記一般式(1)中のR2 が化7
【0019】
【化7】
【0020】で表される2価の有機基の群から選択され
る少なくとも1種であることにある。
【0021】更に、前記一般式(1)中のR3 が化8
【0022】
【化8】
【0023】で表される4価の有機基の群から選択され
る少なくとも1種であることにある。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明に係るポリイミド粉粒体の
製造方法は、ポリイミド重合体の前駆体であるポリアミ
ド酸重合体溶液中に、触媒と脱水剤を添加して数時間静
置することによりポリイミド重合体のゲル状体を得て、
該ゲル状体をその貧溶媒と共に粉砕することを特徴と
し、このゲル状体は、ポリアミド酸重合体溶液の固形分
濃度を2〜40%、好ましくは5〜20%として化学的
にイミド化させることにより得られる。ここで、ゲル状
体とは、溶液が流動性を失ってゲル状、寒天状、ゼリー
状となった状態を総括したものをいい、上述のように固
形分濃度を2〜40%、好ましくは5〜20%としたポ
リアミド酸重合体溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量
の第3級アミンを添加して充分攪拌した後、数時間静置
することによりイミド化が進み、ゲル状体となったポリ
イミド重合体が得られるのである。そして、このゲル状
体を貧溶媒と共に粉砕することにより、粉砕中にゲル状
体から溶媒の約80%が貧溶媒中に溶け込み、その結
果、ポリイミド粉粒体が現出するのである。
【0025】かかる方法は、イミド化の際にポリアミド
酸重合体溶液に熱を加えることがないためポリアミド酸
重合体の解重合が促進されず、イミド化の速度を優勢に
するために加熱温度を高温にしなくても分子量の低下は
おこらない。従って、加熱による溶媒の揮発を防ぐ装置
を必要とせず、また、溶媒もしくは貧溶媒による火災や
爆発の危険が少なく安全である。また、ゲル状体となっ
たものを貧溶媒中で粉砕するため、使用する貧溶媒が少
量でよく、ポリイミド重合体が貧溶媒に接触している時
間も粉砕処理中のみの非常に短時間である。従って、貧
溶媒、更にその中に含まれる不純物や水分の影響が少な
く、従来の方法に比べて分子量の低下や品質の低下が生
じるのを防ぐことができる。また、取扱いが容易で粉砕
機のメンテナンスが容易である。すなわち、本発明の製
造方法によると、分子量が高く機械的強度に優れたポリ
イミド粉粒体を安全にかつ簡便に製造することができ
る。
【0026】ところで、本発明に係るポリイミド粉粒体
の製造方法は、あらゆる構造のポリイミド粉粒体の製造
に適用することができるが、特に、かかる方法により得
られた一般式(1)化9
【0027】
【化9】
【0028】(式中、R1 ,R2 は2価の有機基、R3
は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整
数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表される
ポリイミド粉粒体は、分子量が高く機械的強度に優れ、
かつ優れた耐熱性、加工性、低吸水率を併せ持ってお
り、汎用性のある熱可塑性樹脂を実現できる。
【0029】以下に、本発明に係る一般式(1)で表さ
れるポリイミド粉粒体の製造方法について具体的に説明
する。
【0030】このポリイミド粉粒体の前駆体であるポリ
アミド酸重合体は、従来通り有機溶媒中で酸二無水物成
分とジアミン成分とを反応させることにより得ればよ
い。具体的には、まず、アルゴン、窒素等の不活性ガス
雰囲気中において、一般式(2)化10
【0031】
【化10】
【0032】で表されるエステル酸二無水物のみ、若し
くはこのエステル酸二無水物と一般式(3)化11
【0033】
【化11】
【0034】で表される1種又は2種の有機テトラカル
ボン酸二無水物との混合物(以下、エステル酸二無水物
等という。)を有機溶媒中に溶解若しくは拡散させる。
そして、この溶液に一般式(4) H2 N−Ar2 −H2 N (4) で表される芳香族ジアミン化合物を、固体、若しくは有
機溶媒による溶液、若しくはスラリーの形で添加して反
応させることにより、本発明に係る一般式(1)で表さ
れるポリイミド粉粒体の前駆体であるポリアミド酸重合
体の溶液が得られる。
【0035】この反応において、必ずしも上述のように
エステル酸二無水物等の有機溶媒溶液に芳香族ジアミン
化合物を添加する必要はなく、添加順序は特に限定され
ない。例えば、上記芳香族ジアミン化合物の有機溶媒溶
液中に、上記エステル酸二無水物等を、固体、若しくは
有機溶媒による溶液、若しくはスラリーの形で添加して
もよい。また、上記エステル酸二無水物等は混合物とし
て同時に添加する必要もなく、それぞれ別々に添加して
もよい。すなわち、上記芳香族ジアミン化合物の有機溶
媒溶液中に、上記エステル酸二無水物を、次いで上記有
機テトラカルボン酸二無水物を、固体、若しくは有機溶
媒による溶液、若しくはスラリーの形で順に添加しても
よい。また、この添加順序も限定されない。
【0036】この時の反応温度は−10〜50℃、更に
好ましくは−5〜20℃である。反応時間は30分〜3
時間である。
【0037】更に詳しくは、前記一般式(2)で表され
るエステル酸二無水物としては、あらゆる構造のものが
使用可能であるが、諸特性のバランスから、R1 が化1
【0038】
【化12】
【0039】から選択される2価の有機基であるものを
主成分とすることが好適である。
【0040】また、前記一般式(3)で表される有機テ
トラカルボン酸二無水物としては、あらゆる構造のもの
が使用可能であるが、諸特性のバランスから、R3 が化
13
【0041】
【化13】
【0042】から選択される4価の有機基であるものを
主成分とすることが好適である。
【0043】また、前記一般式(4)で表される芳香族
ジアミン化合物としては、あらゆる構造のものが使用可
能であるが、諸特性のバランスから、R2 が化14
【0044】
【化14】
【0045】から選択される2価の有機基であるものを
主成分とすることが好適である。
【0046】また、ポリアミド酸重合体溶液の生成反応
に使用される有機溶媒としては、例えばジメチルスルホ
キシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶
媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチ
ルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N-ジメチル
アセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアセトア
ミド系溶媒等の極性溶媒を挙げることができ、これらを
単独又は2種あるいは3種以上の混合溶媒として用いる
ことができる。更に、これらの極性溶媒に、ポリアミド
酸重合体の貧溶媒であるアセトン、メタノール、エタノ
ール、イソプロパノール、ベンゼンメチルセロソルブ等
を混合してもよく、該貧溶媒との混合溶媒として用いる
こともできる。
【0047】次に、このようにして作製したポリアミド
酸重合体溶液から本発明に係る一般式(1)で表される
ポリイミド粉粒体を得るのであるが、まず、上記ポリア
ミド酸重合体溶液に適量のDMF等の有機溶媒を加え、
ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃度を2〜40%、好
ましくは5〜20%に調整する。そして、該溶液に化学
量論以上の脱水剤と触媒量の第3級アミン化合物を加
え、充分攪拌した後、数時間静置すると、イミド化が進
行してゲル状体が得られる。この静置時の反応温度は−
10〜50℃、更に好ましくは−5〜20℃である。ま
た、反応時間(静置時間)は1〜10時間である。
【0048】ここで、ポリアミド酸重合体溶液の固形分
濃度を上述のように調整するのは、固形分濃度が2%以
下ではイミド化された後も液状を保ってしまい、ゲル状
体とならないからである。また、固形分濃度が40%以
上ではポリアミド酸重合体溶液の粘度が非常に高くな
り、脱水剤や第3級アミンを加えた際に充分な攪拌が困
難となるからである。
【0049】なお、かかる反応において、触媒として使
用される第3級アミンとしては、ピリジン、α−ピコリ
ン、β−ピコリン、γ−ピコリン、トリメチルアミン、
トリエチルアミン、イソキノリンなどが好ましい。ま
た、脱水剤としては、例えば、無水酢酸が好ましく用い
られる。
【0050】その後、このようにして作製したゲル状体
を貧溶媒と共に粉砕してポリイミド粉粒体を得るのであ
る。具体的には、上記得られたゲル状体と該ゲル状体の
10〜100%の量の貧溶媒をミキサーに入れて攪拌・
粉砕すると、粉砕中にゲル状体から溶媒の約80%が貧
溶媒中に溶け込み、また、溶媒中に残留している脱水剤
や第3級アミンのほとんども溶媒とともに貧溶媒中に排
出され、その結果、ポリイミド粉粒体が現出する。
【0051】この時に用いられる貧溶媒としては、アセ
トン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベ
ンゼンメチルセロソルブ等が好ましい。なお、貧溶媒の
量は上述した量より多くしてもよいが、多くすることに
よる効果は見られない。
【0052】そして、この現出した粉粒体をろ過して乾
燥させ、更に必要に応じて加熱処理することにより、所
望の一般式(1)化15
【0053】
【化15】
【0054】(式中、R1 ,R2 は2価の有機基、R3
は4価の有機基を示す。また、l,nは1以上の正の整
数、mは0又は1以上の正の整数を表す。)で表される
ポリイミド粉粒体を得ることができるのである。
【0055】なお、かかる式中、ブロック単位における
繰り返し数l,mは1〜15が望ましい。何故ならば、
繰り返し数l,mが15を越えると共重合比が偏り、共
重合することの効果が小さくなるからである。また、重
合体1分子中にl,mの値が異なる単位が存在しても良
いが、l,mの値が一定であることが好ましい。
【0056】また、本発明のポリイミド粉粒体の分子量
は特に規制されるものではないが、かかるポリイミド粉
粒体により加工される成形品の強度を維持するために
は、数平均分子量が5万以上、更には8万以上、特には
10万以上、更には12万以上が好ましい。
【0057】このようにして得られた本発明のポリイミ
ド粉粒体は、その製造過程において分子量の低下がみら
れず、本発明の製造方法によると分子量が高く機械的強
度に優れた粉粒体が得られる。更に、上記構造のポリイ
ミド粉粒体は、その組成により200℃から350℃の
間でガラス転移点を持ち、ガラス転移点に達した後、あ
る温度で柔らかくなり始めるとその後一気に粘度が低下
し、250℃から350℃で押出しに最適な2〜10×
105 poise の粘度を示す、加工性に優れたものであ
る。また、20℃の純水に24時間浸した時の吸水率が
0.3〜0.5%という低吸水率を示す。すなわち、本
発明に係る一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体
は、機械的強度に優れるとともに耐熱性、加工性に優
れ、かつ低吸水性を併せ持っていると言える。
【0058】以上、本発明に係るポリイミド粉粒体の製
造方法とポリイミド粉粒体の実施例を説明したが、本発
明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本
発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で当業者の知識に基
づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し
うるものである。
【0059】
【実施例】以下に実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるも
のではない。
【0060】〔実施例 1〕50mlメスフラスコ(1) に
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン
(以下、BAPPという。)15.6g及びジメチルホ
ルムアミド(以下、DMFという。)25.4gをそれ
ぞれ採り、スターラーを用いて攪拌し、充分溶かした。
さらに、他の50mlメスフラスコ(2) にBAPP1.0
g、DMF10.0gを採り、同様にして充分溶かし
た。他方、攪拌機を備えた500ml三口フラスコに2,2-
ビス( 4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート
-3,3',4,4'- テトラカルボキシリックアシッドジアンヒ
ドライド(以下、ESDAという。)11.9gと 3,
3',4,4'- ベンゾフェニルテトラカルボキシリックアシ
ッドジアンヒドライド(以下、BTDAという。)6.
4g、及びDMF25.0gを入れ、氷水で冷やしつ
つ、かつフラスコ中の雰囲気を窒素置換しながら攪拌し
充分溶かした。
【0061】そして、まず事前に得られた50mlメスフ
ラスコ(1) 中のBAPP溶液を攪拌しながら前記500
ml三口フラスコ中に速やかに投入した。約30分間攪拌
しながら放置した後、50mlメスフラスコ(2)中のBA
PP溶液を三口フラスコ中の溶液の粘度に注目しながら
三口フラスコ中に徐々に投入した。粘度が1500pois
e に達したところで、更にDMF85.2gを加え、均
一になるまで攪拌を続けた。更に、50mlメスフラスコ
(2) 中のBAPP溶液を三口フラスコ中の溶液の粘度に
注目しながら三口フラスコ中に徐々に投入した。最大粘
度に達した後、BAPP溶液の投入を終了し、1時間攪
拌しながら放置し、ポリアミド酸重合体溶液を180g
得た。この溶液の固形分濃度は19.3%である。
【0062】一方、200mlメスフラスコ中にβ−ピコ
リン8.5g、無水酢酸13.6g、DMF85.0g
を採り、よく攪拌して混合溶液を用意した。上記得られ
たポリアミド酸重合体溶液180gを攪拌しながら、そ
の中にこの混合溶液を徐々に投入して触媒及び脱水剤を
加えるとともに溶液の固形分濃度が12.5%になるよ
うに調整し、均一になるまで攪拌した。その後、15℃
で6時間静置してイミド化させ、ゲル状体を280g得
た。
【0063】この280gのゲル状体と100gのメタ
ノールをミキサーに入れ、2分間粉砕した。この溶液を
吸引ろ過し、溶媒を含んだ粉粒体を得た。分離した溶媒
は約220gであった。得られた粉粒体を50℃で2時
間真空乾燥し、その後、150℃、250℃でそれぞれ
20分間加熱処理した。自然冷却した後、軽くほぐし、
本発明のポリイミド粉粒体を28.5g得た。
【0064】得られたポリイミド粉粒体について、分子
量(g)、ガラス転移点(℃)、吸水率(%)を測定し
たところ、数平均分子量は10万以上であり、ガラス転
移点は223℃、吸水率は0.47%であった。なお、
分子量はGPCにより測定し、ガラス転移点はTMAに
より測定した。また、吸水率はASTM D−570規
格に基づき、20℃の純水に24時間浸した時の吸水率
を測定した。これらの結果を表1に示した。また、この
ポリイミド粉粒体のそれぞれの温度における溶融粘度を
測定し、その結果を溶融粘度(poise)と温度(℃)の関
係を示したグラフにして図1(○)に示した。
【0065】
【表1】
【0066】〔比較例 1〕実施例1と同様にして得ら
れた固形分濃度が19.3%のポリアミド酸重合体溶液
50gを2リットルの三口フラスコに採り、これに91
5gのDMFを加えて固形分濃度を1%に調整した。こ
の三口フラスコに冷却管を取付け、200℃に加熱して
攪拌していると、攪拌中に粉体が析出してきた。攪拌し
ながら2時間反応を続け、自然冷却した後、吸引ろ過
し、溶媒を含んだ粉粒体を得た。分離した溶媒は約90
0gであった。得られた粉粒体を50℃で2時間真空乾
燥し、ポリイミド粉粒体を7.2g得た。
【0067】得られたポリイミド粉粒体について、実施
例1と同様にして分子量(g)、ガラス転移点(℃)、
吸水率(%)及び溶融粘度(poise)を測定した。その結
果、数平均分子量は5000以下であり、ガラス転移点
は146℃であった。また、吸水率は0.47%であっ
た。これらの結果を表1及び図1(□)に示した。
【0068】〔比較例 2〕実施例1と同様にして得ら
れた固形分濃度が19.3%のポリアミド酸重合体溶液
100gを2リットルの三口フラスコに採り、これにβ
−ピコリン5.5g、無水酢酸8.8g、DMF100
0.0gを加え、室温で3時間よく攪拌してイミド化を
行った。この時の溶液の固形分濃度は1.7%である。
一方、攪拌機の付いた5リットルセパラブルフラスコに
メタノールを2リットル入れ、攪拌しながら、該メタノ
ール中に前記イミド化を行った反応溶液を少しずつ投入
すると、メタノール中に糸状、粒状に固形分が現出し
た。すべての反応溶液を投入した後、1時間攪拌を続
け、固形分中にメタノールが浸透するようにした。その
後、吸引ろ過し、溶媒を含んだ固形分を得た。分離した
溶媒は約1000gであった。この固形分をミキサーで
粉砕した後、50℃で2時間真空乾燥し、その後、15
0℃、250℃でそれぞれ20分間加熱処理した。自然
冷却した後、軽くほぐし、ポリイミド粉粒体を13.5
g得た。
【0069】得られたポリイミド粉粒体について、実施
例1と同様にして分子量(g)、ガラス転移点(℃)、
吸水率(%)及び溶融粘度(poise)を測定した。その結
果、数平均分子量は1万〜6万であり、ガラス転移点は
187℃であった。また、吸水率は0.47%であっ
た。これらの結果を表1及び図1(△)に示した。
【0070】これらの結果より明らかなように、本発明
に係るポリイミド粉粒体の製造方法によると、従来の方
法に比べて溶媒量が非常に少なくてすみ、また、その操
作も非常に簡便で、更に、高分子量のポリイミド粉粒体
が得られていることがわかる。なお、分子量とガラス転
移点、溶融粘度には相関があり、得られたポリイミド粉
粒体の分子量が低下するとガラス転移点や溶融粘度が低
下することが分かっており、本発明の方法により得られ
たポリイミド粉粒体の分子量が高いことは、従来の方法
(比較例1及び2)により得られたポリイミド粉粒体よ
りもガラス転移点が高いことからも明らかである。
【0071】また、一般式(1)で表される本発明のポ
リイミド粉粒体は吸水率が低く、また、溶融粘度は従来
の方法により得られたポリイミド粉粒体よりも高くなっ
ているが、280〜340℃の範囲で105 〜106 po
ise の粘度を示しており、現在一般的に使用されている
成型機で加工し得る押出温度を有している加工性に優れ
たものであることがわかる。
【0072】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るポリイミド
粉粒体の製造方法によると、粉粒体の製造過程において
分子量が低下することなく、高分子量で機械的強度に優
れたポリイミド粉粒体を簡便に得ることができる。特
に、一般式(1)で表されるポリイミド粉粒体は、現在
一般的に使用されている成型機で加工し得る押出温度を
有し、かつ、従来の汎用性熱可塑性樹脂よりも高い耐熱
性を有し、更に、吸水率も0.3〜0.5%と、従来の
芳香族ポリイミド重合体に比べて低い値を示している。
すなわち、本発明に係るポリイミド粉粒体の製造方法及
びポリイミド粉粒体は、機械的強度に優れるとともに、
優れた耐熱性と加工性とが両立され、かつ、吸水率が低
く汎用性のある熱可塑性樹脂を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融押出粘度(poise)と温度(℃)との関係を
示したグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリイミド重合体の前駆体であるポリア
    ミド酸重合体溶液中に、触媒と脱水剤を添加して数時間
    静置することによりポリイミド重合体のゲル状体を得
    て、該ゲル状体をその貧溶媒と共に粉砕することを特徴
    とするポリイミド粉粒体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記ポリアミド酸重合体溶液の固形分濃
    度が、2〜40%、好ましくは5〜20%であることを
    特徴とする請求項1に記載するポリイミド粉粒体の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 一般式(1)化1 【化1】 (式中、R1 ,R2 は2価の有機基、R3 は4価の有機
    基を示す。また、l,nは1以上の正の整数、mは0又
    は1以上の正の整数を表す。)で表され、前記請求項1
    又は請求項2に記載する製造方法により得られることを
    特徴とするポリイミド粉粒体。
  4. 【請求項4】 前記一般式(1)中のR1 が化2 【化2】 で表される2価の有機基であることを特徴とする請求項
    3に記載するポリイミド粉粒体。
  5. 【請求項5】 前記一般式(1)中のR2 が化3 【化3】 で表される2価の有機基の群から選択される少なくとも
    1種であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記
    載するポリイミド粉粒体。
  6. 【請求項6】 前記一般式(1)中のR3 が化4 【化4】 で表される4価の有機基の群から選択される少なくとも
    1種であることを特徴とする請求項3乃至請求項5のい
    ずれかに記載するポリイミド粉粒体。
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