JP3543898B2 - エッチング用ガスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種半導体または液晶等の電子デバイス製造分野において極めて有用なドライエッチング用ガス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ヨウ化水素は各種電子デバイス製造分野における好適なドライエッチング用ガスになり得るものとして注目視されている。しかしながら、従来公知の製法、たとえばヨウ素とリンまたはリン化合物との反応、または水素とヨウ素との直接反応により得られたヨウ化水素をそのままエッチング用ガスとして用いた場合は、エッチング装置もしくは設備における排ガスラインや排気ポンプ、またはエッチングチャンバーなどの接ガス部分に腐食を生じさせてみたり、あるいはプラズマエッチング時に、放電開始からエッチング開始までの時間(以下、この時間を誘導期間という)の遅れが大きく、プラズマが安定せずエッチング時間が長くなって生産性を悪化させるという問題が見られた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のドライエッチング用ガスに見られるような上記した欠点を改善し、装置または設備に対して腐食を与えることが極めて少なく、また、誘導期間もより短くすることが可能なエッチング用ガス製造方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはヨウ化水素中に含まれる不純物、特に水分に注目して鋭意研究を重ねてきた結果、純度99.9重量%以上からなるヨウ化水素であって、しかも特に水分含有量を1重量ppm 以下としたものからなるガスをエッチング用ガスとして使用した場合は、極めて顕著に前記した目的が達成されるものであることを見出した。また、このようなエッチング用ガスの製法についても更なる研究を重ね、本発明を完成するに到った。
【0005】
すなわち、本発明は、1)ヨウ素の水素化反応により生成した粗ヨウ化水素ガスを0〜―35℃に冷却し、生じた凝縮物および/または固化物をガスより除去した後、次いでゼオライトと接触させることを特徴とするエッチング用ガスの製造方法、2)粗ヨウ化水素ガスを0〜―35℃に冷却する前に、一旦該粗ヨウ化水素ガスの温度を2〜30℃とし、液化物を分離しておくことを特徴とする、1) に記載のエッチング用ガスの製造方法。、および、3)粗ヨウ化水素が、ヨウ素とテトラリンとの反応により生成したものである、1) または 2) 記載のエッチング用ガスの製造方法を開示するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるヨウ化水素は、通常、ヨウ素を各種還元剤を用い還元することにより得られるものであり、特に製法を限定するものではないが、好ましくはヨウ素をテトラリンにより還元する方法が挙げられる。すなわち、この方法によれば触媒は必要とすることがなく、また、各種金属、リンあるいは水などといった不純物含有も通常は極めて少なく、比較的純度のよいヨウ化水素を収率よく発生させることができるからである。
【0007】
ヨウ素とテトラリンとの反応によりヨウ化水素を発生させる方法においては、通常は常圧付近の圧力にて 120〜210 ℃程度に加熱してあるテトラリン中にヨウ素を徐々に、または分割して添加しながら反応させることにより、無用なヨウ素蒸気を発生させることもなく比較的高収率にてヨウ化水素を発生させることができる。
【0008】
上記した方法のうちでも特に、原料テトラリンを予め (10〜40) : (90〜60) の重量比で二つに分け、この少量の方のテトラリンを 120℃〜沸点(210℃程度) 、より好ましくは 150℃〜沸点(210℃程度) の範囲に保持しておき、この中に、他方のテトラリンにヨウ素濃度20〜40重量%程度(飽和溶液またはそれ以下の濃度)になるようにヨウ素を溶解させたものを添加し、反応を行わせるという方法を採用する場合はさらに好ましい態様となり、上記した方法にも増し、とりわけ純度のよいヨウ化水素を収率よく得ることが可能である。
【0009】
本発明では、上記に例示したような方法により得られる粗ヨウ化水素ガスを、好ましくは温度2〜30℃としてガス中に含まれるテトラリンおよびナフタレンなどを液化し分離した後、−35〜0℃、より好ましくは−35〜−10℃の温度に冷却し、これにより生ずる凝縮物および/または固化物を分離し、次いでゼオライトと接触させることにより、エッチングガスの用途として好適なヨウ化水素を得ることができる。上記において冷却温度が0℃より高い温度ではヨウ化水素ガス中に含まれる水分を1重量ppm 以下とすることが極めて困難であり、また、−35℃よりも低温に冷却するような場合はヨウ化水素ガス自体も液化するようになって、高純度のヨウ化水素ガスの収率が極めて悪化してしまい、いずれも本発明の目的としたことを達成することが非常に難しくなる。
【0010】
上記本発明のエッチング用ガスの製造方法で用いるゼオライトは、平均細孔径が3〜5ÅであるA型ゼオライトを用いるのが好ましい。また、使用されるゼオライトは硫黄分などの不純物を含有している可能性もあるため、予めヨウ化水素と接触させて硫化水素に転化し、除去しておくことが好ましい。このゼオライト中の硫黄分を除去する際に必要とするヨウ化水素の量は、通常、ゼオライトの量に対して少なくとも1/3(重量比)以上を用いて行うのが好ましい。
【0011】
本発明では上記方法により、水分含有1重量ppm 以下でかつ純度99.9重量%以上という極めて高純度のヨウ化水素ガスが容易に得られるが、さらには目開き 0.5μm以下のフィルターを通してゼオライト層から同伴する可能性のある微粉を完全に除去するようにしておくことがより好ましい。
【0012】
このようにして製造される高純度ヨウ化水素ガスは、そのままか、若しくは必要に応じて液化されてボンベに充填された後、SnO、InあるいはZnOを主成分とした透明導電性膜のドライエッチング用ガスとして、または、シリコン系、ガリウム系、銅系あるいはインジウム系半導体用のドライエッチング用ガスなどとして好適に用いることができる。
【0013】
ちなみに、本発明者らの研究によれば、ヨウ化水素中に存する水分が1重量ppm を越えるものをエッチング用に用いる場合は、該エッチング装置または設備に対して腐食を与えることが急激に大きくなるものであることから、本発明の目的としたことを達成することは非常に困難であり、またヨウ化水素の純度が99.9重量%未満にある場合は、エッチングの再現性が通常得られなくなり、実用的には極めて不適当である。
【0014】
また、本発明のエッチング用ガスの製造方法によれば、ヨウ素の還元反応により生ずるヨウ化水素をそのままゼオライトに接触させるのではなく、一旦、0〜−35℃の温度範囲におき、生ずる凝縮物および/または固化物をガス中より除去するとした態様を採用しているため、ゼオライトのライフも大幅に延長させることが可能となっており、この点も本発明の大きな特徴である。
【0015】
本発明のエッチング用ガスの使用方法については特に制限はなく、既知のエッチングガスとほぼ同様に適用することができ、たとえば、アルゴンまたはヘリウムなどのような不活性ガスと混合することによっても、エッチング用ガスとして供することが可能である。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例および各種試験例により、さらに詳細に説明する。以下において、%およびppm は全て重量基準の値である。
【0017】
実施例1
500mlのフラスコにテトラリン 160gおよびフレーク状の固体ヨウ素40gを入れ、40℃にて溶解してヨウ素のテトラリン溶液を調製した。これとは別に他の 500mlのフラスコにテトラリン40gを入れ、撹拌下、 200℃に加熱して温度を維持しながら、これに上記にて調製したヨウ素溶液を2時間かけて連続的に添加し、反応させた。
上記反応により発生する粗ヨウ化水素ガスをコンデンサーにて5℃に降温し、同伴するテトラリンを分離した後、第一のコールドトラップにて−30℃に冷却し、次いでゼオライト(モレキュラーシーブ4A)50gを充填したガラス製カラム(内径25mm)中を通過させ、さらに目開き 0.1μmのフィルターを通過させた後、最終的には第二のコールドトラップにて−45℃まで冷却し、全量を液化して精ヨウ化水素39.5gを得た。収率は98.0%であった。このものの融点は−50.8℃、沸点は−35.4℃であり、また、質量分析計による測定およびヨウ素の態別分析法によりヨウ化水素の分析を行ったところ、その純度は99.9%以上であった。また、露点計を用い露点の測定から得られた水分濃度は0.05ppm であった。
【0018】
比較例1
実施例1において、第一のコールドトラップにて冷却する温度を、3℃として行った以外は全て同様に操作し、ヨウ化水素40.5g(収率 101%相当)を得た。このもののヨウ化水素の純度は97.5%であり、露点の測定から得られる水分濃度は 0.8ppm であった。また、ガスクロマトグラフィーによるガス中の成分分析では、テトラリン2%およびナフタレン 0.5%が検出された。
【0019】
比較例2
実施例1において、第一のコールドトラップにて冷却する温度を、−40℃として行った以外は全て同様に操作し、ヨウ化水素15.3g(収率37.9%)を得た。この場合、第一のコールドトラップには不純物のみではなくヨウ化水素も液化して溜まってしまっており、高純度のヨウ化水素を収率よく得ることは不可能であった。
【0020】
比較例3〜5
従来公知のヨウ化水素の製造方法として、Mellorらによるリンまたはリン化合物を還元剤として使用する方法(j.w.Mellor編,Mellors Comprehensive Treatise or Inorganic and Theoretical Chemistry,Supplement2 Part1,p170,1960)により得られたヨウ化水素(比較例3)、ヨウ素の懸濁液と硫化水素の反応でヨウ化水素酸を作り、これを脱水する方法(ものをきれいにする方法,「物性」編集委員会,p65,1965 )により得られたヨウ化水素(比較例4)、およびBrauerによる白金触媒を用いた水素/ヨウ素の直接反応(E.R.Caley,M.G.Burforal,Inorganic Synthesis,Vol1,p159,1939 )により得られたヨウ化水素(比較例5)を各々、実施例1記載同様、露点計による露点の測定から水分濃度を求め、それらを実施例1記載により得られるヨウ化水素と比較した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003543898
上記表1からも明らかな通り、従来の公知の製法により得られるヨウ化水素は比較的大量な水分を含むのに対し、本発明の製法により得られるヨウ化水素は極めて含有水分の少ないものであることがわかる。
【0022】
・ステンレス鋼に対する腐食試験
JIS−SUS304からなるステンレス鋼のテストピースを用い、実施例1により得られた本発明のヨウ化水素ガス、および上記比較例3〜5で得られたヨウ化水素ガスをそれぞれオートクレーブ中に4kg/cmG となる圧力で封入し、温度60℃のもとで1カ月間腐食試験を行った。この試験では腐食の速度をそれらテストピースにおける重量変化から求め、得られた結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
Figure 0003543898
上記からも明らかなように、従来の公知の製法により得られるヨウ化水素は実用上耐えられないほどの腐食を起こしてしまうのに対し、本発明のヨウ化水素は腐食を与えることが格段に小さいものであり、非常に優れた性能をもつものであることがわかる。ちなみに「ある程度の腐食」とは、Corrosion Guid,1968 によれば 0.125mm/年以上の数値をいうものとされている。
【0024】
・エッチング試験
表面に厚さ 150μmのITO(Indium Tin Oxide)からなる透明導電性膜とSiOからなる下地膜を成膜した、縦 360mm×横 485mm×厚さ 1.0mmのガラス性基板を被加工物としてエッチング装置(平衡平板型ドライエッチング装置)にセットした。このときエッチングチャンバー内の上部電極と基板の間に、 150mmのギャップを設定した。エッチングチャンバーを真空排気により0.1mTorrとして基板温度を60℃とした後、エッチングチャンバー内にガス導入系より、本発明の実施例1で得られたヨウ化水素、および従来公知の方法である前記比較例3,4,5で得られたヨウ化水素を用いてそれぞれを、圧力50mTorr 、流速 350sccmの条件で導入し、高周波プラズマ中で透明導電膜のエッチングを行った。その結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
Figure 0003543898
上記表3からも明らかなように、従来公知の製法により得られるヨウ化水素に比し、本発明のガスでは非常に誘導期間が短く、優に20秒以上の時間をも短縮することを可能とするものであり、非常に優れた生産性を有する。なお、このような結果は、被エッチング物がZnO系の透明導電膜やシリコン、ガリウム、銅、インジウムおよびそれらの合金でもほぼ同様に得られ、同じように誘導期間の短縮が見られた。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明に記載のエッチング用ガスを用いる場合は、エッチング装置もしくは設備における配管やポンプ、またはエッチングチャンバー等の接ガス部分に腐食を与えることが極めて少なく、さらには誘導期間も顕著に短縮することができ、生産性を大きく向上させることを可能とするものである。
また、本発明のエッチング用ガスの製造方法によれば、上記作用を生むために必要な、水分含有量が1重量ppm 以下であってかつヨウ化水素濃度99.9重量%以上とした条件を十分に満足するガスを容易に得ることができる。

Claims (3)

  1. ヨウ素の水素化反応により生成した粗ヨウ化水素ガスを0〜―35℃に冷却し、生じた凝縮物および/または固化物をガスより除去した後、次いでゼオライトと接触させることを特徴とするエッチング用ガスの製造方法。
  2. 粗ヨウ化水素ガスを0〜―35℃に冷却する前に、一旦該粗ヨウ化水素ガスの温度を2〜30℃とし、液化物を分離しておくことを特徴とする、請求項1に記載のエッチング用ガスの製造方法。
  3. 粗ヨウ化水素が、ヨウ素とテトラリンとの反応により生成したものである、請求項1または2に記載のエッチング用ガスの製造方法。
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