JP3541577B2 - Pda検出器用データ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体クロマトグラフ装置等に用いられるフォトダイオードアレイ検出器(以下、「PDA検出器」という)用のデータ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PDA検出器は多数の小さなフォトダイオードを直線的に配列したものであって、複数の波長の光強度を同時に測定することができる。図6はPDA検出器の概略構成図である。重水素ランプ等の光源10から出射された光はレンズ11で集光され、スリット12を介して測定セル13に照射される。測定セル13内のZ形状の流通セル13aには、液体クロマトグラフのカラムで分離された液体試料が流される。光はこの流通セル13a内の液体試料中を通過して回折格子14に到達し、ここで波長分散されてPDA15に入射される。PDA15の各フォトダイオードではそれぞれ異なる波長に対する検出信号が得られるので、PDA15に接続されたデータ処理装置20にて演算処理を行なうことにより、時間t、波長λ及び相対強度Sのディメンジョンを有する三次元クロマトグラムが作成される。
【0003】
上記三次元クロマトグラムでは、通常、成分毎に最大強度の現われる波長λが相違する。このため、三次元クロマトグラムに対し所定の処理を行なって試料の定性分析又は定量分析を行なう際には、まず、測定対象の未知試料に含まれると推定される所定成分に対応したピークが現われるクロマトグラムを得るために最適な波長条件(波長λの中心値及び帯域幅)を一覧表にした多波長テーブルを測定者が予め入力設定する。また、この多波長テーブルに記述した波長λのピークを同定するための保持時間等を記した同定テーブルを測定者が入力設定する。保持時間等のパラメータは送液流量、カラムの種類等の分析条件により大きく相違するため、一般には一定量の既知成分を含む標準試料を予め分析した結果が参照される。測定時には、測定者は目的とする成分毎に多波長テーブルの中のいずれの波長を使用するのかを指示する。データ処理装置20では、設定された多波長テーブル内の所定の波長に対応する二次元クロマトグラムを描出し、その二次元クロマトグラムに対し同定テーブルに記した条件に従ってピーク同定を行なって成分を同定し、更に、ピーク波形の面積計算等の演算処理を実行することにより定量分析を行なう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のデータ処理装置では上述のような手順で分析を行なっていたが、特に多数の成分を含む試料を分析する場合には、多波長テーブルを入力設定したり各成分毎に最適な波長を入力したりする操作は手間を要し、作業効率が悪くなるのみならず入力ミスによる分析の誤りを生じる恐れもあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、測定者による入力設定操作の負担を軽減することのできるPDA検出器用データ処理装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明は、クロマトグラフにより分離された試料成分を検出するPDA検出器用のデータ処理装置において、
a)PDA検出器から得られる検出信号を基に作成された三次元クロマトグラムから各時刻毎に最大強度を示す波長のデータを抽出して二次元クロマトグラムを作成する最大強度クロマトグラム作成手段と、
b)該最大強度クロマトグラム作成手段にて作成された二次元クロマトグラムに対しピーク検出を行なうピーク検出手段と、
c)該ピーク検出手段で検出したピークトップに対応する波長により多波長テーブルを作成する多波長テーブル作成手段と、
d)前記ピーク検出手段で検出したピークトップに対応する保持時間により同定テーブルを作成する同定テーブル作成手段と、
e)三次元クロマトグラムより前記多波長テーブル中の波長毎に二次元クロマトグラムを作成する波長固定クロマトグラム作成手段と、
f)該波長固定クロマトグラム作成手段にて作成された二次元クロマトグラムに対し前記同定テーブル中のパラメータを用いて波形解析を行なう解析手段と、
を備えることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係るPDA検出器用データ処理装置では、まず、最大強度クロマトグラム作成手段は、標準試料のクロマトグラフ分析を行なって得られた時間、波長及び相対強度の三次元クロマトグラムのデータから各時刻毎に最大相対強度を有する波長のデータを抽出し、時間−相対強度の二次元クロマトグラムを作成する。つまり、このクロマトグラムは、複数の波長に対するデータが混在したものとなっている。ピーク検出手段は、そのクロマトグラムに対し所定の基準に照らしてピーク検出を行なう。そして、検出された各ピークの情報を基に、多波長テーブル作成手段は各ピークトップの波長を列記した多波長テーブルを、同定テーブル作成手段は多波長テーブル中の波長のピークトップの現われる保持時間を列記した同定テーブルを自動的に作成する。
【0008】
次に未知試料のデータ処理に際し、波長固定クロマトグラム作成手段は、三次元クロマトグラムのデータから多波長テーブルに記述されている波長毎に時間−相対強度の二次元クロマトグラムを作成する。つまり、このクロマトグラムは同一波長に対するデータのみから描出したものである。解析手段は、この二次元クロマトグラムに対しピーク検出を行ない、同定テーブル中の対応する保持時間でもってピークを同定し、更に、面積計算、定量計算等の演算処理を行ない定性分析や定量分析を実行する。
【0009】
【発明の効果】
本発明に係るPDA検出器用データ処理装置によれば、クロマトグラフにて採取したデータに基づき自動的に多波長テーブル及び同定テーブルが作成されるため、従来のように測定者自らが手作業によりこれらのテーブルを入力する操作が不要になる。このため、分析効率が向上すると共に単純な入力ミスによる分析の誤りを防止することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明のPDA検出器用データ処理装置の一実施例を図1〜図5を参照して説明する。図1は本データ処理装置の構成を機能的に示す図であり、例えばCPUを中心とするパーソナルコンピュータによりその機能が実現される。
【0011】
三次元クロマト用メモリ21には、PDA検出器で採取された、時間t、波長λ及び相対強度Sの3つのディメンジョンを有するデータが格納される。このメモリ21から読出し制御部22により適宜のデータが読み出され、最大強度検出部23又は二次元クロマト用メモリ24に入力される。二次元クロマト用メモリ24は、時間−相対強度のクロマトグラムを構成するデータが記憶されるメモリである。ピーク検出部25はこの二次元クロマト用メモリ24に格納されたデータに対しピーク検出を行ない、検出したピーク情報に基づいて多波長テーブル及び同定テーブルを作成し、それぞれ多波長テーブルメモリ26及び同定テーブルメモリ27に記憶する。また、ピーク同定部28は同定テーブル中のパラメータを参照してクロマトグラムのピークを同定し、演算処理部29はその同定されたピーク波形に所定の波形処理及び演算処理を施すことにより成分の定量分析を実行する。
【0012】
次に、上記構成のデータ処理装置の処理内容を図2のフローチャートに沿って説明する。まず、三次元クロマト用メモリ21には、標準試料をクロマトグラフ分析して得られたデータが蓄積される。読出し制御部22は、三次元クロマト用メモリ21からデータを順次読み出して最大強度検出部23へ送る。最大強度検出部23は、同一時刻の複数の波長λに対する相対強度Sのデータの中で相対強度Sが最大であるデータを抽出し、このデータを二次元クロマト用メモリ24に記憶させる。これにより、各時刻毎に最大強度を呈する波長λのデータを連ねた二次元クロマトグラムが作成される(ステップS1)。このような処理機能は、従来のこの種の装置に搭載されているもので、例えばMAXPLOT機能と呼ばれている。すなわち、この処理では、図3(a)に示すような三次元クロマトグラムから、その三次元クロマトグラムを時間(t)軸及び相対強度(S)軸を含む平面方向から見てクロマトグラムカーブの稜線を平面に投射したような二次元クロマトグラム(図3(b)参照)が作成される。
【0013】
次に、ピーク検出部25は、上記二次元クロマトグラムに対し所定の基準に照らしてピーク検出を行なう(ステップS2)。ピーク検出の基準としては、例えば、クロマトグラムカーブの傾斜が所定の開始傾斜値以上となった時点でピーク開始と判断し、その後傾斜が零となった時点を経過して傾斜値が負となり、その絶対値が所定の終了傾斜値以下となった時点でピーク終了と判定する方法とすることができる。この場合、ピーク内で傾斜が零となった時点をピークトップとする。このピーク検出処理により、図3(b)の例では5個のピークが検出されている。
【0014】
続いて、上記ピーク検出結果から多波長テーブルを作成し、これを多波長テーブルメモリ26に格納する(ステップS3)。すなわち、各ピークのピークトップに対応する波長λはそのデータからわかるから、この波長(図3(b)のλ1、λ2、…λ5)を多波長テーブルの各チャンネルに設定する。図4は多波長テーブルの一例を示している。この多波長テーブルでは、1つのチャンネルchに対し1つの波長λが設定されると共に、波長毎に許容範囲を示す帯域幅が設定されるようにしている。帯域幅は、例えば、設定される波長λの値が含まれる波長範囲に応じて予め定めるようにしておくとよい。
【0015】
更に、上記ピーク検出結果から同定テーブルを作成し、これを同定テーブルメモリ27に格納する(ステップS4)。すなわち、多波長テーブルに設定した波長λのピークトップが現われる時間つまり保持時間(図3(b)のt1、t2、…t5)を、多波長テーブルの各チャンネルに対応させて同定テーブルに設定する。図5は同定テーブルの一例を示している。この同定テーブル中のチャンネルchは、多波長テーブル中のチャンネルchと同一のものを指す。すなわち、図4及び図5の例では、例えばch1の成分は波長200nmで保持時間3.4分にピークを有していることを示している。なお、同定用テーブルを構成する情報の種類はデータ処理装置により異なるが、ピークの保持時間のほか、例えば、ピーク形状(ピーク面積やピーク高さ)やピーク同定のための検出窓幅等を格納するようにしてもよい。
【0016】
上述のように波長テーブル及び同定テーブルが自動的に作成されたならば、これに基づいて未知試料の成分の同定を行なう際には、以下のように従来のデータ処理装置と同様の処理を実行する。すなわち、このとき、三次元クロマト用メモリ21には未知試料をクロマトグラフ分析して得られたデータが蓄積される。読出し制御部22は、多波長テーブルに設定された波長におけるデータをチャンネル毎にチャンネル番号の若い順に三次元クロマト用メモリ21から読み出し、二次元クロマト用メモリ24へ送る。これにより、まず、図3(c)に示すような、ch1に設定された波長λ1における時間t−相対強度Sの二次元クロマトグラムが作成される(ステップS5)。
【0017】
そして、ピーク検出部25はこの二次元クロマトグラムに対しピーク検出を行ない、ピーク同定部28は検出されたピークを同定テーブルを参照して同定する(ステップS6)。すなわち、同定テーブルには、上述のように各チャンネルの成分の保持時間やピーク同定のための検出窓幅等の情報が格納されているから、ch1の成分に対する保持時間と検出窓幅とからピーク同定窓を設定し、ピークトップがこのピーク同定窓内に存在したならばch1の成分であると同定する。ここでチャンネル番号と成分名との対応付けを行なうためには、同定テーブルが作成された時点で各チャンネル番号における成分を調べ、成分名を同定テーブル中に記述しておくようにするとよい。
【0018】
次に、多波長テーブル中の全波長に対する同定処理が実行されたか否かが判断され(ステップS7)、全波長に対する同定処理が終了していないと判断されたときにはステップS5に戻り、多波長テーブルに設定されている次のチャンネル番号の波長λにおけるデータを三次元クロマト用メモリ21から読み出し二次元クロマトグラムを作成する。そして、先と同様に成分同定を繰り返す。
【0019】
ステップS7にて全波長に対する同定処理が終了したと判断されたときには、ステップS8へと進み、演算処理部29は、同定したピークのピーク形状からピーク面積を算出し、そのピーク面積からその成分の定量計算を実行する。
【0020】
なお、以上説明した実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜変形や修正を行なえることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のPDA検出器用データ処理装置の機能的構成図。
【図2】本実施例の装置におけるデータ処理手順を示すフローチャート。
【図3】本実施例のデータ処理の過程で描出されるクロマトグラム。
【図4】本実施例で作成される多波長テーブルの一例を示す図。
【図5】本実施例で作成される同定テーブルの一例を示す図。
【図6】PDA検出器の一般的な概略構成図。
【符号の説明】
15…フォトダイオードアレイ(PDA) 20…データ処理装置
21…三次元クロマト用メモリ 22…読出し制御部
23…最大強度検出部 24…二次元クロマト用メモリ
25…ピーク検出部 26…多波長テーブルメモリ
27…同定テーブルメモリ 28…ピーク同定部
29…演算処理部
Claims (1)
- クロマトグラフにより分離された試料成分を検出するPDA検出器用のデータ処理装置において、
a)PDA検出器から得られる検出信号を基に作成された三次元クロマトグラムから各時刻毎に最大強度を示す波長のデータを抽出して二次元クロマトグラムを作成する最大強度クロマトグラム作成手段と、
b)該最大強度クロマトグラム作成手段にて作成された二次元クロマトグラムに対しピーク検出を行なうピーク検出手段と、
c)該ピーク検出手段で検出したピークトップに対応する波長により多波長テーブルを作成する多波長テーブル作成手段と、
d)前記ピーク検出手段で検出したピークトップに対応する保持時間により同定テーブルを作成する同定テーブル作成手段と、
e)三次元クロマトグラムより前記多波長テーブル中の波長毎に二次元クロマトグラムを作成する波長固定クロマトグラム作成手段と、
f)該波長固定クロマトグラム作成手段にて作成された二次元クロマトグラムに対し前記同定テーブル中のパラメータを用いて波形解析を行なう解析手段と、
を備えることを特徴とするPDA検出器用データ処理装置。
Priority Applications (1)
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JP24891296A JP3541577B2 (ja) | 1996-08-30 | 1996-08-30 | Pda検出器用データ処理装置 |
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JP24891296A JP3541577B2 (ja) | 1996-08-30 | 1996-08-30 | Pda検出器用データ処理装置 |
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Family
ID=17185278
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP24891296A Expired - Lifetime JP3541577B2 (ja) | 1996-08-30 | 1996-08-30 | Pda検出器用データ処理装置 |
Country Status (1)
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-
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- 1996-08-30 JP JP24891296A patent/JP3541577B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH1073582A (ja) | 1998-03-17 |
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