JP3540095B2 - ディーゼルエンジンの噴射時期制御装置における異常判定装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はディーゼルエンジンの噴射時期制御装置に異常が発生したか否かを判定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディーゼルエンジンの噴射時期を制御する装置としては、燃料噴射ポンプによる燃料噴射ノズルからの燃料の実噴射時期がディーゼルエンジンの運転状態に応じた目標噴射時期となるように、噴射時期調整機構を駆動制御するものが知られている。
【0003】
例えば、一本のプランジャを回転させながら往復動させて、ディーゼルエンジンの気筒毎の燃料噴射ノズルに燃料を分配圧送する、いわゆる分配型の燃料噴射ポンプには、噴射時期調整機構として以下の構成を有するものが組み込まれている。この調整機構は、ディーゼルエンジンの運転状態に応じた燃料圧力によって移動するタイマピストンと、プランジャの周囲で回動することにより同プランジャの往復動のタイミングを変更するローラリングと、タイマピストン及びローラリングを連結するスライドピンと、タイマピストンに加わる油圧の大きさを調整する電磁弁(タイミングコントロールバルブ)とを備えている。
【0004】
電磁弁は、噴射時期制御装置のコンピュータからの指令信号に従い作動する。同電磁弁の開度が変化すると、タイマピストンに加わる燃料圧力が変化する。タイマピストンの往復動にともないスライドピンが揺動してローラリングが回動する。プランジャの往復動のタイミングが変更され、燃料噴射ノズルから燃料が噴射される時期が調整される。
【0005】
さらに、上述した噴射時期制御装置において異常が発生したか否かの判定を行う技術が種々提案されている。例えば、特公平3−18023号公報では、目標噴射時期と実噴射時期との偏差が予め定めた異常判定値よりも大きくなったとき、噴射時期制御装置が異常であると判定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ディーゼルエンジンにとって最適な噴射時期(目標噴射時期)は、エンジン回転速度、エンジン負荷等の運転状態によって様々に変化する。例えば、急加速時等の過渡状態においては目標噴射時期が急速に変化する。一方、噴射時期調整機構が作動するときには応答遅れをともなう。これは、コンピュータが目標噴射時期に応じた指令信号を出力してから、プランジャの往復動のタイミングが変化するまでには、電磁弁の作動、タイマピストンの移動、スライドピンの揺動、ローラリングの回動等が行われるためである。この応答遅れは目標噴射時期が急激に変化する程大きくなる。このため、噴射時期調整機構が仮に正常に作動していても、過渡状態では実噴射時期と目標噴射時期との偏差が大きくなる。
【0007】
ところが、従来技術では異常判定に際し、前述した噴射時期調整機構の応答遅れを考慮せずに、ディーゼルエンジンの運転状態にかかわらず、単一の異常判定値を用いている。このため、例えば過渡状態のときには、実際は正常であっても異常と誤判定するおそれがあった。
【0008】
本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は噴射時期制御装置の異常判定の精度を高めることであり、特にディーゼルエンジンの過渡状態のときに噴射時期調整機構の応答遅れにより目標噴射時期と実噴射時期との偏差が大きくなった場合でも、噴射時期制御装置が異常であるかどうかを精度よく検出することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載の第1の発明は、燃料噴射ポンプによる燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期がディーゼルエンジンの運転状態に応じた目標噴射時期となるように噴射時期調整機構を制御する噴射時期制御装置に用いられるものであって、
前記噴射時期調整機構による実噴射時期を検出する実噴射時期検出手段と、前記目標噴射時期又はその目標噴射時期に基づく予想実噴射時期と、前記実噴射時期検出手段による実噴射時期との偏差を求め、その偏差が異常判定値よりも大きくなると前記噴射時期制御装置に異常が発生したと判定する異常判定手段とを備え、前記燃料噴射ポンプは、回動可能に配置された駆動カムと、同駆動カムに接触した状態でプランジャと一体回転する従動カムとを有し、同従動カムの回転をともなう往復動によりプランジャを往復動させて燃料を吸入及び加圧し、加圧された燃料を前記燃料噴射ノズルに供給するものであり、前記噴射時期調整機構は、往復動可能に設けられたピストンと、同ピストン及び前記駆動カムを連結する連結部材とを備え、燃料の圧力に応じてピストンを移動させて駆動カムを回動させることにより前記プランジャの往復動のタイミングを変更させ、前記燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期を調整するものであり、前記異常判定手段は、異常判定に際し、前記従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力を考慮するものであるとしている。
【0010】
上記第1の発明によると、実噴射時期検出手段は噴射時期調整機構による実噴射時期を検出する。異常判定手段は目標噴射時期又はその目標噴射時期に基づく予想実噴射時期と前記実噴射時期との偏差を求め、この偏差が異常判定値よりも大きくなると噴射時期制御装置が異常であると判定する。この際、異常判定手段はディーゼルエンジンの運転状態に応じた判定を行う。従って、噴射時期調整機構の応答遅れの程度は機関運転状態によって異なるが、その応答遅れを考慮した異常判定が可能となる。
【0011】
特に、噴射時期調整機構の応答遅れを考慮して予想実噴射時期を求め、この時期と実噴射時期との偏差を用いて過渡状態での異常判定を行えば、単に目標噴射時期と実噴射時期との偏差を用いて異常判定を行う場合よりも判定の精度が向上する。
【0021】
さらに、前記燃料噴射ポンプは、回動可能に配置された駆動カムと、同駆動カムに接触した状態でプランジャと一体回転する従動カムとを有し、同従動カムの回転をともなう往復動によりプランジャを往復動させて燃料を吸入及び加圧し、加圧された燃料を前記燃料噴射ノズルに供給するものであり、
前記噴射時期調整機構は、往復動可能に設けられたピストンと、同ピストン及び前記駆動カムを連結する連結部材とを備え、燃料の圧力に応じてピストンを移動させて駆動カムを回動させることにより前記プランジャの往復動のタイミングを変更させ、前記燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期を調整するものであり、 前記異常判定手段は異常判定に際し、前記従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力を考慮するものである。この考慮としては、例えば予想実噴射時期、異常判定値、偏差等として前記力に応じた値を用いることが挙げられる。
【0022】
上記構成によると、従動カムが駆動カムに乗り上げる際には、その従動カムから駆動カムに力が作用する。同力は連結部材を介してピストンに作用し、噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、異常判定手段による異常判定に際しては、従動カムの駆動カムに対する乗り上げにともなう力が考慮される。このため、前記力による前記応答遅れに対する影響があっても、その影響を排除した異常判定が可能となり、判定の精度が高められる。
請求項2に記載の第2の発明では、第1の発明の構成に加え、前記噴射時期調整機構は燃料の圧力を利用してハウジング内のピストンを移動させて燃料の噴射時期を調整するものであり、前記異常判定手段は異常判定に際し燃料温度を考慮するものである。この考慮としては、例えば予想実噴射時期、異常判定値、偏差等として燃料温度に応じた値を用いることが挙げられる。
上記第2の発明によると、燃料温度に応じて燃料の粘性が変化し、ハウジングとピストンとの間を通過する燃料のリーク量が変化する。ピストンに作用する燃料の圧力等が変化し、噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、異常判定手段による異常判定に際しては燃料温度が考慮される。このため、燃料温度による前記応答遅れに対する影響があっても、その影響を排除した異常判定が可能となり、判定の精度が高められる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、第1の発明を具体化した第1の実施の形態を図1〜図3に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、車両には、シリンダブロック11及びシリンダヘッド12を備えたディーゼルエンジン(以下単に「エンジン」という)13が搭載されている。シリンダブロック11には複数のシリンダボア14が設けられ、各ボア14内にピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介しクランク軸17に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16及びクランク軸17によって回転運動に変換される。
【0025】
シリンダヘッド12及び各ピストン15間には主燃焼室18が形成されている。シリンダヘッド12には副燃焼室19が主燃焼室18に連通した状態で設けられ、その副燃焼室19に燃料噴射ノズル21の先端が露出している。シリンダヘッド12には、主燃焼室18に連通する吸気ポート(図示略)及び排気ポート22がそれぞれ設けられている。これらのポート22を開放及び閉鎖するために、シリンダヘッド12には吸気バルブ(図示略)及び排気バルブ23がそれぞれ往復動可能に支持されている。
【0026】
吸気ポートには主燃焼室18にエンジン13外部の空気を導くための吸気通路24が接続され、その途中にメインバルブ25が支持されている。同バルブ25は運転者によるアクセルペダル26の踏み込み動作により回動し、吸気通路24を流れる空気の量を調整する。吸気通路24にはメインバルブ25を迂回するバイパス路27が設けられており、その途中にサブバルブ28が支持されている。サブバルブ28は、二段式のダイヤフラム室を有するアクチュエータ29によって開閉される。排気ポート22には、主燃焼室18での燃焼ガスをエンジン13外部へ導くための排気通路31が接続されている。
【0027】
上記エンジン13においては、空気がシリンダボア14内に吸入されて燃焼ガスが排出されるまでの期間、すなわち、1サイクルの間に、ピストン15が2往復してクランク軸17が2回転する。このサイクルは吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程の4つの行程からなる。
【0028】
吸気行程ではピストン15が下降するとともに吸気バルブが開かれる。排気バルブ23は閉じられている。ピストン15の下降にともなう負圧により、エンジン13外部の空気が吸気通路24、バイパス路27、メインバルブ25、サブバルブ28等を通じてシリンダボア14内に吸引される。圧縮行程ではピストン15が上昇する。このとき、吸気バルブ、排気バルブ23がともに閉じられているため、前記吸気行程でシリンダボア14内に吸入された空気が圧縮されて、高圧、高温となる。爆発行程では、燃料噴射ノズル21が開かれて副燃焼室19に燃料が霧状に噴射される。この燃料は燃焼室18,19内の高温、高圧の空気と混ざり合い、自己燃焼を起こして急激に燃焼する。この際の発熱エネルギーによりピストン15が下降する。排気行程では排気バルブ23が開かれるとともにピストン15が上昇する。この上昇により燃焼ガスがシリンダボア14から押し出される。同ガスは排気ポート22、排気通路31を通り、エンジン13外部へ排出される。
【0029】
次に、前記燃料噴射ノズル21に高圧燃料を供給する燃料噴射ポンプ32について説明する。ここでは、1本のプランジャ42を回転させながら往復動させて、各燃料噴射ノズル21に燃料を分配圧送する、いわゆる分配型燃料噴射ポンプ32が用いられている。同ポンプ32にはドライブシャフト33が回転可能に支持されており、そのシャフト33の先端(図の左端)にドライブプーリ34が取り付けられている。ドライブプーリ34及び前記クランク軸17にはベルト等が掛装されており、これらのドライブプーリ34、ベルト等によりクランク軸17の回転がドライブシャフト33に伝達される。
【0030】
燃料噴射ポンプ32内において、ドライブシャフト33上にはべーン式ポンプよりなる燃料フィードポンプ(図では90度展開されている)35が設けられている。ドライブシャフト33の基端部(図の右端部)には円板状のパルサ36が取り付けられている。ドライブシャフト33の基端部は図示しないカップリングを介してカムプレート37に接続されている。
【0031】
パルサ36とカムプレート37との間には燃料噴射時期の変化に応じて回動するローラリング38が設けられ、同カムプレート37のカムフェイス37aに対向する複数のカムローラ39がローラリング38の円周に沿って取り付けられている。カムフェイス37aはエンジン13の気筒数と同数だけ設けられている。カムプレート37はスプリング41によって付勢され常にカムローラ39に係合している。本実施の形態では、ローラリング38及びカムローラ39によって駆動カムが構成され、カムプレート37によって従動カムが構成されている。
【0032】
カムプレート37には燃料加圧用のプランジャ42が一体回転可能に取り付けられている。ドライブシャフト33の回転力は図示しないカップリングを介してカムプレート37に伝達される。この伝達により、カムプレート37が回転しながらカムローラ39に係合して、気筒数と同数回だけ図中左右方向へ往復動する。この往復動にともないプランジャ42が回転しながら同方向へ往復動する。つまり、カムフェイス37aがカムローラ39に乗り上げる過程でプランジャ42が往動(リフト)し、その逆にカムフェイス37aがカムローラ39を乗り下げる過程でプランジャ42が復動する。
【0033】
プランジャ42はポンプハウジング43に形成されたシリンダ44に嵌挿されており、そのプランジャ42の先端面とシリンダ44の内底面との間に高圧室45が形成されている。プランジャ42の先端部外周には、エンジン13の気筒数と同数の吸入溝46と分配ポート47とが形成されている。これらの吸入溝46及び分配ポート47に対応して、ポンプハウジング43には分配通路48及び吸入ポート49が形成されている。
【0034】
そして、ドライブシャフト33が回転して燃料フィードポンプ35が作動することにより、図示しない燃料タンク内の燃料が、燃料供給ポート51を介してポンプ室52へ供給される。プランジャ42が復動されて高圧室45が減圧される吸入行程中に、吸入溝46の一つが吸入ポート49に連通することにより、ポンプ室52内の燃料が高圧室45内へ導入される。一方、プランジャ42が往動されて高圧室45が加圧される圧縮行程中には、燃料が分配通路48から各燃料噴射ノズル21へ圧送される。
【0035】
ポンプハウジング43には、高圧室45とポンプ室52とを連通させる燃料溢流(スピル)用のスピル通路53が形成されている。スピル通路53の途中には、高圧室45からの燃料のスピルを調整する電磁スピル弁54が設けられている。電磁スピル弁54はコイル55を有する常開型の弁であり、同コイル55が無通電(オフ)の状態では弁体56が開放されて高圧室45内の燃料がポンプ室52へスピルされる。また、コイル55が通電(オン)されることにより、弁体56が閉鎖されて高圧室45からポンプ室52への燃料のスピルが止められる。
【0036】
従って、電磁スピル弁54の通電時間を変化させることにより、同弁54が閉弁・開弁制御され、高圧室45からポンプ室52への燃料のスピルが調整される。そして、プランジャ42の圧縮行程中に電磁スピル弁54を開弁させることにより、高圧室45内における燃料が減圧されて、燃料噴射ノズル21からの燃料噴射が停止される。つまり、プランジャ42が往動しても、電磁スピル弁54が開弁している間は高圧室45内の燃料圧力が上昇せず、各燃料噴射ノズル21から燃料が噴射されない。プランジャ42の往動中に、電磁スピル弁54の閉弁・開弁の時期を制御することにより、燃料噴射ノズル21からの燃料の噴射終了時期が変更されて燃料噴射量が調整される。
【0037】
ポンプハウジング43の下側には、燃料の噴射時期を変更するための噴射時期調整機構としてのタイマ装置(図では90度展開されている)57が設けられている。タイマ装置57は、ドライブシャフト33の回転方向に対するローラリング38の位置を変更することにより、カムフェイス37aがカムローラ39に係合する時期、すなわちカムプレート37及びプランジャ42の往復駆動時期を変更する。
【0038】
タイマ装置57は制御油圧により駆動されるものであり、タイマハウジング58、その内部に往復動可能に嵌装されたタイマピストン59、タイマハウジング58内の一側(図の左側)の低圧室61にてタイマピストン59を他側(図の右側)の高圧室62へ付勢するタイマスプリング63等から構成されている。タイマピストン59は連結部材としてのスライドピン64を介してローラリング38に接続されている。
【0039】
前記高圧室62には、燃料フィードポンプ35により加圧された燃料が導入される。そして、その燃料圧力とタイマスプリング63の付勢力との釣り合い関係によってタイマピストン59の位置が決定される。これにともないローラリング38の位置が決定され、カムプレート37を介してプランジャ42の往復動タイミングが決定される。本実施の形態では、高圧室62内の燃料圧力が上昇してタイマピストン59が低圧室61側へ移動すると、噴射時期が遅らされるように設定されている。
【0040】
タイマ装置57の制御油圧として作用する燃料圧力を調整するために、高圧室62と低圧室61とが連通路66によって連通され、その途中にタイミングコントロールバルブ(以下「TCV」という)65が設けられている。TCV65は、デューティ制御された通電信号によって開閉制御される電磁弁であり、同TCV65の開度調整によって高圧室62内の燃料圧力が調整される。その調整によってタイマピストン59が移動し、プランジャ42の往復動時期が変更され、各燃料噴射ノズル21からの燃料の噴射時期が調整される。
【0041】
ところで、車両の室内前部にはインストルメントパネル(図示略)が設けられており、ここに故障表示ランプ67が組み込まれている。同ランプ67は噴射時期制御装置の正常作動時に消灯させられ、異常時に点灯させられる。
【0042】
エンジン13の運転状態を検出するために、吸気温センサ71、アクセル開度センサ72、吸気圧センサ73、水温センサ74及びクランク角センサ75が用いられている。吸気温センサ71は吸気通路24を流れる空気の温度(吸気温度THA)を検出し、アクセル開度センサ72はメインバルブ25の開閉位置からエンジン13の負荷に相当するアクセル開度ACCPを検出する。吸気圧センサ73は吸気ポートの近傍の圧力(吸気圧力VPIM)を検出し、水温センサ74は冷却水の温度(冷却水温THW)を検出する。クランク角センサ75は実噴射時期検出手段の一部を構成するものであり、クランク軸17の回転に同期し、特定気筒のピストン15が上死点に達したときにクランク角パルスを出力する。
【0043】
車両の走行状態を検出するために、図示しないトランスミッションには車速センサ76が設けられている。同センサ76は、トランスミッションのギアの回転によって回されるマグネット76aによりリードスイッチ76bをオン・オフさせて車両速度(車速)SPを検出する。
【0044】
燃料噴射ポンプ32の作動状態を検出するために、回転速度センサ77及び燃温センサ78が用いられている。回転速度センサ77は実噴射時期検出手段の一部を構成するものであり、前記ローラリング38の上部に配置されている。同センサ77は電磁ピックアップコイルよりなり、パルサ36の外周面に形成された突起部が横切る度にポンプ角パルスを出力する。このパルス信号から燃料噴射ポンプ32の回転速度、すなわちクランク軸17の時間当たりの回転数(エンジン回転速度NE)が検出可能である。なお、回転速度センサ77は前記ローラリング38と一体であるため、タイマ装置57の制御動作に関わりなく、プランジャ42のリフト動作に対して一定のタイミングで基準となる信号を出力する。
【0045】
また、燃温センサ78はポンプハウジング43に取り付けられている。同センサ78は、温度によって電気抵抗値が大きく変化するサーミスタを内蔵しており、エンジン13に供給される燃料の温度(燃料温度)THFの変化を、サーミスタの電気抵抗値の変化でもって検出する。
【0046】
上述した各種センサ71〜78の検出信号に基づき電磁スピル弁54、TCV65及び故障表示ランプ67を駆動制御するために、電子制御装置(以下「ECU」という)81が設けられている。図2に示すように、ECU81は中央処理装置(CPU)82、所定の制御プログラム、マップ等を予め記憶した読み出し専用メモリ(ROM)83、CPU82の演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)84、予め記憶されたデータを保存するバックアップRAM85を備えている。これら各部材82〜85と入力ポート86及び出力ポート87とはバス88によって接続されている。
【0047】
前述した吸気温センサ71、アクセル開度センサ72、吸気圧センサ73、水温センサ74及び燃温センサ78はそれぞれバッファ89,90,91,92,93、マルチプレクサ94及びA/D変換器95を介して入力ポート86に接続されている。クランク角センサ75、車速センサ76及び回転速度センサ77は、波形整形回路96を介して入力ポート86に接続されている。CPU82は各センサ71〜78の検出信号を入力ポート86を介して読み込む。
【0048】
また、電磁スピル弁54、TCV65及び故障表示ランプ67は、それぞれ駆動回路97,98,99を介して出力ポート87に接続されている。CPU82は前記入力ポート86を介して読み込んだ入力値に基づき、電磁スピル弁54、TCV65及び故障表示ランプ67をそれぞれ制御する。
【0049】
次に、前記のように構成された本実施の形態の作用及び効果について説明する。図3のフローチャートは、CPU82によって実行される各処理のうち、燃料の噴射時期を制御するためのルーチンを示しており、所定のタイミングで実行される。
【0050】
このルーチンの処理が開始されると、CPU82はまずステップ110において、ディーゼルエンジン13の運転状態を検出する。例えば、回転速度センサ77によるエンジン回転速度NE、アクセル開度センサ72によるアクセル開度ACCP、水温センサ74による冷却水温THW等を読み込む。
【0051】
続いて、ステップ120においてエンジン13の運転状態に応じた目標噴射時期ATRGi を算出する。詳しくは、マップ又は所定の演算式に従い、前記エンジン回転速度NE及びアクセル開度ACCP(エンジン負荷)に応じた基本噴射時期を求める。この値を冷却水温THW等によって補正し、その補正値を目標噴射時期ATRGi として設定する。このようにして得られた目標噴射時期ATRGi にはタイマ装置57の応答遅れは考慮されていない。
【0052】
ステップ130において実噴射時期AACTi を算出する。詳しくは、クランク角センサ75から出力されるクランク角パルスと、回転速度センサ77から出力されるポンプ角パルスとを読み込む。両パルスに基づきタイマ装置57の位相を検出し、そのときの実噴射時期AACTi を推定する。
【0053】
ステップ140において、エンジン13の運転状態が過渡状態であるか否かを判定する。例えば、ポンプ角パルスに基づくエンジン回転速度NEの変化率(単位時間当たりの変化量)が所定範囲から外れているか否かを判定し、外れている場合には過渡状態であるとし、所定範囲内にある場合には定常状態であるとする。ここで、定常状態の場合には、タイマ装置57の応答遅れが小さいので、噴射時期制御装置が正常に機能しているのであれば、実噴射時期AACTi は目標噴射時期ATRGi に近い値となる。過渡状態の場合には、タイマ装置57の応答遅れが大きいので、噴射時期制御装置が正常に作動していても実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束するのに時間を要し、一時的に両噴射時期AACTi ,ATRGi の偏差が大きくなる。
【0054】
前記ステップ140の判定条件が満たされていなければ、すなわち定常状態であればステップ150へ移行し、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差を求め、その絶対値が予め設定された異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|ATRGi −AACTi |≦ThA)、定常状態において噴射時期制御装置が正常に作動していると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行う。
【0055】
詳しくは、ATRGi >AACTi であれば実際の噴射時期を早めるようにTCV65に対するデューティ比を変更し、ATRGi <AACTi であれば実際の噴射時期を遅らせるようにTCV65に対するデューティ比を変更し、ATRGi =AACTi であればそのときのデューティ比を保持する。このようにタイマ装置57による実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に一致するように、ポンプ角パルス及びクランク角パルスによりタイマ装置57の動作を監視しつつTCV65をデューティ比制御する。
【0056】
これに対し、ステップ150の判定条件が満たされていれば(|ATRGi −AACTi |>ThA)、噴射時期制御装置に何らかの異常が発生していて、TCV65を制御しても実噴射時期AACTi を目標噴射時期ATRGi に一致させることが困難であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。例えば、前述したステップ160での噴射時期のフィードバック制御を中止し、実噴射時期AACTi を、不具合を生じないような遅角側の一定値に保持する。これに代えて、フィードバック制御は継続するものの、目標噴射時期ATRGi にガードをかけ(制限を付し)、実噴射時期AACTi がエンジン13に不具合を生じさせるような極端に大きな値又は極端に小さな値になるのを防止するようにしてもよい。
【0057】
なお、定常状態において実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束しなくなる原因としては、例えば回転速度センサ77やTCV65の故障、油圧回路での堆積物による目詰まり等が考えられる。
【0058】
そして、ステップ180において異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させて、このルーチンを終了する。
一方、前記ステップ140の判定条件が満たされていると、すなわちエンジン13が過渡状態であると、仮に前記ステップ150での異常判定値ThAを用いて異常判定を行えば、タイマ装置57の応答遅れにより目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が同判定値ThAよりも大きくなり、噴射時期制御装置が正常に作動していても異常と判定するおそれがあると判断する。そして、ステップ150〜180の処理を行うことなく、このルーチンを終了する。換言すると、過渡状態では異常判定を禁止する。
【0059】
本実施の形態においては、上述したCPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ140,150,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0060】
このように第1の実施の形態では、エンジン13の運転状態に応じた異常判定が行われる。このため、過渡状態ではタイマ装置57が正常に作動していても応答遅れが大きくなり、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が大きくなるが、その応答遅れを考慮した異常判定がなされ、判定の精度が向上する。すなわち、定常状態では従来技術と同様な異常判定が行われるが、誤判定のおそれのある過渡状態では異常判定が行われないので、同過渡状態において偏差が異常判定値ThAよりも大きくなっても、異常と誤判定されることはない。
【0061】
本実施の形態は前述した事項以外にも次に示す特徴を有する。
(a)過渡状態での異常判定を禁止し、定常状態のときにのみ異常判定を行うようにしたので、過渡時用の異常判定値ThAを別途設定しなくてすむ。
(第2の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第2の実施の形態を図4に従って説明する。図4は、前述した図3に対応する噴射時期制御ルーチンを示している。本実施の形態は、過渡状態でも異常判定を行う点と、過渡状態と定常状態とで異常判定値ThAを異ならせている点とが第1の実施の形態と大きく異なっている。なお、図4において図3と同一の処理には同一のステップ数を付して、詳しい説明を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成は第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0062】
図4の噴射時期制御ルーチンが開始されると、CPU82はステップ110で、各センサ77,72,74によるエンジン回転速度NE、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等を読み込む。ステップ120でエンジン13の運転状態に応じた目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。ステップ140で、エンジン13の運転状態が過渡状態であるか否かを判定する。
【0063】
この判定条件が満たされていなければ、すなわち定常状態であればステップ141へ移行し、定常時用の判定値Ths(>0)を異常判定値ThAとして設定する。これに対し、ステップ140の判定条件が満たされていれば、すなわち過渡状態であればステップ142へ移行し、過渡時用の判定値Tht(>Ths)を異常判定値ThAとして設定する。ここで、判定値Ths,Thtは、いずれも予め定められてROM83に記憶されている。このように、過渡状態では定常状態に比べてタイマ装置57の応答遅れが大きくなることを考慮して、定常状態での値Thsも大きな値Thtを異常判定値ThAとして設定する。なお、判定値Thsを「0」よりも大きな値としているのは、実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束した状態においても、実際には実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi を中心とするある程度の範囲の中で変動するからであり、この変動を異常と判定しないようにするためである。
【0064】
このようにステップ141又は142で異常判定値ThAを設定すると、ステップ150において、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差の絶対値が異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|ATRGi −AACTi |≦ThA)、噴射時期制御装置が正常に作動していると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行い、このルーチンを終了する。これに対し、ステップ150の判定条件が満たされていれば(|ATRGi −AACTi |>ThA)、噴射時期制御装置が異常であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。ステップ180で異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させて、このルーチンを終了する。
【0065】
本実施の形態ではCPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ140,141,142,150,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0066】
このように第2の実施の形態では、エンジン13の過渡状態のときには定常状態のときよりも大きな異常判定値ThAが用いられる。換言すると、定常状態では、その状態に適した異常判定値ThA(=Ths)を用いた異常判定がなされる。過渡状態では、その状態に適した異常判定値ThA(=Tht)を用いた異常判定がなされる。すなわち、過渡状態の場合にはタイマ装置57の応答遅れが大きくなり、同装置57が正常に作動していても目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が定常状態の場合よりも大きくなるが、異常判定値ThAが大きくされたことで、異常と誤判定されにくくなり、判定の精度が向上する。
【0067】
本実施の形態は前述した事項以外にも次に示す特徴を有する。
(a)定常状態及び過渡状態を含む全運転領域にわたり、一つの異常判定値によって異常判定を行う従来技術では、エンジンの過渡状態において正常であるにもかかわらず異常と判定する不具合を回避しようとすると、同異常判定値を大きな値に設定することになる。すると、過渡状態のときにも異常判定を判定できる反面、定常状態において実噴射時期が目標噴射時期に収束しないようなときに異常と判定できなくなる。
【0068】
これに対し、本実施の形態では二つの判定値Ths,Thtを予め設定しておき、エンジン13の運転状態に応じていずれか一方を選択し、これを異常判定値ThAとしている。定常状態では比較的小さな判定値Thsを異常判定値ThAとして用いることにより、実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束しない異常を検出できる。過渡状態では前記判定値Thsよりも大きな判定値Thtを異常判定値ThAとして用いることにより、実噴射時期AACTi を目標噴射時期ATRGi に収束させることはできるものの応答が遅くなっている異常を検出することができる。このように二種類の異常を検出することが可能である。
(第3の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第3の実施の形態を図5,6に従って説明する。図5は前述した図4に対応する噴射時期制御ルーチンを示している。
本実施の形態は、目標噴射時期ATRGi の変化率に応じて異常判定値ThAを異ならせている点が第2の実施の形態と大きく異なっている。なお、図5において図4と同一の処理には同一のステップ数を付して、詳しい説明を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成は第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0069】
この噴射時期制御ルーチンが開始されると、CPU82はステップ110で、各センサ77,72,74によるエンジン回転速度NE、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等を読み込む。ステップ115において、前回の制御周期で記憶した目標噴射時期ATRGi-1 を読み出す。ステップ120で今回の目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。
【0070】
次に、ステップ143において、目標噴射時期の変化率ΔATRGを算出する。ここでは、今回の目標噴射時期ATRGi と前回の目標噴射時期ATRGi-1 との偏差を求め、これを変化率ΔATRGとする。
【0071】
ステップ144において、図6に示すマップを参照して異常判定値ThAを算出する。このマップには、変化率ΔATRGに対する異常判定値ThAが、次のような関係をなすように予め規定されている。変化率ΔATRGが「0」よりも若干小さな任意の値をaとし、「0」よりも若干大きな任意の値をbとすると、a≦ΔATRG≦bの領域では異常判定値ThAは最小の値c(>0)である。a>ΔATRGの領域では変化率ΔATRGが小さくなるほど異常判定値ThAが増加する。また、ΔATRG>bの領域では変化率ΔATRGが大きくなるほど異常判定値ThAが増加する。従って、前記マップを参照すると、目標噴射時期ATRGが変化しないとき(定常状態に相当)には異常判定値ThAが最小値(=c)に設定され、同噴射時期ATRGが早く変化するとき(過渡状態に相当)にはタイマ装置57の応答遅れを考慮して異常判定値ThAが大きな値に設定される。
【0072】
次に、ステップ150において、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が前記異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|ATRGi −AACTi |≦ThA)、噴射時期制御装置が正常であると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行い、ステップ190へ移行する。これに対し、ステップ150の判定条件が満たされていれば(|ATRGi −AACTi |>ThA)、噴射時期制御装置が異常であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。ステップ180で異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させてステップ190へ移行する。
【0073】
ステップ190では、次回の演算に備えて今回の目標噴射時期ATRGi を前回の目標噴射時期ATRGi-1とする。そして、この値(ATRGi-1)をRAM84に記憶した後、このルーチンを終了する。
【0074】
本実施の形態においては、CPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ143,144,150,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0075】
このように第3の実施の形態によると、異常判定値ThAが目標噴射時期ATRGi の変化率ΔATRGに応じた値に設定される。変化率ΔATRGが小さな場合(a≦ΔATRG≦b)には、すなわち定常状態では、小さな異常判定値ThA(=c)が用いられる。この点は第2の実施の形態と同様である。しかし、変化率ΔATRGが大きな場合には単一の異常判定値ThAを用いるのではなく、その変化率ΔATRGが大きくなるに従い増加する異常判定値ThAが用いられる。このため、目標噴射時期ATRGi が急激に変化するほどタイマ装置57の応答遅れが大きくなり、同目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が大きくなるが、その目標噴射時期ATRGi の変化の程度(変化率ΔATRG)に適した異常判定値ThAとの比較によって異常判定が行われることとなる。従って、一つの異常判定値によって過渡状態での異常判定を行う場合に比べ、判定の精度が向上する。
(第4の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第4の実施の形態について図7,8に従って説明する。図8は前述した図4に対応する噴射時期制御ルーチンを示している。本実施の形態では、目標噴射時期ATRGi に基づく予想実噴射時期ATRGSMi を求める。この噴射時期ATRGSMi は、正常作動時のタイマ装置57が有する応答遅れを考慮した値である。そして、予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi との偏差を用いて噴射時期制御装置の異常を判定している。なお、図8において図4と同一の処理には同一のステップ数を付して、詳しい説明を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成は第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0076】
まず、予想実噴射時期ATRGSMi について説明する。図7において、低圧室61側からタイマピストン59に作用する力をfPLとし、高圧室62側からタイマピストン59に作用する力をfPHとする。力fPLは低圧室61内の燃料圧力とタイマピストン59の低圧室61側の受圧面積との積で表され、力fPHは高圧室62内の燃料圧力とタイマピストン59の高圧室62側の受圧面積との積で表される。また、タイマピストン59の質量、変位量をそれぞれm、xとし、粘性係数をcとし、タイマスプリング63のばね定数をkとする。ここでの粘性係数cは、燃料温度THFを一定とし、高圧室62からタイマピストン59とタイマハウジング58との隙間gを通って低圧室61へリークする燃料の量を一定とし、高圧室62から連通路66及びTCV65を通って低圧室61へ流通する燃料の量を一定としたときの値である。また、力fPHには、カムプレート37のカムフェイス37aがカムローラ39に乗り上げるときにローラリング38、スライドピン64を介してタイマピストン59に作用する力Fは含まれていない。これらを用いると、タイマピストン59についての運動方程式は、次式(1)で表される。
【0077】
【数1】
式(1)中、fPH(t) とfPLとの差をΔfp(t) とする。また、質量mは粘性係数cやばね定数kに比べて無視できるほど小さい。このため、上記式(1)は、次式(2)に書き換えることができる。
【0078】
【数2】
また、一般に式(3)が成り立つ。
【0079】
【数3】
Δtは変位量xがxi-1 からxi に変化するのに要した時間である。
上記式(3)を用いれば、式(2)の運動方程式は以下のようにΔtで離散化して表現することができる。
【0080】
【数4】
式(4)をラプラス変換すると、次式(5)が得られる。
【0081】
【数5】
ところで、TCV65に対するデューティ比を制御して、低圧室61及び高圧室62からタイマピストン59に作用する力の差Δfp(t)を調整すれば、実噴射時期を目標噴射時期ATRG(t) に収束させることができる。このことから、前記差Δfp(t) と目標噴射時期ATRG(t) との間の関係を次式(6)で表すことができる。
【0082】
【数6】
αは目標噴射時期ATRG(t) を差Δfp(t)に変換するために用いられる係数である。
【0083】
また、タイマピストン59の位置が変化すると、ローラリング38の位置も変化する。そして、プランジャ42の往復動のタイミングが変化し、ひいては実噴射時期が変化する。このことから、変位量xと予想実噴射時期ATRGSM(t)との間の関係を次式(7)で表すことができる。
【0084】
【数7】
ここで、βは予想実噴射時期ATRGSM(t) を変位量xに変換するために用いられる係数である。
【0085】
上述した式(4)に、式(6),(7)を代入すると、式(8),(9)が得られる。
【0086】
【数8】
上記式(9)中の噴射時期ATRGSMi は、タイマ装置57が正常に作動しているときに予想される噴射時期である。
【0087】
さて、図8の噴射時期制御ルーチンの処理が開始されると、CPU82はステップ110で、各センサ77,72,74によるエンジン回転速度NE、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等を読み込む。ステップ115において、前回の制御周期で記憶した予想実噴射時期ATRGSMi-1 を読み出す。ステップ120で今回の目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。次に、ステップ135において目標噴射時期ATRGi、前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 等を用い、前述した式(9)に従い今回の予想実噴射時期ATRGSMiを算出する。ステップ140で、エンジン13の運転状態が過渡状態であるか否かを判定する。
【0088】
この判定条件が満たされていなければ、ステップ141において定常時用の判定値Ths(>0)を異常判定値ThAとして設定し、同判定条件が満たされていれば、ステップ142において過渡時用の判定値Tht(>Ths)を異常判定値ThAとして設定する。ステップ155において、実噴射時期AACTi と予想実噴射時期ATRGSMi との偏差の絶対値が異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|AACTi −ATRGSMi |≦ThA)、噴射時期制御装置が正常に作動していると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行い、ステップ190へ移行する。これに対し、ステップ155の判定条件が満たされていれば(|AACTi −ATRGSMi |>ThA)、噴射時期制御装置が異常であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。ステップ180で異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させて、ステップ190へ移行する。
【0089】
ステップ190では、次回の演算に備えて今回の予想実噴射時期ATRGSMi を前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 とする。そして、この値(ATRGSMi-1)をRAM84に記憶した後、このルーチンを終了する。
【0090】
本実施の形態においてはCPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ155,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0091】
このように第4の実施の形態によると、タイマ装置57は正常作動時にも応答遅れを有するが、この応答遅れを考慮して求めた予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi との偏差を用いて過渡状態での異常判定を行うことにより、単に目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差を用いて異常判定を行う場合よりも判定の精度が向上する。
(第5の実施の形態)
次に、第1,2の発明を具体化した第5の実施の形態を図9,10に従って説明する。図9は前述した図8に対応する噴射時期制御ルーチンの一部を示している。本実施の形態は、予想実噴射時期ATRGSMi の算出に際し、タイマ装置57の応答遅れ分に燃料温度THFを考慮している点が前述した第4の実施の形態と異なっている。なお、本実施の形態においてはステップ140以降の処理は図8と同じであるので、その図示を省略する。また、エンジン13やその周辺機器等の構成に関しても第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0092】
ここで、応答遅れに燃料温度THFを考慮したのは以下の理由による。第4の実施の形態において、燃料温度THFが一定で、タイマピストン59及びタイマハウジング58の隙間gでの燃料のリーク量が一定であり、連通路66及びTCV65を流れる燃料の量が一定であれば、予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi とが一致するはずである。しかし、実際には燃料噴射ポンプ32の作動により燃料温度THFが変化する。例えば、燃料温度THFはポンプ32の始動時には低く、時間とともに次第に上昇する。燃料温度THFの上昇にともない燃料の粘度が低下し、前記隙間gでの燃料のリーク量や、連通路66及びTCV65を流れる燃料の量が増加する。低圧室61内の燃料圧力、高圧室62内の燃料圧力が変化し、タイマピストン59に作用する力fPL,fPHが変化する。そこで、燃料温度THFと式(9)とを関連付けて、同燃料温度THFを考慮した予想実噴射時期ATRGSMi を求めるようにしている。
【0093】
より詳しくは、目標噴射時期ATRGi が変化しないものと仮定すると、予想実噴射時期ATRGSMi は最終的に目標噴射時期ATRGi となる。このため、α=kとすると、式(9)は、次式(10)に書き換えられる。
【0094】
【数9】
さて、図9の噴射時期制御ルーチンの処理が開始されると、CPU82はステップ111で回転速度センサ77によるエンジン回転速度NE、アクセル開度センサ72によるアクセル開度ACCP、水温センサ74による冷却水温THW、燃温センサ78による燃料温度THF等を読み込む。ステップ115において前回の制御周期で記憶した予想実噴射時期ATRGSMi-1 を読み出す。ステップ120で目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。
【0095】
次に、ステップ131において図10のマップを参照して燃料温度THFに応じた時定数の逆数k/cを算出する。このマップは、タイマ装置57において燃料温度THFを種々変化させて、同燃料温度THF毎の逆数k/cを測定して作成したものである。図10から明らかなように、このマップでは、燃料温度THFが高くなるに従い逆数k/cが増加するように設定されている。
【0096】
ステップ135において、前述した式(10)に従い、目標噴射時期ATRGi 、前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 及び逆数k/cを代入することにより予想実噴射時期ATRGSMiを算出する。そして、ステップ140〜190の処理を実行する。
【0097】
このように燃料温度THFに応じて燃料の粘性が変化し、隙間gを通過する燃料のリーク量が変化する。タイマピストン59に作用する燃料の圧力等が変化し、タイマ装置57の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、予想実噴射時期ATRGSMi として燃料温度THFに応じた値、すなわち燃料温度THFの影響を考慮した値が求められる。このため、得られる予想実噴射時期ATRGSMi は、タイマ装置57が正常に作動した場合の実噴射時期AACTに一層近似した値となる。この予想実噴射時期ATRGSMi を異常判定に用いることにより、判定の精度をさらに高めることができる。
(第6の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第6の実施の形態を図11,12に従って説明する。図11は前述した図8に対応する噴射時期制御ルーチンの一部を示している。本実施の形態は、予想実噴射時期ATRGSMi の算出に際し、タイマ装置57の応答遅れ分に燃料噴射量を考慮している点が前述した第4の実施の形態と異なっている。なお、本実施の形態においてステップ140以降の処理は図8と同じであるので、その図示を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成に関しても第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0098】
ここで、タイマ装置57の応答遅れに燃料噴射量を考慮したのは以下の理由による。第4の実施の形態において、噴射時期を決定するタイマピストン59の位置がカムプレート37の回転から全く影響を受けないのであれば、予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi とが一致するはずである。しかし、実際にはカムフェイス37aのカムローラ39との接触開始(プランジャ42のリフト開始)から、そのカムフェイス37aの頂部がカムローラ39に接触するまでの期間、つまりカムフェイス37aがカムローラ39に乗り上げる期間には、ローラリング38に対し、カムプレート37からカムローラ39を介して図7の時計回り方向の力が作用する。この力Fはスライドピン64を介してタイマピストン59に伝わり、同ピストン59を図2の左方(噴射時期を遅らせる方向)へ移動させようとし、噴射時期を早める際の応答性を低下させる。
【0099】
ところで、前記力Fはエンジン回転速度NEが高くなるほど大きくなり、また、燃料噴射量の多い高負荷ほど大きくなる傾向にある。そこで、応答遅れにエンジン回転速度NEと噴射量指令値QFINとを考慮して上記式(10)に従い予想実噴射時期ATRGSMi を求めるようにしている。
【0100】
図11の噴射時期制御ルーチンの処理が開始されると、CPU82はステップ110で回転速度センサ77によるエンジン回転速度NE、アクセル開度センサ72によるアクセル開度ACCP、水温センサ74による冷却水温THW等を読み込む。ステップ115において前回の制御周期で記憶した予想実噴射時期ATRGSMi-1 を読み出す。ステップ116において、別途用意されたルーチンで求められた燃料の噴射量指令値QFINを読み込む。この指令値QFINは、エンジン回転速度NE及びアクセル開度ACCPから基本噴射量を求め、これを冷却水温THW、吸気温度THA、吸気圧力VPIM等によって補正することにより得られたものである。ステップ120で目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。
【0101】
次に、ステップ131において図12のマップを参照し、エンジン回転速度NE及び噴射量指令値QFINに応じた時定数の逆数k/cを算出する。このマップは、タイマ装置57においてエンジン回転速度NE及び噴射量指令値QFINを種々変化させながら時定数の逆数k/cを測定して作成したものである。図12から明らかなように、このマップでは、エンジン回転速度NEが高くなるほど、また噴射量指令値QFINが大きくなるほど、逆数k/cが増加するように設定されている。
【0102】
ステップ135において、前述した式(10)を用い、目標噴射時期ATRGi 、前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 及び逆数k/cを代入することにより予想実噴射時期ATRGSMiを算出する。そして、ステップ140〜190の処理を実行する。
【0103】
このように、カムプレート37がカムローラ39に乗り上げる際には、そのカムプレート37からカムローラ39に力Fが作用する。同力Fはローラリング38、スライドピン64等を介してタイマピストン59に作用し、タイマ装置57の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、予想実噴射時期ATRGSMi として前記力Fを考慮した値が求められる。このため、得られる予想実噴射時期ATRGSMi はタイマ装置57が正常に作動した場合の実噴射時期AACTi により近似した値となる。この予想実噴射時期ATRGSMi を異常判定に用いることにより、判定の精度、特に噴射時期を早めるとき(進角時)の判定精度を高めることができる。
【0104】
なお、本発明は次に示す別の実施の形態に具体化することができる。
(1)本発明は、実噴射時期AACTi をセンサによって直接検出し、その検出値を用いて噴射時期をフィードバック制御するものにも適用可能である。このセンサとしては、例えば燃料噴射ノズル21のノズルニードルのリフト動作を検出するもの(ノズルリフトセンサ)を用いてもよいし、燃料噴射ポンプ32から燃料噴射ノズル21へ圧送される燃料の圧力を検出するもの(圧力センサ)を用いてもよい。後者の場合、圧力センサは燃料噴射ノズル21に配置されてもよいし、燃料噴射ポンプ32と燃料噴射ノズル21とを繋ぐ配管の途中に配置されてもよい。
【0105】
(2)エンジン13の過渡状態を判定する条件としては、エンジン回転速度NEの変化率に代えて、負荷(アクセル開度ACCP)の変化率を用いてもよい。この場合、負荷の単位時間当たりの変化量が所定値よりも大きい場合に過渡状態とする。
【0106】
(3)図8の噴射時期制御ルーチンのステップ140,141,142の処理を省略してもよい。
(4)第5の実施の形態と第6の実施の形態とを組み合わせてもよい。すなわち、予想実噴射時期ATRGSMi の算出に際し、タイマ装置57の応答遅れ分に対し燃料温度THFと、カムフェイス37aのカムローラ39への乗り上げ時の力Fとの両方を考慮する。このようにすれば、予想実噴射時期ATRGSMi の精度をさらに高めることができる。
【0109】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ディーゼルエンジンの運転状態に応じた異常判定が行われるので、単に目標噴射時期と実噴射時期との偏差が異常判定値よりも大きなときに異常と判定する場合に比べて、判定の精度を高めることが可能となる。
【0110】
特に、目標噴射時期に代えて予想実噴射時期を用いた場合には、この予想実噴射時期を、正常作動時の噴射時期調整機構による実噴射時期に近似した値にすれば精度の高い異常判定を実現できる。
【0115】
さらに、従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力が噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼしても、異常判定に際しその応答遅れが考慮されるので、一層精度の高い異常判定が可能となる。
第2の発明によれば、燃料温度の変化が噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼしても、異常判定に際しその応答遅れが考慮されるので、第1の発明の効果に加え一層精度の高い異常判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態におけるディーゼルエンジン及びその周辺機器を示す概略構成図。
【図2】ECUの電気的構成を示すブロック図。
【図3】噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第2の実施の形態における噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図5】第3の実施の形態における噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図6】目標噴射時期の変化率と異常判定値との対応関係を規定したマップを示す線図。
【図7】第4の実施の形態におけるタイマ装置の概略構成図。
【図8】噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図9】第5の実施の形態における噴射時期制御ルーチンの一部を示すフローチャート。
【図10】燃料温度と時定数の逆数との関係を規定したマップを示す線図。
【図11】第6の実施の形態における噴射時期制御ルーチンの一部を示すフローチャート。
【図12】エンジン回転速度と、噴射量指令値と、時定数の逆数との対応関係を規定したマップを示す線図。
【符号の説明】
13…ディーゼルエンジン、21…燃料噴射ノズル、32…燃料噴射ポンプ、37…従動カムとしてのカムプレート、38…駆動カムの一部を構成するローラリング、39…駆動カムの一部を構成するカムローラ、42…プランジャ、57…噴射時期調整機構としてのタイマ装置、58…タイマハウジング、59…タイマピストン、64…連結部材としてのスライドピン、75…実噴射時期検出手段の一部を構成するクランク角センサ、77…実噴射時期検出手段の一部を構成する回転速度センサ、THF…燃料温度、ATRGi …目標噴射時期、AACTi …実噴射時期、ThA…異常判定値、ATRGSMi …予想実噴射時期。
【発明の属する技術分野】
本発明はディーゼルエンジンの噴射時期制御装置に異常が発生したか否かを判定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディーゼルエンジンの噴射時期を制御する装置としては、燃料噴射ポンプによる燃料噴射ノズルからの燃料の実噴射時期がディーゼルエンジンの運転状態に応じた目標噴射時期となるように、噴射時期調整機構を駆動制御するものが知られている。
【0003】
例えば、一本のプランジャを回転させながら往復動させて、ディーゼルエンジンの気筒毎の燃料噴射ノズルに燃料を分配圧送する、いわゆる分配型の燃料噴射ポンプには、噴射時期調整機構として以下の構成を有するものが組み込まれている。この調整機構は、ディーゼルエンジンの運転状態に応じた燃料圧力によって移動するタイマピストンと、プランジャの周囲で回動することにより同プランジャの往復動のタイミングを変更するローラリングと、タイマピストン及びローラリングを連結するスライドピンと、タイマピストンに加わる油圧の大きさを調整する電磁弁(タイミングコントロールバルブ)とを備えている。
【0004】
電磁弁は、噴射時期制御装置のコンピュータからの指令信号に従い作動する。同電磁弁の開度が変化すると、タイマピストンに加わる燃料圧力が変化する。タイマピストンの往復動にともないスライドピンが揺動してローラリングが回動する。プランジャの往復動のタイミングが変更され、燃料噴射ノズルから燃料が噴射される時期が調整される。
【0005】
さらに、上述した噴射時期制御装置において異常が発生したか否かの判定を行う技術が種々提案されている。例えば、特公平3−18023号公報では、目標噴射時期と実噴射時期との偏差が予め定めた異常判定値よりも大きくなったとき、噴射時期制御装置が異常であると判定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ディーゼルエンジンにとって最適な噴射時期(目標噴射時期)は、エンジン回転速度、エンジン負荷等の運転状態によって様々に変化する。例えば、急加速時等の過渡状態においては目標噴射時期が急速に変化する。一方、噴射時期調整機構が作動するときには応答遅れをともなう。これは、コンピュータが目標噴射時期に応じた指令信号を出力してから、プランジャの往復動のタイミングが変化するまでには、電磁弁の作動、タイマピストンの移動、スライドピンの揺動、ローラリングの回動等が行われるためである。この応答遅れは目標噴射時期が急激に変化する程大きくなる。このため、噴射時期調整機構が仮に正常に作動していても、過渡状態では実噴射時期と目標噴射時期との偏差が大きくなる。
【0007】
ところが、従来技術では異常判定に際し、前述した噴射時期調整機構の応答遅れを考慮せずに、ディーゼルエンジンの運転状態にかかわらず、単一の異常判定値を用いている。このため、例えば過渡状態のときには、実際は正常であっても異常と誤判定するおそれがあった。
【0008】
本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は噴射時期制御装置の異常判定の精度を高めることであり、特にディーゼルエンジンの過渡状態のときに噴射時期調整機構の応答遅れにより目標噴射時期と実噴射時期との偏差が大きくなった場合でも、噴射時期制御装置が異常であるかどうかを精度よく検出することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載の第1の発明は、燃料噴射ポンプによる燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期がディーゼルエンジンの運転状態に応じた目標噴射時期となるように噴射時期調整機構を制御する噴射時期制御装置に用いられるものであって、
前記噴射時期調整機構による実噴射時期を検出する実噴射時期検出手段と、前記目標噴射時期又はその目標噴射時期に基づく予想実噴射時期と、前記実噴射時期検出手段による実噴射時期との偏差を求め、その偏差が異常判定値よりも大きくなると前記噴射時期制御装置に異常が発生したと判定する異常判定手段とを備え、前記燃料噴射ポンプは、回動可能に配置された駆動カムと、同駆動カムに接触した状態でプランジャと一体回転する従動カムとを有し、同従動カムの回転をともなう往復動によりプランジャを往復動させて燃料を吸入及び加圧し、加圧された燃料を前記燃料噴射ノズルに供給するものであり、前記噴射時期調整機構は、往復動可能に設けられたピストンと、同ピストン及び前記駆動カムを連結する連結部材とを備え、燃料の圧力に応じてピストンを移動させて駆動カムを回動させることにより前記プランジャの往復動のタイミングを変更させ、前記燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期を調整するものであり、前記異常判定手段は、異常判定に際し、前記従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力を考慮するものであるとしている。
【0010】
上記第1の発明によると、実噴射時期検出手段は噴射時期調整機構による実噴射時期を検出する。異常判定手段は目標噴射時期又はその目標噴射時期に基づく予想実噴射時期と前記実噴射時期との偏差を求め、この偏差が異常判定値よりも大きくなると噴射時期制御装置が異常であると判定する。この際、異常判定手段はディーゼルエンジンの運転状態に応じた判定を行う。従って、噴射時期調整機構の応答遅れの程度は機関運転状態によって異なるが、その応答遅れを考慮した異常判定が可能となる。
【0011】
特に、噴射時期調整機構の応答遅れを考慮して予想実噴射時期を求め、この時期と実噴射時期との偏差を用いて過渡状態での異常判定を行えば、単に目標噴射時期と実噴射時期との偏差を用いて異常判定を行う場合よりも判定の精度が向上する。
【0021】
さらに、前記燃料噴射ポンプは、回動可能に配置された駆動カムと、同駆動カムに接触した状態でプランジャと一体回転する従動カムとを有し、同従動カムの回転をともなう往復動によりプランジャを往復動させて燃料を吸入及び加圧し、加圧された燃料を前記燃料噴射ノズルに供給するものであり、
前記噴射時期調整機構は、往復動可能に設けられたピストンと、同ピストン及び前記駆動カムを連結する連結部材とを備え、燃料の圧力に応じてピストンを移動させて駆動カムを回動させることにより前記プランジャの往復動のタイミングを変更させ、前記燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期を調整するものであり、 前記異常判定手段は異常判定に際し、前記従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力を考慮するものである。この考慮としては、例えば予想実噴射時期、異常判定値、偏差等として前記力に応じた値を用いることが挙げられる。
【0022】
上記構成によると、従動カムが駆動カムに乗り上げる際には、その従動カムから駆動カムに力が作用する。同力は連結部材を介してピストンに作用し、噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、異常判定手段による異常判定に際しては、従動カムの駆動カムに対する乗り上げにともなう力が考慮される。このため、前記力による前記応答遅れに対する影響があっても、その影響を排除した異常判定が可能となり、判定の精度が高められる。
請求項2に記載の第2の発明では、第1の発明の構成に加え、前記噴射時期調整機構は燃料の圧力を利用してハウジング内のピストンを移動させて燃料の噴射時期を調整するものであり、前記異常判定手段は異常判定に際し燃料温度を考慮するものである。この考慮としては、例えば予想実噴射時期、異常判定値、偏差等として燃料温度に応じた値を用いることが挙げられる。
上記第2の発明によると、燃料温度に応じて燃料の粘性が変化し、ハウジングとピストンとの間を通過する燃料のリーク量が変化する。ピストンに作用する燃料の圧力等が変化し、噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、異常判定手段による異常判定に際しては燃料温度が考慮される。このため、燃料温度による前記応答遅れに対する影響があっても、その影響を排除した異常判定が可能となり、判定の精度が高められる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、第1の発明を具体化した第1の実施の形態を図1〜図3に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、車両には、シリンダブロック11及びシリンダヘッド12を備えたディーゼルエンジン(以下単に「エンジン」という)13が搭載されている。シリンダブロック11には複数のシリンダボア14が設けられ、各ボア14内にピストン15が往復動可能に収容されている。各ピストン15はコネクティングロッド16を介しクランク軸17に連結されている。各ピストン15の往復運動は、コネクティングロッド16及びクランク軸17によって回転運動に変換される。
【0025】
シリンダヘッド12及び各ピストン15間には主燃焼室18が形成されている。シリンダヘッド12には副燃焼室19が主燃焼室18に連通した状態で設けられ、その副燃焼室19に燃料噴射ノズル21の先端が露出している。シリンダヘッド12には、主燃焼室18に連通する吸気ポート(図示略)及び排気ポート22がそれぞれ設けられている。これらのポート22を開放及び閉鎖するために、シリンダヘッド12には吸気バルブ(図示略)及び排気バルブ23がそれぞれ往復動可能に支持されている。
【0026】
吸気ポートには主燃焼室18にエンジン13外部の空気を導くための吸気通路24が接続され、その途中にメインバルブ25が支持されている。同バルブ25は運転者によるアクセルペダル26の踏み込み動作により回動し、吸気通路24を流れる空気の量を調整する。吸気通路24にはメインバルブ25を迂回するバイパス路27が設けられており、その途中にサブバルブ28が支持されている。サブバルブ28は、二段式のダイヤフラム室を有するアクチュエータ29によって開閉される。排気ポート22には、主燃焼室18での燃焼ガスをエンジン13外部へ導くための排気通路31が接続されている。
【0027】
上記エンジン13においては、空気がシリンダボア14内に吸入されて燃焼ガスが排出されるまでの期間、すなわち、1サイクルの間に、ピストン15が2往復してクランク軸17が2回転する。このサイクルは吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程の4つの行程からなる。
【0028】
吸気行程ではピストン15が下降するとともに吸気バルブが開かれる。排気バルブ23は閉じられている。ピストン15の下降にともなう負圧により、エンジン13外部の空気が吸気通路24、バイパス路27、メインバルブ25、サブバルブ28等を通じてシリンダボア14内に吸引される。圧縮行程ではピストン15が上昇する。このとき、吸気バルブ、排気バルブ23がともに閉じられているため、前記吸気行程でシリンダボア14内に吸入された空気が圧縮されて、高圧、高温となる。爆発行程では、燃料噴射ノズル21が開かれて副燃焼室19に燃料が霧状に噴射される。この燃料は燃焼室18,19内の高温、高圧の空気と混ざり合い、自己燃焼を起こして急激に燃焼する。この際の発熱エネルギーによりピストン15が下降する。排気行程では排気バルブ23が開かれるとともにピストン15が上昇する。この上昇により燃焼ガスがシリンダボア14から押し出される。同ガスは排気ポート22、排気通路31を通り、エンジン13外部へ排出される。
【0029】
次に、前記燃料噴射ノズル21に高圧燃料を供給する燃料噴射ポンプ32について説明する。ここでは、1本のプランジャ42を回転させながら往復動させて、各燃料噴射ノズル21に燃料を分配圧送する、いわゆる分配型燃料噴射ポンプ32が用いられている。同ポンプ32にはドライブシャフト33が回転可能に支持されており、そのシャフト33の先端(図の左端)にドライブプーリ34が取り付けられている。ドライブプーリ34及び前記クランク軸17にはベルト等が掛装されており、これらのドライブプーリ34、ベルト等によりクランク軸17の回転がドライブシャフト33に伝達される。
【0030】
燃料噴射ポンプ32内において、ドライブシャフト33上にはべーン式ポンプよりなる燃料フィードポンプ(図では90度展開されている)35が設けられている。ドライブシャフト33の基端部(図の右端部)には円板状のパルサ36が取り付けられている。ドライブシャフト33の基端部は図示しないカップリングを介してカムプレート37に接続されている。
【0031】
パルサ36とカムプレート37との間には燃料噴射時期の変化に応じて回動するローラリング38が設けられ、同カムプレート37のカムフェイス37aに対向する複数のカムローラ39がローラリング38の円周に沿って取り付けられている。カムフェイス37aはエンジン13の気筒数と同数だけ設けられている。カムプレート37はスプリング41によって付勢され常にカムローラ39に係合している。本実施の形態では、ローラリング38及びカムローラ39によって駆動カムが構成され、カムプレート37によって従動カムが構成されている。
【0032】
カムプレート37には燃料加圧用のプランジャ42が一体回転可能に取り付けられている。ドライブシャフト33の回転力は図示しないカップリングを介してカムプレート37に伝達される。この伝達により、カムプレート37が回転しながらカムローラ39に係合して、気筒数と同数回だけ図中左右方向へ往復動する。この往復動にともないプランジャ42が回転しながら同方向へ往復動する。つまり、カムフェイス37aがカムローラ39に乗り上げる過程でプランジャ42が往動(リフト)し、その逆にカムフェイス37aがカムローラ39を乗り下げる過程でプランジャ42が復動する。
【0033】
プランジャ42はポンプハウジング43に形成されたシリンダ44に嵌挿されており、そのプランジャ42の先端面とシリンダ44の内底面との間に高圧室45が形成されている。プランジャ42の先端部外周には、エンジン13の気筒数と同数の吸入溝46と分配ポート47とが形成されている。これらの吸入溝46及び分配ポート47に対応して、ポンプハウジング43には分配通路48及び吸入ポート49が形成されている。
【0034】
そして、ドライブシャフト33が回転して燃料フィードポンプ35が作動することにより、図示しない燃料タンク内の燃料が、燃料供給ポート51を介してポンプ室52へ供給される。プランジャ42が復動されて高圧室45が減圧される吸入行程中に、吸入溝46の一つが吸入ポート49に連通することにより、ポンプ室52内の燃料が高圧室45内へ導入される。一方、プランジャ42が往動されて高圧室45が加圧される圧縮行程中には、燃料が分配通路48から各燃料噴射ノズル21へ圧送される。
【0035】
ポンプハウジング43には、高圧室45とポンプ室52とを連通させる燃料溢流(スピル)用のスピル通路53が形成されている。スピル通路53の途中には、高圧室45からの燃料のスピルを調整する電磁スピル弁54が設けられている。電磁スピル弁54はコイル55を有する常開型の弁であり、同コイル55が無通電(オフ)の状態では弁体56が開放されて高圧室45内の燃料がポンプ室52へスピルされる。また、コイル55が通電(オン)されることにより、弁体56が閉鎖されて高圧室45からポンプ室52への燃料のスピルが止められる。
【0036】
従って、電磁スピル弁54の通電時間を変化させることにより、同弁54が閉弁・開弁制御され、高圧室45からポンプ室52への燃料のスピルが調整される。そして、プランジャ42の圧縮行程中に電磁スピル弁54を開弁させることにより、高圧室45内における燃料が減圧されて、燃料噴射ノズル21からの燃料噴射が停止される。つまり、プランジャ42が往動しても、電磁スピル弁54が開弁している間は高圧室45内の燃料圧力が上昇せず、各燃料噴射ノズル21から燃料が噴射されない。プランジャ42の往動中に、電磁スピル弁54の閉弁・開弁の時期を制御することにより、燃料噴射ノズル21からの燃料の噴射終了時期が変更されて燃料噴射量が調整される。
【0037】
ポンプハウジング43の下側には、燃料の噴射時期を変更するための噴射時期調整機構としてのタイマ装置(図では90度展開されている)57が設けられている。タイマ装置57は、ドライブシャフト33の回転方向に対するローラリング38の位置を変更することにより、カムフェイス37aがカムローラ39に係合する時期、すなわちカムプレート37及びプランジャ42の往復駆動時期を変更する。
【0038】
タイマ装置57は制御油圧により駆動されるものであり、タイマハウジング58、その内部に往復動可能に嵌装されたタイマピストン59、タイマハウジング58内の一側(図の左側)の低圧室61にてタイマピストン59を他側(図の右側)の高圧室62へ付勢するタイマスプリング63等から構成されている。タイマピストン59は連結部材としてのスライドピン64を介してローラリング38に接続されている。
【0039】
前記高圧室62には、燃料フィードポンプ35により加圧された燃料が導入される。そして、その燃料圧力とタイマスプリング63の付勢力との釣り合い関係によってタイマピストン59の位置が決定される。これにともないローラリング38の位置が決定され、カムプレート37を介してプランジャ42の往復動タイミングが決定される。本実施の形態では、高圧室62内の燃料圧力が上昇してタイマピストン59が低圧室61側へ移動すると、噴射時期が遅らされるように設定されている。
【0040】
タイマ装置57の制御油圧として作用する燃料圧力を調整するために、高圧室62と低圧室61とが連通路66によって連通され、その途中にタイミングコントロールバルブ(以下「TCV」という)65が設けられている。TCV65は、デューティ制御された通電信号によって開閉制御される電磁弁であり、同TCV65の開度調整によって高圧室62内の燃料圧力が調整される。その調整によってタイマピストン59が移動し、プランジャ42の往復動時期が変更され、各燃料噴射ノズル21からの燃料の噴射時期が調整される。
【0041】
ところで、車両の室内前部にはインストルメントパネル(図示略)が設けられており、ここに故障表示ランプ67が組み込まれている。同ランプ67は噴射時期制御装置の正常作動時に消灯させられ、異常時に点灯させられる。
【0042】
エンジン13の運転状態を検出するために、吸気温センサ71、アクセル開度センサ72、吸気圧センサ73、水温センサ74及びクランク角センサ75が用いられている。吸気温センサ71は吸気通路24を流れる空気の温度(吸気温度THA)を検出し、アクセル開度センサ72はメインバルブ25の開閉位置からエンジン13の負荷に相当するアクセル開度ACCPを検出する。吸気圧センサ73は吸気ポートの近傍の圧力(吸気圧力VPIM)を検出し、水温センサ74は冷却水の温度(冷却水温THW)を検出する。クランク角センサ75は実噴射時期検出手段の一部を構成するものであり、クランク軸17の回転に同期し、特定気筒のピストン15が上死点に達したときにクランク角パルスを出力する。
【0043】
車両の走行状態を検出するために、図示しないトランスミッションには車速センサ76が設けられている。同センサ76は、トランスミッションのギアの回転によって回されるマグネット76aによりリードスイッチ76bをオン・オフさせて車両速度(車速)SPを検出する。
【0044】
燃料噴射ポンプ32の作動状態を検出するために、回転速度センサ77及び燃温センサ78が用いられている。回転速度センサ77は実噴射時期検出手段の一部を構成するものであり、前記ローラリング38の上部に配置されている。同センサ77は電磁ピックアップコイルよりなり、パルサ36の外周面に形成された突起部が横切る度にポンプ角パルスを出力する。このパルス信号から燃料噴射ポンプ32の回転速度、すなわちクランク軸17の時間当たりの回転数(エンジン回転速度NE)が検出可能である。なお、回転速度センサ77は前記ローラリング38と一体であるため、タイマ装置57の制御動作に関わりなく、プランジャ42のリフト動作に対して一定のタイミングで基準となる信号を出力する。
【0045】
また、燃温センサ78はポンプハウジング43に取り付けられている。同センサ78は、温度によって電気抵抗値が大きく変化するサーミスタを内蔵しており、エンジン13に供給される燃料の温度(燃料温度)THFの変化を、サーミスタの電気抵抗値の変化でもって検出する。
【0046】
上述した各種センサ71〜78の検出信号に基づき電磁スピル弁54、TCV65及び故障表示ランプ67を駆動制御するために、電子制御装置(以下「ECU」という)81が設けられている。図2に示すように、ECU81は中央処理装置(CPU)82、所定の制御プログラム、マップ等を予め記憶した読み出し専用メモリ(ROM)83、CPU82の演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)84、予め記憶されたデータを保存するバックアップRAM85を備えている。これら各部材82〜85と入力ポート86及び出力ポート87とはバス88によって接続されている。
【0047】
前述した吸気温センサ71、アクセル開度センサ72、吸気圧センサ73、水温センサ74及び燃温センサ78はそれぞれバッファ89,90,91,92,93、マルチプレクサ94及びA/D変換器95を介して入力ポート86に接続されている。クランク角センサ75、車速センサ76及び回転速度センサ77は、波形整形回路96を介して入力ポート86に接続されている。CPU82は各センサ71〜78の検出信号を入力ポート86を介して読み込む。
【0048】
また、電磁スピル弁54、TCV65及び故障表示ランプ67は、それぞれ駆動回路97,98,99を介して出力ポート87に接続されている。CPU82は前記入力ポート86を介して読み込んだ入力値に基づき、電磁スピル弁54、TCV65及び故障表示ランプ67をそれぞれ制御する。
【0049】
次に、前記のように構成された本実施の形態の作用及び効果について説明する。図3のフローチャートは、CPU82によって実行される各処理のうち、燃料の噴射時期を制御するためのルーチンを示しており、所定のタイミングで実行される。
【0050】
このルーチンの処理が開始されると、CPU82はまずステップ110において、ディーゼルエンジン13の運転状態を検出する。例えば、回転速度センサ77によるエンジン回転速度NE、アクセル開度センサ72によるアクセル開度ACCP、水温センサ74による冷却水温THW等を読み込む。
【0051】
続いて、ステップ120においてエンジン13の運転状態に応じた目標噴射時期ATRGi を算出する。詳しくは、マップ又は所定の演算式に従い、前記エンジン回転速度NE及びアクセル開度ACCP(エンジン負荷)に応じた基本噴射時期を求める。この値を冷却水温THW等によって補正し、その補正値を目標噴射時期ATRGi として設定する。このようにして得られた目標噴射時期ATRGi にはタイマ装置57の応答遅れは考慮されていない。
【0052】
ステップ130において実噴射時期AACTi を算出する。詳しくは、クランク角センサ75から出力されるクランク角パルスと、回転速度センサ77から出力されるポンプ角パルスとを読み込む。両パルスに基づきタイマ装置57の位相を検出し、そのときの実噴射時期AACTi を推定する。
【0053】
ステップ140において、エンジン13の運転状態が過渡状態であるか否かを判定する。例えば、ポンプ角パルスに基づくエンジン回転速度NEの変化率(単位時間当たりの変化量)が所定範囲から外れているか否かを判定し、外れている場合には過渡状態であるとし、所定範囲内にある場合には定常状態であるとする。ここで、定常状態の場合には、タイマ装置57の応答遅れが小さいので、噴射時期制御装置が正常に機能しているのであれば、実噴射時期AACTi は目標噴射時期ATRGi に近い値となる。過渡状態の場合には、タイマ装置57の応答遅れが大きいので、噴射時期制御装置が正常に作動していても実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束するのに時間を要し、一時的に両噴射時期AACTi ,ATRGi の偏差が大きくなる。
【0054】
前記ステップ140の判定条件が満たされていなければ、すなわち定常状態であればステップ150へ移行し、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差を求め、その絶対値が予め設定された異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|ATRGi −AACTi |≦ThA)、定常状態において噴射時期制御装置が正常に作動していると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行う。
【0055】
詳しくは、ATRGi >AACTi であれば実際の噴射時期を早めるようにTCV65に対するデューティ比を変更し、ATRGi <AACTi であれば実際の噴射時期を遅らせるようにTCV65に対するデューティ比を変更し、ATRGi =AACTi であればそのときのデューティ比を保持する。このようにタイマ装置57による実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に一致するように、ポンプ角パルス及びクランク角パルスによりタイマ装置57の動作を監視しつつTCV65をデューティ比制御する。
【0056】
これに対し、ステップ150の判定条件が満たされていれば(|ATRGi −AACTi |>ThA)、噴射時期制御装置に何らかの異常が発生していて、TCV65を制御しても実噴射時期AACTi を目標噴射時期ATRGi に一致させることが困難であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。例えば、前述したステップ160での噴射時期のフィードバック制御を中止し、実噴射時期AACTi を、不具合を生じないような遅角側の一定値に保持する。これに代えて、フィードバック制御は継続するものの、目標噴射時期ATRGi にガードをかけ(制限を付し)、実噴射時期AACTi がエンジン13に不具合を生じさせるような極端に大きな値又は極端に小さな値になるのを防止するようにしてもよい。
【0057】
なお、定常状態において実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束しなくなる原因としては、例えば回転速度センサ77やTCV65の故障、油圧回路での堆積物による目詰まり等が考えられる。
【0058】
そして、ステップ180において異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させて、このルーチンを終了する。
一方、前記ステップ140の判定条件が満たされていると、すなわちエンジン13が過渡状態であると、仮に前記ステップ150での異常判定値ThAを用いて異常判定を行えば、タイマ装置57の応答遅れにより目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が同判定値ThAよりも大きくなり、噴射時期制御装置が正常に作動していても異常と判定するおそれがあると判断する。そして、ステップ150〜180の処理を行うことなく、このルーチンを終了する。換言すると、過渡状態では異常判定を禁止する。
【0059】
本実施の形態においては、上述したCPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ140,150,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0060】
このように第1の実施の形態では、エンジン13の運転状態に応じた異常判定が行われる。このため、過渡状態ではタイマ装置57が正常に作動していても応答遅れが大きくなり、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が大きくなるが、その応答遅れを考慮した異常判定がなされ、判定の精度が向上する。すなわち、定常状態では従来技術と同様な異常判定が行われるが、誤判定のおそれのある過渡状態では異常判定が行われないので、同過渡状態において偏差が異常判定値ThAよりも大きくなっても、異常と誤判定されることはない。
【0061】
本実施の形態は前述した事項以外にも次に示す特徴を有する。
(a)過渡状態での異常判定を禁止し、定常状態のときにのみ異常判定を行うようにしたので、過渡時用の異常判定値ThAを別途設定しなくてすむ。
(第2の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第2の実施の形態を図4に従って説明する。図4は、前述した図3に対応する噴射時期制御ルーチンを示している。本実施の形態は、過渡状態でも異常判定を行う点と、過渡状態と定常状態とで異常判定値ThAを異ならせている点とが第1の実施の形態と大きく異なっている。なお、図4において図3と同一の処理には同一のステップ数を付して、詳しい説明を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成は第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0062】
図4の噴射時期制御ルーチンが開始されると、CPU82はステップ110で、各センサ77,72,74によるエンジン回転速度NE、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等を読み込む。ステップ120でエンジン13の運転状態に応じた目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。ステップ140で、エンジン13の運転状態が過渡状態であるか否かを判定する。
【0063】
この判定条件が満たされていなければ、すなわち定常状態であればステップ141へ移行し、定常時用の判定値Ths(>0)を異常判定値ThAとして設定する。これに対し、ステップ140の判定条件が満たされていれば、すなわち過渡状態であればステップ142へ移行し、過渡時用の判定値Tht(>Ths)を異常判定値ThAとして設定する。ここで、判定値Ths,Thtは、いずれも予め定められてROM83に記憶されている。このように、過渡状態では定常状態に比べてタイマ装置57の応答遅れが大きくなることを考慮して、定常状態での値Thsも大きな値Thtを異常判定値ThAとして設定する。なお、判定値Thsを「0」よりも大きな値としているのは、実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束した状態においても、実際には実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi を中心とするある程度の範囲の中で変動するからであり、この変動を異常と判定しないようにするためである。
【0064】
このようにステップ141又は142で異常判定値ThAを設定すると、ステップ150において、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差の絶対値が異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|ATRGi −AACTi |≦ThA)、噴射時期制御装置が正常に作動していると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行い、このルーチンを終了する。これに対し、ステップ150の判定条件が満たされていれば(|ATRGi −AACTi |>ThA)、噴射時期制御装置が異常であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。ステップ180で異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させて、このルーチンを終了する。
【0065】
本実施の形態ではCPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ140,141,142,150,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0066】
このように第2の実施の形態では、エンジン13の過渡状態のときには定常状態のときよりも大きな異常判定値ThAが用いられる。換言すると、定常状態では、その状態に適した異常判定値ThA(=Ths)を用いた異常判定がなされる。過渡状態では、その状態に適した異常判定値ThA(=Tht)を用いた異常判定がなされる。すなわち、過渡状態の場合にはタイマ装置57の応答遅れが大きくなり、同装置57が正常に作動していても目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が定常状態の場合よりも大きくなるが、異常判定値ThAが大きくされたことで、異常と誤判定されにくくなり、判定の精度が向上する。
【0067】
本実施の形態は前述した事項以外にも次に示す特徴を有する。
(a)定常状態及び過渡状態を含む全運転領域にわたり、一つの異常判定値によって異常判定を行う従来技術では、エンジンの過渡状態において正常であるにもかかわらず異常と判定する不具合を回避しようとすると、同異常判定値を大きな値に設定することになる。すると、過渡状態のときにも異常判定を判定できる反面、定常状態において実噴射時期が目標噴射時期に収束しないようなときに異常と判定できなくなる。
【0068】
これに対し、本実施の形態では二つの判定値Ths,Thtを予め設定しておき、エンジン13の運転状態に応じていずれか一方を選択し、これを異常判定値ThAとしている。定常状態では比較的小さな判定値Thsを異常判定値ThAとして用いることにより、実噴射時期AACTi が目標噴射時期ATRGi に収束しない異常を検出できる。過渡状態では前記判定値Thsよりも大きな判定値Thtを異常判定値ThAとして用いることにより、実噴射時期AACTi を目標噴射時期ATRGi に収束させることはできるものの応答が遅くなっている異常を検出することができる。このように二種類の異常を検出することが可能である。
(第3の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第3の実施の形態を図5,6に従って説明する。図5は前述した図4に対応する噴射時期制御ルーチンを示している。
本実施の形態は、目標噴射時期ATRGi の変化率に応じて異常判定値ThAを異ならせている点が第2の実施の形態と大きく異なっている。なお、図5において図4と同一の処理には同一のステップ数を付して、詳しい説明を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成は第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0069】
この噴射時期制御ルーチンが開始されると、CPU82はステップ110で、各センサ77,72,74によるエンジン回転速度NE、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等を読み込む。ステップ115において、前回の制御周期で記憶した目標噴射時期ATRGi-1 を読み出す。ステップ120で今回の目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。
【0070】
次に、ステップ143において、目標噴射時期の変化率ΔATRGを算出する。ここでは、今回の目標噴射時期ATRGi と前回の目標噴射時期ATRGi-1 との偏差を求め、これを変化率ΔATRGとする。
【0071】
ステップ144において、図6に示すマップを参照して異常判定値ThAを算出する。このマップには、変化率ΔATRGに対する異常判定値ThAが、次のような関係をなすように予め規定されている。変化率ΔATRGが「0」よりも若干小さな任意の値をaとし、「0」よりも若干大きな任意の値をbとすると、a≦ΔATRG≦bの領域では異常判定値ThAは最小の値c(>0)である。a>ΔATRGの領域では変化率ΔATRGが小さくなるほど異常判定値ThAが増加する。また、ΔATRG>bの領域では変化率ΔATRGが大きくなるほど異常判定値ThAが増加する。従って、前記マップを参照すると、目標噴射時期ATRGが変化しないとき(定常状態に相当)には異常判定値ThAが最小値(=c)に設定され、同噴射時期ATRGが早く変化するとき(過渡状態に相当)にはタイマ装置57の応答遅れを考慮して異常判定値ThAが大きな値に設定される。
【0072】
次に、ステップ150において、目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が前記異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|ATRGi −AACTi |≦ThA)、噴射時期制御装置が正常であると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行い、ステップ190へ移行する。これに対し、ステップ150の判定条件が満たされていれば(|ATRGi −AACTi |>ThA)、噴射時期制御装置が異常であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。ステップ180で異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させてステップ190へ移行する。
【0073】
ステップ190では、次回の演算に備えて今回の目標噴射時期ATRGi を前回の目標噴射時期ATRGi-1とする。そして、この値(ATRGi-1)をRAM84に記憶した後、このルーチンを終了する。
【0074】
本実施の形態においては、CPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ143,144,150,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0075】
このように第3の実施の形態によると、異常判定値ThAが目標噴射時期ATRGi の変化率ΔATRGに応じた値に設定される。変化率ΔATRGが小さな場合(a≦ΔATRG≦b)には、すなわち定常状態では、小さな異常判定値ThA(=c)が用いられる。この点は第2の実施の形態と同様である。しかし、変化率ΔATRGが大きな場合には単一の異常判定値ThAを用いるのではなく、その変化率ΔATRGが大きくなるに従い増加する異常判定値ThAが用いられる。このため、目標噴射時期ATRGi が急激に変化するほどタイマ装置57の応答遅れが大きくなり、同目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差が大きくなるが、その目標噴射時期ATRGi の変化の程度(変化率ΔATRG)に適した異常判定値ThAとの比較によって異常判定が行われることとなる。従って、一つの異常判定値によって過渡状態での異常判定を行う場合に比べ、判定の精度が向上する。
(第4の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第4の実施の形態について図7,8に従って説明する。図8は前述した図4に対応する噴射時期制御ルーチンを示している。本実施の形態では、目標噴射時期ATRGi に基づく予想実噴射時期ATRGSMi を求める。この噴射時期ATRGSMi は、正常作動時のタイマ装置57が有する応答遅れを考慮した値である。そして、予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi との偏差を用いて噴射時期制御装置の異常を判定している。なお、図8において図4と同一の処理には同一のステップ数を付して、詳しい説明を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成は第1の実施の形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0076】
まず、予想実噴射時期ATRGSMi について説明する。図7において、低圧室61側からタイマピストン59に作用する力をfPLとし、高圧室62側からタイマピストン59に作用する力をfPHとする。力fPLは低圧室61内の燃料圧力とタイマピストン59の低圧室61側の受圧面積との積で表され、力fPHは高圧室62内の燃料圧力とタイマピストン59の高圧室62側の受圧面積との積で表される。また、タイマピストン59の質量、変位量をそれぞれm、xとし、粘性係数をcとし、タイマスプリング63のばね定数をkとする。ここでの粘性係数cは、燃料温度THFを一定とし、高圧室62からタイマピストン59とタイマハウジング58との隙間gを通って低圧室61へリークする燃料の量を一定とし、高圧室62から連通路66及びTCV65を通って低圧室61へ流通する燃料の量を一定としたときの値である。また、力fPHには、カムプレート37のカムフェイス37aがカムローラ39に乗り上げるときにローラリング38、スライドピン64を介してタイマピストン59に作用する力Fは含まれていない。これらを用いると、タイマピストン59についての運動方程式は、次式(1)で表される。
【0077】
【数1】
式(1)中、fPH(t) とfPLとの差をΔfp(t) とする。また、質量mは粘性係数cやばね定数kに比べて無視できるほど小さい。このため、上記式(1)は、次式(2)に書き換えることができる。
【0078】
【数2】
また、一般に式(3)が成り立つ。
【0079】
【数3】
Δtは変位量xがxi-1 からxi に変化するのに要した時間である。
上記式(3)を用いれば、式(2)の運動方程式は以下のようにΔtで離散化して表現することができる。
【0080】
【数4】
式(4)をラプラス変換すると、次式(5)が得られる。
【0081】
【数5】
ところで、TCV65に対するデューティ比を制御して、低圧室61及び高圧室62からタイマピストン59に作用する力の差Δfp(t)を調整すれば、実噴射時期を目標噴射時期ATRG(t) に収束させることができる。このことから、前記差Δfp(t) と目標噴射時期ATRG(t) との間の関係を次式(6)で表すことができる。
【0082】
【数6】
αは目標噴射時期ATRG(t) を差Δfp(t)に変換するために用いられる係数である。
【0083】
また、タイマピストン59の位置が変化すると、ローラリング38の位置も変化する。そして、プランジャ42の往復動のタイミングが変化し、ひいては実噴射時期が変化する。このことから、変位量xと予想実噴射時期ATRGSM(t)との間の関係を次式(7)で表すことができる。
【0084】
【数7】
ここで、βは予想実噴射時期ATRGSM(t) を変位量xに変換するために用いられる係数である。
【0085】
上述した式(4)に、式(6),(7)を代入すると、式(8),(9)が得られる。
【0086】
【数8】
上記式(9)中の噴射時期ATRGSMi は、タイマ装置57が正常に作動しているときに予想される噴射時期である。
【0087】
さて、図8の噴射時期制御ルーチンの処理が開始されると、CPU82はステップ110で、各センサ77,72,74によるエンジン回転速度NE、アクセル開度ACCP、冷却水温THW等を読み込む。ステップ115において、前回の制御周期で記憶した予想実噴射時期ATRGSMi-1 を読み出す。ステップ120で今回の目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。次に、ステップ135において目標噴射時期ATRGi、前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 等を用い、前述した式(9)に従い今回の予想実噴射時期ATRGSMiを算出する。ステップ140で、エンジン13の運転状態が過渡状態であるか否かを判定する。
【0088】
この判定条件が満たされていなければ、ステップ141において定常時用の判定値Ths(>0)を異常判定値ThAとして設定し、同判定条件が満たされていれば、ステップ142において過渡時用の判定値Tht(>Ths)を異常判定値ThAとして設定する。ステップ155において、実噴射時期AACTi と予想実噴射時期ATRGSMi との偏差の絶対値が異常判定値ThAよりも大きいか否かを判定する。この判定条件が満たされていなければ(|AACTi −ATRGSMi |≦ThA)、噴射時期制御装置が正常に作動していると判断し、ステップ160において噴射時期のフィードバック制御を行い、ステップ190へ移行する。これに対し、ステップ155の判定条件が満たされていれば(|AACTi −ATRGSMi |>ThA)、噴射時期制御装置が異常であると判断し、ステップ170においてフェイル時用の噴射時期制御を行う。ステップ180で異常モードを設定するとともに故障表示ランプ67を点灯させて、ステップ190へ移行する。
【0089】
ステップ190では、次回の演算に備えて今回の予想実噴射時期ATRGSMi を前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 とする。そして、この値(ATRGSMi-1)をRAM84に記憶した後、このルーチンを終了する。
【0090】
本実施の形態においてはCPU82によるステップ130の処理が実噴射時期検出手段に相当し、ステップ155,160,170の処理が異常判定手段に相当する。
【0091】
このように第4の実施の形態によると、タイマ装置57は正常作動時にも応答遅れを有するが、この応答遅れを考慮して求めた予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi との偏差を用いて過渡状態での異常判定を行うことにより、単に目標噴射時期ATRGi と実噴射時期AACTi との偏差を用いて異常判定を行う場合よりも判定の精度が向上する。
(第5の実施の形態)
次に、第1,2の発明を具体化した第5の実施の形態を図9,10に従って説明する。図9は前述した図8に対応する噴射時期制御ルーチンの一部を示している。本実施の形態は、予想実噴射時期ATRGSMi の算出に際し、タイマ装置57の応答遅れ分に燃料温度THFを考慮している点が前述した第4の実施の形態と異なっている。なお、本実施の形態においてはステップ140以降の処理は図8と同じであるので、その図示を省略する。また、エンジン13やその周辺機器等の構成に関しても第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0092】
ここで、応答遅れに燃料温度THFを考慮したのは以下の理由による。第4の実施の形態において、燃料温度THFが一定で、タイマピストン59及びタイマハウジング58の隙間gでの燃料のリーク量が一定であり、連通路66及びTCV65を流れる燃料の量が一定であれば、予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi とが一致するはずである。しかし、実際には燃料噴射ポンプ32の作動により燃料温度THFが変化する。例えば、燃料温度THFはポンプ32の始動時には低く、時間とともに次第に上昇する。燃料温度THFの上昇にともない燃料の粘度が低下し、前記隙間gでの燃料のリーク量や、連通路66及びTCV65を流れる燃料の量が増加する。低圧室61内の燃料圧力、高圧室62内の燃料圧力が変化し、タイマピストン59に作用する力fPL,fPHが変化する。そこで、燃料温度THFと式(9)とを関連付けて、同燃料温度THFを考慮した予想実噴射時期ATRGSMi を求めるようにしている。
【0093】
より詳しくは、目標噴射時期ATRGi が変化しないものと仮定すると、予想実噴射時期ATRGSMi は最終的に目標噴射時期ATRGi となる。このため、α=kとすると、式(9)は、次式(10)に書き換えられる。
【0094】
【数9】
さて、図9の噴射時期制御ルーチンの処理が開始されると、CPU82はステップ111で回転速度センサ77によるエンジン回転速度NE、アクセル開度センサ72によるアクセル開度ACCP、水温センサ74による冷却水温THW、燃温センサ78による燃料温度THF等を読み込む。ステップ115において前回の制御周期で記憶した予想実噴射時期ATRGSMi-1 を読み出す。ステップ120で目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。
【0095】
次に、ステップ131において図10のマップを参照して燃料温度THFに応じた時定数の逆数k/cを算出する。このマップは、タイマ装置57において燃料温度THFを種々変化させて、同燃料温度THF毎の逆数k/cを測定して作成したものである。図10から明らかなように、このマップでは、燃料温度THFが高くなるに従い逆数k/cが増加するように設定されている。
【0096】
ステップ135において、前述した式(10)に従い、目標噴射時期ATRGi 、前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 及び逆数k/cを代入することにより予想実噴射時期ATRGSMiを算出する。そして、ステップ140〜190の処理を実行する。
【0097】
このように燃料温度THFに応じて燃料の粘性が変化し、隙間gを通過する燃料のリーク量が変化する。タイマピストン59に作用する燃料の圧力等が変化し、タイマ装置57の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、予想実噴射時期ATRGSMi として燃料温度THFに応じた値、すなわち燃料温度THFの影響を考慮した値が求められる。このため、得られる予想実噴射時期ATRGSMi は、タイマ装置57が正常に作動した場合の実噴射時期AACTに一層近似した値となる。この予想実噴射時期ATRGSMi を異常判定に用いることにより、判定の精度をさらに高めることができる。
(第6の実施の形態)
次に、第1の発明を具体化した第6の実施の形態を図11,12に従って説明する。図11は前述した図8に対応する噴射時期制御ルーチンの一部を示している。本実施の形態は、予想実噴射時期ATRGSMi の算出に際し、タイマ装置57の応答遅れ分に燃料噴射量を考慮している点が前述した第4の実施の形態と異なっている。なお、本実施の形態においてステップ140以降の処理は図8と同じであるので、その図示を省略する。また、エンジン13やその周辺機器の構成に関しても第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0098】
ここで、タイマ装置57の応答遅れに燃料噴射量を考慮したのは以下の理由による。第4の実施の形態において、噴射時期を決定するタイマピストン59の位置がカムプレート37の回転から全く影響を受けないのであれば、予想実噴射時期ATRGSMi と実噴射時期AACTi とが一致するはずである。しかし、実際にはカムフェイス37aのカムローラ39との接触開始(プランジャ42のリフト開始)から、そのカムフェイス37aの頂部がカムローラ39に接触するまでの期間、つまりカムフェイス37aがカムローラ39に乗り上げる期間には、ローラリング38に対し、カムプレート37からカムローラ39を介して図7の時計回り方向の力が作用する。この力Fはスライドピン64を介してタイマピストン59に伝わり、同ピストン59を図2の左方(噴射時期を遅らせる方向)へ移動させようとし、噴射時期を早める際の応答性を低下させる。
【0099】
ところで、前記力Fはエンジン回転速度NEが高くなるほど大きくなり、また、燃料噴射量の多い高負荷ほど大きくなる傾向にある。そこで、応答遅れにエンジン回転速度NEと噴射量指令値QFINとを考慮して上記式(10)に従い予想実噴射時期ATRGSMi を求めるようにしている。
【0100】
図11の噴射時期制御ルーチンの処理が開始されると、CPU82はステップ110で回転速度センサ77によるエンジン回転速度NE、アクセル開度センサ72によるアクセル開度ACCP、水温センサ74による冷却水温THW等を読み込む。ステップ115において前回の制御周期で記憶した予想実噴射時期ATRGSMi-1 を読み出す。ステップ116において、別途用意されたルーチンで求められた燃料の噴射量指令値QFINを読み込む。この指令値QFINは、エンジン回転速度NE及びアクセル開度ACCPから基本噴射量を求め、これを冷却水温THW、吸気温度THA、吸気圧力VPIM等によって補正することにより得られたものである。ステップ120で目標噴射時期ATRGi を算出し、ステップ130で実噴射時期AACTi を算出する。
【0101】
次に、ステップ131において図12のマップを参照し、エンジン回転速度NE及び噴射量指令値QFINに応じた時定数の逆数k/cを算出する。このマップは、タイマ装置57においてエンジン回転速度NE及び噴射量指令値QFINを種々変化させながら時定数の逆数k/cを測定して作成したものである。図12から明らかなように、このマップでは、エンジン回転速度NEが高くなるほど、また噴射量指令値QFINが大きくなるほど、逆数k/cが増加するように設定されている。
【0102】
ステップ135において、前述した式(10)を用い、目標噴射時期ATRGi 、前回の予想実噴射時期ATRGSMi-1 及び逆数k/cを代入することにより予想実噴射時期ATRGSMiを算出する。そして、ステップ140〜190の処理を実行する。
【0103】
このように、カムプレート37がカムローラ39に乗り上げる際には、そのカムプレート37からカムローラ39に力Fが作用する。同力Fはローラリング38、スライドピン64等を介してタイマピストン59に作用し、タイマ装置57の応答遅れに影響を及ぼす。しかし、予想実噴射時期ATRGSMi として前記力Fを考慮した値が求められる。このため、得られる予想実噴射時期ATRGSMi はタイマ装置57が正常に作動した場合の実噴射時期AACTi により近似した値となる。この予想実噴射時期ATRGSMi を異常判定に用いることにより、判定の精度、特に噴射時期を早めるとき(進角時)の判定精度を高めることができる。
【0104】
なお、本発明は次に示す別の実施の形態に具体化することができる。
(1)本発明は、実噴射時期AACTi をセンサによって直接検出し、その検出値を用いて噴射時期をフィードバック制御するものにも適用可能である。このセンサとしては、例えば燃料噴射ノズル21のノズルニードルのリフト動作を検出するもの(ノズルリフトセンサ)を用いてもよいし、燃料噴射ポンプ32から燃料噴射ノズル21へ圧送される燃料の圧力を検出するもの(圧力センサ)を用いてもよい。後者の場合、圧力センサは燃料噴射ノズル21に配置されてもよいし、燃料噴射ポンプ32と燃料噴射ノズル21とを繋ぐ配管の途中に配置されてもよい。
【0105】
(2)エンジン13の過渡状態を判定する条件としては、エンジン回転速度NEの変化率に代えて、負荷(アクセル開度ACCP)の変化率を用いてもよい。この場合、負荷の単位時間当たりの変化量が所定値よりも大きい場合に過渡状態とする。
【0106】
(3)図8の噴射時期制御ルーチンのステップ140,141,142の処理を省略してもよい。
(4)第5の実施の形態と第6の実施の形態とを組み合わせてもよい。すなわち、予想実噴射時期ATRGSMi の算出に際し、タイマ装置57の応答遅れ分に対し燃料温度THFと、カムフェイス37aのカムローラ39への乗り上げ時の力Fとの両方を考慮する。このようにすれば、予想実噴射時期ATRGSMi の精度をさらに高めることができる。
【0109】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ディーゼルエンジンの運転状態に応じた異常判定が行われるので、単に目標噴射時期と実噴射時期との偏差が異常判定値よりも大きなときに異常と判定する場合に比べて、判定の精度を高めることが可能となる。
【0110】
特に、目標噴射時期に代えて予想実噴射時期を用いた場合には、この予想実噴射時期を、正常作動時の噴射時期調整機構による実噴射時期に近似した値にすれば精度の高い異常判定を実現できる。
【0115】
さらに、従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力が噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼしても、異常判定に際しその応答遅れが考慮されるので、一層精度の高い異常判定が可能となる。
第2の発明によれば、燃料温度の変化が噴射時期調整機構の応答遅れに影響を及ぼしても、異常判定に際しその応答遅れが考慮されるので、第1の発明の効果に加え一層精度の高い異常判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態におけるディーゼルエンジン及びその周辺機器を示す概略構成図。
【図2】ECUの電気的構成を示すブロック図。
【図3】噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第2の実施の形態における噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図5】第3の実施の形態における噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図6】目標噴射時期の変化率と異常判定値との対応関係を規定したマップを示す線図。
【図7】第4の実施の形態におけるタイマ装置の概略構成図。
【図8】噴射時期制御ルーチンを示すフローチャート。
【図9】第5の実施の形態における噴射時期制御ルーチンの一部を示すフローチャート。
【図10】燃料温度と時定数の逆数との関係を規定したマップを示す線図。
【図11】第6の実施の形態における噴射時期制御ルーチンの一部を示すフローチャート。
【図12】エンジン回転速度と、噴射量指令値と、時定数の逆数との対応関係を規定したマップを示す線図。
【符号の説明】
13…ディーゼルエンジン、21…燃料噴射ノズル、32…燃料噴射ポンプ、37…従動カムとしてのカムプレート、38…駆動カムの一部を構成するローラリング、39…駆動カムの一部を構成するカムローラ、42…プランジャ、57…噴射時期調整機構としてのタイマ装置、58…タイマハウジング、59…タイマピストン、64…連結部材としてのスライドピン、75…実噴射時期検出手段の一部を構成するクランク角センサ、77…実噴射時期検出手段の一部を構成する回転速度センサ、THF…燃料温度、ATRGi …目標噴射時期、AACTi …実噴射時期、ThA…異常判定値、ATRGSMi …予想実噴射時期。
Claims (2)
- 燃料噴射ポンプによる燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期がディーゼルエンジンの運転状態に応じた目標噴射時期となるように噴射時期調整機構を制御する噴射時期制御装置に用いられるものであって、
前記噴射時期調整機構による実噴射時期を検出する実噴射時期検出手段と、
前記目標噴射時期又はその目標噴射時期に基づく予想実噴射時期と、前記実噴射時期検出手段による実噴射時期との偏差を求め、その偏差が異常判定値よりも大きくなると前記噴射時期制御装置に異常が発生したと判定する異常判定手段とを備え、
前記燃料噴射ポンプは、回動可能に配置された駆動カムと、同駆動カムに接触した状態でプランジャと一体回転する従動カムとを有し、同従動カムの回転をともなう往復動によりプランジャを往復動させて燃料を吸入及び加圧し、加圧された燃料を前記燃料噴射ノズルに供給するものであり、
前記噴射時期調整機構は、往復動可能に設けられたピストンと、同ピストン及び前記駆動カムを連結する連結部材とを備え、燃料の圧力に応じてピストンを移動させて駆動カムを回動させることにより前記プランジャの往復動のタイミングを変更させ、前記燃料噴射ノズルからの燃料の噴射時期を調整するものであり、 前記異常判定手段は、異常判定に際し、前記従動カムが駆動カムに乗り上げるときに連結部材を介してピストンに作用する力を考慮するものであるディーゼルエンジンの噴射時期制御装置における異常判定装置。 - 前記噴射時期調整機構は燃料の圧力を利用してハウジング内のピストンを移動させて燃料の噴射時期を調整するものであり、前記異常判定手段は異常判定に際し燃料温度を考慮するものである請求項1に記載のディーゼルエンジンの噴射時期制御装置における異常判定装置。
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