JP2008202593A - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】センサを追加することなく処理負荷を極力低減して燃料噴射時期を推定する燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】インジェクタ20は、燃料噴射ポンプ12から吐出されコモンレール14で蓄圧された燃料を内燃機関の各気筒に噴射する。ECU50は、コモンレール14の圧力を検出する圧力センサ16の検出信号、電磁ピックアップ74により検出されたGパルサ70およびNEパルサ72の検出信号、およびその他の各種センサの検出信号等を入力し、これら検出信号により推定されるエンジン運転状態に基づいてインジェクタ20からの燃料噴射を制御する。また、ECU50は、気筒毎のエンジン回転速度に基づき、燃料噴射量および燃料噴射時期を補正する。
【選択図】図1

Description

本発明は、コモンレールで蓄圧された燃料をインジェクタから内燃機関の各気筒に噴射する燃料噴射システムの燃料噴射制御装置に関する。
コモンレールで蓄圧された燃料をインジェクタから内燃機関の各気筒に噴射する燃料噴射システムにおいて、エンジン運転状態に基づいて電子制御装置(Electronic Control Unit;ECU)がインジェクタの燃料噴射を制御することが知られている。
ここで、例えば経年劣化等により、インジェクタのノズルニードルに荷重を加えるスプリングの劣化、あるいはノズルニードルと弁座との接触箇所の摩耗等が生じると、エンジン運転状態に基づいてECUが算出するインジェクタの目標噴射量と、目標噴射量に基づきECUがインジェクタを制御した結果インジェクタが噴射する実際の燃料噴射量(以下、実噴射量という。)との差が大きくなることがある。このような場合、ECUがエンジン回転速度の変動から実噴射量を推定し、実噴射量と目標噴射量との差に基づいて駆動信号を調整しインジェクタの燃料噴射量を補正することが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかしながら、エンジントルクは燃料噴射量だけでなく燃料噴射時期によっても変化するので、実噴射量を推定し燃料噴射量を補正するだけでは、エンジントルクを高精度に制御することは困難である。
また、特許文献3には、筒内圧センサにより内燃機関の各気筒内の圧力を検出し、この検出圧から燃料噴射時期を算出することが開示されている。
しかしながら、特許文献3では、各気筒に筒内圧センサを設置する必要があるので、センサ数が増加するという問題がある。さらに、筒内圧センサから燃料噴射時期を推定するための負荷が新たにECUに加わるので、ECUの処理負荷が増加するという問題がある。
特開2004−19637号公報 特開2005−155360号公報 特開2005−194893号公報
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、センサを追加することなく処理負荷を極力低減して燃料噴射時期を推定する燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
請求項1から8に記載の発明では、気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しいと判定された後、各気筒の爆発行程を含む任意の期間において、エンジン回転速度に基づき各気筒の燃料噴射時期を推定する。気筒毎のエンジン回転速度の変動、例えば気筒毎のエンジン回転速度の最大値と最小値との差(以下、最大値と最小値との差を「変動差」という。)が気筒同士で等しくなると、エンジン回転速度に基づき各気筒の燃料噴射時期の推定が容易になる。
また、燃料噴射時期のずれによるエンジン回転速度の変化率は爆発行程において最も大きくなる。したがって、爆発行程を含む任意の期間においてエンジン回転速度を検出することにより、燃料噴射時期を高精度に推定できる。
また、エンジン回転速度は、エンジン運転状態に基づいてインジェクタの燃料噴射量を制御するために従来から検出されているので、エンジン回転速度に基づき燃料噴射時期を推定するために、新たにセンサ等を設置する必要がない。また、エンジン回転速度を検出する従来のプログラムを利用できるので、ECUの負荷の増加を低減できる。このように請求項1から8に記載の発明では、従来検出されているエンジン回転速度から燃料噴射時期を推定するので、燃料噴射時期を推定するためにECUに加わる負荷を極力低減できる。
ここで、燃料噴射時期のずれによる爆発行程から排気行程までの爆発行程を含む期間におけるエンジン回転速度の変化率は、他の行程における変化率よりも大きい。したがって、請求項2に記載の発明のように、爆発行程を含み、爆発行程から排気行程までの間でエンジン回転速度を検出することにより、燃料噴射時期をさらに高精度に推定できる。
請求項3に記載の発明では、燃料噴射時期のずれによるエンジン回転速度の変化率が最も大きい爆発行程内でエンジン回転速度を検出するので、燃料噴射時期をさらに高精度に推定できる。また、燃料噴射時期を推定するためにエンジン回転速度を検出する期間が爆発行程内だけになり短くなるので、ECUの処理負荷が低減する。
請求項4に記載の発明では、目標噴射時期と噴射時期推定手段で推定された燃料噴射時期との差に基づき燃料噴射時期を補正するので、従来検出されているエンジン回転速度から燃料噴射時期を補正できる。これにより、燃料噴射時期を補正するためにECUに加わる負荷を極力低減できる。
請求項5に記載の発明では、燃料噴射時期が目標噴射時期から所定範囲を超えてずれていると異常であると判定する。これにより、例えば、経年劣化等によるインジェクタの作動不良を通知したり、燃料噴射量を所定量以下に制限して内燃機関を制御運転するフェイルセーフ処理を実施することができる。
請求項6に記載の発明では、公知の微少噴射量学習または気筒間噴射量補正(FCCB補正)が実施され、気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しいと判定されてから、燃料噴射時期を推定するので、爆発行程を含む任意期間におけるエンジン回転速度の変化率を高精度に検出できる。これにより、燃料噴射時期を高精度に推定できる。
請求項7および8に記載の発明では、通常のエンジン運転時ではなく内燃機関を保守診断するときの診断モード時に燃料噴射時期を推定するので、燃料噴射時期を推定するために適切な燃料噴射を行うことができる。例えば、通常のエンジン運転時にはメイン噴射の前後に微少量を噴射する多段噴射を行うインジェクタを診断モード時には単発で噴射させることにより、気筒毎の1噴射当たりのエンジン回転速度の変化率を高精度に検出できる。これにより、燃料噴射時期を高精度に推定できる。
尚、本発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(燃料噴射システム10)
本発明の一実施形態による燃料噴射制御装置を用いた4気筒のディーゼルエンジンの燃料噴射システムを図1に示す。
燃料噴射システム10では、燃料噴射ポンプ12から吐出されコモンレール14で蓄圧された燃料をインジェクタ20から噴射する。ECU50は、コモンレール14の圧力を検出する圧力センサ16の検出信号、電磁ピックアップ74により検出されたGパルサ70およびNEパルサ72の検出信号、およびその他の各種センサの検出信号等を入力し、これら検出信号により推定されるエンジン運転状態に基づいてインジェクタ20からの燃料噴射を制御する。電子駆動装置(Electronic Driving Unit;EDU)60は、ECU50から送出されるインジェクタ20の開閉信号(噴射パルス)に基づいて、インジェクタ20に駆動電流を供給する。
インジェクタ20の構成を図2に基づいて簡単に説明する。弁ボディ22に形成された弁座23の燃料下流側に噴孔24が形成されている。ノズルニードル30が弁座23に着座すると噴孔24からの燃料噴射が遮断され、ノズルニードル30が弁座23から離座すると噴孔24から燃料が噴射される。スプリング32は弁座23に着座する方向にノズルニードル30に荷重を加えている。噴孔24から噴射される燃料は、コモンレール14から、燃料流入通路200を通りノズルニードル30周囲の燃料溜まり202に供給される。
制御ピストン34は、ノズルニードル30に対して噴孔24と反対側に設置され、ノズルニードル30とともに往復移動する。制御ピストン34に対してノズルニードル30と反対側に制御室204が形成されている。制御室204には、燃料流入通路200から入口絞り206を通りコモンレール14で蓄圧された燃料が供給される。
電磁弁40は、制御室204に連通している出口絞り210と燃料排出通路212との連通を断続する制御弁である。電磁弁40の弁部材42は、出口絞り210と燃料排出通路212との連通を遮断する方向にスプリング44から荷重を受けている。
図3に示すように、ECU50から噴射パルスが送出されると、EDU60は噴射パルスに応じた駆動電流をインジェクタ20に供給する。EDU60から電磁弁40のコイル46に駆動電流が供給されると、スプリング44の荷重に抗して働く磁気吸引力により、弁部材42は出口絞り210と燃料排出通路212とが連通する方向に移動する。これにより、制御室204と燃料排出通路212とが出口絞り210を介して連通する。出口絞り210の絞り径は入口絞り206の絞り径よりも大きいので、制御室204と燃料排出通路212とが連通すると、制御室204の圧力は低下する。
制御室204の圧力が低下すると、弁座23に着座する方向に制御室204から受ける力が小さくなるので、ノズルニードル30が弁座23から離座し、噴孔24から燃料が噴射される。
噴射パルスがオフになり、EDU60からインジェクタ20への駆動電流の供給が停止されると、スプリング44の荷重により弁部材42は出口絞り210と燃料排出通路212との連通を遮断する方向に移動する。出口絞り210と燃料排出通路212との連通が遮断されると、制御室204の圧力が上昇し制御室204の圧力から弁座23に着座する方向にノズルニードル30が受ける力が上昇するので、ノズルニードル30は弁座23に着座し噴孔24からの燃料噴射は遮断される。
インジェクタ20の燃料噴射量はECU50が生成する噴射パルスのパルス幅により決定され、インジェクタ20の燃料噴射時期はECU50が生成する噴射パルスの立ち上がり時期により決定される。
図1に示すように、燃料噴射制御装置としてのECU50は、CPU52、RAM54、フラッシュメモリ56等から構成されている。RAM54は、CPU52で処理されるデータやプログラムを一時的に格納する。フラッシュメモリ56は、CPU52で実行される制御プログラム、およびセンサの検出信号に基づき参照する各種マップを格納している書き換え可能な不揮発性メモリである。ECU50は、特許請求の範囲に記載した、回転速度検出手段、変動判定手段、噴射時期推定手段、噴射時期補正手段、噴射時期判定手段として機能する。また、ECU50は、噴射量補正手段としても機能する。
Gパルサ70は図示しないカムシャフトとともに回転し、NEパルサ72は図示しないクランクシャフトとともに回転する。したがって、Gパルサ70が1回転する間にNEパルサ72は2回転する。Gパルサ70の外周には、各気筒を判別するための歯が90ー間隔にそれぞれ1個形成されており、基準気筒を判別する箇所には2個の歯が形成されている。NEパルサ72の外周には、単位時間当たりに電磁ピックアップ74が検出する歯数によりクランクシャフトの回転速度、つまりエンジン回転速度を検出するための複数の歯が、1箇所の欠歯部を除いて等角度間隔に形成されている。
図4に、電磁ピックアップ74が検出するGパルサ70およびNEパルサ72の検出信号、各気筒の噴射パルス、各気筒に設置されたインジェクタ20のノズルニードル30のリフト量、エンジン回転速度の変動を示す。図4において、#1、#2、#3、#4は気筒番号を表し、トN1、トN2、トN3、トN4は各気筒のインジェクタ20から燃料が噴射されることにより生じる気筒毎のエンジン回転速度の変動差を表している。
ECU50は、センサからの検出信号によりエンジン運転状態を推定し、推定したエンジン運転状態に基づいて、最適な目標噴射量および目標噴射時期になるように噴射パルスを生成するパルス幅およびパルスの立ち上がり時期とエンジン運転状態との対応を、コモンレール14の圧力に応じてマップとしてフラッシュメモリ56に記憶している。インジェクタ20から噴射される燃料の噴射量および噴射時期は、このマップに基づいて生成される噴射パルスにより制御される。
ところで、経年劣化等により、インジェクタ20のノズルニードル30に荷重を加えるスプリング32の劣化、あるいはノズルニードル30と弁座23との接触箇所の摩耗等が生じると、インジェクタ20の実噴射量と目標噴射量との差、あるいはインジェクタ20の実噴射時期と目標噴射時期との差が大きくなることがある。
図5は、経年劣化により実噴射量が目標噴射量よりも減少する例を示し、図6は、経年劣化により実噴射量が目標噴射量よりも増加する例を示している。図5および図6において、実線は実噴射量および実噴射時期を示し、点線は目標噴射量および目標噴射時期を示している。図5および図6の上段の噴射パルス幅と噴射量との特性は、コモンレール14の内圧に応じた噴射パルス幅と噴射量との特性の変化を示している。
(噴射量補正、噴射時期補正)
次に、インジェクタ20の噴射量補正および噴射時期補正について、図7の出荷時および図8の通常のエンジン運転時の制御ルーチンに基づいて説明する。
(出荷時)
S300において、ECU50は、燃料噴射ポンプ12を制御することによりコモンレール14の内圧をマップに応じて変化させ、各コモンレール圧における燃料噴射量を学習する。この噴射量学習において、ECU50は、微少噴射量学習およびFCCB補正を実施し、気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しくなるように燃料噴射量を補正する。具体的には、図4に示すトN1、トN2、トN3、トN4が等しくなるように各気筒に送出する噴射パルスのパルス幅を補正する。メイン噴射の前後に微少量噴射を実施する多段噴射を行う場合、燃料噴射量の学習および補正は、複数回の燃料噴射の合計噴射量を学習および補正してもよいし、微少量噴射を含む各噴射の噴射量を学習および補正してもよい。
さらに、S300において、ECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射量と目標噴射量との差から、噴射パルスの立ち上がり時期は変えずにパルス幅の補正値を算出し、算出した噴射量補正値をフラッシュメモリ56に記憶しマップに反映させる。これにより、図5および図6に示す減量劣化状態または増量劣化状態から噴射量補正(1)に示す状態になる。
次に、S302において、ECU50は、各コモンレール圧における燃料噴射時期を学習する。ここで、多段噴射を行うインジェクタの場合、燃料噴射時期の学習はメイン噴射について行う。この噴射時期学習において、ECU50は、爆発行程を含む任意の期間で検出したエンジン回転速度の変化率に基づき各気筒の燃料噴射時期を推定する。
図9に基づいて、燃料噴射時期の推定の方法を説明する。図9では、実噴射量および実噴射時期について、2つの例を実線および点線で示している。実線と点線とを比較すると、駆動電流は実線の方が点線よりも立ち上がり時期が早い。そのため、インジェクタ20からの燃料の噴射時期、すなわち噴射率の立ち上がり時期も実線の方が早い。これにより、2つの例の間では燃料の爆発による気筒内の圧力の変化に違いが生じる。その結果、爆発行程を含む期間において、エンジンの回転速度にも違いが生じる。本実施形態では、ECU50は、例えばこの期間、すなわち爆発行程を含む任意の期間においてエンジンの回転速度を検出する。そして、ECU50は、検出したエンジン回転速度の違いに基づいて燃料噴射時期の早遅を判定し、燃料噴射時期を推定する。
エンジン回転速度の変化率は爆発行程において最も大きくなるので、爆発行程を含む任意の期間でエンジン回転速度を検出することにより、燃料噴射時期を高精度に推定できる。燃料噴射時期を推定するために検出するエンジン回転速度の検出期間は、上述のように爆発行程内でもよいし、爆発行程から排気行程までの間でもよい。エンジン回転速度の検出期間を爆発行程内だけ、または爆発行程から排気行程間での間に限定することにより、さらに高精度に燃料噴射時期を推定できる。また、エンジン回転速度の検出期間が短くなるので、ECU50の処理負荷を低減できる。
そして、S302においてECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射時期と目標噴射時期との差から、噴射パルスのパルス幅は変えずに噴射パルスの立ち上がり時期の補正値を算出し、算出した噴射時期補正値をフラッシュメモリ56に記憶しマップに反映させる。これにより、図5および図6に示す噴射量補正(1)から噴射時期補正に示す状態になる。
燃料噴射時期を補正すると、噴射量が変化することがあるので、S304において、ECU50は、再度各コモンレール圧における燃料噴射量を学習する。ECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射量と目標噴射量との差から、噴射パルスの立ち上がり時期は変えずにパルス幅の補正値を算出し、算出した噴射量補正値をフラッシュメモリ56に記憶しマップに反映させる。これにより、図5および図6に示す噴射時期補正から噴射量補正(2)に示す状態になる。
以上の補正処理を実行することにより、出荷時において各気筒に設置されるインジェクの燃料噴射量および燃料噴射時期が補正される。
(エンジン運転時)
図8に示すフローチャートにおいて各コモンレール圧とは、エンジン運転時において変化する実コモンレール圧であり、コモンレール14に設置された圧力センサ16の検出圧力に相当する。
S310において、ECU50は、アイドル運転時において、微少噴射量学習およびFCCB補正を実施し、気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しくなるように燃料噴射量を補正する。前述したように、ECU50は、図4に示すトN1、トN2、トN3、トN4が等しくなるように各気筒に送出する噴射パルスのパルス幅を補正する。さらに、S310において、ECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射量と目標噴射量との差から、噴射パルスのパルス幅の補正値を学習する。学習した噴射量の補正値は、S310ではRAM54等に一時記憶される。
次に、気筒毎のエンジン回転速度の変動がS310において等しくなったと判定されると、S312において、ECU50は、爆発行程を含む任意の期間でエンジン回転速度に基づき各気筒の燃料噴射時期を推定する。ECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射時期と目標噴射時期との差から、噴射パルスのパルス幅は変えずに噴射パルスの立ち上がり時期の補正値を学習する。学習した噴射時期の補正値は、S312ではRAM54等に一時記憶される。S310において気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しくなっているので、ECU50は、S312において、エンジン回転速度に基づいて高精度に燃料噴射時期を推定し補正値を学習できる。
S314において、ECU50は、S310、S312において学習した噴射量補正値または噴射時期補正値が所定の範囲を超えているかを判定する。つまり、経年劣化により、実噴射量と目標噴射量との差、または実噴射時期と目標噴射時期との差が所定範囲よりも大きくなっているかを判定する。噴射量補正値または噴射時期補正値が所定の範囲を超えていれば、ECU50は、インジェクタ20の経年劣化が激しいと判断し、S316において燃料噴射を所定量以下に制限して内燃機関を制御運転したり、警告灯を点灯して運転者に警告する。
S314において、噴射量補正値または噴射時期補正値が所定の範囲内であると判定すると、ECU50は、S318において、爆発行程を含む任意の期間でエンジン回転速度に基づき各気筒の燃料噴射時期を推定する。ECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射時期と目標噴射時期との差から、噴射パルスのパルス幅は変えずに噴射パルスの立ち上がり時期の補正値を算出し、算出した噴射時期補正値をフラッシュメモリ56に記憶しマップに反映させる。これにより、図5および図6に示す減量劣化状態または増量劣化状態から、噴射量補正(1)を実施せずに噴射時期補正に示す状態になる。
次に、S320において、ECU50は、燃料噴射時期を補正した後のエンジン回転速度から燃料噴射量を推定する。ECU50は、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射量と目標噴射量との差から、噴射パルスの立ち上がり時期は変えずにパルス幅の補正値を学習する。そして、S322において、ECU50は、噴射量補正値が所定範囲を超えているかを判定する。噴射量補正値が所定の範囲を超えていれば、ECU50は、インジェクタ20の経年劣化が激しいと判断し、S324において燃料噴射を所定量以下に制限して内燃機関を制御運転したり、警告灯を点灯して運転者に警告する。
S322において、噴射量補正値が所定の範囲内であると判定すると、ECU50は、S326において、エンジン回転速度から推定した各気筒の実噴射量と目標噴射量との差から噴射パルスの立ち上がり時期は変えずにパルス幅の補正値を算出し、算出した噴射量補正値をフラッシュメモリ56に記憶しマップに反映させる。これにより、図5および図6に示す噴射時期補正から噴射量補正(2)に示す状態になる。
以上説明したように、本実施形態では、従来、燃料噴射量を補正するために検出されていたエンジン回転速度から燃料噴射時期を推定し補正するので、新たにセンサを追加することなく、燃料噴射時期を推定し補正できる。さらに、エンジン回転速度を検出する従来のプログラムを利用できるので、ECU50の処理負荷を極力低減できる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、学習した噴射時期補正値をフラッシュメモリ56に記憶しマップを補正した。これに対し、燃料噴射時期を補正せず、エンジン回転速度の変化率から推定した実噴射時期と目標噴射時期との差を判定し、異常であれば燃料噴射を所定量以下に制限して内燃機関を制御運転したり、警告灯を点灯して運転者に警告するフェイル処理を実施するだけでもよい。
上記実施形態では、出荷時およびエンジン運転時の噴射量補正および噴射時期補正について説明した。これ以外にも、車両の保守診断時において、診断装置にECU50を接続したときに図7および図8とは異なる診断モード用のプログラムが作動しエンジン回転速度から燃料噴射量および燃料噴射時期を推定し補正してもよい。通常のエンジン運転時には多段噴射を行うインジェクタであっても、診断モード時においては、単発噴射を行うことにより、エンジン回転速度の変動および変化率から、より高精度に燃料噴射量および燃料噴射時期を推定できる。
上記実施形態では、通常のエンジン運転時には、噴射量補正(1)を実施せず、減量劣化状態または増量劣化状態から噴射時期補正、噴射量補正(2)を実施する。これに対し、通常のエンジン運転時においても、出荷時と同様に、減量劣化状態または増量劣化状態から噴射量補正(1)、噴射時期補正、噴射量補正(2)を実施してもよい。
このように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、上記実施形態の特徴的構造をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
燃料噴射システムを示す構成図。 インジェクタを示す模式的断面図。 インジェクタの動作を説明するタイムチャート。 各気筒の噴射パルス、ノズルニードルリフト、エンジン回転速度を示すタイムチャート。 燃料噴射量の減量劣化を説明する特性図。 燃料噴射量の増量劣化を説明する特性図。 出荷時の噴射量補正および噴射時期補正の処理ルーチン。 エンジン運転時の噴射量補正および噴射時期補正の処理ルーチン。 燃料噴射量および燃料噴射時期の例を示すタイムチャート。
符号の説明
10:燃料噴射システム、14:コモンレール、20:インジェクタ、50:ECU(燃料噴射制御装置、回転速度検出手段、変動判定手段、噴射時期推定手段、噴射時期補正手段、噴射時期判定手段、噴射量補正手段)

Claims (8)

  1. コモンレールで蓄圧された燃料をインジェクタから内燃機関の各気筒に噴射する燃料噴射システムの燃料噴射制御装置において、
    エンジン回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しいかを判定する変動判定手段と、
    前記変動判定手段が気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しいと判定した後、前記各気筒の爆発行程を含む任意の期間において、エンジン回転速度に基づき各気筒の燃料噴射時期を推定する噴射時期推定手段と、
    を備えることを特徴とする燃料噴射制御装置。
  2. 前記任意の期間は、爆発行程を含み、爆発行程から排気行程までの間であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
  3. 前記任意の期間は、爆発行程内であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
  4. 目標噴射時期と前記噴射時期推定手段で推定された燃料噴射時期との差に基づき燃料噴射時期を補正する噴射時期補正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
  5. 前記噴射時期推定手段で推定された燃料噴射時期が目標噴射時期から所定範囲を超えてずれている場合、異常であると判定する噴射時期判定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
  6. 微少噴射量学習または気筒間噴射量補正が実施され、前記変動判定手段が気筒毎のエンジン回転速度の変動が等しいと判定した後、前記噴射時期推定手段は各気筒の燃料噴射時期を推定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
  7. 前記噴射時期推定手段は、診断モード時に燃料噴射時期を推定することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置。
  8. 前記診断モードは、前記燃料噴射制御装置に診断装置が接続されたときに実行されることを特徴とする請求項7に記載の燃料噴射制御装置。
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