JP3521597B2 - アルカリ乾電池およびアルカリ乾電池用マンガン酸化物の製造法 - Google Patents

アルカリ乾電池およびアルカリ乾電池用マンガン酸化物の製造法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、正極活物質にマン
ガン酸化物を用いる電池において、強負荷放電特性の優
れたマンガン酸化物の製造法及びそれを用いた電池に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ポータブル機器の多機能化などに
より電池の消費電流が増加傾向にある。たとえばノート
型パソコンにアルカリ乾電池を使用することが検討され
ており、この場合単3型電池において1500mAの電
流が必要となる。このような強負荷放電において、従来
の電池では本来電池が持っている放電容量の20%以下
しか使用することができない。低利用率の原因の1つに
二酸化マンガンの電位が低いことがあげられ、このため
に終止電圧を0.9Vとした場合、放電途中でこの電圧
に達してしまい放電容量が十分得られていない。
【0003】二酸化マンガン材料の研究開発も様々な視
点から行われ提案されている。たとえば、二酸化マンガ
ン粉末表面に繊維状の化学合成二酸化マンガンを析出さ
せたもの(USP5277890、USP539136
5)や、アナターゼ型の二酸化チタン粉末を電解二酸化
マンガン粉末に混合添加する(USP5342712)
方法などが提案されている。前者の場合、粒子表面に繊
維状の化学合成二酸化マンガンを析出させ粒子の見かけ
表面積を格段に増加させる事によりこのような二酸化マ
ンガン材料の反応性を向上させるものである。後者のア
ナターゼ型の二酸化チタンを添加するのは強負荷放電に
おける濃度分極を軽減する効果をねらったものである。
【0004】これらの研究開発により改善は得られるも
のの、上記のような強負荷放電において満足されるもの
は得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】単3型電池において1
500mAの電流が必要となるような強負荷放電におい
て、従来の電池では本来電池が持っている放電容量の2
0%以下しか使用することができない。低利用率の原因
の1つに二酸化マンガンの電位が低いことがあげられ、
このために終止電圧を0.9Vとした場合、放電途中で
この電圧に達してしまい放電容量が十分得られていな
い。
【0006】本発明はこのような課題を解決するもの
で、二酸化マンガンの電位を向上させることで強負荷放
電時の電池容量利用率を増加させ高性能電池を提供する
ことを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】硫酸マンガン溶液から電
解合成される二酸化マンガンを電極から剥離し、水洗、
粉砕した後、ニッケルとコバルトを含む溶液中に投入し
撹拌することにより電解二酸化マンガン表面をニッケル
コバルトを含む化合物で被覆する。それによりマンガ
ン酸化物の電位が向上するとともに見かけ密度も増加す
るので、放電特性に優れた高性能な電池が得られるもの
である。前記溶液は硫酸塩水溶液であり、さらに、硫酸
マンガンが混合されていても良い。また、この溶液は空
気、酸素あるいはオゾンをバブリングしているか、Na
ClO3あるいはNa2282H2Oなどの酸化剤を含
み酸化雰囲気におかれていることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は電池と硫化マンガンをニ
ッケルあるいは/およびコバルトを含む溶液中で処理す
ることにより得られる。本発明のマンガン酸化物のアル
カリ電解液中での放電反応は以下の反応式で示される。
【0009】 MnO2+H2O+e-→MnOOH+OH- このような二酸化マンガンの反応において電位はその材
料自身の電位に決められてしまう。本発明のマンガン酸
化物材料はこの電位が向上するが、そのメカニズムにつ
いては明らかではないが以下のように推察される。
【0010】一般にマンガンの電位に比べニッケルある
いはコバルトの電位の方が高い。従って、電解二酸化マ
ンガンをニッケルあるいはコバルトなどの溶液中で処理
することにより表面にニッケルあるいはコバルトといっ
たマンガンより電位の高い化合物が析出することにより
全体として電位の高いマンガン複合酸化物になったもの
と思われる。
【0011】
【実施例】本発明の効果を以下実施例により説明する。
図1に本実施例の製造プロセス概略を示した。電解によ
って電極の陽極板上に電解二酸化マンガン(以後EMD
と略す)を析出させるまでは従来の方法と同じ方法で行
った。すなわち、不純物を除去した硫酸マンガン電解浴
を90℃以上に加熱し1.0A/dm2の電流密度で電
解した。陽極にはチタン板、陰極には黒鉛板を用いた。
陽極上で得られたEMDを剥離・粗砕し水洗した後、ロ
ーラーミルで所定の粒度(平均粒径50μ)まで粉砕す
る。得られたEMDの粉末300gをニッケル、コバル
トを含む溶液3l中に分散させ撹拌しながら処理を施
す。このとき、溶液の組成を種々に調整する。また、処
理溶液を酸化雰囲気にする場合は撹拌処理中に酸化剤を
添加するかあるいは酸化性ガス(空気、酸素あるいはオ
ゾン)を吹き込む。その後、濾過・水洗・中和・濾過・
乾燥の工程を経てEMD表面をニッケル、コバルトを含
む化合物で被覆した材料を得た。処理温度・時間は本実
施例では80℃・24時間としたがこの温度は反応時間
との関係で温度が低い場合は処理時間が長くなり、本質
的に材料が変化するものではなかった。また、中和工程
は通常のEMD製造工程における中和と同様の処理であ
り本発明における処理の前に中和洗浄工程をしても大き
な変化はない。本実施例の場合は中和工程は全て溶液処
理の後に行い、中和剤としてNaOHを用いた。
【0012】このようにして得られたニッケルあるいは
/およびコバルト化合物被覆EMD粉末(以下EMD−
Ni等と略す)を用いて単3型アルカリ乾電池を作成し
た。図2に本実施例で用いた単3型アルカリ乾電池の構
造断面図を示す。図2において1は正極合剤、2はゲル
状亜鉛負極、3はセパレータ、4はゲル状亜鉛負極の集
電子である。5は正極端子キャップ、6は金属ケース、
7は電池の外装缶、8は金属ケース6の開口部を閉塞す
るポリエチレン製樹脂封口体、9は負極端子をなす底板
である。ゲル状亜鉛負極は以下のようにして調整した。
まず、40重量%の水酸化カリウム溶液(ZnOを3重
量%含む)に3重量%のポリアクリル酸ソーダと1重量
%のカルボキシメチルセルロースを加えてゲル化する。
ついで、このゲル状電解液に対して重量比で2倍の亜鉛
合金粉末を加えて混合した。以下種々の液組成あるいは
酸化剤等の検討結果を(表1)(表2)(表3)に示
す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
【表3】
【0016】表1、2、3に処理溶液として硫酸塩の水
溶液を用いた場合の結果を示した。放電容量は処理を施
していない材料を用いた場合の電池番号1の電池を10
0としたときの比率で示した。放電負荷は1500mA
定電流連続放電で、放電容量は電池電圧が0.9Vに低
下するまでの時間とした。正極合剤としては全ての電池
において黒鉛を10%混合したものを用いた。(表1)
にはニッケルの場合、(表2)にはコバルトの場合、
(表3)にはそれらの混合あるいはマンガンの混在の場
合を示した。また、図3には放電カーブの典型例を示し
た。図中の点線は処理を施していないEMDの場合で実
線が(表1)の電池番号2でニッケルの化合物を被覆し
たEMDの場合である。まず図3より、本発明のマンガ
ン酸化物を用いた電池の電圧が向上していることがわか
る。その結果、放電終止電圧以下の急激に電池電圧が低
下する時点はいずれの場合も同じであるが、放電終止電
圧0.9V付近においては電圧が高い分、放電容量が増
加している。(表1)より処理溶液は硫酸酸性にした方
が若干ではあるがより放電容量が増加する傾向がある。
(たとえば電池番号2と電池番号9の比較より)。さら
に、酸化剤あるいは酸化性ガスにより水溶液中を酸化雰
囲気にする方がよりよいこともわかる(たとえば、電池
番号2と電池番号4あるいは電池番号5と電池番号4な
どの比較より)。
【0017】酸化剤及び酸化性ガスの違いによる効果は
本実験においては大差なかった。電池番号2で用いたE
MD−Ni材料と処理を施していない電解二酸化マンガ
ン表面の電子顕微鏡観察から、処理後の表面は凹凸が少
なく何か析出物ができている様子である。これらのこと
から、図4に示すようにEMD表面の一部もしくは全面
をニッケルのオキシ水酸化物などのような化合物が被覆
しているものと考えられ、このことがEMDの電位を向
上させたものと思われる。(表2)のコバルトに関して
もニッケルとほぼ同様な結果が得られ、この場合はEM
Dの表面の一部もしくは全面をコバルトのオキシ水酸化
物などのような化合物が被覆しているものと考えられ
る。(表3)に溶液中にマンガン、ニッケル、コバルト
を2種以上含んだ場合を示した。この結果からマンガン
イオンを混在させたものはいずれの場合も見かけ密度が
増加するという効果が得られることがわかった。このこ
とは、化学合成二酸化マンガンを作成する場合に見られ
る反応、つまり、マンガン2価イオンが酸化され二酸化
マンガンとなる反応がEMD表面で同時に起こり緻密な
析出物として付着したためと考えられる。酸化剤の違い
による効果は認められなかった。
【0018】EMD表面に被覆する化合物の被覆量を検
討するために溶液のイオン濃度・反応時間等を調整し種
々の被覆量の材料を合成した。これらの材料の放電容量
の関係を図5に示した。図の横軸はマンガン酸化物中に
含まれるニッケル及びコバルトの金属として換算した場
合の総重量%である。図より放電容量は被覆していない
もの(240mA/g)に比べ減少はしていないものの
最適値があることがわかる。このことは被覆量が増加し
すぎるとEMD自身の反応性が阻害されることと思われ
る。以上のことより含有量は0.1〜10%がより好ま
しい。なお、本実施例においては硫酸塩系の水溶液を用
いたが他の硝酸塩、塩化物などでもほぼ同じ効果が得ら
れる。
【0019】なお本実施例では電池としてアルカリ乾電
池を作成して特性比較を実施したがマンガン乾電池、有
機電解液電池の一次、二次電池に使用しても同様の効果
が得られた。
【0020】
【発明の効果】以上のように、硫酸マンガン溶液から電
解合成される二酸化マンガンを電極から剥離し、水洗、
粉砕した後、ニッケルとコバルトを含む溶液中に投入し
撹拌し、電解二酸化マンガン表面をニッケルとコバルト
を含む化合物で被覆することにより、放電電位を上昇さ
せた電池用マンガン酸化物を合成することが可能にな
り、このような材料を用いた電池の強負荷放電特性の改
良が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマンガン酸化物の製造プロセスフロー
チャートを示す図
【図2】単3型アルカリ乾電池の側断面図
【図3】本発明のマンガン酸化物を用いたアルカリ電池
の放電特性を示す図
【図4】ニッケル、コバルトのうち少なくとも1種以上
含む化合物被覆電解二酸化マンガン粒子の断面モデル図
【図5】ニッケル、コバルトの総含有量と放電容量の関
係を示す図
【符号の説明】
1 正極合剤 2 ゲル状亜鉛負極 3 セパレータ 10 EMD(電解二酸化マンガン) 11 Ni、Coのうち少なくとも1種以上含む化合物
フロントページの続き (72)発明者 峠 成二 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−320735(JP,A) 特開 平1−264171(JP,A) 特開 昭56−15560(JP,A) 特開 昭57−49168(JP,A) 特開 平7−320737(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/06 H01M 4/08 H01M 4/50

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マンガン酸化物を正極活物質としたアル
    カリ乾電池において、マンガン酸化物が電解二酸化マン
    ガン表面をニッケルコバルトを含む化合物で被覆され
    てなることを特徴としたアルカリ乾電池。
  2. 【請求項2】 マンガン酸化物中のニッケルおよびコバ
    ルトの総含有量が0.1〜10%である請求項1記載の
    アルカリ乾電池。
  3. 【請求項3】 硫酸マンガン溶液から電解合成される二
    酸化マンガンを電極から剥離し、水洗し、粉砕した後、
    ニッケルコバルトを含む溶液中に投入撹拌して電解二
    酸化マンガン表面を、ニッケルコバルトを含む化合物
    で被覆するアルカリ乾電池用マンガン酸化物の製造法。
  4. 【請求項4】 ニッケルコバルトを含む溶液は硫酸
    塩、硝酸塩、塩化物の中から選択された少なくとも1種
    よりなる水溶液である請求項3記載のアルカリ乾電池用
    マンガン酸化物の製造法。
  5. 【請求項5】 ニッケルコバルトを含む溶液中に硫酸
    マンガンが混合されている請求項3記載のアルカリ乾
    池用マンガン酸化物の製造法
  6. 【請求項6】 ニッケルコバルトを含む溶液は酸性水
    溶液である請求項3記載のアルカリ乾電池用マンガン酸
    化物の製造法。
  7. 【請求項7】 酸性水溶液が硫酸、硝酸あるいはこれら
    の混合物してなる請求項6記載のアルカリ乾電池用マン
    ガン酸化物の製造法。
  8. 【請求項8】 ニッケルコバルトを含む溶液は酸化剤
    を含んでなる請求項3記載のアルカリ乾電池用マンガン
    酸化物の製造法。
  9. 【請求項9】 酸化剤がNaClO3あるいは/および
    Na2282H2Oである請求項8記載のアルカリ乾
    池用マンガン酸化物の製造法。
  10. 【請求項10】 ニッケルコバルトを含む溶液中に酸
    化性ガスを吹き込みつつ撹拌する請求項3記載のアルカ
    リ乾電池用マンガン酸化物の製造法。
  11. 【請求項11】 酸化性ガスが空気、酸素、オゾンの中
    から選択された少なくとも1種である請求項10記載の
    アルカリ乾電池用マンガン酸化物の製造法。
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