JP3494115B2 - 導電性ペーストおよびこれを用いた積層セラミック電子部品 - Google Patents

導電性ペーストおよびこれを用いた積層セラミック電子部品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性ペーストお
よびこれを用いた積層セラミック電子部品に関するもの
であり、特に、Pb系ペロブスカイトセラミック組成物
を主成分とする積層セラミックコンデンサの外部電極形
成に好適な導電性ペースト、および積層セラミックコン
デンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より積層セラミック電子部品は、例
えば、セラミック積層体と、内部電極と、外部電極とか
らなる。セラミック積層体は、例えば、誘電体材料から
なる生のセラミック層が複数積層された生の積層体が焼
成されてなる。内部電極は、セラミック積層体内のセラ
ミック層間にあって、複数の生のセラミック層上に導電
性ペーストが印刷され、生のセラミック層とともに同時
焼成されてなり、内部電極のそれぞれの端縁は、上述の
セラミック層の何れかの端面に露出するように形成され
ている。外部電極は、セラミック積層体の端面に露出し
た内部電極の一端に接合されるように、導電性ペースト
がセラミック積層体の端面に塗布され焼付けられてな
る。さらに、積層セラミック電子部品を回路基板等に実
装する際に、はんだに濡れやすくする目的で、外部電極
上にめっきを施す。
【0003】ところで、外部電極形成に用いられる導電
性ペーストの導電成分がAgである場合、外部電極の焼
付け時に外部電極中のAgが、電気的・機械的に接合さ
れた内部電極に拡散し、内部電極の体積が増加するた
め、セラミック積層体の端面近傍に応力が働く。この応
力は、Agの拡散が進むにつれて大きくなるため、焼付
け温度が高くなるとセラミック積層体にクラックが生じ
る恐れがある。また、導電性ペーストを構成するガラス
フリットとして、軟化点が400℃程度の流動温度が低
い低融点ガラスを用いると、ガラスを介してAgの拡散
が助長されるため、上述した焼付け時においてセラミッ
ク積層体にクラックが生じる限界の温度よりさらに低温
でセラミック積層体にクラックが生じる。そのため、例
えば、セラミック積層体がPbTiO3等のPb系ペロ
ブスカイトセラミック組成物からなり、外部電極形成に
用いられる導電性ペーストの導電成分がAgである場
合、外部電極は550〜650℃という比較的低温で焼
付けられる。上述の低融点ガラスとしては、特開平7−
161223号公報に記載があるように、B成分,Si
成分,Pb成分を主成分として、さらにZn成分,Al
成分,Ti成分を含有したものが挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに低温で焼付けられた外部電極は、焼結が不十分であ
る場合があり、このような外部電極の上にめっきを施す
と、外部電極中に浸透するめっき液の成分が外部電極と
セラミック積層体の界面に達し、内部電極とセラミック
層の界面に浸入して、電気化学的な反応により内部電極
が剥離したり、セラミック積層体にクラックを生じる恐
れがあった。このような内部欠陥が生じると、絶縁不良
やショート不良等が発生し易く、積層セラミック電子部
品の信頼性が著しく劣化するという問題があった。
【0005】また、焼結が不十分であることに起因し
て、外部電極と内部電極間の接合が不完全となり、積層
セラミック電子部品として所望する電気的特性が得られ
ないという問題がある。
【0006】本発明の目的は、積層セラミック電子部品
の外部電極と内部電極間の接合を確保しつつ、外部電極
上にめっきを施す場合であってもセラミック積層体にお
ける内部欠陥の発生を抑制し、電子部品としての高い信
頼性を確保する外部電極を形成し得る導電性ペースト、
およびこれを用いて外部電極を形成した積層セラミック
電子部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の導電性ペーストは、Agを主成分とする導
電粉末と、有機ビヒクルと、ガラスフリットとからなる
導電性ペーストであって、ガラスフリットは、B成分
と、Si成分と、Pb成分と、Al成分ととからなる酸
化物であって、各々の成分を酸化物B23,SiO2
PbO,Al23と表したとき、ガラスフリット100
モル%のうち40≦(SiO2+Al23)≦56モル
%の範囲にあることを特徴とする。
【0008】また、本発明の導電性ペーストは、Agを
主成分とする導電粉末と、有機ビヒクルと、ガラスフリ
ットとからなる導電性ペーストであって、ガラスフリッ
トは、B成分と、Si成分と、Pb成分と、Al成分と
からなる酸化物であって、各々の成分を酸化物B23
SiO2,PbO,Al23と表したとき、ガラスフリ
ット100モル%のうち、40≦(SiO2+Al
23)≦56モル%、20≦SiO2≦40モル%、1
2≦Al23≦24モル%の範囲にあることが好まし
い。
【0009】また、本発明の積層セラミック電子部品
は、複数のセラミック層が積層されてなるセラミック積
層体と、それぞれの端縁がセラミック層の何れかの端面
に露出するようにセラミック層間に形成された複数の内
部電極と、露出した内部電極に電気的に接続されるよう
に設けられた外部電極と、外部電極を覆うように形成さ
れためっき膜を備える積層セラミック電子部品であっ
て、外部電極は、本発明の導電性ペーストを用いて形成
されていることを特徴とする。そして、前記セラミック
積層体はPbTiO 3 を主成分とする誘電体材料からな
り、前記積層セラミック電子部品は積層セラミックコン
デンサであることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の導電性ペーストにおける
ガラスフリットは、B成分と、Si成分と、Pb成分
と、Al成分とからなる酸化物であって、各々の成分を
酸化物B23,SiO2,PbO,Al23と表したと
き、ガラスフリット100モル%のうち40≦(SiO
2+Al23)≦56モル%の範囲にあることを要す
る。以下にその理由を述べる。
【0011】一般に、積層セラミック電子部品、特に、
積層セラミックコンデンサの外部電極形成に用いられる
導電性ペーストに含まれるガラスフリットとしては、B
成分と、Si成分と、Pb成分とを主成分として、これ
にZn成分,Al成分,Ti成分等を含ませたものが公
知であるが、本願発明者の鋭意研究により、市販品のS
nめっき液を用いてガラスの溶解性を調査したところ、
B−Si−Pb−Al−O系ガラスフリットの場合に、
各々の成分を酸化物B23,SiO2,PbO,Al2
3と表したとき、Al23の含有量がガラスフリット1
00モル%のうち12モル%未満である場合、ガラスの
溶解性が比較的大きく、めっき時に発生する内部欠陥を
抑制できないこと、また、Al23の含有量がガラスフ
リット100モル%のうち24モル%を超えると、ガラ
ス化が困難となり焼付け時に発泡しやすく、外部電極に
オープンポアなどの欠陥を生じ易いことを見出し、した
がってガラス中のAl23含有量はガラスフリット10
0モル%のうち12〜24モル%の範囲とすることが好
ましいことを見出した。
【0012】さらに、ガラスフリットのめっき液に対す
る溶解性を低減する目的でガラス中のSiO2含有量に
ついても検討したところ、ガラス中のAl23の含有量
がガラスフリット100モル%のうち12〜24モル
%、かつ、SiO2の含有量がガラスフリット100モ
ル%のうち20モル%以上であれば、ガラスの溶解性を
極めて小さくできることを見出した。また、ガラス中の
SiO2の含有量が増加するとガラス転移点やガラス軟
化点が急激に上昇し、ガラスフリット100モル%のう
ち40モル%を超えると650℃以下の低温で焼付けた
ときに焼結不足となる恐れがあることを見出し、したが
ってSiO2の含有量はガラスフリット100モル%の
うち20〜40モル%の範囲とすることが好ましいこと
を見出した。
【0013】そこで、ガラス中のAl23とSiO2
含有量の合計に着目したところ、めっき液に対する溶解
性を低減するためには、SiO2とAl23の合計含有
量はガラスフリット100モル%のうち40モル%以上
であることを要し、他方、外部電極を十分に焼結させて
内部電極との接合性を確保するためには、SiO2とA
23の合計含有量はガラスフリット100モル%のう
ち56モル%以下であることを要することを見出した。
【0014】本発明の積層セラミック電子部品の一つの
実施形態について、図1に基づいて詳細に説明する。す
なわち、積層セラミック電子部品1は、セラミック積層
体2と、内部電極3,3と、外部電極4,4と、めっき
膜5,5とから主になる。
【0015】セラミック積層体2は、例えば、PbTi
3を主成分とする誘電体材料からなるセラミック層2
aが複数積層された生のセラミック積層体が焼成されて
なる。
【0016】内部電極3,3は、セラミック積層体2内
のセラミック層2a間にあって、複数の生のセラミック
層2a上に導電性ペーストが印刷され、生のセラミック
層とともに積層されてなる生のセラミック積層体と同時
焼成されてなり、内部電極3,3のそれぞれの端縁は、
セラミック層2の何れかの端面に露出するように形成さ
れている。
【0017】外部電極4,4は、セラミック積層体2の
端面に露出した内部電極3,3の一端と電気的かつ機械
的に接合されるように、導電性ペーストがセラミック積
層体2の端面に塗布され焼付けられてなる。
【0018】めっき膜5,5は、例えば、SnやNi等
の無電解めっきや、はんだめっき等からなり、外部電極
上4,4上に少なくとも1層形成されてなる。
【0019】なお、本発明の積層セラミック電子部品の
セラミック積層体2の材料は、上述の実施形態に限定さ
れることなく、例えばBaTiO3,PbZrO3等その
他の誘電体材料や、絶縁体、磁性体、半導体材料からな
っても構わない。
【0020】また、本発明の積層セラミック電子部品の
内部電極の枚数は、上述の実施形態に限定されることな
く、単数あるいは3枚以上の複数からなっても構わな
い。
【0021】
【実施例】まず、表1に示す組成割合となるように出発
材料を調合し、溶融させた後に急冷し、その後粉砕し
て、試料1〜8のガラスフリットを得た。
【0022】次いで、粒径が0.1〜20μmであり、
不定形もしくはフレーク形状のAg粉末を70重量%
と、試料1〜8のガラスフリット5重量%とを、有機ビ
ヒクル25重量%中に分散させて、試料1〜8の導電性
ペーストを得た。
【0023】次いで、PbTiO3を主成分とする誘電
体材料からなるセラミック積層体であって、図1に示す
ように、セラミック積層体2内のセラミック層2a間に
あって、複数の生のセラミック層2a上に導電性ペース
トが印刷され、生のセラミック層とともに積層されてな
る生のセラミック積層体と同時焼成されてなり、それぞ
れの端縁がセラミック層2の何れかの端面に露出するよ
うに形成されている内部電極を備えるセラミック積層体
を複数準備した。
【0024】次いで、上述のセラミック積層体の両端面
に、試料1〜8の導電性ペーストをディピングにより塗
布し乾燥させた後、600℃で焼付けて、それぞれ一対
の外部電極を形成して、試料1〜8の容量試験サンプル
を1000個ずつ得た。
【0025】そこで、試料1〜8の容量試験サンプルに
200回の充放電サイクルを行い、充放電前後の静電容
量変化を調べ、容量が10%以上低下したものの個数を
計数した後、1000個中の個数割合を求めてこれを充
放電後の容量低下率として表1にまとめた。
【0026】次いで、試料1〜8の容量試験サンプルの
外部電極上に、市販の中性Snめっき液を用いてSnめ
っき膜を形成し、純水で十分に洗浄し乾燥させて、試料
1〜8の内部欠陥試験サンプルを1000個ずつ得た。
なお、積層セラミック電子部品としては、上述の容量試
験サンプル上の外部電極上にNiめっき膜を形成し、N
iめっき膜上にさらにSnめっき膜を形成することが好
ましいが、後に説明する内部欠陥の発生率を低減させ得
る本発明の効果を際立たせるため、あえてNiめっき膜
を形成することなく、外部電極上に直接Snめっき膜を
形成した。
【0027】そこで、試料1〜8の容量試験サンプルに
ついて、超音波探傷法に基づき内部欠陥が発生したもの
の個数を計数した後、1000個中の個数割合を求めて
これを内部欠陥の発生率として表1にまとめた。
【0028】
【表1】
【0029】表1より明らかであるように、ガラスフリ
ット中に含まれるSi成分とAl成分を酸化物Si
2、Al23と表したときの合計含有量がガラスフリ
ット100モル%のうち40モル%〜56モル%である
試料1〜6は、いずれも内部欠陥が発生せず静電容量の
低下もないことから、本発明の範囲内となった。
【0030】これに対して、ガラスフリット中に含まれ
るSi成分とAl成分を酸化物SiO2、Al23と表
したときの合計含有量がガラスフリット100モル%の
うち37モル%である試料7は、半数の試料に内部欠陥
が発生した。これは、外部電極焼付け時におけるガラス
の流動性が良く、内部電極の体積増加により破壊された
セラミック組織の隙間に外部電極膜中のガラスが浸透
し、その結果、外部電極膜中のガラスが乏しくなり、め
っき液が容易に浸透するため内部欠陥が発生したと考え
られる。
【0031】また、ガラスフリット中に含まれるSi成
分とAl成分を酸化物SiO2、Al23と表したとき
の合計含有量がガラスフリット100モル%のうち60
モル%である試料8は、内部欠陥と静電容量低下の両方
が発生した。これは、外部電極焼付け時におけるガラス
の流動性が乏しくAgの焼結を阻害し、めっき液が浸透
しやすくなることにより内部欠陥が発生し、また、ガラ
スを介したAgの拡散が起こりにくいため外部電極と内
部電極間の接合が不完全になったと考えられる。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明の導電性ペースト
は、Agを主成分とする導電成分と、有機ビヒクルと、
ガラスフリットとからなる導電性ペーストであって、ガ
ラスフリットは、B成分と、Si成分と、Pb成分と、
Al成分とからなる酸化物であって、各々の成分を酸化
物B23,SiO2,PbO,Al23と表したとき、
ガラスフリット100モル%のうち40≦(SiO2
Al23)≦56モル%の範囲にあることを特徴とする
ことで、積層セラミック電子部品の外部電極と内部電極
間の接合を確保しつつ、外部電極上にめっきを施す場合
であってもセラミック積層体における内部欠陥の発生を
抑制し、電子部品としての高い信頼性を確保する外部電
極を形成し得る。
【0033】また、本発明の導電性ペーストは、Agを
主成分とする導電成分と、有機ビヒクルと、ガラスフリ
ットとからなる導電性ペーストであって、ガラスフリッ
トは、B成分と、Si成分と、Pb成分と、Al成分と
からなる酸化物であって、各々の成分を酸化物B23
SiO2,PbO,Al23と表したとき、ガラスフリ
ット100モル%のうち40≦(SiO2+Al23
≦56モル%、20≦SiO2≦40モル%、12≦A
23≦24モル%の範囲にあることを特徴とすること
で、積層セラミック電子部品の外部電極と内部電極間の
接合を確保しつつ、外部電極上にめっきを施す場合であ
ってもセラミック積層体における内部欠陥の発生を抑制
し、電子部品としてのより高い信頼性を確保する外部電
極を形成し得る。
【0034】また、本発明の積層セラミック電子部品
は、複数のセラミック層が積層されてなるセラミック積
層体と、それぞれの端縁がセラミック層の何れかの端面
に露出するようにセラミック層間に形成された複数の内
部電極と、露出した内部電極に電気的に接続されるよう
に設けられた外部電極と、外部電極を覆うように形成さ
れためっき膜を備える積層セラミック電子部品であっ
て、外部電極は、本発明の導電性ペーストを用いて形成
されていることを特徴とすることで、積層セラミック電
子部品の外部電極と内部電極間は接合が確保され、外部
電極上に形成されためっき膜中のめっき成分がセラミッ
ク積層体の内部に浸入することによる内部欠陥の発生が
抑制され、電子部品としての信頼性が確保される効果が
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一つの実施の形態の積層セラミッ
ク電子部品の断面図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ 2 セラミック積層体 3 内部電極 4 外部電極 5 めっき膜

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Agを主成分とする導電成分と、有機ビ
    ヒクルと、ガラスフリットとからなる導電性ペーストで
    あって、 前記ガラスフリットは、B成分と、Si成分と、Pb成
    分と、Al成分とからなる酸化物であって、各々の成分
    を酸化物B23,SiO2,PbO,Al23と表した
    とき、ガラスフリット100モル%のうち40≦(Si
    2+Al23)≦56モル%の範囲にあることを特徴
    とする導電性ペースト。
  2. 【請求項2】 Agを主成分とする導電成分と、有機ビ
    ヒクルと、ガラスフリットとからなる導電性ペーストで
    あって、 前記ガラスフリットは、B成分と、Si成分と、Pb成
    分と、Al成分とからなる酸化物であって、各々の成分
    を酸化物B23,SiO2,PbO,Al23と表した
    とき、ガラスフリット100モル%のうち、 40≦(SiO2+Al23)≦56モル% 20≦SiO2≦40モル% 12≦Al23≦24モル% の範囲にあることを特徴とする導電性ペースト。
  3. 【請求項3】 複数のセラミック層が積層されてなるセ
    ラミック積層体と、それぞれの端縁が前記セラミック層
    の何れかの端面に露出するように前記セラミック層間に
    形成された複数の内部電極と、露出した前記内部電極に
    電気的に接続されるように設けられた外部電極と、前記
    外部電極を覆うように形成されためっき膜を備える積層
    セラミック電子部品であって、 前記外部電極は、請求項1または2に記載の導電性ペー
    ストを用いて形成されていることを特徴とする、積層セ
    ラミック電子部品。
  4. 【請求項4】 前記セラミック積層体はPbTiO 3
    主成分とする誘電体材料からなり、前記積層セラミック
    電子部品は積層セラミックコンデンサであることを特徴
    とする、請求項3に記載の積層セラミック電子部品。
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