JP3492771B2 - 基板への塗布液塗布装置 - Google Patents

基板への塗布液塗布装置

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JP3492771B2
JP3492771B2 JP18625594A JP18625594A JP3492771B2 JP 3492771 B2 JP3492771 B2 JP 3492771B2 JP 18625594 A JP18625594 A JP 18625594A JP 18625594 A JP18625594 A JP 18625594A JP 3492771 B2 JP3492771 B2 JP 3492771B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、液晶表示デバイス
(LCD)、半導体デバイス、各種電子部品等の製造プ
ロセスにおいて、LCD用ガラス基板、半導体基板、プ
リント基板等の基板の表面にフォトレジスト膜、絶縁
膜、導電膜等を形成するために基板表面へ塗布液を塗布
する塗布液塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】基板に塗布液を塗布する方式としては、
回転塗布方式、ブレード塗布方式、スプレイ塗布方式、
ロールコート方式などがある。これらの塗布方式のう
ち、現在、LCDや半導体デバイスの製造プロセスで
は、回転塗布方式が広く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、回転塗
布方式には、被塗布基板の大型化や角型基板の利用増加
などといった近年の傾向とも相俟って、次のような問題
が存在する。すなわち、回転塗布方式は、使用される塗
布液の有効利用という点で本質的に無駄があり、塗布液
の利用効率が悪い(5%程度)。また、例えばLCDで
はガラス基板の大サイズ化が図られているが、回転塗布
方式では、塗布工程において被塗布基板を水平姿勢で回
転させるため、基板の大型化に伴って装置が大型化し設
置スペースが増大せざるを得ない。さらに、被塗布基板
が角型基板である場合は、円型基板に比し、基板の回転
時において基板表面に気流の乱れが発生し易く、しか
も、基板が大型化すると、その回転時における基板の内
・外での線速度差が増大することにより、塗布液の状態
変化が小型基板に比べて顕著になる。このため、塗布膜
の膜厚均一性等の塗布品質を確保することが難しくな
り、塗布品質が低下する、といった問題点がある。
【0004】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、基板、例えばLCD用ガラス基板に
塗布液を塗布する際に、塗布液の有効利用を図って塗布
液使用量を少なくし、また、装置の小型化を図り設置ス
ペースを小さくし、さらに、塗布膜の膜厚均一性等の塗
布品質の低下を来さず塗布品質を向上させることができ
るような基板への塗布液塗布装置を提供することを目的
とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載されてい
る発明では、基板への塗布液塗布装置を、被塗布基板を
鉛直姿勢又は傾斜した姿勢に保持する基板保持手段と、
この基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面に
塗布液を供給する塗布液槽と、この塗布液槽と前記基板
保持手段に保持された被塗布基板とを相対的に直線的に
移動させる直動手段とから構成した。前記塗布液槽は、
両端が閉塞され前記基板保持手段に保持された被塗布基
板の幅方向に延在する筒状をなし、その前面壁部に、そ
れを貫通しかつその前端側へ上向きに傾斜するように、
多数の細管、多数の微小孔又はスリット状細溝ノズルか
らなる塗布液流出路が幅方向にわたって形成されてい
る。前記前面壁部の前端面は、基板保持手段に保持され
た被塗布基板の被塗布面に非接触でかつ近接するように
水平方向に配設され、その下端及び上端がそれぞれ次の
ように形成される。すなわち、前面壁部の前端面の下端
は、前記塗布液流出路の前端面側出口とその反対側の入
口との間の高さに位置するように形成され、前端面の上
端は、基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面
と前面壁部の前端面との間の隙間を上方へ無限に延長さ
せたと仮定した場合に前記塗布液流出路を通って流出し
前記隙間内に流入した塗布液が少なくとも毛細管作用に
よって隙間内を上昇するときの到達高さ位置と塗布液流
出路の前端面側出口との間に位置するように形成され
る。そして、この塗布液槽は、前面壁部の前端面と被塗
布基板の被塗布面との間に隙間を保ったまま被塗布基板
に対しその縦方向に相対的に移動自在に保持される。
【0006】請求項2に記載の発明では、塗布液槽の前
面壁部の前端面の上端が、基板保持手段に保持された被
塗布基板の被塗布面と前面壁部の前端面との間の隙間を
上方へ無限に延長させたと仮定した場合に塗布液流出路
を通って流出し前記隙間内に流入した塗布液が少なくと
も毛細管作用によって隙間内を上昇するときの到達高さ
位置より上方に位置するように形成されている。これ以
外の構成は、請求項1に記載の発明と同じである。
【0007】請求項3に記載の発明では、上記した請求
項2に記載された構成の塗布液塗布装置において、基板
保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽
の前面壁部の前端面との間の隙間が、塗布液流出路の前
端面側出口より上側において少なくとも部分的に相対的
に広く形成されるようにした。
【0008】請求項4に記載の発明では、上記した請求
項3に記載された構成の塗布液塗布装置において、塗布
液槽の前面壁部の前端面を、前端面下部とこの前端面下
部より凹んだ前端面上部とからなる段付き面に形成し、
基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面と前記
前端面上部との間の隙間が、被塗布面と前記前端面下部
との間の隙間より広く形成されるようにした。この構成
の塗布液塗布装置において、請求項5に記載の発明で
は、塗布液槽の前面壁部の前端面下部と前端面上部との
境界部に塗布液流出路の前端面側出口が位置するように
した。
【0009】請求項6に記載の発明では、上記したそれ
ぞれの構成の塗布液塗布装置において、基板保持手段に
保持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面壁部
の前端面との間に形成される隙間へ塗布液流出路を通し
塗布液を流出させて前記隙間に塗布液の液溜りを形成さ
せる際に、塗布液槽内の圧力を上昇させて少なくとも液
溜りの一部を形成させるようにする加圧手段を設けるよ
うにした。
【00010】請求項7に記載の発明では、塗布液槽と
被塗布基板とを相対的に移動させる前に、基板保持手段
に保持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面壁
部の前端面との間に形成される隙間に塗布液の液溜りが
形成されたことを確認するための手段を設けるようにし
た。具体的には、請求項8に記載の発明では、被塗布基
板がLCD用ガラス基板のように透明であるとして、基
板保持手段を、被塗布基板を保持する保持板から構成
し、その保持板の、少なくとも塗布開始位置に対応する
部位に、被塗布基板の被塗布面の反対面側から塗布液槽
の前面壁部の前端面を観察することができるように貫通
穴を形成するようにした。また、請求項9に記載の発明
では、被塗布基板が透明であるとして、基板保持手段
を、被塗布基板を保持する保持板から構成し、被塗布基
板の、少なくとも塗布開始位置である上端部分を、被塗
布基板の被塗布面の反対面側から塗布液槽の前面壁部の
前端面を観察することができるように前記保持板の上端
より突出させた状態で被塗布基板が保持されるようにし
た。また、請求項10に記載の発明では、被塗布基板が
透明であるとして、基板保持手段を、被塗布基板を保持
する保持板から構成し、その保持板の、少なくとも塗布
開始位置に対応する部位を、被塗布基板の被塗布面の反
対面側から塗布液槽の前面壁部の前端面を観察すること
ができるように透明材料で形成するようにした。さら
に、請求項11に記載の発明では、塗布液槽の前面壁部
の前端面側の少なくとも一部を透明部材で形成し、その
透明部材を通して少なくとも液溜りの上端部分が観察さ
れるようにした。
【0011】請求項12に記載の発明では、上記したそ
れぞれの構成の塗布液塗布装置において、基板保持手段
を、被塗布基板を保持する保持板から構成し、被塗布基
板の塗布終了位置側である下端部分を、塗布液の流下に
より前記保持板の表面及び/又は被塗布基板の被塗布面
の反対面側に塗布液が付着するのを防止することができ
るように保持板の下端より突出させた状態で被塗布基板
が保持されるようにした。この構成の塗布液塗布装置に
おいて、請求項13に記載の発明では、被塗布基板の、
保持板の下端より突出した下端部分の被塗布面の反対面
側の少なくとも一部を洗浄するための洗浄手段を設ける
ようにした。
【0012】請求項14に記載の発明では、上記したそ
れぞれの構成の塗布液塗布装置において、被塗布基板の
直下位置に、被塗布基板から流下した塗布液を回収する
ための回収容器を配設するようにした。
【0013】請求項15に記載の発明では、上記したそ
れぞれの構成の塗布液塗布装置において、基板保持手段
に保持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面壁
部の前端面との間に形成される隙間へ塗布液流出路を通
し塗布液を流出させて前記隙間に形成された塗布液の液
溜りを、塗布液槽と被塗布基板とを相対的に移動させて
行なう被塗布基板への塗布液の塗布終了時において、塗
布液槽内を減圧して前記塗布液流出路を通し塗布液槽内
へ回収するようにする減圧手段を設けるようにした。
【0014】請求項16に記載の発明では、上記したそ
れぞれの構成の塗布液塗布装置において、塗布液槽と被
塗布基板とを相対的に移動させて被塗布基板へ塗布液を
塗布している途上又は被塗布基板への塗布液の塗布が終
了した後において、被塗布基板の被塗布面に塗布された
塗布液膜に向けて気体を吹き出す気体吹出し手段を配設
するようにした。具体的には、請求項17に記載の発明
では、気体吹出し手段を、塗布液槽の、被塗布基板に対
する相対的移動方向における後方側に塗布液槽と一体的
に移動可能に配設し、被塗布基板の被塗布面に塗布され
た直後の塗布液膜に向けて気体を吹き出すように可動と
した。また、請求項18に記載の発明では、気体吹出し
手段を、被塗布基板の上方側、下方側及び側方側のうち
の少なくともいずれか一方向から、被塗布基板の被塗布
面に塗布された塗布液膜に向けて気体を吹き出すように
固定した。
【0015】
【作用】請求項1に記載された発明に係る基板への塗布
液塗布装置では、塗布液槽内に注入された塗布液が、前
面壁部に形成された塗布液流出路を通って槽外へ流出
し、基板保持手段によって鉛直姿勢又は傾斜した姿勢に
保持された被塗布基板の被塗布面と前面壁部の前端面と
の間の隙間内へ流入する。このとき、塗布液槽内に、塗
布液流出路の入口と前面壁部の前端面の下端との間の高
さに塗布液面が位置するように塗布液を注入しておくよ
うにすると、前記隙間内に流入した塗布液は、少なくと
も毛細管作用によって隙間内を前端面下端まで下降する
が、それより下方位置では毛細管作用等によっては下降
せず、かつ、塗布液槽内の塗布液面は前端面下端より低
くなっているので、隙間内に流入した塗布液の下方への
流動は前端面下端で規制されることとなり、隙間内の塗
布液が前端面下端を越えて下方へ流下することはない。
一方、隙間内に流入した塗布液の上方への流動は、前端
面上端より上方位置では毛細管作用等によっては流動し
ないので、前端面上端で規制されることとなる。従っ
て、被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端
面全体との間の隙間に、基板の幅方向に延びる帯状の塗
布液の液溜りが形成される。この状態において、前面壁
部の前端面と被塗布基板の被塗布面との間の隙間を保っ
たまま、被塗布基板の縦方向、すなわち基板の幅方向と
直交する方向に塗布液槽と被塗布基板とを直動手段によ
って相対的に直線的に移動、例えば被塗布基板を静止さ
せた状態で塗布液槽を下方向へ移動させると、被塗布基
板の塗布液面に塗布液が塗布される。そして、この際、
前記隙間に形成された液溜りの塗布液は、被塗布面に塗
布されていくことにより消費されるが、その消費量に見
合った量の塗布液が、塗布液槽内から塗布液流出路を通
って前記隙間へ供給されるため、被塗布面に塗布液を塗
布している途上において前記隙間の液溜りにおける塗布
液の量は常時一定に保たれる。
【0016】以上のようにして基板への塗布が行なわれ
るが、この塗布装置を使用して被塗布面に塗布された塗
布液膜の膜厚は、被塗布基板の幅方向と直交する方向に
おける塗布液槽と被塗布基板との相対移動速度、前記隙
間の寸法、塗布液の流動特性や物性値、被塗布基板の被
塗布面及び/又は塗布液槽の前面壁部の前端面の濡れ性
などによって決定されることになる。
【0017】請求項2に記載の発明に係る塗布液塗布装
置では、塗布液槽内から塗布液流出路を通って槽外へ流
出し被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端
面との間の隙間内へ流入した塗布液は、その下方への流
動が前端面下端で規制され、一方、前記隙間内を少なく
とも毛細管作用によって上方へ流動するが、前面壁部の
前端面の上端は、その隙間を上方へ無限に延長させたと
仮定した場合に塗布液が少なくとも毛細管作用によって
隙間内を上昇するときの到達高さ位置より上方に位置し
ているので、前記隙間に、被塗布基板の幅方向に延びる
帯状の塗布液の液溜りが形成され、その液溜りの上方に
塗布液が無い空間が形成される。被塗布基板の被塗布面
への塗布液の塗布は、請求項1に記載の発明に係る装置
と同様にして行なわれるが、この塗布装置を使用した場
合には、被塗布面に塗布された塗布液の被膜の膜厚は、
前記隙間に形成されている液溜りの上端と被塗布基板と
の相対移動速度や前記隙間の寸法等によって決定される
ことになる。
【0018】そして、請求項2に記載の発明に係る塗布
装置では、上記した通り、被塗布基板の被塗布面と塗布
液槽の前面壁部の前端面との間の隙間内において液溜り
の上方に塗布液の無い空間が形成される。従って、被塗
布基板の被塗布面に塗布液を塗布している途上におい
て、被塗布面のうねり等によって前記隙間の寸法が変化
し、前面壁部の前端面に対して隙間内の液溜りの上端位
置が相対的に上下に変化することがあっても、その変位
は液溜り上方の前記空間内で収まることになり、このた
め、液溜りの塗布液が前記隙間から前面壁部の前端面上
端を越えてはみ出すことがない。また、被塗布面への塗
布液の塗布を開始する時点においても、前記隙間から前
面壁部の前端面上端を越えて液溜りの塗布液がはみ出す
ことも防止される。
【0019】請求項3に記載の発明では、基板保持手段
に保持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面壁
部の前端面との間の隙間が、塗布液流出路の前端面側出
口より上側において少なくとも部分的に相対的に広く形
成されるようにしたので、塗布液流出路の前端面側出口
より上側を基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗
布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間の隙間を均一
に形成する場合に比べて、塗布液流出路の前端面側出口
から隙間内の液溜りの上端までの距離を小さくすること
ができる。従って、被塗布面への塗布液の塗布終了位置
において、被塗布基板の下端から前記隙間内の液溜りの
上端までの距離を小さくすることができる。従って、塗
布非有効域が小さくなる。
【0020】また、請求項4に記載の発明に係る塗布装
置では、塗布液槽の前面壁部の前端面が、前端面下部と
この前端面下部より凹んだ前端面上部とからなる段付き
面に形成され、被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前面
壁部の前端面の上部との間の隙間が被塗布面と前端面下
部との間の隙間より広く形成されているので、被塗布面
と前端面上部との間の隙間を被塗布面と前端面下部との
間の隙間と同じにした場合(被塗布面と前端面との隙間
を一定にした場合)に比べて、塗布液流出路の前端面側
出口から隙間内の液溜りの上端までの距離を小さくする
ことができる。従って、極めて容易な加工で済む構成に
よって請求項3に記載の発明に係る塗布装置の作用を実
現できる。さらに、請求項5に記載の発明に係る塗布装
置によれば、塗布液流出路の前端面側出口から隙間内の
液溜り上端までの距離を最も小さくすることができ、従
って塗布非有効域が最も小さくなる。
【0021】請求項6に記載の発明に係る塗布装置で
は、被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布を開始する
際に、塗布液槽内から塗布液流出路を通って被塗布面と
前面壁部の前端面との間へ塗布液が確実に供給される。
【0022】請求項7に記載の発明に係る塗布装置で
は、少なくとも被塗布面への塗布液の塗布開始位置にお
いて、被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間の
隙間に、被塗布基板の幅方向にわたって帯状の液溜りが
形成されたことを確認した後に、被塗布基板と塗布液槽
とを相対的に移動させることが可能になる。そして、前
記隙間に帯状の液溜りが形成されたことの確認が、請求
項8に記載の塗布装置では、被塗布基板を保持する保持
板の貫通穴を通し、透明な被塗布基板の被塗布面の反対
面側から、請求項9に記載の塗布装置では、透明な被塗
布基板の、保持板の上端より突出した上端部分の被塗布
面の反対面側から、また、請求項10に記載の塗布装置
では、保持板の透明材料形成部を透過し、透明な被塗布
基板の被塗布面の反対面側から、それぞれ行なわれる。
また、請求項11に記載の塗布装置では、被塗布基板の
被塗布面側から、塗布液槽の前面壁部の前端面側の透明
部材を通して、前記隙間に帯状の液溜りが形成されたこ
とを確認することができ、その後に被塗布基板と塗布液
槽とを相対的に移動させることが可能になる。
【0023】請求項12に記載の発明に係る塗布装置で
は、被塗布基板は、その塗布終了位置側である下端部分
が保持板の下端より突出した状態で保持される。
【0024】ここで、被塗布基板の幅方向と直交する方
向における被塗布基板と塗布液槽との相対的移動は、塗
布液槽の前面壁部の前端面の上端、もしくは前面壁部前
端面と被塗布基板の被塗布面との間の隙間に形成された
液溜りの上端が、少なくとも被塗布面の塗布必要領域か
ら外れるまで行なわれる。これにより、被塗布面の、塗
布が必要な範囲内或いはそれ以上の範囲内に塗布液の塗
布が行なわれる。そして、その後に、被塗布基板の取外
しを容易にするために例えば、前記隙間を広げる方向へ
塗布液槽と被塗布基板とを相対的に移動させてから、被
塗布基板を基板保持手段、例えば吸着保持板から取り外
して1回の塗布操作が終了することになる。この場合、
塗布液槽の前面壁部の前端面上端もしくは前記隙間内の
液溜りの上端が被塗布基板の下端から外れていない状態
において、前記隙間を広げる方向へ塗布液槽と被塗布基
板とを相対的に移動させると、隙間に形成されていた液
溜りの塗布液の少なくとも一部が被塗布面に残り、膜厚
の厚い塗布液膜が被塗布基板の下端部分の塗布不要領域
に形成されることとなる。そして、この塗布不要領域に
形成された塗布液膜が被塗布面上を流下する。また、塗
布液槽の前面壁部の前端面上端もしくは前記隙間内の液
溜りの上端が被塗布基板の下端から外れるまで、被塗布
基板の幅方向と直交する方向へ塗布液槽と被塗布基板と
を相対的に移動させるようにすれば、被塗布基板の下端
部分に膜厚の厚い塗布液膜が形成されるのを防止するこ
とができるが、この場合には、前面壁部の前端面が被塗
布基板の下端から次第に外れていく過程で、前面壁部前
端面と被塗布面との間の隙間が破壊されていくため、前
記隙間に形成されている液溜りの塗布液が、被塗布基板
の下端や前面壁部の前端面下端などから流下することと
なる。さらに、前面壁部の前端面もしくは前記隙間内の
液溜りの上端が被塗布面の塗布必要領域から外れている
かいないかに拘らず、前面壁部の前端面下端が被塗布基
板の下端より外れる際には、前面壁部前端面と被塗布面
との間の隙間が破壊されていくため、上記と同様に液溜
りの塗布液が流下することとなる。
【0025】しかしながら、請求項12に記載されてい
るように被塗布基板の下端部分が保持板の下端より突出
していると、被塗布基板の被塗布面から流下した塗布液
が保持板に付着することはないし、また、被塗布基板の
被塗布面の反対面側などへ塗布液が付着しにくい。ま
た、請求項13に記載の発明に係る塗布装置では、被塗
布基板の被塗布面の反対面側などに塗布液が付着するこ
とがあっても、洗浄手段によってその塗布液を洗浄して
除去することができる。
【0026】請求項14に記載の発明に係る塗布装置で
は、塗布途上において被塗布基板の被塗布面から流下し
た塗布液は回収容器に回収され、塗布液流下による装置
の汚れが防止される。
【0027】請求項15に記載の発明に係る塗布装置で
は、少なくとも、塗布液槽の前面壁部に形成された塗布
液流出路の前端面側出口から前端面の上端までの範囲の
前端面が被塗布基板の下端から外れていなくて、その範
囲で前面壁部前端面と被塗布基板の被塗布面との間に隙
間が形成されている状態において、減圧手段によって塗
布液槽内を減圧することにより、塗布液流出路を通して
隙間内の液溜りの塗布液が塗布液槽内に回収される。
【0028】請求項16に記載の発明に係る塗布装置で
は、塗布途上又は塗布終了後において、気体吹出し手段
から被塗布基板の被塗布面上の塗布液膜に向かって気体
が吹き出されることにより、塗布液膜から溶剤等の蒸発
が促進され、その塗布液膜の塗布液の粘度が上昇するこ
とになる。この結果、塗布液膜からの塗布液の垂れが有
効に抑制されることになり、また、塗布処理工程後の、
例えば乾燥処理工程において、被塗布基板の温度上昇時
等における塗布液膜の塗布液の流動による膜厚むらの発
生などが抑制される。この場合、請求項17に記載され
た塗布装置では、被塗布基板の被塗布面に塗布された直
後の塗布液膜に向かって気体が吹き付けられるので、塗
布液の塗布操作の途中における塗布液膜からの塗布液の
垂れが抑制される。また、請求項18に記載された塗布
装置では、被塗布面に塗布液膜が形成された後におい
て、塗布液膜からの塗布液の垂れが抑制される。
【0029】
【実施例】以下、各請求項に記載された発明の好適な実
施例について図面を参照しながら順次説明する。
【0030】図1ないし図4は、請求項1に記載の発明
の1実施例を示し、図1は、基板への塗布液塗布装置の
要部の構成を示す縦断面図であり、図2は、その正面
図、図3は、その部分の上面図であり、図4は、部分拡
大縦断面図である。
【0031】この塗布装置は、塗布液を塗布しようとす
る基板10を真空吸着等の手段によって固定し、基板10を
鉛直姿勢に保持する基板保持台(ステージ)12、並び
に、両端が閉塞され基板10の幅方向に延在する筒状をな
す塗布液槽14を備えている。塗布液槽14の前面壁部16に
は、それを貫通しかつその前端側へ上向きに傾斜するよ
うに塗布液流出路18が幅方向の略全長にわたって形成さ
れている。もっとも用途に応じて必ずしも全長にわたっ
て形成する必要はない。塗布液流出路18は、多数の直線
状の細管の集合、多数の微小孔(少なくとも入口と出口
とが連通してさえいれば両者の個数は必ずしも一致する
必要はなく、孔の途中形状は直線状に限らない)の集
合、或いは、1本又は複数本のスリット状細溝ノズルか
ら構成される。塗布液槽14は、その前面壁部16の一部が
前方へ突出して幅方向全体にわたって前端面20が形成さ
れ、その前端面20とステージ12に保持された基板10の被
塗布面との間に寸法Gの隙間22が形成されるように、前
端面20が基板10の被塗布面に非接触でかつ近接するよう
に水平方向に配設されている。尚、この塗布液槽14も用
途に応じて必ずしも全長にわたって形成する必要はな
い。また、塗布液槽14は、その前端面20とステージ12に
保持された基板10の被塗布面との間に寸法Gの隙間22を
保ったままで、矢印aに示すように縦方向、すなわち基
板10の幅方向と直交する下方向へ直線的に移動させるこ
とができるように、図示しない直動駆動機構に支持され
ている。また、基板10をステージ12に容易に保持させま
たステージ12から容易に取り外すことができるように、
ステージ12又は塗布液槽14を隙間22が広がる方向へ移動
させる駆動機構を設けるようにしてもよい。また、その
場合には、隙間22の寸法Gを測定するための検出器を付
設しておくとよい。
【0032】塗布液槽14の前面壁部16の前端面20は、そ
の下端が塗布液流出路18の前端面側出口24とその反対側
の入口26との間の高さに位置するように形成される。ま
た、上端は、寸法Gの隙間22を上方へ無限に延長させた
と仮定した場合に塗布液槽14内の塗布液28が塗布液流出
路18を通って隙間22内へ流入し少なくとも毛細管作用、
さらには後述のように、必要に応じて圧力設定系30によ
る圧力作用等によって仮定の隙間内を上昇するときの到
達高さ位置と塗布液流出路18の前端面側出口24との間に
位置するように形成される。
【0033】また、図1、図3及び図4には図示を省略
しているが、塗布液槽14には、図2に示すように、槽内
を加圧し、減圧し、及び、大気圧にし又は大気開放する
圧力設定系30、並びに、槽内へ塗布液を供給する塗布液
供給系32がそれぞれ設けられている。図2中の34、40は
切換えバルブ、36は、図示しない圧力調整部に連通接続
する管路、38は、大気に連通する管路である。また、塗
布液槽14には、槽内に注入された塗布液28の液面を検知
する検出器42が付設されている。
【0034】そして、塗布液槽14内へ塗布液供給系32か
ら塗布液28が供給され、その液面が塗布液流出路18の入
口26と前面壁部16の前端面20の下端との間の高さに位置
するように、すなわち図4中の範囲D内に位置するよう
に、検出器42で塗布液面を検知しながら塗布液槽14内に
塗布液28が注入される。この際、塗布液供給に伴う塗布
液槽14内の圧力上昇により、先に塗布液槽14内に供給さ
れた塗布液が塗布液流出路18を通って槽外へ流出する、
といった不都合を避けるため、圧力設定系30の切換えバ
ルブ34を操作して、例えば塗布液槽14内を大気開放の状
態としておくようにする。塗布液槽14内に所定量の塗布
液28が注入されると、塗布液28は、毛細管作用等により
塗布液流出路18の前端面側出口24の位置まで上昇する。
尚、このとき、塗布液槽14内に所定量の塗布液28が注入
されても、塗布液流出路18を通してその出口24からの塗
布液28の強制的流出が起こらないようにするため、塗布
液槽14内の圧力を、例えば引き続いて大気開放状態とな
るように圧力設定系30により設定しておく。
【0035】塗布液28が塗布液流出路18の前端面側出口
24の位置まで上昇したとき、基板10の被塗布面と塗布液
槽14の前面壁部16の前端面20との間に寸法Gの隙間22が
形成されていると、その隙間22内へ塗布液槽14内から塗
布液流出路18を通って塗布液28が流入し、毛細管作用等
により塗布液が隙間22の全体に行き渡り、前面壁部16の
前端面20の上端及び下端で塗布液の流動がそれぞれ規制
されて、基板10の幅方向の略全長にわたり帯状の液溜り
44が形成される。この液溜り44は、塗布液流出路18を通
して常時塗布液槽14内の塗布液28に連絡している。
【0036】尚、塗布開始位置において最初に寸法Gの
隙間22に帯状の液溜り44を形成する際の方法としては、
圧力設定系30により塗布液槽14内を加圧して、強制的に
液溜り44の一部を形成した後に、塗布液槽14内を、塗布
液が強制的に塗布液流出路18を通って槽外へ流出しない
程度の圧力、例えば大気開放状態にし、その状態で帯状
の液溜り44を形成する方法、最初から帯状の液溜り44が
形成されるまでの間、塗布液槽14内を加圧状態として、
強制的に液溜り44を形成する方法、或いは、最初から帯
状の液溜り44が形成されるまでの間、塗布液槽14内を大
気開放状態として、強制的でなく液溜り44を形成する方
法などがある。これらのうち何れの方法によってもよい
が、何れの方法によった場合にも、遅くとも帯状の液溜
り44が形成された後では、塗布液槽14内を、その前面壁
部16の前端面20の下端等から塗布液が流出しない程度
で、かつ、後述する塗布途上において寸法Gの隙間22に
塗布液槽14から塗布液28が供給される圧力にしておき、
例えば大気開放状態としておく。
【0037】ここで、塗布液槽14の前面壁部16の前端面
20と基板10の被塗布面との間の隙間22の寸法Gは、塗布
品質の如何に関ってくるが、塗布品質に影響する因子、
例えば塗布液槽14の移動速度、塗布液28の流動性や物性
値、基板10の被塗布面及び/又は前面壁部16の前端面20
の濡れ性などを考慮し、また、塗布液の利用効率、隙間
22における液溜り44の保持安定性なども考慮して、毛細
管作用が発現する範囲内において選定される。また、塗
布液流出路18の寸法は、塗布液槽14内の塗布液28を隙間
22へ毛細管作用等で流入させ、隙間22に毛細管作用等に
よって帯状の液溜り44を形成させるのに支障が無い範囲
で、かつ、塗布開始時を含めて良好な塗布液膜を形成さ
せることができる範囲内で設定される。
【0038】一方、塗布液槽14の前面壁部16の前端面20
を除く前壁面46は、それと基板10の被塗布面との間に形
成される隙間へ液溜り44の塗布液が毛細管作用等によっ
て流入しない形状に形成される。従って、隙間22の液溜
り44の下端は、前面壁部16の前端面20の下端で規制され
るとともに、液溜り44の上端は、前端面20の上端で規制
されることとなって、液溜り44は隙間22から流出するこ
とがない。
【0039】尚、図1に示した上記例では、ステージ12
によって基板10を鉛直姿勢に保持しているが、基板を前
方方向(図1上における左方向)又は後方方向(図1上
における右方向)へ適当角度だけ傾斜させた姿勢に保持
するようにしてもよい。また、上記した例では、基板10
を静止させた状態で塗布液槽14を下方向へ移動させるよ
うにしているが、基板と塗布液槽とは基板の縦方向に相
対的に移動させるようにすればよく、塗布液槽を静止さ
せた状態でステージに保持された基板を上方向へ移動さ
せるような構成としてもよい。
【0040】尚、上記した実施例では、被塗布基板10の
被塗布面がうねり等のない均一な平面と仮定し、この面
と塗布液槽14の前面壁部16の前端面20との間の隙間22
が、前端面20の上下方向に関して全体にわたって同一の
広さに形成された場合について記載されているが、これ
に限らず、少なくとも部分的に相対的に異なる広さに形
成してもよい。
【0041】以上のような構成の塗布装置を使用して基
板10の被塗布面に塗布液を塗布するには、まず、ステー
ジ12に真空吸着等によって基板10を固定する。そして、
所定量の塗布液28が注入された塗布液槽14を、基板10の
上端側塗布必要領域において基板10の被塗布面と塗布液
槽14の前面壁部16の前端面20との間に寸法Gの隙間22が
形成されるように、例えば基板10から離間した位置から
基板10に向かって水平方向へ移動させ基板10に接近させ
る。この場合、塗布液槽14内に所定量の塗布液28が前も
って注入されていても、圧力設定系30により塗布液槽14
内の圧力を、塗布液28が槽外へ流出しない圧力に設定、
例えば大気開放状態にしておけば、塗布液槽14内から塗
布液流出路18を通って塗布液28が流出することはない。
勿論、塗布液槽14の前面壁部16の前端面20と基板10の被
塗布面との間に寸法Gの隙間22が形成された後に、塗布
液槽14内へ所定量の塗布液28を注入するようにしてもよ
い。
【0042】次に、圧力設定系30により塗布液槽14内を
加圧し、塗布液槽14内から塗布液流出路18を通って隙間
22へ塗布液を流出させ、隙間22に液溜り44の一部を形成
させた後、強制的に槽外へ塗布液が流出しないように塗
布液槽14内を大気開放状態にし、隙間22に帯状の液溜り
44を形成させる。或いは、隙間22が形成された後、塗布
液槽14内を帯状の液溜り44が形成されるまで加圧しても
よいし、また、隙間22の形成後、塗布液槽14内を大気開
放状態にして帯状の液溜り44を形成するようにしてもよ
いが、何れにしても、隙間22に帯状の液溜り44が形成さ
れた以後は、液溜り44の塗布液が隙間22から流出せず、
かつ、後述する塗布途上において隙間22に塗布液槽14か
ら塗布液28が供給される圧力に塗布液槽14内を調整して
おく必要があり、例えば塗布液槽14内を大気開放状態と
しておく。
【0043】隙間22に帯状の液溜り44が形成されると、
塗布液槽14の前面壁部16の前端面20と基板10の被塗布面
との間に寸法Gの隙間22を保ったまま、基板10の縦方向
(図1の矢印aの方向)へ塗布液槽14を移動させる。そ
して、前面壁部16の前端面20の上端が少なくとも塗布必
要領域から外れる、二点鎖線で示す基板10の下端近くま
で塗布液槽14を移動させた後停止させる。このように塗
布液槽14が基板10の上端近くから下端近くまで移動する
ことにより、基板10の被塗布面の塗布必要領域に液溜り
44の塗布液が接することになり、図4に示すように基板
10の被塗布面に塗布液が塗布されて塗布液膜48が形成さ
れる。尚、塗布途上においては、隙間22の液溜り44の塗
布液が被塗布面に塗布されて消費されるが、その消費量
に見合った量の塗布液が塗布液槽14内から塗布液流出路
18を通して毛細管作用等により隙間22へ供給され、隙間
22の液溜り44の塗布液量は一定に保たれる。
【0044】塗布液槽14が基板10の下端近くの位置で停
止して基板10の被塗布面への塗布液の塗布が終了する
と、ステージ12から基板10を取り外す。この際、塗布液
槽14をステージ12から離間する水平方向へ移動させる
か、ステージ12を塗布液槽14から離間する水平方向へ移
動させるようにすると、基板10の取外しが容易になる。
ステージ12から塗布済みの基板10が取り外されると、次
の基板10への塗布液塗布のために最初の工程へ戻る。
【0045】尚、塗布液槽14をステージ12から離間する
方向へ移動させたとき、隙間22の液溜り44の塗布液は、
隙間22が広がって液溜り44が破壊されることにより、被
塗布面や前面壁部16の前端面20に付着しまた流下して、
以後の塗布に使用することができなくなる。そこで、塗
布液槽14をステージ12から離間させる前に、圧力設定系
30により塗布液槽14内を減圧状態とし、隙間22の液溜り
44の塗布液を塗布液流出路18を通し逆流させて塗布液槽
14内に回収するようにしてもよい。この回収の際には、
塗布液槽14の前面壁部16の前端面20の、少なくとも塗布
液流出路18の前端面側出口24から前端面20の上端までの
範囲が基板10の下端側から外れておらず、前端面20と基
板10の被塗布面との間に隙間22が形成されている状態に
しておく必要がある。
【0046】ところで、以上説明した塗布装置では、隙
間22の液溜り44の上端は、塗布液槽14の前面壁部16の前
端面20の上端によって規制される。このため、以下のよ
うな不都合が生じることが考えられる。
【0047】塗布液槽14を下方向へ移動させて基板10の
被塗布面に塗布液を塗布していく過程で、前面壁部16の
前端面20の下端から上端までの寸法と被塗布面のうねり
の周期との関係、基板10の幅方向における被塗布面のう
ねりの状態、或いは、塗布液槽14を下方向へ移動させる
ときの移動精度などによって隙間22の寸法Gが一定とな
らない場合が想定される。このような場合、図5に示し
たように、隙間22の寸法が大きくなって、塗布液槽14の
前面壁部16の前端面20と被塗布面とで挾まれた空間の容
積が増大するときは、特に問題は無いが、図6に示した
ように、隙間22の寸法が小さくなって、前面壁部16の前
端面20と被塗布面とで挾まれた空間の容積が減少すると
きは、隙間22の液溜り44から塗布液の一部が前端面20の
上端を越えてはみ出すことが起こり、このために塗布膜
厚等の塗布品質に不具合が生じることとなる。
【0048】また、図7に示すように、塗布液槽14の前
面壁部16の前端面20と基板10の被塗布面との間に形成さ
れた隙間22に塗布液の液溜り44を形成させ、塗布液槽14
を下方向へ移動させて塗布を開始しようとする際にも、
液溜り44の塗布液が前端面20の上端からはみ出すことが
あり、このために塗布膜厚等の塗布品質に不具合が発生
する心配がある。
【0049】以上のような不具合を無くす装置の構成に
ついて、図8ないし図11により説明する。図8ないし
図11は、請求項2に記載の発明の1実施例を示し、図
8は、基板への塗布液塗布装置の要部の構成を示す縦断
面図、図9は、その正面図、図10は、その上面図、図
11は、部分拡大縦断面図である。これらの図におい
て、図1ないし図4で使用した符号と同一符号を付した
ものについては、上記した通りであり、その説明を省略
する。
【0050】この塗布装置が図1ないし図4に示した塗
布装置と相違する点は、塗布液槽54の前面壁部56の前端
面60の上端位置である。すなわち、この塗布装置の塗布
液槽54では、前端面60と基板10の被塗布面との間の寸法
Gの隙間62を上方へ無限に延長させたと仮定した場合
に、前面壁部56に形成された塗布液流出路58を通って隙
間62内へ流入した塗布液が毛細管作用等によって隙間62
内を上昇するときの到達高さ位置より上方に前面壁部56
の前端面60の上端が位置するように構成されている。塗
布液槽54の前面壁部56の下端は、図1ないし図4に示し
た装置と同様、塗布液流出路58の前端面側出口64とその
反対側の入口66との間の高さに位置するように形成され
ている。従って、塗布液槽54内に塗布液28を、その液面
が塗布液流出路58の入口66と前端面60の下端との間の高
さになるように注入したとき、塗布液槽54内から塗布液
流出路58を通って隙間62内へ流入した塗布液で隙間62に
形成される液溜り68は、その下端が前端面60の下端に位
置し、その上端が前端面60の上端より下方に位置するこ
とになる。そして、隙間62に、液溜り68の上方の、塗布
液の無い空間70が形成される。
【0051】図8ないし図11に示した塗布装置を使用
して基板10の被塗布面に塗布液を塗布する操作は、図1
ないし図4に示した塗布装置を使用する場合と全く同様
に行なわれるが、図8に二点鎖線で示す基板10の下端近
くの位置において塗布液槽54を停止させる際には、隙間
62の液溜り68の上端が少なくとも塗布必要領域から下方
へ外れているようにする。
【0052】図8ないし図11に示した塗布装置を使用
した場合には、上記したように、塗布液槽54の前面壁部
56の前端面60と基板10の被塗布面との間の隙間62に形成
される液溜り68の上端は、前端面60の上端より下方に位
置し、隙間62の、液溜り68の上方に、塗布液の無い空間
70が形成される。このため、この塗布装置では、図5な
いし図7に関して説明したような不都合な事態が生じな
い。すなわち、塗布液槽54を下方向へ移動させて基板10
の被塗布面に塗布液を塗布していく過程で、被塗布面の
うねりなどに起因して、隙間62の寸法Gが一定となら
ず、前面壁部56の前端面60と被塗布面とで挾まれた空間
の容積が変化するようなことがあっても、前面壁部56の
前端面60の上端に対して液溜り68の上端位置が隙間62内
において相対的に上下に変化するだけであり、隙間62の
液溜り68から塗布液の一部が前端面60の上端を越えては
み出すことはない。また、塗布を開始する際において
も、隙間62の液溜り68からの塗布液のはみ出しも起こら
ない。
【0053】尚、図8ないし図11に示した塗布液槽54
は、前面壁部56の上半部が前方へ突出して前端面60が形
成されているが、図1ないし図4に示した塗布液槽のよ
うに前面壁部の中間部が前方へ突出して前端面が形成さ
れる外形において、前端面の高さ方向の長さを長くして
隙間の高さ方向寸法を大きくし、隙間内の液溜りの上端
が前端面上端より下方に位置するように構成してもよ
い。この場合にも、図8ないし図11に示した塗布装置
と全く同様に機能する。
【0054】尚、図8ないし図11に係る上記実施例で
は、被塗布基板10の被塗布面がうねり等のない均一な平
面と仮定し、この面と塗布液槽54の前面壁部56の前端面
60との間の隙間62が前端面60の上下方向に関して全体に
わたって同一の広さに形成された場合について記載され
ているが、これに限らず、例えば前端面60の下端側から
上端側へ行くに従って隙間62が広くなる構成としてもよ
い。
【0055】また、この塗布装置を使用して基板10の被
塗布面に塗布される塗布液膜の膜厚は、塗布液槽54のの
移動速度、隙間62の寸法G、塗布液28の流動特性や物性
値、基板10の被塗布面及び/又は塗布液槽54の前面壁部
56の前端面60の濡れ性などにより決定され、従って、塗
布液膜の膜厚のばらつきを抑えるためには、塗布液槽54
の移動速度、隙間62の寸法G等を許容範囲内に調整して
塗布操作を行なうことが必要となる。ここで、塗布液膜
の膜厚を決定する要因の1つである塗布液槽54の移動速
度は、図8ないし図11に示した塗布装置では、正確に
は隙間62の液溜り68の上端の移動速度と言うことにな
る。すなわち、塗布途上における隙間62の寸法Gを完全
に一定にして塗布液槽54を移動させるときには、塗布開
始時を除き隙間62の液溜り68の上端の移動速度は塗布液
槽54の移動速度と等しくなるが、実際には、上記したよ
うに液溜り68の上端は隙間62内において上下に変位する
こととなるため、隙間62の液溜り68の上端の移動速度と
塗布液槽54の移動速度とは等しくならない。従って、塗
布液槽54を一定の速度で移動させたとしても、隙間62の
液溜り68の上端の移動速度は一定とならない。しかしな
がら、液溜り68の上端が塗布液槽54に対して相対的に上
下に変位したとしても、その変位は隙間62の範囲内であ
り、塗布液膜の膜厚への影響は少ない。
【0056】ところで、基板10の下端側において、塗布
液槽54の前面壁部56の前端面60と被塗布面との間の隙間
62に形成された液溜り68の上端(図1ないし図4に示し
た塗布装置では塗布液槽14の前面壁部16の前端面20の上
端)が基板10の被塗布面の下端から外れるまで基板10の
被塗布面への塗布液の塗布を行なう場合、塗布液流出路
58の前端面側出口64が基板10の被塗布面の下端より外れ
た時点から隙間62の液溜り68の上端(図1ないし図4に
示した塗布装置では塗布液槽14の前面壁部16の前端面20
の上端)が基板10の被塗布面の下端より外れる時点まで
の期間は、塗布液流出路58から隙間62への毛細管作用等
による塗布液28の流動が行なわれないので、隙間62の液
溜り68の塗布液が消費されるだけで、塗布液槽54内から
隙間62への塗布液28の供給が行なわれない。このため、
上記期間では、隙間62の液溜り68の上端の移動速度が、
塗布液の消費による液溜り68の上端位置の低下速度と塗
布液槽54の移動速度とによって決定されることとなる。
この結果、基板10の被塗布面の下端から、塗布液流出路
58の前端面側出口64から隙間62の液溜り68の上端までの
寸法L2(図11参照)に相当する距離だけ上方側へ上
がった位置までの範囲では、塗布液膜の膜厚が所定の許
容範囲を外れ、基板10の被塗布面の下端側に非有効領域
が形成されることとなる。そして、上記寸法L2は、図
1ないし図4に示した塗布装置における、塗布液槽14の
前面壁部16に形成された塗布液流出路18の前端面側出口
24から隙間22の液溜り44の上端、従って前面壁部16の前
端面20の上端までの寸法L1(図4参照)と比較した場
合、両隙間22、62の寸法Gを同一としたときは、L2
1となる。従って、図8ないし図11に示したような
構成の塗布装置を使用すると、図1ないし図4に示した
塗布装置を使用した場合に比べて、基板10の被塗布面の
下端側に形成される非有効領域が増大することになり、
基板を有効に利用することができる範囲が狭まる、とい
った不具合がある。このような不具合を防止する装置の
構成を図12及び図13により次に説明する。
【0057】図12に部分拡大縦断面図を示した塗布装
置の塗布液槽74は、その前面壁部76の前端面が、前端面
下部80aとこの前端面下部80aより後方側へ凹んだ前端
面上部80bとからなる段付き面に形成されている。前面
壁部76の前端面下部80aとステージ12に保持された基板
10の被塗布面との間に形成される下部隙間82aの寸法G
は、図1ないし図4及び図8ないし図11にそれぞれ示
した各塗布装置における隙間22、62の寸法Gと同一であ
り、前端面上部80bと被塗布面との間に形成される上部
隙間82bの寸法G2は、下部隙間82aの寸法Gより大き
くなる。そして、塗布液流出路78の前端面側出口84が、
前面壁部76の前端面下部80aと前端面上部80bとの境界
部に位置するように形成されている。また、図8ないし
図11に示した装置と同様に、前面壁部76の前端面下部
80aの下端は、塗布液流出路78の前端面側出口84とその
反対側の入口86との間の高さに位置するように形成さ
れ、一方、前面壁部76の前端面上部80bの上端は、前端
面上部80bと基板10の被塗布面との間の寸法G2の上部
隙間82bを上方へ無限に延長させたと仮定した場合に、
前面壁部76に形成された塗布液流出路78を通って上部隙
間82b内へ流入した塗布液が毛細管作用等によって上部
隙間82b内を上昇するときの到達高さ位置より上方に位
置するように形成されている。従って、塗布液槽74内に
塗布液28を、その液面が塗布液流出路78の入口86と前端
面下部80aの下端との間の高さになるように注入する
と、塗布液槽74内から塗布液流出路78を通って隙間82
a、82b内へ流入した塗布液により、下端が前端面下部
80aの下端に位置し上端が前端面上部80bの上端より下
方に位置した液溜り88が形成されることになる。そし
て、上部隙間82bに、液溜り88の上方の、塗布液の無い
空間90が形成される。
【0058】図12に示した塗布液槽74では、上記した
ように、基板10の被塗布面と前面壁部76の前端面上部80
bとの間の上部隙間82bの寸法G2が被塗布面と前端面
下部80aとの間の下部隙間82aの寸法Gより広く形成さ
れているので、図8ないし図11に示した塗布液槽54の
ように基板10の被塗布面と前面壁部56の前端面60との間
の隙間62の寸法Gを一定にした装置と比較した場合、塗
布液流出路78の前端面側出口84から上部隙間82bにおけ
る液溜り88の上端までの寸法L3は、図8ないし図11
に示した塗布液槽54における、塗布液流出路58の前端面
側出口64から隙間62の液溜り68の上端までの寸法L
2(図11参照)より小さくなる。従って、図12に示
した塗布液槽74を有する塗布装置を使用すると、図8な
いし図11に示した塗布液槽54を有する塗布装置を使用
した場合に比べて、基板10の被塗布面の下端側に形成さ
れる非有効領域を小さくすることができ、基板を有効に
利用することができる範囲が広がることになる。一方、
前面壁部76の前端面下部80aと基板10の被塗布面との間
の下部隙間82aの寸法Gは、図1ないし図4及び図8な
いし図11にそれぞれ示した各塗布液槽14、54における
隙間22、62の寸法Gと同一とされているので、基板10の
下端側において、塗布液槽74の前面壁部76の塗布液流出
路78の前端面側出口84が基板10の被塗布面の下端に到達
するまで塗布液の塗布を行なうようにしたときに、塗布
液流出路78の出口84から前端面下部80aの下端までの範
囲の液溜り88の塗布液が流下することによる塗布液の有
効使用率の低下が最小限に抑えられるとともに、隙間82
a、82bにおける液溜り88の塗布液保持能力の安定性が
確保される。
【0059】図13は、図12に示した塗布液槽74と同
様の作用効果を奏する塗布液槽の別の構成例を示す部分
拡大縦断面図である。この塗布液槽94では、その前面壁
部96の前端面が、その下端から塗布液流出路98の前端面
側出口104を僅かに過ぎた位置までの前端面下部100a
と、前端面側出口104を僅かに過ぎた位置から上端まで
の、前端面下部100aより後方側へ凹んだ前端面上部100
bとからなる段付き面に形成されており、塗布液流出路
98の出口104が、前端面下部100aと基板10の被塗布面と
の間の下部隙間102aに開口している。それ以外の構成
は、図12に示した塗布液槽74と同じである。すなわ
ち、前面壁部96の前端面下部100aと基板10の被塗布面
との間の下部隙間102aの寸法Gは、図12に示した塗
布液槽74における下部隙間82aの寸法Gと同一であり、
前端面上部100bと被塗布面との間の上部隙間102bの寸
法G3は、下部隙間102aの寸法Gより大きくされてい
る。また、前面壁部96の前端面下部100aの下端は、塗
布液流出路98の前端面側出口104とその反対側の入口106
との間の高さに位置するように形成され、一方、前面壁
部96の前端面上部100bの上端は、寸法G3の上部隙間10
2bを上方へ無限に延長させたと仮定した場合に塗布液
が毛細管作用等によって上部隙間102b内を上昇すると
きの到達高さ位置より上方に位置するように形成されて
おり、塗布液槽94内に塗布液28を所定量だけ注入したと
きに、塗布液槽94内から塗布液流出路98を通って隙間10
2a、102b内へ流入した塗布液により、下端が前端面下
部100aの下端に位置し上端が前端面上部100bの上端よ
り下方に位置した液溜り108が形成され、また、上部隙
間102bに、液溜り108の上方の、塗布液の無い空間110
が形成されることになる。そして、図13に示した塗布
液槽94における、塗布液流出路98の前端面側出口104か
ら上部隙間102bにおける液溜り108の上端までの寸法L
4は、図8ないし図11に示した塗布液槽54における、
塗布液流出路58の前端面側出口64から隙間62の液溜り68
の上端までの寸法L2(図11参照)より小さくなる。
【0060】尚、図12、図13に係る上記実施例で
は、塗布液槽74、94の前面壁部76、96の前端面が、前端
面下部80a、100aとこの前端面下部80a、100aより凹
んだ前端面上部80b、100bとからなる段付き面に形成
され、基板保持手段12に保持された被塗布基板の被塗布
面と前端面上部80b、100bとの間の隙間82b、102b
が、被塗布面と前端面下部80a、100aとの間の隙間82
a、102aより広く形成されるように構成しているが、
このような構成にのみ限定されるものではない。例え
ば、前端面を前端面上部と前端面下部の2つだけから構
成するのではなく2つ以上で構成しそれぞれ被塗布基板
の被塗布面との幅を異なる広さとする構成としてもよ
く、或いは部分的に前端面上端側へ行くに従って被塗布
面との幅が広くなる形状をさらに加える構成等を採用し
てもよい。いずれの場合も、この幅の広さは液溜りの塗
布液保持能力の安定性が確保できる範囲の寸法に選定さ
れる。つまり、基板保持手段に保持された被塗布基板の
被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間の隙間
が、塗布液流出路の前端面側出口より上側において少な
くとも部分的に相対的に広く形成されるようにさえすれ
ば前端面として種々の構成を採用することができる。
【0061】次に、基板の被塗布面への塗布液の確実な
塗布を可能にするためには、少なくとも塗布開始位置に
おいて、塗布液槽の前面壁部の前端面の幅方向に帯状の
塗布液の液溜りが形成されていることが必要であるが、
塗布液槽を下方向へ移動させる前に、塗布開始位置に帯
状の液溜りが形成されていることを確認することができ
る装置の構成例について、図14ないし図18を参照し
ながら説明する。
【0062】図14に要部縦断面図を、図15にその正
面図をそれぞれ示した塗布液塗布装置は、基板10を保持
するステージ112の、塗布開始位置に対応する部位に貫
通穴114が形成されている。この場合、基板10は、例え
ばLCD用ガラス基板のように透明基板であり、この塗
布装置では、ステージ112の貫通穴114を通し、透明な基
板10の被塗布面の反対面側から、塗布液槽14の前面壁部
16の前端面20を観察することができる。従って、この塗
布装置を使用して基板10の被塗布面への塗布液の塗布を
行なうときは、塗布開始位置において、基板10の被塗布
面と塗布液槽14の前面壁部16の前端面20との間の隙間22
に、基板10の幅方向にわたって帯状の液溜りが形成され
たことを確認した後に、塗布液槽14を下方向へ移動させ
て塗布操作を行なうことが可能になる。
【0063】また、図16に要部側面図を、図17にそ
の正面図をそれぞれ示した塗布液塗布装置は、基板10を
保持するステージ116の縦方向の長さが、基板10の幅方
向と直交する方向すなわち縦方向の長さより短くされて
いる。この場合にも、基板10が透明基板である必要があ
り、その基板10を、塗布開始位置である上端部分がステ
ージ116の上端辺より突出した状態で、ステージ116に保
持させるようにする。従って、この塗布装置では、基板
10の、ステージ116の上端辺より突出した上端部分の被
塗布面側を、その反対面側から観察することができ、塗
布開始位置において、基板10の被塗布面と塗布液槽14の
前面壁部16の前端面20との間の隙間22に帯状の液溜りが
形成されたことを確認した後、塗布液槽14を下方向へ移
動させて塗布操作を行なうことが可能になる。尚、特に
ステージ116の縦方向の長さを基板10の縦方向の長さよ
り短くしなくても、基板をステージに、基板の上端部分
がステージの上端辺より突出した状態で保持させるよう
にしてもよい。
【0064】また、図示していないが、基板が透明基板
である場合において、基板を保持するステージの、塗布
開始位置に対応する部位を透明ガラス等の透明材料で形
成するようにしても、図14及び図15並びに図16及
び図17にそれぞれ示した塗布装置と同様の作用効果が
得られる。尚、塗布開始位置に対応する部位だけでなく
ステージ全体を或いは適当な複数部位を透明材料で形成
するようにし、また、ステージの適当な部位に複数個の
貫通穴を形成するようにし、塗布開始位置に限らずそれ
以外の位置においても、基板10の被塗布面と塗布液槽14
の前面壁部16の前端面20との間の隙間22に形成された液
溜りの状態を観察することができるような構成としても
よい。また、オペレータが肉眼で観察する代わりに、検
出器を設けておいてモニターするようにしてもよい。
【0065】図18は、基板が不透明である場合に、塗
布開始位置に帯状の液溜りが形成されていることを基板
の被塗布面側から確認することができる装置の構成例を
示す部分拡大縦断面図である。この塗布液槽124の基本
構成は、図12に示した塗布液槽74と同様である。すな
わち、塗布液槽124は、その前面壁部126の前端面が前端
面下部130aと前端面上部130bとからなる段付き面に形
成され、前端面上部130bと基板10の被塗布面との間の
上部隙間132bの寸法が、前端面下部130aと被塗布面と
の間の下部隙間132aの寸法より大きくされ、塗布液流
出路128の前端面側出口134が、前端面下部130aと前端
面上部130bとの境界部に位置するように形成されてい
る。また、前面壁部126の前端面下部130aの下端が、塗
布液流出路128の前端面側出口134とその反対側の入口13
6との間の高さに位置するように形成され、一方、前面
壁部126の前端面上部130bの上端が、上部隙間132bを
上方へ無限に延長させたと仮定した場合に塗布液が毛細
管作用等によって上部隙間132b内を上昇するときの到
達高さ位置より上方に位置するように形成されており、
塗布液槽124内に塗布液28を所定量だけ注入したとき
に、塗布液槽124内から塗布液流出路128を通って隙間13
2a、132b内へ流入した塗布液により、下端が前端面下
部130aの下端に位置し上端が前端面上部130bの上端よ
り下方に位置した液溜り138が形成され、上部隙間132b
の、液溜り138の上方に、塗布液の無い空間140が形成さ
れている。勿論、塗布液槽の基本構成は、図12に示し
た塗布液槽74と同様のものでなくてもよい。そして、こ
の塗布液槽124は、その上部に、幅方向の少なくとも一
部において前後方向に貫通した貫通穴142が形成される
とともに、その貫通穴142の前端側に、開口面を閉塞す
るように透明ガラス板144が嵌め込まれ、その透明ガラ
ス板144の前壁面によって前面壁部126の前端面上部130
bが形成されている。
【0066】図18に示した塗布液槽124を有する塗布
装置を使用して基板10の被塗布面への塗布液の塗布を行
なうときは、貫通穴142の後方側から前方を覗き見るこ
とにより、透明ガラス板144を透過して、基板10の被塗
布面と塗布液槽124の前面壁部126の前端面130a、130b
との間の隙間132a、132bに形成された液溜り138の上
端部分を観察することができる。従って、塗布開始位置
において、液溜り138が良好に形成されていることを確
認した後に、塗布液槽124を下方向へ移動させて塗布操
作を行なうことが可能になる。しかも、この塗布装置で
は、塗布開始位置に限らずそれ以外の位置においても、
液溜り138の状態を随時観察することができる。尚、こ
の塗布装置は基板が透明である場合にも有効に使用する
ことが可能である。
【0067】次に、基板の被塗布面への塗布液の塗布工
程において、塗布終了位置で発生する不具合について、
図8ないし図11に示した塗布装置を使用した場合を例
にとり、図19ないし図23を参照しながら説明する。
【0068】図19は、塗布終了状態の1例を示す部分
拡大縦断面図であり、塗布液槽54の前面壁部56の前端面
60と基板10の被塗布面との間の寸法Gの隙間62に形成さ
れた液溜り68の上端が、基板10の被塗布面の塗布必要領
域Sの下端に位置するまで、塗布液槽54を下方向へ移動
させたときの状態を示す。図20は、塗布終了状態の別
の例を示す部分拡大縦断面図であり、塗布液槽54の前面
壁部56に形成された塗布液流出路58の前端面側出口64
が、基板10の被塗布面の下端に位置するまで、塗布液槽
54を下方向へ移動させたときの状態を示す。また、図2
1は、塗布終了状態のさらに別の例を示す部分拡大縦断
面図であり、塗布液槽54の前面壁部56の前端面60と基板
10の被塗布面との間の寸法Gの隙間62に形成された液溜
り68の上端が、基板10の被塗布面の下端に位置するま
で、塗布液槽54を下方向へ移動させたときの状態を示
す。塗布終了の状態は、図19ないし図21に示した何
れかであり、基板10の寸法と塗布必要範囲との関係等に
より、それらのうちの何れかが選定される。そして、図
19及び図20にそれぞれ示した各状態から、塗布液槽
54を、隙間62が増大する方向(矢印cの方向)へ移動さ
せるようにしてもよいし、さらにその後に、矢印bの方
向等へ移動させるようにしてもよい。また、図21に示
した状態から、塗布液槽54を、矢印bの方向及び矢印c
の方向の何れか一方向或いは両方向へ移動させるように
してもよい。
【0069】図22は、図19に示した状態から、隙間
62を増大させる方向(矢印cの方向)へ塗布液槽54を移
動させたときの状態を示している。このときには、寸法
Gの隙間62に形成されていた液溜り68の少なくとも一部
の塗布液150が基板10の被塗布面上に残ることとなる。
また、図23は、図22に示したように基板10の被塗布
面上に残った塗布液150が流下している状態を示してい
る。このように、基板10の下端部から塗布液150が流下
すると、基板10を保持しているステージ12の表面に塗布
液150が付着したり、ステージ12の表面と基板10の被塗
布面の反対面(裏面)との間の隙間に毛細管作用により
塗布液150が浸入して、基板10の裏面に塗布液が付着し
たりすることとなる。
【0070】上記したように、隙間62の液溜り68を形成
していた塗布液が流下して、その塗布液がステージ12の
表面や基板10の裏面に付着する現象は、図19に示した
状態から図22に示したように隙間62を増大させる方向
へ塗布液槽54を移動させた場合に限らず、図20に示し
た状態から隙間62を増大させる方向(矢印cの方向)へ
塗布液槽54を移動させた場合にも起こる。また、図19
及び図20にそれぞれ示した状態から矢印bの方向へ塗
布液槽54を移動させて図21に示した状態にする場合に
も、塗布液槽54の前面壁部56の前端面60が基板10の被塗
布面の下端から順次外れていくことにより寸法Gの隙間
62が破壊されていく際に発生し得る。
【0071】以上のように、塗布終了位置で塗布液が流
下してステージ12の表面や基板10の裏面に付着すると、
ステージ12から基板10を取り外す際に取外しにくくな
り、また、基板10の裏面に塗布液が付着したままである
と、塗布工程の後工程で問題となる。尚、上述したよう
に、塗布終了時に塗布液槽内を減圧して隙間の液溜りの
塗布液を塗布液槽内へ回収することは可能であるが、完
全な回収は困難であり、同様の問題が残る。以上のよう
な問題を解決する装置の構成例について、図24及び図
25を参照しながら次に説明する。
【0072】図24に要部側面図を、図25にその正面
図をそれぞれ示した塗布液塗布装置は、基板10を保持す
るステージ152の縦方向の長さが、基板10の幅方向と直
交する方向すなわち縦方向の長さより短くされている。
尚、これらの図では、塗布液槽54が、その前面壁部56の
前端面60と基板10の被塗布面との間の隙間62に形成され
た液溜り68の上端が基板10の被塗布面の塗布必要領域S
の下端に位置した塗布終了位置にある状態を示してい
る。そして、この塗布装置では、ステージ152に基板10
を、その塗布終了位置側である下端部分がステージ152
の下端より突出した状態で保持するようにしている。こ
のように、基板10の下端部分がステージ152の下端より
突出していると、基板10の被塗布面から流下した塗布液
がステージ152に付着することはないし、また、基板10
の被塗布面の反対面側に塗布液が付着することが起こり
にくくなる。尚、特にステージ152の縦方向の長さを基
板10の縦方向の長さより短くしなくても、基板をステー
ジに、基板の下端部分がステージの下端辺より突出した
状態で保持させるようにしてもよい。
【0073】また、必要に応じ、図24に示すように、
基板10の、ステージ152の下端より突出した下端部分の
被塗布面の反対面側に吹出し口が対向するように洗浄液
供給ノズル154を配設するようにしてもよい。このよう
にすれば、仮に基板10の被塗布面の反対面側などに塗布
液が付着するようなことがあっても、洗浄液供給ノズル
154から基板10の被塗布面の反対面側などへ洗浄液を吹
き付けることにより、塗布液を洗浄して除去することが
できる。尚、洗浄液供給ノズル154は、基板10の幅方向
の略全体にわたって延びる吹出し口を有しているが、局
所的に洗浄液を基板10の被塗布面の反対面側に吹き付け
る洗浄液供給ノズルを基板10の幅方向に移動可能に配設
するようにしてもよい。さらに、図24及び図25に示
すように、ステージ152に保持された基板10の直下位置
に、基板10から流下した塗布液を回収するための回収容
器156を配設するようにしてもよい。このように、基板1
0の直下位置に回収容器156を配設しておけば、基板10か
ら塗布液が流下したとしても、その塗布液で装置のフレ
ーム等が汚れるのを防止することができる。尚、塗布液
槽を固定し基板を移動させて基板への塗布液の塗布を行
なう構成の塗布装置では、洗浄液供給ノズルや回収容器
を基板と一緒に移動させることができるような構成とす
るとよい。
【0074】また、図26に要部縦断面図を、図27に
その正面図をそれぞれ示した塗布液塗布装置は、塗布液
槽の構成は上記した塗布装置、この例では図8ないし図
11に示した塗布装置と同じであるが、塗布液槽54の上
部に一体に気体吹出し槽158を取り付けて構成されてい
る。気体吹出し槽158は、基板10の幅方向全体にわたっ
て延在する筒状をなしており、その前端部に、槽内部に
連通するスリット状ノズル160が全長にわたって形設さ
れている。このスリット状ノズル160は、好ましくは、
斜め上方に向かって気体が吹き出すように、その先端開
口が加工形成されている。また、気体吹出し槽158の背
面壁部には、槽内部へ気体を供給するための気体供給孔
162が形設されている。
【0075】図26及び図27に示したような構成の塗
布装置では、図8ないし図11に示した塗布装置と同様
に、塗布液槽54が基板10の上端近くから下端近くまで移
動することにより、基板10の被塗布面の略全体に塗布液
が塗布されるが、その塗布過程において、気体吹出し槽
158が塗布液槽54と一体に移動してスリット状ノズル160
から斜め上方に向かって気体、例えば窒素ガスが吹き出
されることにより、基板10の被塗布面に塗布された直後
の塗布液膜に向かって気体が吹き付けられることにな
る。これにより、基板10の被塗布面に塗布された直後の
塗布液膜からの溶剤の蒸発が促進され、その塗布液の粘
度が上昇することになるため、塗布液の塗布操作途中に
おいて、塗布液膜から被塗布面を伝って塗布液が垂れる
のが抑制される。気体吹出し槽158のスリット状ノズル1
60からの気体の吹出しは、塗布操作が終了するまで継続
し、塗布液槽54及び気体吹出し槽158が基板10の下端近
くまで移動して停止すると、停止させる。尚、塗布液槽
54の前面壁部56の前端面60と基板10の被塗布面との間の
隙間62に形成された液溜り68の上端と気体吹出し槽158
のスリット状ノズル160とは、構成上から上下に離間し
ているため、塗布終了位置の選定如何によっては、基板
10の被塗布面の塗布有効領域全体に気体が吹き付けられ
ない場合も起こる。また、基板10の被塗布面の非有効領
域の塗布液膜にも気体を吹き付けたい場合もある。この
ような場合には、必要に応じ、塗布操作が終了した後、
塗布液槽54及び気体吹出し槽158をさらに下方へ移動さ
せ、基板10の被塗布面に塗布された塗布液膜の最下部分
にも気体を吹き付けた後、気体吹出し槽158のスリット
状ノズル160からの気体の吹出しを停止するようにして
もよい。そして、この塗布装置を使用したときは、上記
したように塗布液膜からの塗布液の垂れが有効に抑制さ
れる他、塗布処理工程後の、例えば乾燥処理工程におい
て、被塗布基板の温度上昇時等における塗布液膜の塗布
液の流動による膜厚むらの発生などの塗布品質への悪影
響が抑制される。
【0076】図26及び図27に示した塗布装置では、
塗布液槽54に気体吹出し槽158が一体に取り付けられて
いるが、塗布液槽と気体吹出し槽とを分離しそれぞれ別
体として構成してもよく、その場合に、別々の直動駆動
機構により塗布液槽と気体吹出し槽とをそれぞれを駆動
するようにしても差し支えない。また、気体吹出し手段
を固定し、基板10の上方側、下方側及び側方側のうちの
何れか一方向から、或いはそれらのうちの複数方向か
ら、基板10の被塗布面に塗布された塗布液膜に向かって
気体を吹き出させるような構成としてもよい。また、気
体吹出し槽158の前端部にスリット状ノズル160を全長に
わたって形設するようにしているが、1本のスリット状
ノズルに代えて、例えば、気体吹出し部の前端部に多数
の小径孔を全長にわたり並列させて穿設するようにして
もよい。さらに、気体吹出し槽158のスリット状ノズル1
60から気体が基板10の幅方向全体に均一に吹き出すよう
に、気体吹出し槽158の内部に邪魔板等を設けたり、気
体吹出し槽158の背面壁部に複数個の気体供給孔を等分
に配置して穿設したりしてもよい。
【0077】最後に、塗布液の利用効率について説明す
る。図19ないし図21に関する説明他から分かるよう
に、基板1枚当りの塗布液の総使用量は、塗布液槽の前
面壁部の前端面と基板の被塗布面との間の隙間に形成さ
れた液溜りの塗布液量と、基板の被塗布面に塗布された
塗布液量との合計である。そして、前記隙間の液溜りの
塗布液は、最終的には、塗布終了位置において被塗布面
を伝って垂れたり基板の下端から流下したりするなどし
て、塗布液膜の形成には有効に利用されない。従って、
塗布液の利用効率は、基板1枚当りにおいて塗布液の総
使用量から有効に利用されない塗布液量を差し引いた値
と塗布液の総使用量と比率となり、基板の被塗布面の塗
布必要領域のサイズ、塗布液槽の前面壁部の前端面の面
積、前記隙間の寸法、隙間の液溜りの下端と上端間の寸
法などに依存する。この発明に係る塗布液塗布装置で
は、例えば基板の被塗布面のサイズを500mm×600
mmとしたとき、塗布液の利用効率は約75%程度とな
る。勿論、塗布終了位置において塗布液を塗布液槽内へ
回収するようにした場合には、塗布液の利用効率は向上
することとなる。
【0078】
【発明の効果】請求項1に記載の発明に係る塗布液塗布
装置を使用して基板に塗布液を塗布するようにすれば、
塗布液の有効利用が図られて塗布液使用量が少なくな
り、塗布液膜の膜厚均一性等の塗布品質の向上が図られ
る。また、この塗布装置は、小型化されて設置スペース
が少なくて済み、特に、近年において大型化する傾向に
あるLCD用ガラス基板に塗布液を塗布する場合などに
有利となり、また、構成も簡易で、塗布工程も比較的簡
便に行なうことができる。さらに、この塗布装置を使用
したときは、塗布液の汚れが生ぜず、またスピニング装
置におけるような基板表面上の塗布液の飛散もない。ま
た、この塗布装置では、被塗布基板の被塗布面に非接触
で塗布液の塗布が行なわれるため、基板の有効部分、例
えばLCD用ガラス基板では表示領域を形成する部分に
傷が付くことによって品質低下を来すといったような恐
れが無い。さらに、この塗布装置によると、膜厚の薄い
塗布液膜を基板表面に形成したり、膜厚のむらを最小限
に抑えることができる。
【0079】請求項2に記載の発明に係る塗布装置を使
用すれば、上記した効果の他、被塗布基板の被塗布面に
塗布液を塗布している途上において、被塗布面のうねり
等により、塗布液槽の前面壁部の前端面と被塗布面との
間の隙間の寸法が変化することがあっても、前記隙間か
ら液溜りの塗布液が前面壁部の前端面上端を越えてはみ
出すことがなく、また、被塗布面への塗布液の塗布開始
時点において、前記隙間から前面壁部の前端面上端を越
えて液溜りの塗布液がはみ出すことも防止されるため、
塗布液膜の膜厚均一性等の塗布品質の低下を防ぐことが
できる。
【0080】請求項3に記載の発明に係る塗布装置を使
用すれば、被塗布面への塗布液の塗布終了位置におい
て、被塗布基板の下端から前記隙間内の液溜りの上端ま
での距離を小さくすることができるため、基板を有効に
利用することができる範囲を広げることができる。ま
た、請求項4に記載の発明に係る塗布装置を使用すれ
ば、上記効果を、極めて容易な加工で実現できる構成に
よって奏することができる。また、請求項5に記載の発
明に係る塗布装置を使用すれば、被塗布基板の被塗布面
の下端側に形成される塗布非有効域が最も小さくなるた
め、基板を有効に利用することができる範囲をより広げ
ることができる。
【0081】請求項6に記載の発明に係る塗布装置を使
用すれば、被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布開始
時点において、塗布液槽内から被塗布面と前面壁部の前
端面との間の隙間へ塗布液が確実に供給されるため、速
やかに被塗布面への塗布液の塗布を開始することができ
て、作業効率が向上するとともに、前記隙間へ塗布液が
供給されていない状態で塗布を開始するといったことを
無くし、塗布品質の確保を図ることができる。
【0082】請求項7に記載の発明に係る塗布装置を使
用すれば、被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布開始
位置において、被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面
との間の隙間に、基板の幅方向にわたって帯状の液溜り
が形成されたことを確認した後に、基板と塗布液槽とを
相対的に移動させて塗布を開始することが可能になるた
め、全ての被塗布基板について塗布品質の確保を図るこ
とができる。そして、被塗布基板が透明である場合に、
請求項8に記載の塗布装置を使用すれば、被塗布基板を
保持する保持板の貫通穴を通して基板の被塗布面の反対
面側から、請求項9に記載の塗布装置を使用すれば、保
持板の上端より突出した上端部分の被塗布面の反対面側
から、また、請求項10に記載の塗布装置を使用すれ
ば、保持板の透明材料形成部を透過して基板の被塗布面
の反対面側から、前記隙間に帯状の液溜りが形成された
ことの確認をそれぞれ確実に行なうことができ、上記効
果を確実に実現することができる。また、請求項9に記
載の構成では、保持板を特別に加工しなくても、被塗布
基板を保持板に、基板の上端部分が保持板の上端辺より
突出した状態で保持させるようにすればよく、簡単な構
成で上記した確認を行なうことができる。また、請求項
11に記載の塗布装置を使用すれば、前記隙間に帯状の
液溜りが形成されたことを被塗布基板の被塗布面側から
確認することができるため、この塗布装置は、被塗布基
板が透明であるか不透明であるかを問わずに使用するこ
とが可能である。
【0083】請求項12に記載の発明に係る塗布装置を
使用すれば、被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布終
了位置において、基板の被塗布面から流下した塗布液が
保持板に付着することがなく、また、基板の被塗布面の
反対面側に塗布液が付着することが起こりにくくなるた
め、保持板から基板を取り外す際に取外しにくくなった
り、基板の裏面に塗布液が付着したままとなって塗布工
程の後工程で問題となる、といったことを防止すること
ができる。
【0084】請求項13に記載の発明に係る塗布装置を
使用すれば、被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布終
了位置において基板の被塗布面の反対面側などに塗布液
が付着することがあっても、その塗布液を洗浄して除去
することができるため、保持板から基板を取り外す際に
取外しにくくなったり、基板の裏面に塗布液が付着した
ままとなって塗布工程の後工程で問題となる、といった
ことを完全に防止することができる。
【0085】請求項14に記載の発明に係る塗布装置を
使用すれば、被塗布基板の被塗布面から塗布液が流下す
るようなことがあっても、その流下した塗布液は回収容
器内に回収されるため、流下した塗布液で装置のフレー
ム等が汚されるのを防止することができる。
【0086】請求項15に記載の発明に係る塗布装置を
使用すれば、被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布終
了位置において、被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前
面壁部の前端面との間の隙間に形成された液溜りの塗布
液を塗布液槽内へ回収することができるため、塗布液の
利用効率を向上させることができる。
【0087】請求項16に記載の発明に係る塗布装置を
使用すれば、塗布途上又は塗布終了後において被塗布基
板の被塗布面上の塗布液膜からの塗布液の垂れが有効に
抑制されるため、塗布品質の低下を防止することができ
る。また、塗布処理工程後の、例えば乾燥処理工程にお
いて、被塗布基板の温度上昇時等における塗布液膜の塗
布液の流動による膜厚むらの発生などを抑制することが
できる。そして、請求項17に記載された塗布装置を使
用したときは、被塗布基板の被塗布面に塗布された直後
の塗布液膜に向かって気体が吹き付けられるので、塗布
液の塗布操作の途中における塗布液膜からの塗布液の垂
れが抑制され、また、請求項18に記載された塗布装置
を使用したときは、被塗布面に塗布液膜が形成された後
において、塗布液膜からの塗布液の垂れが抑制されて、
上記効果を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に記載の発明の1実施例を示し、基板
への塗布液塗布装置の要部の構成を示す縦断面図であ
る。
【図2】図1に示した装置の正面図である。
【図3】図1に示した装置の上面図である。
【図4】図1に示した装置の部分拡大縦断面図である。
【図5】図1に示した塗布装置における問題点を説明す
るための部分拡大縦断面図である。
【図6】同じく、図1に示した塗布装置における問題点
を説明するための部分拡大縦断面図である。
【図7】同じく、図1に示した塗布装置における問題点
を説明するための部分拡大縦断面図である。
【図8】請求項2に記載の発明の1実施例を示し、基板
への塗布液塗布装置の要部の構成を示す縦断面図であ
る。
【図9】図8に示した装置の正面図である。
【図10】図8に示した装置の上面図である。
【図11】図8に示した装置の部分拡大縦断面図であ
る。
【図12】請求項5に記載の発明の1実施例を示す塗布
液塗布装置の部分拡大縦断面図である。
【図13】請求項4に記載の発明の1実施例を示す塗布
液塗布装置の部分拡大縦断面図である。
【図14】請求項8に記載の発明の1実施例を示す塗布
液塗布装置の要部の構成の縦断面図である。
【図15】図14に示した装置の正面図である。
【図16】請求項9に記載の発明の1実施例を示す塗布
液塗布装置の要部の構成の側面図である。
【図17】図16に示した装置の正面図である。
【図18】請求項11に記載の発明の1実施例を示す塗
布液塗布装置の部分拡大縦断面図である。
【図19】図8ないし図11に示した塗布装置を使用し
て被塗布基板の被塗布面へ塗布液を塗布する場合におけ
る塗布塗布終了状態の1例を示す部分拡大縦断面図であ
る。
【図20】同じく、塗布終了状態の別の例を示す部分拡
大縦断面図である。
【図21】同じく、塗布終了状態のさらに別の例を示す
部分拡大縦断面図である。
【図22】被塗布基板の被塗布面への塗布液の塗布工程
において、塗布終了位置で発生する不具合について説明
するための部分拡大縦断面図である。
【図23】同じく、塗布終了位置で発生する不具合につ
いて説明するための部分拡大縦断面図である。
【図24】請求項12ないし請求項14に記載の各発明
の1実施例を示す塗布液塗布装置の要部の構成の側面図
である。
【図25】図24に示した装置の正面図である。
【図26】請求項17に記載の発明の1実施例を示す塗
布液塗布装置の要部の構成の縦断面図である。
【図27】図26に示した装置の正面図である。
【符号の説明】
10 被塗布基板 12、112、116、152 ステージ(基板保持台) 14、54、74、94、124 塗布液槽 16、56、76、96、126 前面壁部 18、58、78、98、128 塗布液流出路 20、60 前面壁部の前端面 22、62 隙間 24、64、84、104、134 塗布液流出路の前端面側出口 26、66、86、106、136 塗布液流出路の入口 28 塗布液 30 圧力設定系 32 塗布液供給系 42 塗布液の液面検知用の検出器 44、68、88、108、138 塗布液の液溜り 48 塗布液膜 70、90、110、140 液溜り上方の、塗布液の無い空間 80a、100a、130a 前面壁部の前端面下部 80b、100b、130b 前面壁部の前端面上部 82a、102a、132a 下部隙間 82b、102b、132b 状部隙間 114 ステージの貫通穴 142 塗布液槽の貫通穴 144 透明ガラス板 154 洗浄液供給ノズル 156 回収容器 158 気体吹出し槽 160 スリット状ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/13 101 G03F 7/16 501 H01L 21/30 B05C 5/02

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被塗布基板を鉛直姿勢又は傾斜した姿勢
    に保持する基板保持手段と、 両端が閉塞され前記基板保持手段に保持された被塗布基
    板の幅方向に延在する筒状をなし、前面壁部にそれを貫
    通しかつその前端側へ上向きに傾斜するように、多数の
    細管、多数の微小孔又はスリット状細溝ノズルからなる
    塗布液流出路が幅方向にわたって形成され、前記前面壁
    部の前端面が、基板保持手段に保持された被塗布基板の
    被塗布面に非接触でかつ近接するように水平方向に配設
    され、前面壁部の前端面の下端が、前記塗布液流出路の
    前端面側出口とその反対側の入口との間の高さに位置す
    るように形成されるとともに、前面壁部の前端面の上端
    が、基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面と
    前面壁部の前端面との間の隙間を上方へ無限に延長させ
    たと仮定した場合に前記塗布液流出路を通って流出し前
    記隙間内に流入した塗布液が少なくとも毛細管作用によ
    って隙間内を上昇するときの到達高さ位置と塗布液流出
    路の前端面側出口との間に位置するように形成され、前
    面壁部の前端面と被塗布基板の被塗布面との間に隙間を
    保ったまま被塗布基板に対しその縦方向に相対的に移動
    自在に保持された塗布液槽と、 この塗布液槽と前記基板保持手段に保持された被塗布基
    板とを相対的に直線的に移動させる直動手段とからな
    り、 前記塗布液槽内に、前記塗布液流出路の入口と前記前面
    壁部の前端面の下端との間の高さに塗布液面が位置する
    ように塗布液を注入したときに、前記基板保持手段に保
    持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前端面との
    間の隙間に、塗布液流出路を通って流出し前面壁部の前
    端面の下端及び上端で流動がそれぞれ規制された塗布液
    の液溜りが形成される、基板への塗布液塗布装置。
  2. 【請求項2】 被塗布基板を鉛直姿勢又は傾斜した姿勢
    に保持する基板保持手段と、 両端が閉塞され前記基板保持手段に保持された被塗布基
    板の幅方向に延在する筒状をなし、前面壁部にそれを貫
    通しかつその前端側へ上向きに傾斜するように、多数の
    細管、多数の微小孔又はスリット状細溝ノズルからなる
    塗布液流出路が幅方向にわたって形成され、前記前面壁
    部の前端面が、基板保持手段に保持された被塗布基板の
    被塗布面に非接触でかつ近接するように水平方向に配設
    され、前面壁部の前端面の下端が、前記塗布液流出路の
    前端面側出口とその反対側の入口との間の高さに位置す
    るように形成されるとともに、前面壁部の前端面の上端
    が、基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面と
    前面壁部の前端面との間の隙間を上方へ無限に延長させ
    たと仮定した場合に前記塗布液流出路を通って流出し前
    記隙間内に流入した塗布液が少なくとも毛細管作用によ
    って隙間内を上昇するときの到達高さ位置より上方に位
    置するように形成され、前面壁部の前端面と被塗布基板
    の被塗布面との間に隙間を保ったまま被塗布基板に対し
    その縦方向に相対的に移動自在に保持された塗布液槽
    と、 この塗布液槽と前記基板保持手段に保持された被塗布基
    板とを相対的に直線的に移動させる直動手段とからな
    り、 前記塗布液槽内に、前記塗布液流出路の入口と前記前面
    壁部の前端面の下端との間の高さに塗布液面が位置する
    ように塗布液を注入したときに、前記基板保持手段に保
    持された被塗布基板の被塗布面と塗布液槽の前端面との
    間の隙間に、塗布液流出路を通って流出し前面壁部の前
    端面の下端で流動が規制された塗布液の液溜りが形成さ
    れ、かつ、その液溜りの上方に塗布液が無い空間が形成
    される、基板への塗布液塗布装置。
  3. 【請求項3】 基板保持手段に保持された被塗布基板の
    被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間の隙間
    が、塗布液流出路の前端面側出口より上側において少な
    くとも部分的に相対的に広く形成された請求項2記載
    の、基板への塗布液塗布装置。
  4. 【請求項4】 塗布液槽の前面壁部の前端面が、前端面
    下部とこの前端面下部より凹んだ前端面上部とからなる
    段付き面に形成され、 基板保持手段に保持された被塗布基板の被塗布面と前記
    前端面上部との間の隙間が、被塗布面と前記前端面下部
    との間の隙間より広く形成された請求項3記載の、基板
    への塗布液塗布装置。
  5. 【請求項5】 塗布液槽の前面壁部の前端面下部と前端
    面上部との境界部に塗布液流出路の前端面側出口が位置
    するようにされた請求項4記載の、基板への塗布液塗布
    装置。
  6. 【請求項6】 基板保持手段に保持された被塗布基板の
    被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間に形成さ
    れる隙間へ塗布液流出路を通し塗布液を流出させて前記
    隙間に塗布液の液溜りを形成させる際に、塗布液槽内の
    圧力を上昇させて少なくとも液溜りの一部を形成させる
    ようにする加圧手段が設けられた請求項1ないし請求項
    5のいずれかに記載の、基板への塗布液塗布装置。
  7. 【請求項7】 塗布液槽と被塗布基板とを相対的に移動
    させる前に、基板保持手段に保持された被塗布基板の被
    塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間に形成され
    る隙間に塗布液の液溜りが形成されたことを確認するた
    めの手段が設けられた請求項1ないし請求項6のいずれ
    かに記載の、基板への塗布液塗布装置。
  8. 【請求項8】 被塗布基板が透明であり、 基板保持手段が、被塗布基板を保持する保持板からな
    り、その保持板の、少なくとも塗布開始位置に対応する
    部位に、被塗布基板の被塗布面の反対面側から塗布液槽
    の前面壁部の前端面を観察することができるように貫通
    穴が形成された請求項7記載の、基板への塗布液塗布装
    置。
  9. 【請求項9】 被塗布基板が透明であり、 基板保持手段が、被塗布基板を保持する保持板からな
    り、被塗布基板の、少なくとも塗布開始位置である上端
    部分が、被塗布基板の被塗布面の反対面側から塗布液槽
    の前面壁部の前端面を観察することができるように前記
    保持板の上端より突出した状態で被塗布基板が保持され
    た請求項7記載の、基板への塗布液塗布装置。
  10. 【請求項10】 被塗布基板が透明であり、 基板保持手段が、被塗布基板を保持する保持板からな
    り、その保持板の、少なくとも塗布開始位置に対応する
    部位が、被塗布基板の被塗布面の反対面側から塗布液槽
    の前面壁部の前端面を観察することができるように透明
    材料で形成された請求項7記載の、基板への塗布液塗布
    装置。
  11. 【請求項11】 塗布液槽の前面壁部の前端面側の少な
    くとも一部が透明部材で形成され、その透明部材を通し
    て少なくとも液溜りの上端部分が観察されるようにした
    請求項7記載の、基板への塗布液塗布装置。
  12. 【請求項12】 基板保持手段が、被塗布基板を保持す
    る保持板からなり、被塗布基板の塗布終了位置側である
    下端部分が、塗布液の流下により前記保持板の表面及び
    /又は被塗布基板の被塗布面の反対面側に塗布液が付着
    するのを防止することができるように保持板の下端より
    突出した状態で被塗布基板が保持された請求項1ないし
    請求項11記載の、基板への塗布液塗布装置。
  13. 【請求項13】 被塗布基板の、保持板の下端より突出
    した下端部分の被塗布面の反対面側の少なくとも一部を
    洗浄するための洗浄手段が設けられた請求項12記載
    の、基板への塗布液塗布装置。
  14. 【請求項14】 被塗布基板の直下位置に、被塗布基板
    から流下した塗布液を回収するための回収容器が配設さ
    れた請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の、基
    板への塗布液塗布装置。
  15. 【請求項15】 基板保持手段に保持された被塗布基板
    の被塗布面と塗布液槽の前面壁部の前端面との間に形成
    される隙間へ塗布液流出路を通し塗布液を流出させて前
    記隙間に形成された塗布液の液溜りを、塗布液槽と被塗
    布基板とを相対的に移動させて行なう被塗布基板への塗
    布液の塗布終了時において、塗布液槽内を減圧して前記
    塗布液流出路を通し塗布液槽内へ回収するようにする減
    圧手段が設けられた請求項1ないし請求項14のいずれ
    かに記載の、基板への塗布液塗布装置。
  16. 【請求項16】 塗布液槽と被塗布基板とを相対的に移
    動させて被塗布基板へ塗布液を塗布している途上又は被
    塗布基板への塗布液の塗布が終了した後において、被塗
    布基板の被塗布面に塗布された塗布液膜に向けて気体を
    吹き出す気体吹出し手段が配設された請求項1ないし請
    求項15のいずれかに記載の、基板への塗布液塗布装
    置。
  17. 【請求項17】 気体吹出し手段が、塗布液槽の、被塗
    布基板に対する相対的移動方向における後方側に塗布液
    槽と一体的に移動可能に配設され、被塗布基板の被塗布
    面に塗布された直後の塗布液膜に向けて気体を吹き出す
    ように可動とされた請求項16記載の、基板への塗布液
    塗布装置。
  18. 【請求項18】 気体吹出し手段が、被塗布基板の上方
    側、下方側及び側方側のうちの少なくともいずれか一方
    向から、被塗布基板の被塗布面に塗布された塗布液膜に
    向けて気体を吹き出すように固定された請求項16記載
    の、基板への塗布液塗布装置。
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