JP3720906B2 - 基板保持部材および塗布装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は基板保持部材、特に大型ガラス基板等の枚葉タイプの基板をその面積に応じて確実に保持するための基板保持部材と、このような基板保持部材を備え基板に塗布液を均一、かつ、効率良く塗布するための塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、LCD用カラーフィルタ等の大型ガラス基板に塗布液を塗布する方式としては、スピン塗布方式が多く用いられている。
【0003】
このスピン塗布方式には大気開放型および密閉カップ型があるが、何れの方式も、その塗布効率が10パーセント程度と低く、しかも基板のコーナ部分の塗布膜厚が厚くなりすぎるという欠点があり、今後見込まれる基板サイズの大型化に伴って、塗布液の使用量、膜厚分布およびスループット等の点において問題が指摘されている。
【0004】
上述のようなスピン塗布方式の欠点を解決するための方式としては、ナイフ塗布方式、ロール塗布方式またはダイ塗布方式がある。
【0005】
これらの方式は、何れも、基板上に塗布用クリアランスを設け、その設定値によって塗布膜厚を決定して塗布面の平滑性を得る方式であるが、この方式では、基板表面の平滑度(凹凸度)が塗布精度以上に低い(凹凸度が大きい)ものに対しては、均一な膜厚を得ることが困難である。
【0006】
また、基板表面の凹凸に影響され難い塗布液の塗布方法としては、一般にディップ塗布方式が知られているが、この方式では、非塗布部を被覆することが不可欠であり、作業が煩雑なものとなる。
【0007】
そこで、上記のような各塗布方式における欠点を解消して、枚葉基板に塗布液の物性に影響を受けることなく安定した状態で均一な塗布膜を形成することのできるビード塗布方式の塗布装置が提案されている(特願平5−146757号)。
【0008】
この塗布装置では、上向きに開口する直線状のスリットを有する塗布ヘッドを備え、基板保持部材に保持された基板が、その先端部が塗布ヘッドのスリットの直上に所定のクリアランスを介して対向するように位置される。そして、塗布ヘッドに塗布液が供給されると、塗布液がスリットから吐出されてビードを形成し、被塗布基板の先端部下面に付着する。この状態から基板保持部材が一定速度で斜め上方にスライドされ、ビードから塗布液が基板の下面に順次付着され、塗布液の層が形成される。このとき、塗布ヘッドには連続して塗布液の供給が行われ、ビードにおける塗布液の量が一定に保たれている。そして、基板が斜め上方に上昇してその後端部が塗布ヘッドのスリット上に到達すると、基板保持部材のスライドが停止され、ビードを形成する塗布液が塗布ヘッド内に吸引されてビードが消滅される。これによって、塗布ヘッドと基板上の塗布液の層が分離される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図18は、このようなビード塗布方式における塗布ヘッドと基板との位置関係を説明するための図である。図18において、塗布ヘッド101は、図示されていないスリットから塗布液を吐出して厚み800〜900μm程度のビードBを形成し、基板保持部材102に保持された基板Sは、塗布ヘッド101と所定のクリアランスC(例えば、500μm程度)を保つように一定速度で斜め上方(図面にほぼ垂直方向)にスライドされて塗布が行われる。
【0010】
通常、種々の基板サイズに対応するために、塗布ヘッド101の幅は基板Sよりも大きく設定されている。したがって、基板Sを保持している基板保持部材102の周辺部はビードBと対向した状態にあり、この状態での基板保持部材102とビードB表面との距離は300〜400μm程度となる。しかし、ビードBの基板Sとの接触面にはメニスカスが形成されており、例えば、供給ポンプにおける電圧変化等により、塗布ヘッドに供給される塗布液量が増大すると、塗布液が基板保持部材102に接触することがある。この現象が一時的であっても、付着した塗布液が基板保持部材102の基板保持面を汚染したり、基板保持部材102と基板Sとの間にしみ込んで基板Sを汚染するという問題が生じる。
【0011】
これを解消するために、図19に示されるように基板保持部材102を基板Sのサイズよりも小さくして、基板保持部材102がビードBと対向しないようにすることができる。しかしながら、サイズの大きな基板Sが保持される場合、基板Sのうち基板保持部材102によって保持されていない領域が大きくなると、この領域の基板Sが塗布ヘッド101方向に垂れ下がることになる。このような基板の垂れ下がり現象が生じると、上記の基板Sと塗布ヘッド101とのクリアランスCを一定に維持することが困難となり、塗布膜の膜厚の均一化に支障を来すことになる。一方、基板Sのサイズに応じて基板保持部材を適切な大きさのものに交換して、上記のような基板Sの垂れ下がり現象を防止することも可能である。しかし、剛性の高い基板保持部材は重量が大きく交換作業が煩雑であるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大型ガラス基板等の枚葉タイプの基板を、そのサイズに対応して確実に保持することができる基板保持部材と、このような基板保持部材を備え、均一な塗布膜の形成が可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の基板保持部材は、基部上に吸引によって基板を保持するビード塗布装置用の基板保持部材であって、前記基部は、平坦な保持平面を有するとともに、保持対象となる基板の周縁形状に対応した所定パターンの溝部を前記保持平面に備え、かつ、前記保持平面の前記溝部で囲まれた領域の所定箇所に基板を吸引保持するための複数の吸引孔を有し、前記溝部の開口幅は2〜10mmの範囲、深さは0.5〜3mmの範囲であるような構成とした。
【0014】
このような本発明の基板保持部材では、基部の吸引孔を介して吸引することにより、基部の保持平面に吸引孔を介した吸着保持作用が生じ、これにより基板の保持が可能となり、このとき、基板の周縁部は、保持平面に設けられた溝部に位置し、基板保持部材に接触することなく保持された状態となり、基板よりもサイズの小さい基板保持部材によって保持したのと実質的に同じとなる。
【0015】
本発明の塗布装置は、上方に向って開口するとともに水平方向に延びる帯状のスリットを有する塗布ヘッドと、被塗布基板を前記塗布ヘッドの上方を通って斜め上方向に移動させるための基板保持部材とを備え、前記塗布ヘッドに塗布液を供給し、前記基板保持部材に保持された前記被塗布基板と前記塗布ヘッドとの間に前記スリットから吐出される塗布液によってビードを形成し、前記塗布ヘッドと被塗布基板との相対移動にともなってビードから被塗布基板の塗布面に塗布液を付着させることによって前記被塗布基板への塗布液の塗布を行うビード塗布装置において、前記基板保持部材は上述のような基板保持部材とするような構成とした。
【0016】
このような本発明の塗布装置では、基板への塗布効率の高い塗布が行われ、この際に、基板の周縁部は基部の溝部に位置して基板保持部材と接触しておらず、基板保持部材の溝部におけるビードとの距離が充分に大きいものとなり、ビード表面の変動が生じても基板保持部材に塗布液が接触することが防止される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の最も好ましいと思われる実施の形態について説明する。
【0018】
図1は本発明の基板保持部材が基板を保持した状態を示す正面図である。図1において、本発明の基板保持部材1は、基部2の保持平面3上に基板Sを吸引保持するものである。
【0019】
図2は本発明の基板保持部材の一実施形態を示す平面図である。図2において、基板保持部材1は、基部2と、この基部2の平坦な保持平面3と、保持平面3に形成された溝部4と、保持平面3の溝部4で囲まれた領域に形成された複数の吸引孔5とを備えている。
【0020】
基部2は、アルミニウム、ステンレス鋼、樹脂、セラミックス等を用いて作製することができ、厚みは10〜30mm程度とすることができる。
【0021】
基部2に形成された溝部4は、基板保持部材1が保持対象とする基板の周縁形状に対応したパターン4a,4b,4cで形成されている。そして、溝部4のパターン4aで囲まれた領域Aに複数の吸引孔5が形成され、また、溝部4のパターン4bの外側でパターン4cに囲まれた領域Bに複数の吸引孔5が形成されている。
【0022】
上記の溝部4の形成パターンを、図3乃至図5を参照して説明する。図3において、溝部4のパターン4aは基板Saの周縁形状(図示例では2点鎖線で示される)に対応した矩形のパターンであり、溝部4のほぼ中央に基板Saの周縁端部が位置するものである。このパターン4aを用いた基板Saの吸引保持は、図2における領域Aの吸引孔5の吸引作用により行われる。また、図4において、溝部4のパターン4bは基板Sbの周縁形状(図示例では2点鎖線で示される)に対応した矩形のパターンであり、溝部4のほぼ中央に基板Sbの周縁端部が位置するものである。このパターン4bを用いた基板Sbの吸引保持は、図2における領域Aの吸引孔5の吸引作用により行われる。さらに、図5において、溝部4のパターン4cは基板Scの周縁形状(図示例では2点鎖線で示される)に対応した矩形のパターンであり、溝部4のほぼ中央に基板Scの周縁端部が位置するものである。このパターン4cを用いた基板Scの吸引保持は、図2における領域Aおよび領域Bの吸引孔5の吸引作用により行われる。尚、図3乃至図5においては、説明対象のパターンを除く他のパターンを便宜上鎖線で示してある。
【0023】
図6は図2に示される基板保持部材1のVI−VI線における部分縦断面図である。図6に示されるように、基部2の保持平面3には溝部4が形成され、また、保持平面3に吸引孔5が複数形成されている。図示例では、溝部4のパターン4bを用いて基板Sbが吸引孔5により吸引保持された状態が示されている。そして、基板Sbの周縁端部S´は、溝部4のほぼ中央に位置し、基部2と非接触の状態にある。
【0024】
溝部4の開口幅W1 は2〜10mm、好ましくは3〜6mm程度、また、溝部4の深さDは0.5〜3mm程度が好ましい。溝部4の開口幅W1 が2mm未満あるいは溝部4の深さDが0.5mm未満であると、図18に示されるような基板が塗布液のビードBに接触した状態で接触面に生じるメニスカスによって、基板Sbと基板保持部材1との間に塗布液がしみ込む現象が発生し易くなり好ましくない。また、溝部4の開口幅W1 が10mmを超えると、基板Sbの溝部上に位置する領域(図6において溝部4のパターン4a上に位置する領域)の温度が、基板Sbの他の領域の温度と異なり、基板温度の均一性が低下するとともに、この溝部4のパターン4a上に位置する領域において基板が溝部内に吸引されて変形が生じるおそれがあり好ましくない。
【0025】
また、溝部4のパターンの形成間隔(図6では、パターン4aとパターン4bとの形成間隔)W2 は、基板Sbのうちパターン4aとパターン4bとの間に位置する部分(非保持領域)に垂れ下がり現象が生じない範囲で、基板の材質、厚み等を考慮して設定することができる。すなわち、基板Sbのうちパターン4aで囲まれた領域Aの吸引孔5により保持されている部分は問題ないが、パターン4aとパターン4bとの間に位置する部分(非保持領域)が大きいと、基板の自重により垂れ下がり現象が生じてしまう。例えば、カラーフィルタ用のガラス基板Sでは、溝部4のパターン形成間隔W2 を最大50mmの範囲で設定することが好ましい。
【0026】
尚、図示例では、溝部4の断面形状が半円であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、開口幅W1 と深さDが上記の範囲にあれば、断面形状が方形、台形、三角形等いずれの形状であってもよい。
【0027】
また、図示例では、溝部4の各パターン4a,4b,4cの角部分が基板のコーナーカットに合わせて内側にくい込んだ形状となっており、この場合、くい込み量は3〜7mm程度で設定することができる。
【0028】
吸引孔5は、図示例では基部2の保持平面3にほぼ垂直に穿設され、基部2内部に保持平面3とほぼ平行に形成された吸引路6に接続されている。吸引路6は図示されていない吸引装置に接続されており、この吸引装置を駆動させることにより吸引孔5に吸引作用を生じさせることができる。このような吸引孔5は、例えば、内径0.5〜3mm程度のものとすることができ、形成間隔は3〜50mm程度とすることができる。
【0029】
本実施形態では、図1の領域Aに形成された吸引孔5と、領域Bに形成された吸引孔5の2つの吸引系統を設けることができる。これにより、図3乃至図5に示されるように、保持対象の基板に応じて領域Aの吸引孔5のみに吸引作用をもたせたり、領域A、Bの全吸引孔5に吸引作用をもたせることができる。
【0030】
上述のような本発明の基板保持部材は、予め形成した溝部に対応する種々の大きさ、形状の基板を保持することができ、いずれの場合も、基板の周縁部は基部の溝部に位置して基板保持部材と接触しておらず、基板保持部材の溝部におけるビードとの距離が充分に大きいものとなり、ビード表面の変動が生じても基板保持部材に塗布液が接触することが防止される。
【0031】
尚、上述のような基部2上への基板の吸引保持の際の位置合わせは、例えば、基部2の所定箇所に位置決め用のピンを設けておき、このピンに基板を当接させることにより行うことができる。
【0032】
また、上述の実施形態では、吸引孔5は所定の形成間隔で図2に示される領域A、領域Bの全域に形成されているが、これに限定されるものではなく、基板の吸引保持が安定して行える任意のパターンに形成することができる。さらに、吸引孔5の形成箇所は、図2に示される領域A、領域Bに限定されるものではなく、基板の吸引保持が確実に行われるように基板の材質、重量等を考慮して設定することができ、例えば、溝部4に囲まれるすべての領域に形成してもよい。
【0033】
また、上述の実施形態では、吸引孔5における吸引は領域Aと領域Bの2つの吸引系統が可能であるが、これに限定されるものではない。すなわち、1つの吸引系統のみとし、領域Aのみで基板を吸引保持する場合、領域Bに樹脂シート等を吸着保持させてもよい。また、吸引系統を3つ以上としてもよい。
【0034】
上述の実施形態では、図3乃至図5に示された3種の基板Sa,Sb,Scに対応可能なものであるが、本発明の基板保持部材はこれに限定されるものではなく、4種以上のサイズに対応可能なものとすることができることは勿論である。
さらに、本発明では、基板を基部から取りはずす際に使用するリフトピン用の穴部を基部に設けてもよい。
【0035】
次に、本発明の塗布装置について説明する。
【0036】
図7は本発明の塗布装置の実施形態の一例を示す構成図である。図7において、本発明の塗布装置30は、装置本体31の一対の支持フレーム31A間に基板Sのスライド方向において下流側の端部が高くなるように傾斜した状態で取り付けられた直線状のガイドフレーム32と、このガイドフレーム32にスライド自在に取り付けられた基板保持部材33と、上向きに開口する直線状のスリット34aを有しこのスリット34aがガイドフレーム32の軸方向と直交する方向に延びるようにガイドフレーム32の下方に配置された塗布ヘッド34とを備えている。
【0037】
そして、基板保持部材33は、図1乃至図6に示されるような本発明の基板保持部材であり、ガイドフレーム32に沿って設置されたボールねじ35に螺合されていてこのボールねじ35がモータMによって回転されることによりガイドフレーム32に沿ってスライドされるようになっている。そして、基板保持部材33の基部の吸引路は吸引管接続部33Aに接続され、図示しない吸引機構の作動により、下向きの保持平面に基板Sを吸着して保持するようになっている。また塗布ヘッド34は、図示しない塗布液供給機構から供給される塗布液をスリット34aから上方に吐出するようになっている。
【0038】
ここで、塗布ヘッド34を一例を図8乃至図11を参照して説明する。
【0039】
図8乃至図11において、塗布ヘッド34の本体34Aは塗布液の塗布を行う基板Sの幅以上の長さaを有し、その上面の中央部に、軸方向に沿って延びるとともに上方に向って開口するスリット34aが形成されている。そして、このスリット34aを挟むようにその両側に一対の斜面34Bおよび34Cが形成されている。
【0040】
本体34Aの内部には、スリット34aと平行に延びるとともにスリット34aにその軸方向の全域に亘って連通される中空状の液溜り34Dが形成されている。この液溜り34Dにはスリット34aの下部に取り付けられた塗布液供給管34Eが接続されており、この塗布液供給管34Eから導入される塗布液が液溜り34Dを介してスリット34aから吐出されるようになっている。
【0041】
図中、34Fは、スリット34aの両端部にそれぞれ脱着可能に嵌合された一対のスリット長さ調節用パッキンであり、このスリット長さ調節用パッキン34Fを異なる長さを有する他のスリット長さ調節用パッキンに交換することにより、スリット34aから吐出される塗布液の幅を調節することができる。
【0042】
図中に示された塗布ヘッド34の各部の寸法の一例としては、以下の寸法が可能である。
【0043】
本体34Aの長さa =400mm
本体34Aの幅b = 50mm
本体34Aの高さc = 80mm
スリット34aの長さd(スリット長さ調節用パッキン34Fによる調整後の幅) =350mm
スリット34aの幅e = 2mm
スリット34aの深さf= 27mm
液溜り34Dの深さg = 40mm
塗布ヘッド34に塗布液を供給する塗布液供給機構としては、図12に示すような機構が挙げられる。
【0044】
この塗布液供給機構は、加圧タンク樽40内に収容されている塗布液を手動バルブ41を介して供給される空気圧によって押し出し、粗調節用ニードルバルブ42、フィルタ43、流量計44、微調節用ニードルバルブ45、空気作動弁46およびサックバックバルブ47を介して塗布ヘッド44に供給する。
【0045】
空気作動弁46は、基板Sへの塗布液の塗布終了時に空気圧によって自動的に作動して、塗布ヘッド44への塗布液の供給を停止させる。また、サックバックバルブ47は、空気作動弁46の閉鎖と同時にピストン47aが図12に示す矢印の方向にスライドされてシリンダ47b内に負圧を生じさせ、これによって塗布ヘッド44に供給されている塗布液を吸引して回収する。
【0046】
図13は、ビード塗布装置30の塗布開始時の状態を示しており、基板保持部材33の樹脂平板に吸着された基板Sが、その先端部S1が塗布ヘッド34のスリット34aの直上に所定のクリアランスを介して対向するように位置されている。この際、基板保持部材33は、上述の本発明の基板保持部材であるため、基板Sの周辺部の非保持領域には、垂れ下がり現象が発生せず、したがって、スリット34aに対する所定のクリアランスの維持が可能となる。
【0047】
そして、塗布ヘッド34に塗布液供給機構から塗布液Rが供給されると、図14に拡大して示されるように、供給された塗布液Rがスリット34aから吐出してビードBを形成し、基板Sの先端部下面に付着する。このとき、スリット34aの開口部と基板保持部材33に保持された基板Sの下面との間の最小クリアランスC1は、ビードBから塗布液Rが零れ出さないように、塗布液Rの粘度や表面張力等の物性を考慮して設定する。
【0048】
図14において、ビードBの基板Sの後端側(図において左側)にメニスカスL1が形成され先端側(図において右側)にメニスカスL2が形成されていて、このメニスカスL1の高さ寸法h1とメニスカスL2の高さ寸法h2は、ガイドフレーム22が角度θで傾斜していることによって、h1<h2の関係になっている。
【0049】
図13の状態からモータMが駆動され、ボールねじ35が回転されることによって、基板保持部材33がガイドフレーム32に沿って一定速度で斜め上方にスライドされる。
【0050】
これによって、図15および図16に示されるように、ビードBから塗布液Rが基板Sの下面に順次付着されて、塗布液Rの層Raが形成される。このとき、塗布ヘッド34には連続して塗布液Rの供給が行われ、ビードBにおける塗布液Rの量が一定に保たれている。この塗布時において、塗布液の供給量に変動が生じてビードBの表面が上昇しても、基板Sの周縁部において、ビードBの表面と基板保持部材33との間には充分な距離があり、塗布液が基板保持部材33に接触することはない。
【0051】
そして、図17に示されるように、基板Sがガイドフレーム32に沿って上昇してその後端部S2が塗布ヘッド34のスリット34a上に到達すると、基板保持部材33のスライドが停止され、さらに塗布ヘッド34に接続されたサックバックバルブ37の作動によってビードBを形成する塗布液Rが塗布ヘッド34内に吸引されてビードBが消滅される。これによって、塗布ヘッド34と基板S上の塗布液Rの層Raが分離される。このような塗布液Rの層Raは、図示例では示されていないが、基板Sの先端部S1から20〜30mmの領域で薄く、基板Sの後端部S2から20〜30mmの領域で厚いものとなり、塗布膜厚の均一性は不十分な状態にある。
【0052】
本発明の塗布装置において使用する塗布液は、特に制限はなく、例えば、粘度が1〜100cps程度の溶剤系感光性樹脂、水系感光性樹脂、または、これらの感光性樹脂に顔料等の着色材を分散させた感光性樹脂等の感光性樹脂、各種接着剤、保護膜等を形成するための樹脂、各種インキ等を対象とすることができる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の基板保持部材は、平坦な保持平面を備える基部の上記保持平面に、保持対象となる基板の周縁形状に対応した所定のパターンの溝部を有するとともに、上記保持平面の溝部で囲まれた領域の所定箇所に基板を吸引保持するための複数の吸引孔を有するものであり、基部の吸引孔を介して吸引することにより、基部の保持平面に吸引孔を介した吸着保持作用が生じて基板の保持が可能となり、これにより、1つの基板保持部材によって溝部のパターンに対応した種々の基板を保持することができ、基板のサイズ変更における基板保持部材の交換が不要となり、作業性が大幅に向上する。また、本発明の基板保持部材に保持された基板の周縁部は、保持平面に設けられた溝部に位置し、基板保持部材に接触することなく保持された状態となるが、溝部で囲まれた領域の複数の吸引孔により基板を保持するので、基板の垂れ下がりを生じることなく確実に基板を保持することができる。
【0054】
また、本発明の塗布装置は、上方に向って開口するとともに水平方向に延びる帯状のスリットを有する塗布ヘッドと被塗布基板との間に塗布液をスリットから吐出させてビードを形成し、塗布液を供給しながら上記のような基板保持部材に保持した基板を塗布ヘッドの上方を通って斜め上方向に移動させ、ビードから基板の塗布面に塗布液を付着させて基板への塗布液の塗布を行うものであり、基板保持部材に保持された基板の周縁部は、保持平面に設けられた溝部に位置し、基板保持部材に接触することなく保持されるので、基板との接触面にメニスカスが形成されている状態でビード表面の変動が生じても、基板保持部材に塗布液が接触することが防止され、塗布液による基板保持部材および基板裏面の汚染を生じることのない均一な塗布が可能であるとともに、基板サイズの変化に対して容易に対応できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基板保持部材が基板を保持した状態を示す正面図である。
【図2】本発明の基板保持部材の一実施形態を示す平面図である。
【図3】図2に示される基板保持部材の基部の溝部パターンを説明するための面である。
【図4】図2に示される基板保持部材の基部の溝部パターンを説明するための面である。
【図5】図2に示される基板保持部材の基部の溝部パターンを説明するための面である。
【図6】図2に示される基板保持部材のVI−VI線における部分縦断面である。
【図7】本発明の塗布装置の構成を示す側面図である。
【図8】図7に示される塗布装置において使用される塗布ヘッドの一例を示す斜視図である。
【図9】同塗布ヘッドの正面図である。
【図10】同塗布ヘッドの平面図である。
【図11】同塗布ヘッドの側面図である。
【図12】図7に示される塗布装置において使用される塗布液供給機構を示す図である。
【図13】図7に示される塗布装置における塗布開始時の基板とビードとの関係を示す概略側面図である。
【図14】図7に示される塗布装置における塗布開始時のビードの状態を拡大して示す説明図である。
【図15】図7に示される塗布装置における塗布途中の基板とビードとの関係を示す概略側面図である。
【図16】図7に示される塗布装置における塗布途中のビードの状態を拡大して示す説明図である。
【図17】図7に示される塗布装置における塗布終了時の基板とビードとの関係を示す概略側面図である。
【図18】ビード塗布方式における塗布ヘッドと従来の基板保持部材に保持された基板との位置関係を説明するための図である。
【図19】ビード塗布方式における塗布ヘッドと従来の基板保持部材に保持された基板との位置関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1…基板保持部材
2…基部
3…保持平面
4…溝部
5…吸引孔
6…吸引路
30…塗布装置
32…ガイドフレーム
34…塗布ヘッド
34a…スリット
B…ビード
S,Sa,Sb,Sc…基板
Claims (2)
- 基部上に吸引によって基板を保持するビード塗布装置用の基板保持部材であって、
前記基部は、平坦な保持平面を有するとともに、保持対象となる基板の周縁形状に対応した所定のパターンの溝部を前記保持平面に備え、かつ、前記保持平面の前記溝部で囲まれた領域の所定箇所に基板を吸引保持するための複数の吸引孔を有し、前記溝部の開口幅は2〜10mmの範囲、深さは0.5〜3mmの範囲である、ことを特徴とする基板保持部材。 - 上方に向かって開口するとともに水平方向に延びる帯状のスリットを有する塗布ヘッドと、被塗布基板を前記塗布ヘッドの上方を通って斜め上方向に移動させるための基板保持部材とを備え、前記塗布ヘッドに塗布液を供給し、前記基板保持部材に保持された前記被塗布基板と前記塗布ヘッドとの間に前記スリットから吐出される塗布液によってビードを形成し、前記塗布ヘッドと被塗布基板との相対移動にともなってビードから被塗布基板の塗布面に塗布液を付着させることによって前記被塗布基板への塗布液の塗布を行うビード塗布装置において、
前記基板保持部材は、請求項1に記載された基板保持部材であることを特徴とする塗布装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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