JP3482729B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

有機電界発光素子

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JP3482729B2 JP07905595A JP7905595A JP3482729B2 JP 3482729 B2 JP3482729 B2 JP 3482729B2 JP 07905595 A JP07905595 A JP 07905595A JP 7905595 A JP7905595 A JP 7905595A JP 3482729 B2 JP3482729 B2 JP 3482729B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は有機電界発光素子に関す
るものであり、詳しくは、有機化合物から成る薄膜に電
界をかけて光を放出する薄膜型デバイスに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、薄膜型の電界発光(EL)素子と
しては、無機材料のII−VI族化合物半導体であるZ
nS、CaS、SrS等に、発光中心であるMnや希土
類元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドープしたもの
が一般的であるが、上記の無機材料から作製したEL素
子は、 1)交流駆動が必要(50〜1000Hz)、 2)駆動電圧が高い(〜200V)、 3)フルカラー化が困難(特に青色が問題)、 4)周辺駆動回路のコストが高い、 という問題点を有している。
【0003】しかし、近年、上記問題点の改良のため、
有機薄膜を用いたEL素子の開発が行われるようになっ
た。特に、発光効率を高めるために電極からのキャリア
ー注入の効率向上を目的とした電極種類の最適化を行
い、芳香族ジアミン化合物から成る有機正孔輸送層と8
−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る有機
発光層を設けた有機電界発光素子の開発(Appl.P
hys.Lett.,51巻,913頁,1987年参
照)により、従来のアントラセン等の単結晶を用いた電
界発光素子と比較して発光効率の大幅な改善がなされ、
実用特性に近づいている。
【0004】上記の材料の他にも、有機発光層の材料と
して、ポリ(p−フェニレンビニレン)(Natur
e,347巻,539頁,1990年等参照)、ポリ
[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−
1,4−フェニレンビニレン](Appl.Phys.
Lett.,58巻,1982頁,1991年等参
照)、ポリ(3−アルキルチオフェン)(Jpn.J.
Appl.Phys,30巻,L1938頁,1991
年等参照)等の高分子材料の開発や、ポリビニルカルバ
ゾール等の高分子に発光材料と電子移動材料を混合した
素子(応用物理,61巻,1044頁,1992年参
照)の開発も行われている。
【0005】以上に示した様な有機電界発光素子におい
ては、通常、陽極としてはインジウム錫酸化物(IT
O)のような透明で仕事関数の高い電極が用いられる。
この陽極の上に正孔輸送層や電子輸送層が形成される
が、通常、これらの層を形成する前に陽極表面は洗浄さ
れる。洗浄方法としては、アセトン、トルエン、イソプ
ロピルアルコール等の有機溶媒中で超音波洗浄したり、
それらの蒸気洗浄を行ったり、さらには陽極表面をプラ
ズマ処理したり、紫外線/オゾン処理を行って清浄表面
を得るが、これらの洗浄後、陽極表面は親水性になる。
一方、正孔輸送層や電子輸送層に使われる有機材料は疎
水性のものが多く、結果として、陽極の表面エネルギー
と正孔輸送層の表面エネルギーの整合がとれておらず、
均一な薄膜形成を困難にしたり、正孔輸送層の結晶化や
剥離を引き起こし駆動時の不安定性の原因となってい
る。
【0006】陽極であるITOの表面処理を行って有機
の正孔輸送層とのコンタクトを改善する試みとして、カ
ルボキシル基を有する有機酸で改質する方法(特開平5
−21165号公報)、カルボン酸のクロム錯体や有機
リン酸化合物等からなる化合物を表面に形成する方法
(特開平5−62523号公報)、有機リン酸エステル
やシランカップリング剤で処理する方法(特開平6−5
365号公報)が挙げられる。
【0007】また、前記陽極と正孔輸送層のコンタクト
及び正孔注入効率を改良する目的で正孔注入層の導入も
行われている。この正孔注入層に用いられる材料に対す
る要求としては、陽極上で均一な薄膜を形成すること、
薄膜形状が熱的に安定なこと、透明性が高いこと、イオ
ン化ポテンシャルが低く正孔移動度が高いこと等が挙げ
られる。この目的のために、これまでにポルフィリン誘
導体やフタロシアニン化合物(特開昭63−29569
5号公報)、スターバスト型芳香族トリアミン(特開平
4−308688号公報)、ヒドラゾン化合物(特開平
4−320483号公報)、アルコキシ置換の芳香族ジ
アミン誘導体(特開平4−220995号公報)、p−
(9−アントリル)−N,N−ジ−p−トリルアニリン
(特開平3−111485号公報)、ポリチエニレンビ
ニレンやポリ−p−フェニレンビニレン(特開平4−1
45192号公報)、ポリアニリン(Appl.Phy
s.Lett.,64巻,1245頁,1994年参
照)等が報告されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】有機電界発光素子の最
大の課題は、駆動時の寿命である。駆動時の不安定性と
しては、発光輝度の低下、定電流駆動時の電圧上昇、非
発光部分(ダークスポット)の発生等が挙げられる。こ
れらの不安定性の原因はいくつか存在するが、有機層の
薄膜形状の劣化が支配的である。この薄膜形状の劣化
は、素子駆動時の発熱による有機非晶質膜の結晶化(ま
たは凝集)等に起因すると考えられている。特に駆動電
圧の上昇については陽極と正孔輸送層のコンタクトが重
要である。
【0009】このコンタクトを改善する方法として、陽
極表面を各種の表面処理剤で処理する方法が開示されて
いるが、これらの方法においてはむしろ陽極表面に絶縁
層が形成されるので、正孔注入障壁が増加して、駆動電
圧が高くなってしまう問題がある。
【0010】陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を挿入
する方法において、ポルフィリン誘導体やフタロシアニ
ン化合物を正孔注入層として用いた場合、これらの膜自
体による光吸収のためにスペクトルが変化したり外観上
着色して透明でなくなるという問題がある。銅フタロシ
アニンを正孔注入層として用いた場合、電流密度20m
A/cm2 で駆動すると初期電圧7Vが500時間後に
11Vまでに上昇するという問題ある(特開昭63−2
95695号公報)。スターバスト型芳香族トリアミ
ン、ヒドラゾン化合物、アルコキシ置換の芳香族ジアミ
ン誘導体、p−(9−アントリル)−N,N−ジ−p−
トリルアニリン等ではイオン化ポテンシャルが低く透明
性がよいという利点はあるものの、ガラス転移点や融点
が低いために耐熱性に劣り、連続駆動時の局所加熱に対
する安定性が悪く、輝度低下や電圧上昇が問題となる。
ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレ
ン、ポリアニリン等のポリマーは通常スピンコートやデ
ィップコート法等の湿式法で形成されるために、陽極上
に均一なコンタクトをもって膜形成するのが困難であ
り、駆動寿命が改善されたという報告はない。
【0011】有機電界発光素子の駆動時における発光特
性の不安定性は、ファクシミリ、複写機、液晶ディスプ
レイのバックライト等の光源としては大きな問題であ
り、フラットパネル・ディスプレイ等の表示素子として
も望ましくない特性である。本発明者は上記実状に鑑
み、安定な駆動発光特性を維持できる有機電界発光素子
を提供することを目的として鋭意検討した結果、有機電
界発光素子の正孔注入層として特定の化合物を使用する
ことが好適であることを見い出し、本発明を完成するに
至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、基板上に設けられた、陽極及び陰極により狭持され
た正孔注入層、正孔輸送層および電子輸送層を少なくと
も含む有機電界発光素子であって、電子輸送層が発光機
能を有し、正孔注入層が、下記一般式(I)で表される
芳香族ジアミン化合物を含有することを特徴とする有機
電界発光素子。 (式中、R1乃至R16は、各々独立して、水素原子、ハロ
ゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい飽和ある
いは不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していても
よい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいアル
コキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ
基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基又は
置換基を有していてもよいジアリールアミノ基を表し、
X及びYは各々独立して酸素原子または硫黄原子を表
す。)以下、本発明の有機電界発光素子について図面を
参照しながら説明する。
【0013】
【化2】
【0014】(式中、R1 乃至R16は、各々独立して、
水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していて
もよい飽和あるいは不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基
を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有して
いてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいア
リールオキシ基、置換基を有していてもよいジアルキル
アミノ基又は置換基を有していてもよいジアリールアミ
ノ基を表し、X及びYは各々独立して酸素原子または硫
黄原子を表す。)以下、本発明の有機電界発光素子につ
いて図面を参照しながら説明する。
【0015】図1は本発明に用いられる一般的な有機電
界発光素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は
基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5
は電子輸送層、6は陰極を各々表わす。基板1は本発明
の有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英や
ガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムや
シートなどが用いられるが、ガラス板や、ポリエステ
ル、ポリメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリス
ルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂
を基板として使用する場合にはガスバリア性のあること
が必要である。この目的のために、合成樹脂基板の上に
緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を高める
こともできる。
【0016】基板1上には陽極2が設けられるが、陽極
2は正孔注入層3への正孔注入の役割を果たすものであ
る。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケ
ル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又は
スズの酸化物などの金属酸化物やヨウ化銅、カーボンブ
ラック、あるいは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポ
リピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより
構成される。これらの内で、特にITOが好ましい。陽
極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などに
より行われることが多いが、銀などの金属微粒子あるい
はヨウ化銅、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微
粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバイ
ンダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより
形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は
電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上
に塗布して形成することもできる(Appl.Phy
s.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
上記の陽極は異なる物質で積層することも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なるが、透
明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を60%以
上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この
場合、厚みは、通常、5〜1000nm、好ましくは1
0〜500nm程度である。
【0017】不透明でよい場合は陽極2は基板1と同一
でもよい。また、さらには上記の陽極の上に異なる導電
材料を積層することも可能である。陽極2の上には正孔
注入層3が設けられる。正孔注入層に用いられる材料に
要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均
一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点また
はガラス転移温度が高く、融点としては300℃以上、
ガラス転移温度としては100℃以上が要求される。さ
らに、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入
が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
この他にフルカラー表示への応用を考えた場合、透明性
も要求される。
【0018】本発明の有機電界発光素子は上記の正孔注
入層材料として前記一般式(I)で表わされる化合物か
ら選ばれた1つ、または、2つ以上の混合物を使用する
ことを特徴とする。前記一般式(I)において、好まし
くは、R1 乃至R16は、各々独立して、水素原子;ハロ
ゲン原子;水酸基;メチル基、エチル基等の炭素数1〜
6のアルキル基;α−ハロアルキル基;ビニル基等のア
ルケニル基;フェニル基、ビフェニル基等の芳香族炭化
水素基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基
等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ
基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェ
ノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;
ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のジアル
キルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ
基などのジアリールアミノ基であり、飽和もしくは不飽
和の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ
基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリー
ルアミノ基は置換基を有していてもよい。これらのう
ち、R1 乃至R16が水素原子、メチル基、エチル基、フ
ェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、メトキシ
基、エトキシ基であるのがさらに好ましい。X及びYは
各々独立に酸素原子または硫黄原子から選ばれる。
【0019】一般式(I)で表される化合物は、例え
ば、以下の経路で合成される。即ち、下記一般式(I
I)
【0020】
【化3】
【0021】(式中、R8、R16は前記の定義と同じ)
で表されるビフェニル誘導体のヨウ化物と下記一般式
(III)
【0022】
【化4】
【0023】(式中、R1乃至R7及びXは前記の定義と
同じ)で表されるアミン誘導体をUllmann反応
(Organic Syntheses,1巻,544
頁参照)にて反応させ、生成した下記一般式(IV)
【0024】
【化5】
【0025】(式中、R1乃至R8、R16及びXは前記の
定義と同じ)で表される一置換体をカラムクロマトグラ
フィで分離した後に、下記一般式(V)
【0026】
【化6】
【0027】(式中、R9乃至R15及びYは前記の定義
と同じ)で表されるアミン誘導体と同様にUllman
nn反応させて目的の一般式(I)で表される芳香族ジ
アミン化合物を得る。以上の合成例は非対称の芳香族ジ
アミン化合物についてであるが、対称な芳香族ジアミン
化合物の場合には前記アミン誘導体(III)との反応
だけで最終的な二置換体まで反応をすすめればよい。
【0028】本発明においては、前記一般式(I)に示
す分子構造により、融点を300℃以上とすることがで
きるとともに、イオン化ポテンシャルを5.5eV以下
とすることができる。前記一般式(I)で表される芳香
族ジアミン化合物の好ましい具体例を表−1乃至表−6
に示すが、これらに限定するものではない。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】前記一般式(I)から成る正孔注入層3は
塗布法あるいは真空蒸着法により前記陽極2上に積層す
ることにより形成される。塗布の場合は、上記正孔注入
層の材料化合物の1種または2種以上と、必要により正
孔のトラップにならないバインダー樹脂やレベリング剤
等の塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解した、
塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽
極2上に塗布し、乾燥して正孔注入層3を形成する。バ
インダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレ
ート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は
添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方
が望ましく、50重量%以下が好ましい。
【0036】真空蒸着法の場合には、正孔注入層の材料
を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を
適当な真空ポンプで10-6Torr程度(約10-4Pa
程度)にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔注入
層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板
上に層を形成する。
【0037】正孔注入層を形成する場合、さらに、アク
セプタとして、芳香族カルボン酸の金属錯体及び/また
は金属塩(特開平4−320484号公報)、ベンゾフ
ェノン誘導体およびチオベンゾフェノン誘導体(特開平
5−295361号公報)、フラーレン類(特開平5−
331458号公報)を10-3〜10重量%の濃度でド
ープして、フリーキャリアとしての正孔を生成させ、低
電圧駆動とすることが可能である。
【0038】以上の様にして形成される正孔注入層3の
膜厚は、通常、3〜100nm、好ましくは10〜50
nmである。正孔注入層3の上には正孔輸送層4が設け
られる。正孔輸送層の機能としては、正孔注入層から注
入された正孔を効率よく電子輸送層5に向けて輸送し、
正孔輸送層と電子輸送層の界面近傍で正孔と電子の再結
合を効率よく起こすことである。従って、正孔輸送層の
材料としては、正孔注入層3からの正孔注入効率が高
く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することがで
きる材料であることが必要である。そのためには、イオ
ン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大き
く、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造
時や使用時に発生しにくいことが要求される。さらに、
可視光領域で透明なことが要求される。
【0039】このような正孔輸送層の材料としては、例
えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニ
ル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連
結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−19439
3号公報)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−
N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上
の3級アミノ基を含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原
子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号
公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバース
ト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,92
3,774号)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビ
ス(3−メチルフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジ
アミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,6
25号)、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,
α’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−p
−キシレン(特開平3−269084号公報)、分子全
体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体
(特開平4−129271号公報)、ピレニル基に芳香
族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−17
5395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニ
ットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−26418
9号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特
開平4−290851号公報)、チオフェン基で芳香族
3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304
466号公報)、スターバースト型芳香族トリアミン
(特開平4−308688号公報)、ベンジルフェニル
化合物(特開平4−364153号公報)、フルオレン
基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473
号公報)、トリアミン化合物(特開平5−239455
号公報)、ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5
−320634号公報)、N,N,N−トリフェニルア
ミン誘導体(特開平6−1972号公報)、ジアミノフ
ェニルフェナントリジン誘導体(特願平6−45669
号)に示される芳香族アミン系化合物、ヒドラゾン化合
物(特開平2−311591号公報)、シラザン化合物
(米国特許第4,950,950号公報)、シラナミン
誘導体(特開平6−49079号公報)、ホスファミン
誘導体(特開平6−25659号公報)、キナクリドン
化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用い
るか、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
【0040】上記の化合物以外に、正孔輸送性の高分子
である、ポリビニルカルバゾールやポリシラン(App
l.Phys.Lett.,59巻,2760頁,19
91年参照)、ポリフォスファゼン(特開平5−310
949号公報)、ポリアミド(特開平5−310949
号公報)、ポリビニルトリフェニルアミン(特願平5−
205377)、トリフェニルアミン骨格を有する高分
子(特開平4−133065号公報)、トリフェニルア
ミン単位をメチレン基等で連結した高分子(Synth
etic Metals,55−57巻,4163頁,
1993年参照)、芳香族アミンを含有するポリメタク
リレート(J.Polym.Sci.,Polym.C
hem.Ed.,21巻,969頁,1983年参照)
等の高分子材料が挙げられる。
【0041】上記の正孔輸送層の材料は塗布法あるいは
真空蒸着法により前記正孔注入層3上に積層することに
より正孔輸送層4を形成する。塗布の場合は、正孔輸送
層の材料の1種または2種以上と、必要により正孔のト
ラップにならないバインダー樹脂やレベリング剤等の塗
布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解した、塗布溶
液を調製し、スピンコート法などの方法により正孔注入
層3上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バ
インダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレ
ート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は
添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方
が望ましく、50重量%以下が好ましい。
【0042】真空蒸着法の場合には、正孔輸送層の材料
を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を
適当な真空ポンプで10-6Torr程度(約10-4Pa
程度)にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送
層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板
上に層を形成する。
【0043】上記正孔輸送層4を形成する場合、さら
に、アクセプタとして、芳香族カルボン酸の金属錯体及
び/または金属塩(特開平4−320484号公報)、
ベンゾフェノン誘導体およびチオベンゾフェノン誘導体
(特開平5−295361号公報)、フラーレン類(特
開平5−331458号公報)を10-3〜10重量%の
濃度でドープして、フリーキャリアとしての正孔を生成
させ、低電圧駆動とすることが可能である。
【0044】正孔輸送層4の膜厚は、通常、10〜30
0nm、好ましくは30〜100nmである。この様に
薄い膜を一様に形成するためには、真空蒸着法がよく用
いられる。正孔輸送層4の上には電子輸送層5が設けら
れるが、電子輸送層5は、電界を与えられた電極間にお
いて陰極からの電子を効率よく正孔輸送層4の方向に輸
送することができる化合物より形成される。
【0045】電子輸送層5に用いられる電子輸送性化合
物としては、陰極6からの電子注入効率が高く、かつ、
注入された電子を効率よく輸送することができる化合物
であることが必要である。そのためには、電子親和力が
大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優
れトラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにく
い化合物であることが要求される。
【0046】このような条件を満たす材料としては、テ
トラフェニルブタジエンなどの芳香族化合物(特開昭5
7−51781号公報)、8−ヒドロキシキノリンのア
ルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−1943
93号公報)、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−
289675号公報)、ペリノン誘導体(特開平2−2
89676号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平
2−216791号公報)、ビススチリルベンゼン誘導
体(特開平1−245087号公報、同2−22248
4号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890
号公報、同3−791号公報)、クマリン化合物(特開
平2−191694号公報、同3−792号公報)、希
土類錯体(特開平1−256584)、ジスチリルピラ
ジン誘導体(特開平2−252793号公報)、p−フ
ェニレン化合物(特開平3−33183号公報)、チア
ジアゾロピリジン誘導体(特開平3−37292号公
報)、ピロロピリジン誘導体(特開平3−37293号
公報)、ナフチリジン誘導体(特開平3−203982
号公報)、8−ヒドロキシキナルジンのアルミニウム二
核錯体(特開平5−198377号公報)、8−ヒドロ
キシキナルジンのアルミニウム混合配位子錯体(特開平
5−198378号公報;同5−214332号公
報)、ジスチリルビフェニル誘導体(特開平4−117
485号公報;応用物理,62巻,1015頁,199
3年参照)、ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯
体(特開平6−322362号公報)などが挙げられ
る。
【0047】これらの化合物を用いた電子輸送層5は、
通常、電子を輸送する役割と、正孔と電子の再結合の際
に発光をもたらす役割を同時に果している。正孔輸送層
4が発光機能を有する場合には、電子輸送層5は電子を
輸送する役割だけを果たす。
【0048】素子の発光効率を向上させるとともに発光
色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンの
アルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレ
ーザ用蛍光色素をドープすること(J.Appl.Ph
ys.,65巻,3610頁,1989年)も行われて
いる。本発明においても上記の有機電子輸送材料をホス
ト材料として各種の蛍光色素を10-3〜10モル%ドー
プすることにより、素子の発光特性をさらに向上させる
ことができる。ドープする色素としては特開昭63−2
64692号公報に開示されているクマリン系色素、ジ
シアノメチレン色素、ローダミン色素、チオピラン色
素、キサンテン色素、カルボスチリル色素、ペリレン誘
導体が挙げられるが、それ以外の色素としてキナクリド
ン誘導体(特開平3−255190号公報)、ルブレン
等のナフタセン誘導体(特開平4−335087号公
報)、ペリミドン誘導体(特開平4−320485号公
報)、ナフタル酸イミド誘導体(特開平4−32048
6号公報)、チオキサンテン(特開平5−222362
号公報)、ペリノン誘導体(特開平5−279662号
公報)、ナフトイレンピラゾール(特開平5−2953
60号公報)、ナフトイレンピラゾール(特開平5−2
95363号公報)、インダゾオキサジン・ナフトイレ
ン・ピラゾール化合物(特開平5−311162号公
報)等が挙げられる。
【0049】電子輸送層5の膜厚は、通常、10〜20
0nm、好ましくは30〜100nmである。電子輸送
層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができる
が、通常は真空蒸着法が用いられる。また、電子輸送層
を複数積層して、例えば、青、緑、赤の各発光層を積層
することにより白色発光を得ることも、カラーフィルタ
ーと組み合わせてフルカラー表示を可能にするという点
で重要である(特開平6−207170号公報、特願平
5−285218号)。
【0050】有機電界発光素子の発光効率をさらに向上
させる方法として、電子輸送層5の上にさらに電子注入
層を積層することが考えられる。この電子注入層に用い
られる化合物には、陰極からの電子注入が容易で、電子
の輸送能力がさらに大きいことが要求される。この様な
電子注入層の材料としては、オキサジアゾール誘導体
(Appl.Phys.Lett.,55巻,1489
頁,1989年;Jpn.J.Appl.Phys.,
31巻,1812頁,1992年)やそれらをポリメチ
ルメタクリレート(PMMA)等の樹脂に分散した系
(Appl.Phys.Lett.,61巻,2793
頁,1992年)、フェナントロリン誘導体(特開平5
−331459号公報)、または、n型水素化非晶質炭
化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げ
られる。電子注入層の膜厚は、通常、5〜200nm、
好ましくは10〜100nmである。
【0051】陰極6は、電子輸送層5又は前記電子注入
層に電子を注入する役割を果たす。陰極として用いられ
る材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが
可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関
数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジ
ウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属ま
たはそれらの合金が用いられる。陰極6の膜厚は通常、
陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保
護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に
対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増
す。この目的のために、アルミニウム、銀、ニッケル、
クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0052】第1図に示した構造以外にも、以下に示す
ような層構成の有機電界発光素子が本発明に用いられ
る;
【0053】
【表7】陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子輸送層/
電子注入層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電
子輸送層/界面層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送
層/電子輸送層/電子注入層/界面層/陰極。
【0054】上記層構成で、界面層は陰極と有機層との
コンタクトを向上させるためのもので、芳香族ジアミン
化合物(特開平6−267658号公報)、キナクリド
ン化合物(特開平6−330031号公報)、ナフタセ
ン誘導体(特開平6−330032号公報)、有機シリ
コン化合物(特開平6−325871号公報)、有機リ
ン化合物(特開平6−325872号公報)、N−フェ
ニルカルバゾール骨格を有する化合物(特願平6−19
9562号)、N−ビニルカルバゾール重合体(特願平
6−200942号)等が挙げられる。界面層の膜厚
は、通常、2〜100nm、好ましくは5〜30nmで
ある。界面層を設ける代わりに、有機発光層及び電子輸
送層の陰極界面近傍に上記界面層材料を50重量%以上
含む領域を設けてもよい。
【0055】本発明においては、正孔注入層を特定の芳
香族ジアミン化合物で構成することにより、長期の駆動
に対して安定した発光特性を示す素子を得ることができ
る。尚、図1とは逆の構造、すなわち、基板上に陰極
6、電子輸送層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極
2の順に積層することも可能であり、既述した様に少な
くとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有
機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、前
記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
【0056】
【実施例】次に、本発明を実施例によって更に具体的に
説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の
実施例の記載に限定されるものではない。 [例示化合物(1)の製造例]以下の構造式に示す芳香
族ジアミン化合物(表−1及び表−2の番号(1)の化
合物)を合成した。
【0057】
【化7】
【0058】4,4’−ジヨードビフェニル5.0g、
フェノキサジン4.97g、炭酸カリウム2.51g、
ヨウ化銅0.23gを50mlのニトロベンゼンに加
え、窒素下、200℃で24時間反応させた。析出した
黄色の反応生成物を濾過し、脱塩水で2回洗浄後、トル
エンで洗浄し、アセトンで洗浄して乾燥後、2.53g
の白色粉末を得た。収率は40%であった。この生成物
のうち1.0gを昇華精製して融点を測定したところ3
45℃と高い融点を示した。質量分析により分子量が5
16であり、さらにIRスペクトル、NMRスペクトル
により目的化合物であることを確認した。
【0059】[例示化合物(20)の製造例]以下の構
造式に示す芳香族ジアミン化合物(表−3及び表−4の
番号(20)の化合物)を合成した。
【0060】
【化8】
【0061】4,4’−ジヨードビフェニル5.0g、
フェノチアジン5.46g、炭酸カリウム2.48g、
ヨウ化銅0.23gを50mlのニトロベンゼンに加
え、窒素下、200℃で24時間反応させた。析出した
黄色の反応生成物を濾過し、脱塩水で2回洗浄後、トル
エンで洗浄して乾燥後、2.71gの薄黄緑色の粉末を
得た。収率は40%であった。この生成物のうち1.0
gを昇華精製して融点を測定したところ316℃と高い
融点を示した。質量分析により分子量が548であり、
さらにIRスペクトル、NMRスペクトルにより目的化
合物であることを確認した。
【0062】実施例1 ガラス基板をアセトンで超音波洗浄、純水で水洗、イソ
プロピルアルコールで超音波洗浄、乾燥窒素で乾燥した
後、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が2×
10-6Torr以下になるまで液体窒素トラップを備えた油
拡散ポンプを用いて排気した。上記装置内に配置された
セラミックるつぼに入れた化合物(1)を、るつぼの周
囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行った。この
時のるつぼの温度は、160〜170℃の範囲で制御し
た。蒸着時の真空度は2×10-6Torrで、膜厚2
0,30,40nmの各薄膜試料を得た。これらの試料
の可視光領域における光透過率を図2に示す。可視光領
域での透過率は80%以上であり、ほぼ透明である。こ
れらの薄膜試料のイオン化ポテンシャルを理研計器
(株)製の紫外線電子分析装置(AC−1)を用いて測
定したところ、5.28eVと低い値を示した。また、
この薄膜試料を大気中で566日間保存しても、膜の形
状は均一なままで安定であった。
【0063】実施例2 化合物(1)の代わりに化合物(20)を用いた他は実
施例1と同様にして、膜厚40nmの薄膜試料を得た。
これらの試料の可視光領域における光透過率を図3に示
す。可視光領域では透過率は90%以上であり透明であ
る。これらの薄膜試料のイオン化ポテンシャルを理研計
器(株)製の紫外線電子分析装置(AC−1)を用いて
測定したところ、5.45eVと低い値を示した。ま
た、この薄膜試料を大気中で566日間保存しても、膜
の形状は均一なままで安定であった。
【0064】比較例1 化合物(1)の代わりに下記に示す銅フタロシアニン
【0065】
【化9】
【0066】を用いた他は実施例1と同様にして、膜厚
20、30、40nmの薄膜試料を得た。これらの試料
の可視光領域における光透過率を図4に示す。550〜
750nmの範囲で吸収があり、フルカラー表示を考え
た場合には問題がある透過特性である。
【0067】実施例3 図1に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法
で作製した。ガラス基板上にITO透明導電膜を120
nm堆積したもの(ジオマテック社製;電子ビーム成膜
品;シート抵抗15Ω)を、触針式表面粗さ計(ランク
テーラーホブソン社製タリステップ)によりITO表面
の十点平均粗さRz(JISB0601)を測定したと
ころ7.4nmであった。このITOガラス基板を通常
のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2
mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成し
た。パターン形成を終わったITO基板を、アセトンに
よる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコ
ールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥
させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行って、真空蒸着装置
内に設置した。装置の粗排気を油回転ポンプにより行っ
た後、装置内の真空度が2×10-6Torr以下になるまで
液体窒素トラップを備えた油拡散ポンプを用いて排気し
た。上記装置内に配置されたセラミックるつぼに前記化
合物(1)を入れ、該るつぼの周囲のタンタル線ヒータ
ーで加熱して蒸着を行った。この時のるつぼの温度は、
200〜205℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度
1.8×10-6Torr、蒸着時間2分40秒で膜厚2
0nmの正孔注入層3を得た。
【0068】次に、以下に示す、4,4’−ビス[N−
(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
(H1)
【0069】
【化10】
【0070】を用いて、正孔注入層3と同様にして蒸着
を行った。この時のるつぼの温度は、210〜230℃
の範囲で制御した。蒸着時の真空度は1.4×10-6
orrで、蒸着時間4分で膜厚40nmの正孔輸送層4
を前記正孔注入層3の上に形成した。引き続いて、発光
機能を有する電子輸送層5の材料として、以下の構造式
に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体、A
l(C96NO)3(E1)、
【0071】
【化11】
【0072】を上記正孔輸送層4の上に同様にして蒸着
を行った。この時のるつぼの温度は310〜320℃の
範囲で制御した。蒸着時の真空度は1.5×10-6To
rr、蒸着時間は2分50秒、膜厚は75nmであっ
た。上記の正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層を真
空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
【0073】ここで、電子輸送層5までの蒸着を行った
素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出し
て、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状
シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交す
るように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置
して有機層と同様にして装置内の真空度が2×10-6
orr以下になるまで排気した。続いて、陰極6とし
て、マグネシウムと銀の合金電極を2元同時蒸着法によ
って膜厚110nmで蒸着した。蒸着はモリブデンボー
トを用いて、真空度は9×10-6Torr、蒸着時間は
3分であった。マグネシウムと銀の原子比は10:1.
3であった。
【0074】以上の様にして、2mm×2mmのサイズ
の有機電界発光素子が得られた。この素子を陰極蒸着装
置から取り出した後、乾燥窒素雰囲気下で、別のガラス
板とガラス製のスペーサを用いてエポキシ樹脂(チバガ
イギー社製アラルダイト)により貼り合わせて封止し
た。この時、2枚のガラス板に挟まれたスペーサの空間
に減圧下で加熱乾燥したシリカゲル粉末(純正化学社製
青色5〜10メッシュをメノウ乳鉢ですりつぶしたも
の)を吸湿剤として適量入れた。
【0075】この様にして封止した有機電界発光素子を
大気中において、定電流駆動で電流密度を15mA/c
2 として直流連続駆動させた。駆動時の輝度の経時変
化を図5に示す。この時の初期輝度は340cd/m2
であった。168時間駆動後のダークスポットは0.4
%であった。図6に電圧増加特性を示す。初期の電圧は
7.2Vであり、168時間駆動後の電圧増加は2V以
下であった。
【0076】実施例4 図1に示す構造を有する有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板上にITO透明導電膜を120nm堆積した
ものを実施例3と同様にしてパターニングして陽極を形
成し、アセトンで超音波洗浄、純水で水洗、イソプロピ
ルアルコールで超音波洗浄、乾燥窒素で乾燥、UV/オ
ゾン洗浄を行った後、真空蒸着装置内に設置して、装置
内の真空度が2×10-6Torr以下になるまで液体窒素ト
ラップを備えた油拡散ポンプを用いて排気した。
【0077】正孔注入層の材料化合物として化合物(2
0)を用いた他は実施例3と同様にして正孔注入層を形
成した。この時のるつぼの温度は、230〜235℃の
範囲で制御した。蒸着時の真空度1.7×10-6Tor
r、蒸着時間1分30秒で膜厚20nmの正孔注入層3
を得た。続いて、実施例3と同様にして、芳香族ジアミ
ン(H1)から成る正孔輸送層(膜厚60nm)を形成
後、アルミニウム錯体(E1)から成る電子輸送層(膜
厚75nm)を積層した。
【0078】ここで、電子輸送層5までの蒸着を行った
素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出し
て、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状
シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交す
るように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置
して陰極6を以下の様に形成した。先ず、マグネシウム
と銀の合金電極を2元同時蒸着法によって膜厚44nm
で蒸着した。蒸着はモリブデンボートを用いて、真空度
は5×10-6Torr、蒸着時間は1分5秒であった。
マグネシウムと銀の原子比は10:1.2であった。さ
らに続いて、装置の真空を破らないで、アルミニウムを
モリブデンボートを用いて40nmの膜厚でマグネシウ
ム・銀合金膜の上に積層して陰極6を完成させた。アル
ミニウム蒸着時の真空度は7×10-6Torr、蒸着時
間は50秒であった。以上のマグネシウム・銀合金とア
ルミニウムの2層型陰極の蒸着時の基板温度は室温に保
持した。
【0079】以上の様にして、2mm×2mmのサイズ
の有機電界発光素子が得られた。この素子を陰極蒸着装
置から取り出した後、次に、図7に示す構造に従って素
子の封止を行った。
【0080】先ず、既述の有機層蒸着装置に再び上記素
子を設置した後、これまでに示したのと同様にして、化
合物(E1)を膜厚200nmで陰極6の上に積層し
て、保護層7とした。この時の真空度は2×10-6To
rr、蒸着時間は6分で、基板温度は室温であった。素
子を上記装置より大気に取り出して、窒素グローブボッ
クス中に入れて以下の作業を行った。
【0081】二液混合型の変性シリコーン系弾性接着剤
(セメダイン社EP001)を適当量混合した後、重量
比で約30%のシリカゲル粉末(粒径50〜300μ
m)をフィラーとしてさらに加えた後、保護層7の上に
厚さ約1mmで塗布して封止層8とした。室温で40分
硬化させた後、外気遮断層9として厚さ1.1mmのガ
ラス板を、接着部分10にエポキシ樹脂(チバガイギー
社製アラルダイト)を用いて貼り合わせ素子の封止を完
了させた。
【0082】この様にして封止した有機電界発光素子を
大気中において、定電流駆動で電流密度を15mA/c
2 として直流連続駆動させた。駆動時の輝度の経時変
化を図5に示す。この時の初期輝度は243cd/m2
であった。177時間連続駆動後のダークスポットは
0.1%未満であった。電圧増加特性を図6に示す。初
期電圧は8.6Vであり、177時間駆動後の電圧増加
は2V以下であった。
【0083】比較例2 正孔注入層を設けない他は実施例4と同様にして有機電
界発光素子を作製した。実施例4と同様にして封止した
有機電界発光素子を大気中において、定電流駆動で電流
密度を15mA/cm2 として直流連続駆動させた。駆
動時の輝度の経時変化を図5に示す。この時の初期輝度
は330cd/m2 であった。163時間連続駆動後の
ダークスポットは1%であった。電圧増加特性を図6に
示す。初期電圧は9.1Vであったが、163時間後の
電圧増加は4V以上と大きかった。
【0084】比較例3 正孔注入層として銅フタロシアニンを用いた他は実施例
4と同様にして有機電界発光素子を作製した。実施例4
と同様にして封止した有機電界発光素子を大気中におい
て、定電流駆動で電流密度を15mA/cm2 として直
流連続駆動させた。駆動時の輝度の経時変化を図5に示
す。この時の初期輝度は370cd/m 2 であった。1
64時間連続駆動後のダークスポットは0.1%未満で
あった。電圧増加特性を図6に示す。初期電圧は4.9
Vであったが、164時間後の電圧増加は2Vであっ
た。
【0085】
【発明の効果】本発明の有機電界発光素子によれば、正
孔注入層が特定の芳香族ジアミンから成るため、熱的に
安定な薄膜構造を有し、優れた駆動安定性を示す素子を
得ることができる。従って、本発明による有機電界発光
素子はフラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコン
ピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を
生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレ
イや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への
応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における有機電界発光素子の一例を示し
た模式断面図。
【図2】実施例1における薄膜試料の可視光領域におけ
る光透過率。
【図3】実施例2における薄膜試料の可視光領域におけ
る光透過率。
【図4】比較例1における薄膜試料の可視光領域におけ
る光透過率。
【図5】実施例3、4及び比較例2、3における有機電
界発光素子の大気中駆動時の発光輝度(初期輝度を1と
した)の経時変化。
【図6】実施例3、4及び比較例2、3における有機電
界発光素子の大気中駆動時の電圧増加(初期電圧からの
増加分)の経時変化。
【図7】有機電界発光素子の封止方法の一例を示した模
式図。
【符号の説明】
1 基板 2 陽極 3 正孔注入層 4 正孔輸送層 5 電子輸送層 6 陰極 7 保護層 8 封止層 9 外気遮断層 10 接着部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05B 33/14 H05B 33/22 C09K 11/06 G03G 5/00 - 5/16

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に設けられた、陽極及び陰極に
    より狭持された正孔注入層、正孔輸送層および電子輸送
    層を少なくとも含む有機電界発光素子であって、電子輸送層が発光機能を有し、 正孔注入層が、下記一般
    式(I)で表される芳香族ジアミン化合物を含有するこ
    とを特徴とする有機電界発光素子。 (式中、R1乃至R16は、各々独立して、水素原子、ハロ
    ゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよい飽和ある
    いは不飽和の脂肪族炭化水素基、置換基を有していても
    よい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいアル
    コキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ
    基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基又は
    置換基を有していてもよいジアリールアミノ基を表し、
    X及びYは各々独立して酸素原子または硫黄原子を表
    す。)
  2. 【請求項2】 一般式(I)で表される化合物のイオン
    化ポテンシャルが5.5eV以下である、請求項1記載
    の有機電界発光素子。
  3. 【請求項3】 一般式(I)で表される化合物の融点が
    300℃以上である、請求項1または2記載の有機電界
    発光素子。
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