JP3933789B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

有機電界発光素子 Download PDF

Info

Publication number
JP3933789B2
JP3933789B2 JP11825198A JP11825198A JP3933789B2 JP 3933789 B2 JP3933789 B2 JP 3933789B2 JP 11825198 A JP11825198 A JP 11825198A JP 11825198 A JP11825198 A JP 11825198A JP 3933789 B2 JP3933789 B2 JP 3933789B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
aluminum
substituent
layer
bis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP11825198A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1140367A (ja
Inventor
佳晴 佐藤
朋行 緒方
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP11825198A priority Critical patent/JP3933789B2/ja
Publication of JPH1140367A publication Critical patent/JPH1140367A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3933789B2 publication Critical patent/JP3933789B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、有機化合物から成る正孔輸送層、発光層および正孔阻止層との組み合わせにより、電界をかけて可視光を放出する薄膜型デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜型の電界発光(EL)素子としては、無機材料のII−VI族化合物半導体であるZnS、CaS、SrS等に、発光中心であるMnや希土類元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドープしたものが一般的であるが、上記の無機材料から作製したEL素子は、
1)交流駆動が必要(50〜1000Hz)、
2)駆動電圧が高い(〜200 V)、
3)フルカラー化が困難(特に青色)、
4)周辺駆動回路のコストが高い、
という問題点を有している。
【0003】
しかし、近年、上記問題点の改良のため、有機薄膜を用いたEL素子の開発が行われるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からのキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設けた有機電界発光素子の開発(Appl. Phys. Lett., 51 巻, 913 頁,1987年)により、従来のアントラセン等の単結晶を用いたEL素子と比較して発光効率の大幅な改善がなされ、実用特性に近づいている。
【0004】
上記の様な低分子材料を用いた電界発光素子の他にも、発光層の材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(Nature, 347 巻, 539 頁, 1990年他)、ポリ[2-メトキシ-5- (2-エチルヘキシルオキシ)-1,4- フェニレンビニレン](Appl. Phys. Lett., 58 巻, 1982頁, 1991年他)、ポリ(3-アルキルチオフェン)(Jpn. J. Appl. Phys, 30巻, L1938 頁, 1991年他)等の高分子材料を用いた電界発光素子の開発や、ポリビニルカルバゾール等の高分子に低分子の発光材料と電子移動材料を混合した素子(応用物理, 61巻, 1044頁, 1992年)の開発も行われている。
また、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素をドープすること(J. Appl. Phys.,65巻,3610頁,1989年)等も行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
有機電界発光素子をフラットパネル・ディスプレイの分野に応用する際の大きな課題の一つとして、発光効率の向上が挙げられる。携帯機器の表示素子への応用においては、特に、低消費電力がポイントとなる。また、小型文字表示素子への応用においては、主として、単純マトリクス駆動法が採用されるが、この方法では、高デューティ比で素子を極めて短時間に高輝度で光らせる必要があり、そのために電圧が高くなり、電力発光効率が低下するという問題が指摘されている(月刊LCD Intelligence ,1997年,5月号,84頁参照)。
【0006】
これまでに報告されている有機電界発光素子では、基本的には正孔輸送層と電子輸送層の組み合わせにより発光を行っている。陽極から注入された正孔は正孔輸送層を移動し、陰極から注入されて電子輸送層を移動してくる電子と、両層の界面近傍で再結合をし、正孔輸送層及び/または電子輸送層を励起させて発光させるのが原理である。この基本的素子構造において、特に、正孔が電子輸送層を通過して、再結合せずに陰極に到達するのが、従来の素子の発光効率を制限している一つの要因となっていた。
【0007】
従来、電子の輸送能力が高い電子輸送材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジアゾール誘導体(Appl. Phys. Lett., 55 巻, 1489頁,1989 年他)やそれらをポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂に分散した系(Appl. Phys. Lett. ,61巻,2793頁, 1992年)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N'- ジシアノアントラキノンジイミン(Phys. Stat. Sol. (a),142 巻, 489 頁, 1994年)等が報告されているが、いずれの場合も正孔輸送層からの正孔を完全に阻止するには至っていない。
【0008】
一方、正孔阻止層に関しては、発光層と陰極との間に、発光層の第一酸化電位よりも 0.1eV以上大きな第一酸化電位を有する正孔阻止層として、トリス(5,7-ジクロル-8- ヒドロキシキノリノ)アルミニウム(特開平2−195683号公報)が知られているが、発光効率の改善効果は実用には遠かった。また、同様の正孔阻止層材料として、シラシクロペンタジエンも提案されているが(特開平9− 87616号公報)、駆動安定性は十分ではない。
【0009】
上述の理由から、正孔を完全に阻止できて再結合に寄与しない電流量を減らすことが、高発光効率かつ安定な素子を作製するための素子構造及び材料に対して、更なる改良検討が望まれていた。
本発明者等は、上記実状に鑑み、高発光効率で発光させ、安定に駆動させることができる有機電界発光素子を提供することを目的として鋭意検討した結果、発光層を正孔輸送層と正孔阻止層の間に挟持させ、特定の化合物を正孔阻止層に用いることが好適であることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、基板上に、上からまたは下から順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、陰極を積層してなる有機電界発光素子であって、
正孔阻止層、陰極を積層してなる有機電界発光素子であって、該正孔阻止層が、発光層材料より広いバンドギャップを有し、且つ、下記一般式(I)で表されるアルミニウム混合配位子錯体
【0011】
【化4】
Figure 0003933789
【0012】
(式中、R1 〜R6 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリル基、シアノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、α−ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Xは、下記一般式(Ia)、(Ib)、または(Ic)を表す。)
【0013】
【化5】
Figure 0003933789
【0014】
(式中、Ar1〜Ar5は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。但し、式( Ia )中のA r 1 基、式( Ib )中のC(O)−A r 2 基、及び式( Ic )中のSi(A r 3 )(A r 4 )−A r 5 基が電子吸引性基である場合を除く。
または下記一般式(II)で表されるアルミニウム二核錯体
【0015】
【化6】
Figure 0003933789
【0016】
(式中、R1 〜R6 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、α−ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子に存する。
【0017】
以下、本発明の有機電界発光素子について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に用いられる一般的な有機電界発光素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、8は陰極を各々表わす。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリヤ性が低すぎると、基板を通過する外気からの水分や酸素により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0018】
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は正孔輸送層4への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl. Phys. Lett., 60 巻, 2711頁, 1992年)。陽極2は異なる物質で積層して形成することも可能である。陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常、 5〜1000nm、好ましくは 10 〜500nm 程度である。不透明でよい場合は陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0019】
陽極2の上には正孔輸送層4が設けられる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子にはさらに耐熱性が要求される。従って、Tgとして70℃以上の値を有する材料が望ましい。
【0020】
このような正孔輸送材料としては、例えば、1,1-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報)、4,4'- ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774 号)、N,N'- ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)ビフェニル-4,4'-ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625 号)、α, α, α',α'-テトラメチル- α, α'-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)-p- キシレン(特開平3−269084号公報)、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報)、チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304466号公報)、スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473 号公報)、トリアミン化合物(特開平5−239455号公報)、ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報)、N,N,N-トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報)、フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報)、ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報)、ヒドラゾン化合物(特開平2−311591号公報)、シラザン化合物(米国特許第4,950,950 号公報)、シラナミン誘導体(特開平6−49079 号公報)、ホスファミン誘導体(特開平6−25659 号公報)、キナクリドン化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
【0021】
上記の化合物以外に、正孔輸送層4の材料として、ポリビニルカルバゾールやポリシラン(Appl. Phys. Lett. ,59巻,2760頁,1991年)、ポリフォスファゼン(特開平5−310949号公報)、ポリアミド(特開平5−310949号公報)、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953 号公報)、トリフェニルアミン骨格を有する高分子(特開平4−133065号公報)、トリフェニルアミン単位をメチレン基等で連結した高分子(Synthetic Metals,55-57 巻,4163頁,1993年)、芳香族アミンを含有するポリメタクリレート(J. Polym. Sci., Polym. Chem.Ed. ,21巻,969 頁,1983年)等の高分子材料が挙げられる。
【0022】
上記の正孔輸送材料を塗布法あるいは真空蒸着法により前記陽極2上に積層することにより正孔輸送層4を形成する。
塗布法の場合は、正孔輸送材料を1種または2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好ましい。
【0023】
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板1上の陽極2上に正孔輸送層4を形成させる。
正孔輸送層4の膜厚は、通常、10〜300nm 、好ましくは30〜100nm である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0024】
陽極2と正孔輸送層4のコンタクトを向上させるために、図3に示す様に、陽極バッファ層3を設けることが考えられる。陽極バッファ層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点及びガラス転移温度が高く、融点としては 300℃以上、ガラス転移温度としては 100℃以上が要求される。さらに、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。この目的のために、これまでにポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報)、スターバスト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)、ヒドラゾン化合物(特開平4−320483号公報)、アルコキシ置換の芳香族ジアミン誘導体(特開平4−220995号公報)、p-(9-アントリル)-N,N- ジ-p- トリルアニリン(特開平3−111485号公報)、ポリチエニレンビニレンやポリ−p−フェニレンビニレン(特開平4−145192号公報)、ポリアニリン(Appl. Phys. Lett., 64 巻,1245 頁, 1994年参照)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(特開平8− 31573号公報)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(第43回応用物理学関係連合講演会,27a-SY-9,1996年)が報告されている。
【0025】
上記陽極バッファ層材料としてよく使用される化合物としては、ポルフィリン化合物またはフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は中心金属を有していてもよいし、無金属のものでもよい。
好ましいこれらの化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる:
ポルフィン、
5,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン、
5,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィンコバルト(II)、
5,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン銅(II)、
5,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィン亜鉛(II)、
5,10,15,20- テトラフェニル-21H,23H- ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、
5,10,15,20- テトラ(4-ピリジル)-21H,23H- ポルフィン、
29H,31H-フタロシアニン、
銅(II)フタロシアニン、
亜鉛(II)フタロシアニン、
チタンフタロシアニンオキシド、
マグネシウムフタロシアニン、
鉛フタロシアニン、
銅(II)4,4',4'',4'''-テトラアザ-29H,31H- フタロシアニンが挙げられる。
【0026】
陽極バッファ層の場合も、正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、さらに、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。
以上の様にして形成される陽極バッファ層3の膜厚は、通常、3 〜100nm 、好ましくは10〜50nmである。
【0027】
正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入されて正孔輸送層を移動する正孔と、陰極から注入されて正孔阻止層6を移動する電子との再結合により励起されて強い発光を示す蛍光性化合物より形成される。
発光層5に用いられる蛍光性化合物としては、安定な薄膜形状を有し、固体状態で高い蛍光収率を示し、正孔および/または電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。さらに電気化学的かつ化学的に安定であり、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくい化合物であることが要求される。
【0028】
このような条件を満たす材料としては、テトラフェニルブタジエンなどの芳香族化合物(特開昭57− 51781号公報)、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10- ヒドロキシベンゾ[h] キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、混合配位子アルミニウムキレート錯体(特開平5−198377号公報、特開平5−198378号公報、特開平5−214332号公報、特開平6−172751号公報シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、ペリノン誘導体(特開平2−289676号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890号公報、同3− 791号公報)、クマリン化合物(特開平2−191694号公報、同3− 792号公報)、希土類錯体(特開平1−256584号公報)、ジスチリルピラジン誘導体(特開平2−252793号公報)、p−フェニレン化合物(特開平3− 33183号公報)、チアジアゾロピリジン誘導体(特開平3− 37292号公報)、ピロロピリジン誘導体(特開平3− 37293号公報)、ナフチリジン誘導体(特開平3−203982号公報)、シロール誘導体(日本化学会第70春季年会,2D1 02及び2D1 03,1996年)などが挙げられる。
【0029】
また、前述の正孔輸送層材料のうち、蛍光性を有する芳香族アミン系化合物も発光層材料として用いることが出来る。
発光層5の膜厚は、通常、3 〜200 nm、好ましくは5 〜100 nmである。
発光層も正孔輸送層と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
【0030】
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素をドープすること(J. Appl. Phys., 65巻, 3610頁, 1989年)等が行われている。この方法の利点は、
1)高効率の蛍光色素により発光効率が向上すること、
2)蛍光色素の選択により発光波長が可変であること、
3)濃度消光を起こす蛍光色素も使用可能であること、
4)薄膜性のわるい蛍光色素も使用可能であること、
等が挙げられる。
【0031】
上述のドーピング手法は、発光層5にも適用でき、ドープ用材料としては、クマリン以外にも各種の蛍光色素が使用できる。例えば、青色発光を与える蛍光色素として、ペリレン、ピレン、アントラセンおよびそれらの誘導体等、緑色蛍光色素として、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等、黄色蛍光色素として、ルブレン、ペリミドン誘導体等、赤色蛍光色素として、DCM等のベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0032】
上記のドープ用蛍光色素以外にも、ホスト材料に応じて、レーザー研究,8巻, 694頁, 803頁, 958頁(1980年);同9巻,85頁(1981年)、に列挙されている蛍光色素が発光層用のドープ材料として使用することができる。
ホスト材料に対して上記蛍光色素がドープされる量は、10-3〜10重量%が好ましい。
【0033】
上述の蛍光色素を発光層のホスト材料にドープする方法を以下に説明する。
塗布の場合は、前記発光層ホスト材料と、ドープ用蛍光色素、さらに必要により、電子のトラップや発光の消光剤とならないバインダー樹脂や、レベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を添加し溶解した塗布溶液を調整し、スピンコート法などの方法により正孔輸送層4上に塗布し、乾燥して発光層5を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔/電子移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、50重量%以下が好ましい。
【0034】
真空蒸着法の場合には、前記ホスト材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、ドープする蛍光色素を別のるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-6Torr程度にまで排気した後、各々のるつぼを同時に加熱して蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に層を形成する。また、他の方法として、上記の材料を予め所定比で混合したものを同一のるつぼを用いて蒸発させてもよい。
【0035】
発光層5の上には正孔阻止層6が設けられる。正孔阻止層6は、正孔輸送層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。また、発光層5で再結合による生成するエキシトンを発光層内に閉じこめるために、発光層材料よりは広いバンドギャップを有することが必要である。この場合のバンドギャップは、電気化学的に決定される酸化電位−還元電位の差、または、光吸収端から求められる。正孔阻止層は電荷キャリアとエキシトンの両方を発光層内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
【0036】
このような条件を満たす正孔阻止層材料としては、以下の一般式(I)で表されるアルミニウム混合配位子錯体または、一般式(II)で表されるアルミニウム二核錯体が挙げられる。
【0037】
【化7】
Figure 0003933789
【0038】
【化8】
Figure 0003933789
【0039】
【化9】
Figure 0003933789
【0040】
前記一般式(I)は混合配位子型のアルミニウム錯体を表し、式中、R1 〜R6 としては、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリル基、シアノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、α−ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、各々のRは同一でも異なるものであってもよく、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1から6のアルキル基、メトキシ基、フェニル基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。Xとしては、前記一般式(Ia)〜(Ic)で表される置換基から選ばれるが、上記一般式中、Ar1〜Ar5は各々独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0041】
前記アルミニウム混合配位子錯体の具体例としては、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(メタ−クレゾラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,3-ジメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,6-ジメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(3,4-ジメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(3,5-ジメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(3,5-ジ-tert-ブチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,6-ジフェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,4,6-トリフェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,4,6-トリメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,3,6-トリメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2,3,5,6-テトラメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(1-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(トリス(4,4-ビフェニル)シラノラト)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8- キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8- キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8- キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8- キノリノラト)(3,5-ジメチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8- キノリノラト)(3,5-ジ-tert-ブチルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-4- エチル-8- キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-4- メトキシ-8- キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-5- シアノ-8- キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-6- トリフルオロメチル-8- キノリノラト)(2-ナフトラト)アルミニウム等が挙げられる。特に好ましくは、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(2-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウムが挙げられる。
【0042】
前記一般式(II)は8−ヒドロキシキノリン誘導体を配位子とするアルミニウム二核錯体を表し、式中、R1 〜R6 は前記一般式(I)と同じ置換基を表す。前記アルミニウム二核錯体の具体例としては、ビス(2-メチル-8- キノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(2-メチル-8- キノリラト)アルミニウム、ビス(2,4-ジメチル-8- キノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(2,4-ジメチル-8- キノリラト)アルミニウム、ビス(4-エチル-2- メチル-8- キノリノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(4-エチル-2- メチル-8- キノリノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-4- メトキシキノリノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(2-メチル-4- メトキシキノリノラト)アルミニウム、ビス(5-シアノ-2- メチル-8- キノリノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(5-シアノ-2- メチル-8- キノリノラト)アルミニウム、ビス(5-クロロ-2- メチル-8- キノリノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(5-クロロ-2- メチル-8- キノリノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-5- トリフルオロメチル-8- キノリノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(2-メチル-5- トリフルオロメチル-8- キノリノラト)アルミニウム等が挙げられる。特に好ましくは、ビス(2-メチル-8- キノラト)アルミニウム- μ- オキソ−ビス−(2-メチル-8- キノリラト)アルミニウムが挙げられる。
【0043】
正孔阻止層6の膜厚は、通常、 0.3〜 100nm、好ましくは 0.3〜30nm、更に好ましくは 0.5〜10nmである。正孔阻止層も正孔輸送層と同様の方法で、塗布法あるいは真空蒸着法により形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
有機電界発光素子の発光効率をさらに向上させる方法として、正孔阻止層6の上にさらに電子注入層7を積層することもできる(図2及び3参照)。この電子注入層7に用いられる化合物には、電子親和力が大きく陰極からの電子注入が容易で、電子の輸送能力がさらに大きいことが要求される。この様な電子注入材料としては、既に電子輸送層材料として挙げた8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体、オキサジアゾール誘導体(Appl. Phys. Lett., 55 巻, 1489頁, 1989年他)やそれらをポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂に分散した系(Appl. Phys. Lett. ,61巻,2793頁, 1992年)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N'- ジシアノアントラキノンジイミン(Phys. Stat. Sol. (a),142 巻, 489 頁, 1994年)、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられるが、好ましくは、8−ヒドロキシキノリン誘導体を配位子とするアルミニウム錯体等の金属錯体が挙げられる。電子注入層7の膜厚は、通常、5 〜200nm 、好ましくは 10 〜100nm である。
【0044】
陰極8は、正孔阻止層6(図1)または電子注入層7(図2、図3)に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。陰極8の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0045】
尚、図1とは逆の構造、すなわち、基板上に陰極8、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2から図3に示した前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
【0046】
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
本発明においては、以上の様に、有機電界発光素子における前述の正孔阻止層に前記一般式(I)または(II)で表される化合物を用いることにより、30nm以下の極めて薄い正孔阻止層においても、高い発光効率で安定した発光特性をもたらすことができる。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
実施例1
図3に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を 120nm堆積したもの(ジオマテック社製;電子ビーム成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行って、真空蒸着装置内に設置した。上記装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が2x10-6Torr(約2,7x10-4Pa)以下になるまで液体窒素トラップを備えた油拡散ポンプを用いて排気した。
上記装置内に配置されたモリブデンボートに入れた以下に示す銅フタロシアニン(H−1)(結晶形はβ型)を加熱して蒸着を行った。
【0048】
【化10】
Figure 0003933789
【0049】
真空度2x10-6Torr(約2.7x10-4Pa)、蒸着速度0.1 〜0.2nm /秒で蒸着を行ない、膜厚20nmの陽極バッファ層3を得た。
次に、前記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた、以下に示す、4,4'- ビス[N-(1-ナフチル)-N- フェニルアミノ]ビフェニル(H−2)をるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行った。
【0050】
【化11】
Figure 0003933789
【0051】
この時のるつぼの温度は、250 〜260 ℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度1.7x10-6Torr(約2.3x10-4Pa)、蒸着速度0.3 〜0.6nm /秒で膜厚60nmの正孔輸送層4を得た。
続いて、発光層5のホスト材料として、以下の構造式に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体、Al (C9 6 NO)3 (E−1)、
【0052】
【化12】
Figure 0003933789
【0053】
および、ドープ用蛍光色素として以下に示すジフェニルテトラセン(D−1)を上記装置内に配置された異なるセラミックるつぼに入れ、2元蒸着法により正孔輸送層の上に積層した。
【0054】
【化13】
Figure 0003933789
【0055】
この時のホスト化合物(E−1)のるつぼの温度は、290 〜300 ℃の範囲で制御し、ドープ色素(D−1)のるつぼ温度は 120〜130 ℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度を1.8x10-6Torr(約2.4x10-4Pa)、ホスト化合物(E−1)の蒸着速度を0.3 〜0.6nm /秒として、ドープ色素(D−1)が 1.4重量%、ホスト化合物(E−1)に対してドープされた膜厚30nmの発光層5を得た。ホスト化合物の光吸収端から求めたバンドギャップは2.61eV、理研計器製の大気下光電子分光装置(AC−1)を用いて決定したイオン化ポテンシャルは5.41eVであった。
引き続き、上記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた、以下に示す、ビス(2-メチル-8- キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム(HB−1)を、るつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して真空蒸着した。
【0056】
【化14】
Figure 0003933789
【0057】
この時の(HB−1)のるつぼの温度は、180 〜190 ℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度を1.8x10-6Torr(約2.4x10-4Pa)、(HB−1)の蒸着速度を0.2 〜0.3nm /秒として、膜厚20nmの正孔阻止層6を得た。光吸収端から求めたこの化合物のバンドギャップは2.75eV、理研計器製の大気下光電子分光装置(AC−1)を用いて決定したイオン化ポテンシャルは5.51eVであった。
【0058】
有機層の最後に、電子注入層7の材料として、前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(E−1)を用いて発光層5と同様にして蒸着を行った。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は 290〜 300℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は1.8x10-6Torr(約2.4x10-4Pa)、蒸着速度は0.2 〜0.4nm /秒で、膜厚は25nmの電子注入層7を形成した。
上記の陽極バッファ層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6及び電子注入層7を各々真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
【0059】
ここで、電子注入層7までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2x10-6Torr(約2.7x10-4Pa)以下になるまで排気した。続いて、陰極8として、マグネシウムと銀の合金電極を2元同時蒸着法によって膜厚80nmとなるように蒸着した。蒸着はモリブデンボートを用いて、真空度1x10-5Torr(約1.3x10-3Pa)、マグネシウムの蒸着速度を0.4 〜0.6nm /秒で行った。また、マグネシウムと銀の原子比は10:1.4 とした。
【0060】
上記のマグネシウム・銀合金の陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mmx2mm のサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性を表−1に示す。表−1において、発光輝度は250mA /cm2 の電流密度での値、発光効率は 100cd/m2での値、輝度/電流は輝度−電流密度特性の傾きを、電圧は 100cd/m2での値を各々示す。この素子は 510nmに発光極大を有するスペクトルを有する緑色発光を示した。
【0061】
実施例2
正孔阻止層6の膜厚を 2nmにして、電子注入層7の膜厚を43nmにした他は、実施例1と同様にして素子を作製した。この素子の発光特性を表−1に示す。正孔阻止層は極めて薄い膜厚でも効果を有することが判明した。
【0062】
比較例1
正孔阻止層を用いず、電子注入層7の膜厚を45nmにした他は、実施例1と同様にして素子を作製した。この素子の発光特性を表−1に示す。実施例1および2と比較して、発光輝度および発光効率ともに低く、正孔阻止層の効果は明らかである。
【0063】
比較例2
正孔阻止層として、以下の構造式に示すトリス(5,- クロル-8- ヒドロキシキノリノ)アルミニウムを用いた他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0064】
【化15】
Figure 0003933789
【0065】
光吸収端から求めたこの化合物バンドギャップは2.60eV、理研計器製の大気下光電子分光装置(AC−1)を用いて決定したイオン化ポテンシャルは5.60eVであった。この素子の発光効率は実施例1の約50%に低下し、電圧も2V高くなっていた。正孔阻止層の効果は、イオン化ポテンシャルの値では決まらないことは明らかである。
【0066】
実施例3
発光層のドープ色素として、以下の構造式に示すルブレン(D−2)を用いた他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0067】
【化16】
Figure 0003933789
【0068】
この素子の発光特性を表−2に示す。発光極大は 565nmで黄色の発光を示した。
【0069】
比較例3
正孔阻止層を用いず、電子注入層7の膜厚を45nmにした他は、実施例3と同様にして素子を作製した。この素子の発光特性を表−2に示す。実施例3と比較して、発光輝度および発光効率ともに低く、正孔阻止層の効果は明らかである。
【0070】
実施例4
発光層のドープ色素として、以下の構造式に示すアザベンゾチオキサンテン誘導体(D−3)を用いた他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0071】
【化17】
Figure 0003933789
【0072】
この素子の発光特性を表−2に示す。発光極大は 625nmで赤色の発光を示した。
【0073】
比較例4
正孔阻止層を用いず、電子注入層7の膜厚を45nmにした他は、実施例4と同様にして素子を作製した。この素子の発光特性を表−2に示す。実施例4と比較して、発光輝度および発光効率ともに低く、正孔阻止層の効果は明らかである。
【0074】
実施例5
実施例2で作製した素子を光硬化樹脂によりガラス板間に挟んで封止した後、15mA/cm2の電流密度で定電圧駆動したところ、初期輝度900cd/m2で、輝度の半減時間は3000時間であった。
【0075】
【表1】
Figure 0003933789
【0076】
【表2】
Figure 0003933789
【0077】
【発明の効果】
本発明の有機電界発光素子によれば、発光層を正孔輸送層と特定のアルミニウム混合配位子錯体またはアルミニウム二核錯体からなる正孔阻止層の間に挟持することにより、再結合発光の効率が高く、駆動時に安定な発光素子を得ることができる。
従って、本発明による有機電界発光素子はフラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機電界発光素子の一例を示した模式断面図。
【図2】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図。
【図3】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 陽極バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子注入層
8 陰極

Claims (4)

  1. 基板上に、上からまたは下から順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、陰極を積層してなる有機電界発光素子であって、該正孔阻止層が、発光層材料より広いバンドギャップを有し、且つ、下記一般式(I)で表されるアルミニウム混合配位子錯体
    Figure 0003933789
    (式中、R1 〜R6 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリル基、シアノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、α−ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Xは、下記一般式(Ia)、(Ib)、または(Ic)を表す。)
    Figure 0003933789
    (式中、Ar1〜Ar5は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。但し、式( Ia )中のA r 1 基、式( Ib )中のC(O)−A r 2 基、及び式( Ic )中のSi(A r 3 )(A r 4 )−A r 5 基が電子吸引性基である場合を除く。
    または下記一般式(II)で表されるアルミニウム二核錯体
    Figure 0003933789
    (式中、R1 〜R6 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、α−ハロアルキル基、水酸基、置換基を有していてもよいアミド基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
    から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 正孔阻止層と陰極との間に電子注入層を設けることを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子。
  3. 電子注入層が8−ヒドロキシキノリンの金属錯体からなることを特徴とする請求項2記載の有機電界発光素子。
  4. 正孔阻止層の膜厚が、 0.5〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の有機電界発光素子。
JP11825198A 1997-05-19 1998-04-28 有機電界発光素子 Expired - Fee Related JP3933789B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11825198A JP3933789B2 (ja) 1997-05-19 1998-04-28 有機電界発光素子

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12841697 1997-05-19
JP9-128416 1997-05-19
JP11825198A JP3933789B2 (ja) 1997-05-19 1998-04-28 有機電界発光素子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1140367A JPH1140367A (ja) 1999-02-12
JP3933789B2 true JP3933789B2 (ja) 2007-06-20

Family

ID=26456217

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11825198A Expired - Fee Related JP3933789B2 (ja) 1997-05-19 1998-04-28 有機電界発光素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3933789B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005100977A (ja) * 2003-08-29 2005-04-14 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 電界発光素子およびそれを用いた発光装置
KR101246247B1 (ko) * 2003-08-29 2013-03-21 가부시키가이샤 한도오따이 에네루기 켄큐쇼 전계발광소자 및 그것을 구비한 발광장치
JP2007073500A (ja) * 2005-08-11 2007-03-22 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 発光素子、発光装置及び電子機器

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1140367A (ja) 1999-02-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3855675B2 (ja) 有機電界発光素子
JP4058842B2 (ja) 有機電界発光素子
JP4003299B2 (ja) 有機電界発光素子
JP3945123B2 (ja) 有機電界発光素子
JPH11242996A (ja) 有機電界発光素子
JPH11329734A (ja) 有機電界発光素子
JP3845941B2 (ja) イミダゾール金属錯体及びそれを用いた有機電界発光素子
JP3988539B2 (ja) 有機電界発光素子
JP4066619B2 (ja) ビナフチル系化合物及びその製造方法並びに有機電界発光素子
JP2000150169A (ja) 有機電界発光素子
JP3750315B2 (ja) 有機電界発光素子
JP4135411B2 (ja) 非対称1,4−フェニレンジアミン誘導体、及びこれを用いた有機電界発光素子
JP4147621B2 (ja) 有機電界発光素子
JP3982164B2 (ja) 有機電界発光素子及びその製造方法
JP3807018B2 (ja) 有機電界発光素子及び蛍光材料
JP3903645B2 (ja) 有機電界発光素子
JP2004327166A (ja) 有機電界発光素子及びその製造方法
JP3933789B2 (ja) 有機電界発光素子
JP2000003790A (ja) 有機電界発光素子
JP3719328B2 (ja) 蛍光材料およびこれを用いた有機電界発光素子
JPH11354284A (ja) 有機電界発光素子
JP3757583B2 (ja) 有機電界発光素子
JPH11302639A (ja) 有機電界発光素子
JP2000243571A (ja) 有機電界発光素子
JPH11312587A (ja) 有機電界発光素子

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060117

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060308

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060404

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060720

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070314

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110330

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120330

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130330

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140330

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees