JP3772506B2 - キノリノール誘導体、その金属錯体およびそれを用いた有機電界発光素子 - Google Patents

キノリノール誘導体、その金属錯体およびそれを用いた有機電界発光素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なキノリノール誘導体とその金属錯体および有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、新規キノリノール誘導体およびこのキノリノール誘導体から得られるキノリノール金属錯体と、このキノリノール金属錯体を含有する陽極バッファ層を陽極と正孔輸送層との間に設けてなる、低電圧駆動と高い発光効率を長期間に亘って安定に維持し得る有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の薄膜型の電界発光素子として最も一般的なものは、無機材料のII−VI族化合物半導体であるZnS、CaS、SrS等に、発光中心であるMnや希土類元素(Eu、Ce、Tb、Sm等)をドープしたものである。しかし、これらの無機材料から作製した電界発光素子は、
50〜1000Hzの交流駆動が必要である、
駆動電圧が200 V程度と高い、
青色の発光材料として適当なものが無いためにフルカラー化が困難である、
周辺駆動回路のコストが高い、
という問題点を有している。
【0003】
近年、これらの問題点の改良のため、有機薄膜を用いた電界発光素子の開発が行われつつある。特に、発光効率を高めるために、電極からのキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設けた有機電界発光素子の開発(Appl. Phys. Lett., 51 巻, 913 頁,1987年)により、従来のアントラセン等の単結晶を用いた電界発光素子と比較して、発光効率の大幅な改善がなされ、実用特性に近づいている。
【0004】
有機電界発光素子の最大の課題は、駆動時の寿命である。駆動時の不安定性としては、発光輝度の低下、定電流駆動時の電圧上昇、非発光部分(ダークスポット)の発生等が挙げられる。これらの不安定性の原因はいくつか存在するが、一般に有機層の薄膜形状の劣化が支配的である。この薄膜形状の劣化は、素子駆動時の発熱による有機非晶質膜の結晶化(または凝集)等に起因すると考えられている。特に、駆動電圧の上昇については陽極と正孔輸送層とのコンタクトが重要である。
【0005】
そこで、陽極と正孔輸送層とのコンタクトを向上させるため両層の間に陽極バッファ層を設けることで、駆動電圧を低下させることが検討されている。この陽極バッファ層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点およびガラス転移温度が高いこと、好ましくは300℃以上の融点と100℃以上のガラス転移温度を有することが要求される。さらに、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
【0006】
従来、陽極バッファ層の材料としても種々のものが検討されており、例えばポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物(特開昭63−295695号公報)、スターバスト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)、ヒドラゾン化合物(特開平4−320483号公報)、アルコキシ置換の芳香族ジアミン誘導体(特開平4−220995号公報)、p-(9-アントリル)-N,N-ジ-p- トリルアニリン(特開平3−111485号公報)、ポリチエニレンビニレンやポリ−p−フェニレンビニレン(特開平4−145192号公報)、ポリアニリン(Appl. Phys.Lett., 64 巻,1245 頁, 1994年)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(特開平8− 31573号公報)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(第43回応用物理学関係連合講演会,27a-SY-9,1996年)などが報告されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、陽極と正孔輸送層との間に陽極バッファ層を介在させる方法において、ポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物を陽極バッファ層材料として用いた場合、これらの膜自体による光吸収のためにスペクトルが変化したり、外観上着色して透明でなくなるという問題がある。スターバスト型芳香族トリアミン、ヒドラゾン化合物、アルコキシ置換の芳香族ジアミン誘導体、p-(9-アントリル)-N,N-ジ-p-トリルアニリン等では、イオン化ポテンシャルが低く透明性がよいという利点はあるものの、ガラス転移点や融点が低いために耐熱性に劣り、連続駆動時の局所加熱に対する安定性が悪く、輝度低下や電圧上昇が問題になる。また、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリアニリン等のポリマーは通常スピンコートやディップコート法等の湿式法で形成されるために、陽極上に均一なコンタクトをもって膜形成することが困難であり、駆動寿命が改善されたという報告はない。
【0008】
有機電界発光素子の駆動時における発光特性の不安定性は、ファクシミリ、複写機、液晶ディスプレイのバックライト等の光源としては大きな問題であり、特にフルカラーフラットパネル・ディスプレイ等の表示素子としても望ましくない。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、低電圧、高発光効率で駆動させることができ、かつ長期間に亘って安定な発光特性を維持でき、発光の妨げにならない、耐熱性を有する新規な材料、およびこれを用いた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る新規な材料は、下記一般式(I)で表されるキノリノール誘導体および下記一般式(II)で表されるその金属錯体である。
【0011】
【化3】
Figure 0003772506
【0012】
【化4】
Figure 0003772506
【0013】
((I),(II)式中、Ar1およびAr2は、各々独立して置換基を有していてもよい芳香族基または芳香族複素環基を示し、R1〜R5(R1,R2,R3,R4,R5)はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。なお、R1とR2、R2とR3、或いはR4とR5とは環を形成していてもよく、また、R1〜R5のいずれかがアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、2級若しくは3級アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す場合には、このものは更にその炭化水素部分に置換基を有していてもよい。Mは、Be、Zn、Cd、Al、Ga、In、Sc、Y、Mg、Ca、Sr、Co、Cu、Ni、Sm、Eu、Si、Ge、SnまたはTbを示し、nは2から4までの整数を示す。)
上記キノリノール金属錯体は、上記キノリノール誘導体を金属塩または有機金属化合物と有機溶媒中で反応させて製造される。
【0014】
本発明の有機電界発光素子は上記キノリノール金属錯体を含有することを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明の有機電界発光素子は、対向する陽極と陰極との間に正孔輸送層および発光層を挟持してなる有機電界発光素子であって、陽極と正孔輸送層との間に、上記キノリノール金属錯体を含有する層を有することを特徴とする。
【0016】
陽極バッファ層は、陽極と正孔輸送層とのコンタクトを向上させ、エネルギー障壁を緩和するためのものである。本発明者らの検討により、本発明の上記キノリノール金属錯体は、陽極バッファ層としての条件を十分に満たし、陽極バッファ層材料としての特性に非常に優れていることがわかった。このキノリノール金属錯体は、前記一般式(II)に示す分子構造により、ガラス転移温度Tgを100℃以上と高くすることができ、この耐熱性の向上により容易には結晶化しない非晶質薄膜を与えることが可能で、正孔輸送層との分子の相互拡散を100℃以上の高温下でも十分に抑制することが出来る。
【0017】
したがって、対向する陽極と陰極との間に正孔輸送層および発光層を挟持する有機電界発光素子において、本発明に係るキノリノール金属錯体を含有させることにより、低電圧駆動と高い発光効率を長期間に亘って安定して維持することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に本発明の実施の形態ついて詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の新規キノリノール誘導体およびキノリノール金属錯体について説明する。
【0020】
本発明のキノリノール誘導体を示す前記一般式(I)およびキノリノール金属錯体を示す前記一般式(II)において、Ar1およびAr2は、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ピリジル基、チエニル基を示し、前記置換基としてはハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基が挙げられる。Ar1およびAr2は、特に好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基から選ばれる。
【0021】
1〜R5が表す置換基のうち、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、ターシャリーブチル基などの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基など上記のアルキル基に対応する炭素数1〜7のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などアルキル基の炭素数が1〜7のアルコキシカルボニル基が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基などが挙げられる。アルケニル基としてはビニル基、アリル基など炭素数2〜10の低級アルケニル基が挙げられる。アルキニル基としてはエチニル基、プロピニル基など炭素数2〜10のアルキニル基が挙げられる。アシル基としてはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基やビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。芳香族複素環基としてはピリジル基、キノリル基、チエニル基、カルバゾリル基などが挙げられる。2級または3級アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基など炭素数1〜7のアルキル基やアリール基を有するものが挙げられる。また、アミド基としてはアセチルアミノ基が、アルキルスルホニル基としてはメチルスルホニル基がそれぞれ挙げられる。
【0022】
上記のR1〜R5が表す置換基の炭化水素部分には更に他の置換基が結合していてもよく、このような置換基としてはハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。具体例としてはクロロメチル基、フェニルエチニル基、メトキシフェニル基などが挙げられる。また、R1〜R5が表す置換基がアラルキル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基などである場合には、これらに結合する置換基としては、上記したもの以外にもアルキル基や1級ないし3級のアミノ基なども挙げられる。
【0023】
また、R1とR2、R2とR3、R4とR5とがそれぞれ結合して形成する環としてはベンゼン環が挙げられる。
【0024】
好ましくは、R1〜R5は、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、アルキル基、アルコキシ基のいずれかである。
【0025】
本発明のキノリノール誘導体は、例えば、以下の経路で合成される。すなわち、まず、下記一般式(III)で表される8−キノリノール誘導体を、クロロホルム中でN−コハク酸イミドと反応させ(J. Org. Chem., 35巻, 3993頁, 1970年)、下記一般式(IV)で表される5−ヨード−8−キノリノール誘導体を合成し、下記一般式(V)で表される芳香族アミン誘導体とUllmann反応(Organic Synthesis,1巻,544頁)にて反応させることにより、上記一般式(I)で表されるキノリノール誘導体を得る。
【0026】
【化5】
Figure 0003772506
【0027】
【化6】
Figure 0003772506
【0028】
【化7】
Figure 0003772506
【0029】
この際、8位の水酸基を保護した後に芳香族アミン誘導体と反応させることは、収率向上のためには有効である。水酸基の保護としては例えば、(ブロモメチル)シクロプロパンを用いる方法(Chem. Pharm. Bull., 23巻, 2878頁, 1975年)が挙げられる。
【0030】
本発明に係るキノリノール誘導体の好ましい具体例を、下記の表1〜表14に各置換基を示すことにより例示するが、本発明のキノリノール誘導体はなんら下記の例示化合物にに限定されものではない。なお、各表中、R1〜R5について、置換基が特に表記されていない場合、水素原子が置換している。
【0031】
【表1】
Figure 0003772506
【0032】
【表2】
Figure 0003772506
【0033】
【表3】
Figure 0003772506
【0034】
【表4】
Figure 0003772506
【0035】
【表5】
Figure 0003772506
【0036】
【表6】
Figure 0003772506
【0037】
【表7】
Figure 0003772506
【0038】
【表8】
Figure 0003772506
【0039】
【表9】
Figure 0003772506
【0040】
【表10】
Figure 0003772506
【0041】
【表11】
Figure 0003772506
【0042】
【表12】
Figure 0003772506
【0043】
【表13】
Figure 0003772506
【0044】
【表14】
Figure 0003772506
【0045】
このようなキノリノール誘導体の金属錯体である前記一般式(II)で表される本発明のキノリノール金属錯体において、Mの金属原子としては、好ましくは、Be、Zn、Cd、Al、Ga、In、Mgが挙げられる。nは金属原子の価数により、2価の金属の場合は2を、3価の金属の場合は3を、4価の金属の場合は4を示す。金属原子Mは更に好ましくは、Zn、Al、Ga、Mgから選ばれる。
【0046】
前記一般式(II)で表される本発明のキノリノール金属錯体は、対応する金属塩または有機金属化合物と前記一般式(I)で表されるキノリノール誘導体を有機溶媒中で反応させることにより製造される。
【0047】
前記一般式(I)で表されるキノリノール誘導体と金属錯体を形成する金属塩としては、塩化物、臭化物等のハロゲン化塩、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。また、有機金属化合物としては金属アルコキシド、好ましくは、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド、t-ブトキシドが挙げられる。
【0048】
キノリノール金属錯体形成反応に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよく、必要に応じて脱水等の処理を行ってもよい。
【0049】
錯体形成反応には、必要に応じて、冷却、加熱を行ってもよい。また、金属錯体を沈殿させるために、酸或いは塩基性の水溶液を反応溶液に添加したり、溶媒を留去したりしてもよい。
【0050】
反応時間は用いる原料によっても異なるが、通常は1〜24時間である。
【0051】
本発明に係る有機電界発光素子は、このような本発明のキノリノール金属錯体を含有していること以外は、公知の素子と同様の構造とすることができ、且つ公知の手法により製作することができる。
【0052】
次に、前記一般式(II)で表されるキノリノール金属錯体を用いた本発明の有機電界発光素子の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0053】
図1,2は本発明の有機電界発光素子の実施の形態を示す模式的な断面図であり、1は基板、2は陽極、3は陽極バッファ層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を各々示す。
【0054】
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英板やガラス板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂シートが好ましい。なお、基板に合成樹脂を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。すなわち、基板のガスバリヤ性が低いと、基板を通過する外気により有機電界発光素子が劣化することがある。従って、基板に合成樹脂を用いる場合には、基板の片面または両面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を高めるのが好ましい。
【0055】
基板1上に設けられた陽極2は、正孔輸送層4への正孔注入の役割を果たすものである。陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物などの導電性の金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2の形成は、通常、基板1上へのスパッタリング、真空蒸着などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などで形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液中に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することができる。さらに、導電性高分子で形成する場合には、電解重合により基板1上に直接重合薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子溶液を塗布する方法によることもできる(Appl. Phys. Lett., 60 巻, 2711頁, 1992年)。陽極2は通常は単層構造であるが、複数の材料の積層構造とすることも可能である。陽極2は、不透明であってもよいが、透明であることが好ましい。通常は、可視光の透過率が60%以上、特に80%以上であることが好ましく、陽極2の厚みは、この透明性を確保するため、5〜1000nm、特に10〜500nm程度とするのが好ましい。不透明でよい場合、陽極2の厚さは任意であり、所望ならば金属で形成して基板1を兼ねてもよい。
【0056】
陽極バッファ層3は、陽極2と正孔輸送層4とのコンタクトを向上させ、エネルギー障壁を緩和するためのものである。本発明においては、この陽極バッファ層3の材料として本発明のキノリノール金属錯体を用いる。
【0057】
陽極バッファ層3は、後述の正孔輸送層4と同様にして形成することが可能であるが、通常は、真空蒸着法が採用される。
【0058】
キノリノール金属錯体を含有する陽極バッファ層3の膜厚は、通常、3〜100nm、好ましくは10〜50nmである。
【0059】
この陽極バッファ層上の正孔輸送層4は、陽極2からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料で構成することが必要である。従って、正孔輸送層4を形成する材料には、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。さらに電界発光素子の主要な用途の一つと考えられている車載表示用には、耐熱性に富むことが要求され、この場合、正孔輸送層4を形成する材料は85℃以上のガラス転移温度Tgを有するものが望ましい。
【0060】
このような正孔輸送材料としては、従来から提案されている各種のものを用いることができる。例えば、1,1-ビス(4-ジ-p- トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報)、4,4'−ビス[N-(1-ナフチル)-N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774 号)、N,N'−ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)ビフェニル-4,4'-ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625 号)、α,α,α',α'-テトラメチル−α,α'-ビス(4-ジ-p−トリルアミノフェニル)-p−キシレン(特開平3−269084号公報)、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報)、チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304466号公報)、スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473 号公報)、トリアミン化合物(特開平5−239455号公報)、ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報)、N,N,N-トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報)、フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報)、ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報)、ヒドラゾン化合物(特開平2−311591号公報)、シラザン化合物(米国特許第4,950,950 号公報)、シラナミン誘導体(特開平6−49079 号公報)、ホスファミン誘導体(特開平6−25659 号公報)、キナクリドン化合物等が挙げられる。これらの化合物は、所望ならば混合して用いることもできる。
【0061】
高分子の正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールやポリシラン(Appl. Phys. Lett. ,59巻,2760頁,1991年)、ポリフォスファゼン(特開平5−310949号公報)、ポリアミド(特開平5−310949号公報)、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953 号公報)、トリフェニルアミン骨格を有する高分子(特開平4−133065号公報)、トリフェニルアミン単位をメチレン基等で連結した高分子(Synthetic Metals,55-57 巻,4163頁,1993年)、芳香族アミンを含有するポリメタクリレート(J. Polym. Sci., Polym. Chem. Ed.,21巻,969 頁,1983年)等が挙げられる。
【0062】
これらの材料で正孔輸送層4を形成するには、塗布法あるいは真空蒸着法により、陽極2上にこれらの正孔輸送材料の薄層を積層すればよい。
【0063】
塗布法による場合には、正孔輸送材料を溶媒に溶解し、さらに必要によりこれに正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を添加して調製した塗布溶液を、スピンコート法など適宜の方法により陽極2上に塗布し、乾燥すればよい。ここで、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が用いられる。正孔輸送層4に占めるバインダー樹脂量が多いと正孔移動度が低下するので、バインダー樹脂は正孔輸送層4の50重量%以下となるように用いるのが好ましい。
【0064】
真空蒸着法による場合には、正孔輸送材料を収容したルツボを真空容器内に設置し、陽極バッファ層3をルツボに対向させて配置する。真空容器内を真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して正孔輸送材料を蒸発させ、発生した蒸気を陽極バッファ層3上に蒸着させる。
【0065】
上記正孔輸送層4には、さらに、アクセプタとして、芳香族カルボン酸の金属錯体および/または金属塩(特開平4−320484号公報)、ベンゾフェノン誘導体およびチオベンゾフェノン誘導体(特開平5−295361号公報)、フラーレン類(特開平5−331458号公報)等を10-3〜10重量%の濃度でドープして、フリーキャリアとしての正孔を生成させてもよい。このようにすると一般に駆動電圧を低くすることができる。
【0066】
正孔輸送層4の膜厚は、通常、10〜300nm、好ましくは30〜100nmである。このように薄い膜厚の正孔輸送層は、薄膜を一様に形成することが容易な真空蒸着法により形成するのが好ましい。
【0067】
発光層5は、電界を与えられた電極間において、陰極7からの電子を効率よく正孔輸送層4の方向に輸送することができる化合物により形成される。
【0068】
発光層5に用いられる材料としては、陰極7からの電子注入効率が高く、かつ、注入された電子を効率よく輸送することができるものであることが必要である。そのためには、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいものであることが要求される。
【0069】
公知の発光層材料としては、例えばテトラフェニルブタジエンなどの芳香族化合物(特開昭57−51781 号公報)、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、混合配位子アルミニウムキレート錯体(特開平5−198377号公報、特開平5−198378号公報、特開平5−214332号公報、特開平6−172751号公報)、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、ペリノン誘導体(特開平2−289676号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890号公報、同3− 791号公報)、クマリン化合物(特開平2−191694号公報、同3− 792号公報)、希土類錯体(特開平1−256584号公報)、ジスチリルピラジン誘導体(特開平2−252793号公報)、p−フェニレン化合物(特開平3− 33183号公報)、チアジアゾロピリジン誘導体(特開平3−37292号公報)、ピロロピリジン誘導体(特開平3− 37293号公報)、ナフチリジン誘導体(特開平3−203982号公報)、シロール誘導体(日本化学会第70春季年会,2D1 02および2D1 03 , 1996 年)などが挙げられる。
【0070】
素子の駆動寿命を改善する目的においても、上記発光層材料をホスト材料として、蛍光色素をドープすることは有効である。例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体(特開平4−335087号公報)、キナクリドン誘導体(特開平5− 70773号公報)、ペリレン等の縮合多環芳香族環(特開平5−198377号公報)を、ホスト材料に対して0.1〜10重量%ドープすることにより、素子の発光特性、特に駆動安定性を大きく向上させることができる。
【0071】
発光層5の膜厚は、通常、10〜200nm、好ましくは30〜100nmである。
【0072】
発光層5も正孔輸送層4と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。発光層のホスト材料に上記ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の蛍光色素をドープする方法としては、共蒸着による方法や、蒸着源を予め所定の濃度で混合しておく方法がある。
【0073】
上記ドーパントが発光層中にドープされる場合、発光層の膜厚方向において均一にドープされるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。例えば、正孔輸送層4との界面近傍にのみドープされていても、逆に、陰極7界面近傍にドープされていてもよい。
【0074】
有機電界発光素子の発光効率を向上させる方法として、発光層5の上に、図2に示す如く、さらに電子輸送層6を積層することもできる。電子輸送層6を形成する材料には、陰極7からの電子注入が容易で、電子の輸送能力がさらに大きいことが要求される。この様な電子輸送材料としては、既に発光層の形成材料として挙げた8−ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジアゾール誘導体(Appl. Phys. Lett., 55 巻, 1489頁,1989年他)やそれらをポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂に分散したもの(Appl. Phys. Lett., 61 巻, 2793頁,1992年)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10-N,N'-ジシアノアントラキノンジイミン(Phys.Stat. Sol. (a), 142 巻, 489 頁,1994年)、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
【0075】
電子輸送層6の膜厚は、通常、5〜200nm、好ましくは10〜100nmである。
【0076】
陰極7は、発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極7の材料には、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
【0077】
陰極7の膜厚は通常、陽極2と同様である。
【0078】
低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す上で有効である。この目的のためには、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0079】
さらに、陰極7と発光層5または電子輸送層6との界面にLiF、Li2O等の極薄膜(膜厚0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる上で有効な方法である(Appl.Phys. Lett., 70巻,152頁,1997年;IEEE Trans. Electron. Devices,44巻,1245頁,1997年)。
【0080】
図1,2は、本発明の有機電界発光素子に採用される素子構造の一例を示すものであって、本発明は何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、図1とは逆の構造、すなわち、基板上に陰極7、発光層5、正孔輸送層4、陽極バッファ層3、陽極2の順に積層することも可能であり、少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2に示したものについても、各構成層を逆の構造に積層することも可能である。
【0081】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例1: 5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−キノリノール(化合物(1))の合成
予め冷却した8-キノリノール15.43g(106mmol)のクロロホルム100ml溶液に、N-ヨードコハク酸イミド24.08g(107mmol)を3℃で加えて、5℃を維持しながら4時間攪拌した。反応終了後、酢酸ナトリウムの5重量%水溶液100mlと亜硫酸ナトリウムの5重量%水溶液100mlで反応溶液を洗浄した。反応溶液は、一晩放置し、再結晶させた。生じた沈殿を冷クロロホルムで洗浄し、緑褐色針状結晶の5−ヨード−8−キノリノール25.54gを得た(収率85%,融点124℃)。
【0083】
続いて、得られた5−ヨード−8−キノリノール9.22g(34mmol)の乾燥テトラヒドロフラン47ml溶液をターシャリーブトキシカリウム4.23g(34mmol)の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド25ml溶液中に6℃で攪拌しながら加え、室温に戻してから(ブロモメチル)シクロプロパン5.05g(37mmol)の乾燥テトラヒドロフラン13mlを加えた。反応溶液を40℃で3時間加熱攪拌した後、臭素1.1g(7mmol)の乾燥テトラヒドロフラン10ml溶液を加えて、さらに40℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、氷水中に放出し、クロロホルムで分液、1規定の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄後、溶媒を除去して5−ヨード−8−(シクロプロピル)メトキシキノリン7.00gを得た(収率63%)。
【0084】
得られた5−ヨード−8−(シクロプロピル)メトキシキノリン3.28g(10mmol)、ジフェニルアミン2.09g(12mmol)、炭酸カリウム2.28g(17mmol)、銅粉1.26g(20mmol)、18-クラウン-6-エーテル0.32g(1mmol)を25mlのニトロベンゼンに加え、窒素下、 170℃で7時間反応させた。反応終了後、水蒸気蒸留を行って溶媒を留去し、残留物をトルエンで分液した。その後、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.23gの茶色油状の5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−(シクロプロピル)メトキシキノリンを得た(収率33%)。
【0085】
得られた5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−(シクロプロピル)メトキシキノリン1.23g(3mmol)をメタノール24mlと濃塩酸24mlの混合溶媒中に加え、2時間還流攪拌した。反応溶液はアンモニア水溶液で中和し、生じた沈殿を水洗、乾燥して、黄土色粉末状の、下記構造式で表される5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−キノリノール(化合物(1))0.87gを得た(収率83%)。
【0086】
【化8】
Figure 0003772506
【0087】
この化合物の質量分析を行ったところ、分子量が312であり、さらにIRスペクトル(図3に示す)により目的化合物であることを確認した。この化合物の融点は158℃であった。
【0088】
実施例2: トリス(5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−キノリノラト)アルミニウム(化合物(1)のアルミニウム錯体)の合成
窒素雰囲気下で、乾燥トルエン15mlに、アルミニウムイソプロポキシド 0.24g(1.2mmol)を加え、室温で10分間攪拌して溶解させた。この溶液に、5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−キノリノール(化合物(1))0.96g(3.1mmol)を乾燥トルエン25mlに溶解した溶液を滴下した。次いで、攪拌下に4時間還流した後放冷した。溶媒を留去した後に、析出した固体をアセトンで洗浄し、生成した沈澱を濾取し、乾燥して橙色の結晶 0.55gを得た。この結晶を昇華精製したところ、橙色の結晶 0.21gが得られた(収率18%)。このものは質量分析による分子量は960であり、下記構造式で表される、前記化合物(1)のアルミニウム錯体であることが確認された。
【0089】
【化9】
Figure 0003772506
【0090】
このアルミニウム錯体のFT−IRスペクトルを図4に示す。この化合物をセイコー電子社製DSC−20により示差熱分析測定したところ、Tgは139℃と高い値を示した。また、融点は304℃であった。
【0091】
実施例3: ビス(5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−キノリノラト)亜鉛(化合物(1)の亜鉛錯体)の合成
5−(N,N-ジフェニル)アミノ−8−キノリノール(化合物(1))0.83g(2.7mmol)のアセトン65ml:エタノール50mlの混合溶液と、酢酸亜鉛0.25g(1.3mmol)をメタノール16ml中に溶かしたものを混合し、アンモニア水溶液12mlを加えて反応混合物を塩基性にした。生成した沈澱を脱塩水、アセトンで洗浄後、乾燥して橙色の結晶0.42gを得た。この結晶を昇華精製したところ、橙色の結晶 0.34gが得られた(収率37%)。このものは質量分析による分子量は 686であり、下記構造式で表される、前記化合物(1)の亜鉛錯体であることが確認された。
【0092】
【化10】
Figure 0003772506
【0093】
この亜鉛錯体のFT−IRスペクトルを図5に示す。この化合物は昇華性が高く、融点を示さなかった。昇華温度は常圧で449℃であった。
【0094】
実施例4
ガラス基板をアセトンで超音波洗浄した後、純水で水洗し、次いでイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素で乾燥した後、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が2×10-6Torr以下になるまで液体窒素トラップを備えた油拡散ポンプを用いて排気した。上記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた化合物(1)のアルミニウム錯体を、るつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行った。この時のるつぼの温度は、272〜306℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度は1.4×10-6Torr(約1.9×10-4Pa)で、蒸着速度 0.1〜0.3nm/秒で膜厚98nmの薄膜を得た。この薄膜試料のイオン化ポテンシャルを理研計器(株)製の紫外線電子分析装置(AC−1)を用いて測定したところ、5.01eVと低い値を示した。また、この薄膜試料を室温大気中で300日間保存しても、膜の形状は均一なままで安定で、結晶化はみられなかった。この薄膜試料の可視光領域における光透過率を図6に示す。可視光領域での透過率は80%以上であり、ほぼ透明である。
【0095】
実施例5
蒸着原料として化合物(1)の亜鉛錯体を用いた他は実施例4と同様にしてガラス基板上に膜厚73nmの一様で透明な膜を得た。この薄膜試料のイオン化ポテンシャルを理研計器(株)製の紫外線電子分析装置(AC−1)を用いて測定したところ、4.84eVと低い値を示した。また、この薄膜試料を室温大気中で 300日間保存しても、膜の形状は均一なままで安定で、結晶化はみられなかった。この薄膜試料の可視光領域における光透過率を図6に示す。可視光領域での透過率は80%以上であり、ほぼ透明である。
【0096】
比較例1
蒸着原料として下記構造式で表される銅フタロシアニン(B−1)(結晶形はβ型)を用いた他は実施例4と同様にしてガラス基板上に膜厚80nmの膜を得た。
【0097】
【化11】
Figure 0003772506
【0098】
この薄膜試料の可視光領域における光透過率を図6に示す。480〜650nmの範囲で吸収があり、フルカラー表示を考えた場合には問題がある透過特性である。
【0099】
実施例6
図1に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
【0100】
ガラス基板上に厚さ120nmのインジウム・スズ酸化物の透明導電膜が形成されている電極付基板(ジオマテック社製、電子ビーム成膜品、シート抵抗15Ω)を、常用のフォトリソグラフィと塩酸エッチングにより2mm幅のストライプにパターニングした。これにアセトン中での超音波洗浄、純水での洗浄、およびイソプロピルアルコール中での超音波洗浄を順次施し、窒素ガスを吹きつけて乾燥した後、大気中で紫外線を照射することにより発生させたオゾンを用いて洗浄した。
【0101】
化合物(1)のアルミニウム錯体を、タンタル線ヒーターを備えたセラミック製るつぼに入れて真空蒸着装置内に設置し、るつぼに対向させて上記の処理を経た基板の電極面を配置した。この真空蒸着装置を油回転ポンプで排気した後、液体窒素トラップを備えた油拡散ポンプで装置内の真空度が2×10-6Torr以下になるまで排気し、るつぼ内の化合物(1)のアルミニウム錯体をるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度は2.4×10-6Torr(約3.2×10-4Pa)で、膜厚20nmの陽極バッファ層3を形成した。
【0102】
引き続き、るつぼのタンタル線ヒーターに通電してるつぼを253〜 270℃に加熱して、下記構造式で表される4,4'-ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(H−1)の蒸着を行った。
【0103】
【化12】
Figure 0003772506
【0104】
この蒸着時の真空度は1.7×10-6Torr(約2.3×10-4Pa)で、膜厚44nmの正孔輸送層4を陽極バッファ層3上に形成した。
【0105】
さらに、下記構造式で表されるアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(E−1)を温度298〜 320℃、真空度1.5×10-6Torr(約2.0×10-4Pa)で2分35秒間蒸着して、膜厚75nmの発光層5を形成した。
【0106】
なお、陽極バッファ層3、正孔輸送層4および発光層5の蒸着に際しては、基板1の温度は室温に保持した。
【0107】
【化13】
Figure 0003772506
【0108】
発光層5までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして 2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して各有機層の蒸着時と同様にして装置内の真空度2×10-6Torr(約2.7×10-4Pa)以下になるまで排気した。陰極7として、先ず、フッ化マグネシウム(MgF2)をモリブデンボートを用いて、蒸着速度0.06nm/秒、真空度2.0×10-6Torr(約2.7×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚となるように発光層5の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.2〜0.8nm/秒、真空度1×10-5Torr(約1.3×10-3Pa)で膜厚40nmのアルミニウム層を形成した。さらに、その上に、陰極の導電性を高めるために、銅を同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.3〜1.0nm/秒、真空度8.0×10-6Torr(約1.1×10-3Pa)で膜厚40nmの銅層を形成して陰極7を完成させた。以上の3層型陰極7の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0109】
このようにして作製した2mm×2mmの発光面積を有する有機電界発光素子の特性を表15に示す。表15より明らかなように、この素子の発光開始電圧は4.3Vであり、化合物(1)のアルミニウム錯体の導入により、駆動電圧の低下が達成され、高輝度、高効率の素子が得られた。また、この素子の駆動時間−輝度特性を図7に示す。図7に示されるように、この素子を250mA/cm2の定電流で連続駆動したところ、50秒後での輝度は初期輝度の76%であった。
【0110】
実施例7
陽極バッファ層3として化合物(1)のアルミニウム錯体に代えて、化合物(1)の亜鉛錯体を用いた以外は実施例6と同様にして有機電界発光素子を作成した。この有機電界発光素子の特性を表15に示す。表15より明らかなように、この素子の発光開始電圧は2.8Vであり、化合物(1)の亜鉛錯体の導入により、駆動電圧の低下が達成され、高輝度、高効率の素子が得られた。また、この素子の駆動時間−輝度特性を図7に示す。図7に示されるように、この素子を250mA/cm2の定電流で連続駆動したところ、50秒後での輝度は初期輝度の78%であった。
【0111】
比較例2
陽極バッファ層3を設けなっかったこと以外は、実施例6と全く同様にして有機電界発光素子を作成した。この素子の特性は表15に示すように発光開始電圧は5.0Vと高かった。また、駆動時間−輝度特性も図7に示すように、この素子を250mA/cm2の定電流で連続駆動したところ、50秒後の輝度は初期輝度の65%にまで低下し、特性に劣るものであった。
【0112】
【表15】
Figure 0003772506
【0113】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、熱的に安定なキノリノール金属錯体を用いて、熱的に安定な薄膜構造を有し、長期に亘り低電圧駆動が可能で、安定した発光特性を示す有機電界発光素子を得ることができる。
【0114】
本発明の有機電界発光素子はフラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)の分野や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の実施の形態を示す模式的断面図である。
【図2】有機電界発光素子の別の実施の形態を示す模式的断面図である。
【図3】実施例1で製造したキノリノール誘導体(化合物(1))の赤外吸収スペクトルである。
【図4】実施例2で製造したキノリノール金属錯体(化合物(1)のアルミニウム錯体)の赤外吸収スペクトルである。
【図5】実施例3で製造したキノリノール金属錯体(化合物(1)の亜鉛錯体)の赤外吸収スペクトルである。
【図6】実施例4、5および比較例1における薄膜試料の可視光領域における光透過率を示すグラフである。
【図7】実施例6,7および比較例2における有機電界発光素子の駆動時間−輝度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 陽極バッファ層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表されるキノリノール誘導体。
    Figure 0003772506
    ((I)式中、Ar1およびAr2は、各々独立して置換基を有していてもよい芳香族基または芳香族複素環基を示し、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。なお、R1とR2、R2とR3、或いはR4とR5とは環を形成していてもよく、また、R1〜R5のいずれかがアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、2級若しくは3級アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す場合には、このものは更にその炭化水素部分に置換基を有していてもよい。)
  2. 下記一般式(II)で表されるキノリノール金属錯体。
    Figure 0003772506
    ((II)式中、Ar1およびAr2は、各々独立して置換基を有していてもよい芳香族基または芳香族複素環基を示し、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。なお、R1とR2、R2とR3、或いはR4とR5とは環を形成していてもよく、また、R1〜R5のいずれかがアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、2級若しくは3級アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す場合には、このものは更にその炭化水素部分に置換基を有していてもよい。Mは、Be、Zn、Cd、Al、Ga、In、Sc、Y、Mg、Ca、Sr、Co、Cu、Ni、Sm、Eu、Si、Ge、SnまたはTbを示し、nは2から4までの整数を示す。)
  3. 請求項1のキノリノール誘導体を金属塩または有機金属化合物と有機溶媒中で反応させてなる請求項2のキノリノール金属錯体。
  4. 請求項2のキノリノール金属錯体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
  5. 対向する陽極と陰極との間に正孔輸送層および発光層を挟持してなる有機電界発光素子であって、陽極と正孔輸送層との間に、請求項2のキノリノール金属錯体を含有する層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
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