JP3463298B2 - 透明固形洗浄剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、皮膚や毛髪などに対する作用が温和なＮ−
アシルグルタミン酸塩を含有する固形洗浄剤組成物に関
するものであり、さらに詳しくは、起泡性などの使用
性、洗浄性等を保ちつつ保存安定性を改良した、Ｎ−ア
シルグルタミン酸塩を含有する透明固形洗浄剤に関す
る。 背景技術 透明石けん（透明固形洗浄剤）は、その透明性により
石けんに高級感が与えられ、商品価値の高いものであ
る。従来、透明固形洗浄剤は、その多くが高級脂肪酸石
けんを主剤とし、透明化剤としてグリセリンやショ糖、
ソルビトール等を添加して製造されている。その製造法
には、枠練り法および機械練り法があり、一般に枠練り
法で製造される透明石けんの方が機械練りで調製させる
ものにくらべて透明度が良好である。しかしながら、枠
練り法では、安定な形状を得るには約１カ月程必要であ
り、大量生産には不向きである。また、これらの方法で
製造した高級脂肪酸石けんを主剤とした透明石けんは、
本質的には普通の不透明な固形石けんと変わりなく、皮
膚への刺激、硬水中での起泡性の悪さ等の欠点は同様
で、また使用途中において不透明化してしまうなどの欠
点が知られている。 特開昭55−25465号公報には、Ｎ−長鎖アシル酸性ア
ミノ酸塩を主剤とした透明固形洗浄剤が開示され、また
特開昭56−76499号公報には、Ｎ−長鎖アシルグルタミ
ン酸塩を使用する機械練り法による透明固形洗浄剤の製
造法が開示されている。 しかしながら、これらの公報に開示の透明固形洗浄剤
においては、Ｎ−長鎖アシルグルタミン酸の塩としてト
リエタノールアミン塩またはナトリウム塩が用いられて
おり、これらの塩を用いた透明固形洗浄剤は保存安定性
が悪く、例えば、特にトリエタノールアミン塩を用いた
場合は、高温下に保存すると褐色に着色するという問題
点があり、また、ナトリウム塩を用いた場合には、保存
により次第に結晶化が進んで透明性が失われて不透明化
してしまうという問題点がある。さらに、それらの透明
固形洗浄剤の泡立ち性、溶け崩れ性、付着性などの使用
性についてもなお改善すべき点が残されている。 このような公知技術の背景下に、本発明の目的は、透
明性および無着色性についても保存安定性を保ちつつ、
起泡性、溶崩性、付着性などについての使用性を改良し
た、皮膚、毛髪、眼粘膜などに対する刺激の少ない、Ｎ
−長鎖アシルグルタミン酸塩を含有する透明固形洗浄剤
を提供することである。 発明の開示 本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、
主剤としてＮ−アシルグルタミン酸の特定の塩、すなわ
ち、カリウム塩およびナトリウム塩を、しかもこれらの
塩の特定の中和度のものを特定の比率で併用することに
より、着色や結晶化を防止でき、透明性の損なわれるこ
とのない保存安定性に優れた、なおかつ泡立ち性、溶け
崩れ性、付着性などの使用性にも優れた、刺激の少ない
透明固形洗浄剤が得られることを見いだし、本発明を完
成するに至った。 すなわち、本発明は、Ｎ−アシルグルタミン酸塩を含
有する透明固形洗浄剤において、その塩が中和度1.5〜
2.0であるカリウム塩およびナトリウム塩であり、かつ
両者のモル比が9:1〜2:8であり、かつ両者の合計配合量
が30〜70重量％であることを特徴とする透明固形洗浄剤
に関する。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の透明固形洗浄剤に用いられるＮ−アシルグル
タミン酸塩のアシル基は、炭素原子数10〜22個の飽和ま
たは不飽和脂肪酸より誘導することのできるアシル基
で、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、
オレイン酸などの単一組成の脂肪酸から誘導されるアシ
ル基が挙げられる。また、天然の原料に由来するヤシ油
脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸などから誘導され
る混合脂肪酸および化学的合成法により得られる脂肪酸
（分岐脂肪酸を含む）より誘導されるアシル基であって
もよい。 本発明によれば、このようなＮ−アシルグルタミン酸
の塩は、カリウム塩およびナトリウム塩であり、しかも
これら２種の塩はいずれもその中和度が1.5〜2.0、好ま
しくは1.7〜1.9であり、さらにカリウム塩およびナトリ
ウム塩の両者はモル比で9:1〜2:8、好ましくは8:2〜3:7
の割合で併用されるのである。 ここに中和度は、当該塩の組成における、Ｎ−アシル
グルタミン酸に対するアルカリ金属のモル比と定義され
るものである。従って、例えば、Ｎ−アシルグルタミン
酸１モルを水酸化ナトリウム1.7モルで中和して得られ
るＮ−アシルグルタミン酸ナトリウム塩の中和度は1.7
ということになる。カリウム塩およびナトリウム塩の中
和度が、上記の範囲より小さいと透明性が悪くなり、一
方大きいと高温安定性が悪化し、いずれも好ましくな
い。 カリウム塩のナトリウム塩に対する比率が上記の比率
の範囲以上の場合は、得られる透明固形洗浄剤は溶け崩
れしやすくなり、また上記の比率の範囲以下であると経
時的に結晶化が進み、不透明化してしまう。なお、カリ
ウム塩およびナトリウム塩以外の塩をこれらの塩に併用
することも可能ではあるが、得られる透明固形洗浄剤は
保存安定性が低下するので、本発明によればカリウム塩
およびナトリウム塩に限定して併用混合した方がよい。 本発明の透明固形洗浄剤におけるＮ−アシルグルタミ
ン酸塩の配合量は、カリウム塩とナトリウム塩の併用比
率にもよるが、透明固形洗浄剤全体の30〜70重量％、好
ましくは40〜65重量％を占める量である。配合量が少な
過ぎると配合した効果が奏されず、一方多過ぎると不透
明となるからである。 本発明の透明固形洗浄剤の原材料には、上に説明した
ような特定のＮ−アシルグルタミン酸の塩を所定の割合
で併用することを除いては特別の制限はなく、従来公知
の透明石けんの原材料を適宜使用することができる。す
なわち、Ｎ−アシルグルタミン酸塩をこのような範囲の
量で配合した残りの原材料としては、従来公知の透明化
剤、その他の添加剤等を挙げることができる。 すなわち、例えば、透明性を増強するためには、従来
の透明石けんに添加されているグリセリン、ジグリセリ
ン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチ
レングリコール、ソルビットなどの多価アルコール、ぶ
とう糖、果糖、ショ糖などの糖類、チオ尿素、尿素、マ
ルトール等の透明化剤を用いることもできる。 本発明の透明固形洗浄剤は、また必要に応じて更に、
透明化剤に加えて他の添加剤、すなわち、油分、香料、
着色料、防腐剤などの添加剤を適宜配合されていてもよ
いことはもちろんである。さらに、透明性を阻害しない
範囲において洗浄性、泡立ち性等を調整する目的で他の
アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活
性剤、カチオン界面活性剤、保湿剤、殺菌剤、キレート
剤、酸化防止剤、生薬、水溶性高分子等を添加すること
の支障ないことももちろんである。 本発明の透明固形洗浄剤の製造法にも特別の制限はな
く、通常用いられる枠練り法および機械練り法のどちら
も用いることが可能である。すなわち、枠練り法では、
例えば、エタノールなどの低級アルコール、Ｎ−アシル
グルタミン塩および適量の水、ならびに所望による透明
化剤、その他の添加剤を混合し、完全に溶解し、約１カ
月熟成した後、型打ちする。この方法は、機械練り法に
比べて生産性は劣るが、得られる透明固形洗浄剤の透明
性においては一般に優れている。また、機械練り法で
は、例えば、原材料全体をロールまたはペレダイザー等
で十分に混合し、通常の石けん製造に用いられている押
出機にかけた後、型打ちする。 発明を実施するための最良の形態 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。 本実施例において、固形洗浄剤の試作は全て機械練り
法により行った。また、固形洗浄剤の試作品の評価は、
以下に示す方法により行った。なお、本実施例における
百分率はすべて重量に基づく。 （ａ）透明性： サンプルを1cmの厚さに切断し、12ポイントの活字上
におき、これを通して活字の文字が識別できるかどうか
で評価した。 すなわち、はっきりと識別できる場合を○、何とか識
別できる場合を△、そして識別できない場合を×と評価
した。 （ｂ）起泡力： 起泡力の測定は、ロスマイルス試験法（JIS Ｋ 336
2）によった。測定温度は40℃、試料濃度は0.50％で、
５分後の泡の高さ（ml）を起泡力として評価した。 すなわち、240ml以上の場合を○、200〜240mlの場合
を△、そして200ml以下の場合を×と評価した。 （ｃ）室温安定性： 各試作品を25℃で１カ月間放置して観察することによ
り行なった。 すなわち、１カ月後までに透明性にまったく変化のな
かったものを○、わずかに透明性が失われたものを△、
そして結晶化して白色になったものを×と評価した。 （ｄ）高温安定性： 各試作品を50℃で３週間放置し、色相および臭いの変
化を観察することにより行なった。 すなわち、３週間放置の後までに透明性にまったく変
化のなかったものを○、わずかに、色相の変化が認めら
れたものを△、そしてかなり色相の変化が認められるも
のを×と評価した。 （ｅ）硬さ： 固形洗浄剤として十分な硬さであるか否かを感触によ
り判定した。 すなわち、十分な硬さであるを○、やや硬さが十分で
ないを△、そしてやわらかすぎ、実用に耐えないを×と
評価した。 （ｆ）溶け崩れ性： 水中にサンプルをたこ糸でつるし、１時間浸漬して質
量減量（％）を測定して評価した。 すなわち、質量減量が10％以内を○、質量減量が10〜
20％を△、そして質量減量が20％以上を×と評価した。 （ｇ）付着性： プラスチック製の石けん箱に精製水1mlを入れ、その
上にサンプル30gを24時間放置した後、付着したサンプ
ルの取り易さを判定した。 すなわち、取りやすいを○、やや取りにくいを△、そ
して非常に取りにくいを×と評価した。 比較例１〜３ 下記第１表に示すＮ−ココイルグルタミン酸の各塩
（中和度1.8）で透明固形洗浄剤を試作し、評価した。
なお、配合量はＮ−ココイルグルタミン酸塩50％および
精製水50％である。評価結果を同表に併記した。 第１表から明らかなように、トリエタノールアミン塩
では高温安定性が悪くて、褐色に着色し、また透明性も
悪くなった。ナトリウム塩は透明性は良好だが、高温安
定性および室温安定性ともに悪く、次第に結晶化し、白
色になってしまった。カリウム塩は透明性および安定性
ともに良好だが、溶け崩れ性がナトリウム塩に比べ劣っ
ていた。 実施例１〜３および比較例４〜７ そこで、下記第２表に示すようなＮ−ココイルグルタ
ミン酸の各塩（中和度1.8）を併用して透明固形洗浄剤
を試作し、前記の方法で試験した。なお、配合量はＮ−
ココイルグルタミン酸塩50％および精製水50％である。
試験結果を同表に併記した。 第２表から明らかなように、ナトリウム塩とトリエタ
ノールアミン塩、およびカリウム塩とトリエタノールア
ミン塩の併用では、いずれも高温安定性が悪く着色した
が、カリウム塩とナトリウム塩の併用ではそのような問
題はなかった。また、カリウム塩の比率が90％を越える
と溶け崩れ性が悪化し、20％以下では室温安定性および
高温安定性が悪化した。 実施例４〜８および比較例８〜11 Ｎ−ココイルグルタミン酸塩のカリウム塩とナトリウ
ム塩のモル比を6:4とし、下記第３表に示すように中和
度およびＮ−ココイルグルタミン酸塩の含量を変えて、
透明固形洗浄剤を数種類試作し、評価した。評価結果を
同表に併記した。 第３表が明らかなように、中和度が1.5以下であると
透明性が悪化し、中和度が2.0以上になると高温安定性
が悪化し、褐色に変色した。また、Ｎ−ココイルグルタ
ミン酸塩の含量が30％以下では液状となり、70％以上に
なると透明性が低下した。これから、Ｎ−ココイルグル
タミン酸塩の含量は30〜70％が好適であることが分る。 実施例９〜12 （ａ）下記第４表に示す組成の透明固形洗浄剤を試作
し、前述の方法で評価したところ、いずれの項目におい
ても満足のいくものであった（実施例９）。 （ｂ）下記第５表に示す組成の透明固形洗浄剤を試作
し、前述の方法で評価したところ、いずれの項目におい
ても満足のいくものであった（実施例10）。 （ｃ）下記第６表に示す組成の透明固形洗浄剤を試作
し、前述の方法で評価したところ、いずれの項目におい
ても満足のいくものであった（実施例11）。（ｄ）下記第７表に示す組成の透明固形洗浄剤を試作
し、前述の方法で評価したところ、いずれの項目におい
ても満足のいくものであった（実施例12）。 産業上の利用可能性 本発明の透明固形洗浄剤は、皮膚、毛髪、眼粘膜など
に対する刺激が低く、しっとりとした使用感が得られ、
また、保存時の温度安定性に優れ、保存時の着色、臭い
の発生や界面活性剤の結晶化も生じ難く、総じて保存安
定性に優れ、なおかつ泡立ち性、溶け崩れ性、付着性な
どの使用性にも優れており、特に洗顔用石けんとして好
適である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C11D 1/00 - 17/08 A61K 7/00 - 7/50

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】Ｎ−アシルグルタミン酸塩を含有する透明
   固形洗浄剤において、その塩が中和度1.5〜2.0であるカ
   リウム塩およびナトリウム塩であり、かつ両者のモル比
   が9:1〜2:8であり、かつ両者の合計配合量が30〜70重量
   ％であることを特徴とする透明固形洗浄剤。