JP3445563B2 - 電子銃電極用Fe−Cr−Ni系合金板 - Google Patents
電子銃電極用Fe−Cr−Ni系合金板Info
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Description
る電子銃電極用合金板に関わり、特に、絞り加工のため
のプレス性を向上させた電子銃電極用Fe−Cr−Ni
系合金板に関する。
れる電子銃の電極は、板厚0.1mmから0.7mm程
度の非磁性ステンレス鋼であるFe−Cr−Ni系合金
板を、プレス加工により所定形状に絞り加工されること
によって製造される。この絞り性を向上させるため、特
にバーリング成形(丸い穴を開けて穴の周縁を筒のよう
に突き出させる加工)を容易にするため、圧延加工率や
焼鈍条件を検討した技術(特願平6−257253)が
提案されている。また、プレス生産性を上げるために使
用されるようになってきた脱脂しやすい低粘度油を使用
したプレス成形において、表面粗さにおける中心線平均
粗さと最大粗さを規定することによって、プレス加工性
を向上させる技術(特願平8−205453)が提案さ
れている。また、バーリング加工においては、穴をプレ
ス打ち抜きした時のバリの残存がバーリング割れに関係
することを見出し、打ち抜き性を確保するためにSをあ
る程度含有させたうえで微量成分を制御することで絞り
性を向上させる技術(特願平9−283039)が提案
されている。
ピューター用ブラウン管における高精細化と高輝度化の
進展によって、電子銃のフォーカス特性への要求も厳し
くなり、電極レンズ径を大きくかつ高精度に加工できる
材料であって、プレス加工速度向上へも対応できること
が要求されるようになった。しかしながら、従来の材料
では、絞り面において割れの発生が生じ、充分に満足で
きるものではなかった。本発明は、上記事情に鑑みてな
されたもので、近年より一層厳しくなった絞り性を向上
させることができ、特に、絞り割れの発生が生じにくい
電子銃電極用合金板を提供することを目的としている。
に対処すべく材料表面の状態について鋭意研究を行った
結果、材料の表面層に存在する介在物群の大きさと個数
によって絞り性が変わることを見出した。詳しくは、表
面層に存在する介在物群(単独の介在物も含む)におい
て、ある大きさ以上のものが絞り割れ発生に影響を及ぼ
すことを見出し、それを少なくすることで絞り割れ発生
を抑制するに至った。図1は、厚さ0.6mmのFe−
Cr−Ni合金板の表面層の介在物群の個数と、絞り割
れ発生率(2000個プレスしたものから無作為に20
0個を抜き取り検査した時の絞り割れの発生率)との関
係を示す線図である。
で、幅5μm以上10μm未満で長さが20μm以上の
もの、幅10μm以上20μm未満で長さ20μm以上
のもの、幅20μm以上で長さ20μm以上のものに分
類し、各分類ごとに介在物群の個数と絞り割れ発生率と
をプロットしたものである。この図から、幅5μm以上
10μm未満で長さが20μm以上の介在物群であれ
ば、単位面積当たりの個数が増えても絞り割れの発生に
さ程影響を与えないことが判る。
満で長さ20μm以上の介在物群では、20個/mm2
を超える付近から絞り割れの発生率が1%を超え、介在
物群がさらに増加すると絞り割れの発生率が急激に増加
している。また、幅20μm以上で長さ20μm以上の
ものでは、5個/mm2を超える付近から絞り割れ発生
率が1%を超え、この場合も介在物群がさらに増加する
と絞り割れの発生率が急激に増加している。したがっ
て、絞り割れの発生を抑制するためには、幅が10μm
以上20μm未満で長さが20μm以上に連なった介在
物群を20個/mm2以下とし、かつ、幅が20μm以
上で長さが20μm以上に連なった介在物群を5個/m
m2以下とにすれば良い。
群の大きさと個数を上記のように規制しても、介在物が
Al2O3の場合や、MnOとSiO2との複合介在物
の場合には、絞り割れ発生率が1%を超える場合があ
り、介在物の組成で絞り割れの発生しやすさが変化する
ことが判明している。
大きさと個数は、次のように測定する。まず、表層を鏡
面に研磨した後に燐酸中で電解研磨し、介在物を識別し
やすくする。そして、光学顕微鏡像を画像解析装置に取
り込み、介在物とFe−Ni−Cr素地との色調の差を
利用して、介在物像を取り出す。次に各像を圧延平行方
向に5μm、圧延直角方向に5μm大きくしてから、そ
れぞれの方向に5μmずつ小さくする。この時、狭い間
隔で存在している介在物がくっついて一つの群となる。
最後に画像解析装置で、各介在物群(単独の介在物も含
む)の像の幅と長さとを測定する。また、介在物群の組
成は、任意に選択した10個の介在物組成をEPMA
(電子線マイクロアナライザ)で定量分析する。
合金板は、上記知見に基づいて表面層における介在物群
の大きさと個数、重量%で、Cr:15〜20%、N
i:9〜15%、C:0.12%以下、Si:0.00
5〜1.0%、Mn:0.005〜2.5%、P:0.
03%以下、S:0.0003〜0.0100%、M
o:2.0%以下、Al:0.001〜0.2%、O:
0.003%以下、N:0.1%以下、Ti:0.1%
以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Zr:
0.1%以下、Ca:0.05%以下、Mg:0.02
%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、厚さ
0.1mmから0.7mmの板に圧延したFe−Cr−
Ni系合金板であって、その表面層において、幅が10
μm以上20μm未満で長さが20μm以上に連なった
介在物群が20個/mm2以下で、かつ、幅が20μm
以上で長さが20μm以上に連なった介在物群が5個/
mm2以下であることを特徴としている。
Cr−Ni系合金板において、さらに、表面層における
介在物が原子%で、40≦SiO2≦100、0≦Al
2O3≦40、0≦MnO≦30を含む組成からなるこ
とを特徴とする。
−Ni系合金板における合金成分限定理由並びに介在物
の限定理由を以下に説明する。Cr :電子銃電極としては非磁性が要求される。通常、
非磁性であるためには透磁率が1.005以下であるこ
とが要求され、これを満たすためにCrの含有量は15
〜20%とした。なお、Crのより好ましい範囲は15
〜17%である。Ni :Niが9%より少ないと磁性が高くなりすぎ15
%より多いと原価高となる。よって、Niの含有量は9
〜15%とした。C :Cが0.12%を超えると炭化物の生成が著しく絞
り性が劣るので、Cの含有量は0.12%以下とした。Si :Siは脱酸の目的で添加されるが、0.005%
未満では脱酸の効果がなく、1.0%を超えると加工性
が劣化する。よって、Siの含有量は0.005〜1.
0%とした。Mn :Mnは脱酸の目的と、MnSを析出させる目的で
添加するが、0.005%未満では効果がなく、2.5
%を超えると材料硬さが上昇し絞り性が劣化する。よっ
て、Mnの含有量は0.005〜2.5%とした。P :Pは0.03%を超えると絞り性を著しく劣化させ
るので、Pの含有量は0.03%以下とした。
成し、穴をプレス打ち抜きする時のバリの発生を抑え、
バーリング加工時のバーリング割れの発生を抑えること
につながる。しかしながら、S含有量が0.0003%
未満ではその効果が得られず、0.0100%を超える
と粗大なMnSが生成し、逆に絞り性が劣化する。よっ
て、Sの含有量は0.0003〜0.0100%とし
た。Mo :Moは耐食性を向上させるので、耐食性が強く要
求される場合には添加することが望ましい。ただし、
2.0%を超えると絞り性が劣化するので、Moの含有
量は2.0%以下とした。Al :Alは脱酸材として添加される。0.001%未
満では脱酸効果が十分でなく、0.2%を超えると加工
性が劣化する。よって、Alの含有量は0.001〜
0.2%とした。
多くなり絞り性が劣化する。よって、Oの含有量は0.
005%以下とした。N:Nの含有量が0.1%を超え
ると加工性が劣化する。よってN含有量を0.1%以下
とした。Ti :Tiは炭化物、硫化物、酸化物、窒化物を形成し
て絞り性を劣化させる。よって、Tiの含有量は0.1
%以下とした。Tiのより好ましい範囲は0.02%以
下である。Nb :Nbは炭化物、硫化物、酸化物、窒化物を形成し
て絞り性を劣化させる。よって、Nbの含有量は0.1
%以下とした。Nbのより好ましい範囲は0.02%以
下である。V :Vは炭化物、酸化物、窒化物を形成して絞り性を劣
化させる。よって、Vの含有量は0.1%以下とした。
Vのより好ましい範囲は0.02%以下である。Zr :Zrは酸化物を形成して絞り性を劣化させる。よ
って、Zrの含有量は0.1%以下とした。Zrのより
好ましい範囲は0.02%以下である。Ca :Caは硫化物、酸化物を形成して絞り性を劣化さ
せる。よって、Caの含有量は0.05%以下とした。
Caのより好ましい範囲は0.01%以下である。Mg :Mgは酸化物を形成して絞り性を劣化させる。よ
って、Mgの含有量は0.02%以下とした。Mgのよ
り好ましい範囲は0.005%以下である。
群の個数は、幅が10μm以上20μm未満で長さが2
0μm以上に連なった介在物群が20個/mm2を超え
て存在すると、絞り割れが発生しやすくなるので、この
ように規定した。また、同じ理由により、幅が20μm
以上で長さが20μm以上に連なった介在物群を5個/
mm2以下とした。介在物組成 :介在物組成においてAl2O3の割合が多
いと、絞り割れが発生し易くなる。また、介在物組成が
MnOリッチなMnOおよびSiO2の複合介在物、あ
るいはMnOおよびAl2O3の複合介在物となった場
合も絞り割れが発生し易くなる。したがって、介在物組
成においてAl2O3およびMnOの割合は制限するこ
とが望ましく、よって、介在物が原子%で、40≦Si
O2≦100、0≦Al2O3≦40、0≦MnO≦3
0を含む組成であることが望ましい。
に示す組成の合金成分になるようにそれぞれ溶解して連
続鋳造した。その際、介在物の組成を調整するために、
No.5とNo.8は強Al脱酸を、No.4とNo.
9は、Alを使用しないSi、Mn、C脱酸を、それ以
外は、Si、Al脱酸を行った。ついで、1180℃〜
1230℃に加熱して分塊圧延、皮剥き、同じ温度に加
熱して熱間圧延を行い、スケール除去を施した後に、冷
間圧延と焼鈍を繰り返し、板厚0.3mmの焼鈍材を製
造した。
m以上で長さ20μm以上の介在物群の単位面積当たり
の個数を示す。No.1、No.2、No.4、No.
5は本発明例で、特にNo.1、No.2は請求項2を
も満足するものである。また、No.6〜No.9は比
較例である。なお、表2では、各焼鈍材が含有する介在
物として、SiO2、Al2O3およびMnOの組成
(at%)を挙げているが、これら3種類以外の介在物
が含まれているものもある。
リング成形高さ2mmの部品に成形し、図2に模式的に
示した絞り割れの発生を2000個成形したうちの任意
に抜き取った200個で調査した。表2に絞り割れの発
生率を示す。
1、No.2、No.4、No.5は、比較例のNo.
6〜No.9と比較していずれも絞り割れの発生率が低
く、優れた絞り性を示している。そのうち、No.4と
No.5は本発明の請求項1(介在物群の個数)を満足
しているが請求項2(介在物組成)を満足していないた
め、介在物群個数が同程度のNo.2と比較して絞り割
れの発生率がわずかに高くなっている。また、No.6
〜No.9は介在物群個数が多いため絞り割れの発生率
が高くなっている。
i系合金板においては、絞り性を著しく向上させること
ができ、厳しいプレス条件で加工されても絞り割れの発
生を少なくすることができる。よって、電子銃電極用と
して最適なFe−Cr−Ni系合金板を得ることができ
る。
生率との関係を示す線図である。
図であり、(A)はその斜視図、(B)は(A)の線A
−B断面図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、Cr:15〜20%、Ni:
9〜15%、C:0.12%以下、Si:0.005〜
1.0%、Mn:0.005〜2.5%、P:0.03
%以下、S:0.0003〜0.0100%、Mo:
2.0%以下、Al:0.001〜0.2%、O:0.
005%以下、N:0.1%以下、Ti:0.1%以
下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Zr:
0.1%以下、Ca:0.05%以下、Mg:0.02
%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなり、厚さ
0.1mmから0.7mmの板に圧延したFe−Cr−
Ni系合金板であって、 そ の表面層において、幅が10μm以上20μm未満で
長さが20μm以上に連なった介在物群が20個/mm
2以下で、かつ、幅が20μm以上で長さが20μm以
上に連なった介在物群が5個/mm2以下であることを
特徴とする電子銃電極用Fe−Cr−Ni系合金板。 - 【請求項2】 表面層における介在物が原子%で、40
≦SiO2≦100、0≦Al2O3≦40、0≦Mn
O≦30を含む組成からなることを特徴とする請求項1
に記載の電子銃電極用Fe−Cr−Ni系合金板。
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