JP3327902B2 - Fe−Ni系シャドウマスク用材料 - Google Patents

Fe−Ni系シャドウマスク用材料

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JP3327902B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラーテレビブラ
ウン管などの材料として用いられるFe−Ni系シャドウマ
スク用材料に関するものであり、例えば塩化第二鉄溶液
を主成分とするエッチング液などによるフォトエッチン
グに際して、すじむらやモトリング (以下、すじむら等
という) の発生を見ることのない低熱膨張のFe−Ni系シ
ャドウマスク用材料について提案する。
【0002】
【従来の技術】従来、シャドウマスク材料は、低炭素ア
ルミキルド鋼板が用いられている。この鋼板は、中間冷
間圧延後の鋼板を、連続焼鈍またはバッチ焼鈍炉により
適切な歪とり中間焼鈍を施し、必要に応じて疵とりを実
施し、その後、仕上げの冷間圧延および調質圧延(ダル
圧延を含む)を行うという工程を経て製造している。こ
れに対し近年、低熱膨張Fe−Ni系合金板が、高品位カラ
ーテレビブラウン管やディスプレー用の材料として注目
を浴びている。このFe−Ni系の合金板は、それ以前にシ
ャドウマスク用材料として用いられていた低炭素アルミ
キルド鋼板に代わるものとして開発されたものである。
かかるFe−Ni系合金が着目されている理由は、上記低炭
素アルミキルド鋼板に比較すると、色ずれ防止の点で優
れているからであり、特にディスプレーや大型テレビ等
の用途では欠かせない材料の一つとなっている。
【0003】しかしながら、このFe−Ni系合金は、フォ
トエッチング時における穿孔性に課題を残していた。即
ち、Fe−Ni系合金は、アルミキルド鋼に比べるとフォト
エッチング時の穿孔形状が悪くかつ、すじむらと呼ばれ
る欠陥が発生し易いことが指摘されている。とくに、こ
のすじむらと呼ばれる欠陥は、カラーブラウン管におけ
る映像の白色部にすじ状のコントラストむらを発生さ
せ、ディスプレーとしての品位を著しく低下させること
がわかっている。このすじむら発生原因としては、非金
属介在物の存在やNiの偏析による影響が考えられてい
る。そのため、すじむらの軽減を図るには、これらの原
因を取り除くことが有効である。しかし、これらの原因
を全て取り除いたとしても、解消できないすじむらがな
お残ることから、発明者らは、これには別の要因がある
ものと想像し、研究を続けた。
【0004】本発明の主たる目的は、エッチング不良に
よって起こるすじむらやモトリング(全体むら) の真の
原因をつきとめ、これらの発生がない、Fe−Ni系シャド
ウマスク用材料を提供することにある。本発明の他の目
的は、エッチング穿孔性が良好で該穿孔時の孔形状がき
れいなFe−Ni系シャドウマスク材料を提供することにあ
る。本発明のさらに他の目的は、映像のきれいなカラー
ブラウン管やディスプレー用の材料を安価にかつ確実に
提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、従来技術が
解決課題として残している、すじむら等の問題について
鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。即ち、
シャドウマスク用材料に発生するすじむらは、エッチン
グ面における個々の結晶粒の配向の乱れによるものであ
ることがわかった。そして、その配向の乱れは、板厚方
向におけるNiやMn等の成分偏析、非金属介在物および焼
鈍途中に発生した粗大粒による混粒組織の残留、特定の
集合組織の存在などが原因であり、またこれらの要素が
複雑に絡み合って発生することがわかった。ところで、
結晶粒の配向というのは、個々の結晶粒が持つ結晶方位
に依存していることから、上記すじむら等の発生を防止
するためには、どうしても集合組織と成分偏析とを制御
することが必要になるとの知見を得た。また、エッチン
グ穿孔性に優れ、穿孔後の孔形状を良好にするために
は、製品の表面粗さの制御や介在物個数の制御も不可欠
であるとの認識に達し、上記集合組織ならびに成分偏析
の制御に併せて、表面粗さや介在物個数等を制御するこ
とは有効であるるとの結論を得た。
【0006】本発明はこのような知見の下に開発した材
料である。即ち、本発明は、Ni:34〜38wt%、Si:0.5
wt%以下、Mn:1.0 wt%以下、P:0.1 wt%以下を含有
し、必要に応じてさらにNbを0.02〜0.2 wt%含有する鉄
ニツケル合金シャドウマスク用材料において、shultzの
反射法による(111)極点図における立方体方位(1
00)<001>とその双晶方位である(221)<2
12>とのX線強度比Irが0.5 〜5:1の範囲にある
集合組織を有し、かつ、板厚方向における、図11に定義
したNi成分の平均偏析量 CNis が0.30%以下、最大偏
析量 CNimax が1.5 %以下であるFe−Ni系シャドウマ
スク用材料、を提案する。
【0007】なお、本発明において、好ましい集合組織
とするために、立方体方位とその双晶方位とのX線強度
比Ir(X線カウント数比)を、上述したように 0.5〜
5:1を基本とする。このX線強度比Irの好ましい下
限は0.5 以上、さらに好ましくは1以上、より好ましく
は1.5 以上である。また、このX線強度比Irの好まし
い上限は5以下、さらに好ましくは4.5 以下、より好ま
しくは4.0 以下である。したがって、実際のX線強度比
Irは、例えば、0.5 〜4.5 :1、1〜4.5 :1、1〜
4.0 :1、 1.5〜4.0 :1、 2〜3.5 :1 のような範囲
にすることが好ましい。
【0008】また、本発明は、上述したように、素材の
板厚方向におけるNi、Si、Mn、およびPの成分偏析を、
それぞれ下記式、で表わされる範囲にすることが好
ましい。 A.Niについては; 平均偏析量 CNis ≦ 0.30(%)を満足すること、 最大偏析量 CNimax ≦ 1.5(%)を満足すること、 B. Siについては; 平均偏析量 CSis ≦ 0.002(%)を満足すること、 最大偏析量 CSimax ≦ 0.01 (%)を満足するこ
と、 C.Mnについては; 平均偏析量 CMns ≦ 0.010(%)を満足すること、 最大偏析量 CMnmax ≦ 0.05 (%)を満足するこ
と、 D.Pについては; 平均偏析量 Cs ≦ 0.001(%)を満足すること、 最大偏析量 Cmax ≦ 0.005(%)を満足すること、 が求められる。
【0009】上記偏析量について、Niについて例示する
と、 CNi s、 CNimax は、以下のように定義される
値である(詳細な定義は、図11参照)。 平均偏析量 CNis(%)=Ni成分分析値(%)×CiNis
(c.p.s.)/CiNiave.(c.p.s.) 最大偏析量 CNimax(%)=Ni成分分析値(%) ×CiNi
max /CiNiave. CiNis :X線強度の標準偏差 (c.p.s.) CiNiave.:全X線強度の平均強度 (c.p.s.) CiNimax :最大X線強度(c.p.s.) (=X線強度の最
大値−最小値) CiNiave.:全X線強度の平均強度 (c.p.s.) ・Ni成分分析値(%)とは、素材に含まれるNi含有量で
あり、化学的(あるいは物理的)手法等により分析され
る値である。なお、板厚方向におけるいわゆる板断面の
成分偏析量は、製品の板断面 (板厚方向をいう) を研磨
した後、製品の板厚方向にわたりX線マイクロアナライ
ザーにて線分析を行なう。測定条件は表1に記載されて
いる条件で行ない、測定長さは素材の板厚みとする。測
定された線分析のX線強度(c.p.s.)をもとに次の式によ
り偏析量を計算する。
【数1】
【0010】上述した特性を示す材料は、例えば、Niを
34〜38%含有し残部が実質的にFeよりなる合金のスラブ
を1250〜1400℃の高温下で、少なくとも40hr以上均質化
熱処理を行なった熱延板を冷間圧延して得られた冷間圧
延材の焼鈍に当たり、最終圧延の前に焼鈍温度:900 〜
1150℃、均熱時間:5 〜60秒の中間焼鈍を施し、その
後、焼鈍温度:700 〜900 ℃、均熱時間:60〜600 秒の
最終焼鈍を施すことにより製造することができる。上記
製造方法において、各焼鈍条件は図1のa、b、cおよ
びdに図示された範囲内で行なうことが望ましい。
【0011】また、本発明においては、 表面粗度に関するパラメータRaが、0.2 μm ≦Ra≦0.
9 μm であること、 表面粗度に関するパラメータSmが、20μm ≦Sm≦250
μm であること、 表面粗度に関するパラメータRsk が、−0.5 ≦Rsk で
あること、 表面粗度に関するパラメータRθa が、0.01≦Rθa ≦
0.09 であること、 JIS G 0555 の定めるところによる断面清浄度が0.05
%以下であること、 板表面から任意の深さまで研磨した位置における10μ
m 以上の介在物の個数が100mmの単位面積当たり65個
以下であること、 板断面において測定した10μm以上の介在物個数が10
0mmの単位面積当たり80個以下であること、 JIS G0551 による方法にて測定した結晶粒度番号が7.
0 以上であること、 が、好ましい。なお、シャドウマスク材の板厚は0.01〜
0.5 mm、好ましくは0.05〜0.5 mmの板が一般的である。
【0012】
【発明の実施の形態】一般に、すじむらには、成分偏析
に起因していると考えられる、比較的個々のすじの幅が
太く見えるむらと、結晶方位に起因していると考えられ
る、比較的すじの太さが細い絹目状に見えるすじむら
(絹目状すじ)に大きく分類でき、また両者が相互に混
在している形態のものも存在する。本発明において検討
したすじむらには、NiやMn等の成分偏析に起因する“す
じむら”と結晶方位に依存する“すじむら”の2種があ
ることがわかった。これらの原因で生じるすじむらは、
シャドウマスク製品において観察される場合、その程度
が強いと透過光ですじ状に見えるが、多くは小孔側から
の斜光において良く観察される。これは大孔から小孔へ
透過した光が散乱、回折を受け、大孔側のすじむらの原
因となるエッチング面がより強調されるものと想像でき
る。
【0013】A.すじむらの発生する原因が結晶方位に
起因するものの場合:すじむらは結晶の配向に大きく影
響を受け、エッチング優先方位である立方体方位(100)
<001 >の集積をある程度確保しなければならないこと
がわかった。しかし、この方位が集積しすぎた場合、逆
に繊維状の方向性を持った組織となり、すじむら品位が
悪くなることから、集合組織の適度な分散を助ける副方
位(221)<212>の存在も必要である。なお、このすじむら
原因の克服の具体的な方法については、後で詳述する。
【0014】B.すじむらの発生する主原因が成分偏析
の場合:成分偏析が板厚方向に分布するものの場合、そ
の分布している偏析の強さと分布の幅がすじむらの強
度、形態を支配しているものとすると、板厚方向におけ
る偏析を、その偏析の強さ (EPMAによる線分析の最
大偏析量) と、平均 (全板厚方向における偏析の標準偏
差) とで表すことができるものと考えられる。ここで、
板厚の厚み幅における線分析 (偏析) の最大偏析量はCm
axと定義し、板厚方向の平均偏析量 (標準偏差) をCsと
定義し、Ni、Si、MnおよびP についての前記偏析量 (Cm
ax, Cs) を所定の範囲内にすることにより、偏析により
生じる比較的太いすじむらを軽減することにしたのであ
る。なお、EPMAの線分析による測定条件を表1に示
す。
【0015】
【表1】
【0016】ところで、Ni等の成分偏析による偏析がす
じむらの原因となることについては、以前にも特開平1-
252725号公報や特開平2-117703号公報、特開平9-143625
号公報等に開示されている。しかし、これらの従来技術
は、製造条件のみのものや、任意の位置における偏析量
を規定したものや、板厚方向における最大偏析量を規定
したものである。しかし、本発明のように、板厚方向
(板断面方向) での平均偏析量と最大偏析量の両方の観
点に着目して言及したものはなかった。即ち、成分偏析
起因で生じるすじむらについては、最大偏析量のみを制
御しても解消できないのであり、断面方向の平均偏析量
の制御をも行なうことが必要なのである。なお、このす
じむら原因の克服の方法については、後で詳述する。
【0017】まず、本発明にかかるFe−Ni系シャドウマ
スク用材料としては、次のような成分組成のものを用い
ることが必要である。Cは、0.1 wt%以上含有すると炭
化物が析出しエッチング性を阻害するだけでなく、シャ
ドウマスク成形加工後の形状凍結性に悪影響を及ぼす。
しかも、このC量が多いと耐力が上昇してスプリングバ
ックが大きくなり、成形加工時の型なじみが悪くなる。
従って、本発明においては、C量を0.1 wt%以下とす
る。
【0018】Siは、脱酸成分のひとつであるが、この量
が多すぎると、素材自体の硬さが増大すると同時に、C
と同様に成形加工性にも悪影響が出る他、その量が多く
なるにしたがって耐力の上昇を招いてスプリングバック
が大きくなる。しかも、エッチング時のすじむらに影響
を及ぼし、これが多いとすじむら発生の原因をつくる。
従って、本発明においてはSi量は0.5 wt%以下が好まし
い。
【0019】Mnは、脱酸成分のひとつであり、熱間加工
性に対して有害なSと結合してMnSを形成するため適正
に添加することによって熱間加工性を改善する。しか
し、その添加量が多すぎると、熱膨張係数を上げると共
にキュリー点を高温側に変位させる。従って、本発明に
おいてMn量は、1.0 wt%以下が好ましい。
【0020】Niは、本発明において最も重要な元素であ
り、このNi量が34wt%より少ないと、熱膨張係数が大き
くなり、またマルテンサイト変態を生じてエッチングむ
ら発生のおそれがある。一方、Niの量が38wt%より多く
なると、同じような熱膨張係数が大きくなり、カラーブ
ラウン管などに適用した場合に色むらが発生したりする
問題がある。従って、良好なエッチング性とカラーブラ
ウン管の色むら品位を向上させるのに、Ni量は34〜38wt
%とする。
【0021】Nbは、本発明において黒化処理性を高める
と共に、熱膨張係数を低くするために、0.02む2.0 wt%
添加することが許容される。例えば、36wt%Ni−0.2 wt
%Si−0.01wt%C−0.7 wt%Mn−0.05wt%Nb材において
も、本発明の効果が認められる。
【0022】本発明において、所期の作用効果 (すじむ
ら抑制) を実現するためには、上述したように、まず第
1に、結晶方位起因のすじむらを抑制するため、集合組
織の制御を行う。本発明において、結晶方位に依存する
“すじむら”を抑制するためには、立方体方位の (10
0) <001>の双晶方位である(221)<212>
副方位を導入し、かかる立方体方位 (100) <001
>を分断することによって、結晶粒配向の乱れをなく
し、それによって望ましい集合組織を形成することにし
たものである。
【0023】本発明者らの研究によると、すじむら発生
の抑制に対して好ましい集合組織とは、結論的に言う
と、(111)極点図において、立方体方位(100)
<001>とその双晶方位である(221)<212>
との比を、X線強度比Irとして表わすと、その好適範
囲は、(111)極点図のX線強度比(X線カウント数
比Ir)で、0.5 〜5:1であることがわかった。そし
て、好ましいX線強度比Irは1〜4.5 :1、より好ま
しくは1〜4.0 :1、さらに好ましくは1.5 〜4.0 :1
であり、すじむら品位に優れるシャドウマスク材を製造
するための最適比は2〜3.5 :1であることもわかっ
た。
【0024】本発明において、上記X線強度比Irの測
定方法ならびに測定条件は下記の方法によるものであ
る。まず、X線強度比Irの測定方法は、板の一方の面
をテフロンシールで覆った後、反対の面を市販化学研磨
液 (三菱瓦斯化学製 C.P.E1000) にて化学研磨し、板厚
の70〜30%になるように減厚して測定面とした。その測
定面としては、板厚みの中心部近傍を測定するのが望ま
しい。このようにして得られた化学研磨後の試料表面に
ついて、schulzの反射法による(111)極点測定を下
記表2の測定条件で実施し、これにより得られた極点図
をもとに(100)<001>方位のX線強度と(22
1)<212>方位のX線強度との比を求めた。それぞ
れのX線強度は、最大X線強度 (最大X線カウント数)
をもとめ、その強度を15等分し、得られた極点図から
(100)<001>および(221)<212>に対
応する強度に該当する等高線強度を読み取り、その強度
をそれぞれのX線強度と定義した。そして、このように
して得られた(100)<001>方位および(22
1)<212>方位のそれぞれの比を求めてX線強度比
Irとした。なお、X線強度比Irは、下記のように定
義されるものである。 Ir=立方体方位(001)<001>のX線強度/双晶方位(22
1)<212>のX線強度
【0025】
【表2】
【0026】次に、本発明に適合する集合組織例と不適
合の集合組織例とを、極点図形に基づいて説明する。図
2〜6は、表3に示す成分組成のFe−Ni系材料につい
て、表4、表5に示す条件で製造した本発明材No. 1,
3, 4と比較材No. 6, 17の極点図形を示す。図2は、
表4, 5中の比較材No. 17の極点図を示しており、(1
00)<001>の立方体方位がより発達しており、
(221)<212>双晶方位とのX線強度比Ir は1
3.9となっている。この試料(比較材11)のエッチング
性に関しては表5中に示すように、エッチング速度が速
いためモトリングは良好なものとなっているものの、す
じむらが明瞭に認められ、実際のシャドウマスク製品と
しては適していないことがわかる。
【0027】
【表3】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】また、図3(No.3)、図4(No.1)、図5(No.
4)はそれぞれ、表4、5中の本発明材No. 3,1,4の
極点図を示しており、それぞれ本発明に適合する材料の
極点図形である。そのうちの図3、図4は、本発明のそ
れぞれ上限のIr =4.66、下限のIr =0.93を、そして
図5は本発明の最適条件Ir =2.79のものを示してい
る。一方、図6は比較材No. 6の極点図を示しており、
(100)<001>立方体方位が非常に弱く、規格化
強度比は0.36:1となっているものである。この比較材
No. 6のエッチング性に関しては、モトリングの品位が
悪いという結果になっており、これもまたシャドウマス
ク製品として不適当である。
【0030】また、No.12,13,14に関しては、成分偏
析中もっとも主要なNi偏析は本発明適合範囲を満たして
いるものの、Si、Mn、P等の不純物成分の偏析が本発明
適合範囲を外れており、成分偏析起因のすじむらが若干
認められる傾向にある。
【0031】図7は、上記の関係を図にまとめたもので
ある。この図は、横軸にX線強度比Ir の対数をとり、
縦軸にエッチングファクター (パターンエッチングを行
ったときの深さ方向のエッチング量を幅方向のエッチン
グ量 (サイドエッチ) で割った値) すじむら、モトリン
グ品位を示したものである。図に示すように、X線強度
比Ir が大きくなるほど(双晶の割合が減少するほど)
エッチングファクター(板厚方向のエッチング速度)が
増大することが認められる。一方、すじむら品位は、X
線強度比Ir が大きすぎても小さすぎても悪くなる。図
示した結果からわかるように、X線強度比Ir の適正な
範囲は0.5 〜5の範囲であることがわかる。なお、モト
リングに関しては、エッチング速度が大きい方が有利で
あるが、図からわかるように、ほぼIr :1.0 を越える
と大きな変化がなくなり、差がないと考えられる。
【0032】本発明は、好ましい集合組織にするため
に、上掲の極点図形による方位成分の適性範囲を規定
し、それによりシャドウマスク用素材に発生するエッチ
ング時のすじむらならびにモトリングとよばれる全体む
らの発生を防止した材料である。
【0033】次に、成分偏析起因のすじむらを抑制する
ために、本発明にかかる材料はまた、上述したX線強度
比Irで示される集合組織に加え、さらに板厚方向におけ
るNi,Si,MnおよびPの成分偏析を制御する。その成分
偏析の測定方法については、図12にNi偏析測定例として
示す。 1.板厚方向におけるNi成分偏析については; 平均偏析量 CNis は0.30%以下とする。好ましくは
0.20%以下、さらに好ましくは0.10%以下である。 最大偏析量 CNimax は1.5 %以下とする。好ましく
は1.0 %以下、さらに好ましくは0.5 %以下である。 この理由として、Niは主成分でありNiの偏析がすじむら
の原因となりやすいからである。 2.板厚方向におけるSi成分偏析については、Niと同
様、すじむらの原因となるので以下の数値に制御するこ
とが好ましい。 平均偏析量 CSis は0.002 %以下とする。好ましく
は0.0015%以下、さらに好ましくは0.001 %以下であ
る。 最大偏析量 CSimax は0.01%以下とする。好ましく
は0.07%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。 3.板厚方向におけるMn成分偏析については、Ni、Siと
同様、すじむらの原因となるので、以下の数値に制御す
ることが好ましい。 平均偏析量 CMns は0.010 %以下とする。好ましく
は0.008 %以下、さらに好ましくは0.005 %以下であ
る。 最大偏析量 CMnmax は0.05%以下とする。好ましく
は0.025 %以下、さらに好ましくは0.020 %以下であ
る。 4.板厚方向におけるP成分偏析については、Ni、Si、
Mnと同様、すじむらの原因となるので以下の数値に制御
することが好ましい。 平均偏析量 Cs は0.001 %以下とする。好ましくは
0.0007%以下、さらに好ましくは0.0005%以下である。 最大偏析量 Cmax は0.005 %以下とする。好ましく
は0.003 %以下、さらに好ましくは0.002 %以下であ
る。 上記のNi偏析等の成分偏析を防止するためには、鋳造ま
たは鍛造後のスラブにおける均質化熱処理を行うことが
有効である。例えば、鋳造スラブを1250℃以上の温度で
40hr以上の熱処理を行うことで可能である。
【0034】次に、本発明にかかる材料はまた、X線強
度比Ir で示される集合組織や成分偏析の限定に加え、
さらに JIS G 0555 の定めるところによる断面清浄度を
制御することが好ましい。断面清浄度の値としては、0.
05%以下、好ましくは0.03%以下、より好ましくは0.02
%以下、さらに好ましくは0.017 %以下にする。この理
由は、断面清浄度dが上記の数値を超えると、エッチン
グ精度が低下し、製品不良率が悪くなるからである。
【0035】なお、上記の断面清浄度dの測定値は JIS
G 0555 に準拠して行う。具体的には、製品を圧延方向
に30mmの長さに切断し、その断面を研磨したのち、縦横
各30本の格子線をもつグリッドを顕微鏡に装着し、視野
を図10に示すようにジグザグ状に動かしながら、400
倍で60視野観察することにより行った。従って、測定面
は、圧延方向に平行な断面であり、測定面積は、板厚×
30mmとなる。上記断面清浄度dは、格子点の数をPと
し、視野の数をfとし、f個の視野における総格子点中
心の数をnとしたとき、下記式 d(%)=(n/P×f)×100 によって決定されるものである。
【0036】次に、本発明にかかる材料はさらにまた、
Ra, Rsk, Sm で表される材料表面の粗度を、適正に制御
することが好ましい。 まず、製品の表面粗さにおいて中心線平均粗さRa
は、粗さの平均的な大きさを示すパラメータであり、こ
の値が大きすぎると露光時の散乱が強くなるとともにエ
ッチング時に穿孔開始時間に差が生じ、孔の形状が悪く
なる。逆に、小さすぎる場合は、真空引きのときに排気
が十分になされず、パターンと素材との密着不良がおこ
りやすい。そこで、本発明では、0.2 ≦ Ra ≦0.9 とす
る。中心線平均粗さRaの好ましい下限は0.25μm以上、
より好ましくは0.3 μm以上、さらに好ましくは0.35μ
m以上がよい。一方、上限については、0.85μm以下が
好ましく、より好ましくは0.8 μm以下、さらに好まし
くは0.7 μm以下である。
【0037】 表面粗さの相対性を示すRsk について
は、パターンが凸か凹かを端的に示すパラメータであ
り、振幅分布曲線 (ADF)分布の中心線に対する対称
性を下記式に準じて数値で表したものである。 Rsk=1/σ∫ZP(z)dz ここで、σは自乗平均値、∫ZP(z)dz は振幅分布曲
線の3次モーメントを示す。このRsk の値が負で大きく
なると、露光時の散乱が強くなり、孔の形状が悪くな
る。逆に、正で大きすぎる場合は、真空引きの排気が十
分になされずパターンと素材との密着不良がおこりやす
い。そこで、本発明では、−0.5 ≦Rsk とする。好まし
い下限は0以上、より好ましい下限は0.1 以上がよい。
一方、上限については、好ましくは1.3 以下、より好ま
しくは1.1 以下で、1.0 以下を最適例とする。
【0038】 Smで表される平均山間隙については、
粗さの山谷のピッチの大きさを示すパラメータであり、
このような粗さは、凹凸が大きすぎた場合に生じる部分
的な真空引き不良、小さすぎた場合に生じる露光時の散
乱が強くなるための孔形状の不良を端的に示すものと言
える。本発明で、このSmは、20μm≦ Sm ≦ 250μmと
する。このSmの好ましい下限は40μm以上、より好まし
くは50μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。
一方、好ましい上限は 200μm以下、より好ましくは 1
60μm以下、さらに好ましくは 150μm以下で、130 μ
m以下を最適例とする。
【0039】 Rθa で表される自乗平均傾斜は、粗
さの平均的な傾斜度を表しており、このパラメータの数
字が大きいほどそれぞれの粗さの凹凸の急峻度が大きい
ことを表している。この値は下記式により求めることが
できる。
【数2】 (ただし、L は測定長さ、f(x) は粗さの断面曲線を表
す) この値が大きくなると、一般に露光時の散乱が強くな
り、孔形状の不良を起こしやすく、また小さくなりすぎ
た場合は真空引きの際にパターンと素地の密着不良が生
じ易い。本発明において、このRθa は0.01≦Rθa ≦
0.09の範囲とする。このRθaの好ましい下限は0.015
以上、より好ましくは0.020 以上、さらに好ましくは0.
025 以上である。一方、好ましい上限は0.07以下、より
好ましくは0.06以下、さらに好ましくは0.05以下で0.04
以下を最適例とする。
【0040】上記のように規定される表面粗さRa, Rsk,
Sm, Rθa は、上記合金にシャドウマスク用素材を最終
寸法に冷間圧延する際にダルロールを用いることにより
容易に実現しうる。ダルロールは所定の表面粗度を有す
るロールであって、これを用いて上記合金によるシャド
ウマスク素材を圧延することによりその反転模様を適切
な転写率によって圧印することができる。このようなダ
ルロールを得るためには、放電加工、レーザー加工、シ
ョットブラスト法などにより加工することで容易に得る
ことができる。例えば、ショットブラスト法によるロー
ル加工条件として#120 のスチールグリッドを用いて行
なうことで可能である。
【0041】本発明はまた、上記の各特性に加えてさら
に、介在物個数の制御を行うことが好ましい。即ち、板
表面から任意の深さまで研磨を行い、測定した10μm以
上の介在物の個数が、100 mmの単位面積当たり65個以
下に制御する。この場合、好ましくは35個以下、より好
ましくは30個以下、さらに好ましくは25個以下で、20個
以下であることが最も好ましい。このように限定する理
由は、一般に、シャドウマスクは、微細なエッチング技
術を必要とすることから、素材中の介在物はできるだけ
少ないほうがよいからである。なお、この介在物個数と
断面清浄度は類似する概念であるが、断面清浄度dだけ
では異物の面積を規定しただけであり、不良率をさらに
少なくするためには、板表面部の介在物の大きさも制限
することが有効である。上記介在物個数の測定方法は、
板表面を研磨し、最後はバフ研磨で仕上げて、板表面と
平行な面を顕微鏡で観察し、個数を測定した。測定は、
10mm×10mmの面を観察した。不良の原因となる大型介在
物の写真を図8に示す。
【0042】本発明ではまた、上記の板表面における介
在物個数の制御に加え、板断面において測定した10μm
以上の介在物個数を100 mmの単位面積当たり80個以下
に制御することが有効である。この個数は、好ましくは
70個以下、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは
40個以下で、30個以下、さらに20個以下を最適例とす
る。というのは、上述した断面清浄度dだけを制御して
いただけでは、不良率を0にすることはできないからで
あり、介在物の大きさをも制限することにより、不良率
をさらに低下させることができるからである。なお、こ
の板断面における介在物の個数の測定方法は、圧延方向
と平行断面を研磨し、バフ研磨で仕上げ、顕微鏡で観察
した。測定は、板厚×25 mm 長さの断面を3つ程度測定
し、100 mmに換算した。不良の原因となる大型介在物
の写真を図9に示す。上記、清浄度、介在物の制御は、
精錬過程において、介在物を取鍋で浮上分離することに
より制御可能である。
【0043】本発明ではさらにまた、合金中の結晶粒度
につき、JIS G 0551による方法にて測定した結晶粒度番
号で7.0 以上の大きさを示す粒度 (より細かく制御) に
することが好ましい。好ましくは8.0 以上、より好まし
くは8.5 以上、さらに好ましくは9.5 以上である。この
ように限定する理由は、結晶粒度番号が7.0 以上を示す
結晶にすることが必要な理由としてまず、結晶粒が大き
いとエッチング時の孔の径がそれぞれの結晶方位のエッ
チング速度が異なるため、ばらつき、エッチング孔の不
揃いによる透過光むらが生じ、ひいてはモトリングと呼
ばれる現象が発生するとともに、孔不良が発生し、歩留
りを低下させることが挙げられる。また、プレス加工時
に結晶粒が大きくなりすぎてプレス不具合を生じるから
である。結晶粒の大きさは、冷間圧延率と焼鈍の条件設
定により制御することが可能である。一般に微細な結晶
粒は冷間圧延率を大きくして歪みを蓄え再結晶の駆動力
を高めるとともに比較的低温(再結晶温度よりやや高め
の温度)での焼鈍を一回ないし複数回繰り返すことによ
り得られる。
【0044】上記結晶粒度の測定方法は、圧延直角方向
の板断面を顕微鏡面とし、バフ研磨後王水にてエッチン
グを行い、観察倍率200 倍にてJIS G 0551に記載されて
いるオーステナイト組織標準結晶粒度の図に比較対照し
て結晶粒度番号を決定する。なお、標準結晶粒度図は 1
00倍の観察倍率を基準としているので、標準図の結晶粒
度番号に対し+2.0 補正した。 (結晶粒度番号は0.5 刻
みで測定する)
【0045】次に、本発明において、上述した集合組織
の制御、成分偏析の制御のために、次のような方法を採
用することが望ましい。例えば、Ni34〜38wt%を含み残
部が実質的にFeよりなる合金を、精錬し、鋳造後あるい
は鋳造後鍛練したスラブについて、1250〜1400℃の温度
範囲にて40hr以上の均質化熱処理を行ない、次いで熱間
圧延して数mm程度の熱間圧延板とする。前記スラブの均
質化処理は、板断面における成分偏析を軽減し偏析起因
のすじむらを解消するために有効である。このようにし
て得られた前記熱間圧延板を必要に応じて再結晶焼鈍や
酸洗等を施したのち、例えば中間冷間圧延を行い、その
後、最終圧延前に中間焼鈍を施す。
【0046】上記中間焼鈍は、立方体方位(100)<
001>の発達を制御するために行うものである。この
中間焼鈍は 900〜1150℃の温度で行う。その温度が低い
場合(<900 ℃)、最終製品での立方体方位が発達しす
ぎて、双晶方位(221)<212>の割合が低くなっ
てしまうことから、すじむら品位が低下する。双晶方位
の割合が少なくなることによりすじむら品位が悪くなる
理由は、立方体方位の集積により圧延方向における優先
方位<001>が個々の結晶粒単位で整合性が微妙に乱
れ、これがすじ状に見えるものと考えられる。逆に、中
間焼鈍の温度が高温の場合(>1150℃)、立方体方位の
発達が悪くエッチング速度が低下し、シャドウマスクの
パターンエッチング時において個々のエッチング孔のコ
ヒーレンス性が低下し、モトリングと呼ばれる全体むら
が発生するようになる。
【0047】また、この中間焼鈍における均熱時間は、
5〜60秒の範囲が好適であり、この時間が5秒よりも短
い場合には回復・再結晶が十分になされず、混粒状態の
組織のままとなりエッチング品位が低下する。一方、こ
の時間が60秒よりも長い場合には粗粒となり、立方体方
位の発達が低下し、やはり混粒組織となるためにエッチ
ング性の低下を招く。
【0048】次に、本発明にあっては、上述した中間焼
鈍の条件のみならず、さらに最終焼鈍の条件についても
規制することが有効である。即ち、その最終焼鈍は、製
品の結晶粒を微細かつ均一に整え、モトリングの発生原
因となるエッチング後の孔壁面のガサツキを防止するた
めに行うものであって、700 〜900 ℃の焼鈍温度で、60
〜600 秒の均熱時間で処理することが有効である。その
理由は、かかる最終焼鈍において焼鈍温度が700 ℃より
も低い場合、再結晶が不十分となり、一方、900 ℃より
も高い場合、粗粒化しエッチング品位が低下するからで
ある。
【0049】なお、この焼鈍のための均熱時間は、個々
の結晶粒の成長および結晶方位の発達の程度に応じて60
〜600 秒の範囲内が好ましい。例えば、その均熱時間が
短い(<60秒) と立方体方位の発達が不十分となり、ま
たエッチング速度の低下、モトリングが発生する。一
方、この均熱時間が長い (>60秒) 場合は、結晶粒が粗
大化するほか、立方体方位に対し双晶方位の方が発達し
すぎてしまい、すじむら品位が低下することになる。
【0050】これらの焼鈍条件については、適正範囲と
いうものがあり、図1のa,b,c,dで囲まれた領域
が好適である。
【0051】
【実施例】実施例1 上掲の表3に示す成分組成の本発明に適合する合金の鋼
塊を、真空脱ガスプロセスにより精錬し溶製した後、そ
のスラブを表4に示す各条件での均質化熱処理を行い、
引き続き熱間圧延により5mmの熱延板とし、さらにこの
熱延板を表4に示す条件で冷間圧延および焼鈍を繰り返
して製造し、ダルロールによる調質圧延を施して0.13t
の製品厚さに調製した後、フォトエッチングプロセスを
経て実際のシャドウマスク製品として評価を行った。エ
ッチングは、0.26mmピッチのマスクパターンを用いて、
塩化第2鉄溶液46ボーメ、液温50℃、スプレー圧2.5 kg
f/cmで行った。表中のNo. 1〜5が本発明の製造条件
より得られた試料であり、No. 6〜17は本発明ないし参
考例である。なお、得られたシャドウマスク製品のエッ
チング後の特性を評価したところ、本発明材については
いずれも、プレス成形性における金型への型なじみ性お
よび張り剛性が良好であり、また、黒化性に関しても密
着性がよく十分な輻射特性が得られる黒化膜が生成して
いることを確認することができ、シャドウマスク製品と
して優れた特性を示すことがわかった。
【0052】実施例2 この実施例では、X線強度比Irおよび板厚方向 (板断面
方向) におけるNi偏析の強度分布、断面清浄度が適正範
囲内であれば、従来のシャドウマスク材と比較して、品
質および製品歩留りの点で十分満足できるシャドウマス
ク材であるが、さらに、歩留り等を向上させるために各
種要因との組み合わせを検討してみた。その結果を表6
に示す。表6は、断面清浄度、表面粗さ (Ra, Rsk, Sm,
Rθa)、平面および断面の10μm以上の介在物個数およ
び結晶粒度番号とプレス前焼鈍時における焼き付きの有
無、孔不良率の関係を示したものである。表面粗さ計
は、 (株) 東京精密 サーフコム1500Aを使用した。そ
の結果、以下のことが明らかとなった。 断面清浄度が0.05%を超えると孔不良率がやや多く
なる (No.21)。 平面および断面で観察される10μm以上の介在物個
数がそれぞれ単位面積当たり65個、および80個を超える
と孔不良の発生がやや増加することが確認された(No.2
9, 30)。 結晶粒度番号が7.0 以下になると孔不良率がやや増
加しているが、これは個々の結晶粒が大きいためそれぞ
れの結晶方位に依存した開孔形状となり、均一な孔を開
けることが比較的難しくなるためである (No.31)。 前述したように、適正な表面粗さはエッチング前の
レジスト塗布、露光工程においてレジストの密着性を高
め、また真空引きを改善すると共に露光によるハレーシ
ョンを防止する役割を持つほか、プレス前焼鈍時にシャ
ドウマスク同士の密着を防止し、ひいては密着による黒
化 (酸化) 皮膜のむらを防止する。これらの点を裏付け
るべくRa, Rsk, Sm, Rθa の組み合わせによってはエッ
チング起因の孔不良率や焼き付き (プレス前焼鈍時に板
同士の密着) による黒化むらが生じていることが確認さ
れた (No.22, 23, 24, 25, 26, 27, 28)。なお、本発明
例の上述した効果は、Nb含有材料についてもほとんど同
じ傾向が見られた。
【0053】
【表6】
【0054】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、エ
ッチング特性の優れたFe-Ni系合金、特にエッチング時
のすじむらやモトリングの発生のない低熱膨張のFe-Ni
系シャドウマスク用材料を提供することができる。従っ
て、映像のきれいなカラーブラウン管やディスプレー用
の材料を確実にかつ高い収率で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う中間焼鈍条件と最終焼鈍条件の適
正範囲の関連性を示す説明図である。
【図2】比較材11の(111) 極点図である。
【図3】本発明材3の(111) 極点図である。
【図4】本発明材1の(111) 極点図である。
【図5】本発明材4の(111) 極点図である。
【図6】比較材6の(111) 極点図である。
【図7】Ir とエッチングファクターおよびすじむら、
モトリングの品位との関係を示す説明図である。
【図8】合金板表面における大型介在物の例を示す写真
である。
【図9】合金板断面における大型介在物の例を示す写真
である。
【図10】合金板断面清浄度の測定の方法を示す図であ
る。
【図11】板断面の成分偏析量の定義を説明する図であ
る。
【図12】X線マイクロアナライザーによるNi偏析量測
定例を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−316604(JP,A) 特開 平7−138705(JP,A) 特開 平9−143625(JP,A) 特開 平9−262603(JP,A) 特開 平7−207415(JP,A) 特開 平10−183304(JP,A) 特開 平10−130725(JP,A) 特開2001−98347(JP,A) 特開 平11−302793(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ni:34〜38wt%、Si:0.5 wt%以下、Mn:
    1.0 wt%以下、P:0.1 wt%以下を含有する鉄ニツケル
    系合金シャドウマスク用材料において、(111)極点
    図における立方体方位(100)<001>とその双晶
    方位である(221)<212>とのX線強度比Irが
    0.5 〜5:1の範囲にある集合組織を有し、かつ、板厚
    方向におけるNi成分の平均偏析量 CNis が0.30%以
    下、最大偏析量CNimax が1.5 %以下であることを特
    徴とするFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の材料において、上記の
    成分に加えて、Nbを0.02〜2.0 wt%含むことを特徴とす
    るFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  3. 【請求項3】板厚方向におけるSi成分の平均偏析量 C
    Sis が0.002 %以下、最大偏析量 C Simax が0.01%
    以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の
    Fe−Ni系シャドウマスク用材料。
  4. 【請求項4】板厚方向におけるMn成分の平均偏析量 C
    Mns が0.010 %以下、最大偏析量 C Mnmax が0.05%
    以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1
    項に記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  5. 【請求項5】板厚方向におけるP成分の平均偏析量 C
    s が0.001 %以下、最大偏析量 Cmax が0.005 %以下
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に
    記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  6. 【請求項6】表面粗度に関するパラメーターRaが 0.2μm≦Ra≦0.9μm であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に
    記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  7. 【請求項7】表面粗度に関するパラメーターSmが 20μm≦Sm≦250μm であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に
    記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  8. 【請求項8】表面粗度に関するパラメーターRskが −0.5≦Rsk であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に
    記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  9. 【請求項9】表面粗度に関するパラメーターRθa が 0.01≦Rθa ≦0.09 であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に
    記載のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  10. 【請求項10】JIS G 0555の定めるところによる断面清
    浄度が0.05%以下であることを特徴とする請求項1〜9
    記載のいずれか1項に記載のFe−Ni系シャドウマスク用
    材料。
  11. 【請求項11】板表面から任意の深さまで研磨した位置
    における、10μm以上の介在物の個数が100mmの単位
    面積当たり65個以下であることを特徴とする請求項1〜
    10のいずれか1項に記載のFe−Ni系シャドウマスク用
    材料。
  12. 【請求項12】板断面において測定した10μm以上の介
    在物の個数が100mmの単位面積当たり80個以下である
    ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載
    のFe−Ni系シャドウマスク用材料。
  13. 【請求項13】JIS G 0551 による方法にて測定した結
    晶粒度番号が、7.0 以上の大きさを示すものであること
    を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のFe
    −Ni系シャドウマスク用材料。
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