JP3436574B2 - サーマルタイプ高ストラクチャーファーネスカーボンブラック - Google Patents

サーマルタイプ高ストラクチャーファーネスカーボンブラック

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ゴムのような弾性体に
配合した場合に好適な防振特性、特に動倍率(動的バネ
定数/静的バネ定数)を効果的に下げることのできるサ
ーマルタイプ高ストラクチャーカーボンブラックに関す
る。 【0002】 【従来の技術】カーボンブラックは、ゴム等に配合され
た場合、その機械的特性や耐摩耗性を改良することがで
きるので、タイヤを初めとするゴム産業に広く利用され
ている。カーボンブラックには、その構成する粒子径に
よりソフト系カーボンブラックとハード系カーボンブラ
ックに大別される。 【0003】ソフト系カーボンブラック、特に粒子径の
大きいグレードとしてはサーマルブラックがあり、天然
ガスの熱分解により得られるMT(Medium Th
ermal)やFT(Fine Thermal)級の
カーボンブラックが代表的なグレードである。原料とし
て天然ガスを用いず、液体状原料油の分解による大量か
つ連続的に生産する方法であるオイルファーネス法によ
るサーマルブラック代替の大粒子のサーマルブラックも
知られている。 【0004】本出願人は、ある特定の特性を有するサー
マルタイプファーネスカーボンブラックにおいて、ゴム
やプラスチックへの分散性に優れ、かつ屈曲亀裂特性を
格段に向上できることを見いだし、すでに出願した(特
開平1−229074号)。しかしながら、前出願のカ
ーボンブラクでは分散性や屈曲亀裂特性を改善できるソ
フト系カーボンブラックを提供することはできたが、配
合ゴムに対して好適な防振特性を付与するにはまだ改良
が必要であった。 【0005】ソフト系のカーボンブラックをゴムに配合
し、その防振特性を改良している従来技術としては特願
昭63−103171号〔出願人:豊田合成(株)〕が
あり、その要旨は、「原料ゴムに、重填剤として、ヨウ
素吸着量10−40mg/g、ジブチルフタレート(D
BP)吸油量(A法)100−500ml/100gの
特性を有するカーボンブラックを配合してなる防振ゴム
用ゴム組成物」にある。 【0006】しかしながら、ファーネスカーボンブラッ
クの製造において、一般的には大粒子となるほどストラ
クチャーは上がりにくく、この限界としてはよう素吸着
量(IA)でほぼ25mg/gで、この値を越えると比
較的DBP吸油量(DBPA)の値は上がり易くなる。
しかし、よう素吸着量(IA)が、これ以下、特に20
mg/gを下回った場合にはDBP吸油量(DBPA)
で100ml/100gを上回ることは難しい。 【0007】ゴムの防振特性を改良するために改質剤を
添加する場合もあり、たとえばスミファイン1162
(住友化学工業(株)商品名)などの添加により動倍率
を改善している例もある。しかし、このような処理は時
間的、コスト的な不利があり、ゴム配合剤により解決す
るのが望ましい。 【0008】カーボンブラックは、ゴムに配合した場合
の優れた特性を利用して、タイヤを初めとする各種ゴム
に配合されているが、このゴムの利用分野の一つとして
防振ゴムがある。この防振ゴムに対する要求は、商品の
差別化とも相まって益々厳しくなっている。この要求の
もっとも重要な点は、ゴム組成物の動的弾性率(Kd)
と静的弾性率(Ks)との比、すなわちKd/Ksで表
される動倍率を効果的に下げることのできるゴム組成物
とすることである。 【0009】この動的弾性率(Kd)は、外部(代表的
には、エンジン)から与えられた振動を伝達する程度を
表す指標であり、この値が小さいほど振動は伝わりにく
くなる。一方の静的弾性率(Ks)は、静的状態で物質
(たとえばエンジン)を支える力に相当し、この値が小
さければ物品の重量を保持する機能が維持できないこと
になる。 【0010】この2つの物性は互いに相反する特性を有
し、たとえば静的弾性率を向上させた場合、すなわち物
質を支えるために堅いものを用いた場合には動的弾性率
は低下し、その結果として振動が外部に伝わり、逆に振
動の外部への伝達を抑えるために動的弾性率を向上させ
ようとすると静的弾性率は低下して物質を支えることが
困難となる。 【0011】ゴムの動倍率を低下させる一般的手段とし
ては、配合剤であるカーボンブラックから考慮した場
合、粒子系の大きいカーボンブラックを使用すること、
およびカーボンブラックの使用量を減少することが行わ
れているが、いずれの場合でも機械的特性、すなわちあ
る一定の静的弾性率(硬さ、弾性率など)を維持できな
いという限界がある。すなわち、これらの特性は二律背
反の関係に有り、この両立は困難なために中間的な特性
で妥協している場合が多くなっている。 【0012】前述のように、添加物により動倍率を改良
するという方法も行われているが、分散工程が入るとい
う欠点がある。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、この
動倍率を効果的に低下させ、同時に機械的特性も満足さ
せることのできるカーボンブラックを提供する点にあ
る。 【0014】 【課題解決のための手段】本発明者らは、この動倍率に
及ぼすカーボンブラックの影響について広く研究を進め
た結果、カーボンブラックの粒子径に対して1本のマス
ター曲線が得られること、すなわちカーボンブラックの
粒子径が小さくなるとKdとKsが両者とも大きくな
り、また大きくなると両者とも小さくなってしまう関係
にあることを確かめた。従って、動倍率を低下させるた
めに粒子径の大きいカーボンブラックを使用すると、機
械的特性を満足させることができなくなるという結果を
招くことになる。 【0015】そこで、動倍率を効果的に低下させるとと
もに機械的特性を維持、満足させることのできるカーボ
ンブラック、特にソフト系カーボンブラックについて鋭
意研究を進めた結果、よう素吸着量(IA)が10〜1
6mg/g、DBP吸油量(DBPA)が45ml/1
00gを上回り95ml/100g以下の領域にあり、
比着色力が下記算出式−(i)で得られるAの値以下で
あり、かつ下記算出式−(ii)で得られるBの値が15
〜60である 算出式−(i) A=20+IA 算出式−(ii) B=(DBPA/IA) という特定の要件を満たすカーボンブラックが防振ゴム
用として、特に通常よりも低配合時において機械的特性
を維持しながら効果的に動倍率を低下させることができ
ることを見いだして本発明に到達したものである。 【0016】よう素吸着量IAが8〜20mg/gとい
う表面積範囲は、本出願人がすでに出願した特開平1−
229074号と一部一致するが、この先願のソフト系
カーボンブラックよりもストラクチャーいいかえればD
BPAが高いことが特徴であり、加えて着色力をある値
以下とするととともに(DBPA/IA)の値を特定
の範囲に設定することにより低配合時においても他のゴ
ム物性、特に機械的特性をほとんど低下させることなく
配合ゴムの動倍率を低下することができる。 【0017】よう素吸着量IAはカーボンブラックの表
面積(粒子径)を評価するものであるが、本発明では1
0−16mg/gという範囲にあるソフト系グレードで
ある。よう素吸着量IAが10mg/gを下回った場合
は、DBP吸油量DBPAを本発明の範囲としても機械
的特性を維持できなくなり、また16mg/gを上回っ
た場合には動倍率の低下効果が低くなる。 【0018】DBP吸油量DBPAは、カーボンブラッ
クの粒子のつながりの程度を評価するものであるが、本
発明では45ml/100gを上回り95ml/100
g以下の範囲、好ましくは50−95ml/100gの
範囲のカーボンブラックである。DBP吸油量DBPA
が45ml/100gを下回った場合では、カーボンブ
ラックの配合部数を低減することができず(低減した場
合、機械的特性を維持できない)、95ml/100g
を上回った場合は配合部数の低下だけでは静的弾性率を
制御することが困難となる。 【0019】また比着色力(A)が(IA+20)の値
を上回った場合には、動的弾性率が低下するので好まし
くない。 【0020】(DBPA/IA)2が15−60という
特定範囲とすることも本発明の要件であり、より好まし
い範囲は20−50の範囲にあるカーボンブラックであ
る。この値が15を下回った場合は配合部数を下げるこ
とが困難であり、また動倍率の低下効果も減少する。6
5を上回った場合は静的弾性率の制御が困難となるので
上記の範囲に限定される。 【0021】 【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明は、これに限定されるものではな
い。 【0022】製造例 特公昭49−45075号公報記載の円筒型製造炉と同
様な構造の図1に示したオイルファーネス炉(直径60
0mmφ、長さ5000mm)の炉頭部中心軸方向から
炉内に原料油噴霧ノズル1を挿入設置し、炉の接線方向
に上下一対に設けられた第1空気孔グループA,第2空
気孔グループBならびに第3空気孔グループCより適宜
の空気を導入し、各空気孔グループからの導入空気量な
らびに原料油の供給量、供給圧力および予熱温度を調節
することにより、物理化学特性値の異なるサーマルタイ
プ高ストラクチャーファーネスカーボンブラックを製造
した。 【0023】使用原料油の性状を表1に示し、製造した
カーボンブラックの製造条件と物理化学特性を表2〜4
にそれぞれ示した。 【0024】 【表1】【0025】 【表2】【0026】 【表3】【0027】 【表4】 【0028】より詳しく製造条件を説明すると、よう素
吸着量IAの制御は原料油供給量に対する全導入空気量
(原料油噴霧空気量と各空気孔グループからの導入空気
量を加えたもの)により行い、空気量の割合を減少する
ことによりよう素吸着量IAを上昇させることができ
る。一定の空気量の場合には、原料油噴霧空気量の割合
を増加させるとよう素吸着量IAは上昇する。 【0029】また、DBP吸油量DBPAの制御は、原
料油の導入条件により主として行い、原料供給量の増
加、供給圧力の低下および予熱温度の低下によりDBP
吸油量DBPAを上げることができる。さらに、使用す
る原料油の性状としてBMCI(アメリカ鉱山局指数、
この数値が高いほど芳香族成分含有量が多くなる)の高
いものを用いるのが好適である。さらにDBP吸油量D
BPAを高くする他の手段として各空気孔グループより
の空気導入割合の制御があり、上流側(第1空気孔グル
ープ側)からの導入割合を増加させることにより高くす
ることができる。 【0030】着色力の制御は、下流側空気(第3空気孔
グループ側)の導入量を減少させることにより上昇させ
ることができる。 【0031】(物理化学特性の測定)本発明にかかるカ
ーボンブラックの物理化学特性は、次のようにして測定
される。 (1)よう素吸着量(IA) JIS K6221(1982)6.1.1.で測定さ
れる。 (2)DBP吸油量(DBPA) JIS K6221(1982)6.1.2.で測定さ
れる。 (3)比着色力 JIS K6221(1982)6.1.3.で測定さ
れる。 【0032】(ゴム配合例)表2〜4に示した各カーボ
ンブラックを表5に示した配合割合でゴムに配合し、1
50℃で20分間加流したゴムについてゴム特性を測定
した。ゴム100重量部にカーボンブラック50重量部
を配合した場合のゴム特性を表6〜8に示した。同時
に、本発明の特徴である高ストラクチャー化によるカー
ボンブラックの配合量低下時の特性を評価するためにゴ
ム成分100重量部に対して40重量部配合時のゴム特
性について表9,10に示した。 【0033】 【表5】 【0034】(ゴム特性試験条件) (1)配合物の加硫条件:150℃20分 (2)防振特性の測定 【0035】a.tanδ 測定装置 : 粘弾性スペクトロメーター (株)岩本製作所 VES−F−III型 測定条件 温度 : 25±1℃ 周波数: 15Hz 動歪み: ±200μm(±1%) 試験片: 幅5mm、長さ35mm、厚さ2mm(チャ
ック間距離=20mm) 【0036】b.動的弾性率(Kd,kgf/cm2) 上記a.の測定装置を用い、下記の測定条件(他はa.
と同じ)で貯蔵弾性率E′を測定する 測定条件 周波数: 100Hz 動歪み: ±20μm(±0.1%) 測定された貯蔵弾性率E′を動的弾性率Kdとする。 【0037】c.静的弾性率(Ks,kgf/cm2) JIS K6301に準じて25%低伸張応力σ25(k
gf/cm2)を測定する。この値から、静的せん断弾
性率Gを求め、これを3倍して静的弾性率Ksを算出す
る。 G=1.639×σ25 Ks=3×G 【0038】d.動倍率 動倍率は、次の式で算出される。 動倍率=動的弾性率(Kd)/静的弾性率(Ks) 【0039】(3)そのほかのゴム特性 JIS K6300−1974およびJIS K630
1−1975に準じて測定する。 【0040】 【表6】 【0041】 【表7】 【0042】 【表8】*:旭#15〔旭カーボン(株)製〕 【0043】 【表9】 【0044】 【表10】【0045】(データの評価) カーボンブラックの物理化学特性について: 製造例No.2および4は本発明に係るカーボンブラッ
クであり、製造例No.5は、よう素吸着量(IA)が
本発明の下限を下回った例であり、No.6は逆に上回
った例である。製造例No.7は基本特性はほぼNo.
2と同一であるが着色力が計算式から算出される数値を
上回った例であり、No.8は、(DBPA/IA)
の値が本発明の上限を上回った例である。No.9は先
願に係る商品名旭#15〔旭カーボン(株)製〕であり
DBPAおよび(DBPA/IA)の値が本発明の範
囲をはずれたものである。 【0046】カーボンブラック50重量部配合の場合 1)300%引張応力および硬さ No.5はIAが本発明範囲を下回っているために、機
械的特性、特に300%引張応力と硬さが低下し、物品
を支えるための十分な基本特性を維持できない。また、
比較例9も300%引張応力が低下している。 2)静的弾性率(Ks)および動倍率 防振ゴムを設計する場合、静的弾性率、すなわち荷重負
荷時におけるゴムの保持能力はある一定の数値を維持す
る必要があり、この値が低下すると振動を吸収する以前
に機械的破壊が発生してしまう。比較例9においては、
50重量部配合時でさえも静的ばね定数が低下してい
る。No.6はIAが本発明範囲を上回っているため
に、静的弾性率は、No.3とほぼ同等であるが動倍率
は低下させることができない。また、No.7は、比着
色力が、計算値よりも大きくなっているために同じよう
にNo.2と比較して動倍率は高くなっている。 【0047】カーボンブラック40重量部配合の場合 No.2のカーボンブラックは、40重量部配合でも対
照例No.9の50重量部配合時とほぼ同等の静的弾性
率を有し、かつ動倍率を大幅に低くすることができた。
これに反して比較例のNo.7カーボンブラックでの動
倍率はNo.2のように大きく低下させることができな
い。加えて、本発明カーボンブラックのNo.2におい
ては50重量部に対する40重量部における動倍率の低
下効果は、比較対照例におけるそれよりも大きくなって
おり、低配合時での動倍率の低下効果は一層明らかであ
る。 【0048】 【効果】本発明により防振ゴムの特性上強く求められて
いるKd/Ksで表わされる動倍率を低く抑えるととも
に、静的弾性率(Ks)も満足すべき範囲の数値を有す
るゴム組成物を与える新規なカーボンブラックを提供す
ることができた。
【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、本発明カーボンブラックを製造するた
めに使用した一例の製造炉の縦断正面図である。 【符号の説明】 1 原料油噴霧ノズル A 第1空気孔グループ(2,2′) B 第2空気孔グループ(3,3′) C 第3空気孔グループ(4,4′)
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09C 1/50 C08K 3/04

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 よう素吸着量(IA)が10〜16mg
    /g、DBP吸油量(DBPA)が45ml/100g
    を上回り95ml/100g以下の領域にあり、比着色
    力が下記算出式−(i)で得られるAの値以下であり、
    かつ下記算出式−(ii)で得られるBの値が15〜60
    であるサーマルタイプ高ストラクチャーファーネスカー
    ボンブラック。 算出式−(i) A=20+IA 算出式−(ii) B=(DBPA/IA)
JP34368593A 1993-12-16 1993-12-16 サーマルタイプ高ストラクチャーファーネスカーボンブラック Expired - Lifetime JP3436574B2 (ja)

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JP2009091494A (ja) * 2007-10-10 2009-04-30 Asahi Carbon Kk カーボンブラックおよびそれを含む機能性部材配合用ゴム組成物
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