JP3790077B2 - カーボンブラック - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム成分に配合してタイヤトレッド部などに用いられるゴム組成物として補強性および耐摩耗性と低発熱性とを高位に両立し得るカーボンブラックに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム補強用のカーボンブラックには、その特性に応じた多様の品種があり、これらのカーボンブラック特性がゴムに配合した組成物の諸性能を決定する主要な因子となることから、通常、ゴムへの配合に当たっては部材用途に適合する特性のカーボンブラックを選定使用する手段が慣用されている。
【0003】
例えば、過酷な走行条件下に高度の耐摩耗性が要求されるタイヤトレッド部材用にはN110、N220級などの粒子径の小さいハード系カーボンブラックが適用されている。
【0004】
しかしながら、近年の自動車の高性能化に伴う高速性能や安定走行に関する要求と共に、最近では環境保護の面からもタイヤトレッド部材には高度の耐摩耗性と低位の発熱性(低燃費性)とを兼備するゴム性能の開発要請が強くなってきている。また、タイヤカーカス用途においても低発熱性及び高強度が要求され、比較的大粒のN550級が一般に適用されている。
【0005】
カーボンブラックのゴム補強性能は、従来からカーボンブラックの粒子径、比表面積、ストラクチャーなどが支配的因子とされており、例えば、ゴム組成物の補強性や耐摩耗性は配合するカーボンブラックの比表面積やストラクチャーが大きくなるほど増大するが、反面、発熱性が高くなることが知られている。したがって、これらの特性要素のみによって配合ゴムに高度の補強性や耐摩耗性と低発熱性とを同時に付与することは極めて困難である。
【0006】
そこで、粒子径、比表面積、ストラクチャーなどのカーボンブラックの基本的特性要素に加えて、よりミクロなコロイダル特性を付加することにより配合ゴムにこれらのゴム特性を両立付与する試みが種々提案されている。
【0007】
例えば、ゴム成分に配合して高度の耐摩耗性と低発熱性とを併有させるものとして、窒素吸着比表面積(N2SA)が100〜200m2/gのハード系領域に属しかつ〔T=ΔDst50×ΔDst75×R〕式で定義されるアグリゲートサイズ分布指数(T)の値が、〔4100−18.1(N2SA)<T<7700−25.5(N2SA)〕の関係を満たすカーボンブラックをゴム成分に配合した大型タイヤトレッド用に好適なゴム組成物(特開昭63−112638号公報)や窒素吸着比表面積(N2SA)が60〜160m2/g、DBP吸油量(DBP) が90〜150ml/100g のハード系領域に属し、凝集体空隙容積Vpが〔Vp≧0.00976 ×DBP −0.0358〕の要件を満たし、かつアグリゲート性状が〔ΔDst/(0.601×Dst +4.02) ≦1.00〕の要件を満たすタイヤトレッド用カーボンブラック(特開平3−121165号公報)などが提案されている。
【0008】
更に、特開平4−325535号公報には窒素吸着比表面積(N2SA)が60〜160m2/g、DBP吸油量が90〜150ml/100g のハード系領域に属し、〔Dpモード径≧75.2×(DBP/N2SA) +8.0 〕の選択的特性を備えるカーボンブラックを配合したゴム組成物が、特開平5−170973号公報には窒素吸着比表面積(N2SA)が60〜160m2/g、DBP吸油量が90〜150ml/100g のハード系領域に属し、かつ〔n≧1.580 −0.00676 ×Dstモード径〕および〔b≧9.300 −0.0433×Dstモード径〕の選択的特性を備えるカーボンブラックをゴム成分に配合したゴム組成物が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、タイヤトレッド用等のタイヤ用ゴム組成物としては、より高い補強性や耐摩耗性とより低い発熱性とを具備する必要があり、高度の補強性および耐摩耗性と低発熱性とを併有するゴム組成物の開発が強く望まれている。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑み開発したものであって、その目的はゴム成分に配合して優れた補強性および耐摩耗性と低発熱性とを高位に両立し得るカーボンブラック、すなわち、ゴム成分に配合して、タイヤトレッド用などのゴム部材として好適に使用される高度の補強性および耐摩耗性と低い発熱性とを併有するゴム特性を付与することのできるカーボンブラックを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明のカーボンブラックは、CTAB吸着比表面積が40(m2/g)以上、DBP吸収量が90(cm3/100g)以上の特性領域にあって、圧力4.92MPaで加圧時の圧縮電気比抵抗が3.0×10-3Ω・m 以上、ブラックネス(B)とCTAB吸着比表面積とが〔B≧0.58×CTAB+48〕の関係にあることを構成上の特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のカーボンブラックにおいてCTAB吸着比表面積が40(m2/g)以上、DBP吸収量が90(cm3/100g)以上の特性領域は、配合ゴムに高度の補強性および耐摩耗性などのゴム特性をバランスよく付与するための前提要件となるものである。
【0013】
すなわち、CTAB吸着比表面積が40(m2/g)およびDBP吸収量が90(cm3/100g)を下回ると、ゴム組成物とした際に補強性および耐摩耗性が低下するためである。また、ゴム成分に配合した際にゴム中への分散性やゴム加工性の著しい低下を防止するうえでCTAB吸着比表面積は40〜160(m2/g)であることが好ましい。
【0014】
これらの前提要件に加えて本発明のカーボンブラックは、圧力4.92MPaで加圧時の圧縮電気比抵抗が3.0×10-3Ω・m 以上、ブラックネス(B)とCTAB吸着比表面積とが〔B≧0.58×CTAB+48〕の関係にあることを主要な構成要件とする。
【0015】
カーボンブラックの圧縮電気比抵抗は、カーボンブラック自体の電気抵抗(あるいは導電性)を示す指標であるばかりでなく、カーボンブラック粒子の界面間の電気抵抗にも影響される。すなわち、圧縮電気比抵抗はカーボンブラック粒子の結晶構造の発達程度、および導電性を阻害するカーボンブラック粒子表面に残留する未分解炭化水素量などに左右される物性である。
【0016】
本発明は、この圧縮電気比抵抗の値を特定することにより、他のカーボンブラックの基本的特性が同等であれば、ゴム成分に配合した場合に高度の補強性および耐摩耗性を付与するとともに発熱特性を低位に抑えることが可能であることを見出した結果に基づくものであり、圧縮電気比抵抗として、4.92MPaの圧力で加圧した時の電気比抵抗の値を3.0×10-3Ω・m 以上に設定するものである。
【0017】
圧縮電気比抵抗はカーボンブラック粒子の結晶構造の発達度合およびカーボンブラック粒子の表面状態を総合的に示す指標と見做すことができ、この値が小さい場合にはカーボンブラック粒子内部における結晶構造が発達してアモルファス部が少なく、また表面状態は表面活性度の低い状態にあることを示している。また、粉体であるカーボンブラック粒子の圧縮電気比抵抗は加圧圧力によって変化するが、本発明においては4.92MPaの圧力で加圧時の圧縮電気比抵抗の値を3.0×10-3Ω・m 以上に設定する。この値が3.0×10-3Ω・m を下回るとカーボンブラック粒子内部におけるアモルファス部が少なく、表面活性度が低下して目標とするゴム特性、すなわち高度の補強性および耐摩耗性と低発熱性とを併有するゴム特性を得ることができなくなる。
【0018】
更に、本発明のカーボンブラックは、ブラックネス(B)とCTAB吸着比表面積とが〔B≧0.58×CTAB+48〕の関係にあることが必要である。ブラックネス(B)とCTAB吸着比表面積とが〔B≧0.58×CTAB+48〕の関係にあることは、カーボンブラックの粒子性状として一定粒子径(すなわち一定CTAB吸着比表面積)当たりの粒度分布がシャープであることを意味し、ゴム組成物の耐摩耗性向上に有効機能する。すなわち、ブラックネス(B)の値が〔B≧0.58×CTAB+48〕の関係を満たさない場合には発熱性のレベルに比較して耐摩耗性や補強性が低下して目標とするゴム特性を付与することができない。
【0019】
上記の構成におけるカーボンブラックの各特性は、以下の測定方法によって得られる値が用いられる。
【0020】
▲1▼CTAB吸着比表面積 (m2/g) ;
JIS K6217(1997)「ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験法」による。
【0021】
▲2▼DBP吸収量 (cm3/100g) ;
JIS K6217(1997)「ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験法」による。
【0022】
▲3▼圧縮電気比抵抗 (4.92 MPa加圧時) (Ω・m);
JIS K1469(1984)「アセチレンブラック」 5.6項による。
【0023】
▲2▼ブラックネス(B):
粒度 149μ以下の乾燥カーボンブラック試料を0.500g秤取し、ガラス板上でアマニ油を滴下しながら充分に練り合わせた後、ペーストをフーバーマーラー上で荷重15lbで25×5 回混練りして測定ガラス板面に薄膜として形成する。予め基準試料IRB#2 について作成した薄膜上にデンシクロンヘッドを置いて50%に設定し、ヘッドを少なくとも 3ヶ所移動させたときのメータ値が49.5〜50.5%になることを確認する。この状態で試料カーボンブラックの薄膜上にヘッドを置き、メータ値を読み取る。ヘッドを 5ヶ所移動し、その平均値を測定値として下式によりブラックネス(B)を算出する。
B=50/T(測定値)×100
但し、50は基準試料IRB#2 薄膜の設定値、T は試料カーボンブラックの測定値、100 は基準試料IRB#2 のブラックネスである。
【0024】
本発明のカーボンブラックは、緩徐に収斂、開口する鼓状絞り部をもつ広径の円筒反応炉を用い、燃料油と空気または窒素を含む適宜な酸化剤とによる高温燃焼ガス中に原料油の霧化気流を二段に導入することにより製造される。
【0025】
原料油にはクレオソート油、エチレンボトム油、FCC油などの高芳香族系重質油が使用され、高温燃焼ガスとの良好な均質混合状態を得るために霧化噴射ノズルを介して充分な微粒子気流として導入する。霧化噴射ノズルは、例えば水冷外套を有し炉軸方向に伸縮可能な外筒ノズルとこれに装着された伸縮自在な中軸筒ノズルからなる二重筒構造のものが使用され、燃焼バーナとは別に炉頭部に装着される。原料油は霧化空気と共に外筒ノズルおよび中軸筒ノズルを介して二段に分割導入されるが、この際の原料油導入位置は外筒ノズルの進退と中軸ノズルの伸縮によって変更することができる。本発明のカーボンブラックは、上記の装置を用い供給する空気量、窒素量、燃料油量および原料油量、原料油の分割導入点、カーボンブラック生成ガス流の炉内滞留時間などを制御することにより製造することができる。
【0026】
また、本発明のカーボンブラックは、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムなどの合成ゴム、あるいはこれらを混合したブレンドゴムなどのゴム成分100重量部に対し5〜200重量部の割合で配合することにより、タイヤトレッド用などのゴム部材として好適に使用される高度の補強性および耐摩耗性と低い発熱性とを併有するゴム組成物を得ることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0028】
実施例1〜5、比較例1〜5
(1)カーボンブラックの製造;
炉頭部に接線方向空気供給口を備えたウインドボックスと下流側出口が緩やかに収斂する燃焼室(内径 400mm、長さ 800mm)を設置し、該燃焼室と同軸的に連結する狭径部(内径 200mm、長さ 200mm)、およびこれに引き続き開拡するテーパー状反応室(内径 500mm、長さ9000mm)とからなる反応炉を用いて、炉頭から炉中心軸に沿って二重筒構造の原料油霧化噴射ノズルを挿着し、その周辺に4本の燃料バーナを設置した。原料油噴射ノズルは、上流側の原料油導入点(外筒ノズルの噴出口)が収斂部位に、下流側の原料油導入点が狭径部位にそれぞれ位置するように調整した。
【0029】
上記の反応炉により、表1に示す性状の燃料油および原料油を使用して、表2に示す発生条件を適用して特性の異なるカーボンブラックを製造した。得られたカーボンブラックの特性を測定し、その結果も表2に併載した。
【0030】
【表1】
Figure 0003790077
【0031】
【表2】
Figure 0003790077
【0032】
(2)ゴム組成物の作製;
これらのカーボンブラックを表3に示す配合比で天然ゴムに配合し、配合物を145℃で加硫してゴム組成物を作製した。
【0033】
【表3】
Figure 0003790077
【0034】
(3)ゴム特性の測定;
得られた各ゴム組成物について各種のゴム特性を測定して、その結果を表4に示した。なお、ゴム特性のうち損失係数(tanδ) および摩耗量の測定は下記の方法で行い、その他の特性は全てJIS K6301「加硫ゴム物理試験法」により測定した。
【0035】
▲1▼損失係数(tanδ) ;
ヴィスコ・エラスティック・スペクトロメータ〔(株)岩本製作所製〕を用いて下記の条件で測定した。なお、この値が大きいほど発熱性が高いことを示す。
試験片;厚さ2mm、長さ35mm、巾5mm
周波数;50Hz
温度;60℃
動的歪率;1.2%
【0036】
▲2▼ランボーン摩耗量(LA);
ランボーン摩耗試験機(機械式スリップ機構)を用い、次の条件で測定した。
なお、測定結果は東海カーボン(株)製、シースト3を基準試料として指数で表示し、この指数値が大きいほど耐摩耗性が高いことを示す。
試験片;厚さ10mm、外径44mm
エメリーホイール;GCタイプ、粒度 #80、硬度H
添加カーボランダム粉;粒度 #80、添加量9g/min
エメリーホイール面と試験片との相対スリップ率;24%、60%
試験片回転数;535rpm
試験荷重;4kg
【0037】
【表4】
Figure 0003790077
【0038】
また、表2および表4のデータから損失係数(tanδ) と耐摩耗指数(LA24とLA60の平均値)の関係を図1に、CTAB吸着比表面積と損失係数(tanδ) の関係を図2に示した。表2、表4および図1、図2の結果から、本発明で選択、特定した特性を備えたカーボンブラックを配合したゴム組成物は、優れた補強性および耐摩耗性と低発熱性とを高位に両立し得ることが判る。
【0039】
すなわち、実施例1〜5と比較例1〜5において、CTAB吸着比表面積およびDBP吸収量が同等レベルにあるカーボンブラックを配合したゴム組成物相互を比較すると、実施例のゴム組成物は比較例のゴム組成物に比べて高モジュラス(高補強性)、高耐摩耗性、低損失係数(tanδ) であることが認められ、また、図1から発熱性を示す損失係数(tanδ) に対応する耐摩耗性が高く、高耐摩耗性と低発熱性との両立化が図られており、図2からCTAB吸着比表面積当たりの損失係数(tanδ) が低位にあり、同等粒子径レベルにおいて低発熱性であることが判る。
【0040】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明で選択、特定した特性を備えるカーボンブラックによれば、このカーボンブラックを配合したゴム組成物は高度の補強性および耐摩耗性と低い発熱性とを併有し、優れた補強性および耐摩耗性と低発熱性とを高位に両立することができる。したがって、タイヤトレッド用などのゴム部材として好適に使用される高度の補強性および耐摩耗性と低い発熱性とを併有するゴム特性を付与することのできるカーボンブラックとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例と比較例による損失係数(tanδ) と耐摩耗指数(LA24とLA60の平均値)の関係を示した散布図である。
【図2】実施例と比較例によるCTAB吸着比表面積と損失係数(tanδ) の関係を示した散布図である。

Claims (1)

  1. CTAB吸着比表面積が40(m2/g)以上、DBP吸収量が90(cm3/100g)以上の特性領域にあって、圧力4.92MPaで加圧時の圧縮電気比抵抗が3.0×10-3Ω・m 以上、ブラックネス(B)とCTAB吸着比表面積とが〔B≧0.58×CTAB+48〕の関係にあることを特徴とするカーボンブラック。
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