JP3419053B2 - 予圧を付与された複列転がり軸受装置 - Google Patents

予圧を付与された複列転がり軸受装置

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JP3419053B2
JP3419053B2 JP31836293A JP31836293A JP3419053B2 JP 3419053 B2 JP3419053 B2 JP 3419053B2 JP 31836293 A JP31836293 A JP 31836293A JP 31836293 A JP31836293 A JP 31836293A JP 3419053 B2 JP3419053 B2 JP 3419053B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばビデオテープレ
コーダ(VTR)用、ハードディスクドライブ(HD
D)用、レーザビームプリンタ(LBP)用のスピンド
ルモータ、ロータリアクチュエータ、ロータリエンコー
ダ等、各種精密回転部分に組み込んでこの回転部分を支
承する転がり軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】VTRやHDDのスピンドルを、振れ回
り運動(軸と直角な方向の運動)及び軸方向の振れを防
止しつつ回転自在に支持する為、玉軸受を使用している
が、従来は互いに独立した1対の玉軸受(深溝型或はア
ンギュラ型)を使用していた。又、回転支持部分への玉
軸受の組立作業の効率化を図る為、複列の玉軸受を使用
する事も考えられている。
【0003】複列の玉軸受は、図5(A)に示す様に、
外周面に1対の深溝型の内輪軌道1、1を有する軸2
と、同図(B)に示す様に、内周面に1対の深溝型の外
輪軌道3、3を有する外輪4とを、同図(C)に示す様
に同心に組み合わせると共に、上記各内輪軌道1、1と
外輪軌道3、3との間にそれぞれ複数個ずつの玉5、5
を、転動自在に装着する事で構成される。尚、図5
(C)の6、6は、上記玉5、5を円周方向等間隔に保
持しておく為の保持器、7、7は、玉5、5装着部への
塵芥等の進入防止を図る為のシールである。
【0004】この図5(C)に示す様な複列深溝型玉軸
受は、従来から知られている構造であるが、上記VTR
やHDDのスピンドルを支持できる様なものは、従来は
製造が難しかった。これは、次の様な理由による。
【0005】VTRやHDDのスピンドルを支持する為
の玉軸受は、振れ回り運動及び軸方向の振れを防止する
為、極めて高精度なものとしなければならない。この
為、上記スピンドル支持用の玉軸受は、アキシャル方向
の予圧を付与した状態で使用する。
【0006】一方、深溝型の玉軸受を組み立てる為、内
輪軌道1と外輪軌道3との間に玉5、5を装着する場合
には、図6に示す様に、上記内輪軌道1と外輪軌道3と
を偏心させて、これら両軌道1、3の間の円周方向に亙
る隙間8を一部で大きくし、この隙間8の大きくなった
部分から上記内輪軌道1と外輪軌道3との間に、所定数
の玉5、5を挿入する。その後、上記内輪軌道1と外輪
軌道3とを同心にすると共に、上記所定数の玉5、5
を、円周方向等間隔に配置する。
【0007】この様に、円周方向一部にまとまって挿入
された複数の玉5、5を、円周方向等間隔に配置し直す
際には、各玉5、5を上記内輪軌道1及び外輪軌道3に
対して滑らせなければならない。この際、上記内輪軌道
1及び外輪軌道3が各玉5、5を強く押圧する状態(予
圧を付与した状態)にあると、上記内輪軌道1、外輪軌
道3、各玉5、5の転動面に傷が付き易く、傷が付いた
場合には、回転時に振動を生じたり、或は耐久性が損な
われる等の問題を生じる。
【0008】これに対して、例えば特開昭57−200
722号公報に記載されている様に、単列深溝型の玉軸
受を1対、互いに間隔をあけて設ける構造の場合、各玉
軸受を予圧を付与しない状態で組み立てられるので、上
述の様な不都合はない代わりに、玉軸受の組み付け作業
が面倒になる。
【0009】又、例えば特開昭61−65913号公
報、同61−79899号公報、実開昭50−1017
53号公報、同56−127456号公報には、テンシ
ョンプーリ用、或はウォータポンプ用として使用する、
複列深溝型玉軸受が記載されているが、これらは何れ
も、あまり高度の回転精度を要求されるものではなく、
予圧を付与しない状態で使用されるもので、VTRやH
DD等のスピンドルを支持する為には利用できない。
【0010】又、特開昭61−145761号公報に
は、複列アンギュラ型玉軸受が、実開昭62−2232
3号公報には、深溝型玉軸受とアンギュラ型玉軸受とを
組み合わせた複列玉軸受が、それぞれ記載されている。
ところが、アンギュラ型玉軸受を組み立てる場合には、
軌道面の肩部を玉が通過する際、この肩部や玉の転動面
を傷付けない様にする為、例えば実公昭39−3916
号公報に記載されている様に、外輪を加熱膨張させてお
く必要があり、組み立て作業が面倒になる。
【0011】又、特公昭57−140912号公報に
は、主外輪とこの主外輪の軸方向に変位自在な副外輪と
を組み合わせた外輪を有する複列深溝型玉軸受を、予圧
を付与しない状態で組み立てた後、上記副外輪を軸方向
に変位させて所定の予圧付与を行なうと共に、この副外
輪を抑え金で固定する発明、並びに上記副外輪をばねに
より軸方向に押圧する事で、所定の予圧付与を行なう発
明が記載されている。ところが、この公報に記載された
発明の場合、抑え金やばねが必要となり、部品管理、組
み立て作業が面倒になるだけでなく、玉軸受の軸方向長
さが必要以上に大きくなる場合がある。
【0012】又、米国特許第4900958号明細書に
は、図7〜8に示す様な構造が記載されている。このう
ちの図7に示した構造の場合、深溝型(アンギュラ型で
も良い)の玉軸受9、9を1対、軸2の外周面とハウジ
ング10の内周面との間に設けると共に、両玉軸受9、
9の内輪11、11を、互いに近付き合う方向に押圧し
て、両玉軸受9、9の玉5、5に予圧を付与している。
【0013】即ち、一方(図7の右方)の内輪11の端
面を止め輪12に突き当てると共に、他方(図7の左
方)の内輪11をこの止め輪12に向け押圧して、予圧
付与を行なっている。他方の内輪11は上記軸2に対し
て、接着剤、或は焼き嵌めにより固定される。従って上
記他方の内輪11は、接着剤が固化する迄、或は加熱し
た内輪11が収縮する迄、上記予圧に相当する荷重で、
上記止め輪12に向け押圧し続ける。
【0014】又、図8に示した構造の場合、軸2の外周
面に複列の内輪軌道1、1を形成している。ハウジング
10に内嵌した1対の外輪4、4の間には間座13を挟
持し、この間座13によって両外輪4、4を、互いに遠
ざかる方向に押圧し、玉5、5に予圧を付与している。
【0015】又、実開平3−36517号公報には、図
9に示す様に、1対の外輪4、4の間に挟持した板ばね
14によって、両外輪4、4を互いに遠ざかる方向に押
圧し、玉5、5に予圧付与を行なう構造が記載されてい
る。
【0016】又、特開平3−222661号公報及び米
国特許第5045738号明細書には、図10〜11に
示す様な構造が記載されている。このうちの図10に示
した構造は、板ばね14によりハウジング10に内嵌し
た外輪4を押圧する事で予圧を付与するもの、図11に
示した構造は、所定の予圧を付与した状態で外輪4をハ
ウジング10に対し、接着剤により、或は焼き嵌めによ
り固定したものである。複列の外輪軌道3、3のうち、
一方の外輪軌道3は上記外輪4の内周面に、他方の外輪
軌道3はハウジング10の内周面に、それぞれ形成され
ている。
【0017】更に、図示は省略したが、特開昭61−1
45761号公報及び米国特許第4713704号明細
書には、複列の内輪軌道の内の一方の内輪軌道を軸の外
周面に、他方の内輪軌道をこの軸に外嵌した内輪の外周
面に、それぞれ形成すると共に、玉に適正な予圧を付与
した状態で上記内輪を軸に接着固定する構造が記載され
ている。
【0018】
【先発明の説明】ところが、前記図7〜11に示した構
造並びに特開昭61−145761号公報等に記載され
た構造は、組み付けが面倒である、部品管理が必要であ
ると言った問題に加えて、微小振動が生じ易い。即ち、
上記従来構造は何れも、予圧付与を行なう際には、内輪
11が軸2に対し(図7に示した構造の場合)、或は外
輪4がハウジング10に対し(図8〜11に示した各構
造の場合)、それぞれ緩く嵌合している為、予圧付与作
業に伴って上記内輪11或は外輪4が、僅かとは言え傾
斜し易い。そして、傾斜した場合には、得られた転がり
軸受装置の回転時に微小な振動が生じ、この軸受装置を
組み込んだHDD等の性能を悪化させる恐れがある。
【0019】この様な問題に対処すべく本発明者は先
に、図12〜14に示す様な、予圧を付与された複列転
がり軸受装置を発明した(特願平5−44383号)。
この先発明に係る予圧を付与された複列転がり軸受装置
のうち、先ず第1例の構造は、図12(A)〜(D)に
示す様な工程で造られる。第一の部材である軸15は、
同図(A)に示す様に、小径部15aと大径部15bと
を段部15cで連続させており、第一の周面である大径
部15bの外周面に、第一の軌道である深溝型の第一の
内輪軌道16を形成している。第三の部材である内輪1
7は、自由状態に於いて上記小径部15aの外径よりも
少し小さな内径を有する。この内輪17は外周面に、第
四の軌道である深溝型の第二の内輪軌道18を有する。
【0020】この様な軸15と内輪17とを含む転がり
軸受装置を造る場合、先ず、第一工程として、図12
(B)に示す様に、上記軸15の小径部15aに上記内
輪17を、十分な嵌合強度(予圧付与の反力でずれ動か
ない強度)を持たせて外嵌する。そして、上記大径部1
5bの外周面の第一の内輪軌道16と内輪17外周面の
第二の内輪軌道18とのピッチP1 を、完成後の転がり
軸受装置に所定の予圧を付与する為に必要なピッチp1
(図12(D))よりも長く(P1 >p1 )しておく。
【0021】次いで、第二工程として、上記第一工程に
より組み合わされた軸15及び内輪17を、第二の部材
である円筒形の外輪19の内側に挿入する。第二の周面
であるこの外輪19の内周面には、第二、第三の軌道で
ある、1対の深溝型の外輪軌道25、25を形成してい
る。第二工程では、この1対の外輪軌道25、25と前
記第一、第二の内輪軌道16、18とを対向させる。
【0022】次に、第三工程として、上記軸15及び内
輪17と外輪19とを偏心させ、前記図6に示す様に、
上記1対の外輪軌道25、25と第一、第二の内輪軌道
16、18との間の円周方向に亙る隙間8を一部で大き
くする。そして、この隙間8の大きくなった部分から、
上記隙間8内に、所定数の玉5、5を挿入する。
【0023】次に、第四工程として、上記1対の外輪軌
道25、25と第一、第二の内輪軌道16、18との間
の隙間8内に挿入された所定数の玉5、5を円周方向に
移動させつつ、上記軸15及び内輪17と外輪19とを
同心にして、各玉5、5を円周方向等間隔に配置する。
これと共に、図12(C)に示す様に、各玉列部分に保
持器6、6を装着して、各玉5、5が円周方向等間隔位
置に留まる様にする。又、必要に応じて、外輪19の両
端部内周面にシール7、7を装着する。この状態では、
未だ各玉5、5に予圧は付与されていない。
【0024】そして、最後に第五工程として、上記内輪
17を段部15cに向け、軸15の外周面で軸方向(図
12の左方)に変位させ、上記第一、第二の内輪軌道1
6、18のピッチを短くして、前記所定の予圧を付与す
る為に必要なピッチp1 とする。この状態で、上記複数
の玉5、5に所定の予圧が付与され、予圧を付与された
複列転がり軸受装置として完成する。完成時にも、上記
段部15cと内輪17の端面との間には隙間が存在す
る。
【0025】この様にして得られた予圧を付与された複
列転がり軸受装置では、内輪17の内周面と小径部15
aの外周面との間に、締まり嵌めの摩擦力に基づいて、
上記予圧に見合う軸方向荷重よりも大きな制止力が作用
する。従って、軸15と内輪17との間に接着剤を塗布
しなくても、上記内輪17がずれ動かず、付与された予
圧が消滅する事がなく、一体の玉軸受として取り扱え
る。この為、VTRやHDDのスピンドルの軸受部を構
成する作業が容易となる。又、アキシャル方向に亙って
予圧が、円周方向に亙って均一に付与されている為、上
記スピンドルの回転支持を高精度に行なえる。
【0026】但し、上記内輪17は、締まり嵌めによる
制止力よりも大きい力を軸方向に加える事により、上記
小径部15aに対して変位させる事が可能である。この
為、上記内輪17に、上記荷重よりも大きな適宜の力を
付与し、この内輪17を軸方向に亙って変位させれば、
転がり軸受装置に付与されている予圧を後から、しかも
円周方向に亙る均一性を維持したまま調整(増大又は減
少)できる。
【0027】次に、図13に示した第2例の場合には、
内輪17aを小径部15aに外嵌した後、この軸15並
びに内輪17aの外周面に、それぞれ第一、第二の内輪
軌道16a、18aを形成している。この様な構成を採
用する事により、内輪17aを小径部15aに外嵌する
事で、第二の内輪軌道18(図12)が非円形に歪む事
を防止している。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】尚、第一、第二の内輪軌道のピッチを変え
る事で予圧調整を行う構造の場合には、第3例を示す
14の様に、軸2に1対の内輪17、17bを外嵌する
事もできる。各内輪17、17bの外周面には、それぞ
れ第一、第二の内輪軌道16b、18bを形成してい
る。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の様に
構成され作用する、先発明に係る予圧を付与された複列
転がり軸受装置に於いても、依然として次に述べる様
な、解決すべき点があった。
【0037】即ち、先発明の構造では、各玉5、5に予
圧を付与すべく、軸15、2に内輪17、17a、17
bを、締まりばめを持って外嵌している。この際に上記
内輪17、17a、17bはその内周面に、直径方向
外方に向いた強い力を受ける
【0038】この力の大きさが所定範囲内であり、且つ
全周に亙って均一であれば特に問題にはならない。とこ
ろが、上記締まりばめの為の締め代が過大で上記力が大
き過ぎたり、或は軸15、2の外周面の真円度が悪く、
上記力の大きさが円周方向に亙って不均一であったりす
ると、上記内輪17、17a、17bの外周面に形成し
た内輪軌道18、18a、18bが変形する。
【0039】この様な原因で内輪軌道18、18a、
8bが変形すると、上記内輪17、17a、17bを
んで構成される複列玉軸受の回転精度、特に非回転同期
振れが悪化する。図13に示す様に、軸15の小径部1
5aに内輪17aを外嵌した後、この内輪17aの外周
面に内輪軌道18aを形成する構造の場合にはこの内
輪軌道18aの変形を少なく抑えられるが、製造作業が
面倒になる。又、この図13に示した構造の場合も、玉
5、5の組み付け後に上記内輪17aを軸方向に移動さ
せる為、上記内輪17aが、僅かとは言え変形する可能
性がある。
【0040】特に、上記内輪17aの内径は小さいの
で、この内輪17aの内周面の真円度を高精度で確保す
る事は面倒で、コストが嵩む。この為、この軸15、2
への圧入嵌合に拘らず、上記内輪軌道18、18a、1
8bの変形を抑える事が、高性能の予圧を付与された複
列転がり軸受装置を低コストで実現する面から重要であ
る。本発明の予圧を付与された複列転がり軸受装置は、
上述の様な事情に鑑みて発明したものである。
【0041】
【課題を解決する為の手段】本発明の予圧を付与された
複列転がり軸受装置は、前述した先発明に係る予圧を付
与された複列転がり軸受装置と同様に、円筒状の外周面
を有する軸と、この軸と同心に配置され、この軸の外周
面と対向する円筒状の内周面を有する外輪と、この軸
はこの軸に対し固定されたこの軸とは別体の内輪の外周
面に形成された第一の内輪軌道と、上記外輪の内周面の
一部でこの第一の内輪軌道と対向する部分に形成された
第一の外輪軌道、並びにこの第一の外輪軌道から軸方向
にずれた部分で上記外輪の内周面に形成された第二の外
輪軌道と、予圧に基づくスラスト荷重による移動を阻止
する為に十分な嵌合強度を持って上記軸に、これら軸及
び外輪と同心に支持され、この外輪の内周面と対向する
第二の外周面を有する第二の内輪と、この第二の外周面
の一部で、上記第二の外輪軌道に対向する部分に形成さ
れた第二の内輪軌道と、上記第一の内輪軌道と第一の外
輪軌道との間、並びに上記第二の内輪軌道と第二の外輪
軌道との間に、それぞれ複数個ずつ設けられた玉とを備
える。そして、上記軸に対する上記第二の内輪の嵌合深
さを調節する事により、上記複数個ずつの玉に適正な予
圧を付与している。
【0042】更に、本発明の予圧を付与された複列転が
り軸受装置では、少なくとも上記第二の内輪の内周面
は、上記軸に締まりばめにより嵌合する小径部と、この
軸と締り嵌めでは嵌合しない大径部とを備えており、上
記第二の内輪軌道は、このうちの大径部の直径方向外側
位置に形成されている。又、好ましくは請求項2に記載
した様に、上記第二の内輪の中間部内周面に凹溝を、全
周に亙って形成し、この第二の内輪の内周面でこの凹溝
の片側位置に小径部を、同じくこの凹溝の他側位置に大
径部を、それぞれ形成する。
【0043】
【作用】上述の様に構成される本発明の予圧を付与され
た複列転がり軸受装置の場合、第二の内輪の外周面に形
成した第二の内輪軌道が歪みにくく、この第二の内輪軌
道の歪みに基づく回転精度の悪化を防止できる。この
為、外径が小さく真円度確保が難しい外周面の真円
度を極端に高くしなくても、予圧を付与された複列転が
り軸受装置の性能向上を図れる。 更に、上記第二の内
輪軌道の内径側に存在する大径部の内周面は、予圧を付
与された複列転がり軸受装置の組立作業時にも、軸の外
周面によって径方向外方に押される事はない。従って、
上記第二の内輪軌道の変形防止をより効果的に行なえ
る。
【0044】
【実施例】図1は、本発明の第一実施例を示している。
軸26の外周面には1対の内輪27、27を、十分な
(付与した予圧に基づく反力によって各内輪27、27
が動く事を防止できる程度の)嵌合強度を持って外嵌し
ている。上記1対の内輪27、27のうち、一方(何れ
でも良い)の内輪27が請求項1に記載した別体の内輪
であり、他方の内輪が同じく第二の内輪である。又、こ
れら各内輪27、27の周囲には円筒状の外輪28を、
上記軸26及び内輪27、27と同心に配置している。
【0045】上記各内輪27、27の外周面にはそれ
ぞれ1本ずつの内輪軌道29、29を形成している。
又、各内輪27、27の中間部内周面には凹溝30、3
0を、全周に亙って形成している。そして、上記各内輪
27、27の内周面で上記各凹溝30、30の片側位置
に、小径部31、31を形成している。これら各小径部
31、31の内周面が、上記軸26の外周面に締まりば
めを持って外嵌する。即ち、上記各内輪27、27は、
この小径部31、31部分で上記軸26に、十分な嵌合
強度を持って外嵌固定している。
【0046】又、上記各内輪27、27の内周面で上記
各凹溝30、30の他側位置には、大径部32、32を
形成している。これら各大径部32、32の内周面
上記軸26の外周面と嵌合しない。即ち、上記各小径部
31、31の内周と上記軸26の外周面とが締まりばめ
を持って外嵌した状態で、上記各大径部32、32の内
周面と軸26の外周面との間には、隙間が存在する。そ
して、上記各内輪軌道29、29は、この様な各大径部
32、32の周囲部分に形成している。
【0047】上記各内輪27、27をこの様に構成する
為、各内輪27、27を外嵌する軸26外周面の真円度
が不良であったり、或は各内輪27、27を軸26に外
嵌する際の締め代が過大であったりして、各内輪27、
27の嵌合部、即ち上記各小径部31、31形成部分が
歪んだ様な場合でも、この歪みが上記各内輪軌道29、
29部分にまで及ぶ事がない。従って、上記各内輪2
7、27に形成した内輪軌道29、29の歪み防止を十
分に図れて、高い回転精度を有する複列玉軸受を得られ
る。特に、上記各内輪軌道29、29の内径側に存在す
る上記各大径部32、32の内周面は、予圧を付与され
た複列転がり軸受装置の組立作業時にも、上記軸26の
外周面によって径方向外方に押される事はない。従っ
て、上記各内輪軌道29、29の変形防止をより効果的
に行なえる。
【0048】上記各内輪軌道29、29のピッチを少し
大きめとした状態で玉5、5を組み込んだ後、少なくと
も一方の内輪27を軸方向にずらせ、上記各玉5、5に
予圧を円周方向に亙って均一に付与する点等、内輪軌道
29、29の歪み防止を図る点以外は、前述した先発明
に係る予圧を付与された複列転がり軸受装置と同様であ
る。本発明は、先発明のうちの図14に示した構造に本
発明を適用したものである。よって、図14に示した構
造と同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略
する。
【0049】次に、図2は本発明の第二実施例を示し
ている。本実施例の場合は、各内輪27、27を軸26
に外嵌する事に伴ってこれら各内輪27、27の外周面
に形成した内輪軌道29、29が歪むのを防止するのに
加えて、外輪19aをハウジング等他の部材に内嵌固定
する場合に、この外輪19aの内周面に形成した外輪軌
道25、25が歪む事を防止すべく考えたものである。
上記外輪19aの内周面で互いに軸方向に離隔した2個
所位置には、それぞれ外輪軌道25、25を形成してい
る。更に本実施例の場合には、上記外輪19aの内周面
で上記複列の外輪軌道25、25の間部分に、それぞれ
が外輪19aの内周面の全周に亙る1対の凹溝33、3
3を、軸方向に離隔して形成している。
【0050】HDDやVTRのスピンドルの回転支持部
を構成すべく、上記外輪19aをハウジング、或はロー
タリハブ等の他の部材に内嵌固定する場合に、この他の
部材と上記外輪19aとは、上記1対の凹溝33、33
の間部分34で嵌合する。従って、外輪19aを他の部
材に内嵌固定した状態で、この外輪19aの軸方向両端
部外周面と上記他の部材の内周面との間には、多少なり
とも隙間が存在する状態となる。
【0051】この様に嵌合位置を規制する為には、上記
外輪19aの外径を、上記間部分34で両端部よりも少
し大きくしたり、或は上記他の部材の内周面で上記間部
分34と嵌合する部分の内径を、他の部分の内径よりも
少し小さくする。内径を小さくする場合には、当該部分
が一方の外輪軌道25を形成した部分を通過する際に、
この外輪軌道25が弾性変形する可能性があるが、通過
後は復元する。
【0052】本実施例の場合には、外輪19aの剛性が
1対の凹溝33、33を形成した部分で低くなる。この
為、この1対の凹溝33、33の間部分34がハウジン
グ等他の部材との嵌合に基づいて多少変形した場合で
も、この変形が上記各凹溝33、33を越えて上記各外
輪軌道25、25形成部分にまで達しにくくなる。この
結果、各外輪軌道25、25が殆ど変形しなくなって、
この外輪19aを組み込んだ複列玉軸受の回転精度を確
保できる。
【0053】特に、図2に示した構造の場合には、上記
間部分34を厚肉に形成して、この間部分34の剛性を
高くし、変形しにくくしている。従って、上記外輪軌道
25、25の歪み防止効果が一層向上する。その他の構
成及び作用は、前述した第一実施例と同様である為、同
等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略す
る。
【0054】次に、図3は本発明の第三実施例を示し
ている。本実施例の場合には、HDD用の電動モータに
組み込む複列転がり軸受装置に本発明を適用している。
ハウジング35の中央部には軸15の基端部を内嵌固定
している。この軸15の小径部15aには内輪27aを
外嵌固定している。この内輪27aの内周面には、前述
した第一実施例と同様に、凹溝30を挟んで小径部31
と大径部32とを形成している。そして、このうちの小
径部31部分で上記内輪27aを、上記軸15の小径部
15aに外嵌固定している。
【0055】上記軸15及び内輪27aの周囲には外輪
28aを、これら軸15及び内輪27aと同心に配置し
ている。この外輪28aの内周面は、上記内輪27aの
周囲部分に位置する大径部36と上記軸15の大径部1
5bの周囲に位置する小径部37とを傾斜部38で連続
させた形状を有する。そして、上記大径部15bの外周
面に形成した内輪軌道29aと上記小径部37に形成し
た外輪軌道25aとの間に小径の玉5a、5aを設けて
いる。又、上記内輪27aの外周面に形成した内輪軌道
29bと上記大径部36に形成した外輪軌道25bとの
間に大径の玉5b、5bを設けている。
【0056】上記外輪28aは、ハードディスクを支持
する為のハブ39の中心部に形成した支持円筒部40に
内嵌固定している。この支持円筒部40の内周面は、上
記外輪28aの外周面に合わせて、大径部と小径部とを
段部で連続させた形状としている。互いに嵌合する各周
面をこの様に形成する事で、嵌合作業の際にこれら各周
面同士がそれぞれの全長に亙って摺動する事がなくな
り、嵌合作業の能率化を図れる。
【0057】尚、上記ハブ39の内周面にはロータ41
を、上記ハウジング35にはこのロータ41の内周面と
対向するステータ42を、それぞれ固定して、上記ハブ
39を回転駆動させる為の電動モータ43を構成してい
る。上記内輪27aを小径部15aに外嵌する際に内輪
軌道29bの変形を防止する点等、他の構成及び作用
は、前述した第一実施例と同様である。
【0058】次に、図4は本発明の第四実施例を示し
ている。本実施例の場合には、小径の外輪素子44aと
大径の外輪素子44bの端面同士をスペーサ45を介し
て突き合わせる事で、外輪19aを構成している。この
様な外輪19aは、上述の第三実施例に使用した様な、
ハブ39の支持円筒部40(図3)に内嵌する。
【0059】本実施例の場合、外輪19aを支持円筒部
40に内嵌する作業の能率化を図れる事は、上述した第
三実施例と同様である。又、軸26に外嵌固定した内輪
27、27外周面の内輪軌道29、29の変形防止を図
れる事は、前述した第一〜第二実施例と同様である。
【0060】
【0061】
【発明の効果】本発明の予圧を付与された複列転がり軸
受装置は、以上に述べた通り構成される為、前述した先
発明と同様に、アキシャル方向に亙る予圧を円周方向に
亙って均一に付与し、更にこの予圧を後から、しかも円
周方向に亙る均一性を維持したまま調整できると言った
効果を確保しつつ、嵌合に基づいて軌道が変形するのを
防止できて、コスト上昇を抑えつつ、高い回転精度を有
する複列玉軸受を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す断面図。
【図2】同第二実施例を示す断面図。
【図3】同第三実施例を示す断面図。
【図4】同第四実施例を示す断面図。
【図5】従来から考えられていた転がり軸受装置の部品
と完成品とを示す断面図。
【図6】玉を挿入する為、外輪軌道と内輪軌道とを偏心
させた状態を示す図。
【図7】従来構造の第1例を示す半部断面図。
【図8】同第2例を示す半部断面図。
【図9】同第3例を示す断面図。
【図10】同第4例を示す半部断面図。
【図11】同第5例を示す断面図。
【図12】先発明の予圧を付与された複列転がり軸受装
置の第1例を組み立てる状態を工程順に示す断面図。
【図13】同第2例を工程順に示す断面図。
【図14】同第3例を工程順に示す半部断面図。
【符号の説明】
1 内輪軌道 2 軸 3 外輪軌道 4 外輪 5、5a、5b 玉 6 保持器 7、7a シール 8 隙間 9 玉軸受 10 ハウジング 11 内輪 12 止め輪 13 間座 14 板ばね 15 軸 15a 小径部 15b 大径部 15c 段部 16、16a、16b 第一の内輪軌道 17、17a、17b、17c 内輪 18、18a、18b 第二の内輪軌道19、19a 外輪 26 軸 27、27a 内輪 28、28a 外輪 29、29a、29b 内輪軌道 30 凹溝 31 小径部 32 大径部 33 凹溝 34 間部分 35 ハウジング 36 大径部 37 小径部 38 傾斜部 39 ハブ 40 支持円筒部 41 ロータ 42 ステータ 43 電動モータ 44a、44b 外輪素子 45 スぺーサ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−70923(JP,A) 特開 平5−215136(JP,A) 特開 昭61−145761(JP,A) 特開 昭60−237217(JP,A) 特開 平1−229114(JP,A) 特開 平3−285545(JP,A) 実開 平1−82903(JP,U) 実開 昭62−170363(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 19/00 - 27/08 F16C 33/30 - 33/66 F16C 35/00 - 43/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒状の外周面を有する軸と、この軸と
    同心に配置され、この軸の外周面と対向する円筒状の内
    周面を有する外輪と、この軸又はこの軸に対し固定され
    たこの軸とは別体の内輪の外周面に形成された第一の内
    輪軌道と、上記外輪の内周面の一部でこの第一の内輪軌
    道と対向する部分に形成された第一の外輪軌道、並びに
    この第一の外輪軌道から軸方向にずれた部分で上記外輪
    の内周面に形成された第二の外輪軌道と、予圧に基づく
    スラスト荷重による移動を阻止する為に十分な嵌合強度
    を持って上記軸に、これら軸及び外輪と同心に支持さ
    れ、この外輪の内周面と対向する第二の外周面を有する
    第二の内輪と、この第二の外周面の一部で、上記第二の
    外輪軌道に対向する部分に形成された第二の内輪軌道
    と、上記第一の内輪軌道と第一の外輪軌道との間、並び
    に上記第二の内輪軌道と第二の外輪軌道との間に、それ
    ぞれ複数個ずつ設けられた玉とを備え、上記軸に対する
    上記第二の内輪の嵌合深さを調節する事により、上記複
    数個ずつの玉に適正な予圧を付与した、予圧を付与され
    た複列転がり軸受装置であって、少なくとも上記第二の
    内輪の内周面は、上記軸に締まりばめにより嵌合する小
    径部と、この軸と締りばめでは嵌合しない大径部とを備
    えており、上記第二の内輪軌道は、このうちの大径部の
    直径方向外側位置に形成されている予圧を付与された複
    列転がり軸受装置。
  2. 【請求項2】 第二の内輪の中間部内周面に凹溝が、全
    周に亙って形成されており、この第二の内輪の内周面で
    この凹溝の片側位置に小径部が、同じくこの凹溝の他側
    位置に大径部が、それぞれ形成されている、請求項1に
    記載した予圧を付与された複列転がり軸受装置。
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