JP3672333B2 - 複列玉軸受 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばビデオテープレコーダ(VTR)用、ハードディスクドライブ(HDD)用、レーザビームプリンタ(LBP)用のスピンドルモータ、ロータリアクチュエータ、ロータリエンコーダ等、各種精密回転部分に組み込んでこの回転部分を支承する玉軸受に関する。
【0002】
【先行技術の説明】
VTRやHDDのスピンドルを、振れ回り運動(軸と直角な方向の運動)及び軸方向の振れを防止しつつ回転自在に支持する為、玉軸受を使用しているが、従来は互いに独立した1対の玉軸受(深溝型或はアンギュラ型)を使用していた。又、回転支持部分への玉軸受の組立作業の効率化を図る為、複列の玉軸受を使用する事も考えられている。
【0003】
複列の玉軸受は、図3(A)に示す様に、外周面に1対の深溝型の内輪軌道1、1を有する軸2と、同図(B)に示す様に、内周面に1対の深溝型の外輪軌道3、3を有する外輪4とを、同図(C)に示す様に同心に組み合わせると共に、上記各内輪軌道1、1と外輪軌道3、3との間にそれぞれ複数の玉5、5を、転動自在に装着する事で構成される。尚、図3(C)の6、6は、上記玉5、5を円周方向等間隔に保持しておく為の保持器、7、7は、玉5、5装着部への塵芥等の進入防止を図る為のシールである。
【0004】
この図3(C)に示す様な複列深溝型玉軸受は、従来から知られている構造であるが、上記VTRやHDDのスピンドルを支持できる様な予圧を付与したものは、従来は製造が難しかった。これは、製造時に上記各軌道1、3の表面や玉5、5の転動面に傷が付き易い為である。この様な事情に鑑みて、特願平5−44383号には、図4に示す様な複列玉軸受が記載されている。
【0005】
この先発明に係る複列玉軸受は、図4(A)〜(D)に示す様な工程で造られる。軸8は、同図(A)に示す様に、小径部8aと大径部8bとを段部8cで連続させており、大径部8bの外周面に第一の内輪軌道9を形成している。この様な軸8と組み合わされる内輪10は、自由状態に於いて上記小径部8aの外径よりも少し小さな内径を有する。この内輪10は外周面に、深溝型の第二の内輪軌道11を有する。
【0006】
この様な軸8と内輪10とを含む玉軸受を造る場合、先ず、第一工程として、図4(B)に示す様に、上記軸8の小径部8aに上記内輪10を、十分な嵌合強度(予圧付与の反力でずれ動かない強度)を持たせて外嵌する。そして、上記大径部8bの外周面の第一の内輪軌道9と内輪10外周面の第二の内輪軌道11とのピッチP1 を、完成後の玉軸受に所定の予圧を付与する為に必要なピッチp1 (図4(D))よりも長く(P1 >p1 )しておく。
【0007】
次いで、第二工程として、上記第一工程により組み合わされた軸8及び内輪10を、円筒形の外輪12の内側に挿入する。この外輪12の内周面には、1対の深溝型の外輪軌道13、13を形成している。第二工程では、この1対の外輪軌道13、13と前記第一、第二の内輪軌道9、11とを対向させる。
【0008】
次に、第三工程として、上記軸8及び内輪10と外輪12とを図5に示す様に偏心させ、上記1対の外輪軌道13、13と第一、第二の内輪軌道9、11との間の円周方向に亙る隙間14を一部で大きくする。そして、この隙間14の大きくなった部分から、上記隙間14内に、所定数の玉5、5を挿入する。
【0009】
次に、第四工程として、上記1対の外輪軌道13、13と第一、第二の内輪軌道9、11との間の隙間14内に挿入された所定数の玉5、5を円周方向に移動させつつ、上記軸8及び内輪10と外輪12とを同心にして、各玉5、5を円周方向等間隔に配置する。これと共に、図4(C)に示す様に、各玉列部分に保持器6、6を装着して、各玉5、5が円周方向等間隔位置に留まる様にする。又、必要に応じて、外輪12の両端部内周面にシール7、7を装着する。この状態では、未だ各玉5、5に予圧は付与されていない。
【0010】
そして、最後に第五工程として、上記内輪10を段部8cに向け、軸8の外周面で軸方向(図4の左方)に変位させ、上記第一、第二の内輪軌道9、11のピッチを短くして、前記所定の予圧を付与する為に必要なピッチp1 とする。この状態で、上記複数の玉5、5に所定の予圧が付与され、複列玉軸受として完成する。完成時にも、上記段部8cと内輪10の端面との間には隙間が存在する。
【0011】
この様にして得られた複列玉軸受では、内輪10の内周面と小径部8aの外周面との間に、締まり嵌めの摩擦力に基づいて、上記予圧に見合う軸方向荷重よりも大きな制止力が作用する。従って、上記内輪10がずれ動かず、付与された予圧が消滅する事がなく、一体の玉軸受として取り扱える。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の様に構成され作用する複列玉軸受の場合には、図3(C)に示す様な従来構造の場合も、或は図4(D)に示す様な先発明に係る構造の場合も、次に述べる様な解決すべき点がある。
【0013】
即ち、上記複列玉軸受の使用時には、この複列玉軸受を構成する外輪4、12をハウジング等他の部材の内周面に、締まりばめを持って嵌合固定する。この際に上記外輪4、12はその外周面に、直径方向内方に向いた強い力を受ける。この力の大きさが所定範囲内であり、且つ全周に亙って均一であれば特に問題にはならない。ところが、上記締まりばめの為の締め代が過大で上記力が大き過ぎたり、或は上記内周面の真円度が悪く、上記力の大きさが円周方向に亙って不均一であったりすると、上記外輪4、12の内周面に形成した外輪軌道3、13が変形する。
【0014】
この様にして外輪軌道3、13が変形すると、上記外輪4、12を含んで構成される複列玉軸受の回転精度、特に非回転同期振れが悪化する。この様な原因による回転精度の悪化を防止する為には、上記外輪4、12を、その全長に亙って他の部材に内嵌するのではなく、軸方向に離隔した1対の外輪軌道3、13の間部分で上記他の部材に内嵌固定する事が考えられる。
【0015】
しかしながら、この様な方法により上記外輪4、12を他の部材に内嵌固定した場合でも、締まりばめによる固定部分の歪みが上記外輪軌道3、13部分にまで影響を及ぼし、これら外輪軌道3、13が、僅かとは言え変形する事が避けられない。この為、上記回転精度が僅かとは言え悪化し、HDDや高精度VTR等に組み込む複列玉軸受としての性能を満足できない場合も考えられる。本発明の複列玉軸受は、この様な事情に鑑みて考えたものである。
【0016】
【課題を解決する為の手段】
本発明の複列玉軸受は、前述した従来の、或は先発明の複列玉軸受と同様に、内周面に複列の外輪軌道を有する外輪を備え、この外輪を他の部材の内周面に嵌合固定した状態で使用される。
【0017】
特に、本発明の複列玉軸受に於いては、上記外輪の周面で上記複列の外輪軌道の間部分には、それぞれが外輪周面の全周に亙る1対の凹溝が、軸方向に離隔して形成されており、上記外輪は上記他の部材に、上記1対の凹溝の間部分でのみ締りばめで嵌合する。
【0018】
【作用】
上述の様に構成される本発明の複列玉軸受の場合、外輪の剛性が1対の凹溝を形成した部分で低くなる。この為、この1対の凹溝の間部分が他の部材との締まりばめでの嵌合に基づいて多少変形した場合でも、この変形が上記各凹溝を越えて外輪軌道形成部分にまで達しにくくなる。この結果、各外輪軌道が殆ど変形しなくなって、この外輪を組み込んだ複列玉軸受の回転精度を確保できる。
【0019】
【実施例】
図1は本発明の第一実施例を示している。この図1に示した構造は、前述した先発明に係る複列玉軸受に、本発明を適用したものである。軸8の外周面には1対の内輪10、10を、十分な(付与した予圧に基づく反力によって各内輪10、10が動く事を防止できる)嵌合強度を持って外嵌している。又、この内輪10、10の周囲には円筒状の外輪15を、上記軸8及び内輪10、10と同心に配置している。
【0020】
上記各内輪10、10の外周面にはそれぞれ1本ずつの内輪軌道16、16を形成している。又、上記外輪15の内周面で互いに軸方向に離隔した2個所位置には、それぞれ外輪軌道13、13を形成している。そして、上記各内輪軌道16、16と外輪軌道13、13との間に、それぞれ複数個ずつの玉5、5を配置し、これら各玉5、5を保持器6、6によって転動自在に保持している。
【0021】
特に、本発明の複列玉軸受の場合には、上記外輪15の内周面で上記複列の外輪軌道13、13の間部分に、それぞれが外輪15の内周面の全周に亙る1対の凹溝17、17を、軸方向に離隔して形成している。
【0022】
HDDやVTRのスピンドルの回転支持部を構成すべく、上記外輪15をハウジング、或はロータタハブ等他の部材に内嵌固定する場合に、この他の部材と上記外輪15とは、上記1対の凹溝17、17の間部分18でのみ、締まりばめで嵌合する。従って、外輪15を他の部材に内嵌固定した状態で、この外輪15の軸方向両端部外周面と上記他の部材の内周面との間には多少なりとも隙間が存在する状態となる。言い換えれば、当該部分の嵌合状態は隙間嵌となる。
【0023】
この様に嵌合位置を規制する為には、上記外輪15の外径を、上記間部分18で両端部よりも少し大きくしたり、或は上記他の部材の内周面で上記間部分18と嵌合する部分の内径を、他の部分の内径よりも少し小さくする。内径を小さくする場合には、当該部分が一方の外輪軌道13を形成した部分を通過する際に、この外輪軌道13が弾性変形する可能性があるが、通過後は復元する。
【0024】
上述の様に構成される本発明の複列玉軸受の場合、外輪15の剛性が1対の凹溝17、17を形成した部分で低くなる。この為、この1対の凹溝17、17の間部分18がハウジング等他の部材との締まりばめでの嵌合に基づいて多少変形した場合でも、この変形が上記各凹溝17、17を越えて上記各外輪軌道13、13形成部分にまで達しにくくなる。この結果、各外輪軌道13、13が殆ど変形しなくなって、この外輪15を組み込んだ複列玉軸受の回転精度を確保できる。
【0025】
尚、図1に示した複列玉軸受を組み立てるべく、上記各外輪軌道13、13と内輪軌道16、16との間に玉5、5を挿入する際に、上記1対の内輪10、10の距離は、あらかじめ少し広くしておく。そして、玉5、5を所定位置に配置した後、これら両内輪10、10の距離を縮めて、上記各玉5、5に所定の予圧を付与する。
【0026】
次に、図2は本発明の第二実施例を示している。本実施例の場合には、ハウジング等、他の部材への内嵌に基づいて外輪軌道13、13が変形するのを防止するだけでなく、軸8への外嵌に基づいて内輪軌道16、16が変形する事の防止も図っている。
【0027】
この為に本実施例の場合には、各内輪10、10の中間部内周面に凹溝19、19を、全周に亙って形成している。そして、上記各内輪10、10の内周面に、上記凹溝19、19の片側に位置する小径部20、20と、他側に位置する大径部21、21とを設けている。各内輪10、10は、この内の小径部20、20部分で上記軸8に、十分な嵌合強度を持って締まりばめにより外嵌固定している。外嵌固定した状態で上記各大径部21、21の内周面と軸8の外周面との間には、隙間が存在する。上記各内輪10、10外周面の内輪軌道16、16は、上記大径部21、21の周囲部分に形成している。
【0028】
上記各内輪10、10をこの様に構成する為、各内輪10、10を外嵌する軸8の外周面の真円度が不良であったり、或は各内輪10、10を軸8に外嵌する際の締め代が過大であったりして、各内輪10、10の嵌合部が歪んだ様な場合でも、この歪みが上記各内輪軌道16、16部分にまで及ぶ事がない。従って、本実施例の場合には、外輪軌道13、13の歪み防止だけでなく、内輪軌道16、16の歪み防止も十分に図れて、より高い回転精度を有する複列玉軸受を得られる。
【0029】
尚、本実施例の場合には、外輪15の間部分18の肉厚を大きくしてこの間部分18の剛性を高くしている。従って、この間部分18と他の部材との締まりばめによる嵌合に基づく、この間部分18の変形を小さく抑えて、上記外輪軌道13、13の歪み防止効果をより一層向上させる事ができる。その他の構成及び作用は、前述した第一実施例と同様である為、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0030】
更に、図示は省略したが、本発明を図3(C)に示した様な従来から知られた複列玉軸受に適用して、外輪軌道3、3の変形防止を図る事もできる。又、図4(D)に示した内輪10を図2に示す様な形状とすれば、この内輪10の外周面に形成した内輪軌道11の変形防止を図れる事は明らかである。
【0031】
【発明の効果】
本発明の複列玉軸受は、以上に述べた通り構成される為、ハウジング等他の部材への嵌合に基づいて外輪軌道が変形するのを防止できて、高い回転精度を有する複列玉軸受を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す断面図。
【図2】同第二実施例を示す断面図。
【図3】従来から考えられていた玉軸受の部品と完成品とを示す断面図。
【図4】先発明の複列玉軸受の1例を組み立てる状態を工程順に示す断面図。
【図5】玉を挿入する為、外輪軌道と内輪軌道とを偏心させた状態を示す図。
【符号の説明】
1 内輪軌道
2 軸
3 外輪軌道
4 外輪
5 玉
6 保持器
7 シール
8 軸
8a 小径部
8b 大径部
8c 段部
9 第一の内輪軌道
10 内輪
11 第二の内輪軌道
12 外輪
13 外輪軌道
14 隙間
15 外輪
16 内輪軌道
17 凹溝
18 間部分
19 凹溝
20 小径部
21 大径部
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばビデオテープレコーダ(VTR)用、ハードディスクドライブ(HDD)用、レーザビームプリンタ(LBP)用のスピンドルモータ、ロータリアクチュエータ、ロータリエンコーダ等、各種精密回転部分に組み込んでこの回転部分を支承する玉軸受に関する。
【0002】
【先行技術の説明】
VTRやHDDのスピンドルを、振れ回り運動(軸と直角な方向の運動)及び軸方向の振れを防止しつつ回転自在に支持する為、玉軸受を使用しているが、従来は互いに独立した1対の玉軸受(深溝型或はアンギュラ型)を使用していた。又、回転支持部分への玉軸受の組立作業の効率化を図る為、複列の玉軸受を使用する事も考えられている。
【0003】
複列の玉軸受は、図3(A)に示す様に、外周面に1対の深溝型の内輪軌道1、1を有する軸2と、同図(B)に示す様に、内周面に1対の深溝型の外輪軌道3、3を有する外輪4とを、同図(C)に示す様に同心に組み合わせると共に、上記各内輪軌道1、1と外輪軌道3、3との間にそれぞれ複数の玉5、5を、転動自在に装着する事で構成される。尚、図3(C)の6、6は、上記玉5、5を円周方向等間隔に保持しておく為の保持器、7、7は、玉5、5装着部への塵芥等の進入防止を図る為のシールである。
【0004】
この図3(C)に示す様な複列深溝型玉軸受は、従来から知られている構造であるが、上記VTRやHDDのスピンドルを支持できる様な予圧を付与したものは、従来は製造が難しかった。これは、製造時に上記各軌道1、3の表面や玉5、5の転動面に傷が付き易い為である。この様な事情に鑑みて、特願平5−44383号には、図4に示す様な複列玉軸受が記載されている。
【0005】
この先発明に係る複列玉軸受は、図4(A)〜(D)に示す様な工程で造られる。軸8は、同図(A)に示す様に、小径部8aと大径部8bとを段部8cで連続させており、大径部8bの外周面に第一の内輪軌道9を形成している。この様な軸8と組み合わされる内輪10は、自由状態に於いて上記小径部8aの外径よりも少し小さな内径を有する。この内輪10は外周面に、深溝型の第二の内輪軌道11を有する。
【0006】
この様な軸8と内輪10とを含む玉軸受を造る場合、先ず、第一工程として、図4(B)に示す様に、上記軸8の小径部8aに上記内輪10を、十分な嵌合強度(予圧付与の反力でずれ動かない強度)を持たせて外嵌する。そして、上記大径部8bの外周面の第一の内輪軌道9と内輪10外周面の第二の内輪軌道11とのピッチP1 を、完成後の玉軸受に所定の予圧を付与する為に必要なピッチp1 (図4(D))よりも長く(P1 >p1 )しておく。
【0007】
次いで、第二工程として、上記第一工程により組み合わされた軸8及び内輪10を、円筒形の外輪12の内側に挿入する。この外輪12の内周面には、1対の深溝型の外輪軌道13、13を形成している。第二工程では、この1対の外輪軌道13、13と前記第一、第二の内輪軌道9、11とを対向させる。
【0008】
次に、第三工程として、上記軸8及び内輪10と外輪12とを図5に示す様に偏心させ、上記1対の外輪軌道13、13と第一、第二の内輪軌道9、11との間の円周方向に亙る隙間14を一部で大きくする。そして、この隙間14の大きくなった部分から、上記隙間14内に、所定数の玉5、5を挿入する。
【0009】
次に、第四工程として、上記1対の外輪軌道13、13と第一、第二の内輪軌道9、11との間の隙間14内に挿入された所定数の玉5、5を円周方向に移動させつつ、上記軸8及び内輪10と外輪12とを同心にして、各玉5、5を円周方向等間隔に配置する。これと共に、図4(C)に示す様に、各玉列部分に保持器6、6を装着して、各玉5、5が円周方向等間隔位置に留まる様にする。又、必要に応じて、外輪12の両端部内周面にシール7、7を装着する。この状態では、未だ各玉5、5に予圧は付与されていない。
【0010】
そして、最後に第五工程として、上記内輪10を段部8cに向け、軸8の外周面で軸方向(図4の左方)に変位させ、上記第一、第二の内輪軌道9、11のピッチを短くして、前記所定の予圧を付与する為に必要なピッチp1 とする。この状態で、上記複数の玉5、5に所定の予圧が付与され、複列玉軸受として完成する。完成時にも、上記段部8cと内輪10の端面との間には隙間が存在する。
【0011】
この様にして得られた複列玉軸受では、内輪10の内周面と小径部8aの外周面との間に、締まり嵌めの摩擦力に基づいて、上記予圧に見合う軸方向荷重よりも大きな制止力が作用する。従って、上記内輪10がずれ動かず、付与された予圧が消滅する事がなく、一体の玉軸受として取り扱える。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の様に構成され作用する複列玉軸受の場合には、図3(C)に示す様な従来構造の場合も、或は図4(D)に示す様な先発明に係る構造の場合も、次に述べる様な解決すべき点がある。
【0013】
即ち、上記複列玉軸受の使用時には、この複列玉軸受を構成する外輪4、12をハウジング等他の部材の内周面に、締まりばめを持って嵌合固定する。この際に上記外輪4、12はその外周面に、直径方向内方に向いた強い力を受ける。この力の大きさが所定範囲内であり、且つ全周に亙って均一であれば特に問題にはならない。ところが、上記締まりばめの為の締め代が過大で上記力が大き過ぎたり、或は上記内周面の真円度が悪く、上記力の大きさが円周方向に亙って不均一であったりすると、上記外輪4、12の内周面に形成した外輪軌道3、13が変形する。
【0014】
この様にして外輪軌道3、13が変形すると、上記外輪4、12を含んで構成される複列玉軸受の回転精度、特に非回転同期振れが悪化する。この様な原因による回転精度の悪化を防止する為には、上記外輪4、12を、その全長に亙って他の部材に内嵌するのではなく、軸方向に離隔した1対の外輪軌道3、13の間部分で上記他の部材に内嵌固定する事が考えられる。
【0015】
しかしながら、この様な方法により上記外輪4、12を他の部材に内嵌固定した場合でも、締まりばめによる固定部分の歪みが上記外輪軌道3、13部分にまで影響を及ぼし、これら外輪軌道3、13が、僅かとは言え変形する事が避けられない。この為、上記回転精度が僅かとは言え悪化し、HDDや高精度VTR等に組み込む複列玉軸受としての性能を満足できない場合も考えられる。本発明の複列玉軸受は、この様な事情に鑑みて考えたものである。
【0016】
【課題を解決する為の手段】
本発明の複列玉軸受は、前述した従来の、或は先発明の複列玉軸受と同様に、内周面に複列の外輪軌道を有する外輪を備え、この外輪を他の部材の内周面に嵌合固定した状態で使用される。
【0017】
特に、本発明の複列玉軸受に於いては、上記外輪の周面で上記複列の外輪軌道の間部分には、それぞれが外輪周面の全周に亙る1対の凹溝が、軸方向に離隔して形成されており、上記外輪は上記他の部材に、上記1対の凹溝の間部分でのみ締りばめで嵌合する。
【0018】
【作用】
上述の様に構成される本発明の複列玉軸受の場合、外輪の剛性が1対の凹溝を形成した部分で低くなる。この為、この1対の凹溝の間部分が他の部材との締まりばめでの嵌合に基づいて多少変形した場合でも、この変形が上記各凹溝を越えて外輪軌道形成部分にまで達しにくくなる。この結果、各外輪軌道が殆ど変形しなくなって、この外輪を組み込んだ複列玉軸受の回転精度を確保できる。
【0019】
【実施例】
図1は本発明の第一実施例を示している。この図1に示した構造は、前述した先発明に係る複列玉軸受に、本発明を適用したものである。軸8の外周面には1対の内輪10、10を、十分な(付与した予圧に基づく反力によって各内輪10、10が動く事を防止できる)嵌合強度を持って外嵌している。又、この内輪10、10の周囲には円筒状の外輪15を、上記軸8及び内輪10、10と同心に配置している。
【0020】
上記各内輪10、10の外周面にはそれぞれ1本ずつの内輪軌道16、16を形成している。又、上記外輪15の内周面で互いに軸方向に離隔した2個所位置には、それぞれ外輪軌道13、13を形成している。そして、上記各内輪軌道16、16と外輪軌道13、13との間に、それぞれ複数個ずつの玉5、5を配置し、これら各玉5、5を保持器6、6によって転動自在に保持している。
【0021】
特に、本発明の複列玉軸受の場合には、上記外輪15の内周面で上記複列の外輪軌道13、13の間部分に、それぞれが外輪15の内周面の全周に亙る1対の凹溝17、17を、軸方向に離隔して形成している。
【0022】
HDDやVTRのスピンドルの回転支持部を構成すべく、上記外輪15をハウジング、或はロータタハブ等他の部材に内嵌固定する場合に、この他の部材と上記外輪15とは、上記1対の凹溝17、17の間部分18でのみ、締まりばめで嵌合する。従って、外輪15を他の部材に内嵌固定した状態で、この外輪15の軸方向両端部外周面と上記他の部材の内周面との間には多少なりとも隙間が存在する状態となる。言い換えれば、当該部分の嵌合状態は隙間嵌となる。
【0023】
この様に嵌合位置を規制する為には、上記外輪15の外径を、上記間部分18で両端部よりも少し大きくしたり、或は上記他の部材の内周面で上記間部分18と嵌合する部分の内径を、他の部分の内径よりも少し小さくする。内径を小さくする場合には、当該部分が一方の外輪軌道13を形成した部分を通過する際に、この外輪軌道13が弾性変形する可能性があるが、通過後は復元する。
【0024】
上述の様に構成される本発明の複列玉軸受の場合、外輪15の剛性が1対の凹溝17、17を形成した部分で低くなる。この為、この1対の凹溝17、17の間部分18がハウジング等他の部材との締まりばめでの嵌合に基づいて多少変形した場合でも、この変形が上記各凹溝17、17を越えて上記各外輪軌道13、13形成部分にまで達しにくくなる。この結果、各外輪軌道13、13が殆ど変形しなくなって、この外輪15を組み込んだ複列玉軸受の回転精度を確保できる。
【0025】
尚、図1に示した複列玉軸受を組み立てるべく、上記各外輪軌道13、13と内輪軌道16、16との間に玉5、5を挿入する際に、上記1対の内輪10、10の距離は、あらかじめ少し広くしておく。そして、玉5、5を所定位置に配置した後、これら両内輪10、10の距離を縮めて、上記各玉5、5に所定の予圧を付与する。
【0026】
次に、図2は本発明の第二実施例を示している。本実施例の場合には、ハウジング等、他の部材への内嵌に基づいて外輪軌道13、13が変形するのを防止するだけでなく、軸8への外嵌に基づいて内輪軌道16、16が変形する事の防止も図っている。
【0027】
この為に本実施例の場合には、各内輪10、10の中間部内周面に凹溝19、19を、全周に亙って形成している。そして、上記各内輪10、10の内周面に、上記凹溝19、19の片側に位置する小径部20、20と、他側に位置する大径部21、21とを設けている。各内輪10、10は、この内の小径部20、20部分で上記軸8に、十分な嵌合強度を持って締まりばめにより外嵌固定している。外嵌固定した状態で上記各大径部21、21の内周面と軸8の外周面との間には、隙間が存在する。上記各内輪10、10外周面の内輪軌道16、16は、上記大径部21、21の周囲部分に形成している。
【0028】
上記各内輪10、10をこの様に構成する為、各内輪10、10を外嵌する軸8の外周面の真円度が不良であったり、或は各内輪10、10を軸8に外嵌する際の締め代が過大であったりして、各内輪10、10の嵌合部が歪んだ様な場合でも、この歪みが上記各内輪軌道16、16部分にまで及ぶ事がない。従って、本実施例の場合には、外輪軌道13、13の歪み防止だけでなく、内輪軌道16、16の歪み防止も十分に図れて、より高い回転精度を有する複列玉軸受を得られる。
【0029】
尚、本実施例の場合には、外輪15の間部分18の肉厚を大きくしてこの間部分18の剛性を高くしている。従って、この間部分18と他の部材との締まりばめによる嵌合に基づく、この間部分18の変形を小さく抑えて、上記外輪軌道13、13の歪み防止効果をより一層向上させる事ができる。その他の構成及び作用は、前述した第一実施例と同様である為、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0030】
更に、図示は省略したが、本発明を図3(C)に示した様な従来から知られた複列玉軸受に適用して、外輪軌道3、3の変形防止を図る事もできる。又、図4(D)に示した内輪10を図2に示す様な形状とすれば、この内輪10の外周面に形成した内輪軌道11の変形防止を図れる事は明らかである。
【0031】
【発明の効果】
本発明の複列玉軸受は、以上に述べた通り構成される為、ハウジング等他の部材への嵌合に基づいて外輪軌道が変形するのを防止できて、高い回転精度を有する複列玉軸受を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す断面図。
【図2】同第二実施例を示す断面図。
【図3】従来から考えられていた玉軸受の部品と完成品とを示す断面図。
【図4】先発明の複列玉軸受の1例を組み立てる状態を工程順に示す断面図。
【図5】玉を挿入する為、外輪軌道と内輪軌道とを偏心させた状態を示す図。
【符号の説明】
1 内輪軌道
2 軸
3 外輪軌道
4 外輪
5 玉
6 保持器
7 シール
8 軸
8a 小径部
8b 大径部
8c 段部
9 第一の内輪軌道
10 内輪
11 第二の内輪軌道
12 外輪
13 外輪軌道
14 隙間
15 外輪
16 内輪軌道
17 凹溝
18 間部分
19 凹溝
20 小径部
21 大径部
Claims (1)
- 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪を備え、この外輪を他の部材の内周面に嵌合固定した状態で使用される複列玉軸受に於いて、上記外輪の周面で上記複列の外輪軌道の間部分には、それぞれが外輪周面の全周に亙る1対の凹溝が、軸方向に離隔して形成されており、上記外輪は上記他の部材に、上記1対の凹溝の間部分でのみ締りばめで嵌合する事を特徴とする複列玉軸受。
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