JP3419041B2 - 予圧を付与された転がり軸受装置 - Google Patents

予圧を付与された転がり軸受装置

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JP3419041B2 JP24323993A JP24323993A JP3419041B2 JP 3419041 B2 JP3419041 B2 JP 3419041B2 JP 24323993 A JP24323993 A JP 24323993A JP 24323993 A JP24323993 A JP 24323993A JP 3419041 B2 JP3419041 B2 JP 3419041B2
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志朗 齋藤
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、例えばビデオテープレ
コーダ(VTR)用、ハードディスクドライブ(HD
D)用、レーザビームプリンタ(LBP)用のスピンド
ルモータ、ロータリアクチュエータ、ロータリエンコー
ダ等、各種精密回転部分に組み込んでこの回転部分を支
承する転がり軸受装置に関する。 【0002】 【従来の技術】VTRやHDDのスピンドルを、振れ回
り運動(軸と直角な方向の運動)及び軸方向の振れを防
止しつつ回転自在に支持する為、玉軸受を使用している
が、従来は互いに独立した1対の玉軸受(深溝型或はア
ンギュラ型)を使用していた。又、回転支持部分への玉
軸受の組立作業の効率化を図る為、複列の玉軸受を使用
する事も考えられている。 【0003】複列の玉軸受は、図7(A)に示す様に、
外周面に1対の深溝型の内輪軌道1、1を有する軸2
と、同図(B)に示す様に、内周面に1対の深溝型の外
輪軌道3、3を有する外輪4とを、同図(C)に示す様
に同心に組み合わせると共に、上記各内輪軌道1、1と
外輪軌道3、3との間にそれぞれ複数の玉5、5を、転
動自在に装着する事で構成される。尚、図7(C)の
6、6は、上記玉5、5を円周方向等間隔に保持してお
く為の保持器、7、7は、玉5、5装着部への塵芥等の
進入防止を図る為のシールである。 【0004】この図7(C)に示す様な複列深溝型玉軸
受は、従来から知られている構造であるが、上記VTR
やHDDのスピンドルを支持できる様なものは、従来は
製造が難しかった。これは、次の様な理由による。 【0005】VTRやHDDのスピンドルを支持する為
の玉軸受は、振れ回り運動及び軸方向の振れを防止する
為、極めて高精度なものとしなければならない。この
為、上記スピンドル支持用の玉軸受は、アキシャル方向
の予圧を付与した状態で使用する。 【0006】一方、深溝型の玉軸受を組み立てる為、内
輪軌道1と外輪軌道3との間に玉5、5を装着する場合
には、図8に示す様に、上記内輪軌道1と外輪軌道3と
を偏心させて、これら両軌道1、3の間の円周方向に亙
る隙間8を一部で大きくし、この隙間8の大きくなった
部分から上記内輪軌道1と外輪軌道3との間に、所定数
の玉5、5を挿入する。その後、上記内輪軌道1と外輪
軌道3とを同心にすると共に、上記所定数の玉5、5
を、円周方向等間隔に配置する。 【0007】この様に、円周方向一部にまとまって挿入
された複数の玉5、5を、円周方向等間隔に配置し直す
際には、各玉5、5を上記内輪軌道1及び外輪軌道3に
対して滑らせなければならない。この際、上記内輪軌道
1及び外輪軌道3が各玉5、5を強く押圧する状態(予
圧を付与した状態)にあると、上記内輪軌道1、外輪軌
道3、各玉5、5の転動面に傷が付き易く、傷が付いた
場合には、回転時に振動を生じたり、或は耐久性が損な
われる等の問題を生じる。 【0008】これに対して、例えば特開昭57−200
722号公報に記載されている様に、単列深溝型の玉軸
受を1対、互いに間隔をあけて設ける構造の場合、各玉
軸受を予圧を付与しない状態で組み立てられるので、上
述の様な不都合はない代わりに、玉軸受の組み付け作業
が面倒になる。 【0009】又、例えば特開昭61−65913号公
報、同61−79899号公報、実開昭50−1017
53号公報、同56−127456号公報には、テンシ
ョンプーリ用、或はウォータポンプ用として使用する、
複列深溝型玉軸受が記載されているが、これらは何れ
も、あまり高度の回転精度を要求されるものではなく、
予圧を付与しない状態で使用されるもので、VTRやH
DD等のスピンドルを支持する為には利用できない。 【0010】又、特開昭61−145761号公報に
は、複列アンギュラ型玉軸受が、実開昭62−2232
3号公報には、深溝型玉軸受とアンギュラ型玉軸受とを
組み合わせた複列玉軸受が、それぞれ記載されている。
ところが、アンギュラ型玉軸受を組み立てる場合には、
軌道面の肩部を玉が通過する際、この肩部や玉の転動面
を傷付けない様にする為、例えば実公昭39−3916
号公報に記載されている様に、外輪を加熱膨張させてお
く必要があり、組み立て作業が面倒になる。 【0011】又、特公昭57−140912号公報に
は、主外輪とこの主外輪の軸方向に変位自在な副外輪と
を組み合わせた外輪を有する複列深溝型玉軸受を、予圧
を付与しない状態で組み立てた後、上記副外輪を軸方向
に変位させて所定の予圧付与を行なうと共に、この副外
輪を抑え金で固定する発明、並びに上記副外輪をばねに
より軸方向に押圧する事で、所定の予圧付与を行なう発
明が記載されている。ところが、この公報に記載された
発明の場合、抑え金やばねが必要となり、部品管理、組
み立て作業が面倒になるだけでなく、玉軸受の軸方向長
さが必要以上に大きくなる場合がある。 【0012】又、米国特許第4900958号明細書に
は、図9〜10に示す様な構造が記載されている。この
内の図9に示した構造の場合、深溝型(アンギュラ型で
も良い)の玉軸受9、9を1対、軸2の外周面とハウジ
ング10の内周面との間に設けると共に、両玉軸受9、
9の内輪11、11を、互いに近付き合う方向に押圧し
て、両玉軸受9、9の玉5、5に予圧を付与している。 【0013】即ち、一方(図9の右方)の内輪11の端
面を止め輪12に突き当てると共に、他方(図9の左
方)の内輪11をこの止め輪12に向け押圧して、予圧
付与を行なっている。他方の内輪11は上記軸2に対し
て、接着剤、或は焼き嵌めにより固定される。従って上
記他方の内輪11は、接着剤が固化する迄、或は加熱し
た内輪11が収縮する迄、上記予圧に相当する荷重で、
上記止め輪12に向け押圧し続ける。 【0014】又、図10に示した構造の場合、軸2の外
周面に複列の内輪軌道1、1を形成している。ハウジン
グ10に内嵌した1対の外輪4、4の間には間座13を
挟持し、この間座13によって両外輪4、4を、互いに
遠ざかる方向に押圧し、玉5、5に予圧を付与してい
る。 【0015】又、実開平3−36517号公報には、図
11に示す様に、1対の外輪4、4の間に挟持した板ば
ね14によって、両外輪4、4を互いに遠ざかる方向に
押圧し、玉5、5に予圧付与を行なう構造が記載されて
いる。 【0016】又、特開平3−222661号公報及び米
国特許第5045738号明細書には、図12〜13に
示す様な構造が記載されている。この内の図12に示し
た構造は、板ばね14によりハウジング10に内嵌した
外輪4を押圧する事で予圧を付与するもの、図13に示
した構造は、所定の予圧を付与した状態で外輪4をハウ
ジング10に対し、接着剤により、或は焼き嵌めにより
固定したものである。複列の外輪軌道3、3の内、一方
の外輪軌道3は上記外輪4の内周面に、他方の外輪軌道
3はハウジング10の内周面に、それぞれ形成されてい
る。 【0017】更に、図示は省略したが、特開昭61−1
45761号公報及び米国特許第4713704号明細
書には、複列の内輪軌道の内の一方の内輪軌道を軸の外
周面に、他方の内輪軌道をこの軸に外嵌した内輪の外周
面に、それぞれ形成すると共に、玉に適正な予圧を付与
した状態で上記内輪を軸に接着固定する構造が記載され
ている。 【0018】 【先発明の説明】ところが、前記図9〜13に示した構
造並びに特開昭61−145761号公報等に記載され
た構造は、組み付けが面倒である、部品管理が必要であ
ると言った問題に加えて、微小振動が生じ易い。即ち、
上記従来構造は何れも、予圧付与を行なう際には、内輪
11が軸2に対し(図9に示した構造の場合)、或は外
輪4がハウジング10に対し(図10〜13に示した各
構造の場合)、それぞれ緩く嵌合している為、予圧付与
作業に伴って上記内輪11或は外輪4が、僅かとは言え
傾斜し易い。そして、傾斜した場合には、得られた転が
り軸受装置の回転時に微小な振動が生じ、この軸受装置
を組み込んだHDD等の性能を悪化させる恐れがある。 【0019】この様な問題に対処すべく本発明者は先
に、図14〜18に示す様な、予圧を付与された転がり
軸受装置を発明した(特願平5−44383号)。この
先発明に係る予圧を付与された転がり軸受装置の内、先
ず第1例の構造は、図14(A)〜(D)に示す様な行
程で造られる。第一の部材である軸15は、同図(A)
に示す様に、小径部15aと大径部15bとを段部15
cで連続させており、第一の周面である大径部15bの
外周面に、第一の軌道である深溝型の第一の内輪軌道1
6を形成している。第三の部材である内輪17は、自由
状態に於いて上記小径部15aの外径よりも少し小さな
内径を有する。この内輪17は外周面に、第四の軌道で
ある深溝型の第二の内輪軌道18を形成している。 【0020】この様な軸15と内輪17とを含む転がり
軸受装置を造る場合、先ず、第一工程として、図14
(B)に示す様に、上記軸15の小径部15aに上記内
輪17を、十分な嵌合強度(予圧付与の反力でずれ動か
ないが、より大きなアキシャル荷重によっては移動可能
な程度の強度)を持たせて外嵌する。そして、上記大径
部15bの外周面の第一の内輪軌道16と内輪17外周
面の第二の内輪軌道18とのピッチP1 を、完成後の転
がり軸受装置に所定の予圧を付与する為に必要なピッチ
1 (図14(D))よりも長く(P1 >p1 )してお
く。 【0021】次いで、第二工程として、上記第一工程に
より組み合わされた軸15及び内輪17を、第二の部材
である円筒形の外輪19の内側に挿入する。第二の周面
であるこの外輪19の内周面には、第二、第三の軌道で
ある、1対の深溝型の外輪軌道25、25を形成してい
る。第二工程では、この1対の外輪軌道25、25と前
記第一、第二の内輪軌道16、18とを対向させる。 【0022】次に、第三工程として、上記軸15及び内
輪17と外輪19とを偏心させ、前記図8に示す様に、
上記1対の外輪軌道25、25と第一、第二の内輪軌道
16、18との間の円周方向に亙る隙間8を一部で大き
くする。そして、この隙間8の大きくなった部分から、
上記隙間8内に、所定数の玉5、5を挿入する。 【0023】次に、第四工程として、上記1対の外輪軌
道25、25と第一、第二の内輪軌道16、18との間
の隙間8内に挿入された所定数の玉5、5を円周方向に
移動させつつ、上記軸15及び内輪17と外輪19とを
同心にして、各玉5、5を円周方向等間隔に配置する。
これと共に、図14(C)に示す様に、各玉列部分に保
持器6、6を装着して、各玉5、5が円周方向等間隔位
置に留まる様にする。又、必要に応じて、外輪19の両
端部内周面にシール7、7を装着する。この状態では、
未だ各玉5、5に予圧は付与されていない。 【0024】そして、最後に第五工程として、上記内輪
17を段部15cに向け、軸15の外周面で軸方向(図
14の左方)に変位させる事により、上記第一、第二の
内輪軌道16、18のピッチを短くして、前記所定の予
圧を付与する為に必要なピッチp1 とする。この状態
で、上記複数の玉5、5に所定の予圧が、円周方向に亙
って均一に付与されて、予圧を付与された転がり軸受装
置として完成する。完成時にも、上記段部15cと内輪
17の端面との間には隙間が存在する。 【0025】この様にして得られた予圧を付与された転
がり軸受装置では、内輪17の内周面と小径部15aの
外周面との間に、締まり嵌めの摩擦力に基づいて、上記
予圧に見合う軸方向荷重よりも大きな制止力が作用す
る。従って、軸15と内輪17との間に接着剤を塗布し
なくても、上記内輪17がずれ動かず、付与された予圧
が消滅する事がなく、一体の玉軸受として取り扱える。
この為、VTRやHDDのスピンドルの軸受部を構成す
る作業が容易となる。又、アキシャル方向に亙って、円
周方向に亙り均一な予圧が付与されている為、上記スピ
ンドルの回転支持を高精度に行なえる。 【0026】但し、上記内輪17は、締まり嵌めによる
制止力よりも大きい力を軸方向に加える事により、上記
小径部15aに対して変位させる事が可能である。この
為、上記内輪17に、上記荷重よりも大きな適宜の力を
付与し、この内輪17を軸方向に亙って変位させれば、
転がり軸受装置に付与されている予圧を後から、しかも
円周方向に亙る均一性を維持したまま調整(増大又は減
少)できる。 【0027】次に、図15に示した第2例の場合には、
内輪17aを小径部15aに外嵌した後、この軸15並
びに内輪17aの外周面に、それぞれ第一、第二の内輪
軌道16a、18aを形成している。この様な構成を採
用する事により、内輪17aを小径部15aに外嵌する
事で、内輪軌道18(図14)が非円形に歪む事を防止
している。 【0028】図16に示した第3例の場合には、同図
(A)に示す様に、第一の部材である主外輪20の内周
面に、小径部20aと大径部20bと両部20a、20
bを連続させる段部20cとを形成している。そして上
記大径部20bに、第三の部材である副外輪21を内嵌
自在としている。第三の周面であるこの副外輪21の内
周面、及び第一の周面である上記小径部20aの内周面
には、それぞれ断面円弧状の凹溝22a、22bを、全
周に亙って形成している。又、副外輪21は、自由状態
に於いて上記大径部20bの内径よりも少し大きな外径
を有する。 【0029】上記主外輪20と副外輪21とを利用し
て、予圧を付与された転がり軸受装置を造る場合、先ず
第一工程として、図16(B)に示す様に、上記副外輪
21を大径部20bに、十分な嵌合強度を持たせて内嵌
すると共に、同図(C)に示す様に、上記凹溝22a、
22b部分に、第一の軌道である第一の外輪軌道23
と、第四の軌道である第二の外輪軌道24とを形成す
る。 【0030】この様に、主外輪20と副外輪21とを組
み立てた状態で、上記第一、第二の外輪軌道23、24
を形成する為、これら両外輪軌道23、24の真円度を
高精度にでき、しかも両外輪軌道23、24と主外輪2
0の外周面との偏心量を僅少に抑えられる。尚、この様
にして形成された第一、第二の外輪軌道23、24同士
のピッチP2 は、所定の予圧を付与する為に必要なピッ
チp2 (図16(E))よりも長く(P2 >p2 )して
おく。 【0031】次に、第二工程として、第二の周面である
外周面に、第二、第三の軌道である1対の内輪軌道1、
1を有する軸2(次述する図16(D)参照。)を、上
記第一工程により組み合わされた主外輪20及び副外輪
21の内側に挿入し、上記1対の内輪軌道1、1と第
一、第二の外輪軌道23、24とを対向させる。 【0032】次いで、第三工程として、上記軸2と主外
輪20及び副外輪21とを、前記図8に示す様に偏心さ
せ、上記1対の内輪軌道1、1と第一、第二の外輪軌道
23、24との間の隙間8内に、所定数の玉5、5を挿
入する。 【0033】次に、第四工程として、図16(D)に示
す様に、上記軸2と主外輪20及び副外輪21とを同心
にすると共に、上記1対の内輪軌道1、1と第一、第二
の外輪軌道23、24との間に挿入された所定数の玉
5、5を、円周方向等間隔に配置する。又、この第四工
程で、等間隔に配置した上記玉5、5に、保持器6、6
を装着する。 【0034】最後に第五工程として、上記副外輪21を
主外輪20の内周面で軸方向(図16の左方向)に変位
させる事により、図16(E)に示す様に、上記第一、
第二の外輪軌道23、24のピッチを短くして、所定の
予圧を付与する為に必要なピッチp2 とする。この状態
で、上記複数の玉5、5に所定の予圧が付与される。そ
して、シール7、7aを装着し、転がり軸受装置として
完成する。 【0035】尚、第一、第二の外輪軌道のピッチを変え
る事で予圧調整を行う構造の場合には、図17に示した
第4例の様に、それ自体は外輪軌道を有しない主外輪2
0Aに、1対の副外輪21、21aを内嵌する事もでき
る。この図17に示した構造の場合、第二の部材である
内輪17cの外周面に、第二、第三の軌道である内輪軌
道1、1を形成している。同様に、第一、第二の内輪軌
道のピッチを変える事で予圧調整を行う構造の場合に
は、第5例を示す図18の様に、軸2に1対の内輪1
7、17bを外嵌する事もできる。各内輪17、17b
の外周面には、それぞれ第一、第二の内輪軌道16b、
18bを形成している。 【0036】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の様に
構成され作用する、先発明に係る予圧を付与された転が
り軸受装置に於いても、依然として次に述べる様な、解
決すべき点があった。 【0037】即ち、複列で配置された玉5、5に適正な
予圧を付与すべく、軸2、15に内輪17、17a、1
7bを外嵌固定したり、或は主外輪20、20Aに副外
輪21、21aを内嵌固定した場合には、これら内輪1
7、17a、17b或は副外輪21、21aを相手部材
(軸2、15或は主外輪20、20A)にしっかりと固
定する必要がある。この為には、上記各部材同士の嵌合
強度を保つべく、嵌合面に十分な摩擦力を働かせる必要
がある。 【0038】嵌合部の摩擦力を大きくする為には、嵌
合部の当接圧を大きくする方法と、嵌合部で互いに当
接する面積を広くする方法とがある。この内のの方法
を採用する場合には、互いに嵌合する部材同士の嵌め合
い代を大きくする必要があるが、単に嵌め合い代を大き
くした場合には、直径方向外側に存在する部材に大きな
引っ張り応力が加わり、この部材に割れ等の損傷が発生
し易くなる。この様な損傷を防止する為には、上記外側
に存在する部材の厚さ寸法を大きくする必要が生じ、予
圧を付与した転がり軸受装置の外径寸法が大きくなって
しまう。HDD等に組み込む為の小型の転がり軸受装置
の場合、外径寸法の増大は好ましくない。 【0039】又、上記の方法を採用するには、上記内
輪17、17a、17b或は副外輪21、21aの軸方
向に亙る寸法を大きくする事が考えられるが、単にこれ
ら各部材の軸方向寸法を大きくした場合には、軸受装置
が大型化したり、或は軸受剛性が低くなる。即ち、先発
明に係る予圧を付与した転がり軸受装置の場合には、上
記内輪17、17a、17b或は副外輪21、21aの
軸方向中央部に、内輪軌道或は外輪軌道を形成してい
た。 【0040】従って、複列の軌道同士の間隔を十分に確
保しようとすれば、上記内輪17、17a、17b或は
副外輪21、21aの端縁が軸方向に大きく突出し、上
記転がり軸受装置の軸方向寸法を大きくしてしまう為、
好ましくない。反対に、上記内輪17、17a、17b
或は副外輪21、21aの端縁が軸方向に突出しない様
にすると、上記複列の軌道同士の間隔が狭くなってしま
う。軌道同士の間隔が狭くなると、転がり軸受装置の耐
曲げモーメント剛性が低くなる為、やはり好ましくな
い。 【0041】本発明の予圧を付与された転がり軸受装置
は、上述の様な不都合を何れも解消し、小型で、しかも
耐曲げモーメント剛性が大きい、予圧を付与された転が
り軸受装置を提供するものである。 【0042】 【課題を解決する為の手段】本発明の予圧を付与された
転がり軸受装置は、前述した先発明に係る予圧を付与さ
れた転がり軸受装置と同様に、第一の周面を有する第一
の部材と、この第一の部材と同心に配置され、上記第一
の周面と対向する第二の周面を有する第二の部材と、上
記第一の周面に形成された第一の軌道と、上記第二の周
面の一部で第一の軌道と対向する部分に形成された第二
の軌道、並びにこの第二の軌道から軸方向にずれた部分
で上記第二の周面に形成された第三の軌道と、付与すべ
き予圧に基づくアキシャル荷重では動かないが、より大
きなアキシャル荷重によっては移動可能な程度に十分な
嵌合強度を持って上記第一の部材に、上記第一、第二の
部材と同心に支持され、上記第二の周面と対向する第三
の周面を有する第三の部材と、この第三の周面の一部
で、上記第三の軌道に対向する部分に形成された第四の
軌道と、上記第一の軌道と第二の軌道との間、並びに上
記第三の軌道と第四の軌道との間に、それぞれ複数個ず
つ設けられた玉とを備える。そして、上記第一の部材に
対する上記第三の部材の嵌合深さを調節する事により、
上記複数個ずつの玉に適正な予圧を付与している。 【0043】更に、本発明の予圧を付与された転がり軸
受装置では、上記第四の軌道は上記第三の周面の軸方向
中央部からずれた位置に形成されている。この為、上記
第三の部材の一部で上記第四の軌道の軸方向両側には、
この第四の軌道からの突出量が比較的大きい第一円筒部
分と、上記第四の軌道からの突出量が比較的小さい第二
円筒部分とが存在する。そして、上記第三の部材を上記
第一の部材に嵌合させた状態で、上記第一円筒部分が上
記第一の部材の軸方向内側に、上記第二円筒部分が上記
第一の部材の軸方向外側に、それぞれ存在する。 【0044】 【作用】上述の様に構成される本発明の予圧を付与され
た転がり軸受装置の場合、前述した先発明の場合と同様
に、玉の転動面と複列の内輪軌道及び外輪軌道とに傷を
付ける事なく、転がり軸受装置を組み立て、しかも各玉
にアキシャル方向の予圧付与を、円周方向に亙って均一
行なえる。又、第一、第三の部材は締まり嵌めを持っ
て嵌合している為、この予圧付与作業に伴なって第三の
部材が傾斜する事はなく、しかも締まり嵌めによる制止
力よりも大きい力を軸方向に加える事により変位可能で
ある為、付与されている予圧を後から、しかも円周方向
に亙る均一性を維持したまま調整出来る。更に、突出量
が比較的小さな第二円筒部分が第一の部材の軸方向外側
に存在する為、第一の部材に対する第三の部材の嵌合強
度を確保すべく、この第三の部材の軸方向長さを大きく
した場合でも、転がり軸受装置の軸方向長さを大きくす
る事なく、複列の軌道同士の間隔を確保できる。従っ
て、小型、且つ耐モーメント剛性の大きな転がり軸受装
置を得られる。 【0045】 【実施例】第1〜2図は本発明の第一実施例を示してい
る。尚、組立工程等は、前述した先発明の場合と同様で
ある為、重複する説明を省略し、以下、本発明の特徴部
分を中心に説明する。本実施例は、前述の図18に示し
た先発明の第5例の構造に、本発明を適用した例を示し
ている。 【0046】軸26には1対の内輪27a、27bを
玉5、5に付与すべき予圧に基づくアキシャル荷重では
動かないが、より大きなアキシャル荷重によっては移動
可能な程度に十分な嵌合強度を持って外嵌している。こ
の内の軸26と一方(図1〜2の下方)の内輪27aと
が、第一の部材に相当し、他方(図1〜2の上方)の内
輪27bが第三の部材に相当する。これら1対の内輪2
7a、27bの外側には外輪28が、これら両内輪27
a、27bと同心に配置されている。この外輪28が、
第二の部材に相当する。 【0047】第一の周面に相当する上記一方の内輪27
aの外周面には、第一の軌道に相当する第一の内輪軌道
29aを形成している。又、第三の周面に相当する上記
他方の内輪27bの外周面には、第四の軌道に相当する
第二の内輪軌道29bを形成している。又、第二の周面
に相当する上記外輪28の内周面には、それぞれが第
二、第三の軌道に相当する、第一、第二の外輪軌道30
a、30bを形成している。これら第一、第二の外輪軌
道30a、30bは、それぞれ上記第一、第二の内輪軌
道29a、29bに対向する。尚、上記外輪28の内周
面中間部には、この外輪28の強度を向上させる為の厚
肉部33を形成している。 【0048】上記第一、第二の内輪軌道29a、29b
は、それぞれ上記内輪27a、27bの外周面の軸方向
中央部からずれた位置に形成されている。この為、上記
各内輪27a、27bの一部で、上記第一、第二の内輪
軌道29a、29bの軸方向両側には、各内輪軌道29
a、29bからの突出量が比較的大きい第一円筒部分3
1、31と、上記各内輪軌道29a、29bからの突出
量が比較的小さい第二円筒部分32、32とが存在す
る。 【0049】本発明の予圧を付与された転がり軸受装置
は、上記軸26に上記両内輪27a、27bを外嵌固定
する際に、上記第一、第二両円筒部分31、32の内、
第一円筒部分31、31を互いに対向させ、第二円筒部
分32、32を軸方向外側に位置させる。 【0050】上述の様に構成される本発明の予圧を付与
された転がり軸受装置の場合、突出量が比較的小さな第
二円筒部分32、32が軸方向外側に存在する為、軸2
6に対する内輪27a、27bの嵌合強度を確保すべ
く、各内輪27a、27bの軸方向(図1〜2の上下方
向)長さを大きくした場合でも、転がり軸受装置の軸方
向長さを大きくする事がなく、それぞれが複列に配置さ
れた第一、第二の内輪軌道29a、29b同士の間隔、
並びに外輪軌道30a、30b同士の間隔を確保でき
る。従って、小型、且つ耐モーメント剛性の大きな転が
り軸受装置を得られる。 【0051】尚、上述の様な本発明の予圧を付与された
転がり軸受装置に玉5、5を組み込む際には、図2に示
す様に各内輪27a、27bと外輪28とを偏心させ
る。そして、第一、第二の内輪軌道29a、29bと第
一、第二の外輪軌道30a、30bとの間隔が広くなっ
た部分から、両軌道29a、29b、30a、30bの
間に玉5、5を挿入する。この際、第一、第二の内輪軌
道29a、29bの間隔は、予圧付与に必要な間隔より
も少し大きくしておく。この組み付け方法自体は、前述
した先発明の場合と同様である為、詳しい説明は省略す
る。 【0052】次に、図3は本発明の第二実施例を示して
いる。本実施例の場合には、外輪28aの内周面中間部
を単なる円筒面とし、上述した第一実施例に於ける様な
厚肉部(図1〜2)を省略している。その他の構成及び
作用は、上述した第一実施例と同様である為、同等部分
には同一符号を付して、重複する説明を省略する。 【0053】次に、図4は本発明の第三実施例を示して
いる。本実施例の場合には、軸26aの一端部(図4の
下端部)に大径部34を形成し、この軸26aと共に第
一の部材を構成する内輪27cの端面を、この大径部3
4の端面に当接させている。従って、予圧を保持する為
には、必ずしも上記内輪27cと軸26aとの嵌合強度
を確保する必要はない。この為、本実施例の場合には、
上記内輪27cの軸方向長さを短くし、第一の軌道であ
る第一の内輪軌道29aを、この内輪27cの外周面中
央位置に形成している。 【0054】但し、第三の部材に相当する内輪27bの
外周面に形成する第二の内輪軌道29bは、上記内輪2
7bの外周面の軸方向中央部からずれた位置に形成し、
この第二の内輪軌道29bからの軸方向突出量が小さい
第二円筒部分32を、軸方向外側に存在させている。そ
の他の構成及び作用は、上述した第二実施例と同様であ
る。 【0055】次に、図5は本発明の第四実施例を示して
いる。本実施例の場合には、第二部材である外輪28b
を、一体型のものを使用せず、代わりに互いに径が異な
った1対の素子35a、35bと、両素子35a、35
bの間に挟持した間座36とから構成している。従っ
て、複列に配置された玉5、5の径を異ならせている。
その他の構成及び作用は、前述した第一実施例と同様で
ある。 【0056】次に、図6は本発明の第五実施例を示して
いる。本実施例の場合には、前述の図14〜15に示し
た構造と同様に、第一部材である軸15の外周面に、直
接第一の内輪軌道29aを形成している。又、外輪28
cは途中で径を変え、複列に配置された玉5、5の径を
異ならせている。この外輪28cにはハブ37を外嵌固
定し、このハブ37の内周面に固定されたロータ38
と、ハウジング39に固定されたステータ40とで、電
動モータ41を構成している。その他の構成及び作用
は、前述した第三実施例と同様である。 【0057】尚、上述した各実施例は、第三の部材が内
輪である場合に就いて説明したが、前述の図16〜17
に示す様に、第三の部材が副外輪21、21aである場
合にも、本発明は適用可能である。即ち、各副外輪2
1、21aの内周面に第一、第二の外輪軌道23、24
を形成する位置を軸方向中央部からずらせる事で、軌道
間隔を確保しつつ、この副外輪21、21aと主外輪2
0との嵌合強度を確保できる。勿論、この様な構造も、
本発明の技術的範囲に属する。 【0058】 【発明の効果】本発明の予圧を付与された転がり軸受装
置は、以上に述べた通り構成される為、小型で、しかも
耐モーメント剛性の大きな転がり軸受装置を得られる。
又、先発明と同様に、製造時に軌道面や転動面を傷付け
る事もなく、しかも円周方向に亙って均一な予圧付与を
行なえる為、造られた転がり軸受装置の性能、耐久性、
信頼性も高くなる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第一実施例を、完成した状態で示す断
面図。 【図2】同じく組み立て途中の状態で示す断面図。 【図3】本発明の第二実施例を示す断面図。 【図4】同第三実施例を示す断面図。 【図5】同第四実施例を示す断面図。 【図6】同第五実施例を示す断面図。 【図7】従来から考えられていた転がり軸受装置の部品
と完成品とを示す断面図。 【図8】玉を挿入する為、外輪軌道と内輪軌道とを偏心
させた状態を示す図。 【図9】従来構造の第1例を示す半部断面図。 【図10】同第2例を示す半部断面図。 【図11】同第3例を示す断面図。 【図12】同第4例を示す半部断面図。 【図13】同第5例を示す断面図。 【図14】先発明の予圧を付与された転がり軸受装置の
第1例を組み立てる状態を工程順に示す断面図。 【図15】同第2例を工程順に示す断面図。 【図16】同第3例を工程順に示す半部断面図。 【図17】同第4例を工程順に示す半部断面図。 【図18】同第5例を工程順に示す半部断面図。 【符号の説明】 1 内輪軌道 2 軸 3 外輪軌道 4 外輪 5 玉 6 保持器 7、7a シール 8 隙間 9 玉軸受 10 ハウジング 11 内輪 12 止め輪 13 間座 14 板ばね 15 軸 15a 小径部 15b 大径部 15c 段部 16、16a 第一の内輪軌道 17、17a、17b、17c 内輪 18、18a 第二の内輪軌道 19 外輪 20、20A 主外輪 20a 小径部 20b 大径部 20c 段部 21、21a 副外輪 22a、22b 凹溝 23 第一の外輪軌道 24 第二の外輪軌道 25 外輪軌道 26、26a 軸 27a、27b、27c 内輪 28、28a、28b、28c 外輪 29a 第一の内輪軌道 29b 第二の内輪軌道 30a 第一の外輪軌道 30b 第二の外輪軌道 31 第一円筒部分 32 第二円筒部分 33 厚肉部 34 大径部 35a、35b 素子 36 間座 37 ハブ 38 ロータ 39 ハウジング 40 ステータ 41 電動モータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−70923(JP,A) 特開 昭61−145761(JP,A) 特開 昭59−40013(JP,A) 特開 平1−229114(JP,A) 実開 平1−82903(JP,U) 実開 昭62−170363(JP,U) 特表 平5−501594(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 19/00 - 27/08 F16C 33/30 - 33/66 F16C 35/00 - 43/08

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 第一の周面を有する第一の部材と、この
    第一の部材と同心に配置され、上記第一の周面と対向す
    る第二の周面を有する第二の部材と、上記第一の周面に
    形成された第一の軌道と、上記第二の周面の一部で第一
    の軌道と対向する部分に形成された第二の軌道、並びに
    この第二の軌道から軸方向にずれた部分で上記第二の周
    面に形成された第三の軌道と、付与すべき予圧に基づく
    アキシャル荷重では動かないが、より大きなアキシャル
    荷重によっては移動可能な程度に十分な嵌合強度を持っ
    て上記第一の部材に、上記第一、第二の部材と同心に支
    持され、上記第二の周面と対向する第三の周面を有する
    第三の部材と、この第三の周面の一部で、上記第三の軌
    道に対向する部分に形成された第四の軌道と、上記第一
    の軌道と第二の軌道との間、並びに上記第三の軌道と第
    四の軌道との間に、それぞれ複数個ずつ設けられた玉と
    を備え、上記第一の部材に対する上記第三の部材の嵌合
    深さを調節する事により、上記複数個ずつの玉に適正な
    予圧を付与した、予圧を付与された転がり軸受装置であ
    って、上記第四の軌道は上記第三の周面の軸方向中央部
    からずれた位置に形成されており、上記第三の部材の一
    部で上記第四の軌道の軸方向両側には、この第四の軌道
    からの突出量が比較的大きい第一円筒部分と、上記第四
    の軌道からの突出量が比較的小さい第二円筒部分とが存
    在し、上記第三の部材を上記第一の部材に嵌合させた状
    態で、上記第一円筒部分が上記第一の部材の軸方向内側
    に、上記第二円筒部分が上記第一の部材の軸方向外側
    に、それぞれ存在する予圧を付与された転がり軸受装
    置。
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