JP3414206B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

アンチスキッド制御装置

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JP3414206B2
JP3414206B2 JP17429097A JP17429097A JP3414206B2 JP 3414206 B2 JP3414206 B2 JP 3414206B2 JP 17429097 A JP17429097 A JP 17429097A JP 17429097 A JP17429097 A JP 17429097A JP 3414206 B2 JP3414206 B2 JP 3414206B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両のアンチスキ
ッド制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アンチスキッド制御におけるホイ
ールシリンダの減圧制御時のブレーキ液還流用ポンプを
廃止し、配管系統中に設けたリザーバに減圧時のブレー
キ液を一時貯蔵しておき、ブレーキペダルの戻しに伴う
マスターシリンダの減圧時にリザーバからブレーキ液を
還流するようにしたポンプレスのブレーキシステムが知
られている。
【0003】しかし、このリザーバが満杯になると、そ
の後はホイールシリンダ圧を減圧することができず、ア
ンチスキッド制御が不可能になる。そこで、本出願人
は、前2輪と後2輪をそれぞれ1系統とする前後配管で
ホイールシリンダとマスターシリンダとを連絡し、各系
統に1つずつリザーバを備えさせたブレーキシステムに
おいて、アンチスキッド制御として、後2輪に対しては
スリップ検出後にホイールシリンダ圧を減圧保持して車
輪ロックを防止しておき、前2輪に対してはスリップを
検出したらまず減圧保持を実行し、その後の車輪速度の
回復状況との関係で、増圧保持を1周期として繰り返す
ステップ増圧制御と減圧保持制御とを繰り返し実行する
ようにしたアンチスキッド制御装置を提案している(特
開平2−182561号公報)。そして、前輪側のリザ
ーバが満杯となった後、後2輪に対するステップ増圧制
御と減圧保持制御とを繰り返すようになっている。
【0004】この制御システムによれば、前輪側のリザ
ーバが満杯になって前2輪がロックしてしまったとして
も、この時点では後2輪がロックしていないので、走行
安定性を確保できるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した先の提案の場
合には、前2輪がロックした時点で後2輪はロックしな
いようにして走行安定性を確保することを目的とし、そ
れを電磁制御弁に対するソレノイド制御によって実現し
ている。ただし、このようなソレノイド制御に全て依存
するのではなく、ブレーキ液圧回路自体が4輪同時にロ
ックしないような構成となっていれば、ソレノイド制御
については特に考慮せずに制動距離の短縮と操縦安定性
の確保との両立をでき、車両挙動の急変をより確実に防
止することができる。
【0006】そこで、本発明のアンチスキッド制御装置
は、ブレーキ液圧回路自体を、制動距離の短縮と操縦安
定性の確保との両立可能な構成としたアンチスキッド制
御装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
になされた請求項1に記載のアンチスキッド制御装置
は、乗員によるブレーキペダルの制動操作に応じてブレ
ーキ液圧を発生するマスタシリンダからのブレーキ液圧
を受けたホイールシリンダが車輪制動力を発生させる
際、前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を調整
して車輪をロックさせずに制動を行うアンチスキッド制
御を実行するアンチスキッド制御装置において、第1の
車輪に対する車輪制動力を発生させる第1のホイールシ
リンダと前記マスタシリンダとは第1のブレーキ配管系
統によって接続されており、当該第1のブレーキ配管系
統は、アンチスキッド制御の内の減圧制御に伴って前記
第1のホイールシリンダから流出したブレーキ液を貯蔵
しておき、該貯蔵したブレーキ液を前記ブレーキペダル
の戻し操作に合わせて前記マスタシリンダに還流するリ
ザーバを有するクローズ回路として構成されていると共
に、第2の車輪に対する車輪制動力を発生させる第2の
ホイールシリンダと前記マスタシリンダとは第2のブレ
ーキ配管系統によって接続されており、当該第2のブレ
ーキ配管系統は、アンチスキッド制御の内の減圧制御に
伴って前記第2のホイールシリンダから流出したブレー
キ液を前記マスタシリンダの液溜めに還流するオープン
回路として構成されていることを特徴とする。
【0008】ここにいうアンチスキッド制御とは、各輪
の車輪挙動に応じてホイールシリンダ圧を増圧、減圧又
は保持に切り換えて、各輪のスリップ率を目標スリップ
率と一致させるようにする制御だけでなく、制動時に車
輪のロックを防止する制御全般をいうものである。
【0009】この請求項1記載のアンチスキッド制御装
置によれば、第1のホイールシリンダにかかるブレーキ
液圧を調整して行なう第1の車輪へのアンチスキッド制
御において、その内の減圧制御に伴って第1のホイール
シリンダから流出したブレーキ液はリザーバに貯蔵され
る。そして、リザーバに貯蔵されたブレーキ液はブレー
キペダルが戻されるまでの間はリザーバに貯蔵され続け
る。つまり、リザーバ内のブレーキ液を強制的にマスタ
シリンダに還流させるポンプを持たない「ポンプレスタ
イプ」の配管系統であるため、第1のブレーキ配管系統
はクローズ回路である。したがって、アンチスキッド制
御が長時間継続するとリザーバが満杯になってそれ以上
のブレーキ液圧の減圧ができなくなる場合が想定され
る。その場合はブレーキペダルの踏込量に応じたマスタ
シリンダ圧がそのままホイールシリンダに加えられるノ
ーマルブレーキとして機能することとなり、第1の車輪
がロックする可能性がある。
【0010】これに対して、第2のホイールシリンダに
かかるブレーキ液圧を調整して行なう第2の車輪へのア
ンチスキッド制御において、その内の減圧制御に伴って
第2のホイールシリンダから流出したブレーキ液はマス
タシリンダの液溜めに還流する。このように第2のブレ
ーキ配管系統はオープン回路であるため、アンチスキッ
ド制御が長時間継続してもマスタシリンダがボトミング
した時点でそれ以上の増圧ができなくなり、第2の車輪
がロックすることを防止する。
【0011】このように、第1の車輪については、第1
のブレーキ配管系統をクローズ回路とすることで車輪ロ
ックを許容して減速度を稼ぎつつ、第2の車輪について
は、第2のブレーキ配管系統をオープン回路とすること
で、車輪をロックさせないようにして操縦安定性などを
維持し続けることができる。これによって、減速度確保
と安定性確保とを両立することができる。そして、ブレ
ーキ液圧回路自体を工夫することでこの減速度確保と安
定性確保とを両立しているので、アクチュエータとして
の電磁制御弁に対するソレノイド制御に全て依存するの
ではないため、車両挙動の急変をより確実に防止するす
ることができる。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】このように、請求項1に記載のアンチスキ
ッド制御装置では、クローズ回路のブレーキ配管系統と
オープン回路のブレーキ配管系統とを備える構成を採用
した。なお、リザーバの作動圧は、ブレーキペダルが戻
されたときにリザーバ内の液をマスタシリンダ側に戻す
ためのバネのバネ定数で決まる。
【0017】本アンチスキッド制御装置によれば、ブレ
ーキ液圧回路自体を工夫することで減速度確保と安定性
確保との両立を実現できる。また、減圧可能な圧力に関
して言えば、オープン回路では大気圧まで減圧可能とな
る。
【0018】なお、上述の請求項1に記載のアンチスキ
ッド制御装置は、リザーバ内のブレーキ液を強制的にマ
スタシリンダに還流させるポンプを持たない「ポンプレ
スタイプ」を前提として説明したが、ポンプが付いてい
てもマスタシリンダ下流の容量が有限であれば通常は
「クロ−ズ回路」と呼ぶ。そのため、請求項に示すよ
うに、請求項1に記載のアンチスキッド制御装置におい
て、リザーバ内のブレーキ液を汲み上げてマスタシリン
ダへ向けて圧送可能なポンプを追加した構成であって
も、そのポンプが低能力で、リザーバからブレーキ液を
汲み出す量よりもホイールシリンダ側から流入するブレ
ーキ液の量の方が多い場合には、やはりリザーバが早期
に満杯になってしまうため、車輪ロックが生じてしまう
可能性がある。したがって、このような低能力ポンプを
追加した構成においても、ブレーキ液回路自体を請求項
1に示したように構成すれば、減速度確保と安定性確保
との両立を実現する点で有効である。また、請求項4に
記載のように、1輪以上について制御中であり、且つ同
じブレーキ配管系統の2輪が両方共にロックしている場
合にウォーニングランプを点灯するようにしてもよい。
【0019】また、請求項に記載のように、これら請
求項1〜のいずれかに記載のアンチスキッド制御装置
において、第1の車輪は前輪であり、第2の車輪は後輪
であるように構成すると、減速度の確保を前輪にて行な
い、操縦安定性の確保を後輪にて行なうこととなる。一
般的に前輪先行ロックの方が操縦安定性の確保の点では
好ましいので、このような構成は有効である。
【0020】なお、これまでの説明では、本発明のアン
チスキッド制御装置の適用される車両は2輪以上を備え
ていればよいこととなるが、特に4輪以上を備える車両
の場合には次のような構成を採用することが考えられ
る。つまり、請求項に記載のように、請求項1〜
いずれかに記載のアンチスキッド制御装置において、第
1のブレーキ配管系統は、4輪以上を備えた車両の前2
輪に対応するホイールシリンダとマスタシリンダとを接
続し、第2のブレーキ配管系統は、後2輪に対応するホ
イールシリンダとマスタシリンダとを接続する構成とし
てもよい。あるいは、請求項に記載のように、請求項
1〜のいずれかに記載のアンチスキッド制御装置にお
いて、第1及び第2のブレーキ配管系統は、それぞれ、
4輪以上を備えた車両の別個の対角2輪の組に対応する
ホイールシリンダとマスタシリンダとを接続する構成と
してもよい。
【0021】請求項に記載の場合には、いわゆる前後
配管となり、やはりこの場合も減速度の確保を前輪にて
行ない、操縦安定性の確保を後輪にて行なうこととな
る。一方、請求項に記載の場合には、いわゆるX配管
となり、例えば4輪車であれば左前輪と右後輪とを第1
のブレーキ配管系統で対処し、右前輪と左後輪とを第2
のブレーキ配管系統で対処するといった構成が考えられ
る。この場合には、前輪のいずれか一方と後輪のいずれ
か一方はロックしないので、前後輪にて走行安定性を得
ることができる。したがって、減速度の確保及び操縦安
定性の確保を、それぞれ前後輪のいずれかだけで対処す
るよりも、前後輪の一部でそれぞれに対処する方が好ま
しい状況では、このようなX配管が有効である。
【0022】なお、例えば、4輪車において、前輪の左
右いずれか1輪を第1のブレーキ配管系統で対処し、残
りの3輪を第2のブレーキ配管系統で対処するような構
成であっても適用は可能である。要は、アンチスキッド
制御の対象となっている車輪の全てが同時にロックして
しまうような状況を回避すればよく、それを実現するた
めのブレーキ液回路は種々変形させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面
と共に説明する。図1は一実施の形態としてのアンチス
キッド制御システムの構成を示し、フロントエンジン・
リヤドライブの4輪車に適用した例である。
【0024】右前輪(FR)1、左前輪(FL)4、右
後輪(RR)3及び左後輪(RL)2の各々に電磁ピッ
クアップ式又は磁気抵抗素子(MRE)式等の車輪速度
センサ5,6,7,8が配置され、各車輪1〜4の回転
に応じた周波数のパルス信号を出力する。さらに、各車
輪1〜4には各々液圧ブレーキ装置(ホイールシリン
ダ)11,12,13,14が配置されており、各車輪
1〜4に制動力を発生させる。マスタシリンダ16から
の液圧は、前輪1,4に対応するホイールシリンダ1
1,14については、それぞれに対応して設けられたア
クチュエータ21,24及び各液圧管路を介して送られ
るが、後輪2,3に対応するホイールシリンダ12,1
3ついては、アクチュエータ23を介し、その下流側に
て分岐した各液圧管路を介して送られるよう構成されて
いる。
【0025】なお、マスタシリンダ16はブレーキペダ
ル27の踏込みにより液圧を発生する周知のもので、ブ
レーキペダル27の踏込み状態はストップスイッチ29
によって検出されている。ブレーキペダル27の踏み込
み状態は、ストップスイッチ29によって検出される。
このストップスイッチ29から、制動時にはオン信号が
出力され、非制動時にはオフ信号が出力される。
【0026】このブレーキシステムでは、左右の前輪で
あるFR1とFL4を1組とする第1のブレーキ配管系
統と、左右の後輪であるRR3とRL2とを1組とする
第2のブレーキ配管系統の2系統からなる「前後配管形
式」を採用したものである。そして、本実施形態では、
第1のブレーキ配管系統についてはいわゆる「クローズ
回路」とし、第2のブレーキ配管系統についてはいわゆ
る「オープン回路」としてある。その構成を系統毎に説
明する。
【0027】まず、第1のブレーキ配管系統について説
明する。この第1のブレーキ配管系統に接続される左右
前輪であるFR輪1及びFL輪4に対応する各ホイール
シリンダ11,14がアクチュエータ31,34を介し
てリザーバ37に接続されている。このリザーバ37
は、アンチスキッド制御中、各ホイールシリンダ11,
14から排出された液を一時的に蓄えるものである。ま
た、マスタシリンダ16からの液圧をホイールシリンダ
11,14に送るためのアクチュエータ21,24の上
下流には、バイパス管路41,44及びそのバイパス管
路41,44に介装された逆止弁41a,44aが配設
されており、ホイールシリンダ11,14からマスタシ
リンダ16へ向かう圧液のみをアクチュエータ21,2
4を迂回して流通させるように設定されている。さら
に、リザーバ37とマスタシリンダ16とは、逆止弁4
7を介した液圧管路で接続されており、リザーバ37か
らマスタシリンダ16へ向かう圧液の流通のみが許可さ
れている。なお、各アクチュエータ21,24,31,
34は、連通位置と遮断位置とを有する電磁式2位置弁
である。
【0028】このような構成の第1のブレーキ配管系統
においては、ブレーキペダル27が踏み込まれている状
態ではブレーキ液の総量が一定でありブレーキ液の追加
は行われない。つまり、上述したように、アンチスキッ
ド制御中に各ホイールシリンダ11,14からブレーキ
液を排出して減圧させる場合には、その排出されたブレ
ーキ液はリザーバ37に蓄えられることとなり、さらに
そのリザーバ37に蓄えられたブレーキ液は、ブレーキ
ペダル27が戻されてマスタシリンダ16が減圧される
までは減らない。すなわち、リザーバ37の容量がマス
タシリンダ16のセカンダリ室16aの容量よりも小さ
いため、マスタシリンダ16からホイールシリンダ1
1,14の間の容量は一定以上常に確保され、有限であ
る。この意味で、第1のブレーキ配管系統は「クローズ
回路」である。そして、ブレーキペダル27が戻されて
マスタシリンダ16が減圧されると、逆止弁47を介し
てマスターシリンダ16に還流されるようになってい
る。また、各ホイールシリンダ11,14のブレーキ液
も、逆止弁41a,44aを介してマスタシリンダ16
に還流されるようになっている。
【0029】次に、第2のブレーキ配管系統について説
明する。この第2のブレーキ配管系統に接続される左右
後輪であるRL輪2及びRR輪3に対応する各ホイール
シリンダ12,13はアクチュエータ33を介してマス
タシリンダ16の液溜め18に接続されている。この液
溜め18は、アンチスキッド制御中、各ホイールシリン
ダ12,13から排出された液を蓄えるものである。ま
た、マスタシリンダ16からの液圧をホイールシリンダ
12,13に送るためのアクチュエータ23の上下流に
は、バイパス管路43及びそのバイパス管路43に介装
された逆止弁43aが配設されており、ホイールシリン
ダ12,13からマスタシリンダ16へ向かう圧液のみ
をアクチュエータ23を迂回して流通させるように設定
されている。なお、各アクチュエータ23,33は、連
通位置と遮断位置とを有する電磁式2位置弁である。
【0030】このような構成の第2のブレーキ配管系統
においては、アンチスキッド制御中に各ホイールシリン
ダ12,13からブレーキ液を排出して減圧させる場合
には、その排出されたブレーキ液はアクチュエータ33
を介してマスタシリンダ16の液溜め18に戻されるこ
ととなる。つまり、ブレーキペダル27が踏まれていて
も、各ホイールシリンダ12,13から排出されるブレ
ーキ液を、アクチュエータ33を介してマスタシリンダ
16の液溜め18に戻すことができる。すなわち、マス
タシリンダ16のプライマリ室16bからホイールシリ
ンダ12,13にかけて、ほぼ大気圧まで解放でき、プ
ライマリ室16bからホイールシリンダ12,13まで
の間のブレーキ液解放は無限である。この意味で、第2
のブレーキ配管系統は「オープン回路」である。もちろ
ん、ブレーキペダル27が戻されてマスタシリンダ16
が減圧されると、各ホイールシリンダ12,13のブレ
ーキ液は、逆止弁43aを介してマスタシリンダ16に
還流されることとなる。
【0031】ところで、車輪速度センサ5〜8及びスト
ップスイッチ29の検出信号は、電子制御回路(EC
U)50に入力されている。電子制御回路50は、CP
U,ROM,RAM,I/O回路を有する周知のマイク
ロコンピュータで、上記検出信号に基づいて各アクチュ
エータ21,23,24,31,33,34を制御する
信号を発生する。この制御信号は、FR輪1及びFL輪
4については各輪毎に発生される増圧出力、保持出力及
び減圧出力によって構成される。また、RL輪2及びR
R輪3については、いわゆるローセレクトを行い、両後
輪2,3に対して増圧出力、保持出力及び減圧出力のい
ずれかを実行する。
【0032】ここで、各出力に対応する動作を前輪側及
び後輪側のブレーキ配管系統毎に説明する。前輪側のブ
レーキ配管系統についての動作はFR輪1を例にとって
説明する。FR輪1に増圧出力を発生させるとは、アク
チュエータ21を連通位置に固定すると共にアクチュエ
ータ31を遮断位置に固定するように制御信号を発生す
ることである。すると、マスタシリンダ16が発生する
液圧がそのままホイールシリンダ11に供給される。
【0033】FR輪1に保持出力を発生させるとは、ア
クチュエータ21,31を共に遮断位置に固定するよう
に制御信号を発生することである。すると、ホイールシ
リンダ11の液圧が保持される。なお、この保持出力の
継続中にブレーキペダル27が緩められると、バイパス
管路41を介して圧液が流通し、ホイールシリンダ11
の液圧が減圧される。
【0034】FR輪1に減圧出力を発生させるとは、ア
クチュエータ21を遮断位置に固定すると共にアクチュ
エータ31を連通位置に固定するように制御信号を発生
することである。すると、ホイールシリンダ11の圧液
がリザーバ37へ流入し、液圧が減圧される。
【0035】次に後輪側のブレーキ配管系統での動作を
説明する。上述したようにRR輪3とRL輪2とが連通
しており、共通の制御がなされる。後輪2,3に増圧出
力を発生させるとは、アクチュエータ23を連通位置に
固定すると共にアクチュエータ33を遮断位置に固定す
るように制御信号を発生することである。すると、マス
タシリンダ16が発生する液圧がそのまま後輪2,3の
ホイールシリンダ12,13に供給される。
【0036】後輪2,3に保持出力を発生させるとは、
アクチュエータ23,33を共に遮断位置に固定するよ
うに制御信号を発生することである。すると、ホイール
シリンダ12,13の液圧が保持される。なお、この保
持出力の継続中にブレーキペダル27が緩められると、
バイパス管路43を介して圧液が流通し、ホイールシリ
ンダ12,13の液圧が減圧される。
【0037】後輪2,3に減圧出力を発生するとは、ア
クチュエータ23を遮断位置に固定すると共にアクチュ
エータ33を連通位置に固定するように制御信号を発生
することである。すると、ホイールシリンダ12,13
の圧液がマスタシリンダ16の液溜め18へ流入し、液
圧が減圧される。
【0038】次に、電子制御回路50が実行するアンチ
スキッド制御を図2以下のフローチャートに基づいて説
明する。図2に示す如く、電子制御回路50が起動され
ると、まず、メモリクリア、フラグリセット等の初期化
処理を行い(S100)、以降の演算処理を所定時間T
a(例えば5msec.)毎に実行するために、所定時間T
aが経過するのを待つ(S110)。
【0039】そして、所定時間Taが経過したと判断す
ると(S110:YES)、上記各回転速度センサ5〜
8からの回転速度信号に基づき、各車輪1〜4の回転速
度(以下、車輪速度という。)VW**(**は、各輪に対
応する添え字であって、FR,FL,RR,RLのいずれか。以
下の説明及び図面において同じ)を算出し(S12
0)、この車輪速度の微分値である各車輪1〜4の回転
加速度(以下、車輪加速度という)dVW**を演算する
(S130)。
【0040】次に、S120で求めた各車輪1〜4の車
輪速度VW**の内の例えば最大速度VWmax に基づき、
車体速度VBを演算する(S140)。この処理は、例
えば、各車輪1〜4の車輪速度VWFR〜VWRLの内の最
大速度VWmax が、前回求めた車体速度VB(n-1) に所
定値を加えた加速限界値Vαから、車体速度VB(n-1)
から所定値を減じた減速限界値Vβまでの範囲内にある
か否かを判断し、最大速度VWmax が加速限界値Vαか
ら減速限界値Vβまでの範囲内にあれば、最大速度VW
max をそのまま車体速度VBとして設定し、最大速度V
Wmax が加速限界値Vαを越えていれば、この加速限界
値Vαを車体速度VBとして設定し、最大速度VWmax
が減速限界値Vβを下回っていれば、その減速限界値V
βを車体速度VBとして設定するといった従来より周知
の手順で実行される。
【0041】続いて、S140で演算した車体速度VB
を時間で微分して車体減速度(マイナスの加速度)dV
Bを演算し(S150)、更に、車体速度VBと、各車
輪1〜4の車輪速度VW**とに基づき、各車輪1〜4の
スリップ率SW**を算出する(S160)。
【0042】以上のように、各車輪1〜4のスリップ率
SW**が算出されると、今度は、各車輪1〜4のスリッ
プ率SWFR〜SWFLと車輪加速度dVWFR〜dVWFLと
に基づき、各車輪1〜4毎に、アクチュエータ21,2
3,24の制御モードを、増圧モード、減圧モード、保
持モード、或はパルス増モードの何れに制御するかを設
定する制御モードの演算処理を実行する(S200)。
この制御モード演算処理S200は、図3に示すように
構成されている。
【0043】このルーチンは、FR輪、FL輪、RR
輪、RL輪2に対して計4回実行されるようになってお
り、まず、ストップスイッチ29がONになったか否か
を判定する(S210)。そして、ストップスイッチ2
9がONになるまでは、当該車輪の制御中フラグをリセ
ットし(S220)、当該車輪の制御モードを増圧モー
ドにセットする(S230)。
【0044】一方、ストップスイッチ29がONになっ
たときは、制御中フラグがセットされているか否かを判
定する(S240)。ストップスイッチ29がONにな
った直後は制御中フラグはリセット状態にあるので、続
いて判定対象となっている車輪のスリップ率SW**を目
標スリップ率KS0、例えば20%と大小比較する(S
250)。この比較の結果、SW**>KS0となるまで
は、S220以下へ抜ける。そして、SW**>KS0と
なると、制御中フラグをセットする処理へ進み(S26
0)、次に、スリップ率SW**>KS1となっているか
否かを判定する(S270)。このKS1は、KS1<
KS0の関係にあり、例えばKS0=20%に対してK
S1=15%といった値が設定されている。
【0045】このS270の判定において、SW**>K
S1と判定されると、当該車輪の車輪加速度dVW**と
加速度零(0G)とを比較し、当該車輪が減速方向に制
御されている状態にあるか、それとも減速方向から加速
方向に反転した状態にあるかを判定する(S280)。
そして、dVW**<0Gと判定された場合は、当該車輪
のアクチュエータの制御モードとして、減圧モードをセ
ットし(S290)、dVW** ≧0Gと判定された場
合は保持モードをセットする(S300)。
【0046】一方、S270で、SW**≦KS1と判定
された場合は、アクチュエータを図1に示した増圧位置
と保持位置との間を所定周期で交互に変化させて、ブレ
ーキ装置のホイールシリンダ圧をその変化周期に応じた
増圧パターンで除々に増圧させるパルス増モードの制御
を、所定回数分だけ実行したか否かを判定する(S31
0)。
【0047】そして、パルス増モードの制御を所定回数
分実行したと判定すると、当該車輪のスリップは完全に
抑制され、液圧制御を終了してももはや車輪がスリップ
することはないものとして、S220以下に移行して制
御中フラグをリセットし、増圧モードをセットする。一
方、S310にて、パルス増モードの制御を所定回数分
実行していないと判定されたときは、そのままパルス増
モードをセットし続ける(S320)。
【0048】なお、図4は、増圧モード、減圧モード、
保持モード及びパルス増モードの際のアクチュエータに
対する駆動出力を表す。制御モードとして増圧モードが
設定されている場合には、アクチュエータ21,24,
23のソレノイドへの通電を行わず増圧位置に固定して
ホイールシリンダ圧を連続的に増圧する。減圧モードが
設定されている場合には、減圧と保持を交互に繰り返す
ように所定のデューティ比でアクチュエータ31,3
4,33のソレノイドへ通電を実行し、ホイールシリン
ダ圧を所定速度で減圧していく。この際、各アクチュエ
ータ31,34,33に対応するアクチュエータ21,
24,23にも通電が行われる。保持モードが設定され
ている場合には、アクチュエータ21,24,23に通
電して保持位置に固定し、ホイールシリンダ圧をそのま
ま現状にて保持する。パルス増モードが設定されている
場合には、ソレノイドに所定時間KH(例えば100m
sec)だけ保持出力し、その後所定時間KU(例えば
3msec)だけ増圧出力するというように、アクチュ
エータを保持出力と増圧出力とに交互に切り換える。こ
れをN回(例えば10回)繰り返して1回のパルス増モ
ードの制御が終了する。本実施の形態では、パルス増モ
ードにおける保持出力の継続時間KHについて後輪の方
が長い時間(例えば前輪には100msに対して後輪に
は500ms)を設定してある。
【0049】以上のようにして、図2のS200に示す
4輪各輪の制御モードが演算できたら、次に、後輪ロー
セレクトにかかる処理を実行する(図2のS400)。
この後輪ローセレクトの処理は、図5に示すように構成
されている。この後輪ローセレクトの処理においては、
まず、RR輪3が減圧モードか否かを判定する(S41
0)。RR輪3が減圧モードであれば(S140:YE
S)、S470に移行して、後2輪、つまりRR輪3及
びRL輪2を共に減圧モードに決定する。一方、RR輪
3が減圧モードでなければ(S410:NO)、RL輪
2が減圧モードか否かを判定する(S420)。ここで
RL輪2が減圧モードであれば(S420:YES)、
S470に移行して、やはりRR輪3及びRL輪2を共
に減圧モードに決定する。つまり、RR輪3及びRL輪
2のいずれか一方でも減圧モードとなっていれば、もう
一方の状態に関係なく両輪共に減圧モードに決定するの
である。
【0050】そして、RR輪3及びRL輪2が両方共に
減圧モードでない場合には(S410:NO,S42
0:NO)、S430及びS440において今度は保持
モードか否かを判定する。上述の減圧モードの判定の場
合と同様に、RR輪3及びRL輪2のいずれか一方でも
保持モードとなっている場合には(S430:YES,
S440:YES)、S480へ移行して、両輪共に保
持モードに決定する。
【0051】そして、RR輪3及びRL輪2が両方共に
保持モードでない場合には(S430:NO,S44
0:NO)、S450及びS460において今度はパル
ス増モードか否かを判定する。そして、RR輪3及びR
L輪2のいずれか一方でもパルス増モードとなっている
場合には(S450:YES,S460:YES)、S
500へ移行して、両輪共にパルス増モードに決定す
る。そして、RR輪3及びRL輪2が両方共にパルス増
モードでない場合には(S450:NO,S460:N
O)、S490へ移行して、両輪共に増圧モードに決定
する。
【0052】この後輪ローセレクトは、例えばまたぎ路
等での車両の走行安定性を確保するために、左右の後輪
に対しては、スリップ傾向の低い(換言すれば高μ路上
の)車輪に対するブレーキ液圧の制御モードを、スリッ
プ傾向の高い(換言すれば低μ路上の)車輪に対する制
御モードに一致させて、左右後輪のブレーキ液圧が略同
じになるようにする制御である。
【0053】このように後輪側についてはローセレクト
された制御モード、前輪側については各輪毎に独立して
制御するための制御モードが決定される。この決定され
た制御モードに応じ、タイマ割り込みルーチン(図7)
において、FR輪、FL輪についてはそれぞれのアクチ
ュエータ駆動用のソレノイドに対し、各輪にセットされ
ている制御モードに従って図4で示したいずれかの駆動
出力を実行する(S710,S720)。一方、RR輪
3及びRL輪2の後2輪については共通のアクチュエー
タ駆動用のソレノイドに対し、上述したS600でセレ
クトされた制御モードに従って図4で示したいずれかの
駆動出力を実行する(S730)。
【0054】図2に戻り、S400に示す後輪ローセレ
クトの処理が終了すると、次に、ウォーニングランプ制
御にかかる処理を実行する(図2のS600)。このウ
ォーニングランプ制御の処理は、図6に示すように構成
されている。まず、ストップスイッチ29がONになっ
たか否かを判定する(S610)。そして、ストップス
イッチ29がONされた場合には(S610:YE
S)、現在1輪以上について制御中であるか否かを判断
する(S620)。全く制御をしていない場合には(S
620:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。
一方、1輪以上について制御中であれば(S620:Y
ES)、同系統の2輪が両方共にロックしているかどう
かを判断する。同系統の2輪とは、第1のブレーキ配管
系統に対応する前2輪の両方であってもよいし、あるい
は第2のブレーキ配管系統に対応する後2輪の両方であ
ってもよい。同系統の2輪が両方共にロックしているの
でなければ(S630:NO)、そのまま本処理ルーチ
ンを終了するが、同系統の2輪が両方共にロックしてい
れば(S630:YES)、ウォーニングランプ55を
点灯する。
【0055】そして、このように点灯されたウォーニン
グランプ55は、S610にて否定判断、つまり、スト
ップスイッチ29がOFFになった場合にのみ消灯され
ることとなる(S650)。以上のように構成された結
果、この実施の形態では、図8のタイミングチャートに
示すような作用効果が発揮される。なお、図中、FR輪
1及びFL輪4のフロント系統、RL輪2及びRR輪3
のリヤ系統のそれぞれについて、縦軸Vで示したタイミ
ングチャートが車輪速度VWF*,VWR*及び車体速度V
Bの時間変化の様子を示し、縦軸Pで示したタイミング
チャートがホイールシリンダ圧の時間変化の様子を示し
ている。また、フロント系統については、縦軸lで示し
たタイミングチャートがリザーバ37への流入量の時間
変化の様子を示し、リヤ系統については、縦軸lで示し
たタイミングチャートがマスタシリンダ(M/C)16
からの流出量の時間変化の様子を示す。
【0056】今、ストップスイッチ29がONとなり、
その少し後にフロント系統・リヤ系統共にアンチスキッ
ド制御が始まったとする。最初の内は、各系統共、減圧
モードとパルス増モードとが繰り返され、各輪のスリッ
プ率が目標スリップ率に一致するように、ホイールシリ
ンダ圧が増減される。ホイールシリンダ圧を減圧する制
御が行われるたび、フロント系統ではリザーバ37内に
徐々にブレーキ液が貯蔵されていき、一方、リヤ系統で
はマスタシリンダ16の液溜め18にブレーキ液が流出
されていく。そして、図示の例では、時刻t1 にてフロ
ント系統側に設けられているリザーバ37が満杯とな
り、FR輪1あるいはFL輪4に対応するホイールシリ
ンダ11,14に対してはいくら減圧制御しようとして
もブレーキ液が抜けないため、時刻t2 においてFR輪
1あるいはFL輪4がロックした状態となり、それ以降
はロック状態が継続するようになる。
【0057】しかし、リヤ系統においては、RL輪2及
びRR輪3のホイールシリンダ12,13内のブレーキ
液がマスタシリンダ16の液溜め18に流出するいわゆ
る「オープン回路」構成であるため、時刻t2 以降でも
減圧することができ、継続してアンチスキッド制御が実
行できる。そして、時刻t3 においてマスタシリンダ1
6がボトミングすると、その時点で増圧ができなくな
り、リヤ系統のアンチスキッド制御も終了する。
【0058】このように、本実施形態のアンチスキッド
制御装置によれば、フロント系統のホイールシリンダ1
1,14にかかるブレーキ液圧を調整して行なうアンチ
スキッド制御において、その内の減圧制御に伴って各ホ
イールシリンダ11,14から流出したブレーキ液はリ
ザーバ37に貯蔵される。そして、リザーバ37に貯蔵
されたブレーキ液はブレーキペダル27が戻されるまで
の間はリザーバ37に貯蔵され続ける。つまり、リザー
バ37内のブレーキ液を強制的にマスタシリンダ16に
還流させるポンプを持たない「ポンプレスタイプ」の配
管系統であるため、アンチスキッド制御が長時間継続す
るとリザーバ37が満杯になってそれ以上のブレーキ液
圧の減圧ができなくなる場合が想定される。その場合は
ブレーキペダル27の踏込量に応じたマスタシリンダ圧
がそのままホイールシリンダ11,14に加えられるノ
ーマルブレーキとして機能することとなり、前輪1,4
がロックする可能性がある。
【0059】これに対して、リヤ系統のホイールシリン
ダ12,13にかかるブレーキ液圧を調整して行なうア
ンチスキッド制御において、その内の減圧制御に伴って
各ホイールシリンダ12,13から流出したブレーキ液
はマスタシリンダ16の液溜め18に還流する。このよ
うに後輪側のブレーキ配管系統はオープン回路であるた
め、アンチスキッド制御が長時間継続してもマスタシリ
ンダ16がボトミングしてそれ以上の増圧ができなくな
り、後輪2,3がロックすることを防止する。
【0060】このように、前輪1,4については、ブレ
ーキ配管系統をクローズ回路とすることで車輪ロックを
許容して減速度を稼ぎつつ、後輪2,3については、ブ
レーキ配管系統をオープン回路とすることで、車輪をロ
ックさせないようにして安定性などを維持し続けること
ができる。これによって、減速度確保と安定性確保とを
両立することができる。そして、ブレーキ液圧回路自体
を工夫することでこの減速度確保と安定性確保とを両立
しているので、アクチュエータとしての電磁制御弁に対
するソレノイド制御に全て依存するのではないため、車
両挙動の急変をより確実に防止するすることができる。
【0061】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、本発明はこれらに限定されることはなく、種々の
態様をとることができる。例えば、上述した実施形態は
前後配管を前提としていたが、X配管のポンプレスブレ
ーキシステムにおいても、同様に適用できる。図9に
は、このX配管のブレーキ配管系統を採用したアンチス
キッド制御システムである。
【0062】この場合には、FR輪101、FL輪10
2、RR輪103及びRL輪104の各々に対応して、
車輪速度センサ5,6,7,8及びホイールシリンダ1
1,12,13,14が配置される。マスタシリンダ1
6からの液圧は、アクチュエータ21,22,23,2
4及び各液圧管路を介して、各ホイールシリンダ11〜
14に送られる。このブレーキシステムでは、FL輪1
02とRR輪103とを1組とする第1のブレーキ配管
系統とFR輪101とRL輪104を1組とする第2の
ブレーキ配管系統との2系統からなる「X配管」であ
る。
【0063】そして、図9に示す実施形態の場合には、
第1のブレーキ配管系統に接続されるFL輪102,R
R輪103に対応する各ホイールシリンダ12,13は
それぞれアクチュエータ32,32を介してリザーバ3
9に接続されている。このリザーバ39は、アンチスキ
ッド制御中、各ホイールシリンダ12,13から排出さ
れた液を一時的に蓄えるものである。また、マスタシリ
ンダ16からの液圧をホイールシリンダ12,13に送
るためのアクチュエータ22,23の上下流には、バイ
パス管路42,43及びそのバイパス管路42,43に
介装された逆止弁42a,43aが配設されており、ホ
イールシリンダ12,13からマスタシリンダ16へ向
かう圧液のみをアクチュエータ22,23を迂回して流
通させるように設定されている。さらに、リザーバ39
とマスタシリンダ16とは、逆止弁49を介した液圧管
路で接続されており、リザーバ39からマスタシリンダ
16へ向かう圧液の流通のみが許可されている。
【0064】したがって、図9に示す構成の第1のブレ
ーキ配管系統においては、ブレーキペダル27が踏み込
まれている状態ではブレーキ液の総量が一定でありブレ
ーキ液の追加は行われない。つまり、上述したように、
アンチスキッド制御中に各ホイールシリンダ12,13
からブレーキ液を排出して減圧させる場合には、その排
出されたブレーキ液はリザーバ39に蓄えられることと
なり、さらにそのリザーバ39に蓄えられたブレーキ液
は、ブレーキペダル27が戻されてマスタシリンダ16
が減圧されるまでは減らない。この意味で、第1のブレ
ーキ配管系統は「クローズ回路」である。
【0065】一方、第2のブレーキ配管系統に接続され
るFR輪101,FL輪104に対応する各ホイールシ
リンダ11,14はそれぞれアクチュエータ31,34
を介してマスタシリンダ16の液溜め18に接続されて
いる。この液溜め18は、アンチスキッド制御中、各ホ
イールシリンダ11,14から排出された液を蓄えるも
のである。また、マスタシリンダ16からの液圧をホイ
ールシリンダ11,14に送るためのアクチュエータ2
1,24の上下流には、バイパス管路41,44及びそ
のバイパス管路41,44に介装された逆止弁41a,
44aが配設されており、ホイールシリンダ11,14
からマスタシリンダ16へ向かう圧液のみをアクチュエ
ータ21,24を迂回して流通させるように設定されて
いる。
【0066】このような構成の第2のブレーキ配管系統
においては、アンチスキッド制御中に各ホイールシリン
ダ11,14からブレーキ液を排出して減圧させる場合
には、その排出されたブレーキ液はアクチュエータ3
1,34を介してマスタシリンダ16の液溜め18に戻
されることとなる。つまり、マスタシリンダ16からホ
イールシリンダ11,14までの間の容量は実質的に無
限となる。この意味で、第2のブレーキ配管系統は「オ
ープン回路」である。もちろん、ブレーキペダル27が
戻されてマスタシリンダ16が減圧されると、各ホイー
ルシリンダ11,14のブレーキ液は、逆止弁41a,
44aを介してマスタシリンダ16に還流される。
【0067】このようなX配管の構成の場合には、前輪
101,102のいずれか一方と後輪103,104の
いずれか一方はロックしないので、前後輪の両方にて走
行安定性を得ることができる。したがって、減速度の確
保及び操縦安定性の確保を、それぞれ前後輪のいずれか
だけで対処するよりも、前後輪の一部でそれぞれに対処
する方が好ましい状況では、このようなX配管が有効で
ある。
【0068】ところで、上述した図1に示す構成あるい
は図9に示す構成では、前後配管あるいはX配管のいず
れであっても、第2のブレーキ配管系統の方のホイール
シリンダから排出されるブレーキ液をマスタシリンダ1
6の液溜め18に戻す「オープン回路」とした。しか
し、第2のブレーキ配管系統についても、アンチスキッ
ド制御の内の減圧制御に伴ってホイールシリンダから流
出したブレーキ液を液溜め18に戻すのではなく、リザ
ーバに貯蔵しておく構成も考えられる。図10には、こ
の構成をX配管のブレーキ配管系統として実現したアン
チスキッド制御システムを示す。
【0069】この図10の構成は、上述した図9の構成
に対して、以下の点が異なる。 マスタシリンダ16の液溜め18はなく、第2のブレ
ーキ配管系統に接続されるFR輪101,FL輪104
に対応する各ホイールシリンダ11,14がそれぞれア
クチュエータ31,34を介してリザーバ37に接続さ
れている。
【0070】リザーバ37とマスタシリンダ16と
は、逆止弁47を介した液圧管路で接続されており、リ
ザーバ37からマスタシリンダ16へ向かう圧液の流通
のみが許可されている。従って、リザーバ37に蓄えら
れたブレーキ液は、ブレーキペダル27が戻されてマス
タシリンダ16が減圧されるまでは減らない。この意味
では、第2のブレーキ配管系統も「クローズ回路」では
ある。
【0071】第1のブレーキ配管系統に設けられたリ
ザーバ(以下「第1のリザーバ」と称す)39の容量は
マスタシリンダ16のプライマリ室16bの容量以下で
あり、第2のブレーキ配管系統に設けられたリザ−バ
(以下「第2のリザーバ」と称す)37の容量はマスタ
シリンダ16のセカンダリ室16aの容量より多く設定
してある。
【0072】この図10に示す構成の場合には、第1の
ブレーキ配管系統のホイールシリンダ12,13にかか
るブレーキ液圧を調整して行なうアンチスキッド制御中
の減圧制御に伴ってホイールシリンダ12,13から流
出したブレーキ液は第1のリザーバ39に貯蔵される。
上述したように第1のリザーバ39の容量はマスタシリ
ンダ16の容量以下であるため、アンチスキッド制御が
長時間継続すると、マスタシリンダ16がボトミングす
る以前に第1のリザーバ39が満杯になってそれ以上の
ブレーキ液圧の減圧ができなくなる場合が想定される。
その場合は上述したようにノーマルブレーキとして機能
し、FL輪102やRR輪103がロックする可能性が
ある。
【0073】これに対して、第2のブレーキ配管系統の
ホイールシリンダ11,14にかかるブレーキ液圧を調
整して行なうアンチスキッド制御中の減圧制御に伴って
ホイールシリンダ11,14から流出したブレーキ液は
第2のリザーバ37に貯蔵される。上述したように第2
のリザーバ37の容量はマスタシリンダ16の容量より
多いため、アンチスキッド制御が長時間継続しても、マ
スタシリンダ16がボトミングする以前には第2のリザ
ーバ37が満杯になることはない。したがって、FR輪
101やRL輪104がロックすることを防止する。
【0074】このように、図1,9に示した構成では、
クローズ回路のブレーキ配管系統とオープン回路のブレ
ーキ配管系統とを備える構成を採用し、一方、図10に
示した構成では、複数のブレーキ配管系統は共にクロー
ズ回路ではあるが、備えているリザーバ37,39の容
量をマスタシリンダ16の容量よりも多いもの(第2の
リザーバ37)と、それ以下のもの(第1のリザーバ3
9)とに設定する構成を採用した。これらは、いずれの
構成でも、ブレーキ液圧回路自体を工夫することで減速
度確保と安定性確保との両立を実現できる。但し、図1
0に示す構成の場合には、第2のリザーバ37の容量は
マスタシリンダ16の容量よりも多くする必要があるの
で、比較的大きなリザーバが必要となる。したがって、
全体の構成の大型化を避けたい場合には、図1,9に示
すように一方をオープン回路にする構成の方が好ましい
といえる。
【0075】なお、上述した各実施形態では、リザーバ
37,39内のブレーキ液を強制的にマスタシリンダ1
6に還流させるポンプを持たない「ポンプレスタイプ」
を前提として説明したが、リザーバ37,39内のブレ
ーキ液を汲み上げてマスタシリンダ16へ向けて圧送可
能なポンプを追加した構成であっても、そのポンプが低
能力で、リザーバ37,39からブレーキ液を汲み出す
量よりもホイールシリンダ11〜14側から流入するブ
レーキ液の量の方が多い場合には、やはりリザーバ3
7,39が早期に満杯になってしまうため、車輪ロック
が生じてしまう可能性がある。したがって、このような
低能力ポンプを追加した構成においても、ブレーキ液回
路自体を上述した各構成にすれば、減速度確保と安定性
確保との両立を実現する点で有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態のアンチスキッド制御装置全体の概
略構成図である。
【図2】 実施形態におけるアンチスキッド制御のメイ
ンルーチンを示すフローチャートである。
【図3】 図2のS200の処理の詳細を示すフローチ
ャートである。
【図4】 図3の処理で演算された制御モードと、ホイ
ールシリンダ圧制御のためのアクチュエータのソレノイ
ドに対する駆動出力との関係を示す説明図である。
【図5】 図2のS400の処理の詳細を示すフローチ
ャートである。
【図6】 図2のS600の処理の詳細を示すフローチ
ャートである。
【図7】 タイマ割り込み処理を示すフローチャートで
ある。
【図8】 実施形態における作用効果を示すタイミング
チャートである。
【図9】 別実施形態のアンチスキッド制御装置全体の
概略構成図である。
【図10】 別実施形態のアンチスキッド制御装置全体
の概略構成図である。
【符号の説明】
1,101…右前輪(FR輪) 4,102…左前
輪(FL輪) 3,103…右後輪(RR輪) 2,104…左後
輪(RL輪) 5,6,7,8…車輪速度センサ 11,12,13,14…ホイールシリンダ 16…マスタシリンダ 18…液溜
め 21,22,23,24,31,32,33,34…ア
クチュエータ 27…ブレーキペダル 29…ストップスイッチ 37,39…リザーバ 50…電子制御回路 55…ウォーニングランプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−273757(JP,A) 特開 平4−321462(JP,A) 特開 平4−38260(JP,A) 特開 平2−182561(JP,A) 特開 昭61−222850(JP,A) 実開 平3−118156(JP,U) 特表 平9−506054(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/00 B60T 8/32 - 8/96

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乗員によるブレーキペダルの制動操作に
    応じてブレーキ液圧を発生するマスタシリンダからのブ
    レーキ液圧を受けたホイールシリンダが車輪制動力を発
    生させる際、前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液
    圧を調整して車輪をロックさせずに制動を行うアンチス
    キッド制御を実行するアンチスキッド制御装置におい
    て、 第1の車輪に対する車輪制動力を発生させる第1のホイ
    ールシリンダと前記マスタシリンダとは第1のブレーキ
    配管系統によって接続されており、 当該第1のブレーキ配管系統は、アンチスキッド制御の
    内の減圧制御に伴って前記第1のホイールシリンダから
    流出したブレーキ液を貯蔵しておき、該貯蔵したブレー
    キ液を前記ブレーキペダルの戻し操作に合わせて前記マ
    スタシリンダに還流するリザーバを有するクローズ回路
    として構成されていると共に、 第2の車輪に対する車輪制動力を発生させる第2のホイ
    ールシリンダと前記マスタシリンダとは第2のブレーキ
    配管系統によって接続されており、 当該第2のブレーキ配管系統は、アンチスキッド制御の
    内の減圧制御に伴って前記第2のホイールシリンダから
    流出したブレーキ液を前記マスタシリンダの液溜めに還
    流するオープン回路として構成されていることを特徴と
    するアンチスキッド制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のアンチスキッド制御装
    置において、 前記リザーバ内のブレーキ液を汲み上げて前記マスタシ
    リンダへ向けて圧送可能なポンプを備えたことを特徴と
    するアンチスキッド制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のアンチスキッド
    制御装置において、1輪以上について制御中であり、且つ同じブレーキ配管
    系統の2輪が両方共にロックしている場合にウォーニン
    グランプを点灯する ことを特徴とするアンチスキッド制
    御装置。
  4. 【請求項4】 請求項1〜のいずれかに記載のアンチ
    スキッド制御装置において、 前記第1の車輪は前輪であり、前記第2の車輪は後輪で
    あることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜のいずれかに記載のアンチ
    スキッド制御装置において、 前記第1のブレーキ配管系統は、4輪以上を備えた車両
    の前2輪に対応するホイールシリンダと前記マスタシリ
    ンダとを接続し、前記第2のブレーキ配管系統は、後2
    輪に対応するホイールシリンダと前記マスタシリンダと
    を接続するよう構成されていることを特徴とするアンチ
    スキッド制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項1〜のいずれかに記載のアンチ
    スキッド制御装置において、 前記第1及び第2のブレーキ配管系統は、それぞれ、4
    輪以上を備えた車両の別個の対角2輪の組に対応するホ
    イールシリンダと前記マスタシリンダとを接続するよう
    構成されていることを特徴とするアンチスキッド制御装
    置。
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