JP3413929B2 - 正特性サーミスタの製造方法 - Google Patents

正特性サーミスタの製造方法

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JP3413929B2 JP02411094A JP2411094A JP3413929B2 JP 3413929 B2 JP3413929 B2 JP 3413929B2 JP 02411094 A JP02411094 A JP 02411094A JP 2411094 A JP2411094 A JP 2411094A JP 3413929 B2 JP3413929 B2 JP 3413929B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、外部引き出し用として
機能するリード端子を備えてなる正特性サーミスタ(以
下、PTCという)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、この種の一般的なPTCとし
ては、図13で示すように、所要の抵抗温度特性を有す
るチタン酸バリウム系磁器半導体からなる平板形状とさ
れたサーミスタ素体1の互いに対向する表面上にオーミ
ック電極層2を形成し、かつ、これらオーミック電極層
2の表面を全面的に覆って形成された半田付け用電極層
3のそれぞれに対してリード端子4を半田付け接続した
ものが知られている。なお、図13で示されたPTCに
おけるオーミック電極層2及び半田付け用電極層3の端
部はサーミスタ素体1の端面から内側寄りの位置にあ
り、若干小さな寸法形状であるが、このような形状に限
定されることはなく、これらの両電極層2,3がともに
サーミスタ素体1の端面に至るまでを覆った形状とされ
たものや、また、図13中の仮想線で示すように、半田
付け用電極層3がオーミック電極層2の端面を覆う形状
とされたものなどがある。
【0003】そして、このPTCを製造するに際して
は、まず、ZnやSbなどが添加されてなるオーミック
Agペーストをサーミスタ素体1上に印刷して焼き付け
ることによってオーミック電極層2を形成した後、半田
付け可能なAgペーストをオーミック電極層2上に印刷
したうえで焼き付けることによって半田付け用電極層3
を形成することが行われる。さらに、図14で示すよう
に、半田付け用電極層3が形成されたサーミスタ素体1
を一対のリード端子4によって挟持したうえで半田付け
用フラックス浴5中に浸漬した後、フラックス(図示し
ていない)が付着した半田付け用電極層3に対してリー
ド端子4のそれぞれを半田付け接続することによってP
TCが完成することになる。
【0004】ところで、PTCにおけるオーミック電極
層2を半田付け用電極層3によって全面的に覆っている
のは、オーミック電極層2に対しての直接的な半田付け
が不可能であるとともに、このオーミック電極層2の耐
環境性能が良好ではなかったために半田付け用電極層3
で覆って保護する必要があったからである。しかしなが
ら、オーミック電極層2の耐環境性能を向上させるため
の努力が続けられた結果、現在におけるオーミック電極
層2の耐環境性能は大幅に改善されており、必ずしも半
田付け用電極層3によって保護する必要はなくなってい
る。なお、PTCの主要部は樹脂封止されているのが一
般的であるが、図13においては樹脂封止の図示を省略
している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】オーミック電極層2を
全面的に覆う半田付け用電極層3が形成されたサーミス
タ素体1を半田付け用フラックス浴5中に浸漬した場合
には半田付け用電極層3の全面にわたってフラックスが
付着していることになり、このままの状態でリード端子
4を半田付け接続した際の半田6は、図13で示すよう
に、半田付け用電極層3上の全面にわたって拡がった状
態で付着することになる。そして、付着した半田6が固
化する際には、サーミスタ素体1や両電極層2,3に対
して半田6の固化に伴う収縮力が全面的に加わることと
なる結果、これらの電極層2,3がサーミスタ素体1か
ら剥がれたり、サーミスタ素体1の損傷が生じたりとい
うような経時的変化が発生することになってしまう。
【0006】また、半田付け用電極層3上にフラックス
が残留したままになっていると、フラックスによるサー
ミスタ素体1の還元やオーミック電極層2及び半田付け
用電極層3の腐食に起因すると考えられる抵抗温度特性
や耐電圧特性などの劣化というような電気的変化が生じ
てしまうことにもなる。そこで、これらの不都合を回避
すべく半田付け不要部分に付着したフラックスを洗浄に
よって除去することも考えられているのであるが、洗浄
作業の実施にあたっては大変な手間を要することになっ
てしまう。さらにまた、近年においてはトリクロロエタ
ンなどのような洗浄剤の使用が制限されていることもあ
り、洗浄を行うことによってフラックスを確実に除去す
るのは困難となっている。
【0007】本発明は、耐環境性能が改善されたオーミ
ック電極層を保護する必要はないことに着目して創案さ
れたものであって、電極層剥がれ及びサーミスタ素体の
損傷などの経時的変化や抵抗温度特性及び耐電圧特性の
劣化による電気的変化というような不都合の発生を有効
に防止することが可能なPTCの製造方法を提供するこ
とを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるPTCの
製造方法は、このような目的を達成するために、サーミ
スタ素体上にオーミック電極層を形成し、かつ、このオ
ーミック電極層よりも占有面積の狭い半田付け用電極層
をオーミック電極層上に重ね合わせて形成した後、半田
付け用電極層上に限定してフラックスを付着させたう
え、この半田付け用電極層に対してリード端子を半田付
け接続することを特徴としている。また、この際、オー
ミック電極層及び半田付け用電極層は、Agの焼き付け
層とされている。
【0009】
【作用】上記方法によれば、フラックスが付着する範囲
は半田付け用電極層上となり、リード端子を半田付け接
続する際の半田が付着し得る範囲も同様に限定されてい
ることになる。
【0010】
【実施例】以下、本発明方法の実施例を図面に基づいて
説明する。
【0011】図1は本発明方法に従って作製されたPT
Cの構成を示す断面図、図2は作製途中のPTCを上側
から見た状態を示す要部斜視図、図3ないし図7のそれ
ぞれはPTCの第1ないし第5変形例を示す要部斜視図
であり、これらの図における符号7は半田付け用電極層
である。なお、これらの図1ないし図7において、従来
例にかかる図13及び図14と互いに同一となる部分に
は同一符号を付している。
【0012】本実施例にかかるPTCは、図1及び図2
で示すように、円形平板形状とされたサーミスタ素体1
の互いに対向する表面上に円形状のオーミック電極層2
を形成し、かつ、これらオーミック電極層2よりも占有
面積の狭い円形状とされた半田付け用電極層7を各オー
ミック電極2の表面上に形成したうえ、半田付け用電極
層7のそれぞれに対してリード端子4を半田付け接続し
たものとなっている。なお、図1におけるオーミック電
極層2はサーミスタ素体1の端面から内側に位置するよ
うに若干小さな寸法の円形状となっているが、図3の第
1変形例で示すように、このオーミック電極層2がサー
ミスタ素体1の端面に至るまでの円形状を有していても
よいことは勿論である。
【0013】そして、この際、半田付け用電極層7の形
状が円形に限られることはなく、図4の第2変形例で示
すような矩形状とされたうえでサーミスタ素体1及びオ
ーミック電極層2の双方上にわたって形成されたもので
あっても、また、図5の第3変形例で示すような逆L字
形状、すなわち、リード端子4の半田付け部分と対応し
た形状を有するものとされていてもよい。さらに、サー
ミスタ素体1の形状が円形に限られることもないのであ
り、図6の第4変形例で示すように、サーミスタ素体1
の形状を矩形状としたうえ、このサーミスタ素体1の表
面上に矩形状とされたオーミック電極2及び半田付け用
電極層7を形成することも可能である。
【0014】さらにまた、第4変形例ではオーミック電
極2及び半田付け用電極層7の全辺がサーミスタ素体1
の端面及びオーミック電極2の端面よりも内側に位置し
ているが、図7の第5変形例で示すように、オーミック
電極2の短辺側をサーミスタ素体1の端面よりも内側に
位置させ、かつ、半田付け用電極層7の短辺側をオーミ
ック電極2の短辺側よりも一層内側に位置させた形状と
しておいてもよい。すなわち、これら第2ないし第5変
形例で示したように、少なくとも半田付け用電極層7の
形状を矩形状とした場合には、これに対するリード端子
4の半田付け長さを長くして接続強度の向上が図れると
いう利点があることになる。
【0015】つぎに、上記構成とされたPTCの製造方
法を、フラックス塗布作業の要領を示す図8及び図9に
基づいて説明する。
【0016】まず、所要の抵抗温度特性を有するチタン
酸バリウム系磁器半導体からなる平板形状のサーミスタ
素体1を用意したうえ、ZnやSbなどが添加されたオ
ーミックAgペーストをサーミスタ素体1の互いに対向
する表面上に印刷したうえで焼き付けることによってオ
ーミック電極層2を形成する。その後、半田付け可能な
Agペーストを印刷したうえで焼き付けることにより、
オーミック電極層2よりも占有面積の狭くなった半田付
け用電極層7をオーミック電極層2上に重ね合わせた状
態で形成する。なお、ここで、半田付け用電極層7の形
成にあたって使用されるAgペーストは、70〜80w
t%のAg粉末及び0〜10wt%のガラス粉末(ガラ
スフリット)と、20wt%の有機ビヒクル、すなわ
ち、樹脂成分及び溶剤を含む有機ビヒクルとからなるも
のである。また、これら両電極2,7の焼き付け処理
は、最高温度が420±20℃と設定されたトンネル炉
によって45〜90分をかけて行われるのが一般的であ
る。
【0017】さらに、図8で示すように、半田付け用電
極層7が形成されたサーミスタ素体1を一対のリード端
子4によって挟持したうえ、半田付け用フラックス貯溜
容器(図示していない)に通じるフラックス射出ノズル
10から少量のフラックスFを滴下することによって半
田付け用電極層7の表面上に供給する。すると、供給さ
れたフラックスFは半田付け用電極層7上の全面にわた
って拡がることになり、フラックス(図示していない)
が付着した半田付け用電極層7それぞれに対してリード
端子4のそれぞれを半田付け接続すると、図1で示した
構成を有するPTCが完成することになる。
【0018】また、ここで、フラックス塗布作業が図8
に示したような要領に従って行われる必然性がある訳で
はなく、例えば、図9の変形例で示すように、互いに対
向する離間状として配置されたうえでフラックスが付着
させられた一対のロール11を用意したうえ、半田付け
用電極層7が形成されたサーミスタ素体1を通過させる
ことによって半田付け用電極層7の表面上にフラックス
を塗布してもよいことは勿論である。そして、この図9
で示したような要領によるフラックスの塗布を行った場
合には、半田付け用電極層7上に塗布されたフラックス
の膜厚が均一になるという利点が得られる。さらにま
た、この際、図10で示すように、半田付け用電極層7
が形成されたサーミスタ素体1を挟持するリード端子4
それぞれの半田付け接続部分に予め半田6を付着させて
おき、所要温度まで高められた温風(図示していない)
を吹き付けることによって半田6を熔融させたうえでの
半田付け接続を行うことも可能である。
【0019】ところで、以上説明した本発明方法に従っ
て作製されたPTCの有する信頼性を確認すべく本発明
の発明者が低温断続負荷試験、常温断続負荷試験及び耐
電圧試験を行ってみたところ、図11,図12及び表1
でそれぞれ示すような試験結果が得られた。なお、低温
断続負荷試験の条件はAC16V,1分/5分(オン/
オフ),−20℃、また、常温断続負荷試験の条件はA
C16V,1分/5分(オン/オフ),25℃であり、
これらの試験における接触抵抗測定に際しては周知の4
端子法を利用している。そして、図11及び図12にお
いては本発明方法に従って作製されたPTC(開発品)
のデータを四角黒点及び実線によって示し、かつ、従来
例方法に従って作製されたPTC(従来品)のデータを
丸黒点及び破線によって示している。
【0020】
【表1】
【0021】すなわち、図11で示した低温断続負荷試
験の結果によれば、例えば、経過時間が300時間であ
るときの従来品における平均的な抵抗変化率が8.1%
(最大値は10.8%)であったのに対し、開発品にお
ける平均的な抵抗変化率が6.4%(最大値は8.6
%)と低減しており、また、図12で示した常温断続負
荷試験の結果によれば、同じく経過時間が300時間で
あるときの従来品における平均的な抵抗変化率が8.3
%(最大値は9.4%)であったのに対し、開発品にお
ける平均的な抵抗変化率が4.0%(最大値は5.0
%)と低減していることが明らかとなっている。さら
に、耐電圧試験においても、従来品では耐電圧の平均値
が74V(最小値は71V)であったのに対し、開発品
では耐電圧の平均値が87V(最小値は81V)と大幅
な向上していることが分かる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかるP
TCの製造方法によれば、オーミック電極層よりも占有
面積の狭い半田付け用電極層をオーミック電極層上に重
ね合わせて形成した後、フラックスの滴下もしくは、フ
ラックスが付着させられたロールの通過接触等により、
半田付け用電極層上に限定してフラックスを付着させる
のであるから、フラックスが付着する範囲は半田付け用
電極層上と限定されることになり、また、リード端子を
半田付け接続する際の半田が付着し得る範囲も同じく半
田付け用電極層上として限定されている。そこで、この
半田付け用電極層上のみに付着していた半田が固化する
に際しても、サーミスタ素体や両電極層に対しての全面
的な収縮力が加わることは起こらなくなり、電極層剥が
れやサーミスタ素体の損傷などのような経時的変化が発
生することはなくなる。
【0023】また、フラックスの残留範囲が半田付け用
電極層に限られていることになる結果、フラックスの残
留に起因するPTCの抵抗温度特性や耐電圧特性などの
劣化が生じることはなくなり、PTCの電気的変化が生
じることを未然に防止することができる。さらにまた、
フラックスの使用量が少なくて済むことになり、かつ、
その洗浄作業が容易になるという付随的な効果も得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に従って作製されたPTCの構成を
示す断面図である。
【図2】作製途中のPTCを上側から見た状態を示す要
部斜視図である。
【図3】PTCの第1変形例を示す要部斜視図である。
【図4】PTCの第2変形例を示す要部斜視図である。
【図5】PTCの第3変形例を示す要部斜視図である。
【図6】PTCの第4変形例を示す要部斜視図である。
【図7】PTCの第5変形例を示す要部斜視図である。
【図8】フラックス塗布作業の要領を示す説明図であ
る。
【図9】フラックス塗布作業の変形例を示す説明図であ
る。
【図10】半田付け接続作業の一例を示す説明図であ
る。
【図11】低温断続負荷試験の結果を示す説明図であ
る。
【図12】常温断続負荷試験の結果を示す説明図であ
る。
【図13】従来例方法に従って完成した状態のPTCを
示す断面図である。
【図14】フラックス塗布作業の要領を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 サーミスタ素体 2 オーミック電極層 4 リード端子 7 半田付け用電極層

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】サーミスタ素体(1)上にオーミック電極
    層(2)を形成し、かつ、このオーミック電極層(2)
    よりも占有面積の狭い半田付け用電極層(7)をオーミ
    ック電極層(2)上に重ね合わせて形成した後、 半田付け用電極層(7)上に限定してフラックスを付着
    させたうえ、この半田付け用電極層(7)に対してリー
    ド端子(4)を半田付け接続することを特徴とする正特
    性サーミスタの製造方法。
  2. 【請求項2】オーミック電極層(2)及び半田付け用電
    極層(7)は、Agの焼き付け層であることを特徴とす
    る請求項1に記載の正特性サーミスタの製造方法。
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