JP3412565B2 - 耐爪飛び性および密着性が優れたほうろう用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐爪飛び性および密着性が優れたほうろう用鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば台所用品、
電気製品さらには建材等に用いられるほうろう用鋼板お
よびその製造方法に関する。より具体的には、本発明
は、耐爪飛び性および密着性が優れ、特に一回掛けほう
ろうに用いるのに好適なほうろう用鋼板およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】素地金属を鋼板とするほうろう製品とし
て、システムキッチンの流し台や水周り等の台所用品、
浴槽、建築用パネル、鍋さらにはケトルのような家庭用
品、さらには、暖房器具や電気製品の箱状の本体部品等
が、知られている。
【0003】通常、二回掛け以上のほうろう製品は、鋼
板を切断して所望の形状へ成形加工してから溶接などに
より成品形状に組立てた後、脱脂および酸洗を行って下
釉薬を掛けて焼成し、検査後に上釉を掛けて焼成し、さ
らに必要に応じて、その上に着色釉を掛けてさらに焼成
することによって、製造される。
【0004】このように、一般的にほうろう製品は、二
回または三回以上の焼成を行われる「二回掛けほうろ
う」によって製造されるが、ほうろう掛け時の焼成を省
略するために、下釉を用いずに上釉を直接鋼板に焼き付
ける「一回掛けほうろう」によっても製造される。
【0005】これらの方法により製造されるほうろう製
品に発生する様々な欠陥のうちで素地金属である鋼板に
もその原因があると考えられる欠陥としては、爪飛び、
密着不足、泡立ちさらには焼成歪み等がある。
【0006】爪飛びは、フィッシュテールとも呼ばれ、
冷却直後から一週間程度までの間に、焼成および冷却後
のほうろう層から、爪を切った際の切断片に類似した三
日月状の割片が飛散する現象である。この爪飛びは、ほ
うろう焼成等の処理過程において鋼板中に侵入して固溶
した水素が、冷却後に気体となって鋼板と釉薬との界面
に集合し、集合した水素ガスの圧力がほうろう層を破壊
するために発生すると考えられる。
【0007】密着不足は、例えばほうろう面に衝撃が加
わった場合に表面のほうろう層に破壊や剥離が生じて鋼
板の素地が露出してしまう現象であり、釉薬と鋼板との
組合せの不適正や、釉薬掛け前の鋼板の前処理の不適正
等に起因して発生すると考えられる。また、この密着不
足は、酸洗時の素地の粗れ方の不足といった鋼板の条件
に起因して、焼成時の釉薬の鋼板面への投錨効果が不足
することによっても、発生すると考えられる。
【0008】泡立ちは、釉薬と析出物あるいは鋼板に含
有される主としてCとが焼成中に反応することにより発
生する気体や、鋼板表面の疵等によって、残留した気化
成分による気泡が弾けて、焼成後にほうろう面に気泡が
残存し、ほうろう面に多数のピンホールが生じる現象で
ある。
【0009】さらに、焼成歪みは、炭素を少量含む鋼の
変態温度がほうろうの焼成温度近傍にあって変態温度近
傍では昇温に伴う熱膨張が非直線的になるため、これが
原因となって成型品の形状が歪む現象である。
【0010】従来より、素地金属である鋼板のほうろう
性の良否は、これら全ての性能がその用途に対して満足
すべきものであるか否かに基づいて、判断されてきた。
【0011】ここで、二回掛けほうろうの場合、鋼板と
の密着性が良好な、例えばCoを含む釉薬を下釉に用い、
上釉に緻密で綺麗な表面が得られる釉薬を用いることに
よって、鋼板に起因した上記各種の欠陥の発生を低減す
ることができる。すなわち、ほうろう層の密着性が向上
することにより爪飛びの発生は抑制され、さらに、泡立
ちが下釉の範囲内で止まることによって隠蔽効果も改善
される。
【0012】これに対し、一回掛けほうろうの場合に
は、焼成を一回で済ますことができるという利点がある
反面、鋼板の影響を強く受けてしまうという難点があ
る。一回掛けほうろうによるほうろう製品の製造の際に
発生する欠陥は、二回掛けほうろうの場合と基本的には
同じであるが、一回掛けほうろうには、仕上がり表面の
綺麗さが要求され、濃く着色するCo等を釉薬として用い
ることができないため、二回掛けほうろうで用いる下釉
に比較してどうしても密着性が劣ってしまう。
【0013】その上、一回掛けほうろうや二回掛けほう
ろうとは言っても、ほうろう時に生じた外観欠陥の手直
しのために再焼成(繰り返し焼成)されるものはかなり
の割合を占めており、例えば、一回掛けほうろうであっ
ても、実際には焼成回数が合計で四回にも及ぶ場合もあ
る。このように複数回の繰り返し焼成を行うと、特に一
回掛けほうろう用の釉薬では、ほうろう層の密着性が低
下し易くなり、これに伴って爪飛びも発生し易くなる。
【0014】このようなほうろう用鋼板の製造に関し
て、例えば特開平5−5128号公報には、耐泡立ちおよび
耐黒点性に優れた鋼板として、Ni: 0.010〜0.040 %
(本明細書においては特にことわりがない限り「%」は
「重量%」を意味する。) 、(P+S)/Cu:0.5 〜1.
0 %を含有する高酸素鋼が開示されている。
【0015】また、特開昭59−35657 号公報には、ほう
ろう性および成形性に優れた鋼板としてCを0.003 %以
下、Oを0.020 %以上、Nbを酸化物として存在するもの
を除きC量の2倍以上0.04%以下含有させた、連続鋳造
によるほうろう用鋼が開示されている。
【0016】特開昭59−229463号公報には、加工性に優
れたほうろう用鋼板としてCが0.0050%以下とやや高め
であり、Oが0.016 以上0.030 %未満とやや低めであっ
て、他に時効防止を目的にNbまたはBを添加した鋼が開
示されている。
【0017】特開平6−57374 号公報には、Oを 0.020
%超 0.100%以下と高めに含有し、Nbを0.003 〜0.100
%含有し、さらにNb/C≧7 を満足する、ほうろう性だ
けでなくプレス加工性や溶接性も優れたほうろう用鋼板
が開示されている。
【0018】特開平7−109524号公報には、V:0.010
〜0.060 %、Nb:0.004 〜0.030 %、さらにはMo:0.01
〜0.050 %を含有する加工性に優れたほうろう用鋼板の
製造方法が開示されている。
【0019】さらに、特開平10−102222号公報には、加
工性を向上する方法としてCrをO量の0.5 〜1.3 倍含有
する、深絞り性の優れた一回掛けほうろう用冷延鋼板の
製造方法が開示されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、近
年、素地金属である鋼板に対する要求は、年々高まって
おり、繰り返し焼成を行った後においてもほうろう性が
良好な鋼板が要求されるようになっている。しかし、こ
れらの従来の技術では、このような要求に充分に応える
ことができる鋼板を提供することはできない。
【0021】本発明者らの検討によれば、特開平5−51
28号公報により開示された高酸素鋼により提供されるほ
うろう用鋼板では、繰り返し焼成を行った後の爪飛び性
および密着性が不足するため、所望のほうろう性が得ら
れない。
【0022】また、特開昭59−35657 号公報、同59−22
9463号公報、特開平6−57374 号公報さらには同7−10
9524号公報により開示された方法により得られるほうろ
う用鋼板は、いずれも、Ti、B、Nb、V、Mo等を積極的
に添加して固溶炭素や固溶窒素を析出物として固定する
ことにより、加工性を改善するものである。しかしなが
ら、これらの方法では、一回掛けほうろうにおいて多量
に生成したこれらの析出物や酸化物が、前処理の酸洗時
に鋼板表面に残存して泡や黒点が生じ易くなる。このた
め、ほうろう用鋼板に対する現在のより厳しい要求を満
足することはできない。
【0023】さらに、特開平10−102222号公報により開
示された方法では、特開平5−5128号公報により開示さ
れた高酸素鋼により提供されるほうろう用鋼板と同様
に、繰り返し焼成後に所望のほうろう性を得ることはで
きない。
【0024】一方、近年では、ほうろう工程の合理化の
ため、ほうろうの下地である鋼板にほうろう性が良好な
ことやプレス加工性が良好なことがよりいっそう強く要
求されるようになってきた。すなわち、ほうろう用鋼板
には、特に密着性、耐泡立ち性および耐爪飛び性が優
れ、しかもプレス加工性も優れた鋼板が求められている
が、現在求められているこれらの性能をいずれも満足す
ることができるほうろう用鋼板は、存在しない。
【0025】ここに、本発明の目的は、二回掛け以上の
ほうろうだけではなく、特に一回掛けほうろうにも用い
ることができるほうろう用鋼板を対象として、ほうろう
の製造の際に行われる繰り返し焼成によっても、密着
性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほうろう性能
の低下が小さく、しかも加工性が良好なほうろう用鋼板
と、その製造方法とをともに提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】前述したように、ほうろ
う用鋼板では、繰り返し焼成のために密着性が低下する
とともに爪飛びが生じ易くなる傾向がある。特に、爪飛
びは、軽度の曲げ加工などが施された部分において、ほ
うろうの繰り返し焼成後に結晶粒が非常に粗大になり、
この部分から発生する傾向が強い。このような爪飛びの
発生を抑制するには、O含有量を増加させることが有効
であることが従来から知られているが、これだけでは、
爪飛びの発生を充分に抑制することはできない。
【0027】そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結
果、以下に列記する新規な知見(i)〜(iv)を得た。
【0028】(i) さらに、Ni、Cr、VおよびMoを微量添
加するとともに、鋼板の結晶粒径を適正に管理すること
によって、爪飛びの発生を充分に抑制できる。
【0029】(ii)Ni、Cr、VおよびMoの添加量が多過ぎ
ると、ほうろうの泡欠陥が生じ易くなるため、一回掛け
ほうろうなどの鋼板への要求品質が非常に厳しい用途を
考慮して、Ni、Cr、VおよびMoの添加量には上限を設け
る必要がある。
【0030】ただし、NiはCr、VおよびMoとは異なり、
添加量が多少多くても泡欠陥が生じ難い。なお、泡欠陥
に対して過敏でない用途には、さらにNbおよびBのうち
の少なくとも一つを添加することにより、耐爪飛び性お
よび機械的性質をいずれもよりいっそう向上できる。
【0031】(iii) 鋼板の結晶粒界には転移が多数存在
するが、これらの転位を爪飛びの原因となる水素ガスの
吸蔵場所として利用すれば、爪飛びを抑制することがで
きる。さらに、細粒にすることでこの効果を向上でき
る。なお、ほうろう焼成時の結晶粒の粗大化は、鋼板の
元々の結晶粒径を細粒化することにより、確実に抑制す
ることができる。
【0032】(iv)繰り返し焼成によって密着性が低下す
るが、特に濃く着色するCoなどを用いることができない
一回掛けほうろうにおいて密着性が大きく低下する。こ
の一回掛けほうろうにおける繰り返し焼成によっても、
密着性を低下させないためには、Niを微量添加すること
が極めて有効である。
【0033】本発明者らは、ほうろう用鋼板、特に一回
掛けほうろうを主とする用途に適用されるほうろう用鋼
板に関して、加工性およびほうろうの耐泡性に加え、耐
爪飛び性および密着性を改善することを目的として、こ
れらの新規な知見(i) 〜(iv)に基づいてさらに検討を重
ねた結果、公知の高酸素鋼をベースとしてNi、Cr、Vお
よびMoを微量添加するとともに、必要に応じてNbおよび
Bを微量添加し、同時に熱間圧延時の巻取温度、冷間圧
延時の冷間圧下率さらには再結晶焼鈍時の均熱温度と均
熱時間とを適正に制御することによって粒径が20〜70μ
mであるフェライト結晶粒が70%以上の面積率を占める
組織とすることにより、繰り返し焼成によっても密着
性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほうろう性能
の低下が小さく、しかも加工性が良好な鋼板を提供でき
ることを新規に知見して、本発明を完成した。
【0034】本発明は、C:0.0005〜0.0050%、Si:0
〜0.2 %、Mn:0.1 〜0.5 %、P:0.005 〜0.025 %、
S:0.005 〜0.025 %、Al:0.01%以下、N:0.0050%
以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015 〜0.060 %、
Ni:0.045 〜0.200 %、Cr:0.001 〜0.100 %、V:0.
001 〜0.050 %、Mo:0.01〜0.05%、Cu/P:1.0 〜4.
0 、P/S:0.6 〜2.0 、残部Feおよび不可避的不純物
から成る鋼組成を有し、粒径が20〜70μmであるフェラ
イト結晶粒が70%以上の面積率を占める組織を有するこ
とを特徴とする耐爪飛び性および密着性が優れたほうろ
う用鋼板である。
【0035】上記の本発明にかかるほうろう用鋼板で
は、さらに、Nb:0.001 〜0.050 %、およびB:0.0001
〜0.0100%のうちの少なくとも一方を含有することが、
望ましい。
【0036】別の観点からは、本発明は、C:0.0005〜
0.0050%、Si:0〜0.2 %、Mn:0.1 〜0.5 %以下、
P:0.005 〜0.025 %、S:0.005 〜0.025 %、Al:0.
01%以下、N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、
Cu:0.015 〜0.060 %、Ni:0.045 〜0.200 %、Cr:0.
001 〜0.100 %、V:0.001 〜0.050 %、Mo:0.01〜0.
05%、Cu/P:1.0 〜4.0 、P/S:0.6 〜2.0 、残部
Feおよび不可避的不純物から成る鋼組成を有するスラブ
に、1100〜1250℃の温度域において均熱処理を行ってか
ら熱間圧延を行い、 450〜600 ℃の巻取り温度で巻取
り、酸洗後に、77〜90%の冷間圧下率で冷間圧延を行
い、次いで焼鈍を行うことを特徴とする耐爪飛び性およ
び密着性が優れたほうろう用鋼板の製造方法である。
【0037】上記の本発明にかかるほうろう用鋼板の製
造方法では、スラブが、さらに、Nb:0.001 〜0.050
%、およびB:0.0001〜0.0100%のうちの少なくとも一
方を含有することが、望ましい。
【0038】また、これらの本発明にかかるほうろう用
鋼板の製造方法では、焼鈍が、焼鈍温度:800 〜900 ℃
および焼鈍時間: 120秒間以内の連続焼鈍であること
が、望ましい。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるほうろう用
鋼板およびその製造方法の実施の形態を、添付図面を参
照しながら詳細に説明する。まず、本実施形態のほうろ
う用鋼板の組成を限定する理由を説明する。
【0040】(C:0.0005〜0.0050%)C含有量が0.00
50%を越えるとほうろうの泡欠陥を生じる傾向があり、
またプレス加工性も悪化する。一方、C含有量が0.0005
%未満であると製鋼段階での処理時間が長くなり過ぎ、
製鋼コストが上昇してしまう。そこで、本発明では、C
含有量は0.0005%以上0.0050%以下と限定する。
【0041】(Si:0〜0.2 %)Siは、ほうろう性の良
否には大きく影響しないが、Si含有量が0.2 %を超える
と鋼板表面に疵を発生させたり外観品質を低下させ、硬
さを増して深絞り成形性を悪化させる。一方、Siは、特
に必要とする元素ではなく、下限は0であってもよく、
また通常の不純物程度は存在してもよい。そこで、本発
明では、Si含有量は0%以上0.2 %以下と限定する。
【0042】(Mn:0.1 〜0.5 %)Mnは、Sによる熱間
脆性を防止するため、通常、鋼ではS含有量の7倍程度
以上必然的に含有させる。しかし、Mnは鋼の変態点を低
下させるため、ほうろう用鋼板の場合には焼成温度範囲
で変態を生じないようにするために、多くない方がよ
い。また、Mn含有量が多過ぎると、鋼の加工性も悪化す
る。そこで、本発明では、Mn含有量は0.1 %以上0.5 %
以下と限定する。
【0043】(P:0.005 〜0.025 %)Pは、鋼の不可
避的不純物の一つであるが、酸洗の際に鋼板の溶ける速
度を大きくする傾向がある元素である。P含有量が0.02
5 %を超えると、過剰な酸洗減量のためにほうろうの泡
立ち欠陥を生じ易くなる。一方、P含有量が0.005 %未
満であると、酸洗が不十分となり密着性が悪化する。そ
こで、本発明では、P含有量は0.005 %以上0.025 %以
下と限定する。
【0044】(S:0.005 〜0.025 %)Sは、Pと同様
に鋼の不可避的不純物であり、熱間圧延時の割れの原因
となるため、通常Mnを添加してこの割れを抑制する。そ
の結果として生じるMnS は、鋼中の代表的な介在物であ
り、深絞り成形性の向上のためには少なければ少ないほ
どよい。しかしながら、ほうろう用鋼板では、水素を捕
捉する介在物となり、また酸洗速度を速め、ある程度の
表面粗れをもたらして密着性を向上させる効果がある。
そこで、本発明では、加工性を向上させるためにS含有
量の上限を0.025%と限定するとともに、ほうろう性を
向上させるためにS含有量の下限を0.005%と限定す
る。
【0045】(Al:0.01%以下)Alは、鋳片、特に連続
鋳造鋳片の健全性を確保するため、製鋼段階では脱酸材
として使用されるが、Oを鋼に含有させるため、Alは鋼
中にはできるだけ留めないほうがよい。そこで、本発明
では、Al含有量は0.01%以下と限定する。
【0046】(N:0.0050%以下)Nは、ほうろう性の
良否には影響しないが、歪み時効を生じて鋼板の加工性
を悪化するため、N含有量はできるだけ少ないほうがよ
い。そこで、本発明では、N含有量は0.0050%以下と限
定する。
【0047】(O:0.0100〜0.1000%)O(酸素)は、
鋼中にあってはMnの酸化物を主体とする介在物を形成
し、この介在物が水素を捕捉するので爪飛び発生を抑止
することができる。かかる効果は、O含有量が0.0100%
以上であれば充分に奏せられる。一方、O含有量が0.10
00%を超えると、表面疵が増大して加工性が悪化する。
そこで、本発明では、O含有量は0.0100%以上0.1000%
以下と限定する。
【0048】(Cu:0.015 〜0.060 %)Cuは、酸洗の際
の鋼の溶解速度を低下させるものの、ほうろうの密着性
を向上させる効果がある。Cu含有量が0.015 %未満では
密着性向上の効果が十分でなく、一方Cu含有量が0.060
%を超えると溶解速度が低下し過ぎ、酸洗による表面の
凹凸が十分に得られなくなって密着性が低下する。そこ
で、本発明では、Cu含有量は0.015 %以上0.060 %以下
と限定する。同様の観点から、Cu含有量の下限は0.020
%、上限は0.050 %であることが、それぞれ望ましい。
【0049】(Ni:0.045 〜0.200 %)Niは、本発明の
中で重要な添加元素である。一回掛けほうろうの場合の
みならず二回掛けほうろうの場合にも、ほうろうの密着
性や耐爪飛び性を向上するために前処理としてNiフラッ
シュめっき処理が行われているが、鋼板のNi含有量が0.
045 %以上0.200 %以下であると、ほうろうの密着性や
耐爪飛び性が向上する。これは、Niフラッシュめっき時
に鋼板がNiをこの範囲で含有すると、Niの析出がほうろ
う性に良好な状態を容易に確保できるため、ほうろう密
着性と耐爪飛び性とがともに向上するためであると考え
られる。
【0050】また、鋼板の結晶粒が、後述するように細
粒であると、Niのこのような効果がさらに顕著になる。
この理由は、結晶粒界はほうろう前処理の酸洗時に優先
的に酸洗され易い傾向があるが、酸洗によって結晶粒界
に鋼中のNiが濃化し、Niフラッシュめっき時のNiの析出
が容易になるためと考えられ、結晶粒が細粒であるとか
かる効果がより一層顕著になるためと考えられる。
【0051】Ni含有量が0.045 %未満であるとかかる効
果が得られず、一方、Ni含有量が0.200 %を超えるとNi
の析出が過剰になってほうろう密着性がむしろ低下す
る。そこで、本発明では、Ni含有量は0.045 %以上0.20
0 %以下と限定する。
【0052】(Cr:0.001 〜0.100 %)Crは、鋼中に多
量に含有されるOと結合して介在物を作り、水素を捕捉
して爪飛びを抑制する効果がある。かかる効果を得るに
は、Cr含有量は少なくとも0.001 %以上である。一方、
Cr含有量が0.100 %を超えると、鋼板のプレス加工性を
悪化させるとともに、非常に厳格なほうろうの表面性状
を要求する一回掛けほうろうでは泡や黒点を発生させ
る。そこで、本発明では、Cr含有量は0.001 %以上0.10
0 %以下と限定する。
【0053】(V:0.001 〜0.050 %)Vは、鋼中に多
量に含有されるOと結合して介在物を作り、水素を捕捉
して爪飛びを抑制する効果がある。かかる効果を得るに
は、V含有量は少なくとも0.001 %以上である。一方、
V含有量が0.050 %を超えると、鋼板のプレス加工性を
悪化させるとともに、非常に厳格なほうろうの表面性状
を要求する一回掛けほうろうでは泡や黒点を発生させ
る。そこで、本発明では、V含有量は0.001 %以上0.05
0 %以下と限定する。
【0054】(Mo:0.01〜0.05%)Moは、鋼中に多量に
含有されるOと結合して介在物を作り、水素を捕捉して
爪飛びを抑制する効果がある。かかる効果を得るには、
Mo含有量は少なくとも0.01%以上である。一方、Mo含有
量が0.05%を超えると、鋼板のプレス加工性を悪化させ
るとともに、非常に厳格なほうろうの表面性状を要求す
る一回掛けほうろうでは泡や黒点を発生させる。そこ
で、本発明では、Mo含有量は0.01%以上0.05%以下と限
定する。
【0055】(Cu/P:1.0 〜4.0)Cuには酸洗減量を低
減させる効果があるのに対し、Pには酸洗原料を増加さ
せる効果がある。これらの効果の相互の影響について調
査した結果、ほうろうの密着性向上にはCuとPの比の値
Cu/Pを最適な範囲である1.0 以上4.0 以下に管理すれ
ばよいことがわかった。すなわち、ほうろうの密着性
は、値Cu/Pが1.0 未満および4.0 超のいずれであって
も、劣化する。そこで、本発明では、CuとPの比の値Cu
/Pは、1.0 以上4.0 以下と限定する。
【0056】(P/S:0.6 〜2.0)PもSも、酸洗時の
溶解速度すなわち酸洗減量を増加させる元素であるが、
これらの元素が密着性に及ぼす影響について調査した結
果、PおよびSには相互作用があり、その含有量比が0.
6 未満および2.0 超のいずれであっても、密着性が劣っ
たり、泡立ち等を発生し易い。そこで、本発明では、P
/Sは0.6 以上2.0以下に限定する。これは、酸洗減量
だけではなく、酸洗後の表面状態に関係していると考え
られる。
【0057】さらに、本実施形態のほうろう用鋼板は、
NbおよびBのうちの少なくとも一つを、任意添加元素と
して含有してもよい。以下、この任意添加元素につい
て、説明する。
【0058】(Nb:0.001 〜0.050 %)Nbは、0.001 %以
上含有することにより、耐爪飛び性を改善するととも
に、主にCと結合して機械的性質を改善する。しかし、
Nb含有量が0.050 %を超えると、泡欠陥を生じ易くなる
傾向がある。そこで、Nbを添加する場合には、その含有
量は0.001 %以上0.050 %以下と限定することが望まし
い。なお、例えば一回掛けほうろうのような泡欠陥に充
分に配慮する必要がある場合には、Nbの含有量を適宜決
定する必要がある。
【0059】(B:0.0001〜0.0100%)Bは、0.0001%以
上含有することにより、Nbと同様に、耐爪飛び性を改善
するとともに、主にNと結合して機械的性質を改善す
る。しかし、B含有量が0.0100%を超えると、泡欠陥を
生じ易くなる傾向がある。そこで、Bを添加する場合に
は、その含有量は0.0001%以上0.0100%以下と限定する
ことが望ましい。なお、例えば一回掛けほうろうのよう
な泡欠陥に充分に配慮する必要がある場合には、Bの含
有量を適宜決定する必要がある。上記以外は、Feおよび
不可避的不純物である。
【0060】次に、本発明にかかるほうろう用鋼板の組
織について説明する。 (組織)本発明にかかるほうろう用鋼板の組織は、粒径が
20〜70μmであるフェライト結晶粒が70%以上の面積率
を占めている。
【0061】結晶粒の粒界の転移には、鋼中の介在物と
同様に、ほうろう掛け時に侵入した水素を吸蔵する作用
がある。粒径が70μmを超えるフェライト結晶粒が70%
を超える面積率を占めると、鋼中の結晶粒界が少なくな
り、水素を吸蔵する作用が不足し、十分な耐爪飛び性が
得られない。一方、粒径が20μm未満のフェライト結晶
粒が70%を超えると、硬質となってほうろう用鋼板に加
工するために必要十分な加工性が得られない。そこで、
本発明では、組織を、粒径が20〜70μmであるフェライ
ト結晶粒が70%以上の面積率を占める組織に限定する。
【0062】以上の組成および組織を有する本発明にか
かるほうろう用鋼板は、繰り返し焼成によっても密着
性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほうろう性能
の低下が小さく、しかも加工性が良好である。このた
め、この本発明にかかるほうろう用鋼板は、特に一回掛
けほうろうを主とする用途に好適に適用される。
【0063】次に、このほうろう用鋼板の製造方法につ
いて、工程毎に説明する。 (連続鋳造スラブの均熱処理)本実施形態では、上記の本
発明にかかるほうろう用鋼板と同じ鋼組成を有する連続
鋳造スラブを用いる。すなわち、この連続鋳造スラブの
組成は、C:0.0005〜0.0050%、Si:0〜0.2 %、Mn:
0.1 〜0.5 %、P:0.005 〜0.025 %、S:0.005 〜0.
025 %、Al:0.01%以下、N:0.0050%以下、O:0.01
00〜0.1000%、Cu:0.015 〜0.060 %、Ni:0.045 〜0.
200 %、Cr:0.001 〜0.100 %、V:0.001 〜0.050
%、Mo:0.01〜0.05%、Cu/P:1.0 〜4.0 、P/S:
0.6 〜2.0 、必要に応じてNb:0.001 〜0.050 %および
B:0.0001〜0.0100%の少なくとも一種、残部Feおよび
不可避的不純物である。
【0064】この連続鋳造スラブを、1100〜1250℃の温
度域に加熱して、均熱処理を行う。熱間圧延に先立って
行われるスラブ加熱の温度は、加工性には大きく影響し
ないものの、1100℃未満であると圧延の圧下荷重が増大
して圧延困難となり、一方、スラブ加熱温度が1250℃を
超えると介在物の形態が変わって耐爪飛び性が低下した
り、酸化によるスケールロスの増大をきたす。そこで、
本発明では、スラブ加熱温度は1100℃以上1250℃以下に
限定する。これ以外の均熱処理の条件は、公知の条件に
従えばよいため、均熱処理に関するこれ以上の説明は省
略する。
【0065】(熱間圧延)このようにして均熱処理を行わ
れた連続鋳造スラブに対して、通常の圧延条件で熱間圧
延を行う。
【0066】この熱間圧延の際の仕上げ温度は、 Ac3
態点の直上が好ましく、具体的には850〜910 ℃程度の
温度域が例示される。この温度域よりも高過ぎるとプレ
ス加工性が悪化するおそれがあり、一方、低過ぎて Ac3
変態点を下回ると、冷間圧延および連続焼鈍を行われて
製造される成品であるほうろう用鋼板の伸びやr値が悪
化するおそれがあるからである。これ以外の熱間圧延の
条件は、公知の条件に従えばよいため、熱間圧延に関す
るこれ以上の説明は省略する。
【0067】(巻取り)熱間圧延終了後には、450 〜600
℃の巻取温度で巻取る。巻取温度は、伸び値の改善を図
る本発明では重要である。すなわち、巻取温度が600 ℃
を超えると、本実施形態で用いる鋼は化学組成の面では
結晶粒成長を抑止する要素が弱いために冷間圧延前の結
晶粒径が大きくなる。このため、最終的に得られるほう
ろう用鋼板の結晶粒径も大きくなり、粒径が20〜70μm
であるフェライト結晶粒が70%以上の面積率を占める組
織を得られなくなり、十分な耐爪飛び性が得られないと
ともに、伸びやr値が悪化しプレス加工性を劣化させ
る。一方、巻取温度が450℃未満であると、固溶炭素が
微量に残存し冷間圧延後の連続焼鈍における昇温時に、
プレス加工性に好ましい結晶方位の形成を阻害する。そ
こで、本発明では、熱間圧延終了後の巻取温度は、450
℃以上600 ℃以下と限定する。同様の観点から、巻取温
度の下限は470 ℃、上限は550 ℃であることが、それぞ
れ望ましい。
【0068】(酸洗)熱間圧延を終了した後に、スケー
ル除去を目的として酸洗を行う。酸洗は、公知の条件に
従って行えばよいため、酸洗に関するこれ以上の説明は
省略する。
【0069】(冷間圧延)酸洗を行った後に、冷間圧延
を行って所望の板厚を有する冷延鋼板とする。この冷間
圧延における冷間圧下率は、77〜90%である。冷間圧下
率は、所望の組織を得るためには高くすることが重要で
あり、冷間圧下率を77%以上とすることにより、粒径が
20〜70μmであるフェライト結晶粒が70%以上の面積率
を占める組織を得ることができ、良好な耐爪飛び性が得
られるとともに、さらに伸びやr値が改善され、得られ
た冷延鋼板のプレス加工性が向上する。しかし、冷間圧
下率が90%を越えると、圧延負荷が急激に増大するばか
りでなく、耐爪飛び性、伸び、r値さらにはプレス加工
性の改善効果も飽和する。そこで、本発明では、冷間圧
延における冷間圧下率は、77%以上90%以下と限定す
る。これ以外の冷間圧延の条件は、公知の条件に従えば
よいため、冷間圧延に関するこれ以上の説明は省略す
る。
【0070】(連続焼鈍)本実施形態では、冷間圧延を終
了した冷延鋼板に対して焼鈍を行う。この焼鈍に連続焼
鈍法を適用すると、鋼板の製造工程が短縮化されるだけ
ではなく、ほうろうの耐爪飛び性の低下を抑制すること
ができる。この理由は、連続焼鈍では介在物近傍で冷間
圧延において発生した微小割れが短時間の均熱のため拡
散により充填消失することなく鋼板中に残存して鋼中の
水素を捕捉することができるからと考えられる。したが
って、焼鈍方法は、従来のコイル焼鈍やオープンコイル
焼鈍を用いてもほうろう性や加工性の十分な改善効果を
得ることはできるものの、良好な耐爪飛び性を得るため
には、連続焼鈍法を適用することが好ましい。
【0071】この連続焼鈍の条件は、焼鈍温度:800 〜
900 ℃、この温度範囲内における鋼板の保持時間を120
秒間以下とする。焼鈍温度が800 ℃未満であると焼鈍が
不十分となって必要な加工性を得ることができない。一
方、焼鈍温度が900 ℃を越えると結晶粒の粗大化によっ
てプレス加工性が劣化したり、耐爪飛び性の改善効果が
減少してしまう。一方、800 ℃以上900 ℃以下の焼鈍温
度における保持時間は、数秒間程度以上であれば充分の
焼鈍の目的を達成できるが、焼鈍時間が120 秒間を超え
ると、焼鈍温度が900 ℃を越えた場合と同様に、プレス
加工性や耐爪飛び性が劣化する。そこで、本発明では、
焼鈍温度は800 ℃以上900 ℃以下に、焼鈍時間は120 秒
間以下に、それぞれ限定する。同様の観点から、焼鈍温
度の下限は830 ℃、上限は880 ℃であることが、それぞ
れ望ましい。
【0072】このようにして、本発明にかかるほうろう
用鋼板が製造される。この本発明にかかるほうろう用鋼
板は、前述したように、繰り返し焼成によっても密着
性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほうろう性の
低下が小さい。
【0073】また、この本発明にかかるほうろう用鋼板
の用途としては、鍋やケトルなどの家庭用品雑貨や洗面
台、システムキッチン、システムバス等の加工成形品で
ある。これらの加工に耐え得る加工性を有するか否か
は、引張試験値により判断することができ、特に伸び値
との相関が強い。具体的には、本発明者らの経験によれ
ば、これらの加工性は伸び値:44%以上が一つの指標と
なるが、本発明にかかるほうろう用鋼板は、引張試験の
伸び値44%以上を充分に満足し、加工性も良好である。
このため、この本発明にかかるほうろう用鋼板は、特に
一回掛けほうろうないしはそれ以上のほうろう掛けを主
とする用途に好適に適用される。
【0074】
【実施例】(実施例1)表1に示す組成を有する鋼スラブ
を連続鋳造により鋳込み、以下の工程および条件で冷延
鋼板とした。
【0075】(1)熱間圧延 スラブ加熱温度:1200℃ 仕上温度:880 〜900 ℃ 巻取温度:530 ℃ 仕上板厚:4.5 mm (2)酸洗 10%HCl にて40〜50秒間 (3)冷間圧延 冷間圧下率:85% (厚さ0.7 mm) (4)連続焼鈍 焼鈍温度:850 ℃ 焼鈍時間:100 秒間 (5)調質圧延 伸び率:0.8 % (6)ほうろう掛け試験条件 前処理1 酸洗: 17%硫酸、鉄濃度約5%、78℃×5分間 Niフラッシュめっき: 12g/L NiSO4・7H2O、鉄濃度0.5 %、 pH 2.8、82℃×5分間 施釉1: 日本フェロー社製、1553B釉薬をスプレーにより片面当 たり約100 μmにて両面施釉 焼成1: 820 ℃×6分間 繰り返し焼成:上記の施釉1と焼成1の工程を再度実施 熱処理: 200 ℃×8時間保持にて爪飛び欠陥の発生を促進
【0076】
【表1】
【0077】得られた鋼板について、ほうろう性は、幅
75mmおよび長さ200 mmの鋼板切り出し片を用いて前記に
示す条件にて一回掛けほうろうおよび繰り返し焼成試験
を行い、酸洗減量、ほうろうの密着性、爪飛びおよび泡
立ちの発生の有無を調べるとともに、さらには機械特性
値(降伏点、抗張力、伸び、r値)を調べた。結果は表
2にまとめて示す。
【0078】なお、表2において、「結晶粒の面積率」
は、組織において粒径が20〜70μmであるフェライト結
晶粒の面積率を示す。また、密着性は、実用上一回焼成
では90%以上、二回焼成では50%以上を合格判定基準と
した。さらに、伸びは44%以上を合格判定基準とした。
【0079】
【表2】
【0080】表2において、本発明の範囲を満足する化
学組成を有する試験番号1〜15までは、いずれも、ほう
ろう性および機械特性値がともに良好であり、ほうろう
用鋼板として好適であることがわかる。
【0081】これに対し、試験番号16は、P/Sおよび
Ni含有量がいずれも本発明の範囲を上回っているため、
密着性および伸びがいずれも不芳であった。試験番号17
は、O含有量が本発明の範囲を下回るため、耐爪飛び性
が不芳であった。
【0082】試験番号18は、Cu/PおよびB含有量がい
ずれも本発明の範囲を上回っているため、密着性および
耐泡性がいずれも不芳であった。試験番号19は、Cr含有
量およびNb含有量がいずれも高めであるため、耐泡性お
よび機械特性がいずれも不芳であった。
【0083】試験番号20は、C含有量およびV含有量が
いずれも高めであるため、耐泡性および機械特性がいず
れも不芳であった。試験番号21は、O含有量およびMo含
有量がいずれも高めであるため、耐泡性および機械特性
がいずれも不芳であった。
【0084】さらに、試験番号22は、Cu/PおよびNi含
有量がいずれも本発明の範囲を下回っているため、結晶
粒径が本発明の範囲を外れ、密着性、耐爪飛び性および
耐泡性がいずれも不芳であった。
【0085】(実施例2)表1に示した鋼C、EおよびG
の化学組成を有するスラブを1200℃に加熱して、熱延巻
取温度、冷間圧延の圧下率、焼鈍温度および焼鈍時間を
種々変更して焼鈍した後、伸び率0.8 %の調質圧延を行
った。得られた鋼板について、実施例1と同じ方法によ
り、ほうろう性および引張試験の評価を行った。結果を
表3にまとめて示す。
【0086】
【表3】
【0087】表3の試験番号23〜試験番号37に示すよう
に、本発明で規定する化学組成を有し、かつ本発明で規
定する製造条件を満足すれば、ほうろう用鋼板として十
分な特性を有する鋼板が得られることが分かる。
【0088】これに対し、試験番号38は、焼鈍温度が本
発明の範囲を上回っているため、結晶粒径が細粒となら
ずに爪飛びが発生した。また、伸びも劣化した。試験番
号39は、焼鈍時間が本発明の範囲を上回っているため、
爪飛びが発生した。
【0089】試験番号40は、焼鈍温度が本発明の範囲を
下回っているため、伸びが劣化した。試験番号41は、巻
取温度が本発明の範囲を上回っているため、結晶粒径が
細粒とならず爪飛びを生じた。また、伸びが劣化した。
さらに、試験番号42は、冷間圧延率が本発明の範囲を下
回っているため、結晶粒径が細粒とならず爪飛びを生じ
た。
【0090】(実施例3)Ni含有量と、粒径が20〜70μm
であるフェライト結晶粒の面積率との関係を調査するた
めに、表1の鋼番号Cをベースとして、Ni:0.005 〜0.
230 %、熱間圧延の巻取温度:450 〜700 ℃、冷間圧延
率:65〜88%として、組織において粒径が20〜70μmで
あるフェライト結晶粒の面積率を約50〜90%に変化させ
た。結果を図1にグラフで示す。
【0091】図1に示すグラフより、結晶粒の面積率と
Ni含有量とがほうろう性および特性値に及ぼす関係は、
Ni含有量が本発明の範囲を不足または結晶粒の面積率が
70%未満と粗粒で、どちらか一方が本発明の範囲を満足
していない場合は、軽度の爪飛び (△印) が見られる。
また、結晶粒の面積率が70%以上と明らかに細粒である
場合には、Niの効果が顕著となった。さらに、Ni含有量
が本発明の範囲を不足または結晶粒の面積率が70%未満
と粗粒で、両方とも本発明の範囲を満たしていない場合
は、重度の爪飛び (×印) が見られる。加えて、Ni含有
量が本発明の範囲を超えている場合には、加工性が低下
し EL(伸び) <44%となった。一方、Ni含有量および結
晶粒の面積率ともに本発明の範囲内であるものは、耐爪
飛び性および加工性 (伸び) がともに良好であることが
わかる。
【0092】(変形形態)実施形態および各実施例の説
明では、一回掛けほうろうの場合を例にとったが、本発
明は一回掛けほうろうには限定されず、もちろん二回掛
けほうろうにも同様に適用できる。
【0093】また、実施形態および各実施例の説明で
は、連続鋳造スラブを用いる場合を例にとったが、本発
明は連続鋳造スラブには限定されず、例えば分塊圧延機
により圧延されたスラブであっても同様に適用できる。
【0094】さらに、実施形態および各実施例の説明で
は、連続焼鈍を行う場合を例にとったが、本発明は連続
焼鈍には限定されず、例えばコイル焼鈍やオープンコイ
ル焼鈍等のバッチ焼鈍であっても同様に適用できる。
【0095】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、ほうろうの製造の際に行われる繰り返し焼成によっ
ても、密着性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほ
うろう性能の低下が小さく、しかも加工性が良好なほう
ろう用鋼板、特に、二回掛け以上のほうろうだけではな
く、特に一回掛けほうろうにも用いることができるほう
ろう用鋼板と、その製造方法とをともに提供することが
できた。
【0096】このほうろう用鋼板を用いることにより、
システムキッチンや台所器物、家電部品等に用いる綺麗
なほうろう部品を容易かつ確実に製造することができ
る。かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著し
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3の結果を示すグラフである。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.0005〜0.0050%、Si:0〜0.2 %、Mn:0.1 〜0.
    5 %、 P:0.005 〜0.025 %、S:0.005 〜0.025 %、Al:0.
    01%以下、 N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015
    〜0.060 %、 Ni:0.045 〜0.200 %、Cr:0.001 〜0.100 %、 V:0.001 〜0.050 %、Mo:0.01〜0.05%、 Cu/P:1.0 〜4.0 、P/S:0.6 〜2.0 、 残部Feおよび不可避的不純物から成る鋼組成を有し、粒
    径が20〜70μmであるフェライト結晶粒が70%以上の面
    積率を占める組織を有することを特徴とする耐爪飛び性
    および密着性が優れたほうろう用鋼板。
  2. 【請求項2】 さらに、重量%で、 Nb:0.001 〜0.050 %、および/または、B:0.0001〜
    0.0100%を含有することを特徴とする請求項1に記載さ
    れた耐爪飛び性および密着性が優れたほうろう用鋼板。
  3. 【請求項3】 重量%で、 C:0.0005〜0.0050%、Si:0〜0.2 %、Mn:0.1 〜0.
    5 %以下、 P:0.005 〜0.025 %、S:0.005 〜0.025 %、Al:0.
    01%以下、 N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015
    〜0.060 %、 Ni:0.045 〜0.200 %、Cr:0.001 〜0.100 %、 V:0.001 〜0.050 %、Mo:0.01〜0.05%、 Cu/P:1.0 〜4.0 、P/S:0.6 〜2.0 、 残部Feおよび不可避的不純物から成る鋼組成を有するス
    ラブに、1100〜1250℃の温度域において均熱処理を行っ
    てから熱間圧延を行い、 450〜600 ℃の巻取り温度で巻
    取り、酸洗後に、77〜90%の冷間圧下率で冷間圧延を行
    い、次いで焼鈍を行うことを特徴とする耐爪飛び性およ
    び密着性が優れたほうろう用鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記スラブは、さらに、重量%で、 Nb: 0.001〜0.050 %、および/またはB:0.0001〜0.
    0100%を含有することを特徴とする請求項3に記載され
    た耐爪飛び性および密着性が優れたほうろう用鋼板の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 前記焼鈍は、焼鈍温度:800 〜900 ℃お
    よび焼鈍時間: 120秒間以内の連続焼鈍である請求項3
    または請求項4に記載された耐爪飛び性および密着性が
    優れたほうろう用鋼板の製造方法。
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