JP3384265B2 - 耐爪とび性に優れたほうろう用冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

耐爪とび性に優れたほうろう用冷延鋼板の製造方法

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JP3384265B2
JP3384265B2 JP32982096A JP32982096A JP3384265B2 JP 3384265 B2 JP3384265 B2 JP 3384265B2 JP 32982096 A JP32982096 A JP 32982096A JP 32982096 A JP32982096 A JP 32982096A JP 3384265 B2 JP3384265 B2 JP 3384265B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐爪とび性に優れ
たほうろう用冷延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ほうろう製品は、台所用品、建材、流し
台等の用途に幅広く利用されている。これらの製品の素
材となるほうろう用鋼板は、加工性とほうろう性の両方
に優れている必要がある。ほうろう性の中で爪とび欠陥
は、ほうろう焼成後、鋼中に固溶した水素がほうろう層
と鋼板の界面に集まり、ほうろう層を半月状にはじきと
ばす欠陥である。該欠陥は、ほうろう焼成後、数週間か
ら数ケ月経ってから発生することもあり、処置に多額の
費用を要することから該欠陥の発生しない鋼板が強く求
められている。
【0003】また、近年ほうろうメーカーでは、硫酸酸
洗後の廃液の処理の困難さから、前処理工程を簡略化す
る傾向にある。このため、従来直接1 回掛けで行われて
いた用途でも酸洗時間を短く、もしくは省略し、2 回掛
けで行うこともある。前処理の簡略化により、ほうろう
焼成後、ほうろう層と鋼板の界面のあれが少なくなりが
ちである。界面のあれが少なくなると、密着性、耐爪と
び性が劣化しやすいので、ほうろう用鋼板に対しては、
更なる密着性、耐爪とび性の向上が求められている。
【0004】一方、近年ほうろう用鋼板も工程合理化、
コスト低減の観点から、連続焼鈍法により製造されるよ
うになってきている。しかしながら、低炭素鋼を連続焼
鈍法で製造すると箱焼鈍法に比べて短時間焼鈍であるた
め、加工性、時効性などが劣りがちである。
【0005】このため、従来Ti添加鋼などのIF系ベー
スの鋼板、および高酸素鋼をベースとし炭窒化物形成元
素を添加することによって、加工性、耐時効性を改善し
た鋼板が提案されているが、これらの鋼板の用途は主と
して直接1 回掛け用である。直接1 回掛けは酸洗後Ni
ディップ処理を行うのが必須であり、鋼板上へのNiの
析出により、ほうろう焼成中の鋼板の酸化が抑えられ、
爪とび欠陥の発生防止に有益であることが知られてい
る。ところが、近年行われている2 回掛けほうろうは、
Niディップ処理を行わないことが多く、このような条
件でも安定したほうろう性を得ることが望まれている。
【0006】2 回掛けほうろうを前提とした場合、鋼中
炭素による泡欠陥(カーボンボイリング)を回避できる
ことから、耐爪とび性の向上、コスト低減のため、低炭
素系鋼が望ましい。低炭素系鋼では、従来よりB添加鋼
が提案されているが、これらの多くは箱焼鈍を意図して
おり、連続焼鈍を前提としたものは少なく、また、近年
のほうろう条件のように特に耐爪とび性に関して厳しい
条件での検討はあまり行われていないのが現状である。
【0007】例えば、特開平6-158161号公報には、B添
加鋼を脱炭焼鈍して製造する方法が開示されているが、
脱炭焼鈍は通常箱焼鈍で行われ、コスト面で連続焼鈍に
及ばないのは言うまでもなく、脱炭焼鈍時に鋼板中のB
が鋼板表面に酸化物として濃化し、耐爪とび性が劣化し
やすい。
【0008】このように低炭素系鋼で連続焼鈍法による
耐爪とび性の優れたほうろう用鋼板が得られていないの
が現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、加工性
と耐爪とび性などのほうろう性を兼ね備えたほうろう用
鋼板は、未だ得られていない。従って、本発明は加工性
と耐爪とび性などのほうろう性を兼ね備えた鋼板を提供
しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の課
題を解決するために鋭意研究を重ねてきた。その結果得
た知見に基づいて以下のように考えた。
【0011】低炭素系鋼でC量を低減することにより加
工性を向上させる。また、C量低減により、変態点が上
昇することから、鋼板が薄くてもほうろう焼成中に変態
ひずみによる製品の変形の危険性を低下することもでき
る。しかし、C量低減は、耐爪とび性の劣化を伴うた
め、耐爪とび性の改善のため、B、Nを多量に添加す
る。
【0012】また、必要に応じ、熱延高温巻取を行い、
炭化物を粗大化させ、耐爪とび性の向上を図る。熱延板
の炭化物は冷間圧延により破砕し、近傍にボイドが生成
するが、炭化物が大きいほどボイドが大きく、耐爪とび
性の向上効果が大きいからである。
【0013】また、爪とびは、鋼中の水素がほうろう層
と鋼板の界面に集まり、ほうろう層をはじきとばす現象
なので、ほうろう層と鋼板の界面面積が多いほど単位面
積あたりの水素量が少なくなる。このため、ほうろう焼
成後、界面があれているほうが耐爪とび性が良好であ
る。界面のあれは、鋼中のP、S、Cu量に大きく依存
する。すなわち、P、Sは、酸洗減量値を大きくし、C
uは酸洗減量値を小さくする元素であるが、これらは酸
洗後スマットとして鋼板表面に濃化する。スマットは、
ほうろう焼成中に釉薬のNi、Coなどが鋼板上に析出
する核となり、ほうろう層と鋼板の界面のあれを大きく
するのに必要であるが、スマットが多すぎるとほうろう
釉薬中のNi、Coなどの密着性促進元素が鋼板上に板
状に析出し、かえって密着性が低下する。そこで、鋼中
のP、S、Cu量を調整して、酸洗後の鋼板表面に過剰
のスマットが濃化することなく界面あれを得ることがで
きるように、鋼中のP、S、Cu量の成分範囲を調整す
る。
【0014】冷間圧延後、焼鈍を行うが、焼鈍は連続焼
鈍法で行う。なぜなら、連続焼鈍法では耐爪とび性の向
上に寄与するBN量の減少を防止できるが、箱焼鈍法で
は焼鈍時間が長いため、鋼板中のBが鋼板表面に濃化
し、耐爪とび性に寄与するBN量が減少するからであ
る。
【0015】また、本発明のように低炭素系鋼の連続焼
鈍法による製造では、箱焼鈍法に比べて耐時効性の劣化
を免れない。そこで、耐時効性の改善のため、必要に応
じて急冷、過時効処理を行い、耐時効性の改善を図る。
【0016】本発明は、このような知見や考えに基づい
てなされたものであり、その要旨は以下のとおりであ
る。
【0017】(1) 重量% で、C:0.01〜0.03% 、Mn:
0.05〜0.40% 、P:0.005 〜0.025%、S:0.005 〜0.03
0%、Cu:0.015 〜0.04% 、B:0.005 〜0.01% 、so
l.Al:0.02〜0.1%、N:0.004 〜0.01% 、O≦0.00
5%を含有し、残部が実質的に鉄よりなる鋼を熱間圧延、
冷間圧延後、連続焼鈍することを特徴とする耐爪とび性
に優れたほうろう用冷延鋼板の製造方法。
【0018】(2) 重量% で、C:0.01〜0.03% 、Mn:
0.05〜0.40% 、P:0.005 〜0.025%、S:0.005 〜0.03
0%、Cu:0.015 〜0.04% 、B:0.005 〜0.01% 、so
l.Al:0.02〜0.1%、N:0.004 〜0.01% 、O≦0.00
5%を含有し、残部が実質的に鉄よりなる鋼を熱間圧延し
600 ℃以上700 ℃以下で巻取り、冷間圧延後、連続焼鈍
することを特徴とする耐爪とび性に優れたほうろう用冷
延鋼板の製造方法。
【0019】(3) 重量% で、C:0.01〜0.03% 、Mn:
0.05〜0.40% 、P:0.005 〜0.025%、S:0.005 〜0.03
0%、Cu:0.015 〜0.04% 、B:0.005 〜0.01% 、so
l.Al:0.02〜0.1%、N:0.004 〜0.01% 、O≦0.00
5%を含有し、残部が実質的に鉄よりなる鋼を熱間圧延し
600 ℃以上700 ℃以下で巻取り、冷間圧延後、700 〜80
0 ℃で連続焼鈍し、50℃/s以上の冷却速度で冷却後、25
0 ℃以上の温度で過時効処理を行うことを特徴とする耐
爪とび性と耐時効性に優れたほうろう用冷延鋼板の製造
方法。
【0020】(作用)以下に、本発明の鋼成分組成、製
造条件を前記のように限定した理由について述べる。
【0021】C:Cは、熱延後、炭化物を形成し、冷間
圧延後、該炭化物の周囲にボイドが生成する。このボイ
ドは、水素トラップサイトとなり、耐爪とび性の向上に
効果がある。このため、0.01% 以上の添加が必要であ
る。一方、連続焼鈍法により製造する場合、箱焼鈍法に
比べ加工性が劣る。よって、加工性の観点から上限を0.
03% に限定した。
【0022】Mn:Mnは、鋼中のSと結合してMnS
になり、水素のトラップサイトとして働くことで、耐爪
飛び性が向上する。また、MnSはBNの析出サイトと
なることにより、間接的に耐爪とび性の向上に寄与す
る。Mnが、0.05% 未満ではその効果がなく、0.40% 超
えでは鋼の加工性を劣化させるため、0.05〜0.40% の範
囲に限定した。
【0023】爪とびは、鋼中の水素がほうろう層と鋼板
の界面に集まり、ほうろう層をはじきとばす現象なの
で、ほうろう層と鋼板の界面面積が多いほど単位面積あ
たりの水素量が少なくなる。このため、ほうろう焼成
後、界面があれているほうが密着性、耐爪とび性が良好
である。界面のあれは、鋼中のP、S、Cu量に大きく
依存するため、これらの元素の成分範囲の調整が必要で
ある。
【0024】P:Pは、酸洗減量値を大きくし、また、
酸洗後スマットとして鋼板表面に濃化する。スマット
は、ほうろう層と鋼板の界面のあれを大きくするのに必
要であるが、スマットが多すぎるとほうろう釉薬中のN
i、Coなどの密着性促進元素が鋼板上に板状に析出
し、かえって密着性が低下する。また、無酸洗でほうろ
う掛け( 以下、無酸洗ほうろう) の場合も、Pは、ほう
ろう釉薬中のNi、Coなどの密着性促進元素の鋼板上
への析出状態に影響を与える。これらの観点から、Pの
含有量を0.005 〜0.025%に限定した。ただし、極めて良
好な耐爪とび性を確保するためには、0.010 〜0.020%の
範囲にするのが好ましい。
【0025】S:Sは酸洗減量値を大きくし、また、酸
洗後スマットとして鋼板表面に濃化する。スマットは、
ほうろう層と鋼板の界面のあれを大きくするのに必要で
あるが、スマットが多すぎるとほうろう釉薬中のNi、
Coなどの密着性促進元素が鋼板上に板状に析出し、か
えって密着性が低下する。また、無酸洗ほうろうの場合
もSは、ほうろう釉薬中のNi、Coなどの密着性促進
元素の鋼板上への析出状態に影響を与える。これらの観
点から、Sの含有量を0.005 〜0.030%の範囲に限定し
た。ただし、0.010%〜0.020%の範囲にするのがより好ま
しい。
【0026】Cu:Cuは酸洗後スマットとして鋼板表
面に濃化し、ほうろう焼成後のほうろう層と鋼板の界面
のあれを促進する。しかし、Cuはほうろう前処理時の
酸洗速度を小さくする元素であり、0.04% を超えて添加
すると酸洗減量値が小さくなりすぎて、通常のほうろう
条件では酸洗後鋼板表面に濃化するスマット量が少なく
なりすぎ、ほうろう焼成後、ほうろう層と鋼板の界面の
あれを得にくい。また、無酸洗ほうろうの場合もCu
は、ほうろう釉薬中のNi、Coなどの密着性促進元素
の鋼板上への析出状態に影響を与える。これらの観点か
ら、Cu含有量は0.015 〜0.04% の範囲に限定した。た
だし、極めて良好な耐爪とび性を得るためには、0.025
〜0.035%の範囲がより好ましい。
【0027】sol.Al:本発明のようにN量が多い
場合、Bと結合しないNが存在しやすくなる。このよう
な固溶Nは、加工性、時効性を損なうため、Alを添加
してNの固定を狙う。また、鋼中の酸素量の制御のた
め、Alを添加する。この効果のため、Alは0.02% 以
上添加する。一方、Al量が多すぎると焼鈍中、または
ほうろう焼成中にBNが分解し、AlNが生成しやすく
なる。BNの分解は、耐爪とび性の劣化を招くことか
ら、Al量は、0.1%以下に限定した。
【0028】B:Bは、鋼中のNと結合して、鋼板の耐
爪とび性の向上に寄与する。すなわち、冷間圧延後、B
N周辺にマイクロボイドが生成し、水素トラップサイト
となること、およびほうろう焼成後の冷却過程で熱膨張
率の違いからBN周辺に転位が発生し、これが水素トラ
ップサイトとなるためである。0.005%未満の添加ではそ
の効果が不十分で、一方0.01% 超えでは鋼の加工性が劣
化するため、B含有量は0.005 〜0.01% の範囲に限定し
た。
【0029】N:Nは、鋼中のBと結合して、鋼板の耐
爪とび性の向上に寄与する。この効果のためには0.004%
以上の添加が必要であるが、多すぎると固溶Nが多くな
りすぎて、加工性、時効性を損なう。そのため、0.01%
以下とする。
【0030】O:O量が多すぎると鋳造の際、COガス
が発生しやすくなり、ブローホールが発生しやすくな
る。また、多すぎるOは鋼中のBと結合してしまう。B
の酸化物は主に鋳造時に生成し、浮上しやすいため、安
定した耐爪とび性が得にくい。そのため、Bは主にNと
結合するのがよく、このため、O量は0.005%以下に制御
する。O量の調整は、主としてAlの添加により行う。
【0031】その他の元素については、REM、Nb、
Tiなどの炭窒化物形成元素は、炭素と結合することに
より、カーバイドによる耐爪とび性の向上効果を妨げる
ため、意図的には添加しない。そのため、前記元素の含
有量はそれぞれ0.01% 以下とするのが良い。Crは0.07
% 、Niは0.05% 、Snは0.01% 、Asは0.01% 、Se
は0.01% まで含有されても本発明の効果を損ねることは
ない。
【0032】次に、製造条件を前記のように限定した理
由について述べる。前述の鋼成分範囲内に成分調整した
スラブを製造する。スラブ製造に関しては、鋼塊法では
リム層とコア部との間に粗大介在物が存在しやすくな
り、ほうろう加工後、ふくれ欠陥が発生しやすくなるの
で、連続鋳造法で製造するのが好ましい。
【0033】鋳造後、スラブを冷却後、加熱し熱間圧延
を行なうか、もしくは鋳造後、スラブを加熱することな
く直接熱間圧延を行なう。また、必要に応じて、鋼板の
表面欠陥防止のためスラブ表層を2 〜5mm 程度研削して
も良い。ただし、Bを添加した本発明鋼では、加熱によ
るBNの固溶を抑えるため、鋳造後直接熱間圧延を行な
うか、加熱を行なう場合は加熱温度が1200℃以下が好ま
しい。
【0034】熱間圧延するに際して、仕上げ圧延を好ま
しくは840 〜900 ℃の範囲で行う。840 ℃以上で仕上げ
圧延を行なうことにより、Ar3 変態点以上での仕上げ圧
延となり熱延板のフェライト粒が微細化し、鋼の加工性
が向上する。一方、900 ℃以下で仕上げ圧延を行なうこ
とにより、フェライト粒の粒成長を抑制し、加工性が向
上する。
【0035】仕上げ圧延後、カーバイドを粗大に析出さ
せ耐爪とび性を向上させる観点から、600 ℃以上で巻取
るのが望ましい。しかし、巻取温度が高くなりすぎる
と、鋼板表面の酸化鉄層(スケール)が厚くなりすぎ、
酸洗工程でスケールが落ちにくいため、700 ℃以下で巻
取るのが好ましい。なお、本発明では、粗圧延を省略し
て薄スラブを直接仕上げ圧延を行なっても本発明の効果
が損なわれない。
【0036】熱間圧延を終了した鋼帯は、酸洗後冷間圧
延される。冷間圧延率は、BN周辺にボイドを形成し、
またはカーバイドを破砕し周辺にボイドを生成し、耐爪
とび性を向上させる観点から70% 以上とするのが好まし
い。
【0037】冷間圧延後鋼帯を焼鈍するが、連続焼鈍法
で焼鈍するのがよい。なぜなら、連続焼鈍法では、耐爪
とび性の向上に寄与するBN量の減少を防止できるが、
箱焼鈍法では焼鈍時間が長いため、鋼板中のBNが分解
してBが主に酸化物として鋼板表面に濃化し、耐爪とび
性に寄与するBN量が減少する。鋼板表面の濃化Bはほ
うろう前処理の酸洗時に除去されるか、あるいはほうろ
う焼成中に酸化鉄層とともにほうろう層中に拡散するた
め、耐爪とび性の向上効果が少ない。特に脱炭焼鈍で
は、鋼板表面のBが酸化しやすく、Bの表層濃化が促進
され、耐爪とび性の低下が顕著となるため極めて不適当
である。
【0038】焼鈍温度は加工性の観点から700 ℃以上が
好ましく、焼鈍温度が高すぎるとカーバイドの溶解が多
くなり、加工性、時効性を劣化させるので800 ℃以下が
好ましい。
【0039】焼鈍後、必要に応じて急冷、過時効処理を
行う。焼鈍後の冷却は速い方が好ましく、550 〜650 ℃
まで空冷した後、水焼入れ、ロールクエンチ、ミスト冷
却、またはガスジェット冷却により冷却速度が50℃/s以
上、好ましくは100 ℃/s以上で急冷する。このような急
冷温度を確保するためには、水焼入れ、ロールクエン
チ、ミスト冷却が好ましい。
【0040】急冷後の過時効処理は、耐時効性の観点か
ら250 ℃以上で100 秒以上行うのが好ましく、過時効初
期は350 〜450 ℃、後期は300 〜400 ℃というように初
期の温度が高い方がより好ましい。しかし、500 ℃を超
える過時効温度は耐時効性改善の効果が飽和し、エネル
ギー的に不利になるだけなので、500 ℃以下で行うのが
よい。また、過時効に先立ち、一旦過時効温度よりも20
℃以上低い温度まで低下させた後、過時効を行っても良
い。
【0041】焼鈍後の鋼帯はそのまま製品とすることが
できるが、必要に応じて伸長率:2.0%以下の調質圧延を
施しても良い。また、焼鈍後、密着性の改善を目的とし
てNiディップ処理を行っても良い。
【0042】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を実施例によって
詳述する。
【0043】
【実施例】
(実施例1 )表1 に示す成分組成と残部が鉄および不可
避不純物からなる鋼を連続鋳造法によりスラブとした。
スラブを1150℃で加熱後、仕上温度を870 ℃で2.8mm 厚
まで熱間圧延を行い、670 ℃でコイルに巻取った。得ら
れた熱延鋼帯を酸洗した後、0.7mm まで冷間圧延した
(圧延率=75%)。冷間圧延後、鋼板を780 ℃で連続焼鈍
し、ロールクエンチで急冷後、400 ℃から350 ℃で150
秒間傾斜過時効処理を行い、1.0%の調質圧延を施してほ
うろう用冷延鋼板とした。
【0044】
【表1】
【0045】前記で得た鋼板よりJIS5号試験片を圧延方
向から採取し、引張試験を行った。また、圧延方向、圧
延方向と45度、圧延直角方向からJIS5号試験片を採取
し、下記の式からランクフォード値(平均r 値)を測定
した。
【0046】平均r 値= (圧延方向のr 値+2×圧延方向
と45度方向のr 値+ 圧延直角方向のr値)/4 また、時効指数(AI)に関しては、8%予ひずみ後、100
℃で1 時間時効させて試験した。
【0047】さらに、以下の条件で密着性試験と耐爪と
び性試験を行い、ほうろう特性を調査した。ただし、密
着性試験は、良好な密着性が得にくい硫酸酸洗時間が短
い条件で、耐爪とび性試験は爪とびが発生しやすいよう
無酸洗、Niディップ処理無しで爪とびの発生しやすい
釉薬を調合して施釉し、焼成時の露点を高めた条件で行
った。なお、H 釉薬は2 回掛け下釉、1553B は直接1 回
掛け用の釉薬である。
【0048】密着性試験: 前処理:脱脂→硫酸酸洗(15%H2SO4、70℃×5min) 施釉:日本フエロー製2 回掛け下釉H 釉薬、目標―両面
に各100 μm 焼成:850 ℃×2min(ただし、焼成は2 回行った) 密着性評価:PEI 法。大きさ100 ×100mm の試験材につ
いて、各5 枚ずつ試験を行い、結果を平均した。
【0049】耐爪とび性試験: 前処理:脱脂のみ(硫酸酸洗、Niディップなし) 施釉:日本フエロー製H:1553B =1:1の混合釉薬、目標―
両面に各100 μm 焼成:830 ℃×3min(加湿雰囲気、露点=30 ℃) 評価:大きさ100 ×100mm の試験材について、各10枚ず
つ試験を行い、両面のうち、1 つでも爪とびが発生した
ものを爪とびありとし、爪とびが発生した試験片の枚数
割合で評価した。
【0050】調査結果を表2にあわせて示す。
【0051】
【表2】
【0052】表2より、本発明鋼板は加工性、ほうろう
性を兼ね備えている。また、本発明鋼板のAIは40N/mm2
以下であり、遅時効レベルである。
【0053】鋼板16はC量が少なすぎるため、耐爪とび
性が劣っている。鋼板17はC量が多すぎるため、加工性
が劣っている。鋼板18はP量が多すぎ、鋼板19はS量が
多すぎ、鋼板20はCu量が少なすぎ、鋼板21はCu量が
多すぎるため、密着性が劣り、また耐爪とび性が劣って
いる。鋼板22はB量が少なすぎ、鋼板23はN量が少なす
ぎるため、耐爪とび性が劣っている。
【0054】(実施例2 )本発明におけるB量、N量に
よる耐爪とび性の改善効果を明確化するため、C:0.01
7 〜0.025%、Mn:0.13〜0.21% 、P:0.011 〜0.018
%、S:0.011 〜0.017%、Cu:0.026 〜0.032%、so
l.Al:0.034 〜0.052%、O:0.0012〜0.0029% で
B、N量を変化させた鋼板を実施例1 と同様の方法で製
造し、実施例1と同様の条件で耐爪とび性の評価を行っ
た。ただし、1 枚でも爪とびが発生した鋼板を爪とびあ
りとした。評価結果を図1 に示す。
【0055】図1 より、本発明範囲内では爪とびが発生
していないことがわかる。
【0056】(実施例3 )表1 の鋼板1 、22の成分組成
の鋼を連続鋳造法によりスラブとした。スラブを1150℃
で加熱後、仕上温度を870 ℃で2.8mm 厚まで熱間圧延を
行い、表3 に示す温度でコイルに巻取った。得られた熱
延鋼帯を酸洗した後、0.7mm まで冷間圧延した(圧延率
=75%)。冷間圧延後、鋼板を700 ℃で7 時間箱焼鈍、も
しくは700℃で5 時間オープンコイルにより脱炭焼鈍
(雰囲気は20%H2 、残部N2、露点:20℃)、または780
℃で40秒間連続焼鈍し、1.0%の調質圧延を施してほうろ
う用冷延鋼板とした。
【0057】前記で得た鋼板について以下の条件で密着
性試験と耐爪とび性試験を行い、ほうろう特性を調査し
た。ただし、密着性試験は、良好な密着性が得にくい硫
酸酸洗時間が短い条件で、耐爪とび性試験は爪とびが発
生しやすいよう無酸洗、Niディップ処理無しで、爪と
びの発生しやすい釉薬を調合して施釉し、焼成時の露点
を高めた条件で行った。
【0058】密着性試験: 前処理:脱脂→硫酸酸洗(15%H2SO4、70℃×5min) 施釉:日本フエロー製2 回掛け下釉H 釉薬、目標―両面
に各100 μm 焼成:850 ℃×2min(ただし焼成は2 回行った) 密着性評価:PEI 法。大きさ100 ×100mm の試験材につ
いて、各5 枚ずつ試験を行い、結果を平均した。
【0059】耐爪とび性試験: 前処理:脱脂のみ(硫酸酸洗、Niディップなし) 施釉:日本フエロー製H:1553B=1:1 の混合釉薬、及びH:
1553B=8:2 の混合釉薬、目標―両面に各100 μm 焼成:830 ℃×3min(加湿雰囲気、露点=30 ℃) 評価:大きさ100 ×100mm の試験材について、各10枚ず
つ行い、両面のうち、1 つでも爪とびが発生したものを
爪とびありとし、爪とびが発生した試験片の枚数割合で
評価した。
【0060】調査結果を表3 にあわせて示す。
【0061】
【表3】
【0062】表3 より、巻取温度が600 ℃未満の連続焼
鈍法による鋼板は、H:1553B=1:1 の混合釉薬では爪とび
が発生したが、H:1553B=8:2 の混合釉薬では爪とびが発
生せず、耐爪とび性はまずまず良好であるが、巻取温度
が600 ℃以上で連続焼鈍を行った鋼板は耐爪とび性がさ
らに改善し、密着性も良好である。しかし、箱焼鈍、脱
炭焼鈍で製造した鋼板は耐爪とび性に劣る。
【0063】(実施例4 )表1 の鋼板1 の成分組成の鋼
を連続鋳造法によりスラブとした。スラブを1150℃で加
熱後、仕上温度を870 ℃で2.8mm 厚まで熱間圧延を行
い、650 ℃でコイルに巻取った。得られた熱延鋼帯を酸
洗した後、0.7mm まで冷間圧延した(圧延率=75%)。冷
間圧延後、鋼板を780 ℃で40秒間連続焼鈍し、引続き10
℃/sで600 ℃まで空冷後、表4 に示す条件で冷却、過時
効処理を行い、1.0%の調質圧延を施してほうろう用冷延
鋼板とした。ここで、冷却速度が10、20℃/sはガスジェ
ットにより、100 ℃/sはロールクエンチにより、500 ℃
/sは水焼入れにより行った。なお、冷却、過時効の熱サ
イクルを図2 に示す。図中、R( ℃/s)は冷却速度、T
Q ( ℃) は過時効前の鋼帯焼入れ温度、TR (℃)は過
時効初期温度、TOA(℃)は過時効後期温度を示す。
【0064】前記で得た鋼板について、8%予ひずみ後、
100 ℃で1 時間時効させて時効指数(AI)を測定した。測
定結果を表4 にあわせて示す。
【0065】
【表4】
【0066】表4 より、冷却速度が50℃/s以上で250 ℃
以上の過時効処理を行った鋼板は時効指数が40N/mm2
下であり、耐時効性が改善されている。
【0067】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
加工性とほうろう特性、特に耐爪とび性、あるいはさら
に耐時効性に優れた鋼板を連続焼鈍法によりが容易に得
られるものであって、その工業的な価値は高い。
【0068】本発明法により製造されたほうろう用冷延
鋼板は、2 回掛けほうろう用途に使用することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】B量、N量と耐爪とび性の関係を示す図。
【図2】実施例4 の冷却、過時効の熱処理サイクルを示
す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田原 健司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−279864(JP,A) 特開 平6−116634(JP,A) 特開 平6−33187(JP,A) 特開 平3−232947(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/48 C21D 8/00 - 8/04 C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量% で、C:0.01〜0.03% 、Mn:0.
    05〜0.40% 、P:0.005 〜0.025%、S:0.005 〜0.030
    %、Cu:0.015 〜0.04% 、B:0.005 〜0.01% 、so
    l.Al:0.02〜0.1%、N:0.004 〜0.01% 、O≦0.00
    5%を含有し、残部が実質的に鉄よりなる鋼を熱間圧延、
    冷間圧延後、連続焼鈍することを特徴とする耐爪とび性
    に優れたほうろう用冷延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量% で、C:0.01〜0.03% 、Mn:0.
    05〜0.40% 、P:0.005 〜0.025%、S:0.005 〜0.030
    %、Cu:0.015 〜0.04% 、B:0.005 〜0.01% 、so
    l.Al:0.02〜0.1%、N:0.004 〜0.01% 、O≦0.00
    5%を含有し、残部が実質的に鉄よりなる鋼を熱間圧延し
    600 ℃以上700 ℃以下で巻取り、冷間圧延後、連続焼鈍
    することを特徴とする耐爪とび性に優れたほうろう用冷
    延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量% で、C:0.01〜0.03% 、Mn:0.
    05〜0.40% 、P:0.005 〜0.025%、S:0.005 〜0.030
    %、Cu:0.015 〜0.04% 、B:0.005 〜0.01% 、so
    l.Al:0.02〜0.1%、N:0.004 〜0.01% 、O≦0.00
    5%を含有し、残部が実質的に鉄よりなる鋼を熱間圧延し
    600 ℃以上700 ℃以下で巻取り、冷間圧延後、700 〜80
    0 ℃で連続焼鈍し、50℃/s以上の冷却速度で冷却後、25
    0 ℃以上の温度で過時効処理を行うことを特徴とする耐
    爪とび性と耐時効性に優れたほうろう用冷延鋼板の製造
    方法。
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