JP3797063B2 - 耐爪飛び性、密着性、加工性が優れたほうろう用鋼板とその製造方法 - Google Patents

耐爪飛び性、密着性、加工性が優れたほうろう用鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、 台所用品、電気製品、建材などに用いられるほうろう用の冷延鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、素地金属を鋼板とするほうろう製品として、システムキッチンの流し台や水周りなどの台所用品、浴槽、建築用パネル、鍋さらにはケトルのような家庭用品、さらには暖房器具や電気製品の箱状の本体部品などが知られている。
【0003】
通常、二回掛け以上のほうろう製品は、鋼板を切断、所要形状へ成形加工してから、溶接などにより成品形状に組み立てた後、脱脂および酸洗をおこなって下釉薬を掛けて焼成し、検査後上釉を掛けて焼成し、さらに必要に応じて、その上に着色釉を掛けてさらに焼成することによって製造される。
【0004】
このように、一般的にほうろう性製品は、二回、または三回以上の焼成をおこなう「二回掛けほうろう」によって製造されるが、ほうろう掛け時の焼成を省略するために、下釉を用いずに上釉を直接鋼板に焼き付ける「一回掛けほうろう」によっても製造される。
【0005】
これら方法により製造されるほうろう製品に発生する様々な欠陥の内で素地金属である鋼板にも原因があると考えられる欠陥としては、爪飛び、密着不足、泡立ち、さらには焼成歪みなどがある。
【0006】
爪飛びはフィッシュテ−ルとも呼ばれ、冷却直後から一週間程度までの間に、焼成および冷却後のほうろう層から、爪を切った際の切断片に類似した三日月状の割片が飛散する現象である。この爪飛びは、ほうろう焼成などの処理過程において鋼板中に侵入し固溶していた水素が、冷却後に気体となって鋼板と釉薬の界面に集まり、集合した水素ガスの圧力でほうろう層を破壊するために発生すると考えられる。
【0007】
密着不足は、例えばほうろう面に衝撃が加わった場合に表面のほうろう層が破壊や剥離を生じ、鋼板の素地が露出してしまう現象で、釉薬と素地鋼板との組み合わせの不適正、あるいは釉掛け前の鋼板前処理の不適正等に起因して発生すると考えられる。
【0008】
また、この密着不足は、酸洗時の素地の粗れ不足と言った鋼板の条件に起因して、焼成時の釉薬の鋼板面への投錨効果が不足することによっても発生すると考えられる。
【0009】
泡立ちは、釉薬と析出物あるいは鋼板含有される主としてCとが焼成中に反応することにより発生する気体や、鋼板表面の疵などによって、残留した気化成分による気泡が残存し、ほうろう面に多数のピンホ−ルが生じる現象である。
【0010】
さらに、焼成歪みは、炭素を少量含む鋼の変態温度がほうろうの焼成温度近傍にあって変態温度近傍では昇温にともなう熱膨張が非直線的になるので、これが原因で成型品が歪む現象である。
【0011】
従来より、素地金属である鋼板のほうろう性の良否は、これら全ての性能がその用途に対して満足すべきものなのか否かに基づいて判断されてきた。
ここで、二回掛けほうろうの場合、鋼板との密着性が良好な、例えばCoを含む釉薬を下釉に用い、上釉に緻密で綺麗な表面が得られる釉薬を用いることによって、鋼板に起因した上記各種の欠陥の発生を低減することが出来る。
【0012】
すなわち、ほうろう層の密着性を向上させることにより、爪飛びの発生は抑制され、さらに泡立ちが下釉の範囲内で止まることによって隠蔽効果も改善される。
【0013】
これに対し、1回掛けほうろうの場合には、焼成を一回で済ますことが出来る反面、素地金属の影響を強く受けてしまうと言う難点がある。一回掛けほうろうによるほうろう製品の製造の際に発生する欠陥は、二回掛けほうろうの場合と基本的に同じであるが、一回掛けほうろうには、仕上がり表面の綺麗さが要求され、濃く着色するCoなどを用いることが出来ないため、二回掛けほうろうで用いる下釉に比較してどうしても密着性が劣るものとなる。
【0014】
その上、直接1回掛けや2回掛けとは言ってもほうろう時に生じた外観欠陥の手直しのため繰り返し焼成されるものはかなりの割合を占めており、例えば、1回掛けほうろうであっても、実際には焼成回数が合計で4回にもおよぶ場合がある.このように複数回の繰り返し焼成を行うと、特に1回掛けほうろう用の釉薬では、ほうろう層の密着性が低下しやすくなり、これに伴って爪飛びも発生しやすくなる。
【0015】
このようなほうろう鋼板の製造に関して、例えば特開平5−5128号公報には、耐泡立ちおよび耐黒点性に優れた鋼板として、Ni:0.010〜0.040%(本発明書においては特にことわりがない限り鋼組成を表す「%」は「質量%」を意味する。)、(P+S)/Cu:0.5〜1.0を含有する高酸素鋼が開示されている。
【0016】
また、特開昭59−35657号公報には、ほうろう性および成形性に優れた鋼板としてCを0.003%以下、Oを0.02%以上、Nbを酸化物として存在するものを除きC量の2倍以上0.04%以下含有させた連続鋳造によるほうろう用鋼が開示されている。
【0017】
特開昭59−229463号公報には、加工性に優れたほうろう用鋼板としてCが0.005%以下とやや高めであり、Oが0.016%以上0.030%未満とやや低めであって、他に時効防止を目的にNbまたはBを添加した鋼の発明が提示されている。
【0018】
特開平6−57374号公報では、酸素を0.020越〜0.100%以下と高めに設定し、Nbを0.030〜0.100%含有し、さらにNb/C≧7を満足する、ほうろう性だけでなくプレス加工性や溶接性もすぐれたほうろう用鋼板が開示されている。
【0019】
特開平7−109524号公報には、V:0.010〜0.060%、Nb:0.004〜0.030%、さらにはMo:0.01〜0.050%を加工性向上のため添加する方法が開示されている.
特開平10−102222号公報には、加工性を向上する方法としてCrをO(酸素)の0.5〜1.3倍含有する、深い絞り性に優れた一回掛けほうろう用冷延鋼板の製造方法が開示されている。
【0020】
特開平11−229087公報には、成形性を向上する方法として、Cr:0.03〜0.1%、連続鋳造の際の鋳込速度を1.5〜3.0m/minとする成形性に優れたほうろう用冷延鋼板の製造方法が開示されている。
【0021】
特開平11−61333号公報には、RH真空脱ガス処理終了時の溶鋼の溶存酸素を0.02〜0.04とする表面性状およびほうろう性に優れたほうろう用高酸素鋼板およびその製造方法が開示されている。
【0022】
特公平7−42495号公報には、0.05kg/t〜0.5kg/tのAl、さらにはREMを添加し、酸素を300から700ppmに調整して鋼を連続鋳造し、C系非金属介在物の平均粒径および清浄度を規定したことを特徴とする耐爪飛び性の優れた連鋳製ほうろう用鋼板の製造方法が開示されている。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
近年、素地金属である鋼板に対する要求は、年々高まっており、繰り返し焼成を行った後においてもほうろう性が良好な鋼板が要求されるようになっている。しかし、上述のような従来技術では、このような要求に十分に応え得る鋼板を製造することが出来ない。
【0024】
本発明者らの検討結果によれば、特開平5−5128号公報により開示された高酸素鋼により提供されるほうろう用鋼板では、繰り返し焼成を行った後の爪飛び性および密着性が低下するので、繰り返し焼成後の爪飛び性および密着性を要求される用途への性能が不足するため、所望のほうろう性が得られない。
【0025】
また、特開昭59−35657号公報、特開昭59−229463公報、特開平6−57374号公報、特開平7−109524号公報に開示された方法により得られるほうろう用鋼板は、いずれも、Ti、B、Nb、V、Mo等を積極的に添加して、固溶炭素や固溶窒素を析出物として固定することにより、加工性を改善するものである。しかしながら、この方法では直接一回掛けにおいてこれらの多量に生成した析出物、酸化物が前処理の酸洗時に鋼板表面に残存して泡や黒点が生じやすくなる。このため、ほうろう用鋼板に対する現在のより厳しい客先要求レベルを満足することは出来ない。
【0026】
さらに、特開平10−102222号公報、特開平11−229087号公報、特開平11−61333号公報では、特開平5−5128号公報、特公平7−42495号公報により開示された高酸素鋼により提供されるほうろう用鋼板と同様に、繰り返し焼成後に所望のほうろう性を得ることはできない。
【0027】
一方、近年では、ほうろう製造工程の合理化のため、ほうろうの下地である鋼板に、ほうろう性が良好なことやプレス加工性が良好なことがよりいっそう強く要求されるようになってきた。すなわち、ほうろう鋼板には、特に密着性、耐泡立ち性、耐爪飛び性に優れ、しかもプレス加工性にも優れた鋼板が求められているが、現在求められているこれら性能をいずれも満足することができるほうろう用鋼板は、存在しない。
【0028】
ここに、本発明の目的は、二回掛け以上のほうろうだけでなく、特に一回掛けほうろうに用いることが出来るほうろう用鋼板を対象として、ほうろう製造の際に行われる繰り返し焼成によっても、密着性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほうろう性の低下が小さく、しかも加工性が良好なほうろう用鋼板とその製造方法を提供することである。
【0029】
【課題を解決するための手段】
前述したように、ほうろう用鋼板では、繰り返し焼成のために密着性が低下するとともに爪飛びが生じやすくなる傾向がある。特に、爪飛びは、軽度の曲げ加工などが施された部分において、ほうろうの繰り返し焼成後に結晶粒が非常に粗大になり、この部分から発生する傾向が強い。このような爪飛びの発生を抑制するには、O含有量を増加させることが有効であることが従来から知られているが、これだけでは、爪飛びの発生を十分に抑制することは出来ない。
【0030】
そこで、本発明者らは、ほうろう用鋼板、特に一回掛けほうろうを主とする用途に適用されるほうろう用鋼板に関して、加工性およびほうろうの耐泡性に加え、耐爪飛び性および密着性を改善することを目的として、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す新規な知見を得た。
1)耐爪飛び性の向上には、O、Mnを含む介在物が有効で、最適な大きさ、形状、比率、個数が存在する。これは、介在物が爪飛びの原因となる水素ガスの吸蔵場所として働き爪飛びを抑制するためと考えられる。
【0031】
さらに、結晶粒の粒界には転移が多数存在するが、これらの転位を爪飛びの原因となる水素ガスの吸蔵場所として利用すれば、爪飛びを抑制できる。それは、焼鈍およびほうろう焼成時の結晶粒の粗大化を抑制することでその効果が向上できる。結晶粒の粗大化も介在物の組成、大きさ、形状、比率、個数を最適化することで達成できる。
2)Ni、Cr、V、Moを微量添加することにより爪飛びをさらに十分に抑制できる。ただし、上記元素の添加量が多すぎると、ほうろうの泡欠陥が生じやすくなるので、一回掛けほうろうなどの鋼板への要求が非常に厳しい用途を考慮して添加量には上限を設ける必要がある。
【0032】
なお、泡欠陥に対して敏感でない用途に対しては、さらにNb、B、Tiの内少なくとも一つを添加することにより、耐爪飛び性および加工性をいずれもより一層向上できる。
3)繰り返し焼成によって密着性が低下するが、特に濃く着色するCoなどを用いることが出来ない一回掛けほうろうにおいて密着性が大きく低下する。この一回掛けほうろうにおける繰り返し焼成によっても、密着性を低下させないためには、介在物の組成、大きさ、形状、比率、個数を最適化することが極めて有効である。
4)仕上げ圧延前の板内の温度変動を小さくすること、さらに連続焼鈍での焼鈍時間を制御することにより、加工性とほうろう性をより一層向上できる。
【0033】
本発明者らは、これらの新規な知見1)〜4)に基づいて更に検討を重ねた結果、公知の高酸素鋼をベ−スに、介在物の組成、大きさ、形状、比率、個数を最適化し、さらにNi、Cr、V、Moを微量添加するとともに必要に応じてNb、B、Tiを微量添加し、同時に熱間圧延時の温度、冷間圧延時の圧下率、さらには再結晶焼鈍時の均熱温度と均熱時間を適正に制御することによって繰り返し焼成によっても密着性、耐爪飛び性、さらには泡立ち性などのほうろう性能の低下が小さく、しかも加工性が良好な鋼板を提供できることを新規に知見して、本発明を完成した。
【0034】
ここに、本発明は次の通りである。
(1)質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.2%以下、Mn:0.1〜0.5%、P:0.005〜0.025%、S:0.005〜0.025%、Al:0.01%以下、N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015〜0.060%、Ni:0.001〜0.100%、Cr:0.001〜0.100%、V:0.001〜0.100%、Mo:0.001〜0.100%
ただし、Cu/P比:1.0〜4.0、P/S比:0.6〜2.0を満足し、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有し、圧延長手方向の鋼板縦断面において、水素トラップサイトとして、OとMnとを含む、円相当粒径が0.5μm以上10μm以下、長片/短片の比が10以下である介在物を含有することを特徴とする耐爪飛び性、密着性および加工性が優れたほうろう用鋼板。
(2)前記介在物の全介在物に対する比率が60面積%以上であり、かつ、その個数が1×10〜2×10個/mmであることを特徴とする上記(1)記載のほうろう用鋼板。
(3)さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.100%、B:0.0001〜0.0100%、およびTi:0.001〜0.100%から成る群から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載されたほうろう用鋼板。
(4)質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.2%以下、Mn:0.1〜0.5%、P:0.005〜0.025%、S:0.005〜0.025%、Al:0.01%以下、N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015〜0.060%、Ni:0.001〜0.100%、Cr:0.001〜0.100%、V:0.001〜0.100%、Mo:0.001〜0.100%
ただし、Cu/P比:1.0〜4.0、P/S比:0.6〜2.0を満足し、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有するスラブに、1000〜1250℃で均熱した後、熱間圧延を行い、850〜950℃で仕上圧延を行い、次いで450〜700℃で巻取を行い、酸洗後、圧延率70〜90%で冷間圧延を行ってから、焼鈍を行うことを特徴とする、圧延長手方向の鋼板縦断面において、O、Mnを含む、円相当粒径が0.5μm以上10μm以下、長片/短片の比が10以下である介在物を含有し、耐爪飛び性、密着性および加工性が優れたほうろう用鋼板の製造方法。
(5)前記鋼組成が、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.100%、B:0.0001〜0.0100%、およびTi:0.001〜0.100%から成る群から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(4)に記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
(6)前記焼鈍が、焼鈍温度750〜900℃および焼鈍時間120秒以内の連続焼鈍であることを特徴とする上記(4)または(5)に記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
(7)前記熱間圧延が、粗圧延後、板内の温度変動が140℃以下になるように加熱した後、仕上げ圧延を行うことから成ることを特徴とする上記(4)ないし(6)のいずれかに記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
(8)前記介在物の全介在物に対する比率が60面積%以上であり、かつ、その個数が1×10〜2×10個/mmであることを特徴とする上記(4)ないし(7)のいずれかに記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
【0035】
【発明の実施の形態】
次に、 本発明をその構成要件のもたらす作用を中心にさらに詳細に説明するが、本発明において鋼組成および処理条件を上述のように限定した理由は次の通りである。 なお、本明細書において、介在物組成、鋼組成を示す「%」は特にことわりがない限り、「質量%」である。
【0036】
本発明者らは、ほうろう鋼板の耐爪飛び性への影響を調査するため、ほうろう鋼板の圧延長手方向の鋼板断面 (縦断面) のサンプルを切り出し、樹脂埋めしたのちに鋼板断面を鏡面に研磨し、SEM観察およびEDX分析により、鋼板中の介在物を100倍から20000倍にて調査した。
【0037】
その結果、優れた耐爪飛び性を得るにはO、Mnを含む介在物、つまりMnO 系介在物を含有することが必要であることを知見した。その他、介在物としてはSiO2系、Al2O3 系、MnS 系などがみられる。
【0038】
上記調査において、優れた耐爪飛び性、密着性、加工性を得るには、最適な介在物のサイズと形態が存在することを知見した。耐爪飛び性は、冷間圧延などの圧延加工によって介在物の周辺に水素ガスを補足しうる空洞が生じることによって向上する。その際、空洞は、粗大なものが粗に存在するよりも、微細かつ緻密に存在する方が、耐爪飛び性および密着性の向上に有効であった。そのため、O、Mn含有介在物は円相当粒径が10μm 以下と限定する。好ましくは7μm以下である。
【0039】
一方、圧延加工によって介在物の周辺に積極的に空洞を生じさせるためには、その形態は、圧下による変形が大きい方が好ましい。そのため介在物の長片と短片の比は、長片/短片の比を10以下に限定する。好ましくはこの比は5.0 以下である。
【0040】
上記調査において、主にAl、Oを含有する組成の異なる介在物も観察された。しかしそれらは所望のほうろう鋼板に対する寄与は見られず、Mn、Oを含有する介在物が必要であると判断された。よって、Mn、Oを含有する介在物の全介在物に対する比率を60%以上と限定する。この比率は面積割合で求める。
【0041】
さらにその個数は、1×104 個/mm2 未満では所望の効果が得られない。一方、2×105 個/mm2 超えでは、介在物の大きさや組成を管理しても材料疵の発生が生じやすくなってしまう。
【0042】
よって、その個数は1×104 〜2×105 個/mm2 に限定する。
本発明における円相当粒径は、下記試験方法での調査で観察される介在物の面積 (圧延長手方向の断面積) を同一面積の円に換算した場合の円の直径を云う。
【0043】
その測定に当たっては、ほうろう鋼板の圧延長手方向の鋼板断面のサンプルを切り出し、樹脂埋めしたのちに鋼板断面を鏡面に研磨しSEM を用いて介在物を100 倍から20000 倍で観察し、写真撮影し、その写真を画像解析により面積を求め、下記式から算出する。
【0044】
R (円相当粒径) = (S/ π)1/2
R:円相当粒径、S:画像解析により求めた面積、π:円周率
次に、本発明において鋼組成を限定する理由は次の通りである。
【0045】
C:0.0005〜0.0050%
Cが0.0050%を越えるとほうろうの泡欠陥を生じる傾向があり、またプレス加工性も悪くなる。一方、C含有量は製品性能上は低いほど好ましいが、0.0005%より低いと製鋼段階での処理時間が長くかかりすぎ、製鋼コストも上昇する.そこで、0.0005〜0.0050%と限定する。好ましくは0.0005〜0.0025%範囲である。
【0046】
Si:0.2%以下
Si含有量はほうろう性の良否には大きく影響しないが、0.2%を超えると鋼板表面のきずを発生させたり外観を悪くする。また硬さを増して深絞り成形性を悪くなる。一方、Siは特に必要とする元素ではないが、通常の不純物程度は存在しても良い。そこで0.2%以下と限定する。
【0047】
Mn:0.1〜0.5%
MnはOを含有する介在物を生成し、ほうろう性の向上に寄与するため必要な元素である。また、Sによる熱間脆性を防止するために鋼ではS含有量の7倍程度以上必然的に含有させる。しかし、鋼の変態点を低下させるので、ほうろう用には焼成温度範囲で変態を生じないようにするため、多くない方が良い。また多すぎるMn含有は鋼の加工性も悪くする。そこで、0.1〜0.5%と限定する。
【0048】
P:0.005〜0.025%
Pは鋼の不可避的不純物の一つであるが、酸洗の際の鋼板の溶ける速度を大きくする傾向がある。0.025%を超えると過剰な酸洗減量のためほうろうの泡立ち欠陥を生じやすくなる。一方、0.005%未満であると、酸洗が不十分となり密着性を悪くする。そこでPの含有量の範囲は0.005〜0.025%と限定する。
【0049】
S:0.005〜0.025%
Sは、不可避的不純物であり、熱間圧延時の割れの原因となるので、通常Mnを添加してこれを抑制する。その結果として生じるMnSは、鋼中の代表的な介在物であり、深絞り成形性の向上のためには少なければ少ないほどよい。しかしながら、ほうろう用鋼板では、水素をトラップする介在物としての効果がある。またSは酸洗速度を速め、ある程度の表面粗れをもたらして密着性を向上させる効果がある。そこで、鋼板の加工性を向上させるために上限を0.025%までと限定するとともに、ほうろう性を向上させるために下限を0.005%とする。
【0050】
Al:0.01%以下
Alは、鋳片、特に連続鋳造片の健全性を確保するため、製鋼段階では脱酸材として使用されるがOを鋼に含有させるため、Alは鋼中には出来るだけ留めない方がよい。したがってその含有量は0.01%以下とする。
【0051】
N:0.0050%以下
Nはほうろう性には影響しないが、歪み時効を生じ鋼板の加工性を悪くするのでNは出来るだけ少ないほうがよい。そこでNの含有量は0.0050%以下とする。
【0052】
O:0.0100〜0.1000%
O(酸素)は鋼中にてMnの酸化物を主体とする介在物を形成し、この介在物が水素を捕捉するので爪飛び発生を抑止することが出来る。かかる効果は、0.0100%以上であれば十分に奏せられる。一方、0.1000%を超えると、表面疵が増大し、加工性も悪くなる。そこで、0.0100〜0.1000%と限定する。
【0053】
Cu:0.015〜0.060%
Cuは、酸洗の際の鋼の溶解速度を下げるが、ほうろうの密着性を向上させる効果がある。その含有量が0.015%未満では密着性向上の効果が十分でなく、一方、0.060%を超えると溶解速度が下がりすぎ、酸洗による表面の凹凸が十分に得られず密着性を低下させる。したがってその含有範囲を0.015〜0.060%の範囲と定める。同様の観点から、0.020〜0.050%が好ましい。
【0054】
Ni:0.001〜0.100%
Niは、上記範囲で添加するとほうろうの密着性や耐爪飛び性が向上する。ほうろう前処理の酸洗時に結晶粒界は優先的に酸洗されやすい傾向があるが、酸洗によって結晶粒界に鋼中のNiが濃化し、Niフラッシュ時のNiの析出が容易になると推定される。結晶粒が細粒であるとその効果はより一層顕著になる。添加する量は0.001%未満では上記効果が得られず、一方0.100%以上では効果が飽和する。そのため0.001〜0.100%に限定する。
【0055】
Cr:0.001〜0.100%
CrはOと結合して介在物を作り、水素をトラップして爪飛びを抑制する効果がある。これら効果を得るには、少なくとも0.001%以上の含有が必要であるが、0.100%以上では鋼板のプレス加工性を悪くするので多くても0.100%以下とするのがよい。そのため0.001〜0.100%に限定する。
【0056】
V:0.001〜0.100%
Vは0.001〜0.100%とする。VはOと結合して介在物を作り、水素をトラップして爪飛びを抑制する効果がある。これら効果を得るには、少なくとも0.001%以上の含有が必要であるが、0.100%以上では鋼板のプレス加工性を悪くするので多くても0.100%以下とするのがよい。また、ほうろうの表面性状が非常にシビアな直接一回掛けほうろうにおいては、泡や黒点を発生し易くなるため、0.001〜0.100%に限定する。
【0057】
Mo:0.001〜0.100%
Moは0.001〜0.100%とする。MoはOと結合して介在物を作り、水素をトラップして爪飛びを抑制する効果がある。これらの効果を得るには、少なくとも0.001%以上の含有が必要であるが、0.100%を超えると鋼板のプレス加工性を悪くするので多くても0.100%以下とするのがよい。また、ほうろうの表面性状が非常にシビアな直接一回掛けほうろうにおいては、泡や黒点を発生し易くなるため、0.001〜0.100%に限定する。
【0058】
Cu/P比: 1.0〜4.0
Cuは酸洗減量を低減させるのに対し、Pは増加させる効果がある。それら相互の影響について調査の結果、密着性向上にはCuとPの比の値を最適の範囲である1.0以上4.0以下に管理すればよいことがわかった。すなわち、ほうろうの密着性はCu(%)/P(%)比は1.0未満、4.0超えのいずれであっても劣化する。そこでCuとPの比の値Cu/Pは、1.0以上4.0以下に限定する。
【0059】
P/S比: 0.6〜2.0
PもSも酸洗時の溶解速度すなわち酸洗減量を増加させる元素であるが、密着性におよぼす影響について調査の結果、P、Sは相互作用があり、その含有量比が0.6未満でも、2.0超のいずれであっても、密着性が劣ったり、泡立ちなどを発生しやすい。そこでP(%)/S(%)を0.6以上2.0以下に限定する。これは酸洗減量だけではなく、酸洗後の表面状態に関係していると考えられる。
【0060】
Nb:0.001〜0.100%
Nbは、0.001%以上含有することにより耐爪飛び性を改善するとともに、主として、Cと結合して機械的性質を改善する。ただし、0.100%を超えると泡欠陥を生じやすい傾向がある。そこでNbを添加する場合には、その含有量は0.001%以上0.100%以下と限定することが望ましい。なお、例えば、直接一回掛け用途のような泡欠陥に対して十分配慮する必要が有る場合には、適宜添加するのが好ましい。
【0061】
B:0.0001〜0.0100%
Bは0.0001%以上含有することにより、Nbと同様に耐爪飛び性を改善するとともに、主としてNと結合して機械的性質を改善する。しかし、0.0100%を超えると、泡欠陥が生じやすい傾向がある。そこで、Bを添加する場合には、その含有量を0.0001%以上0.0100%以下と限定することが望ましい。なお、例えば、直接一回掛けほうろうのような泡欠陥に対して十分配慮する必要が有る場合には、適宜添加するのが好ましい。
【0062】
Ti:0.001〜0.100%
Tiは、0.001%以上含有することにより耐爪飛び性を改善するとともに、主として、Cと結合して機械的性質を改善する。ただし、0.100%を超えると泡欠陥を生じやすい傾向がある。そこでNbを添加する場合には、その含有量は0.001%以上0.100%以下と限定することが望ましい。なお、例えば、直接一回掛け用途のような泡欠陥に対して十分配慮する必要が有る場合には、適宜添加するのが好ましい。
【0063】
次に、本発明にかかる熱間圧延、 冷間圧延、 連続焼鈍などの製造方法について好適態様を示す。
スラブ加熱温度: 1000〜1250℃
スラブ加熱温度は、加工性には大きく影響しないが1000〜1250℃とする。1000℃未満の場合、圧延の圧下荷重が増大して圧延困難となり、1250℃を越えると、介在物の形態が変わって爪飛び性が低下したり、酸化によるスケ−ルロスの増大をきたす。そこで、スラブ加熱温度は1000〜1250℃に限定する。
【0064】
これ以外の均熱処理の条件は、公知の条件に従えば良いため、均熱処理に関するこれ以上の説明は省略する。
仕上げ温度:
熱間圧延の仕上げ温度はAr3 変態点の直上が好ましく、850〜950℃とする。950℃超えはプレス加工性が悪くなり、一方、850℃未満ではAr3 変態点を下回り、冷間圧延後焼鈍して得れる鋼板の伸びやr値が悪くなる。
巻取温度:
巻取温度は450〜700℃とする.伸び値の改善を図る本発明では重要なポイントである。すなわち、700℃を越えると、鋼の化学組成での結晶粒成長が抑止効果を上回り、冷間圧延前の結晶粒径が大きくなる。このため、最終的に得られるほうろう用鋼板の結晶粒径も大きくなり、十分な耐爪飛び性が得られない。さらに伸びやr値が悪くなりプレス加工性を悪くする結果をもたらす。一方、450℃未満であると、固溶炭素が微量に残存し冷間圧延後の焼鈍で昇温時にプレス加工性に好ましい結晶方位の形成を阻害する。そこで、本発明では450以上700℃以下と限定する。同様の観点から、下限は470℃、上限は550℃であることが望ましい。
【0065】
これ以外の熱間圧延条件は、公知の条件に従えば良いため、これ以上の説明は省略する。
熱間圧延を終了した後に、スケ−ル除去を目的として酸洗を行う。酸洗は、公知の条件に従って行えば良いため、酸洗に関するこれ以上の説明は省略する。
冷間圧延率:
酸洗を行った後、冷間圧延を行って所望の板厚を有する冷延鋼板とする。その冷間圧延の圧下率は70〜90%である。70%未満では、介在物の周辺に空洞が形成されず、耐爪飛び性などのほうろう性の向上が図れない。また伸び、r値などの加工性も不芳である。一方、90%を越えると、圧延負荷が急激に増大するばかりでなく、伸び、r値などの加工性の改善効果も飽和してしまう。さらに、介在物が押しつぶされて、長片/短片の比が10を超えるようになり、優れた耐爪飛び性が得られなくなる。そこで、本発明では、冷間圧延における冷間圧下率は、70%以上90%以下と限定する。
【0066】
これ以外の条件は、公知の条件に従えば良いため、これ以上の説明は省略する。
焼鈍温度:
本発明の実施態様では、冷間圧延を終了した冷延鋼板に対して焼鈍を行ってもよい。この焼鈍に連続焼鈍法を適用すると、鋼板の製造工程が短縮化されるだけでなく、ほうろうの爪飛び性の低下を抑制することが出来る。この理由は、連続焼鈍では介在物近傍で冷間圧延においてできた微小割れが短時間の均熱のため拡散により充填消失することなく鋼板中に残存して、鋼中の水素を捕捉することが出来るからと考えられる。
【0067】
したがって、焼鈍方法は、従来のコイル焼鈍やオ−プンコイル焼鈍を用いても、ほうろう性や加工性の十分な改善効果を得ることはできるものの、良好な耐爪飛び性を得るためには、連続焼鈍法を適用することがより好ましい。この連続焼鈍の条件は、焼鈍温度を750〜900℃、この温度範囲内における鋼板の保持時間を120秒以下とする。750℃未満では焼鈍不十分となって必要な加工性を得ることができない。一方、900℃を越えると結晶粒の粗大化によってプレス加工性が劣化したり、耐爪飛性の改善効果が減少してしまう。一方、この750〜900℃の温度範囲おける保持時間は、数秒程度以上あれば焼鈍の目的は達成できるが、焼鈍時間が120秒間を超えると、焼鈍温度が900℃を越えた場合と同様に、加工性や耐爪飛び性が劣化する。
【0068】
そこで、本発明では、焼鈍温度は750以上900以下に、焼鈍時間は120秒間以下に限定する。同様の観点から、焼鈍温度の下限は830℃、上限880℃が望ましい。
仕上げ圧延前の板温度変動
仕上げ温度はAr3 点以上が通常の熱間圧延方法だが、オ−ステナイト粒に圧延歪みをできるだけ多く導入することにより、細粒化が図られ、ほうろう性、加工性の向上が可能であるので、Ar3 点直上で圧延を終了することが望ましい。
【0069】
この手段として、スラブ加熱温度を低温に抑制しながら仕上げ温度を所定以上に保つことは、極めて有効である。その際、圧延前の板温度が板巾および長手方向で変動が大きいと圧延中に変態が起こり、圧延トラブルを生じるので板内の温度変動を140℃以下に限定する。
【0070】
さらに同様な目的のため、いわゆるコイルボックスを適用して保温あるいは加熱することや粗圧延材を接合して連続圧延することも有効である。
このようにして、本発明にかかるほうろう用鋼板が製造される。本発明にかかるほうろう用鋼板は、前述したように、繰り返し焼成によっても密着性、耐爪飛び性さらには耐泡立ち性などのほうろう性の低下が小さい。
【0071】
この本発明にかかるほうろう用鋼板の用途としては、鍋やケトルなどの家庭用品雑貨や洗面台、シムテムキッチン、シムテムバスなどの加工成形品である。これらの加工に耐えうる加工性を有するか否かは、引張試験値により判断することができ、特に伸び値の相関が強い。
【0072】
具体的には、本発明者らの経験によれば、これらの加工性は伸び値が44%以上が一つの指標となるが、本発明にかかるほうろう用鋼板は、引張試験の伸び値44%以上を十分に満足し、加工性も良好である。
【0073】
このため、この本発明にかかるほうろう用鋼板は、特に一回掛けほうろうないしはそれ以上のほうろう掛けを主とする用途に好適に適用できる。
【0074】
【実施例】
(実施例1)
表1に化学組成を示す鋼スラブを連続鋳造にて鋳込み、以下の工程および条件で冷延鋼板とした。
1)熱間圧延
スラブ均熱: 1200℃
仕上圧延880〜900℃
巻き取り処理: 530℃
仕上げ板厚: 4.5mm
2)酸洗
10%HClにて40〜50秒
3)冷間圧延
圧下率85%(厚さ0.7mm)
4)連続焼鈍
均熱温度:850℃
均熱時間:100秒間
5)調質圧延
伸び率: 0.8%
ほうろう掛け試験の条件
酸洗 17%硫酸、鉄濃度約5%、78℃×5分
Niフラッシュ 12g/L NiSO4 ・7H2 O 、鉄濃度0.5% 、pH 2.8、82℃×5分
施 釉 日本フェロ−社製 1553B釉薬をスプレ−により片面当たり約100μmにて両面施釉。
【0075】
焼 成 820℃×6分
繰り返し焼成 上記の施釉と焼成の工程を再度実施.
熱処理 200℃×8hr保持にて爪飛び欠陥の発生を促進。
【0076】
得られた鋼板について、ほうろう性は、巾75mm、長さ200mmの鋼板を切り出し片を用いて前記に示す条件にて1回掛けほうろうおよび繰り返し焼成試験を行い、酸洗減量、ほうろうの密着性、爪飛び、泡立ちの発生の有無を調査した。
【0077】
さらにJIS5号試験片を用いて、引張試験値(降伏点、抗張力、伸び、r値)を調べた。
結果は表2にまとめて示す。
【0078】
表2において、本発明の範囲を満足する化学組成を有する試験番号1〜15までは、いずれも、ほうろう性および機械特性値がともに良好であり、ほうろう用鋼板として好適であることがわかる。
【0079】
これに対し試験番号16は、NiおよびP/Sが本発明の範囲を上回り、介在物の分布が本発明の範囲を下回る、さらにTiが本発明の範囲を上回るため、密着性、耐爪飛び性、伸びががいずれも不芳であった。
【0080】
試験番号17は、O含有量と介在物個数が本発明の範囲を下回るため、耐爪飛び性がいずれも不芳である。
試験番号18は、Cu/P値とBが本発明の範囲を上回るため、密着性と耐泡性がいずれも不芳である。
【0081】
試験番号19は、CrおよびNbが本発明の範囲を上回り、介在物の組成および長片/短片の比が本発明の範囲から外れるため、耐爪飛び性、密着性、耐泡性と機械特性がいずれも不芳である。
【0082】
試験番号20は、CおよびVが本発明の範囲を上回り、介在物の長片/短片の比が本発明の範囲を上回るため、耐爪飛び性、密着性、耐泡性と機械特性がいずれも不芳である。
【0083】
試験番号21は、OおよびMoさらに介在物の個数が本発明の範囲を上回るため、耐泡性と機械特性がいずれも不芳である。
試験番号22は、Cu/Pが本発明の範囲を下回りさらに、Cu、Ni、Crも本発明の範囲を下回るため、耐爪飛び性、密着性、耐泡性がいずれも不芳である。
(実施例2)
表1 に示した鋼C、EおよびGの化学組成のスラブをラボ実験により、スラブ加熱温度は1200℃とし、熱間圧延仕上げ圧延前の板温度変動、熱間圧延巻取温度、冷間圧延の圧下率、焼鈍温度、焼鈍時間をそれぞれ変えて焼鈍後、伸び率0.8%の調質圧延を施した。
【0084】
得られた鋼板について実施例1と同じ方法にて、ほうろう性、引張試験の評価をおこなった。その結果を表3にまとめて示す。
これらから明らかなように本発明範囲の化学組成の鋼であっても、製造条件が好ましくない場合には、特性として十分な鋼板が得られないことが分かる。
【0085】
すなわち試験番号38は、焼鈍温度が高すぎるため結晶粒径が細粒とならず耐爪飛び性、機械特性がいづれも不芳である。
試験番号39は、焼鈍時間および冷間圧延率が本発明の範囲を上回り、介在物の長片/短片の比が本発明の範囲を上回るため、耐爪飛び性が不芳である。
【0086】
試験番号40は、焼鈍温度が本発明の範囲を下回るため、機械特性が不芳である。
試験番号41は、仕上げ圧延前の板温変動が本発明の範囲を上回るため、細粒化が不十分で耐爪飛び性、機械特性が不芳である。
【0087】
試験番号42は、冷圧率が本発明の範囲を下回るため、介在物の大きさが本発明の範囲を上回り、耐爪飛び性が不芳である。
実施の形態および各実施例の説明では、一回掛けほうろうの場合を例にとったが、本発明は、一回掛けほうろうには限定されず、もちろん二回掛けほうろうにも同様に適用できる。
【0088】
また、実施形態および各実施例の説明では、連続鋳造スラブを用いる場合を例にとったが、本発明は、連続鋳造スラブには限定されず、例えば、分塊圧延機により圧延されたスラブであっても同様に適用できる。
【0089】
さらに、実施形態および各実施例の説明では、連続焼鈍を行う場合を例にとったが、本発明は、連続焼鈍には限定されず、例えば、コイル焼鈍やオ−プンコイル焼鈍などのバッチ焼鈍であっても同様に適用できる。
【0090】
【表1】
Figure 0003797063
【0091】
【表2】
Figure 0003797063
【0092】
【表3】
Figure 0003797063
【0093】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、ほうろう製品の製造の際に行われる繰り返し焼成によっても、密着性、耐爪飛び性さらには泡立ち性などのほうろう性の低下が小さく、しかも加工性が良好なほうろう用鋼板、特に二回掛け以上のほうろうだけでなく、特に一回掛けほうろうにも用いることが出来るほうろう用鋼板とその製造方法がともに提供することができた。
【0094】
したがって、本発明にかかるほうろう用鋼板を用いることにより、システムキッチンや台所器物、家電部品等に用いる綺麗なほうろう部品を容易かつ確実に製造することができ、かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.2%以下、Mn:0.1〜0.5%、P:0.005〜0.025%、S:0.005〜0.025%、Al:0.01%以下、N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015〜0.060%、Ni:0.001〜0.100%、Cr:0.001〜0.100%、V:0.001〜0.100%、Mo:0.001〜0.100%
    ただし、Cu/P比:1.0〜4.0、P/S比:0.6〜2.0を満足し、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有し、圧延長手方向の鋼板縦断面において、水素トラップサイトとして、OとMnとを含む、円相当粒径が0.5μm以上10μm以下、長片/短片の比が10以下である介在物を含有することを特徴とする耐爪飛び性、密着性および加工性が優れたほうろう用鋼板。
  2. 前記介在物の全介在物に対する比率が60面積%以上であり、かつ、その個数が1×10〜2×10個/mmであることを特徴とする請求項1に記載されたほうろう用鋼板。
  3. さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.100%、B:0.0001〜0.0100%、およびTi:0.001〜0.100%から成る群から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載されたほうろう用鋼板。
  4. 質量%で、C:0.0005〜0.0050%、Si:0.2%以下、Mn:0.1〜0.5%、P:0.005〜0.025%、S:0.005〜0.025%、Al:0.01%以下、N:0.0050%以下、O:0.0100〜0.1000%、Cu:0.015〜0.060%、Ni:0.001〜0.100%、Cr:0.001〜0.100%、V:0.001〜0.100%、Mo:0.001〜0.100%
    ただし、Cu/P比:1.0〜4.0、P/S比:0.6〜2.0を満足し、残部Feおよび不純物からなる鋼組成を有するスラブに、1000〜1250℃で均熱した後、熱間圧延を行い、850〜950℃で仕上圧延を行い、次いで450〜700℃で巻取を行い、酸洗後、圧延率70〜90%で冷間圧延を行ってから、焼鈍を行うことを特徴とする、圧延長手方向の鋼板縦断面において、O、Mnを含む、円相当粒径が0.5μm以上10μm以下、長片/短片の比が10以下である介在物を含有し、耐爪飛び性、密着性および加工性が優れたほうろう用鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼組成が、さらに、質量%で、Nb:0.001〜0.100%、B:0.0001〜0.0100%、およびTi:0.001〜0.100%から成る群から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
  6. 前記焼鈍が、焼鈍温度750〜900℃および焼鈍時間120秒以内の連続焼鈍であることを特徴とする請求項4または5に記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
  7. 前記熱間圧延が、粗圧延後、板内の温度変動が140℃以下になるように加熱した後、仕上げ圧延を行うことから成ることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
  8. 前記介在物の全介在物に対する比率が60面積%以上であり、かつ、その個数が1×10〜2×10個/mmであることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載されたほうろう用鋼板の製造方法。
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