JP3401553B2 - 乾式混合法による透明イットリウム・アルミニウム・ガーネット焼結体の製造法 - Google Patents

乾式混合法による透明イットリウム・アルミニウム・ガーネット焼結体の製造法

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JP3401553B2 JP00855499A JP855499A JP3401553B2 JP 3401553 B2 JP3401553 B2 JP 3401553B2 JP 00855499 A JP00855499 A JP 00855499A JP 855499 A JP855499 A JP 855499A JP 3401553 B2 JP3401553 B2 JP 3401553B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イットリウム・ア
ルミニウム・ガーネット(Y3 Al5 12の化学式で表
示できる化合物で、以下「YAG」という)の優れた透
明度を有する焼結体の製造法に関する。
【0002】
【従来技術】従来よりYAGは、結晶型が立方晶である
ため優れた透光性を有することから、光学材料として期
待されてきた物質である。このような透光性を利用した
YAGは、単結晶から作成する方法、Al2 3 粉末と
2 3 粉末を混合しHIP処理やホットプレス焼成す
る方法(特開平3-27556O号、特開平3-275561号公報
等)、尿素の熱分解を利用した共沈法(例えば、特開平
2-92817 号公報)、微量のSiO2 やMgO、CaO等
の金属酸化物系添加物を利用してAl2 3 粉末とY2
3 粉末の混合粉末を焼成する方法(例えば、特開平5-
286761号公報等)などで製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、単結晶
合成は高価であり、しかも任意の形状に作製することが
困難であるという問題があった。また、HIPやホット
プレス処理では、焼成中に加圧装置を駆動させる必要が
あり、生産性が低いと同時に大きな装置を必要とするの
で高価であるという問題があった。尿素を用いた共沈法
では、目的とする共沈物を製造するには大量の尿素が必
要であり、しかも沈殿生成時間が長く、作業性が悪いと
いう欠点があった。金属酸化物を添加する方法では、添
加した金属酸化物が焼結後にも残り、焼結体の特性を悪
化させるという欠点があった。
【0004】本発明は、上記の方法の欠点を解消し、種
々の光学材料に利用可能な透明性を有する化学式がY3
Al5 Ο12で表されるYAGの焼結体を安価に製造でき
る方法を見いだすことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、透明性を有
するYAGについて鋭意研究を行った結果、硫黄がY 2
3 の表面や粒界の性質を等方的にして、YAGの中期
焼結段階及び後期焼結段階の緻密化を促進し、緻密化が
終了した後は焼結体から離脱し、透明性の高いYAG焼
結体を製造できることを見いだし、本発明に至った。
【0006】即ち、本発明は、0.03重量%〜10重
量%以下の硫黄(但し、Y2 3 に対しSとして)を含
み一次粒子の平均粒径が0.01μm〜0.4μmのY
2 3 粉末と一次粒子の平均粒径が0.01μm〜1.
5μm以下のAl2 3 粉末をイットリウム・アルミニ
ウム・ガーネットが生成できる割合で混合し、成形し、
イットリウム・アルミニウム・ガーネット中を実質的に
拡散できない窒素やアルゴンなどのガス成分の合計の分
圧が0.5気圧以下の雰囲気で1600℃〜1850℃
の温度で焼結し、焼結後に残留する硫黄が0.02重量
%以下(但し、Y3 Al5 12に対しSとして)である
ことを特徴とする透明イットリウム・アルミニウム・ガ
ーネット焼結体の製造法である。
【0007】上記焼結体の焼成における昇温過程で、1
100℃〜1400℃の温度範囲のある一定温度で等温
的に20分以上保持するか、あるいは該温度範囲を20
分以上かけて徐々に昇温する方法を用いることが好まし
い。
【0008】本発明は、適正な量の硫黄を含みかつ純度
と一次粒子の粒径が適正であるY23 粉末と適正な純
度及び一次粒子の粒径を有するAl2 3 粉末とを用
い、適正な条件下で合成を行うことで種々の光学材料に
応用可能な透明性に優れたYAG焼結体を製造できる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明で使用するY2 3 粉末の
製造方法は特に限定されないが、一次粒子の平均粒径が
0.01μm〜0.4μmの範囲に制限する必要があ
る。一次粒子が0.01μmよりも小さいと粉体粒子の
流動性が急激に低下し、圧粉体の密度分布が広くなる。
このような圧粉体を焼成すると、密に充填したところの
気孔は速やかに消失する。気孔が消失した所は、実質的
に巨大な粒子が出現したことに相当するので、緻密化が
遅い疎に充填した所の気孔を消失させるための原子の拡
散距離が非常に長くなり、多くの気孔を残して緻密化は
実質的に止まる。一方、一次粒子が大きくなると焼結の
駆動力である表面エネルギーが少なくなる。一次粒子の
平均粒径が0.4μm以上になると、表面エネルギーが
十分でなく焼結体から全ての気孔を取り除くことはでき
ない。
【0010】凝集粒子の大きさは一次粒子の大きさ以下
にはならないので、凝集粒子の小さい方は特に制限する
必要はない。一方、硬い凝集粒子の中で、その20%以
上が20μmよりも大きい粒径をもつと、凝集粒子間に
大きな空隙が出現する。そのような大きな空隙を普通焼
結で取り除くことはできない。このため、本発明では凝
集粒子の80%以上は20μmよりも小さな粉末である
ことが好ましい。しかしながら、実際の易焼結性Y2
3 粉末には、20μmよりも大きい硬い凝集粒子はほと
んど認められないので、易焼結性のY2 3 粉末を用い
る限り凝集粒子の大きさを特に問題にすることはない。
【0011】本発明でY2 3 に添加する硫黄は、原理
的には固体の硫黄でも硫黄の化合物の形でもよい。しか
しながら、固体の硫黄は反応性が強く、十分に注意して
取り扱う必要があると同時に、添加した硫黄の多くはY
AGの微密化に寄与する前にガス化して試料から離脱す
るのであまり好ましくない。
【0012】本発明で使用できる硫黄化合物として、硫
酸や亜硫酸、硫酸ナトリウムや硫酸カリウムなどの硫酸
のアルカリ化合物、硫酸カルシウムや硫酸マグネシウム
等で代表される硫酸のアルカリ土類化合物、亜硫酸ナト
リウムや亜硫酸カリウムなどの亜硫酸のアルカリ化合
物、亜硫酸カルシウムや亜硫酸マグネシウム等で代表さ
れる亜硫酸のアルカリ土類化合物、硫酸アルミニウム、
硫酸セリウム等の硫酸の希土類化合物などが例示される
が、本発明の特徴を発揮する化合物であるならばその種
類は特に限定されない。
【0013】硫酸の金属化合物あるいは亜硫酸の金属化
合物を添加した場合、添加した金属イオンはYAG焼結
体に残留する。残留した金属は焼結体の物理的あるいは
化学的性質を悪化させることが多いので、透明YAG焼
結体の利用を考えて添加する硫酸化合物や亜硫酸化合物
を選択する必要がある。硫黄あるいは硫黄化合物をY 2
3 粉末や仮焼してY2 3 となるイットリウム化合物
に添加する際に、Al 2 3 粉末が共存しても、あるい
は共存しなくても好ましい結果が得られる。
【0014】硫黄あるいは硫黄化合物を添加したY2
3 粉末は700℃〜1400℃の温度範囲で仮焼するこ
とが好ましい。また、硫黄あるいは硫黄化合物を仮焼し
てY 2 3 粉末となるイットリアの化合物に添加した場
合は、仮焼して一次粒子の平均粒径が0.01μm〜
0.4μmの硫黄を含むY2 3 粉末に変化させておく
必要がある。
【0015】本発明で用いる硫黄あるいは硫黄化合物の
量は、Y2 3 に対しSとして0.03重量%〜10重
量%の範囲が好ましい。硫黄の量が0.03重量%以下
であると添加効果は認められない。一方、10重量%を
超えると焼結体に残留する硫黄の量が多くなり透光度が
低下する。
【0016】添加した硫黄は,Y2 3 の表面や粒界に
偏析し、Y2 3 の表面や粒界の異方的性質を等方化し
てYAG圧粉体全体を均一に緻密化するのに効果を発揮
する。特に、硫黄の添加効果は、昇温過程の温度が10
00℃から1400℃の範囲で顕著である。1000℃
になると量的には少ないが硫黄の一部はYAG圧粉体か
ら離脱し始める。温度が高くなるほど離脱する硫黄は急
激に増加する。硫黄はYAGの緻密化を促進するが、Y
AGにとって不純物であるので、焼結体に残留する硫黄
の量は0.02重量%以下とする必要があり、0.00
5重量%以下が特に好ましい。焼結体の硫黄含量を減ら
すには、焼結温度を高くし、また焼結時間を長くする必
要がある。一方、そのような焼結条件では焼結体の粒成
長が激しく、焼結体の機械的強度を低下させる欠点があ
る。そこで、実用的に透明焼結体を製造する場合、本発
明の請求項1の条件を満足する条件内で材料の使用目的
にあった焼結条件を見いだすことが必要である。
【0017】本発明で使用するAl2 3 の原料粉末の
合成プロセスは特に制限されないが、その一次粒子の平
均粒径は0.01μm〜1.5μmの範囲に制限され
る。この粒径の範囲から分かるように、Al2 3 粉末
はY2 3 粉末に比べて大きくても本発明の特徴は発揮
される。これは、Al2 3 の融点がY2 3 の融点よ
りも低いため、Al2 3 中の原子の拡散係数がY2
3 中の原子の拡散係数よりも大きく、その拡散係数に比
例して大きいAl2 3 粒子を使用しても焼結で透明化
できるためである。
【0018】しかしながら、Al2 3 粉末の一次粒子
の平均粒径が1.5μmよりも大きくなると、焼結性が
悪くなり透明YAG焼結体を得ることはできない。一
方、Al2 3 粉末の一次粒子の平均粒径が0.01μ
mよりも小さいと、一次粒子の平均粒径が0.01μm
よりも小さいY2 3 粉末に対して上で指摘したのと同
じ理由で好ましくない。
【0019】本発明で使用するY2 3 粉末やAl2
3 粉末に含まれる不純物の中で、YAGに固溶し、しか
も着色しない不純物であればその種類や量に対しては特
に制限はない。例えば、ΖrO2 やCeO2 のように広
い範囲で固溶する物質では5モル%以上固溶していても
特に問題はない。
【0020】一方、SiO2 のように固溶限界が狭い場
合、不純物量を固溶限界内に制限するか、あるいは該不
純物量が固溶限界を超える場合、該不純物の偏析層ある
いは該不純物によって生じる第2相介在物の厚さが0.
1μm以下になるように不純物量を制限する必要があ
る。厚さが0.1μm以上の偏析層や第2相介在物は光
を散乱し透明度が低下するので好ましくない。
【0021】本発明では、Y2 3 /Al2 3 の重量
比が1.27〜1.5の範囲となるように混合すること
が好ましい。この重量比より小さいと焼結体中にAl2
3粒子が残り、この比よりも大きいとY2 3 粒子が
残る。そのような粒子は光の散乱源となるので好ましく
ない。
【0022】本発明では、特に成形法は限定されない
が、粉末粒子は均一にしかも密に充填することが好まし
い。大量生産という視点からは、金型成型が好ましい。
一方、複雑な形状の材料や比較的生産量が少ない場合、
スラリー鋳込み成型が推奨される。
【0023】本発明では、焼結中に出発原料であるAl
2 3 、Y2 3 粉末が固相反応しながら圧粉体の緻密
化が進行する。この固相反応の初期にはY4 Al2 9
が生成し、その後YAlO3 が生成し、最終的にはYA
Gが出現する。Y2 3 の融点はAl2 3 のそれに比
べて高いので、上記の固相反応は、Y2 3 粉末の性質
に支配される。このため、反応性の悪いY2 3 粉末を
用いると焼結後にも光学的異方性を示すYAlO3 が残
存し、焼結体の透明度を著しく低下させる。
【0024】従来法でAl2 3 、Y2 3 の混合粉末
を用いて透明YAG焼結体を製造する場合、Al2 3
粉末よりも2倍以上の比表面積を持つY2 3 粉末を使
用する(特開平5-235462号公報)必要があった。本発明
では、硫黄でY2 3 の表面や粒界の性質の異方性を抑
制しているので、Al2 3 とY2 3 の反応性は良好
であり、本発明で使用できるAl2 3 粉末やY2 3
粉末に対する制限は緩い。
【0025】後期焼結段階になると焼結体中の気孔は、
焼結体内に閉じ込められて雰囲気から分離して孤立化す
る。このため、雰囲気ガス中に窒素やアルゴンなどのよ
うにイットリウム・アルミニウム・ガーネット中を拡散
できないガス成分が存在すると、孤立気孔内に閉じ込め
られたガスのなかでそれらのガス成分は除去できない。
このため、そのようなガスを含む雰囲気で焼結すると、
孤立気孔が出現した後の緻密化速度は急速に遅くなる。
雰囲気中のガス成分と焼結密度の関係を調べたところ、
上記ガス成分の分圧の合計が0.5気圧以下であれば特
に問題はない。
【0026】本発明の方法で透明焼結体を製造するには
1600℃〜1850℃の温度で焼結する必要がある。
焼結温度が1600℃よりも低いと、透明度が低い。一
方、焼結温度が1850℃を越すと、焼結のために消費
するエネルギー量が無視できなくなり、製品のコスト高
の一因となる。また、焼結体中の粒子が異常に大きくな
り焼結体の機械的強度を低下させる欠点がある。
【0027】本発明の請求項2は、硫黄が1000℃か
ら1400℃の温度範囲でYAGの緻密化を特に促進す
ることに注目して、該温度範囲のある温度で等温的に2
0分以上保持するか、この温度範囲で20分以上かけて
徐々に昇温する温度プログラムで圧粉体を焼成すること
を特徴としている。
【0028】この温度範囲で加熱する時間が20分以下
であると、緻密化の効果は十分発揮されない。また、該
温度範囲での加熱時間は長い方が好ましいが、作業効率
が悪くなるという欠点がある。実用的には、使用する粉
末の焼結特性と経済性を考慮してその加熱時間を決める
必要がある。
【0029】
【実施例】200mlの蒸留水に溶解した20gの硝酸
イットリウムに、2規定のアンモニア水をpHが8にな
るまで滴下して水酸化イットリウム沈殿を生成した。こ
れに種々の量の硫酸アンモニウムを滴下して3時間熟成
した。ろ過、乾燥後種々の温度で4時間仮焼し、粒径や
硫黄含有量の異なるY2 3 粉末を調製した。この仮焼
粉末の粒径と硫黄含有量は表1に示すとおりであった。
【0030】該仮焼粉末5gを100mlのエチルアル
コールに分散し、この分散液を平均粒径が約0.23μ
m、1.00μm、0.32μmの市販のAl2 3
末3.76gを分散した100mlのエチルアルコール
と混合した。この混合アルコール液をヒーター付きのマ
グネチックスターラーで加熱しながら撹拌して乾燥し
た。この乾燥粉末を酸素ガス気流中で600℃で4時間
再仮焼した。再仮焼した粉末を、内径が12mmφの金
型を用いて20MPaの圧力で成形し、さらに200M
Paの圧力で静水圧プレスした。
【0031】この成形体の生嵩密度を測定した後、真空
電気炉に入れて真空雰囲気中で昇温し、1300℃に達
したらこの温度で等温的に30分間保持し、ついで17
00℃まで昇温し、この温度に2時間保持した後炉冷す
る方法で焼成した。得られた焼結体の見掛け密度を測定
した。また、この焼結体を厚さ1mmに研磨した後、粒
径が1μmのダイヤモンドペーストで鏡面に仕上げを行
った後、波長が600nmの可視光線で直線透過率を測
定した。各測定値を表1に示す。各試料の硫黄の添加量
や焼結後のその残留量を表1に示す。
【0032】
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/42 - 35/50 CA(STN) REGISTRY(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.03重量%〜10重量%以下の硫黄
    (但し、Y2 3 に対しSとして)を含み一次粒子の平
    均粒径が0.01μm〜0.4μmのY2 3 粉末と一
    次粒子の平均粒径が0.01μm〜1.5μm以下のA
    2 3 粉末をイットリウム・アルミニウム・ガーネッ
    トが生成できる割合で混合し、成形し、イットリウム・
    アルミニウム・ガーネット中を実質的に拡散できないガ
    ス成分の合計の分圧が0.5気圧以下の雰囲気で160
    0℃〜1850℃の温度で焼結し、焼結後に残留する硫
    黄が0.02重量%以下(但し、Y3 Al5 12に対し
    Sとして)であることを特徴とする透明イットリウム・
    アルミニウム・ガーネット焼結体の製造法。
  2. 【請求項2】 上記焼結体の焼成における昇温過程で、
    1100℃〜1400℃の温度範囲のある一定温度で2
    0分以上保持するか、あるいは該温度範囲を20分以上
    かけて徐々に昇温することを特徴とする請求項1記載の
    透明イットリウム・アルミニウム・ガーネット焼結体の
    製造法。
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