JP3391142B2 - α−オレフィン低重合体の製造方法 - Google Patents

α−オレフィン低重合体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、α−オレフイン低重合
体の製造方法に関するものであり、詳しくは、特に、エ
チレンから1−ヘキセンを主体としたα−オレフイン低
重合体を高収率かつ高選択率で製造することが出来る工
業的有利なα−オレフイン低重合体の製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、エチレン等のα−オレフイン
の低重合方法として、特定のクロム化合物と特定の有機
アルミニウム化合物の組み合せから成るクロム系触媒を
使用する方法が知られている。例えば、特公昭43−1
8707号公報には、クロムを含むVIB族の遷移金属
化合物とポリヒドロカルビルアルミニウムオキシドから
成る触媒系により、エチレンから1−ヘキセンを得る方
法が記載されている。
【0003】また、特開平3−128904号公報に
は、クロム−ピロリル結合を有するクロム含有化合物と
金属アルキル又はルイス酸とを予め反応させて得られた
触媒を使用してα−オレフインを三量化する方法が記載
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の何れ
の方法によっても、ポリマーの副生は避けられず、特
に、α−オレフイン低重合体の工業的製造方法において
は、副生ポリマーを如何にして分離するかが重要な課題
である。また得られるα−オレフイン低重合体の高純度
化を図ることは各種の成分の用途において重要であり、
しかも、各成分の蒸留分離の条件によっては、クロム化
合物などの触媒成分による蒸留塔への付着などの問題も
惹起されるため、反応液中に含有されるクロム化合物な
どの触媒成分の除去は重要な課題である。本発明は、斯
かる実情に鑑みなされたものであり、その目的は、クロ
ム系触媒を使用したα−オレフイン低重合体の製造方法
であって、コンパクト化されたプロセスにより副生ポリ
マーおよび触媒成分を効率的に分離し得る様に改良され
たα−オレフイン低重合体の工業的に有利な製造方法を
提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、クロム系触媒を使用したα−オレフイン低重合体の
製造方法において、クロム系触媒として、少なくとも、
クロム化合物(a)、アミン(b)、アルキルアルミニ
ウム化合物(c)及び周期律表のIIIA,IIIB,IVA,
IVB,VA,VB族の群から選ばれる元素を含み、反応
溶媒に可溶なハロゲン含有化合物(d)の組み合わせか
ら成る触媒系を使用し、溶媒中でα−オレフインの低重
合を行い、反応液から触媒成分と副生ポリマーを同時に
分離除去した後、反応液からα−オレフイン低重合体を
蒸留分離することを特徴とするα−オレフイン低重合体
の製造方法、に存する。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいては、クロム系触媒として、少なくとも、クロム化
合物(a)、アミン(b)及びアルキルアルミニウム化
合物(c)及び周期律表のIIIA,IIIB,IVA,IVB,
VA,VB族の群から選ばれる元素を含み、反応溶媒に
可溶なハロゲン含有化合物(d)の組み合わせから成る
触媒系を使用する。
【0007】本発明で使用するクロム化合物は、一般式
CrXnで表される。但し、一般式中、Xは、任意の有
機基または無機の基もしくは陰性原子、nは1〜6の整
数を表し、そして、nが2以上の場合、Xは同一または
相互に異なっていてもよい。クロムの価数は0〜6価で
あり、上記の式中のnとしては2以上が好ましい。
【0008】有機基としては、炭素数が通常1〜30の
各種の基が挙げられる。具体的には、炭化水素基、カル
ボニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、β−ジケト
ナート基、β−ケトカルボキシル基、β−ケトエステル
基およびアミド基などが例示れる。炭化水素基として
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アル
キルアリール基、アラルキル基、シクロペンタジエニル
基など等が挙げられる。無機の基としては、硝酸基、硫
酸基などのクロム塩形成基が挙げられ、陰性原子として
は、酸素、ハロゲン等が挙げられる。
【0009】好ましいクロム化合物は、クロムのアルコ
キシ塩、カルボキシル塩、β−ジケトナート塩、β−ケ
トエステルのアニオンとの塩、または、クロムハロゲン
化物であり、具体的には、クロム(IV)−t−ブトキシ
ド、クロム(III) アセチルアセトナート、クロム(III)
トリフルオロアセチルアセトナート、クロム(III) ヘキ
サフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)(2,
2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナー
ト)、Cr(PhCOCHCOPh)3(但し、ここでP
hはフェニル基を示す。)、クロム(II)アセテート、ク
ロム(III) アセテート、クロム(III) −2−エチルヘキ
サノエート、クロム(III) ベンゾエート、クロム(III)
ナフテネート、Cr(CH3COCHCOOCH3)3、塩
化第一クロム、塩化第二クロム、臭化第一クロム、臭化
第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨウ化第二クロム、フ
ッ化第一クロム、フッ化第二クロム等が挙げられる。
【0010】また、上記のクロム化合物と電子供与体か
ら成る錯体も好適に使用することが出来る。電子供与体
としては、窒素、酸素、リン又は硫黄を含有する化合物
の中から選択される。窒素含有化合物としては、ニトリ
ル、アミン、アミド等が挙げられ、具体的には、アセト
ニトリル、ピリジン、ジメチルピリジン、ジメチルホル
ムアミド、N−メチルホルムアミド、アニリン、ニトロ
ベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチルア
ミン、イソプロピルアミン、ヘキサメチルジシラザン、
ピロリドン等が挙げられる。
【0011】酸素含有化合物としては、エステル、エー
テル、ケトン、アルコール、アルデヒド等が挙げられ、
具体的には、エチルアセテート、メチルアセテート、テ
トラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジ
メトキシエタン、ジグライム、トリグライム、アセト
ン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ア
セトアルデヒド等が挙げられる。
【0012】リン含有化合物としては、ヘキサメチルホ
スホルアミド、ヘキサメチルホスホラストリアミド、ト
リエチルホスファイト、トリブチルホスフィンオキシ
ド、トリエチルホスフィン等が例示される。一方、硫黄
含有化合物としては、二硫化炭素、ジメチルスルホキシ
ド、テトラメチレンスルホン、チオフェン、ジメチルス
ルフィド等が例示される。
【0013】従って、クロム化合物と電子供与体から成
る錯体例としては、ハロゲン化クロムのエーテル錯体、
エステル錯体、ケトン錯体、アルデヒド錯体、アルコー
ル錯体、アミン錯体、ニトリル錯体、ホスフィン錯体、
チオエーテル錯体などが挙げられる。具体的には、Cr
Cl3・3THF、CrCl3・3dioxane、Cr
Cl3・(CH3CO2n−C49)、CrCl3・(CH
3CO225)、CrCl3・3(i−C37OH)、
CrCl3・3[CH3(CH23CH(C25)CH2
OH]、CrCl3・3pyridine、CrCl3
2(i−C37NH2)、[CrCl3・3CH3CN]
・CH3CN、CrCl3・3PPh3、CrCl2・2T
HF、CrCl2・2pyridine、CrCl2・2
[(C25)2NH]、CrCl2・2CH3CN、CrC
2・2[P(CH32Ph]等が挙げられる。
【0014】クロム化合物としては、炭化水素溶媒に可
溶な化合物が好ましく、クロムのβ−ジケトナート塩、
カルボン酸塩、β−ケトエステルのアニオンとの塩、β
−ケトカルボン酸塩、アミド錯体、カルボニル錯体、カ
ルベン錯体、各種シクロペンタジエニル錯体、アルキル
錯体、フェニル錯体などが挙げられる。クロムの各種カ
ルボニル錯体、カルベン錯体、シクロペンタジエニル錯
体、アルキル錯体、フェニル錯体としては、具体的に
は、Cr(CO)6、(C66)Cr(CO)3、(C
O)5Cr(=CCH3(OCH3))、(CO)5Cr
(=CC65(OCH3))、CpCrCl2(ここでC
pはシクロペンタジエニル基を示す。)、( Cp* Cr
ClCH3)2(ここでCp* はペンタメチルシクロペン
タジエニル基を示す。)、(CH3)2CrCl等が例示
される。
【0015】クロム化合物は、無機酸化物などの担体に
担持して使用することも出来るが、担体に担持させず
に、他の触媒成分と組み合わせて使用するのが好まし
い。すなわち、本発明において、クロム系触媒は、後述
する特定の接触態様で使用されるが、斯かる態様によれ
ば、クロム化合物の担体への担持を行わなくとも高い触
媒活性が得られる。そして、クロム化合物を担体に担持
させずに使用する場合は、複雑な操作を伴う担体への担
持を省略でき、しかも、担体の使用による総触媒使用量
(担体と触媒成分の合計量)の増大という問題をも回避
することが出来る。
【0016】本発明で使用するアミンは、1級または2
級のアミンである。1級アミンとしては、エチルアミ
ン、イソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ベン
ジルアミン、アニリン、ナフチルアミン等が例示され、
2級アミンとしては、ジエチルアミン、ジイソプロピル
アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、
ビス(トリメチルシリル)アミン、モルホリン、イミダ
ゾール、インドリン、インドール、ピロール、2,5−
ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4
−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピ
ロール、2−アセチルピロール、ピラゾール、ピロリジ
ン等が例示される。
【0017】本発明においては、上記の2級のアミン又
はこれらの混合物が好適に使用される。特に、2級のア
ミンとしては、ピロール、2,5−ジメチルピロール、
3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロロピロー
ル、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセ
チルピロールが好適である。そして、ピロール誘導体の
中、ピロール環に炭化水素基を有する誘導体が特に好ま
しい。
【0018】本発明において、アルキルアルミニウム化
合物としては、下記一般式(4)で示されるアルキルア
ルミニウム化合物が好適に使用される。
【0019】
【化1】1 mAl(OR2npq ・・・(4)
【0020】一般式(4)中、R1及びR2は、炭素数が
通常1〜15、好ましくは1〜8の炭化水素基であって
互いに同一であっても異なっていてもよく、Xはハロゲ
ン原子を表し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは
0≦p<3、qは0≦q<3のそれぞれの数であって、
しかも、m+n+p+q=3である数を表す。
【0021】上記のアルキルアルミニウム化合物として
は、例えば、下記一般式(5) で示されるトリアルキル
アルミニウム化合物、一般式(6)で示されるハロゲン
化アルキルアルミニウム化合物、一般式(7)で示され
るアルコキシアルキルアルミニウム化合物、一般式
(8)で示される水素化アルキルアルミニウム化合物な
どが挙げられる。なお、各式中のR1 、XおよびR2
定義は前記と同じである。
【0022】
【化2】 R1 3Al ・・・ (5) R1 mAlX3-m (mは1.5≦m<3) ・・・ (6) R1 mAl(OR23-m (mは0<m<3、好ましくは1.5≦m<3) ・・・(7) R1 mAlH3-m ・・・(8) (mは0<m<3、好ましくは1.5≦m<3)
【0023】上記のアルキルアルミニウム化合物の具体
例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアル
ミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアル
ミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシ
ド、ジエチルアルミニウムヒドリド等が挙げられる。こ
れらの中、ポリマーの副生が少ないという点でトリアル
キルアルミニウムが特に好ましい。アルキルアルミニウ
ム化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0024】本発明において、ハロゲン含有化合物とし
ては、周期律表のIIIA、IIIB、IVA、IVB、V
A、VB、VIB族の群から選ばれる元素を含むハロゲ
ン含有化合物が好適に使用される。そして、ハロゲンと
しては、塩素または臭素が好ましい。
【0025】上記のハロゲン含有化合物の具体例として
は、塩化スカンジウム、塩化イットリウム、塩化ランタ
ン、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニ
ウム、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、ジエチルアル
ミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリ
ド、塩化ガリウム、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メ
チレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラク
ロロエタン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリ
クロロベンゼン、ヘキサクロロシクロヘキサン、トリチ
ルクロリド、四塩化シラン、トリメチルクロロシラン、
四塩化ゲルマニウム、四塩化スズ、トリブチルスズクロ
リド、三塩化リン、三塩化アンチモン、トリチルヘキサ
クロロアンチモネート、五塩化アンチモン、三塩化ビス
マス、三臭化ホウ素、三臭化アルミニウム、四臭化炭
素、ブロモホルム、ブロモベンゼン、ヨードメタン、四
臭化ケイ素、ヘキサフルオロベンゼン、フッ化アルミニ
ウム等が挙げられる。
【0026】上記のハロゲン含有化合物の中、ハロゲン
原子の数が多いものが好ましく、また、反応溶媒に可溶
の化合物が好ましい。特に好ましいハロゲン含有化合物
の例としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロエ
タン、テトラクロロエタン、四塩化チタン、四塩化ゲル
マニウム、四塩化スズ等が挙げられる。なお、ハロゲン
含有化合物は、2種以上の混合物として使用することも
出来る。
【0027】本発明においては、クロム化合物(a)と
アルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない
態様でα−オレフインとクロム系触媒とを接触させるの
が好ましい。斯かる特定の接触態様により、選択的に三
量化反応を行わせ、原料エチレンから1−ヘキセンを高
収率で得ることが出来る。
【0028】上記の特定の接触態様は、具体的には、
(1)触媒成分(b)及び(c)を含む溶液中にα−オ
レフイン及び触媒成分(a)を導入する方法、(2)触
媒成分(a)及び(b)を含む溶液中にα−オレフイン
及び触媒成分(c)を導入する方法、(3)触媒成分
(a)を含む溶液中にα−オレフイン、触媒成分(b)
及び(c)を導入する方法、(4)触媒成分(c)を含
む溶液中にα−オレフイン、触媒成分(a)及び(b)
を導入する方法、(5)α−オレフイン及び各触媒成分
(a)〜(c)をそれぞれ同時かつ独立に反応系に導入
する方法などによって行うことが出来る。そして、上記
の各溶液は、通常、反応溶媒を使用して調製される。
【0029】また、ハロゲン含有化合物を使用する場合
の上記の特定の接触態様としては、具体的には、(1)
触媒成分(b)〜(d)を含む溶液中にα−オレフイン
及び触媒成分(a)を導入する方法、(2)触媒成分
(a)、(b)及び(d)を含む溶液中にα−オレフイ
ン及び触媒成分(c)を導入する方法、(3)触媒成分
(a)及び(d)を含む溶液中にα−オレフイン、触媒
成分(b)及び(c)を導入する方法、(4)触媒成分
(c)及び(d)を含む溶液中にα−オレフイン、触媒
成分(a)及び(b)を導入する方法、(5)触媒成分
(a)及び(b)を含む溶液中に、α−オレフイン、触
媒成分(c)及び(d)を導入する方法、(6)触媒成
分(b)及び(c)を含む溶液中にα−オレフイン、触
媒成分(a)及び(d)を導入する方法、(7)触媒成
分(c)を含む溶液中に、α−オレフイン、触媒成分
(a)、(b)及び(d)を導入する方法、(8)触媒
成分(a)を含む溶液中にα−オレフイン、触媒成分
(b)〜(d)を導入する方法、(9)α−オレフイン
及び各触媒成分(a)〜(d)をそれぞれ同時かつ独立
に反応系に導入する方法などによって行うことが出来
る。そして、上記の各溶液は、通常、反応溶媒を使用し
て調製される。
【0030】なお、本発明において、「クロム化合物と
アルキルアルミニウム化合物とが予め接触しない態様」
とは、反応の開始時のみならず、その後の追加的なα−
オレフイン及び触媒成分の反応器への供給においても斯
かる態様が維持されることを意味する。しかし、上記の
特定の態様は、触媒の調製の際に要求される好ましい態
様であり、触媒が調製された後は無関係である。従っ
て、反応系から回収された触媒は、上記の好ましい態様
に反することなくリサイクルすることが出来る。
【0031】クロム化合物とアルキルアルミニウム化合
物とが予め接触する態様でクロム系触媒を使用した場合
にα−オレフインの低重合反応の活性が低くなる理由
は、未だ詳らかではないが、次の様に推定される。
【0032】すなわち、クロム化合物とアルキルアルミ
ニウム化合物を接触させた場合、クロム化合物に配位し
ている配位子とアルキルアルミニウム化合物中のアルキ
ル基との間で配位子交換反応が進行すると考えられる。
そして、斯かる反応によって生成するアルキル−クロム
化合物は、通常の方法で得られるアルキル−クロム化合
物と異なり、それ自身不安定である。そのため、アルキ
ル−クロム化合物の分解還元反応が優先して進行し、そ
の結果、α−オレフインの低重合反応に不適当な脱メタ
ル化が惹起され、α−オレフインの低重合反応の活性が
低下する。
【0033】本発明において、原料α−オレフインとし
ては、炭素数が2〜30の置換または非置換のα−オレ
フインが使用される。具体的には、エチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メ
チル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げ
られる。特に、原料α−オレフインとしてエチレンが好
適であり、エチレンからその三量体である1−ヘキセン
を高収率かつ高選択率で得ることが出来る。
【0034】本発明において、反応溶媒としては、ブタ
ン、ペンタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタ
ン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、
メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタ
ン、デカリン等の炭素数1〜20の鎖状または脂環式の
飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチル
ベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素
などが使用される。これらは、単独で使用する他、混合
溶媒として使用することも出来る。
【0035】また、反応溶媒として、反応原料のα−オ
レフインそれ自体または主原料以外のα−オレフインを
使用することも出来る。反応溶媒用としては、炭素数が
4〜30のα−オレフインが使用されるが、常温で液状
のα−オレフインが特に好ましい。
【0036】特に、反応溶媒としては、炭素数が4〜1
0の鎖状飽和炭化水素または脂環式飽和炭化水素が好ま
しい。これらの溶媒を使用することにより、ポリマーの
副生を抑制することが出来、更に、脂環式炭化水素を使
用した場合は、高い触媒活性が得られると言う利点があ
る。
【0037】本発明において、クロム化合物の使用量
は、溶媒1リットル当たり、通常1.0×10-7〜0.
5mol、好ましくは1.0×10-6〜0.2mol、
更に好ましくは1.0×10-5〜0.05molの範囲
とされる。一方、アルキルアルミニウム化合物の使用量
は、クロム化合物1mol当たり、通常50mmol以
上であるが、触媒活性および三量体の選択率の観点か
ら、0.1mol以上とするのがよい。そして、上限
は、通常1.0×104molである。また、アミン、
アミド又はイミドの各使用量は、クロム化合物1mol
当たり、通常0.001mol以上であり、好ましくは
0.005〜1000mol、更に好ましくは0.01
〜100molの範囲とされる。また、ハロゲン含有化
合物の使用量は、アミン、アミド又はイミドの使用量と
同一の範囲とされる。
【0038】本発明においては、クロム化合物(a)、
アミン(b)、アルキルアルミニウム化合物(c)及び
ハロゲン含有化合物(d)のモル比(a):(b):
(c):(d)は1:0.1〜10:1〜100:0.
1〜20が好ましく、1:1〜5:5〜50:1〜10
が特に好ましい。斯かる特定条件の結合により、α−オ
レフイン低重合体として、例えば、ヘキセンを90%以
上(全生成量に対する割合)の収率で製造することが出
来、しかも、ヘキセン中の1−ヘキセンの含有量を99
%以上に高めることが出来る。
【0039】反応温度は、通常0〜250℃、好ましく
は0〜150℃、更に好ましくは20〜100℃であ
る。一方、反応圧力は、常圧ないし250kg/cm2
の範囲から選択し得るが、通常は、100kg/cm2
の圧力で十分である。そして、滞留時間は、通常1分か
ら20時間、好ましくは0.5〜6時間の範囲とされ
る。反応時に水素を共存させるならば、触媒活性および
三量体の選択率の向上が認められるので好ましい。ま
た、水素の共存により、副生するポリマーの性状が付着
性の少ない粉状となる効果も得られる。共存させる水素
の量は、水素分圧として、通常0.1〜100kg/c
2、好ましくは1.0〜80kg/cm2の範囲とされ
る。
【0040】本発明においては、反応器から抜き出した
反応液を脱ガス槽にて脱ガスさせ、反応液に溶解してい
た副生ポリマーを析出させる。この時反応液の温度は8
0℃未満に保持する必要がある。80℃以上だと副生ポ
リマーが反応液中に溶解するので好ましくない。本発明
においては、次いで反応液中の触媒成分を析出させる。
析出させる方法としては酸化性ガスで酸化処理する方
法、酸化剤で酸化処理する方法、還元剤で還元処理する
方法がある。
【0041】酸化性ガスで酸化処理する方法を用いる場
合、酸化性ガスとしては酸素、オゾン、二酸化塩素(C
lO2)、塩素、酸化窒素(N2O,NO,N23,N2
4)等が挙げられるが、経済性、安全性等の点から酸
素、又は酸素と不活性気体との混合物が好ましく、特に
空気が好ましい。酸化性ガスによる酸化処理方法として
は、例えば、(1)反応液を酸化性ガス雰囲気下に保持
する方法、(2)反応液中に酸化性ガスを導入する方
法、等が挙げられる。
【0042】上記(1)の酸化処理方法の場合は、反応
液を、例えば0.1〜100vol%、好ましくは0.
1〜20vol%濃度の酸化性ガス雰囲気下に、0〜1
00℃、好ましくは10〜80℃で0.02〜50時
間、好ましくは0.5〜24時間保持することにより行
えばよい。また、上記(2)の酸化処理方法の場合は、
反応液に、例えば0.01〜20vol%、好ましくは
0.1〜10vol%濃度の酸化性ガスを0〜100
℃、好ましくは10〜80℃で0.01〜50時間、好
ましくは0.01〜2時間バブリング等により導入する
ことにより行えばよい。
【0043】何れの方法においても、過酸化物ができる
だけ生成しないような条件を上記範囲から適宜選ぶこと
が大切である。また、過酸化物が生成しないように酸化
防止剤の共存下で反応液を酸化処理してもよい。酸化防
止剤としてはキノン類、芳香族アミン類、フェノール誘
導体、ホスホン酸エステル類、硫黄化合物、リン化合
物、硫黄ーリン化合物、セレン化ジアルキル、フェノチ
アジン等を使用すればよい。酸化性ガスを希釈する場合
は、窒素、アルゴン等の不活性ガスを使用して行えばよ
い。
【0044】酸化剤で酸化処理する方法を用いる場合、
酸化剤としては特に制限はなく、公知の種々のものが使
用できる。具体的には、硫黄、過酸化水素等の過酸化
物、イオン化傾向の極めて小さい重金属イオン(銀
(I)、銀(II)、鉛(IV)等)の種々の塩や様々な原
子価を持ちうる金属イオン(鉄(III)、コバルト(II
I)、クロム(VI)、マンガン(III)、セリウム(IV)
等)の種々の塩あるいはこれらの酸化物等が挙げられ
る。中でも、銀(I)塩、コバルト(III)塩、クロム
(VI)塩、マンガン(III)塩、セリウム(IV)塩およ
び硫黄が取扱いのし易さ、安全性の点から好ましい。
【0045】酸化剤による酸化処理方法は、窒素等の不
活性ガス雰囲気下、0〜100℃、好ましくは10〜8
0℃で0.1〜48時間、好ましくは0.25〜24時
間程度行うのがよい。かかる酸化処理により、反応液中
のクロム化合物が酸化され、それによって触媒の形態が
変化し、溶解度が低下するため沈殿となって分離するも
のと思われる。
【0046】還元剤で還元処理する方法を用いる場合、
還元剤としては特に制限はなく、公知の種々のものが使
用できる。具体的には、亜鉛、ナトリウム、カリウム、
マグネシウム等が挙げられる。中でも、亜鉛、マグネシ
ウムが経済性、取扱いのし易さ、安全性の点から好まし
い。
【0047】還元剤による還元処理方法は、窒素等の不
活性ガス雰囲気下、0〜100℃、好ましくは10〜8
0℃で0.1〜48時間、好ましくは0.25〜24時
間程度行うのがよい。そして、反応液を還元剤と接触さ
せることによりクロム化合物が沈殿物として除去でき
る。
【0048】本発明においては、酸化処理あるいは還元
処理により触媒成分が沈殿してくるので、触媒成分を反
応液中の副生ポリマーと同時に分離除去することが出来
る。沈殿した触媒成分や副生ポリマーの分離除去は公知
の固液分離装置を適宜使用し、副生ポリマーを溶融させ
ることなく行われる。固液分離装置としては、濾過器ま
たは遠心分離機を使用するのが好ましい。
【0049】本発明の特徴は、反応後の反応液から触媒
成分と副生ポリマーを析出させ、蒸留塔の汚染の原因と
なる触媒成分と副生ポリマーを蒸留分離工程の前に同時
に分離除去した後、反応液から各成分を蒸留分離する点
にある。副生ポリマーの分離除去と触媒の分離除去をそ
れぞれ別に行なうこともできるが、その場合は、工程が
複雑になり,建設コストが高くなる欠点がある。また触
媒成分と副生ポリマーを含有した反応液をそのまま蒸留
塔へ供給して触媒成分と副生ポリマーを濃縮分離するこ
ともできるが、その場合は触媒成分と副生ポリマーが蒸
留塔を汚染し安定な運転が出来なくなる恐れがある。こ
れに対し、本発明の場合、触媒成分と副生ポリマーを析
出させ、1つの固液分離装置で触媒成分と副生ポリマー
を同時に分離できるため、工程を非常に簡略化すること
ができ、蒸留塔を汚染することなく安定な運転が可能と
なる。
【0050】本発明において反応液中の析出した触媒成
分と副生ポリマーの分離除去は公知の固液分離装置を適
宜使用して行われる。固液分離装置としては濾過機また
は遠心分離機を使用するのが好ましい。本発明におい
て、触媒成分を分離除去した反応液は通常蒸留分離によ
って精製される。例えば、α−オレフインがエチレンの
場合、α−オレフイン低重合体として1−ヘキセンが得
られるが、この場合は、エチレンを分離する脱エチレン
塔、次いで、1−ヘキセンを分離する脱ヘキセン塔及び
溶媒を分離する脱溶媒塔により精製を行う。
【0051】脱エチレン塔は、通常、理論段数5〜3
0、塔内圧力を大気圧以上、好ましくは大気圧以上10
Kg/cm2G以下、還流比を0.1〜10、好ましく
は0.3〜5の範囲で運転される。脱ヘキセン塔は、通
常、理論段数5〜30、塔内圧力を5Kg/cm2G以
下、好ましくは大気圧以下、還流比を0.1〜10、好
ましくは1〜5の範囲で運転される。脱溶媒塔、例えば
脱ヘプタン塔は、通常、理論段数5〜30、塔内圧力を
大気圧以下、好ましくは500mHg以下、還流比を
0.1〜10、好ましくは1〜5の範囲で運転される。
【0052】本発明においては、特に、エチレンから高
純度の1−ヘキセンを工業的有利に製造することが出来
る。そして、公知の重合触媒を使用した重合反応によ
り、本発明の製造方法で得られた1−ヘキセンから有用
な樹脂であるL−LDPEを製造することが出来る。
【0053】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施
例に限定されるものではない。 実施例1 完全混合槽型反応器、脱ガス槽、曝気槽、デカンター、
エチレン蒸留塔、ヘキセン蒸留塔、ヘプタン蒸留塔から
成り、反応器と脱ガス槽との間には、脱ガスされたエチ
レンを反応器に循環する圧縮機を備えたプロセスに従っ
て、エチレンの連続低重合反応を行った。なお、完全混
合槽型反応器としては、2本の供給管を備えた2Lのオ
ートクレーブを使用し、デカンターとしては、「シャー
プレス.スーパーデカンター」(巴工業(株)製商品
名)を使用した。また、エチレン蒸留塔の段数は15
段、ヘキセン蒸留塔およびヘプタン蒸留塔の各段数は2
0段であった。
【0054】完全混合槽型反応器の一方の供給管からエ
チレンと共にクロム(III) −2−エチルヘキサノエート
のn−ヘプタン溶液と1,1,2,2−テトラクロロエ
タンのn−ヘプタン溶液とを連続的に供給し、他方の供
給管から2,5−ジメチルピロールのn−ヘプタン溶液
とトリエチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液とを連続
的に供給した。
【0055】反応器から連続的に抜き出された反応液
は、脱ガス槽に供給された。脱ガスされた反応液は、6
0℃であった。該反応液を曝気槽に供給し、空気をバブ
リングさせ触媒成分を酸化し析出させた後、デカンター
にて触媒成分と析出している副生ポリマーを除去した。
上澄み液は順次、エチレン蒸留塔、ヘキセン蒸留塔、ヘ
プタン蒸留塔にて処理された。一方、脱ガス槽にて脱ガ
スされたエチレンは、圧縮機にて昇圧されて反応器に循
環され、また、ヘプタン蒸留塔にて分離されたn−ヘプ
タンは、循環パイプを経て反応器に循環された。表−1
に上記のプロセスにおける各ユニットの運転条件を示
す。また、表−2に上記のプロセスにおけるマスバラン
スを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】上記のプロセスの運転により、触媒成分と
副生ポリマーの同時分離が、容易にしかも安定に行わ
れ、1ーヘキセンの含有量の高いヘキセンを得ることが
出来た。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、クロム系触媒を使用し
たα−オレフイン低重合体の製造方法であって、コンパ
クト化されたプロセスにより副生ポリマーと触媒成分を
効率的に分離し得る様に改良されたα−オレフイン低重
合体の工業的に有利な製造方法が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坪井 明男 岡山県倉敷市潮通三丁目10番地 三菱化 学株式会社水島事業所内 (56)参考文献 特開 平7−10780(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 2/06 - 2/36 C07C 11/107 - 11/113 C08F 4/69

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロム系触媒を使用したα−オレフイン
    低重合体の製造方法において、クロム系触媒として、少
    なくとも、クロム化合物(a)、アミン(b)、アルキ
    ルアルミニウム化合物(c)及び周期律表のIIIA,III
    B,IVA,IVB,VA,VB族の群から選ばれる元素を
    含み、反応溶媒に可溶なハロゲン含有化合物(d)の組
    み合わせから成る触媒系を使用し、溶媒中でα−オレフ
    インの低重合を行い、反応液から触媒成分と副生ポリマ
    ーを同時に分離除去した後、反応液からα−オレフイン
    低重合体を蒸留分離することを特徴とするα−オレフイ
    ン低重合体の製造方法。
  2. 【請求項2】 ハロゲン含有化合物のハロゲンが、塩素
    または臭素である請求項1に記載のα−オレフイン低重
    合体の製造方法。
  3. 【請求項3】 ハロゲン含有化合物が、四塩化炭素、ク
    ロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、四
    塩化チタン、四塩化ゲルマニウム、又は四塩化スズであ
    る請求項1に記載のα−オレフイン低重合体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 アミンが、ピロール及びピロール誘導体
    である請求項1〜3のいずれかに記載のα−オレフイン
    低重合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 アミンが、ピロール、2,5−ジメチル
    ピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジクロ
    ロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、
    2−アセチルピロールである請求項1〜3のいずれかに
    記載のα−オレフイン低重合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 触媒成分のモル比(a):(b):
    (c):(d)が1:0.1〜10:1〜100:0.
    1〜20である請求項1〜5の何れかに記載のα−オレ
    フイン低重合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 クロム化合物(a)とアルキルアルミニ
    ウム化合物(c)とが予め接触しない態様でα−オレフ
    インとクロム系触媒とを接触させてα−オレフインの低
    重合を行う請求項1〜6の何れかに記載のα−オレフイ
    ン低重合体の製造方法。
  8. 【請求項8】 α−オレフインがエチレンであり、α−
    オレフイン低重合体が主として1−ヘキセンであり、反
    応後、脱エチレンを行い、次いで、反応液から触媒成分
    と副生ポリマーを同時に分離除去した後、1ーヘキセン
    および溶媒を蒸留分離する請求項1〜7の何れかに記載
    のα−オレフイン低重合体の製造方法。
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