JP3881418B2 - α−オレフィン低重合体の製造方法 - Google Patents
α−オレフィン低重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はα−オレフィン低重合体の製造方法に関するものであり、詳しくは、特に、エチレンから1ーヘキセンを主体としたαーオレフィン低重合体を高収率かつ高選択率で製造することが出来る工業的有利なαーオレフィン低重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、エチレン等のαーオレフィンの低重合方法として、特定のクロム化合物と特定の有機アルミニウム化合物から成るクロム系触媒を使用する方法が知られている。例えば、特公昭43−18707号公報には、クロムを含むVIB族の遷移金属化合物とポリヒドロカルビルアルミニウムオキシドから成るクロム系触媒系により、エチレンから1−ヘキセンとポリエチレンを得る方法が記載されている。
【0003】
また、特開平3−128904号公報には、クロム−ピロリル結合を有するクロム含有化合物と金属アルキル又はルイス酸とを予め反応させて得られたクロム系触媒を使用してα−オレフィンを三量化する方法が記載されている。更に、南アフリカ特許ZA93/0350号明細書には、クロム塩、ピロール含有化合物、金属アルキル及びハライド源を共通の溶媒中で混合することにより得られたクロム系触媒を使用して、エチレンを三量化する方法が記載されている。
【0004】
一方、先に、本発明者らは、特開平6ー145241号公報において、クロム−ピロリル結合を持つクロム含有化合物およびアルキルアルミニウムの組合せから成るクロム系触媒を使用し、α−オレフィンと接触する前にはクロム含有化合物と金属アルキル化合物とが接触しない態様を採用したα−オレフィンの低重合反応を提案した。この方法に従えば、特に、エチレンの低重合反応により、1−ヘキセンを高活性で得ることが出来る。
【0005】
更に、本発明者らは、特開平6ー157655号公報において、炭化水素溶媒中、クロム塩とピロール含有化合物とを反応させて得られるクロム含有化合物を調製し、当該クロム含有化合物とアルキルアルミニウム化合物とを上記と同様の方法で接触させるα−オレフィンの低重合反応を提案した。この方法に従えば、特に、エチレンの三量化反応を高活性で行い、純度の高い1−ヘキセンを製造することが出来る。
【0006】
また、最近、本発明者らは、特開平8ー3216号公報において、クロム含有化合物、ピロール含有化合物、金属アルキル化合物およびハライド源から成るクロム系触媒を使用し、α−オレフィンと接触する前にはクロム含有化合物と金属アルキル化合物とが接触しない態様を採用したα−オレフィンの低重合反応を提案した。この方法に従えば、特に、エチレンの低重合反応により、1ーヘキセンをより高活性で得ることが出来る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭43−18707号公報に記載された方法では、1−ヘキセンと同時に生成するポリエチレンの量が多く、ポリエチレンの副生量を少なくした条件では、触媒活性が低下するという問題がある。また、特開平3−128904号公報に記載された方法では、高分子量重合体の生成量は少ないが、触媒活性が十分でないという問題がある。
【0008】
また、南アフリカ特許ZA93/0350号明細書に記載された方法では、1ーヘキセンの選択率は高いが、工業的なαーオレフィン低重合体の製造方法という観点からは、触媒活性が未だ不十分である。更に、特開平6ー145241号公報および特開平6ー157655号公報に記載された方法でも、工業的なαーオレフィン低重合体の製造方法という観点からは、触媒性能が未だ不十分である。一方、特開平8ー3216号公報に記載された方法では、工業的なαーオレフィン低重合体の製造方法という観点からは、十分に高い活性が達成されているが、1ーヘキセンの選択率が不十分である欠点を有する。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、1ーヘキセン等のαーオレフィン低重合体を極めて高収率かつ高選択率で製造することが出来る工業的有利なαーオレフィン低重合体の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の方法で調製した特定のクロム系触媒を使用するならば、αーオレフィンの低重合反応、特に、エチレンの三量化を主体とする低重合反応が高活性に進行して高純度の1ーヘキセンが生成するとの知見を得た。
【0011】
本発明は、上記の知見を基に完成されたものであり、その要旨は、少なくとも、クロム化合物、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物(但し、クロムを含むハロゲン含有化合物を除く)から成るクロム系触媒を使用したαーオレフィン低重合体の製造方法において、αーオレフィンの不存在下、炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素溶媒中、クロム化合物、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物を、混合液中のクロム化合物の濃度が8×10-3mol/リットル以下となる様に反応させて調製されたクロム系触媒を使用することを特徴とするα−オレフィン低重合体の製造方法に存する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明においては、少なくとも、クロム化合物、ピロール含有化合物、ハロゲン含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物から成るクロム系触媒を使用する。
【0013】
本発明において、クロム系触媒の調製に使用するクロム化合物は、下記一般式(2)で表される。
【0014】
【化2】
CrXn ・・・(2)
【0015】
上記の式中、クロムの価数は0価ないし6価であり、Xは同一または相互に異なる任意の有機基または無機基もしくは陰性原子を表し、nは1〜6の整数を表す。nの数としては2以上が好ましい。
【0016】
有機基としては、炭素数が通常1〜30の各種の基が挙げられる。具体的には、炭化水素基、カルボニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、β−ジケトナート基、β−ケトカルボキシル基、β−ケトエステル基およびアミド基などが例示される。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、シクロペンタジエニル基などが挙げられる。無機基としては、硝酸基、硫酸基などのクロム塩形成基が挙げられ、陰性原子としては酸素、ハロゲン等が挙げられる。
【0017】
また、上記のクロム化合物と電子供与体から成る錯体も好適に使用することが出来る。電子供与体としては、窒素、酸素、リン又は硫黄を含有する化合物の中から選択される。
【0018】
窒素含有化合物としては、ニトリル、アミン、アミド等が挙げられ、具体的には、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルピリジン、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アニリン、ニトロベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ヘキサメチルジシラザン、ピロリドン等が挙げられる。
【0019】
酸素含有化合物としては、エステル、エーテル、ケトン、アルコール、アルデヒド等が挙げられ、具体的には、エチルアセテート、メチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、アセトアルデヒド等が挙げられる。
【0020】
リン含有化合物としては、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホラストリアミド、トリエチルホスファイト、トリブチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィン等が挙げられる。一方、硫黄含有化合物としては、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、チオフェン、ジメチルスルフィド等が挙げられる。
【0021】
従って、クロム化合物と電子供与体から成る錯体の例としては、ハロゲン化クロムのエーテル錯体、エステル錯体、ケトン錯体、アルデヒド錯体、アルコール錯体、アミン錯体、ニトリル錯体、ホスフィン錯体、チオエーテル錯体などが挙げられる。
【0022】
クロム化合物としては、後述する炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒に可溶な化合物が好ましく、斯かる化合物としては、クロムのβ−ジケトナート塩、カルボン酸塩、β−ケトエステルのアニオンとの塩、β−ケトカルボン酸塩、アミド錯体、カルボニル錯体、カルベン錯体、各種のシクロペンタジエニル錯体、アルキル錯体、フェニル錯体などが挙げられる。
【0023】
上記のクロム化合物としては、具体的には、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)トリフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、Cr(PhCOCHCOPh)3 (但し、Phはフェニル基を示す。)、クロム(II)アセテート、クロム(III)アセテート、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート、クロム(III)ベンゾエート、クロム(III)ナフテネート、Cr(CH3 COCHCOOCH3 )3 、クロム(II)ビス(トリメチルシリル)アミド、Cr(CO)6 、(C6 H6 )Cr(CO)3 、(CO)5 Cr(=CCH3 (OCH3 ))、(CO)5 Cr(=CC6 H5 (OCH3 ))、CpCrCl2 (但しCpはシクロペンタジエニル基を示す。)、(Cp*CrClCH3 )2 (但しCp*はペンタメチルシクロペンタジエニル基を示す。)、(CH3 )2 CrCl等が例示される。これらの中で、特に好ましいクロム化合物は、β−ジケトナート塩、β−ケトエステルのアニオンとの塩、カルボン酸塩、β−ケトカルボン酸塩などである。なお、本発明において、クロム化合物は、クロム原子が含まれていればよく、他の金属を含んでいてもよい。
【0024】
本発明において、クロム系触媒の調製に使用するピロール含有化合物は、ピロール若しくは置換ピロール又はこれらに対応する金属塩すなわち金属ピロリドである。
【0025】
置換ピロールとしては、2,5−ジメチルピロールの他に、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−ホルミルピロール、2−アセチルピロール、2,3,4−トリメチルピロール、3,4−ジエチルピロール、テトラヒドロインドール、3,3′,4,4′−テトラメチル−2,2′−ジピロロメタン等が挙げられる。
【0026】
金属ピロリドの金属としては、1族、2族、1 3族及び14族から選択された金属が使用される。好ましい金属ピロリドとしては、リチウムピロリド、ナトリウムピロリド、カリウムピロリド、セシウムピロリド、マグネシウムジピロリド、ジエチルアルミニウムピロリド、エチルアルミニウムジピロリド、アルミニウムトリピロリド、リチウム−2,5−ジメチルピロリド、ナトリウム−2,5−ジメチルピロリド、カリウム−2,5−ジメチルピロリド、セシウム−2,5−ジメチルピロリド、ジエチルアルミニウム−2,5−ジメチルピロリド、エチルアルミニウム−ビス(2,5−ジメチルピロリド)、トリクロロゲルマニウムピロリド等が挙げられる。
【0027】
更に、リチウム−3,4−ジクロロピロリド、ナトリウム2,3,4,5−テトラクロロピロリド、リチウム−2,3,4−トリメチルピロリド、ジエチルアルミニウム−2,3,4−トリメチルピロリド、ナトリウム−3,4−ジエチルピロリド、ジエチルアルミニウム−3,4−ジエチルピロリド等が挙げられる。
【0028】
本発明において、クロム系触媒の調製に使用する好適なアルキルアルミニウム化合物としては、下記一般式(3)で示されるアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
【0029】
【化3】
R1 m Al(OR2 )n Hp Xq ・・・(3)
【0030】
上記の式中、R1 及びR2 は、炭素数が通常1〜15、好ましくは1〜8の炭化水素基であって互いに同一であっても異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を表し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3のそれぞれの数であって、しかも、m+n+p+q=3である数を表す。
【0031】
上記のアルキルアルミニウム化合物としては、例えば、一般式(4)で示されるトリアルキルアルミニウム化合物、一般式(5)で示されるハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、一般式(6)で示されるアルコキシアルキルアルミニウム化合物、一般式(7)で示される水素化アルキルアルミニウム化合物、一般式(8)で示されるアルミノキサン等が挙げられる。なお、各式中のR1 、XおよびR2 の意義は前記と同じである。
【0032】
【化4】
R1 3Al ・・・(4)
R1 m AlX3-m (1.5≦m<3) ・・・(5)
R1 m Al(OR2 )3-m ・・・(6)
(0<m<3、好ましくは1.5≦m<3)
R1 m AlH3-m ・・・(7)
(0<m<3、好ましくは1.5≦m<3)
R1 2(AlO)(R1 AlO)m AlR1 2 ・・・(8)
(0≦m≦30、好ましくは1≦m)
【0033】
上記のアルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムヒドリド、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0034】
上記のアルキルアルミニウム化合物は2種以上の混合物として使用することも出来る。また、ポリマーの副生が少ないと言う観点から、トリアルキルアルミニウム化合物、特にトリエチルアルミニウムが好適に使用される。更に、トリアルキルアルミニウム化合物とハロゲン化アルキルアルミニウム化合物(アルキルアルミニウムモノクロライドやアルキルアルミニウムジクロライド等)との混合物も好適に使用される。
【0035】
本発明において、クロム系触媒の調製に使用するハロゲン含有化合物としては、ハロゲン原子が含まれる化合物であればよい。その中でも、周期表の3、4、6(Crを除く)、13、14及び15族の群から選ばれる元素を含むハロゲン含有化合物が好ましい。ハロゲンとしては、塩素、臭素が好ましいが、特に塩素が好ましい。そして、クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物を添加する触媒調製法では、ピロール含有化合物の反応性が高い理由から無機ハロゲン含有化合物が好適に使用される。
【0036】
ハロゲン含有化合物の具体例としては、塩化スカンジウム、塩化イットリウム、塩化ランタン、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、塩化ガリウム、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、アリルクロリド、トリクロロアセトン、ヘキサクロロアセトン、ヘキサクロロシクロヘキサン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、トリチルクロリド、四塩化シラン、トリメチルクロロシラン、四塩化ゲルマニウム、四塩化スズ、トリブチルスズクロリド、ジブチルスズジクロリド、三塩化リン、三塩化アンチモン、トリチルヘキサクロロアンチモネート、五塩化アンチモン、三塩化ビスマス、三臭化ホウ素、三臭化アルミニウム、四臭化炭素、ブロモホルム、ブロモベンゼン、四臭化ケイ素、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヘキサフルオロベンゼン、フッ化アルミニウム、五塩化モリブデン、六塩化タングステン等が挙げられる。
【0037】
上記のハロゲン含有化合物の中では、ハロゲン原子の数が多いものが好ましく、更に、後述する炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒に可溶な化合物が好ましい。斯かるハロゲン含有化合物としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロアセトン、ヘキサクロロアセトン、四塩化チタン、四塩化ゲルマニウム、四塩化スズ等が挙げられる。ハロゲン含有化合物は、2種以上の混合物として使用することも出来る。
【0038】
本発明において、クロム系触媒を調製する際の反応媒体である炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒としては、通常、炭素数が30以下の炭化水素またはハロゲン化炭化水素が使用される。斯かる溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族および脂環式飽和炭化水素、2−ヘキセン、シクロヘキセン、シクロオクテン等の脂肪族および脂環式不飽和炭化水素、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0039】
上記の溶媒の中では、脂肪族および脂環式飽和炭化水素、芳香族炭化水素およびこれらの混合物が好ましく、具体的には、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0040】
本発明の最大の特徴はクロム系触媒の調製法に存し、本発明においては、αーオレフィンの不存在下、炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素溶媒中、クロム化合物、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物を、混合液中のクロム化合物の濃度が8×10-3mol/リットル以下となる様に反応させてクロム系触媒を調製する。
【0041】
上記の触媒調製法を採用することにより、触媒活性が向上し、且つ、三量体物の選択率が非常に高く、また、得られるα−オレフィン低重合体の純度も極めて高いという利点がある。α−オレフィンの存在下にクロム系触媒を調製した場合は、α−オレフィンの低重合反応の選択性が低くなる。斯かる触媒調製法で得られたクロム系触媒を使用した場合にαーオレフィンの低重合活性が高くなる理由は、未だ詳らかではないが、クロム1原子換算のクロム化合物の濃度として8×10-3mol/リットル以下とすることにより、有効な触媒活性種が効率よく形成されて維持されるためと推察される。
【0042】
触媒調製時におけるクロム化合物の濃度は、具体的には、溶媒1リットル中のクロム原子として、通常1×10-7〜8×10-3mol、好ましくは1×10-5〜8×10-3 molの範囲である。
【0043】
そして、ピロール含有化合物の濃度は、クロム原子1モル当たり、通常0.001mol以上、好ましくは0.005〜1000mol、更に好ましくは0.01〜100molである。
【0044】
アルキルアルミニウム化合物の濃度は、クロム原子1モル当たり、通常50mmol以上であるが、触媒活性および三量体の選択率を一層向上させる観点から、0.1mol以上が好ましいが、経済性の観点から、その上限は104 mol以下とされる。
【0045】
ハロゲン含有化合物の濃度は、クロム原子1モル当たり、通常1mmol以上、好ましくは50mmol以上である。ハロゲン含有化合物の使用量の上限は特に制限されず、例えば、ハロゲン化炭化水素溶媒中にクロム化合物、ピロール含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物を添加して触媒調製を行なうことが出来る。
【0046】
本発明において、触媒調製は、酸素分子および/または水の不存在下で行うのが好ましい。触媒調製時の温度は、任意に選択することが出来るが、0〜150℃の範囲が好ましい。調製時間(混合時間)は、特に限定されないが、通常は0.1分から48時間、好ましくは5分から3時間の範囲である。
【0047】
ところで、クロム化合物、ピロール又は置換ピロール及びハロゲン含有化合物(特に無機ハロゲン含有化合物)を接触させて得た反応液にアルキルアルミニウム化合物を添加してクロム系触媒を調製する場合は、アルキルアルミニウム化合物を添加する前にピロール含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物を後述する特徴的な赤外吸収を示す沈澱物として生成させるのが好ましい。この場合、クロム化合物は、上記の様に反応系に初めから共存していてもよく、沈殿物の生成後、アルキルアルミニウム化合物の添加前に添加してもよい。
【0048】
上記の沈澱物を生成させるのに必要な時間は、反応温度、各成分の濃度に依るが、前述した反応温度および各成分濃度を維持する場合、通常数分程度である。従って、クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物を添加する場合のトータルの反応時間は3分間以上、好ましくは7分間以上である。特に、ハロゲン含有化合物として、無機ハロゲン含有化合物を使用する方法は、室温程度でピロール含有化合物とハロゲン含有化合物の反応が速やかに進行するため経済性の点で好ましい。
【0049】
クロム系触媒の調製法は、溶媒中に各触媒成分を添加する順序に従って各種の調製法がある。その一例は次の通りである。
【0050】
(1)クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液に、アルキルアルミニウム化合物を添加する方法。
(2)ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にクロム化合物を添加する方法。
(3)クロム化合物とピロール含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物とハロゲン含有化合物の混合液を添加する方法。
【0051】
上記の調製法において、何れを何れに添加するかは任意である。例えば、上記の調製法(3)においては、アルキルアルミニウム化合物とハロゲン含有化合物の混合液にクロム化合物とピロール含有化合物の混合液を添加してもよい。
【0052】
上記の調製法(1)において、ハロゲン含有化合物として無機ハロゲン含有化合物を使用する場合は、前述の通り、クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物を添加する前にピロール含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物を沈澱物として生成させることが重要である。
【0053】
上記の沈殿物の主成分は、下記一般式(1)で表される新規なピロール誘導体である。
【0054】
【化5】
【0055】
一般式(1)中、R1 〜R4 は、水素原子または炭素数が1〜20の直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基を表し、R3 とR4 とは一体となって環を形成していてもよい。Xはハロゲン原子、Mは、周期表の3、4、6(Crを除く)、13、14及び15族の群から選ばれた元素を表す。m及びnは、1≦m≦6、0≦n≦5、2≦m+n≦6を満足する数であって、m+nの値はMの価数と一致する。n個のRは、それぞれ、水素原子または炭素数が1〜20の直鎖状もしくは分岐状の炭化水素を表し、nが2以上の場合、Rは互いに同一または異なっていてもよい。
【0056】
上記の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、上記のハロゲン原子としては、F、Cl、Br等が挙げられ、上記の元素としては、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Mo、W、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb等が挙げられる。
【0057】
図1は、実施例3で得られた本発明のピロール誘導体のIRスペクトル図であるが、上記のピロール誘導体は、図1に示す様に、水素結合したNH伸縮振動に帰属する幅広い特徴的な吸収を3100〜3300cm-1に有することによって特徴付けられる。
【0058】
アルキルアルミニウム化合物を添加する前にピロール含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物を沈澱物として生成させる方法で調製されるクロム系触媒は、αーオレフィンの低重合活性が高い。その理由は、未だ詳らかではないが、次の様に推察される。
【0059】
すなわち、ピロール含有化合物とハロゲン含有化合物を十分に反応させると、αーオレフィンの三量体を高選択的に与える高活性な触媒活性種生成に必須の基質が生成する。クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物を添加する場合には、予めこの反応を十分行わないと、クロム化合物とアルキルアルミニウムが接触する際、クロム化合物と、未反応のピロール含有化合物およびアルキルアルミニウム化合物の反応が同時に起こるため、極めて不安定なアルキルークロム化合物が生成する。
【0060】
そして、上記の反応によって生成するアルキルークロム化合物においては、特開平6ー145241号公報に記載した様に、αーオレフィン不存在下、更に、分解還元反応が進行し、その結果、αーオレフィンの低重合反応に不適当な脱メタル化が惹起される。従って、クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物を添加する場合は、効率的に触媒活性種を生成させるため、アルキルアルミニウム化合物を添加する前にピロール含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物を沈澱物として生成させることが必要である。
【0061】
上記の調製法の中で最も好ましい調製は、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にクロム化合物を添加する方法(2)である。この調製法によれば次の様な利点がある。すなわち、(1)αーオレフィンの低重合活性の高いクロム系触媒が得られ、(2)ピロール含有化合物とハロゲン含有化合物の反応がハロゲン含有化合物の種類によらずにアルキルアルミニウム化合物の共存により促進され、(3)溶解度のより高い生成物が生成する。
【0062】
本発明においては、触媒調製反応終了後、反応混合物から溶媒を留去することにより、クロム系触媒を単離することが出来る。反応溶媒の留去には、その沸点より高温または常温下に減圧で保持したり、不活性ガスを流通させる方法などの公知の方法を採用することが出来る。しかしながら、溶媒からクロム系触媒を単離することなく、得られた触媒溶液ないしは懸濁液をそのままクロム系触媒として使用してもよい。
【0063】
また、クロム系触媒を無機酸化物などの担体に担持して使用することも出来るが、担体に担持させずに使用するのが好ましい。すなわち、本発明において、クロム系触媒の担体への担持を行わなくとも高い触媒活性が得られる。そして、クロム系触媒を担体に担持させずに使用することにより、複雑な操作を伴う担体への担持を省略でき、しかも、担体の使用による総触媒使用量(担体と触媒成分の合計量)の増大という問題をも回避することが出来る。
【0064】
なお、本発明においては、予め調製したクロム系触媒を重合反応帯域に供給する以外に、重合反応帯域内でクロム系触媒を調製することも出来る。すなわち、反応帯域において、予め、炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素溶媒中、クロム化合物、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物を、混合液中のクロム化合物の濃度が8×10-3mol/リットル以下となる様に反応させる方法を採用して触媒調製を行った後、その場で低重合反応を行なわせることが出来る。
【0065】
本発明において、原料α−オレフィンとしては、炭素数が2〜30の置換または非置換のα−オレフィンが使用される。具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、3−メチルブテン−1,4−メチルペンテン−1等が挙げられる。特に、原料原料α−オレフィンとしてエチレンが好適であり、エチレンからその三量体である1−ヘキセンを高収率かつ高選択率で得ることが出来る。
【0066】
上記の様に調製されたクロム系触媒は、通常、低重合反応の溶媒に溶解して使用される。低重合反応の溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の炭素数1〜20の鎖状または脂環式の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の鎖状ハロゲン化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等が使用される。これらは、単独で使用する他、混合溶媒として使用することも出来る。
【0067】
また、予め調製したクロム系触媒を使用する場合は、低重合反応の溶媒として、反応原料のαーオレフィンそれ自体または主原料以外のαーオレフィンを使用することも出来る。溶媒用としては、炭素数が4〜30のαーオレフィンが使用されるが、常温で液状のαーオレフィンが特に好ましい。
【0068】
上記の溶媒の中では、特に、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭素数が4〜7の鎖状飽和炭化水素または脂環式飽和炭化水素が好ましい。これらの溶媒を使用した場合は、高い触媒活性が得られるという利点がある。
【0069】
本発明におけるαーオレフィン低重合反応時のクロム系触媒の使用量は、溶媒1リットル中のクロム原子として、通常1×10-7〜0.5mol、好ましくは1×10-6〜0.2mol、更に好ましくは1×10-5〜0.05molの範囲とされる。
【0070】
低重合反応の反応温度は、通常0〜250℃、好ましくは0〜200℃、更に好ましくは20〜150℃の範囲とされる。一方、反応圧力は、常圧ないし250kg/cm2 の範囲から選択し得るが、通常は、100kg/cm2 の圧力で十分である。反応時間は、通常1分から20時間、好ましくは0.5〜6時間の範囲とされる。反応形式は、回分式、半回分式または連続式の何れであってもよい。
【0071】
なお、反応系に水素を共存させるならば、副生するポリマーの性状が改善されるので好ましい。共存させる水素の量は、水素分圧として、通常0.1〜100kg/cm2 、好ましくは1.0〜80kg/cm2 の範囲とされる。
【0072】
反応液中の副生ポリマーの分離除去は、公知の固液分離装置を適宜使用して行われ、回収されたα−オレフィン低重合体は、必要に応じて精製される。精製には、通常、蒸留精製が採用され、目的とする成分を高純度で回収することが出来る。本発明においては、特に、エチレンから高純度の1−ヘキセンを工業的有利に製造することが出来る。
【0073】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
触媒製造例1
窒素雰囲気下、室温でクロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)のトルエン溶液(22ml)に2,5ージメチルピロール(59.29mg,0.623mmol)、四塩化スズ(108.2mg,0.415mmol)を順次に加え、室温で1時間反応させて黄色沈澱物の懸濁液を得た。得られた懸濁液にトリエチルアルミニウム(449.27mg,3.12mmol)のトルエン溶液(3.1ml)を徐々に滴下した。反応液中のクロム濃度は8mmol/lであった。15分間反応後、トルエンを減圧下室温で留去した。得られた濃褐色オイルをシクロヘキサンで希釈し、触媒液(10.5ml)とした。
【0075】
触媒製造例2
触媒製造例1において、クロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)のトルエン溶液(22ml)の代わりに、クロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)のトルエン溶液(4ml)を使用した以外は、触媒製造例1と同様に操作して触媒液を得た。なお、反応液中のクロム濃度は29mmol/lであった。
【0076】
触媒製造例3
触媒製造例1において、クロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)のトルエン溶液(22ml)の代わりに、クロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)のトルエン溶液(12ml)を使用した以外は、触媒製造例1と同様に操作して触媒液を得た。なお、反応液中のクロム濃度は13mmol/lであった。
【0077】
触媒製造例4
窒素雰囲気下、室温でクロム(III)2ーエチルヘキサノエート(200mg,0.408mmol)のトルエン溶液(9ml)に2,5ージメチルピロール(118.57mg,1.246mmol)、四塩化スズ(215.9mg,0.829mmol)を順次に加え、沈澱物が生成する前に直ちにトリエチルアルミニウム(898.54mg,6.24mmol)のトルエン溶液(6.2ml)を徐々に滴下した。反応液中のクロム濃度は27mmol/lであった。15分間反応後、トルエンを減圧下室温で留去した。得られた濃褐色オイルをシクロヘキサンで希釈し、触媒液(20ml)とした。
【0078】
触媒製造例5
窒素雰囲気下、室温で2,5ージメチルピロール(59.29mg,0.623mmol)のトルエン溶液(2ml)に四塩化スズ(108.2mg,0.415mmol)を加え、黄色沈澱物の懸濁液を得た。15分間撹拌後、上記の懸濁液にトリエチルアルミニウム(357.9mg,3.12mmol)のトルエン溶液(3.1ml)を加えて15分間反応させた。得られた溶液にクロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)のトルエン溶液(2ml)を加えた。反応液中のクロム濃度は29mmol/lであった。更に15分間反応後、トルエンを減圧下室温で留去した。得られた褐色オイルをシクロヘキサン(10ml)で希釈し、触媒液(10.5ml)とした。
【0079】
触媒製造例6
窒素雰囲気下、室温でクロム(III)2ーエチルヘキサノエート(100mg,0.204mmol)及び2,5ージメチルピロール(59.29mg,0.623mmol)のトルエン混合溶液(2ml)にエチルアルミニウムジクロリド(107.91mg,0.85mmol)及びトリエチルアルミニウム(449.27mg,3.12mmol)のトルエン混合溶液(3.95ml)を徐々に滴下した。反応液中のクロム濃度は34.3mmol/lであった。15分間反応後、トルエンを減圧下室温で留去した。得られた濃褐色オイルをシクロヘキサンで希釈し、触媒液(11ml)とした。
【0080】
実施例1
150℃の乾燥器中で乾燥した300mlのオートクレーブを熱時に組み立てた後、真空窒素置換した。窒素雰囲気下、室温でシクロヘキサン(125ml)、触媒製造例1で得られた触媒液(0.68ml)をオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブを80℃に加熱し、全圧が38kg/cm2 となる迄オートクレーブにエチレンを導入した。その後、全圧を38kg/cm2 に、反応温度を80℃に維持した。30分後、オートクレーブ中にエタノールを圧入して反応を停止した。
【0081】
ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表1に示す。全生成物量は17.67g、触媒活性(g−α−オレフィン/1g−Cr・Hr)は51295であった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.7%であった。
【0082】
実施例2
実施例1と同様に調整したオートクレーブにシクロヘキサン(120ml)、2,5ージメチルピロール(7.41mg、0.078mmol)のヘプタン溶液、四塩化ゲルマニウム(11.13mg、0.052mmol)のヘプタン溶液、トリエチルアルミニウム(44.7mg、0.39mmol)のヘプタン溶液、クロム(III)2ーエチルヘキサノエート(12.5mg、0.025mmol)のヘプタン溶液をこの順で仕込んだ。オートクレーブを80℃に加熱し、全圧が38kg/cm2 となる迄オートクレーブにエチレンを導入した。反応液のクロム濃度は0.2mmol/lであった。その後、反応中のエチレン圧を35kg/cm2 に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。
【0083】
ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表1に示す。全生成物量は62.31g、触媒活性は94047であった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.2%であった。
【0084】
比較例1
実施例1において、触媒製造例1で得られた触媒液の代わりに、触媒製造例2で得られた触媒液(0.68ml)をオートクレーブに仕込んだ以外は、実施例1と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表1に示す。全生成物量は7.54g、触媒活性は21895であった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.9%であった。
【0085】
比較例2
実施例1において、触媒製造例1で得られた触媒液の代わりに、触媒製造例3で得られた触媒液(0.68ml)をオートクレーブに仕込んだ以外は、実施例1と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表2に示す。全生成物量は13.90g、触媒活性は40360であった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.6%であった。
【0086】
比較例3
実施例1において、触媒製造例1で得られた触媒液の代わりに、触媒製造例4で得られた触媒液(1ml)をオートクレーブに仕込んだ以外は、実施例1と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表2に示す。全生成物量は1.24g、触媒活性は2342であった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.6%であった。
【0087】
比較例4
実施例1において、触媒製造例1で得られた触媒液の代わりに、触媒製造例5で得られた触媒液(0.47ml)及びシクロヘキサン(100ml)をオートクレーブに仕込んだ以外は、実施例1と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表2に示す。全生成物量は11.33g、触媒活性は47518であった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.9%であった。
【0088】
比較例5
実施例1において、触媒製造例1で得られた触媒液の代わりに、触媒製造例6で得られた触媒液(0.5ml)及びシクロヘキサン(100ml)をオートクレーブに仕込んだ以外は、実施例1と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフによる生成物の組成分析結果などを表2に示す。全生成物量は8.77g、触媒活性は36762gであった。また、1−ヘキセンが主生成物であり、得られたヘキセン類に対する1−ヘキセンの純度は99.7%であった。
【0089】
実施例3(ピロール誘導体の合成)
窒素雰囲気下、室温でn−ヘプタン(5ml)中において、2,5ージメチルピロール(59.29mg,0.623mmol)と四塩化スズ(108.2mg,0.415mmol)を15分間反応させて黄色沈殿物の懸濁液を得た。濾過後、上記の黄色沈殿物を乾燥した。収量は131mgであった。黄色沈殿物は、構造分析の結果、下記構造式で表されるピロール誘導体であった。そして、そのIRスペクトルは、水素結合したNH伸縮振動に帰属する幅広い特徴的な吸収を3100〜3300cm-1に有していた。
【0090】
【化6】
【0091】
なお、触媒製造例1において、クロム(III)2ーエチルヘキサノエートのトルエン溶液に2,5ージメチルピロール、四塩化スズを順次に加え、室温で1時間反応させて得た黄色沈澱物も上記のピロール誘導体と同一のIRスペクトルを有することを確認した。
【0092】
以下の表中、Cr系触媒調製条件において符合A及びBで示された成分接触方法は次の通りである。
A:クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物を添加する方法。
B:ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物の混合液にクロム化合物を添加する方法。
C:クロム化合物およびピロール含有化合物の混合液にアルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物の混合液を添加する方法。
【0093】
また、以下の表1中、低重合反応の溶媒種類「CHX」はシクロヘキサン、「HPT」はn−ヘプタンを表し、触媒効率の単位は、g−α−オレフィン/1g−Cr化合物、触媒活性の単位は、g−α−オレフィン/1g−Cr・Hrである。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、1ーヘキセン等のαーオレフィン低重合体を極めて高収率かつ高選択率で製造することが出来る。よって、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で得られた本発明のピロール誘導体のIRスペクトル図
Claims (9)
- 少なくとも、クロム化合物、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物(但し、クロムを含むハロゲン含有化合物を除く)から成るクロム系触媒を使用したαーオレフィン低重合体の製造方法において、αーオレフィンの不存在下、炭化水素および/またはハロゲン化炭化水素溶媒中、クロム化合物、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物を、混合液中のクロム化合物の濃度が8×10-3mol/リットル以下となる様に反応させて調製されたクロム系触媒を使用することを特徴とするα−オレフィン低重合体の製造方法。
- クロム系触媒の調製が、溶媒中、先ず、クロム化合物、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物を接触させてピロール含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物を沈澱物として生成させ、次いで、アルキルアルミニウム化合物を添加して行われる請求項1記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- クロム系触媒の調製が、溶媒中、先ず、ピロール含有化合物およびハロゲン含有化合物を接触させてピロール含有化合物とハロゲン含有化合物との反応生成物を沈澱物として生成させ、次いで、クロム化合物とアルキルアルミニウム化合物を順次に添加して行われる請求項1記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 沈殿物の主成分が、下記一般式(1)で表されるピロール誘導体である請求項2又は3に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- クロム系触媒の調製が、ピロール含有化合物、アルキルアルミニウム化合物およびハロゲン含有化合物を接触させて得た反応液にクロム化合物を添加して行われる請求項1記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- クロム系触媒の調製が、クロム化合物とピロール含有化合物との混合液にアルキルアルミニウム化合物とハロゲン含有化合物との混合液を添加して行われる請求項1記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- クロム化合物が、β−ジケトン、β−ケトカルボン酸または他のカルボン酸とクロムとの塩である請求項1〜6の何れかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- ハロゲン含有化合物が、周期表の3、4、6(Crを除く)、13、14及び15 族の群から選ばれた元素を含む塩素含有化合物である請求項1〜7の何れかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- α−オレフィンがエチレンであり、主生成物が1−ヘキセンである請求項1〜8の何れかに記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
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