JP3381819B2 - テトラキスフェノールエタンの製造方法 - Google Patents

テトラキスフェノールエタンの製造方法

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  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はテトラキスフェノー
ルエタンの製造方法の改良に関するものである。さらに
詳しくいえば、本発明は、フェノール類とグリオキザー
ルとから、高純度のテトラキスフェノールエタンを高い
収率で効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、テトラキスフェノールエタンは、
例えば耐熱性エポキシ樹脂製造用原料、エポキシ樹脂用
硬化剤、フォトレジスト関連の感光剤用バラスト剤やク
レゾールノボラック樹脂改質剤、酸化防止剤などの分野
で利用されている。また、このものは包接及び再放出機
能を有することから包接体のホスト化合物としても注目
されている(特開平5−4978号公報)。特に、フォ
トレジスト関連用途及び包接体用途では、低分子化合物
や高次縮合物の含有量が極めて少ない高純度のテトラキ
スフェノールエタンが要求される。
【0003】そこで、このような要求にこたえるため
に、すでに、フェノール類とグリオキザールとの反応生
成物を、低分子化合物及び高次縮合物には良溶媒的に作
用するが、テトラキスフェノールエタンには貧溶媒的に
作用する晶析用有機溶剤で処理することにより、高純度
のテトラキスフェノールエタンを製造する方法が提案さ
れている(特開平7−173089号公報)。しかしな
がら、この方法は、高純度のテトラキスフェノールエタ
ンを得るには有効な方法であるが、その収率の点では必
ずしも十分に満足しうるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、フェノール類とグリオキザールとから、
高純度のテトラキスフェノールエタンを高い収率で効率
よく製造する方法を提供することを目的としてなされた
ものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、フェノー
ル類とグリオキザールとを反応させてテトラキスフェノ
ールエタンを製造する場合に、収率を向上させることに
ついて鋭意研究を重ねた結果、特定量のアセトンの共存
下に、特定の温度において、フェノール類とグリオキザ
ールとを酸触媒反応させることにより、その目的を達成
しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成
するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、酸触媒の存在下、フ
ェノール類とグリオキザールとを反応させてテトラキス
フェノールエタンを製造するに当り、フェノール類に対
して5重量%以上のアセトンを共存させ、かつ60℃以
下の温度で反応を行うことを特徴とするテトラキスフェ
ノールエタンの製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明方法において、原料として
用いられるフェノール類としてはこれまでのテトラキス
フェノールエタンの製造に際し、原料として使用されて
いたものの中から任意に選択使用できる。このようなも
のとしては、例えばフェノール、各種クレゾール及び各
種キシレノールなどを挙げることができる。一方、グリ
オキザールについても特に制限はなく、これまで使用さ
れていたもの、例えば通常40重量%程度の水溶液を用
いることができるが、必要に応じてさらに高濃度のもの
や固体状のものを用いることもできる。
【0008】上記フェノール類とグリオキザールとの使
用割合については、通常グリオキザールに対するフェノ
ール類のモル比で、4〜50の範囲で用いられる。この
モル比が4未満では高次縮合物が生成しやすく、テトラ
キスフェノールエタンの収率が低下するし、50を超え
ると残存する多量の未反応フェノール類の回収に多くの
時間と多大のエネルギーコストを要し、経済的に不利と
なるので、好ましくない。収率及び経済性などの面を考
慮して、グリオキザールに対するフェノール類の好まし
いモル比は、5〜30の範囲である。
【0009】この反応に用いられる好ましい酸触媒とし
ては、例えばシュウ酸、フェノールスルホン酸、p‐ト
ルエンスルホン酸などの有機酸、強酸性イオン交換樹脂
などの樹脂酸、硫酸、塩酸、過塩素酸などの無機酸など
の強酸を挙げることができる。これらの触媒は、単独で
用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。その使用量については通常使用されている範囲を選
ぶことができ特に制限はないが、一般的にはフェノール
類に対して0.01〜20重量%の範囲で選ばれる。
【0010】本発明方法においては、アセトンの共存下
に反応を行うことが必要であり、このアセトンの量は、
フェノール類に対して5重量%以上の割合にすることが
必要である。このアセトンの量が5重量%未満では収率
の向上効果が十分に発揮されない。また、アセトンの量
があまり多すぎると、その量の割には収率の向上効果が
認められず、むしろ危険性が大きくなるとともに、経済
的に不利となるので収率の向上、危険性の抑制及び経済
性などの面を考慮してフェノール類に対して10〜20
重量%の範囲で用いられる。
【0011】次に、本発明方法においては、反応を60
℃以下の温度において行うことが必要である。反応温度
が60℃を超えると高次縮合物の生成量が多くなり、ま
たアセトンとフェノールとの反応生成物を生じるなど収
率が低下する。しかし、反応温度が低すぎると低分子化
合物の生成量が多くなり、収率が低下するので、高次縮
合物及び低分子化合物の生成を抑えて収率を高めるため
に、30〜60℃の範囲、好ましくは35〜45℃の範
囲で選ぶのが有利である。この際の反応時間は、フェノ
ール類の種類、フェノール類とグリオキザールとの使用
割合、酸触媒の種類及び量、反応温度などにより左右さ
れ、一概に定めることはできないが、一般的には1〜2
4時間の範囲内である。
【0012】次に、本発明の好適な実施態様の1例につ
いて説明すると、まず、フェノール類、グリオキザール
及びフェノール類に対して5重量%以上のアセトンを、
それぞれ所定の割合で含有する混合物を調製し、これに
所定量の酸触媒を加え、60℃以下の温度において、所
定時間反応を行ったのち、冷却し、好ましくは中和処理
して液状の反応混合物を得る。この中和処理には、例え
ば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウ
ム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性化合物が、固体
又は水溶液の形態で用いられる。
【0013】次に、得られた液状の反応混合物に低分子
化合物や高次縮合物に良溶媒的に作用し、かつテトラキ
スフェノールエタンに貧溶媒的に作用する晶析用有機溶
剤、例えばアセトン、テトラヒドロフランなど(特にア
セトンは、良好なろ過作業性を付与できるため最適であ
る)を加えてかきまぜたのち静置し、ろ過して混合物ス
ラリー(テトラキスフェノールエタンのアセトン包接体
と中和塩との混合物)を得る。次いで、該混合物スラリ
ーにアセトン包接体を溶解しかつ中和塩を溶解しない洗
浄用有機溶剤、例えばメタノール、酢酸エチルなどを加
えて加熱環流させたのち、熱時ろ過して中和塩を除去す
る。次いで、得られたろ過液に水を添加し、かきまぜな
がら加熱濃縮(好ましくは加熱減圧濃縮)してテトラキ
スフェノールエタンのアセトン包接体を析出させたのち
ろ別し、恒量に到達するまで高温で加熱減圧乾燥するこ
とにより、高純度のテトラキスフェノールエタンを得る
ことができる。場合によってはさらに同様の操作を繰り
返してより純度を高めてもよい。なお、中和塩の除去に
は、液状の反応混合物に水を添加して加熱し、分液して
水層を除去する方法を採用してもよい。
【0014】このように、アセトンを共存させ、60℃
以下で反応させることにより、高純度のテトラキスフェ
ノールエタンが高い収率で得られる。この理由について
は必ずしも明らかではないが、おそらく、生成したテト
ラキスフェノールエタンがアセトンと包接体を形成して
安定化すること、加えて低温反応の採用により高分子化
(高次縮合物)が抑制されることによるものと推測され
る。また、1,1,2,2‐テトラキス(4‐ヒドロキ
シフェニル)エタンのアセトン包接体は、その熱分析
(理学製TG−DTA8112BH、昇温速度5℃/
分)で知り得た70〜105℃の温度間での重量減少デ
ータから、1モルのテトラキス(4‐ヒドロキシフェニ
ル)エタンに2モルのアセトンが包接していることが確
認された。
【0015】
【発明の効果】本発明方法によれば、高純度のテトラキ
スフェノールエタンを収率よく製造することができる。
このようにして得られたテトラキスフェノールエタン
は、例えばフォトレジスト分野における感光剤用バラス
ト剤やクレゾールノボラック樹脂改質剤として、包接体
形成用として、あるいは耐熱性エポキシ樹脂製造用原
料、エポキシ樹脂用硬化材、酸化防止剤などとして幅広
く用いることができる。
【0016】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定さ
れるものではない。なお、テトラキスフェノールエタン
の純度は東ソー製HLC8010型ゲルろ過クロマトグ
ラフィー(カラム:GXL1000+2000、キャリ
ア:テトラヒドロフラン1cc/分、検出器:屈折率
計)を用いて得られたピークの面積比により求めた。ま
た、融点は理学製TAS1000型示差走査熱量計(D
SC、昇温速度5℃/分)を用いるピークトップ法によ
り求めた。
【0017】実施例1 還流コンデンサー、温度計及びかきまぜ機を備えた三つ
口反応フラスコにフェノール1000g、40重量%グ
リオキザール水溶液232g及びアセトン125gを仕
込み、かきまぜ下に95重量%硫酸187.5gを約2
時間で滴下し、さらに約2時間かけて40℃に昇温し、
同温度で12時間反応を行ったのち、15℃に冷却し、
水酸化ナトリウム水溶液で中和して液状の反応混合物を
得た。次いで、この反応混合物にアセトン632gを加
え、かきまぜて混合物スラリーを得、これをろ別した。
なお、この際のろ別は速やかに行うことができた。さら
に、アセトンと水との混合液で洗浄してテトラキスフェ
ノールエタンのアセトン包接体と中和塩の混合物802
gを得た。次いで、三つ口フラスコ内に該混合物の全量
とメタノール1400gを仕込み、約1時間加熱還流さ
せて前記アセトン包接体を溶解させたのち、熱時ろ過し
て中和塩を除いた。一方、得られたメタノール溶液は、
かきまぜ下に水564g加えたのち、減圧蒸留してメタ
ノールを留去した。その後、15℃で一晩かきまぜたの
ち、ろ過分離し、約130℃で減圧乾燥して白色結晶の
テトラキスフェノールエタン227g(収率22.7
%)を得た。このテトラキスフェノールエタンは、純度
が100%で融点が315℃の1,1,2,2‐テトラ
キス(4‐ヒドロキシフェニル)エタンであった。な
お、ここでいう収率とは、テトラキスフェノールエタン
の収量をフェノール類の仕込み量で除した重量基準の比
率である。
【0018】実施例2 実施例1において、フェノール1000gをo‐クレゾ
ール1145gに変更した以外は実施例1と同様にして
テトラキスフェノールエタン442g(収率38.6
%)を得た。このテトラキスフェノールエタンは、純度
が99.8%で融点が296℃の1,1,2,2‐テト
ラキス(3‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)エタン
であった。
【0019】比較例1 実施例1において、反応時に用いるアセトンを1.5重
量倍のテトラヒドロフランに変更した以外は実施例1と
同様にしてテトラキスフェノールエタン155.1g
(収率15.5%)を得た。このテトラキスフェノール
エタンは、純度が98.2%で融点が312℃の1,
1,2,2‐テトラキス(4‐ヒドロキシフェニル)エ
タンであった。
【0020】比較例2 実施例1において、アセトンを使用せずに反応を行った
ところ、反応系の粘度が高くなり、反応温度の制御がで
きなくなった。また、中和後にアセトンを添加して析出
させた混合物スラリーは微細であったため、そのろ別に
はかなりの時間を必要とした。ろ別後の操作は実施例1
と同様に行ってテトラキスフェノールエタン149g
(収率14.9%)を得た。このテトラキスフェノール
エタンは、純度が97.9%で融点が309℃の1,
1,2,2‐テトラキス(4‐ヒドロキシフェニル)エ
タンであった。
【0021】比較例3 実施例1において、反応時のアセトンをメタノールに変
更した以外は実施例1と同様にしてテトラキスフェノー
ルエタン159.0g(収率15.9%)を得た。この
テトラキスフェノールエタンは、純度が96.5%で融
点が306℃の1,1,2,2‐テトラキス(4‐ヒド
ロキシフェニル)エタンであった。
【0022】比較例4 実施例1において、反応温度を80℃に変更した以外は
実施例1と同様にして反応を行ったのち、アセトン63
2gを加えたが結晶の析出は見られず目的物のテトラキ
スフェノールエタンは得られなかった。なお、反応混合
物の組成は、前記ゲルろ過クロマトグラフィー分析によ
れば、目的物18.0重量%、2,2‐ビス(4‐ヒド
ロキシフェニル)プロパン19.5重量%、高次縮合物
28.1重量%、残りは未反応フェノールであった。
【0023】以上の実施例及び比較例より、本発明方法
においては、反応時に共存させたアセトンとの包接体の
形成による目的物(テトラキスフェノールエタン)の安
定化と、特定の反応温度の採用による高分子化抑制とが
相俟って目的物の収率向上が果たせたものであるとの知
見を得た。また、得られたテトラキスフェノールエタン
は、低分子化合物や高次縮合物の含有量が極めて少なく
高純度のものであることが確認された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−173089(JP,A) 特開 平7−76538(JP,A) 特開 平6−179637(JP,A) 特開 平2−296814(JP,A) 特開 昭63−223020(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 39/00 C07C 37/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸触媒の存在下、フェノール類とグリオ
    キザールとを反応させてテトラキスフェノールエタンを
    製造するに当り、フェノール類に対して5重量%以上の
    アセトンを共存させ、かつ60℃以下の温度で反応を行
    うことを特徴とするテトラキスフェノールエタンの製造
    方法。
  2. 【請求項2】 フェノール類に対して10〜20重量%
    のアセトンを共存させる請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 反応温度が30〜60℃である請求項1
    又は2記載の製造方法。
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